以下、図面を参照して、実施形態に係るX線CT装置を説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて第1の実施形態に係るX線CT装置100の構成の一例を説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CT装置100は、架台110と、寝台装置120と、コンソール130とを備える。
架台110は、被検体P(被写体)にX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール130に出力する装置であり、X線照射制御回路111と、X線発生装置112と、検出器113と、回転フレーム114と、架台駆動回路115とを有する。また、検出器113は、X線検出器113aと、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)113bとを有する。
回転フレーム114は、X線発生装置112とX線検出器113aとを被検体Pを挟んで対向するように支持し、架台駆動回路115によって被検体Pを中心した円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。X線照射制御回路111は、図示しない高電圧発生器を制御して、X線管112aに高電圧を供給する。ここで、X線照射制御回路111は、スキャン制御回路133による制御の下、X線管112aに供給する管電流値を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。また、X線照射制御回路111は、ウェッジ112bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路111は、コリメータ112cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。
X線発生装置112は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置であり、X線管112aと、ウェッジ112bと、コリメータ112cとを有する。X線管112aは、X線照射制御回路111による制御のもと図示しない高電圧発生器から供給される高電圧を用いてX線を発生する真空管であり、回転フレーム114の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。ウェッジ112bは、X線照射制御回路111の制御により、X線管112aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ112bは、X線管112aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管112aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。なお、ウェッジ112bは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
コリメータ112cは、X線照射制御回路111の制御により、ウェッジ112bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。架台駆動回路115は、回転フレーム114を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置112とX線検出器113aとを旋回させる。X線検出器113aは、被検体Pを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が、架台110が非チルト時の状態における回転フレーム114の回転中心軸方向(図1に示すZ軸方向)に沿って複数列配列される。
データ収集回路113bは、DASであり、X線検出器113aが検出したX線の検出データから、CT投影データを収集する。例えば、データ収集回路113bは、X線検出器113aにより検出されたX線強度分布データに対して、所定のゲインでの増幅処理や、A/D変換処理、チャンネル間の感度補正処理等を行なってCT投影データを生成し、生成したCT投影データをコンソール130に送信する。例えば、回転フレーム114の回転中に、X線管112aからX線が連続曝射されている場合、データ収集回路113bは、全周囲分(360度分)のCT投影データ群を収集する。また、データ収集回路113bは、収集した各CT投影データに管球位置を対応付けて、コンソール130に送信する。管球位置は、CT投影データの投影方向を示す情報となる。
寝台装置120は、被検体Pを載せる装置であり、寝台駆動装置121と、寝台122とを有する。寝台駆動装置121は、寝台122をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム114内に移動させる。寝台122は、被検体Pが載置される板(天板)である。なお、本実施形態では、架台110と寝台122との相対位置の変化が寝台122の位置を制御することによって実現される場合について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、架台110が自走式である場合、架台110の走行を制御することによって、架台110と寝台122との相対位置の変化が実現される。
コンソール130は、操作者によるX線CT装置100の操作を受け付けるとともに、架台110によって収集されたCT投影データを用いてCT画像データ(ボリュームデータ)を再構成する装置である。コンソール130は、図1に示すように、入力回路131と、ディスプレイ132と、スキャン制御回路133と、前処理回路134と、記憶回路135と、処理回路136とを有する。
入力回路131は、X線CT装置100の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路136に転送する。ディスプレイ132は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路136による制御のもと、CT画像データの一部を操作者に表示したり、入力回路131を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
