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JP6719499B2 - プレス金型のパンチ構造、プレス金型、プレス成形品の製造方法および、プレス成形品 - Google Patents

プレス金型のパンチ構造、プレス金型、プレス成形品の製造方法および、プレス成形品 Download PDF

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JP6719499B2 JP2018063221A JP2018063221A JP6719499B2 JP 6719499 B2 JP6719499 B2 JP 6719499B2 JP 2018063221 A JP2018063221 A JP 2018063221A JP 2018063221 A JP2018063221 A JP 2018063221A JP 6719499 B2 JP6719499 B2 JP 6719499B2
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Description

この発明は、プレス金型内に設けられて、プレス対象の金属板から所定の形状のプレス成形品を打ち抜くためのパンチ構造、プレス金型、プレス成形品の製造方法および、プレス成形品に関するものであり、特に、厚みに対して幅が狭い狭幅部を含むプレス成形品を製造するに当り、その打抜き加工に繰り返し用いられるパンチ構造への破損の発生を有効に防止することのできる技術を提案するものである。
コネクタやリードフレームを製造するに当っては、被加工材としての銅合金等の金属板をプレスして打ち抜くプレス成形により、端子部分を形成することが一般に行われている。
そして近年は、機器の小型化に伴いそれに内蔵されるコネクタ端子もまた微細化する傾向にあり、プレス成形では、微細かつ複雑な形状に打ち抜くことが必要になるとともに、そのプレス成形品に厳しい寸法公差が要求される。
このようにプレス成形品の微細化及び複雑化が進む状況下において、プレス成形品によっては、厚みに対して幅が狭い部分、なかでも厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部が存在することがあるこの場合、そのようなプレス成形品の製造時に、たとえば当該狭幅部の一方側と他方側の各側部を順次に打ち抜くといったように複数回に分けて打抜き加工を施すと、いわゆる転びが発生しやすくなる。
この転びは、より詳細には、複数回の打抜き加工のうちの先の打抜き加工時に一方側の側部を打ち抜き、後の打抜き加工時に他方側の側部を打ち抜くに当り、狭幅部となる材料部分の幅が狭いことにより、パンチとダイの間に挟まれた当該部分が、後の打抜き加工時の破面とは逆側に変位することにより発生するものである。転びが発生した場合、プレス成形品の寸法が安定せず、厳しい寸法公差を満たすことが困難になる。なお、この種の問題に着目した技術としては、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
特開2007−326105号公報
上述した転びに対しては種々の対策が考えられるが、そのなかの一つとして、一体抜きもしくは両面抜きという技術が有効である。これによれば、狭幅部の両側部を同時に打ち抜くことから転びが発生せず、幅/厚みの比が1.5以下である狭幅部であっても安定した形状に形成することが可能である。
しかるに、このような一体抜きを行う場合、プレス金型のパンチ構造の先端面の形状を、狭幅部と同じ狭幅形状を含む形状にする必要があるので、幅の狭い当該狭幅形状がパンチ構造の強度を低下させ、それに起因して、使用に伴い、パンチ構造の所定の部分にクラック等の破損が生じるという問題がある。
この発明は、上述したような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、厚みに対して幅が狭い狭幅部を含むプレス成形品を製造するに当り、その打抜き加工に繰り返し用いられるパンチ構造への破損の発生を有効に防止することができるパンチ構造、プレス金型、プレス成形品の製造方法および、プレス成形品を提供することにある。
この発明のパンチ構造は、厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部を含むプレス成形品を打ち抜くべく、プレス金型本体から突出させて配置されるパンチ構造であって、プレス成形品の前記狭幅部の平面形状に対応する狭幅形状を少なくとも一部に含む先端面を備えたパンチ先端部を有し、互いに離隔して並んで位置する二本の狭幅部と前記狭幅部を相互に連結する連結部とを含むプレス成形品を打ち抜くパンチ構造であり、前記パンチ先端部が、前記プレス成形品の前記狭幅部及び前記連結部の平面形状に対応する狭幅形状及び連結形状を少なくとも一部に含む先端面を備え、パンチ先端部の側面の一部に、当該パンチ構造の突出方向に延びる補強リブが設けられ、前記補強リブが、前記パンチ先端部の前記狭幅形状の、前記連結形状から離れた端部に位置してなるものである。
の場合、前記狭幅形状の少なくとも一個の前記端部で、前記補強リブが、該狭幅形状を隔てた両側面のそれぞれに設けられていることが好ましい。
この発明のパンチ構造では、前記補強リブが、パンチ先端部の先端面から前記突出方向に、前記狭幅部の厚みtの3倍〜50倍の長さにわたって連なって設けられていることが好ましい。
また、この発明のパンチ構造では、前記補強リブが、矩形の横断面形状を有することが好ましい。
ここで好ましくは、前記補強リブの横断面で、前記補強リブの、前記狭幅形状の側縁に平行な幅が、狭幅部の幅wに対する比で表して、0.3〜4である。
またここで好ましくは、前記補強リブの横断面で、前記補強リブの、前記狭幅形状の側縁に直交する高さが、狭幅部の幅wに対する比で表して、0.3〜4である。
そしてまた、この発明のパンチ構造では、前記補強リブが、前記突出方向で該補強リブの全体にわたって、一定の横断形状を有することが好適である。
この発明のプレス金型は、上述したいずれかのパンチ構造を有するものである。
この発明のプレス成形品の製造方法は、上述したいずれかのパンチ構造を有するプレス金型を用いて、金属板を打ち抜いてプレス成形品を製造するものである。
この発明のプレス成形品の製造方法は、より詳細には、金属板に対し、前段打抜き加工および、その後の後段打抜き加工を含む複数段階の打抜き加工を順次に施すこととし、前段打抜き加工もしくは後段打抜き加工のいずれか一方の打抜き加工で、パンチ先端部に前記補強リブを設けた前記パンチ構造を用いて一次打抜き箇所を形成し、他方の打抜き加工で、前記一次打抜き箇所に交差させて前記補強リブが貫通する箇所を含めて打ち抜き、二次打抜き箇所を形成することができる。
この製造方法では、二次打抜き箇所を形成する他方の打抜き加工を前段打抜き加工とし、一次打抜き箇所を形成する一方の打抜き加工を後段打抜き加工とすることが好ましい。
この発明のプレス成形品は、厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部を含み、前記狭幅部の周囲の側面が、プレスの打抜き面になるプレス成形品であって、前記狭幅部の側面が、一次打抜き面と、前記一次打抜き面とは表面性状が異なる二次打抜き面とを有し、前記狭幅部の側面一次打抜き面二次打抜き面との間の遷移位置に、切りつなぎ形状のリブ用マッチングが形成されてなるものである。
この発明のプレス成形品では、互いに離隔して並んで位置する二本の前記狭幅部と、前記狭幅部を相互に連結する連結部とを含み、前記狭幅部および連結部の周囲の側面が、プレスの打抜き面になることが好ましい。
また、この発明のプレス成形品では、前記二次打抜き面が、前記狭幅部の、前記連結部から離れた端部の側面に位置することが好ましい。
そしてまた、この発明のプレス成形品では、前記狭幅部の少なくとも一個の前記端部で、前記二次打抜き面が、該狭幅部の両側面のそれぞれに設けられていることが好ましい。
プレス成形品の前記二次打抜き面は、一次打抜き面から窪んで形成されていることが好ましい。
この場合においては、前記二次打抜き面の窪み量が、前記狭幅部の幅方向に沿って測って、前記狭幅部の幅wに対して10%〜20%であることが好適である。
この発明のプレス成形品では、前記二次打抜き面が形成された箇所での前記狭幅部の厚みtに対する幅w1の比(w1/t)が、0.5〜1.5であることが好ましい。
この発明のプレス成形品では、当該プレス成形品がダレ面とバリ面を有し、横断面で、バリ面の、ダレ面に対して平行なもしくは右下がりに傾斜する表面部分及び右上がりに傾斜する表面部分のうちの大きいほうの表面部分の面積率が90%以上であることが好ましい。
この場合、横断面で、大きいほうの前記表面部分の、ダレ面に対する傾斜角度が、0°〜20°の範囲内であることが好ましい。
この発明によれば、パンチ構造のパンチ先端部の側面の一部に、当該パンチ構造の突出方向に延びる補強リブを設けたことにより、パンチ構造の所定の部分へのクラックを抑制することができる。それにより、このパンチ構造を、厚みに対して幅が狭い狭幅部を含むプレス成形品の打抜き加工に繰り返し用いた場合であっても、パンチ構造への破損の発生を有効に防止することができる。
この発明の一の実施形態のパンチ構造のパンチ先端部を示す斜視図である。 図1のパンチ構造を用いて成形しようとするプレス成形品を概略的に示す斜視図である。 従前のパンチ構造の先端面の破損を例示する部分平面図である。 打抜き時の先端面の変形態様と引張応力の集中箇所を模式的に示す平面図である。 図1に示すパンチ構造の補強リブの他の配設例を示す斜視図である。 図1に示すパンチ構造のパンチ先端部の横断面図である。 図1に示すパンチ構造の補強リブの変形例及び他の配設例を示す斜視図である。 他の実施形態のパンチ構造のパンチ先端部を示す斜視図である。 この発明の一の実施形態のプレス成形品の製造方法を示す平面図である。 他の実施形態のプレス成形品の製造方法を示す平面図である。 この発明の一の実施形態のプレス成形品を示す平面図及び側面図である。 図11に示すプレス成形品の狭幅部の端部の拡大平面図である。 図11(a)のa−a線、b−b線及びc−c線のそれぞれに沿う狭幅部、連結部の横断面図である。 面積率の測定方法を示す平面図および、研削加工前後の状態で示す側面図である。 面積率の測定方法を示す、プレス成形品の横断面図である。 参考例のプレス成形品の狭幅部、連結部の横断面図である。 他の実施形態のプレス成形品を示す平面図である。 試験例1の比較例のパンチ構造のパンチ先端部を示す斜視図である。 試験例5の追い抜きによるプレス成形品の製造方法を示す平面図である。 試験例5の一体抜きと追い抜きのそれぞれで形成されたプレス成形品の断面図である。 試験例6の成形品を樹脂品に埋め込んで折り曲げた状態を示す正面図および側面図である。 試験例7のT字形状の成形品を示す平面図である。
以下に図面に示すところに基き、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
(パンチ構造)
この発明の一の実施形態のパンチ構造1は、順送金型等の図示しないプレス金型本体の上型もしくは下型の一方に設けられて、プレス対象の金属板からプレス成形品を打ち抜くべく、当該プレス金型本体から突出させて配置される柱状のものである。
より具体的には、パンチ構造1のパンチ先端部2は、図1に例示するように、プレス対象の金属板に当接してそれを貫通する先端面Tを有し、その先端面Tは、プレス成形品の所定の平面形状に対応する形状に形成されている。
ここでは一例として、最終的に製造しようとする目標のプレス成形品21は、図2に概略的に示すように、平面視で、互いに離隔して並んで位置し、たとえば相互に異なる長さで実質的に平行にほぼ直線状に延びる二本の狭幅部22、23と、それらの狭幅部22、23の間に、たとえば幅が変化しながら延びて、狭幅部22及び23を相互に、その延在方向の中間位置で連結する連結部24とで構成された略「H」状のものとする。そして、このプレス成形品21では、狭幅部22、23の厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である。