スキャン制御回路133は、処理回路136による制御のもと、X線照射制御回路111、架台駆動回路115、データ収集回路113b及び寝台駆動装置121の動作を制御することで、架台110におけるCT投影データの収集処理を制御する。前処理回路134は、データ収集回路113bによって生成されたCT投影データに対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みのCT投影データを生成して、記憶回路135に格納する。
記憶回路135は、処理回路136が被検体Pの厚さを推定する際に用いる標準体型情報や、被検体に係る情報を記憶する。なお、標準体型情報及び被検体に係る情報については後述する。また、記憶回路135は、前処理回路134により生成された補正済みのCT投影データ、及び、処理回路136によって再構成されたCT画像データを記憶する。
処理回路136は、再構成機能136aと、推定機能136bと、調整機能136cと、制御機能136dとを実行する。図1における実施形態では、構成要素の再構成機能136a、推定機能136b、調整機能136c及び制御機能136dにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路135へ記録されている。処理回路136はプログラムを記憶回路135から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路136は、図1の処理回路136に示された各機能を有することとなる。なお、図1においては単一の処理回路にて、再構成機能136a、推定機能136b、調整機能136c及び制御機能136dにて行われる処理機能が実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))などの回路を意味する。プロセッサは記憶回路135に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路135にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
第1の実施形態における再構成機能136aは、特許請求の範囲における再構成部の一例である。また、第1の実施形態における推定機能136bは、特許請求の範囲における推定部の一例である。また、第1の実施形態における調整機能136cは、特許請求の範囲における調整部の一例である。
処理回路136は、X線CT装置100による処理の全体を制御する。即ち、処理回路136は、架台110、寝台装置120及びコンソール130の動作を制御することによって、X線CT装置100の全体制御を行う。例えば、処理回路136は、スキャン制御回路133を制御して架台110で行なわれるCTスキャンを制御する。また、例えば、処理回路136は、CTスキャンにより収集したCT投影データを用いて、CT画像データを再構成する。
ここで、再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。あるいは、処理回路136は、逐次近似法を用いて、CT画像データを再構成することもできる。そして、処理回路136は、再構成したCT画像データを記憶回路135に格納する。
また、処理回路136は、再構成したCT画像データに対し各種画像処理を行って表示用のCT画像を生成し、記憶回路135に格納する。また、処理回路136は、記憶回路135が記憶する表示用のCT画像をディスプレイ132に表示するように制御する。また、処理回路136は、CTスキャンに先立って、被検体Pの厚さを推定し、推定した厚さとX線管112aの管電流値とに基づいて、検出器113の設定を調整する。なお、処理回路136による検出器113の設定の調整については後述する。
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置100の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、位置決め画像が収集されない場合においても検出器113の設定を最適化する。
ここでまず、位置決め画像が収集される場合におけるX線CT装置100による被検体Pの撮影の一連の流れについて、図2Aを用いて説明する。図2Aは、第1の実施形態に係る撮影の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
図2Aに示すように、被検体Pが寝台122上に整位された後、X線CT装置100は、被検体Pに対してCTスキャンを実行し、位置決め画像を収集する。次に、X線CT装置100は、図2Aに示すように、収集した位置決め画像に基づいて被検体Pの厚さを算出し、被検体Pの厚さから、曝射mA(X線管112aの管電流値)を算出する。例えば、X線CT装置100は、AEC(Auto Exposure Control)により、被検体Pの厚さから、スキャン範囲に曝射するX線の曝射mAを算出する。
次に、X線CT装置100は、図2Aに示すように、曝射mAと被検体Pの厚さとに基づいて、ハード(検出器113)の設定を最適化する。例えば、X線CT装置100は、検出器113の設定として、検出器113がX線に由来するデータを増幅して収集する際のゲインを調整する。そして、X線CT装置100は、設定が最適化された検出器113を用いて、被検体Pの撮影を実行する。
なお、図2Aにおける被検体Pの厚さとは、撮影対象となる被検体Pの部位の厚さである。言い換えると、被検体Pの厚さとは、X線管112aから照射されたX線が透過する部位の厚さである。例えば、被検体Pの厚さが大きい場合、X線管112aから照射されて被検体Pを透過したX線は、大きく減衰した上で検出器113に到達することとなる。一方で、被検体Pの厚さが小さい場合、X線はそれほど減衰せずに検出器113に到達することとなる。即ち、一定の管電流値においてX線の照射を行う場合であっても、被検体Pの厚さによって、検出器113が検出するX線の強度は変化する。そこで、X線CT装置100は、被検体Pの厚さに基づいて、検出器113が検出するX線の強度を推定し、検出器113の設定の最適化を図る。
ここで、検出器113の設定の最適化について、図2Bを用いて詳細に説明する。図2Bは、第1の実施形態に係る検出器113の設定の調整を説明するための図である。図2Bに示すグラフは、位置決め画像に基づいて算出した管電流値でX線管112aから照射され、位置決め画像に基づいて算出した厚さの被検体Pを透過したX線を、X線検出器113aの各X線検出素子が検出し、データ収集回路113bが所定のゲインで増幅して収集した場合のカウント値の分布を、X線CT装置100が予測したものである。
図2Bの横軸は、チャンネル数(ch数)を示し、X線検出器113aが有する各X線検出素子に対応する。即ち、横軸は、X線検出器113a上での位置座標を示す。また、図2Bにおける縦軸の数字は、カウント値を示す。ここで、カウント値は、データ収集回路113bが所定のゲインで増幅した後の値である。例えば、データ収集回路113bにおけるゲインの設定により、図2Bに示すグラフの最大値(Peak)は変化する。
なお、図2Bにおいては、被検体Pの位置を概念的に表示する。即ち、図2Bは、横軸に示す位置のうち、被検体Pに対応する位置のX線検出素子において、被検体Pを透過したX線が検出されることを示す。また、図2Bのグラフの実線部分は、カウント値の予測値を示す。また、図2Bのグラフの破線部分は、被検体Pが撮影視野(Field Of View; FOV)にいないことを想定する場合におけるカウント値の予測値を、補足的に示すものである。
なお、図2Bは、被検体Pが、スキャン時のFOVの中心に位置する場合を想定して、カウント値の分布を予測したものである。ここで、X線CT装置100は、被検体PのFOVにおける位置、及び、位置決め画像に基づいて算出した被検体Pの厚さに基づいて、FOVにおける被検体Pの厚さの分布を算出することができる。そして、X線CT装置100は、FOVにおける被検体Pの厚さの分布に基づいて、図2Bに示すように、位置決め画像に基づいて算出した管電流値でX線を照射した際に検出器113が収集するカウント値の分布を算出することができる。
図2Bにおいては、グラフの破線部分の一部がオーバーフロー(OverFlow; OF)する領域に入っている。ここで、オーバーフローとは、カウント値が、データ収集回路113bが収集することのできる範囲(ダイナミックレンジ)を超えることをいう。図2Bにおいては、ダイナミックレンジは「0」から「50000」の範囲となっており、カウント値が「50000」を超えるとオーバーフローを生じる。オーバーフローを生じた場合、ダイナミックレンジの範囲外のカウント値についてはその大小を評価することができないため、再構成されるCT画像データは、オーバーフローを生じた範囲において、例えば一色(白色等)で表現される。
なお、グラフの破線部分は被検体PがFOVにいない場合のカウント値であり、FOVに被検体Pが含まれる場合、被検体Pの厚さに応じてX線は減衰する。ここでX線CT装置100は、位置決め画像に基づいて取得した被検体Pの厚さ、及び、被検体Pの位置(FOVの中心)に基づいて、FOVにおける被検体Pの厚さの分布を算出し、算出した厚さの分布に基づいてX線の減衰を予測し、スキャン時のカウント値が図2Bのグラフの実線部分の形状になることを算出することができる。
図2Bのグラフの実線部分に示すように、X線CT装置100は、被検体Pの厚さの分布に基づいてスキャン時のカウント値を算出し、最大値(Peak)がオーバーフロー領域に入らないように、検出器113のゲインを調整する。また、X線CT装置100は、図2Bに示すように、カウント値の最大値が、ダイナミックレンジの上限値「50000」に近い値となるように、ゲインを調整する。
ここで、X線CT装置100は、カウント値の最大値がオーバーフロー領域に入らないようにしつつ、カウント値がより大きくなるような条件で撮影を行うことにより、再構成されるCT画像データにおいて、回路ノイズによるアーチファクトを低減することができる。なお、回路ノイズとは、種々のデータ処理において発生するノイズであり、カウント値が小さいほど、回路ノイズの影響が相対的に大きくなる。即ち、X線CT装置100は、オーバーフローを回避しつつ、回路ノイズの影響を最小化し、検出器113の設定を最適化する。
上述したように、X線CT装置100は、被検体Pの厚さと被検体Pの位置とに基づいて、FOVにおける被検体Pの厚さの分布を算出することにより、被検体Pの撮影時におけるカウント値の最大値を推定し、推定した最大値がオーバーフロー領域に入らないようにしつつ、ゲインを調整して回路ノイズの影響を低減する。そして、X線CT装置100は、設定を最適化した検出器113を用いて、被検体Pの撮影を実行する。
しかしながら、臨床の場においては、位置決め画像が収集されず、被検体Pの厚さが不明な場合がある。例えば、頭部や四肢の撮影においては、部位の個人差が小さく、被写体サイズとしても小さいことから、位置決め画像が収集されない場合がある。ここで、位置決め画像が収集されない場合におけるX線CT装置100による被検体Pの撮影の一連の流れについて、図3Aを用いて説明する。図3Aは、第1の実施形態に係る撮影の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
図3Aに示すように、まず、被検体Pが寝台122上に整位される。ここで、位置決め画像が収集されない場合においても、曝射mA(X線管112aの管電流値)については、被検体Pを目視した操作者が、被検体Pのおおよそのサイズに基づいて入力することができる。そして、X線CT装置100は、検出器113を用いて、被検体Pの撮影を実行する。
ここで、位置決め画像が収集されず、被検体Pの厚さの情報が利用できない場合における検出器113の設定の調整について、図3Bを用いて説明する。図3Bは、第1の実施形態に係る検出器113の設定の調整を説明するための図である。ここで、図3Bに示すグラフは、入力された管電流値でX線管112aから照射されたX線を、X線検出器113aの各X線検出素子が検出し、データ収集回路113bが所定のゲインで増幅して収集した場合のカウント値の分布を示す。また、図3Bの横軸は、ch数を示し、X線検出器113aが有する各X線検出素子に対応する。即ち、横軸は、X線検出器113a上での位置座標を示す。また、図3Bにおける縦軸は、データ収集回路113bが所定のゲインで増幅した後のカウント値を示す。