これに対応して、パンチ先端部2の先端面Tは、厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部22、23の平面形状に応じた狭幅形状、たとえば狭幅部22、23の平面形状と実質的に一致する狭幅形状3、4を少なくとも一部に含むものである。図示の実施形態について詳説すると、パンチ先端部2の先端面Tは、プレス成形品21とほぼ同様に、互いに離隔して並んで位置する二本の狭幅形状3、4と、狭幅形状3、4を相互に連結する連結形状5とを含む形状を有する。狭幅形状3、4は、互いに実質的に平行にほぼ直線状に延びるものであり、また連結形状5は、幅が変化しながら延びて、狭幅形状3、4の延在方向の中間位置でそれらを連結している。
このパンチ構造1は、上述したように、プレス成形品21の平面形状と実質的に対応する形状の先端面Tを有することにより、金属板からプレス成形品21を打ち抜く際に、狭幅部22及び23の両側部が図示しないダイやストリッパー等で押圧されて、狭幅部22及び23並びに連結部24が一体抜きとなるので、先述の転びによる寸法安定性の問題は生じにくい。
他方、上述したパンチ構造1は、微細なプレス成形品21の一体抜きを行い得ることに起因して、先端面の狭幅形状3、4や連結形状5の幅が極めて狭くなる。それにより、従前のパンチ構造を繰り返し使用すると、少ないショット数で早期に、先端面Tの所定の箇所にクラック等の亀裂その他の破損が生じるという他の問題がある。
この問題に対処するため、この実施形態のパンチ構造1では、図1に例示するように、パンチ先端部2の、たとえば突出方向にほぼ平行な側面Sの一部に、パンチ構造1の突出方向に延びる補強リブ6を設ける。
これによれば、パンチ先端部2の先端面Tが、厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部22、23を打ち抜くための微細な狭幅形状3、4を有するパンチ構造1であっても、パンチ構造1で打抜き加工を行う際にパンチ構造1がプレス対象の金属板から受ける力による、狭幅形状3、4を有する部分の変位は、補強リブ6によって抑制されるので、先端面Tでの破損の発生を有効に防止することができる。
発明者は、特に図示のような先端面に狭幅形状及び連結形状を含むパンチ構造における先端面への破損の発生原因および、パンチ先端部2の補強リブ6を設ける箇所やその形状その他の最適な条件を探るため、次に述べる検討を行った。
補強リブ6を有しない従前のパンチ構造を繰り返し使用したところ、少ないショット数で先端面が破損した。その先端面に発生した破損を確認したところ、多くのパンチ構造で、図3(a)に示すような狭幅形状間の連結形状の部分のクラックC1や、図3(b)に示すような長いほうの狭幅形状の中間部の外側縁側から内側に延びるクラックC2のような亀裂があることが解かった。
そして、先端面が破損したこれらのパンチ構造の側面を調査した結果より、打抜き時にパンチ先端部の側面に作用する側方力が、先端面の破損に影響を及ぼしているとの仮説を立て、これを検証すべく、打抜き荷重の他に当該側方力を条件として追加したシミュレーションを実施した。
側方力を追加したシミュレーションより、引張応力が集中する箇所は、狭幅形状間の連結形状の部分や、長いほうの狭幅形状の中間部の外側縁であるという結果が得られた。これは先端面の上述のクラックC1やC2等の破損個所と一致することから、先端面の破損は、打抜き時の側方力が大きく影響していることが解かった。
すなわち、打抜き時にパンチ構造には、突出方向と平行な向きの打抜き荷重だけでなく、図4(a)及び(b)に示すように、特に長い狭幅形状の延長部分に、同図に矢印で示すように、その側方側から側方力が作用すると考えられる。図4(a)のように、側方力が、短いほうの狭幅形状側である内側縁側から外側縁側に向けて作用すると、同図に破線で示すように、連結形状の、長い狭幅形状寄りの部分に引張応力が集中する。一方、図4(b)のように、側方力が、外側縁側から内側縁側に向けて作用すると、同図に破線で示すように、連結形状の中央部分や長い狭幅形状の中央部分の外側縁に引張応力が集中する。そして、これらの応力集中箇所にクラックが発生する。
したがって、上述したような側方力による応力集中を抑制できるように、パンチ先端部2の側面Sの一部に補強リブ6を、側方力に対抗するよう設けることが、破損の防止に有効である。
具体的には、補強リブ6は、図1に示すように、パンチ先端部2の狭幅形状3、4の、連結形状5から離れて位置する端部に配置することが好適である。狭幅形状3、4の端部は、打抜き時に側方力によって大きな変位が生じることから、ここに補強リブ6を配置して、この変位を抑えることにより、所定の箇所への引張応力の集中、ひいてはクラックの発生をより効果的に防止できるからである。図1に示すところでは、長い狭幅形状3の両端部および短い狭幅形状4の両端部のそれぞれに、補強リブ6を配置している。
またこの場合、補強リブ6は、狭幅形状3、4の少なくとも一個の端部で、狭幅形状3、4を隔てた両側面Sのそれぞれに設けること、つまり、狭幅形状3、4の端部を両側面S側から挟んで位置させることが好適である。これにより、打抜き時に大きく変位する狭幅形状3、4の端部を、補強リブ6で両側から拘束して、クラック防止の効果がさらに高まる。但し、補強リブ6の配置スペース上の制約その他の理由から、図1に示すパンチ構造1では、長い狭幅形状3の延長部分の端部のみで、該端部を隔てた両側に補強リブ6設けることとし、他の端部では外側縁側の片側のみに補強リブ6設けている。なお、図5に例示するように、狭幅形状3、4の全ての端部で、片側のみに補強リブ6を設けることも可能である。
補強リブ6の寸法形状に関し、シミュレーション結果より、補強リブ6は、パンチ先端部2の先端面Tから突出方向に沿って基部側に向けて、製造しようとするプレス成形品21の狭幅部22、23の厚みtの3倍〜50倍の長さにわたって連なって設けられていることが好ましい。補強リブ7の突出方向の長さLrを、狭幅部22、23の厚みtの50倍より大きくすると、刃先が強度不足(反り、倒れ等)となることが懸念される。また、後述する他の例のように、補強リブが基部側から先端面に至る手前まで延びるものとした場合、補強リブ頂点部分(たとえばパンチ先端部側面と三角リブ鋭角部の繋ぎ目)から破損する可能性がある。
また、シミュレーション結果より、補強リブ6は、矩形の横断面形状を有すること、特に、図1及び5に示すように、突出方向の全体にわたって一定面積の矩形の横断面形状をなす四角柱状のものとすることが好ましい。これは、このような四角柱状の補強リブ6は、後述する三角リブと比べて、図4に矢印で示す向きの応力によるパンチ先端部2の変形をより効果的に抑制できるからである。