図3Bに示す場合、X線CT装置100は、被検体Pの厚さの情報が利用できないため、FOVに被検体Pが含まれず、FOVの全体が空気であること(all air)を想定して、カウント値の分布を予測し、ゲインの調整を行う。即ち、X線CT装置100は、X線検出器113aの中心がカウント値の最大値(Peak)となる図3Bのグラフにおいて、最大値がオーバーフロー領域に入らないようにゲインの調整を行う。例えば、図3Bに示すように、グラフの一部がオーバーフロー領域に入っている場合、X線CT装置100は、所定のゲインを調整し、データの増幅率を低くして、カウント値の最大値がオーバーフロー領域に入らないように検出器113の設定を変更する。
しかしながら、実際のスキャンでは、FOVに被検体Pが含まれ、被検体Pの厚さに応じてX線は減衰する。即ち、X線CT装置100は、被検体Pの厚さの情報が利用できない場合、X線の減衰を考慮することなくゲインを調整するため、被検体Pの厚さに基づいてゲインを調整する場合と比較し、データの増幅率を低く設定することとなる。そして、データの増幅率が低く設定されることで、オーバーフローは回避できるものの、再構成されるCT画像データに回路ノイズによるアーチファクトが生じる場合がある。言い換えると、X線CT装置100は、被検体Pの厚さの情報が利用できない場合、検出器113の設定を最適化することができない。
そこで、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、位置決め画像が収集されない場合においては、被検体Pの厚さを推定し、推定した厚さを用いて、検出器113の設定を最適化する。まず、位置決め画像が収集されず、被検体Pの厚さを推定する場合におけるX線CT装置100による被検体Pの撮影の一連の流れについて、図4Aを用いて説明する。図4Aは、第1の実施形態に係る撮影の一連の流れを説明するためのフローチャートである。なお、以下では、位置決め画像が収集されない場合について説明する。
図4Aに示すように、被検体Pが寝台122上に整位された後、X線CT装置100は、被検体Pの厚さを推定し、曝射mA(X線管112aの管電流値)の入力を操作者から受け付ける。次に、X線CT装置100は、図4Aに示すように、曝射mAと被検体Pの厚さとに基づいて、ハード(検出器113)の設定を最適化する。そして、X線CT装置100は、設定が最適化された検出器113を用いて、被検体Pの撮影を実行する。
上述したように、X線CT装置100は、位置決め画像が収集されない場合においても、被検体Pの厚さを推定することにより、検出器113の設定を最適化する。即ち、X線CT装置100は、位置決め画像が収集されない場合においても、位置決め画像に基づいて算出する被検体Pの厚さに代え、推定した被検体Pの厚さを用いることにより、位置決め画像が収集される場合と同様に検出器113の設定を調整することができる。以下、被検体Pの厚さを推定して検出器113の設定を最適化するためにX線CT装置100が行う処理について詳細に説明する。
まず、推定機能136bは、被検体Pの厚さを推定する。具体的には、推定機能136bは、標準体型情報に基づいて、被検体Pの厚さを推定する。ここで、標準体型情報とは、X線CT装置100が予め保持している情報、あるいは予め保持している情報を加工して得られる情報であり、各部位についての標準的な寸法が設定されたものである。例えば、標準体型情報は、三次元の患者モデルである。
例えば、推定機能136bは、記憶回路135に記憶されたモデルデータから、被検体Pの体型に合わせた患者モデルを取得する。ここで、モデルデータについて説明する。モデルデータは、年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの体格などに関わるパラメータに関する複数の組み合わせに応じた標準的な体格などを有する人体について、実際にCT装置で撮影した画像として予め生成されて、記憶回路135に格納される。
すなわち、記憶回路135は、上述したパラメータの組み合わせに応じた複数のモデルデータを記憶する。そして、推定機能136bは、上述したパラメータと、被検体Pに係る情報とを比較し、被検体Pと体格が類似するモデルデータを、患者モデルとして記憶回路135から読み出す。なお、上述したパラメータはあくまで例示であり、上記例以外にも、例えば、BMI(Body Mass Index)や胸囲、座高など、種々のパラメータを使用することができる。
また、推定機能136bは、撮影部位の情報を取得する。例えば、推定機能136bは、撮影部位の設定の入力を、入力回路131を介して操作者から受け付ける。次に、推定機能136bは、読み出した患者モデルを用いて、被検体Pの厚さを推定する。例えば、被検体Pの撮影部位が頭部である場合、推定機能136bは、患者モデルから頭部の厚さの値を取得し、取得した値を被検体Pの厚さと推定する。
なお、推定機能136bは、患者モデルを補正し、補正した患者モデルを用いて被検体Pの厚さを推定する場合であってもよい。例えば、推定機能136bは、読み出した患者モデルにおけるパラメータと、被検体Pに係る情報との差に応じて、患者モデルを補正する。一例を挙げると、推定機能136bは、読み出した患者モデルのBMIと、被検体PのBMIとが一致するように、患者モデルを拡大又は縮小する。そして、推定機能136bは、拡大又は縮小した後の患者モデルから撮影部位の厚さの値を取得し、取得した値を被検体Pの厚さと推定することができる。
なお、推定機能136bは、被検体Pに係る情報を、RIS(Radiology Information System)やHIS(Hospital Information System)等の種々のシステムを通じて取得することができる。また、被検体Pに係る情報が記憶回路135に予め格納される場合、推定機能136bは、被検体Pに係る情報を記憶回路135から読み出すことができる。あるいは、推定機能136bは、入力回路131を介して、被検体Pに係る情報の入力を受け付ける場合であってもよい。
次に、調整機能136cは、推定機能136bが推定した被検体Pの厚さと、X線管112aの管電流値とに基づいて、検出器113の設定を調整する。ここで、推定機能136bが推定した被検体Pの厚さに基づく検出器113の設定の調整について、図4Bを用いて説明する。図4Bは、第1の実施形態に係る検出器113の設定の調整を説明するための図である。ここで、図4Bに示すグラフは、所定の管電流値でX線管112aから照射されたX線を、X線検出器113aの各X線検出素子が検出し、データ収集回路113bが所定のゲインで増幅して収集した場合のカウント値の分布を示す。また、図4Bの横軸は、ch数を示し、X線検出器113aが有する各X線検出素子に対応する。即ち、横軸は、X線検出器113a上での位置座標を示す。また、図4Bにおける縦軸は、データ収集回路113bが所定のゲインで増幅した後のカウント値を示す。なお、以下では、X線管112aの管電流値は、一定の値であるものとして説明する。例えば、X線管112aの管電流値は、予め設定される固定値や、入力回路131を介して操作者が入力する値である。
例えば、調整機能136cは、まず、被検体Pがスキャン時にFOVの中心に位置するものとして、推定機能136bが推定した被検体Pの厚さから、FOVにおける被検体Pの厚さの分布を算出する。次に、調整機能136cは、算出した厚さの分布に基づいて、図4Bのグラフの実線部分に示すように、カウント値の分布を推定する。また、調整機能136cは、カウント値の最大値がオーバーフロー領域に入らない範囲において、データ収集回路113bがデータを収集する際の増幅率が大きくなるようにゲインを調整する。そして、調整機能136cは、オーバーフローを回避し、かつ回路ノイズによるアーチファクトが低減されるように、検出器113の設定を最適化する。
あるいは、調整機能136cは、予めデータの増幅率が設定された複数のゲインの中から、カウント値がオーバーフローを生じず、かつ回路ノイズによるアーチファクトが発生しないゲインを選択することもできる。例えば、調整機能136cは、まず、増幅率が設定された複数のゲインのそれぞれについて、オーバーフローを生じずにデータを収集することができる被検体Pの厚さの下限値、及び、回路ノイズによるアーチファクトを生じずにCT画像データを取得することのできる被検体Pの厚さの上限値を、X線管112aの管電流値に応じて決定する。そして、調整機能136cは、推定機能136bが推定した被検体Pの厚さと、各ゲインについて決定した上限値及び下限値とを比較し、オーバーフロー及び回路ノイズによるアーチファクトの双方を回避することのできるゲインを選択する。なお、調整機能136cは、オーバーフロー及び回路ノイズによるアーチファクトの双方を回避することのできるゲインが複数ある場合には、オーバーフローを生じる可能性が最も小さいゲイン、又は、回路ノイズの影響が最も小さいゲインを選択する。あるいは、調整機能136cは、オーバーフロー及び回路ノイズによるアーチファクトの双方を回避することのできるゲインが複数ある場合、複数のゲインのうちいずれを選択するかについて、操作者からの選択操作を受け付ける。
なお、被検体Pの断面が円形でない場合、被検体Pの厚さは、図5A及び図5Bに示すように、X線の照射方向によって変化する。ここで、図5A及び図5Bは、第1の実施形態に係る被検体Pの厚さを説明するための図である。図5A及び図5Bに示すように、スキャン時のX線発生装置112は、回転フレーム114の回転にともなって、被検体Pの周囲を移動する。ここで、推定機能136bは、X線発生装置112の位置ごとに、即ち被検体Pに対しX線が照射される角度ごとに、被検体Pの厚さを推定する。
例えば、断面形状が楕円状である被検体Pと、X線発生装置112との位置関係が図5Aに示す状態である場合、推定機能136bは、図5Aに示すように、被検体Pの断面の短軸に相当する長さを被検体Pの厚さとする。また、例えば、被検体PとX線発生装置112との位置関係が図5Bに示す状態である場合、推定機能136bは、図5Bに示すように、被検体Pの断面の長軸に相当する長さを被検体Pの厚さとする。そして、調整機能136cは、X線の照射角度ごとの被検体Pの厚さと、所定の管電流値とに基づいて、X線の照射角度ごとに、検出器113の設定を調整することができる。
更に、上述した例では、X線管112aの管電流値は一定の値であるものとして説明したが、図5A及び図5Bに示すように、推定機能136bがX線の照射角度ごとに厚さを推定する場合、管電流値は、X線の照射角度ごとに異なるように設定される場合であってもよい。例えば、被検体PとX線発生装置112との位置関係が図5Aに示す状態である場合、図5Bの場合と比較して、照射されるX線が透過する被検体Pの厚さは小さいため、被検体Pを透過することによるX線の減衰は小さい。従って、図5Aにおいては、照射されるX線量が小さくても十分なX線量が検出器113に到達するため、X線管112aの管電流値は、小さな値に設定される。また、例えば、被検体PとX線発生装置112との位置関係が図5Bに示す状態である場合、図5Aの場合と比較して、照射されるX線が透過する被検体Pの厚さが大きいため、被検体Pを透過することにより、X線は大きく減衰する。従って、図5Bにおいては、照射されるX線量を大きくしなければ十分なX線量が検出器113に到達しないため、X線管112aの管電流値は、大きな値に設定される。そして、調整機能136cは、X線の照射角度ごとの被検体Pの厚さと、X線の照射角度ごとに異なるように設定される管電流値とに基づいて、X線の照射角度ごとに、検出器113の設定を調整する。
推定機能136bによる被検体Pの厚さの推定、及び、調整機能136cによる検出器113の設定の調整の後、X線CT装置100は、撮影及び再構成処理を実行する。具体的には、制御機能136dは、撮影の開始要求を受け付けると、スキャン制御回路133を制御することによって、X線照射制御回路111、架台駆動回路115、データ収集回路113b及び寝台駆動装置121の動作を制御し、架台110における被検体Pの撮影を実行する。そして、X線管112aから照射され被検体Pを透過したX線をX線検出器113aが検出し、検出したX線に由来するCT投影データをデータ収集回路113bが収集する。更に、再構成機能136aは、データ収集回路113bが収集したCT投影データを再構成して、CT画像データを取得する。