そしてまた、補強リブ6は、図6に示すように、補強リブ6の、突出方向に直交する横断面で、補強リブ6の、狭幅形状3、4の側縁に平行な幅Wrが、狭幅部22、23の幅wに対する比で表して、0.3〜4であることが好ましい。補強リブ6の幅Wrが狭幅部22、23の幅wに対して狭すぎる場合は、補強効果が減少する懸念があり、この一方で、補強リブ6の幅Wrが狭幅部22、23の幅wに対して広すぎる場合は、補強リブ6とパンチ先端部2の側面Sとの繋ぎ目から破損する可能性が否めない。
また、補強リブ6は、図6に示すように、補強リブ6の横断面で、補強リブ6の、狭幅形状3、4の側縁に直交する高さHrが、狭幅部22、23の幅wに対する比で表して、0.3〜4であることが好ましい。補強リブ6の高さHrが狭幅部22、23の幅wに対して低すぎる場合は、補強効果が減少するおそれがあり、また、補強リブ6の高さHrが狭幅部22、23の幅wに対して高すぎる場合は、補強リブ6とパンチ先端部2の側面Sとの繋ぎ目から破損することが懸念される。
但し、補強リブは、たとえば、図7に示すような寸法形状とすることもできる。
図7(a)に示す例では、補強リブ6aは、側面視でほぼ直角三角形状をなすものであり、その横断面形状は、パンチ構造1の基部側から先端面T側に向かうに従って面積が漸減する矩形状(三角リブ)である。そして、このような形状の補強リブ6aを、基部側から、先端面Tに達しない突出方向中間位置まで延びるよう配置している。
図7(b)に示す例は、短い狭幅形状4の外側面に、その狭幅形状4の両端部位置のそれぞれに設けた補強リブ6aの間にも、同形状の補強リブ6aを設けたことを除いて、図7(a)に示すものと同様である。
図7(c)に示す例では、図7(a)の補強リブ6aを全て、それよりも長く先端面Tまで延びる補強リブ6bに置き換えたことを除いて、図7(a)に示すものと同様である。
パンチ先端部2の先端面Tの形状その他の条件によっては、図7に例示するような寸法形状が好ましい場合もあり得る。
上述したところでは、図2に示すような、互いに離隔して並んで延びる二本の狭幅部22、23と、狭幅部22、23を、その延在方向の中間位置で相互に連結する連結部24とを含むプレス成形品21を打ち抜くため、その平面形状に対応する狭幅形状3、4及び連結形状5を含む先端面Tのパンチ構造1について説明したが、これとは形状の異なるプレス成形品を打ち抜く場合、その平面形状に応じて、パンチ構造の形状を適宜変更することができる。
たとえば、図8(a)に示すパンチ構造31は、その先端面が、直線状に延びる狭幅形状33と、狭幅形状33の一端部に連なり、狭幅形状33に実質的に直交する方向に、狭幅形状33よりも短い長さで直線状に延びる狭幅形状34とを有し、ほぼ「L」字状の平面形状をなす。ここでは、長い狭幅形状33の他端部の両側に、補強リブ36を設けている。
図8(b)に示すパンチ構造41は、互いに平行に直線状に延びる長短二本の狭幅形状43、44と、二本の狭幅形状43、44間で、それらとほぼ直交する向きに延びて、長い狭幅形状43の中間部を、短い狭幅形状44の一端部に連結する連結形状45とを含む先端面Tを有するものである。このパンチ構造41は、長い狭幅形状43では一端部の両側に補強リブ46を設けるとともに、長い狭幅形状43の他端部及び、短い長い狭幅形状43の他端部では片側の外側のみに補強リブ46を設けている。
図8(c)に示すパンチ構造51は、長い狭幅形状53の、連結形状55より他端側の部分を除去し、長い狭幅形状53の他端部と短い狭幅形状54の一端部とが連結形状55に連結されていることを除き、図8(b)のパンチ構造41とほぼ同様の構成を有する。
(プレス成形品の製造方法)
上述したようなパンチ構造1、31、41又は51等を有するプレス金型を用いて、金属板を打ち抜くことで、所定のプレス成形品を製造することができる。プレス金型については、順送金型等に組み込んで、パンチ構造及びそれに関連する構造以外は既存のものを用いることができるので、ここでの詳細な説明及び図示は省略する。
以下に、一例としてパンチ構造1を用いた製造方法について説明するが、他のパンチ構造31、41又は51等を用いた方法もほぼ同様にして行うことができる。
パンチ構造1では補強リブ6を設けたことにより、補強リブ6の配設態様によっては、このパンチ構造1を用いて金属板を打ち抜くと、金属板の、補強リブ6が貫通する箇所も打ち抜かれ、これにより形成される成形品の側面の、補強リブ6と対応する箇所に、補強リブ6の横断面形状に応じた凸部が必然的に形成される場合がある。
これに対処するため、金属板に対し、前段打抜き加工および、その後の後段打抜き加工を含む複数段階の打抜き加工を順次に施すことが好ましい。
具体的には、たとえば、はじめに、図9(a)に示すように、補強リブ6を設けたパンチ構造1を用いて、金属板61に打抜き加工を施す。これにより、金属板61から、図9(b)に示すような半製品62を打ち抜いて成形することができる。この半製品62は、上記のパンチ構造1を用いて形成された結果として、図9(b)に示すように、その側面の、パンチ構造1の補強リブ6と対応する箇所(この例では狭幅形状の両端部の側方と対応する箇所)に、該側面から突出して補強リブ6の横断面形状と対応する矩形状等の形状を有する凸部63が形成されている。半製品62の当該凸部63を含む側面の全体が一次打抜き箇所Sp1になる。またここでは、パンチ構造1を用いたこの打抜き加工が、次に述べる打抜き加工に先立って行う前段打抜き加工となる。
次いで、半製品62の上記の凸部63を除去するため、図9(c)に示すように、パンチ構造1とは別のパンチ構造1a〜1eを用いて、半製品62の一次打抜き箇所Sp1に交差させるとともに、先述の補強リブ6が貫通して凸部63が形成された箇所を含めて打抜き加工を施す。この打抜き加工により、図9(d)に示すように、凸部63が存在していた箇所に二次打抜き箇所Sp2が形成されたプレス成形品71を得ることができる。この場合、パンチ構造1a〜1eによるこの打抜き加工は、上記の前段打抜き加工に対して、それよりも時間的に後になるので後段打抜き加工となる。
なお、全てのパンチ構造1a〜1eで同時に半製品62に打抜き加工を施すことができるが、パンチ構造1a〜1eのうちの少なくとも一つを、残りのパンチ構造と時間的にずらして用いて、それらにより順次に打抜き加工を施すことも可能である。つまり、後段打抜き加工をさらに複数段階に分けてもよい。
この実施形態では、各パンチ構造1a〜1eによって、各凸部63より若干広い幅で、平面視にて半製品62の狭幅部にやや食い込ませて打ち抜くことで、プレス成形品71には、側面の凸部63が存在していた箇所がやや窪むとともに、当該箇所の両側近傍に、一次打抜き箇所Sp1と二次打抜き箇所Sp2との境界になるマッチングが形成されることになる。但し、図示は省略するが、半製品62の狭幅部から若干離隔させて、パンチ構造1a〜1eで凸部63を打ち抜くことも可能であり、この場合、プレス成形品には、凸部63の残部による側面からの突起が形成される。プレス成形品71の詳細については後述する。
このようにして、パンチ構造1を用いてプレス成形品71を製造することにより、先述したように補強リブ6を設けることでパンチ構造1の先端面の破損を防止しつつ、厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部が存在するプレス成形品71を有効に製造することができる。
あるいは、図10に示すようにしてプレス成形品71を製造することも可能である。
この実施形態では、はじめに、図10(a)に示すように、前段打抜き加工として、パンチ構造1a〜1eを用いて金属板61に対して打抜き加工を施し、図10(b)に示すように、金属板61に、各パンチ構造1a〜1eに対応する空所になる二次打抜き箇所Sp2を形成する。この際に、パンチ構造1a〜1eによる打抜き加工は、後述する後段打抜き加工で、後段打抜き加工による一次打抜き箇所Sp1が当該二次打抜き箇所Sp2に交差し、かつ後段打抜き加工で用いるパンチ構造1の補強リブ6が貫通することになる箇所を含む位置に行う。
なお、パンチ構造1a〜1eによる打抜き加工は、それらの全てを同時に行うこともでき、または、それらのうちの少なくとも一つを時間的にずらして分けて行うこともできる。
その後、図10(b)に示すように、後段打抜き加工として、二次打抜き箇所Sp2が形成された金属板61に、補強リブ6を設けたパンチ構造1を用いて打抜き加工を施す。これにより、図10(c)に示すように、一次打抜き箇所Sp1及び二次打抜き箇所Sp2で表裏に貫通する空所が形成されたスクラップとしての金属板61と、図10(d)に示すように、先に述べたものと実質的に同様のプレス成形品71を得ることができる。
図10に示す製造方法では、パンチ構造1a〜1eにより二次打抜き箇所Sp2を形成する打抜き加工を前段打抜き加工とし、補強リブ6を設けたパンチ構造1により一次打抜き箇所Sp1を形成する打抜き加工を後段打抜き加工としたことにより、図9に示す製造方法に比してスクラップのカスの発生を抑制できるという利点がある。図9に示す製造方法では、図9(c)の段階における抜き形状のサイズが小さいことから、スクラップのカスが発生しやすくなる可能性が否定できない。それ故に、図10に示す製造方法は、図9に示すものに比して好適である。
図9もしくは10に示す製造方法は、その一部を部分的に変更して実施することもできる。
その変更例としては、たとえば、図示は省略するが、パンチ構造1a〜1eのうちの少なくとも一つによる打抜き加工を、パンチ構造1による打抜き加工の前又は後に行うことが考えられる。つまり、この変更例では、はじめに、パンチ構造1a〜1eのうちの少なくとも一つによる打抜き加工を行い、次いで、パンチ構造1による打抜き加工を行い、その後、パンチ構造1a〜1eの残りの打抜き加工を行う。
また、パンチ構造1a〜1eの平面形状は、図示の実施形態では、ほぼ「L」字状としているが、長方形もしくは正方形状又はその他の形状に変更することも可能である。
このような種々の変更・改良は、製造しようとするプレス成形品の形状や、金型の態様その他の条件に応じて適宜行うことができる。
なお、上述したところにおいて、一次打抜き箇所Sp1及び二次打抜き箇所Sp2の「一次」及び「二次」との用語は単に、異なるパンチ構造1、パンチ構造1a〜1eを用いて形成された箇所であることのみを意味する。後述するプレス成形品の一次打抜き面及び二次打抜き面についても同様である。
(プレス成形品)
以上に述べたようにして製造されるプレス成形品71は、図11(a)及び(b)に示すように、厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部72、73を有し、狭幅部72、73の側面を含むプレス成形品71の側面の全体がプレスの打抜き面になるものである。特に、狭幅部72、73の厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.0以下、さらに0.8以下である場合は、それを成形するためのパンチ構造1の狭幅形状3、4が微細となって打抜き時に変位しやすくなり破損の問題が顕著になるので、この発明を適用することがより一層有効である。なお通常は、狭幅部72、73の厚みtに対する幅wの比(w/t)は、1.0以上となることが多い。
なお、プレスの打抜き面は一般に、図11(b)に示すように、側面の延びる方向(同図では左右方向)に並んで延びるそれぞれ一以上の剪断面領域及び破断面領域を含んで構成される。剪断面領域は、打抜き加工によって金属板が厚み方向に引き伸ばされた際にパンチ又はダイに擦れることによって形成されるものと考えられ、厚み方向に若干の線状模様の入った平滑面となる。一方、破断面領域は、打抜き加工で引き伸ばされた後に、排出されるスクラップから引きちぎられることによって生じるものと考えられ、剪断面領域とは明確に異なり、凹凸が存在するディンプル状の面となる。
この実施形態のプレス成形品71は、平面視で、互いに離隔して並んで位置する二本の狭幅部72、73と、狭幅部72、73を相互に連結する連結部74とで構成されており、一方の狭幅部72は、その一端側で、他方の狭幅部73よりも長く延びる延長部分を有する。
そしてこのプレス成形品71は、先述した方法で製造されたことにより、狭幅部72、73及び連結部74の側面の全体が、一次打抜き面Fp1と二次打抜き面Fp2からなり、さらに、狭幅部72、73の側面の一部に、厚み方向に沿って延びて一次打抜き面Fp1から二次打抜き面Fp2を区画するリブ用マッチングMrが形成されている。