次に、X線CT装置100による処理の手順の一例を、図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係るX線CT装置100の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS160は、再構成機能136aに対応するステップである。ステップS120は、推定機能136bに対応するステップである。ステップS130は、調整機能136cに対応するステップである。ステップS110、ステップS140、ステップS150及びステップS170は、制御機能136dに対応するステップである。
まず、処理回路136は、操作者から検査開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS110)。検査開始要求を受け付けない場合(ステップS110否定)、処理回路136は待機状態となる。一方、検査開始要求を受け付けた場合(ステップS110肯定)、処理回路136は、被検体Pの厚さを推定し(ステップS120)、推定した被検体Pの厚さと、X線管112aの管電流値とから、検出器113の設定を調整する(ステップS130)。
ここで処理回路136は、操作者から撮影開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS140)。撮影開始要求を受け付けない場合(ステップS140否定)、処理回路136は待機状態となる。一方、撮影開始要求を受け付けた場合(ステップS140肯定)、処理回路136は、調整された検出器113の設定において、被検体Pを透過したX線の検出及びCT投影データの収集を実行する(ステップS150)。
そして、処理回路136は、被検体Pから収集したCT投影データを再構成してCT画像データを取得し(ステップS160)、操作者から終了コマンドを受け付けたか否かを判定する(ステップS170)。終了コマンドを受け付けない場合(ステップS170否定)、処理回路136は待機状態となる。一方、終了コマンドを受け付けた場合(ステップS170肯定)、処理回路136は処理を終了する。
なお、処理回路136は、ステップS130において、検出器113の設定を最適化できない場合、その旨を操作者に通知する場合であってもよい。例えば、処理回路136は、ゲインをどのように調整しても、オーバーフロー及び回路ノイズによるアーチファクトのうち少なくとも一方が生じてしまう旨を操作者に通知することができる。この場合、処理回路136は、ステップS130の後に、操作者から、X線管112aの管電流値の設定を受付け、再度、ステップS130に移行する場合であってもよい。
上述したように、第1の実施形態によれば、検出器113は、X線管112aから照射され被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線に由来するデータを収集する。また、再構成機能136aは、データを再構成してCT画像データを取得する。また、推定機能136bは、被検体Pの厚さを推定する。また、調整機能136cは、推定機能136bが推定した被検体Pの厚さと、X線管112aの管電流値とに基づいて、検出器113の設定を調整する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、位置決め画像が収集されない場合においても検出器113の設定を最適化することができる。
また、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、FOVにおける被検体Pの厚さの分布に基づいて、所定の管電流値でX線を照射した際に検出器113が収集するカウント値の最大値を推定し、推定した最大値がオーバーフロー領域に入らないように検出器113の所定のゲインを調整する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、オーバーフローを回避しつつもカウント値が大きくなるようゲインを設定し、回路ノイズによるアーチファクトの発生を抑制したCT画像データを取得することができる。
また、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、位置決め画像を収集するためのスキャンを行うことなく、検出器113の設定を最適化した上でCT画像データを取得する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置100は、被検体Pの被曝量を低減することができる。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、スキャン時における被検体PがFOV中心に位置するものとして、検出器113の設定を調整する場合について説明した。これに対して第2の実施形態では、被検体PのFOV中心からのずれ量(オフセット量)を考慮して、検出器113の設定を調整する場合について説明する。なお、第2の実施形態に係るX線CT装置は、図1に示した第1の実施形態に係るX線CT装置100と同様の構成を有し、調整機能136cにおける処理が一部相違する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
以下、図7を用いて、第2の実施形態に係る調整機能136cについて説明する。図7は、第2の実施形態に係る検出器113の設定の調整を説明するための図である。図7の横軸は、ch数を示し、X線検出器113aが有する各X線検出素子に対応する。即ち、横軸は、X線検出器113a上での位置座標を示す。また、図7における縦軸の数字はカウント値を示す。また、図7は、X線の照射範囲に被検体Pがいる条件において、所定の管電流値でX線管112aから照射され、推定機能136bが推定した厚さの被検体Pを透過したX線を、X線検出器113aの各X線検出素子が検出し、データ収集回路113bが所定のゲインで増幅して収集した場合のカウント値の分布を、調整機能136cが予測したものである。
まず、被検体Pがいない場合、カウント値が最大値(Peak)となる位置は、FOV中心に対応する。ここで、スキャン時における被検体Pの位置は、スキャン内容によって、FOV中心の位置からずれる場合がある。例えば、右肺についての検査を行う場合において、右肺について高画質のCT画像データを取得するためには、右肺がFOVの中心となるようにしてスキャンが行われる。この場合、注目部位である右肺は被検体Pの体軸からずれた位置にあるため、スキャン時における被検体P(胸部)の中心の位置と、FOV中心の位置とがずれることとなる。