リブ用マッチングMrは、補強リブ6を有するパンチ構造1により形成された一次打抜き面Fp1と、パンチ構造1a〜1eにより形成されて前記一次打抜き面Fp1とは剪断面領域及び破断面領域の表面性状が異なる二次打抜き面Fp2との間の遷移位置に存在し、多くの場合、図示の実施形態のように、切りつなぎ形状として外側に凸の角部状になる。
なお、この実施形態では、リブ用マッチングMrで区画される一次打抜き面Fp1と二次打抜き面Fp2とで、剪断面領域及び破断面領域の形成位置が、図11(b)に示すように、プレス成形品71の厚み方向で相互に上下反転し、互いに反対の位置となっている。これは、一次打抜き面Fp1が形成される打抜き加工と、二次打抜き面Fp2が形成される打抜き加工の、パンチ及びダイの配置位置が上下反対であったことによるものである。
側面の延びる方向でリブ用マッチングMrによって挟まれる二次打抜き面Fp2は、先述したようにパンチ構造1の先端面Tの破損をより有効に防止するべく補強リブ6を狭幅形状3、4の端部に設けたことに起因して、図示の実施形態では、狭幅部72、73の、連結部74から離れた端部のそれぞれの側面に位置する。
またこの実施形態では、先述したようにパンチ構造1への補強リブ6の配置位置に対応して、プレス成形品71の長い狭幅部72の延長部分の端部に形成される二次打抜き面Fp2は、その狭幅部72を隔てた両側面のそれぞれに位置することになる。
そしてまたここでは、これも先述したようにパンチ構造1a〜1eをやや狭幅部に食い込ませて打抜き加工を行ったことにより、プレス成形品71では、いずれの二次打抜き面Fp2も、一次打抜き面Fp1から窪んで形成されている。
この場合、二次打抜き面Fp2の窪み量Dは、図12に示すように、狭幅部72、73の幅方向(同図では上下方向)に沿って測って、狭幅部72、73の幅wに対して10%〜20%の範囲内であることが好ましい。これはすなわち、二次打抜き面Fp2の窪み量Dが狭幅部72、73の幅wの10%未満である場合は、抜き位置のズレが発生した場合に不具合(バリ等)が発生するおそれがあり、この一方で、二次打抜き面Fp2の窪み量Dが狭幅部72、73の幅wの20%を超える場合は、狭幅部72、73の幅wから窪み量Dを除いた幅w1が小さくなり狭幅部が変形することが懸念されるからである。
但し、図示は省略するが、パンチ構造1a〜1eによる打抜き態様等に応じて、二次打抜き面の少なくとも一つを、一次打抜き面から突出する突起状のものとすることもできる。
上述したように二次打抜き面Fp2が窪み状または突起状となる場合、そこで狭幅部72、73の幅は若干変化することになるところ、二次打抜き面Fp2が形成された箇所での狭幅部72、73の厚みtに対する幅w1の比(w1/t)は、0.5〜1.5であることが好ましい。二次打抜き面Fp2が存在する箇所での狭幅部72、73の幅w1が狭くなりすぎて、この比(w1/t)が0.5未満となる場合は、狭幅部変形(転び)のおそれがある。それ故に、この比(w1/t)は、1.0〜1.5であることがより一層好適である。
ところで、プレス成形品71は、図13に狭幅部72、73、連結部74の横断面図で示すように、プレス成形品71の厚みを漸減させる向きに湾曲する曲面状のダレが存在し得るダレ面75と、表面から突出するバリが形成され得るバリ面76とを有する。一般には、側面の剪断面領域及び破断面領域のうちの剪断面領域側に隣接する表面がダレ面75となり、それとは裏側の、側面の破断面領域側に隣接する表面がバリ面76となる。
そして、上記のプレス成形品71は、一体抜きで製造されたことに起因して、横断面で視て、バリ面76の大部分の傾斜の向きが、ダレ面75の傾斜の向きと同じになる。なおこの場合、バリ面76の当該大部分は、単一のダイないしパンチと接触したことによって単一のダイないしパンチの先端面の研磨目が転写されて、単一の表面粗さを有することがある。
具体的には、横断面で、バリ面76の、ダレ面75に対して平行なもしくは右下がりに傾斜する表面部分及び右上がりに傾斜する表面部分のうちの大きいほうの表面部分の面積率ARは、90%以上であることが好適である。つまり、バリ面76の90%以上の表面部分が、ダレ面75に対して同じ傾斜の向きであれば、一体抜きにより製造されて寸法が安定していることから好ましいといえる。より好ましくは、バリ面76の当該大きいほうの表面部分の面積率ARは、95%以上である。
ここで、面積率ARは次のようにして測定する。
はじめに、図14に示すように、プレス成形品71をクリップ151で固定し、その状態でプレス成形品71の周囲の全体を樹脂材152で固める。次いで、図14(b)に矢印で示すように、観察しようとする断面位置に到達するまで、樹脂材152を切断ないし研磨加工を行う。さらに、それにより露出したプレス成形品71の当該断面を含む研磨面に対し、バフ研磨により仕上げを行う。その後、マイクロスコープ等の観察機器で断面形状を撮影し、面積率ARを測定する。
観察機器で撮影した断面形状について、図15に例示するように、まず、ダレ面75の両端のダレの部分(非定常部)を除いて、各ダレとの2点の境界点Bp1、Bp2を通る直線を基準線RLとする。そして、この基準線RLを、図15に矢印で示すようにバリ面76側に平行移動させ、バリ面76(角にバリが発生している場合はバリ部分を除いた部分)と比較する。ここで、当該断面の幅方向で、バリ面76の、基準線RLに対して平行な表面部分もしくは右下がりに傾斜する表面部分と、当該表面部分と遷移点Tpで傾斜の向きが変化して右上がりに傾斜する表面部分の長さを測定し、それらのうちの長いほうの長さを面積率ARとする。図15(a)に示すところでは、バリ面76のほぼ全体が基準線RLと平行で一致するので、面積率ARは100%に近い値となる。一方、図15(b)に示すような歪な断面形状である場合は、基準線RLとほぼ平行な表面部分の長さL1を測定するとともに、基準線RLに対して右上がりに傾斜する表面部分の長さL2も測定し、それらの長さL1、L2のうち、長いほうの長さL2を面積率ARとする。