カウント値の最大値は、このようなFOV中心からの被検体Pの位置のずれに応じて変化する。例えば、被検体PがFOVの中心に位置する場合と比較し、図7に示すように、被検体PがFOVの中心からずれて位置する場合、カウント値の最大値は大きくなる。そこで、調整機能136cは、被検体Pの位置を算出し、算出した被検体Pの位置と、推定機能136bが推定した被検体Pの厚さとに基づいて、FOVにおける被検体Pの厚さの分布を算出する。そして、調整機能136cは、算出した被検体Pの厚さの分布に基づいて、カウント値の最大値を算出し、検出器113のゲインを調整する。
具体的には、まず、調整機能136cは、被検体Pが載置される寝台122の位置情報を取得する。なお、寝台122の位置情報とは、スキャン時における寝台122の架台110に対する位置を示す情報である。ここで、寝台122は、撮影計画に従い、制御機能136dによる制御のもとスキャン制御回路133が制御する寝台駆動装置121によって移動される。従って、調整機能136cは、寝台122のスキャン時における位置情報を、撮影計画に基づいて取得することができる。なお、調整機能136cは、寝台122の位置情報として、図1に示すY軸方向の位置情報のみを取得する場合であってもよいし、更にX軸方向やZ軸方向の位置情報を取得する場合であってもよい。
次に、調整機能136cは、寝台122の位置情報を用いて、被検体Pの位置を算出する。例えば、調整機能136cは、被検体Pが寝台122の略中央部に載置されるものとして、寝台122の移動量から、被検体Pの位置を算出する。例えば、調整機能136cは、寝台122のY軸方向の位置情報を用いて、被検体PのY軸方向の位置を算出する。また、例えば、調整機能136cは、寝台122のX軸方向及びZ軸方向の位置情報を用いて、被検体PのX軸方向及びZ軸方向の位置を算出することができる。
そして、調整機能136cは、被検体Pの位置及び厚さから、FOVにおける被検体Pの厚さの分布を取得する。ここで、図7においては、カウント値の最大値(Peak)がオーバーフロー領域に入っている。従って、図7におけるゲインの設定で撮影を実行するとオーバーフローを生じるため、調整機能136cは、図7に示すカウント値の最大値(Peak)がオーバーフロー領域に入らないように所定のゲインを調整し、データの増幅率を小さくする。
即ち、被検体Pの位置を算出することで、調整機能136cは、FOVにおける被検体Pの厚さの分布に基づいて、所定の管電流値でX線を照射した際に検出器113が収集するカウント値の最大値をより適切に推定し、推定した最大値がオーバーフロー領域に入らないように、検出器113の設定を調整する。そして、調整機能136cは、撮影時においてオーバーフローを生じないようにしつつ、再構成されるCT画像データの回路ノイズによるアーチファクトを低減する。
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置100による処理の手順の一例を、図8を用いて説明する。図8は、第2の実施形態に係るX線CT装置100の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS270は、再構成機能136aに対応するステップである。ステップS220は、推定機能136bに対応するステップである。ステップS230及びステップS240は、調整機能136cに対応するステップである。ステップS210、ステップS250、ステップS260及びステップS280は、制御機能136dに対応するステップである。
まず、処理回路136は、操作者から検査開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS210)。検査開始要求を受け付けない場合(ステップS210否定)、処理回路136は待機状態となる。一方、検査開始要求を受け付けた場合(ステップS210肯定)、処理回路136は、被検体Pの厚さを推定する(ステップS220)。次に、処理回路136は、被検体Pが載置される寝台122の位置情報を用いて、被検体Pの位置を算出する(ステップS230)。そして、処理回路136は、被検体Pの位置と、推定した被検体Pの厚さと、X線管112aの管電流値とから、検出器113の設定を調整する(ステップS240)。
ここで処理回路136は、操作者から撮影開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS250)。撮影開始要求を受け付けない場合(ステップS250否定)、処理回路136は待機状態となる。一方、撮影開始要求を受け付けた場合(ステップS250肯定)、処理回路136は、調整された検出器113の設定において、被検体Pを透過したX線の検出及びCT投影データの収集を実行する(ステップS260)。
そして、処理回路136は、被検体Pから収集したデータを再構成してCT画像データを取得し(ステップS270)、操作者から終了コマンドを受け付けたか否かを判定する(ステップS280)。終了コマンドを受け付けない場合(ステップS280否定)、処理回路136は待機状態となる。一方、終了コマンドを受け付けた場合(ステップS280肯定)、処理回路136は処理を終了する。
上述したように、第2の実施形態によれば、調整機能136cは、被検体Pが載置される寝台122の位置情報を用いて被検体Pの位置を算出し、算出した被検体Pの位置と、推定機能136bが推定した被検体Pの厚さとに基づいて、FOVにおける被検体Pの厚さの分布を算出し、算出した分布に基づいて、カウント値の最大値を推定し、推定した最大値がオーバーフロー領域に入らないようにゲインを調整する。従って、第2の実施形態に係るX線CT装置100は、被検体Pの位置のFOV中心からのオフセット量を考慮して、より適切に検出器113のゲインを調整し、オーバーフローを回避しつつ、回路ノイズによるアーチファクトの発生を抑制することができる。
(第3の実施形態)
上述した第1の実施形態では、標準体型情報に基づいて、被検体Pの厚さを推定する場合について説明した。これに対して第3の実施形態では、過去に撮像された被検体Pの医用画像に基づいて、被検体Pの厚さを推定する場合について説明する。なお、第3の実施形態に係るX線CT装置は、図1に示した第1の実施形態に係るX線CT装置100と同様の構成を有し、推定機能136bにおける処理が一部相違する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