また、バリ面76の上述した大きいほうの表面部分の、ダレ面75に対する傾斜角度は、0°〜20°の範囲内であることが好ましい。当該傾斜角度が20°を超える場合は、ピンとなる狭幅部72、73が次工程の加工時に振れること(ピンバラツキ)が懸念される。バリ面76の大きいほうの表面部分の、ダレ面75に対する傾斜角度は、0°〜10°であることがより一層好適である。
バリ面76の大きいほうの表面部分の、ダレ面75に対する傾斜角度は、先述したように、横断面視で、ダレ面75の基準線RLをバリ面76側に平行移動させて、当該表面部分の輪郭線の最小二乗法による近似直線の、基準線RLに対する傾きを求めることにより測定する。
一方、図16に示す参考例のプレス成形品は、一体抜きではなく、背景技術の項目で述べたように、狭幅部の一方側と他方側の各側部を順次に打ち抜くことにより形成されて、転びが発生したものである。図16のプレス成形品では、同図に示すところから解かるように、バリ面(同図の下側の表面)が、主として、ダレ面(上側の表面)に対し、右上がりの向きに傾斜した表面部分と、該表面部分と同程度の領域を占める右下がりの向きに傾斜した表面部分とで構成されており、先に述べた面積率が低くなる。なお、これらの表面部分は、それぞれ異なる二種類以上のダイないしパンチの先端面の研磨目が転写されたことにより、その表面粗さに大きな差異がある場合がある。
以上に述べたところでは、長さの異なる二本の狭幅部72及び73と、それらを中間位置で連結する連結部74を有するプレス成形品71を例として説明したが、この発明は、厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部を含むプレス成形品であれば様々な形状のものに適用することができる。
その具体例としては、たとえば、図17(a)、(b)及び(c)にそれぞれ示すような、狭幅部82及び83が相互にほぼ「L」字状に連結された形状のプレス成形品81や、長短二本の狭幅部92及び93が短い狭幅部93の端部位置と長い狭幅部92の中間位置にて、それらと直交する連結部94で相互に連結された形状のプレス成形品91、長手方向に相互にずれて位置する長短二本の狭幅部102及び103が、短い狭幅部103の端部位置と長い狭幅部102の端部位置にて、それらと直交する連結部104で相互に連結された形状のプレス成形品101等を挙げることができる。
次に、この発明のパンチ構造を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、それに限定されることを意図するものではない。
(試験例1)
比較例として、図18に示すように、補強リブを有しないパンチ構造を用いて、幅が8.0mmで厚みが0.12mmの金属板に対して打抜き加工を繰り返し行った。製造するプレス成形品の連結部の最小幅は0.07mmであり、また、打抜き加工ではストロークを13mmとし、1分間にプレス加工できる数量である連続ストローク量を、開始から20万ショットまでは500spm、20万ショットから300万ショットまでは800spm、300万ショットから500万ショットまでは1000spmとした。
比較例のパンチ構造では、200万ショットでパンチ先端部の先端面における連結形状に破損が確認された。
実施例として、図1、5、図7(a)〜(c)のそれぞれに示すパンチ構造を用いて、上記の比較例と同様の条件で打抜き加工を繰り返し行った。その結果、パンチ先端部の先端面に破損が確認されるまでのショット数は、図1に示すパンチ構造では400万ショット、図5に示すパンチ構造では300万ショット、図7(a)に示すパンチ構造では150万ショット、図7(b)に示すパンチ構造では200万ショット、図7(c)に示すパンチ構造では250万ショットであった。
(試験例2)
図1に示すパンチ構造で、補強リブの長さLrの、狭幅部の厚みtに対する倍率を、表1に示すように変化させたものを用いて、試験例1と同様の条件で打抜き加工を繰り返し行った。補強リブは先端面から延びるものとした。その結果及び考察ならびに評価も表1に示す。
表1より、特に補強リブの長さの倍率が3〜50の範囲内であれば、破損が生じるまでのショット数が大きく増加することが解かる。
(試験例3)
図1に示すパンチ構造で、補強リブ6の幅Wrの、狭幅部の幅wに対する比率を、表2に示すように変化させたものを用いて、試験例1と同様の条件で打抜き加工を繰り返し行った。その結果及び考察ならびに評価も表2に示す。
表2に示すところから、補強リブ6の幅Wrの比率が0.3から4の範囲内であれば、破損をより一層有効に防止できることが解かる。
(試験例4)
図1に示すパンチ構造で、補強リブ6の高さHrの、狭幅部の幅wに対する比率を、表3に示すように変化させたものを用いて、試験例1と同様の条件で打抜き加工を繰り返し行った。その結果及び考察ならびに評価も表3に示す。
表3より、補強リブ6の高さHrの比率が0.3から4の範囲内であれば、破損がさらに抑制されて、より多くのショットが可能になることが解かる。
(試験例5)
一体抜き加工と追い抜き加工によるプレス成形品の断面形状の違いを確認するため、一体抜き加工として、図10(a)及び(b)に示す加工を行って形成したプレス成形品と、追い抜き加工として、図19に示す加工を行って形成したプレス成形品をそれぞれ試作した。
その結果、表4にも記載したが、一体抜き加工で形成されたプレス成形品の断面は、図20(a)に示すように、面積率がほぼ100%となり、左右均等で綺麗な形状であった。これに対し、追い抜き加工で形成されたプレス成形品の断面は、図20(b)に示すように、面積率が低く転びが発生しており、歪な形状となった。
(試験例6)
上記の試験例5のように製造されて、バリ面の単一の表面粗さからなる表面部分の、ダレ面に対する傾斜角度が0°〜20°の範囲内であったプレス成形品と、当該傾斜角度が30°以上であったプレス成形品のそれぞれについて、その後の次工程で図21に示すように、狭幅部の一端部を樹脂品に埋め込んで90°折り曲げる加工を行った。その結果、表5に記載したように、傾斜角度が0°〜20°の範囲内であったものは、寸法規格内でばらつきが小さく、側面の90°折り曲げた箇所も安定していた。一方、傾斜角度が30°以上であったものは、振れが大きく、側面の90°折り曲げた箇所もばらつきが大きくなった。
(試験例7)
図22に示すように、厚みtが0.2mmで、幅wが0.14と0.32の異なる二種類の成形品を、補強リブがないパンチで繰り返し製造した。その結果を表6に示す。
w/tが1.6である場合は、連続して300万ショットの打ち抜きでもパンチが破損しなかったが、w/tが0.7である場合は、連続運転の直後にパンチが破損した。
1、1a〜1e、31、41、51 パンチ構造
2、32、42、52 パンチ先端部
3、4、33、34、43、44、53、54 狭幅形状
5、35、45、55 連結形状
6、6a、6b、36、46、56 補強リブ
21、71、81、91、101 プレス成形品
22、23、72、73、82、83、92、93、102、103 狭幅部
24、74、94、104 連結部
75 ダレ面
76 バリ面
61 金属板
62 半製品
63 凸部
T パンチ構造の先端面
S パンチ構造の側面
w 狭幅部の幅
w1 二次打抜き面が存在する箇所での狭幅部の幅
t 狭幅部の厚み
C1、C2 クラック
Lr 補強リブの長さ
Wr 補強リブの幅
Hr 補強リブの高さ
Sp1 一次打抜き箇所
Sp2 二次打抜き箇所
Fp1 一次打抜き面
Fp2 二次打抜き面
Mr リブ用マッチング
AR バリ面の大きいほうの表面部分の面積率
RL 基準線
Bp1、Bp2 境界点

Claims (20)

  1. 厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部を含むプレス成形品を打ち抜くべく、プレス金型本体から突出させて配置されるパンチ構造であって、プレス成形品の前記狭幅部の平面形状に対応する狭幅形状を少なくとも一部に含む先端面を備えたパンチ先端部を有し、
    互いに離隔して並んで位置する二本の狭幅部と前記狭幅部を相互に連結する連結部とを含むプレス成形品を打ち抜くパンチ構造であり、前記パンチ先端部が、前記プレス成形品の前記狭幅部及び前記連結部の平面形状に対応する狭幅形状及び連結形状を少なくとも一部に含む先端面を備え、
    パンチ先端部の側面の一部に、当該パンチ構造の突出方向に延びる補強リブが設けられ
    前記補強リブが、前記パンチ先端部の前記狭幅形状の、前記連結形状から離れた端部に位置してなる、プレス金型のパンチ構造。
  2. 前記狭幅形状の少なくとも一個の前記端部で、前記補強リブが、該狭幅形状を隔てた両側面のそれぞれに設けられてなる請求項に記載のパンチ構造。
  3. 前記補強リブが、パンチ先端部の先端面から前記突出方向に、前記狭幅部の厚みtの3倍〜50倍の長さにわたって連なって設けられてなる請求項1又は2に記載のパンチ構造。
  4. 前記補強リブが、矩形の横断面形状を有してなる請求項1〜のいずれか一項に記載のパンチ構造。
  5. 前記補強リブの横断面で、前記補強リブの、前記狭幅形状の側縁に平行な幅が、狭幅部の幅wに対する比で表して、0.3〜4である請求項に記載のパンチ構造。
  6. 前記補強リブの横断面で、前記補強リブの、前記狭幅形状の側縁に直交する高さが、狭幅部の幅wに対する比で表して、0.3〜4である請求項又はに記載のパンチ構造。
  7. 前記補強リブが、前記突出方向で該補強リブの全体にわたって、一定の横断形状を有してなる請求項1〜のいずれか一項に記載のパンチ構造。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載のパンチ構造を有するプレス金型。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載のパンチ構造を有するプレス金型を用いて、金属板を打ち抜いてプレス成形品を製造する、プレス成形品の製造方法。
  10. 金属板に対し、前段打抜き加工および、その後の後段打抜き加工を含む複数段階の打抜き加工を順次に施し、
    前段打抜き加工もしくは後段打抜き加工のいずれか一方の打抜き加工で、パンチ先端部に前記補強リブを設けた前記パンチ構造を用いて一次打抜き箇所を形成し、他方の打抜き加工で、前記一次打抜き箇所に交差させて前記補強リブが貫通する箇所を含めて打ち抜き、二次打抜き箇所を形成する、請求項に記載のプレス成形品の製造方法。
  11. 二次打抜き箇所を形成する他方の打抜き加工を前段打抜き加工とし、一次打抜き箇所を形成する一方の打抜き加工を後段打抜き加工とする、請求項10に記載のプレス成形品の製造方法。
  12. 厚みtに対する幅wの比(w/t)が1.5以下である狭幅部を含み、前記狭幅部の周囲の側面が、プレスの打抜き面になるプレス成形品であって、
    前記狭幅部の側面が、一次打抜き面と、前記一次打抜き面とは表面性状が異なる二次打抜き面とを有し、
    前記狭幅部の側面一次打抜き面二次打抜き面との間の遷移位置に、切りつなぎ形状のリブ用マッチングが形成されてなるプレス成形品。
  13. 互いに離隔して並んで位置する二本の前記狭幅部と、前記狭幅部を相互に連結する連結部とを含み、前記狭幅部および連結部の周囲の側面が、プレスの打抜き面になる請求項12に記載のプレス成形品。
  14. 前記二次打抜き面が、前記狭幅部の、前記連結部から離れた端部の側面に位置してなる請求項13に記載のプレス成形品。
  15. 前記狭幅部の少なくとも一個の前記端部で、前記二次打抜き面が、該狭幅部の両側面のそれぞれに設けられてなる請求項14に記載のプレス成形品。
  16. 前記二次打抜き面が、一次打抜き面から窪んで形成されてなる請求項1215のいずれか一項に記載のプレス成形品。
  17. 前記二次打抜き面の窪み量が、前記狭幅部の幅方向に沿って測って、前記狭幅部の幅wに対して10%〜20%である請求項16に記載のプレス成形品。
  18. 前記二次打抜き面が形成された箇所での前記狭幅部の厚みtに対する幅w1の比(w1/t)が、0.5〜1.5である請求項1217のいずれか一項に記載のプレス成形品。
  19. 当該プレス成形品がダレ面とバリ面を有し、横断面で、バリ面の、ダレ面に対して平行なもしくは右下がりに傾斜する表面部分及び右上がりに傾斜する表面部分のうちの大きいほうの表面部分の面積率が90%以上である請求項1218のいずれか一項に記載のプレス成形品。
  20. 横断面で、大きいほうの前記表面部分の、ダレ面に対する傾斜角度が、0°〜20°の範囲内である請求項19に記載のプレス成形品。
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