まず、推定機能136bは、被検体Pの医用画像を取得する。例えば、推定機能136bは、被検体Pの医用画像として、CT画像や、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置により生成されるMRI画像、超音波診断装置により生成される超音波画像等の医用画像を取得することができる。なお、推定機能136bは、被検体Pの医用画像を、RIS(Radiology Information System)やHIS(Hospital Information System)等の種々のシステムを通じて取得することができる。あるいは、被検体Pの医用画像が記憶回路135に予め格納される場合、推定機能136bは、被検体Pの医用画像を、記憶回路135から読み出すことができる。
次に、推定機能136bは、過去に撮像された被検体Pの医用画像を用いて、被検体Pの厚さを推定する。例えば、被検体Pの撮影部位が頭部である場合、推定機能136bは、医用画像から頭部の厚さの値を取得し、取得した値を被検体Pの厚さと推定することができる。なお、推定機能136bは、被検体Pに係る情報を用いて医用画像を補正し、補正した医用画像を用いて被検体Pの厚さを推定する場合であってもよい。
上述したように、第3の実施形態によれば、推定機能136bは、過去に撮像された被検体Pの医用画像に基づいて、被検体Pの厚さを推定する。従って、第3の実施形態に係るX線CT装置100は、標準体型情報が利用できない場合であっても、位置決め画像を収集することなく、検出器113の設定を最適化することができる。
(第4の実施形態)
上述したように、推定機能136bは、被検体Pの厚さを推定することができる。ここで、被検体Pのスキャンは複数回実施される場合がある。例えば、1回目のスキャンで肺野を撮影し、2回目のスキャンで腹部を撮影する場合などである。第4の実施形態では、複数回の撮影が実行される場合において、2回目以降のスキャンにおける被検体Pの厚さを推定する場合について説明する。なお、第4の実施形態に係るX線CT装置は、図1に示した第1の実施形態に係るX線CT装置100と同様の構成を有し、再構成機能136a、推定機能136b及び調整機能136cにおける処理が一部相違する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
まず、推定機能136bは、上述した標準体型情報又は過去に撮像された被検体Pの医用画像に基づいて、1回目の撮影対象部位についての被検体Pの厚さを推定する。次に、推定した厚さに基づく検出器113の設定において、1回目のスキャンが実行され、被検体Pの1回目の撮影対象部位のCT画像データが再構成される。ここで、推定機能136bは、被検体Pの1回目の撮影対象部位のCT画像データを用いて、2回目以降の撮影対象部位の厚さを推定することができる。なお、以下では、1回目の撮影対象部位を第1の部位と記載し、2回目以降の撮影対象部位を第2の部位と記載する。
一例を挙げると、推定機能136bは、まず、1回目のスキャンによるCT画像データに基づいて第1の部位の厚さを取得する。次に、推定機能136bは、標準体型情報に基づいて推定した第1の部位の厚さと、CT画像データに基づいて取得した第1の部位の厚さとの比を算出する。そして、推定機能136bは、算出した比に応じて、標準体型情報に基づく第2の部位の厚さを補正し、第2の部位の厚さを推定することができる。
また、一例を挙げると、推定機能136bは、まず、1回目のスキャンによるCT画像データに基づいて、第1の部位「右手」の厚さを取得する。次に、推定機能136bは、被検体Pの右手の厚さと左手の厚さとは同程度であるものとして、第1の部位「右手」の厚さから、第2の部位「左手」の厚さを推定することができる。
次に、調整機能136cは、推定機能136bが推定した第2の部位の厚さと、X線管112aの管電流値とに基づいて、第2の部位を透過したX線に由来するデータを検出器113が収集する際の設定を調整する。そして、調整された検出器113の設定において、制御機能136dは、2回目のスキャンを実行し、再構成機能136aは、調整された検出器113の設定において収集されたCT投影データを再構成して、第2の部位のCT画像データを取得する。
上述したように、第4の実施形態によれば、推定機能136bは、被検体Pの第1の部位のCT画像データに基づいて、第1の部位と異なる第2の部位の厚さを推定する。また、調整機能136cは、推定機能136bが推定した第2の部位の厚さと、管電流値とに基づいて、第2の部位を透過したX線に由来するデータを検出器113が収集する際の設定を調整する。また、再構成機能136aは、調整された設定により収集されたデータを再構成して第2の部位のCT画像データを取得する。従って、第4の実施形態に係るX線CT装置100は、被検体Pの撮影が複数回行われる場合において、2回目以降の撮影の対象となる第2の部位の厚さをより正確に推測することができる。
(第5の実施形態)
さて、これまで第1〜第4の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した実施形態では、推定機能136bが、標準体型情報や過去に撮影された被検体Pの医用画像、あるいは1回目の本スキャンの情報に基づいて、被検体Pの厚さを推定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、推定機能136bは、部位ごとに設定された固定サイズに基づいて、被検体Pの厚さを推定する場合であってもよい。
第1〜第5の実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、第1〜第5の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、位置決め画像が収集されない場合においても検出器の設定を最適化することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。