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JP6775393B2 - 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法 - Google Patents

水解性シート及び当該水解性シートの製造方法 Download PDF

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JP6775393B2 JP2016226100A JP2016226100A JP6775393B2 JP 6775393 B2 JP6775393 B2 JP 6775393B2 JP 2016226100 A JP2016226100 A JP 2016226100A JP 2016226100 A JP2016226100 A JP 2016226100A JP 6775393 B2 JP6775393 B2 JP 6775393B2
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Description

本発明は、トイレクリーナー等の予め水性薬剤が含浸された水解性シート及び当該水解性シートの製造方法に関する。
従来、トイレの清掃には、繰り返し使用される織布製の雑巾等が使われてきたが、これに替わって、近年、紙製の使い捨ての水解性シートが使用されるようになってきている。
この種の水解性シートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、また使用後にトイレに流して処理可能とされる。
かかる水解性シートにおいては、拭取り作業時の洗浄剤が含浸された湿潤状態において破れない紙力と、トイレ等に流した際に配管等に詰まらない程度の水解性を確保することが求められるところであるが、これらを効果的に達成する一つの技術として、その基材紙としてカルボキシメチルセルロース(以下、CMCと記述する)を含む水溶性バインダー等を添加した水解性シートを用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3865506号公報
ところで、従来の水解性シートは、例えば、トイレの清掃において便器の縁等を強く擦るなどした場合に、破れることがあった。しかしながら、表面強度を向上させるためにCMC溶液の塗布濃度を上げると、CMC溶液が水解性シートの内部に入る量が多くなり、水解性が劣ることとなる。
このように、水解性シートにおいては、水解性を確保しつつ、更に、強く擦ったときの破れにくさを向上させたいという要望があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、水解性を確保しつつ、強く擦ったときの破れにくさを向上させた水解性シート及び当該水解性シートの製造方法を提供することを目的とする。
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた水解性シートであって、
前記原紙シートは、目付量が30〜150gsmであり、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチル化セルロースナノファイバーが含有されており、
前記水性薬剤は、前記カルボキシメチルセルロースと架橋する多価金属イオンが含まれていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の水解性シートであって、
前記原紙シートは、
学振子としてPPバンドを用いた学振型摩擦堅牢度試験機による耐摩耗性試験をMD方向、CD方向で各3回実施し、それぞれ各3回の測定値の平均を算出すると、それぞれの平均値が50回以上であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、
水解性シートの製造方法であって、
原紙シートの外面に対して、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有する溶液を付与する溶液付与工程と、
前記溶液が付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
乾燥後のシートに、前記カルボキシメチルセルロースと架橋する多価金属イオンを含む水性薬剤を付与する薬剤付与工程と、
を含み、
前記溶液付与工程において付与する前記溶液の濃度は、3.0%以上であり、当該溶液の前記カルボキシメチルセルロースと前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの配合比率は、9:1〜1:1の割合であることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の水解性シートの製造方法であって、
前記溶液付与工程において付与する前記溶液の濃度は、3.5%以上であることを特徴とする。
本発明によれば、水解性を確保しつつ、強く擦ったときの破れにくさを向上させることができる。よって、拭き取り性を向上させることができる。
本実施形態に係るトイレクリーナーの一例を示す平面図である。 (a)は、従来の紙の繊維配向を示す図、(b)は、本発明の繊維配向を示す図である。 トイレクリーナーのエンボス部分の拡大図及び断面図である。 エンボスの接触面積の一例を示す説明図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(溶液付与設備)の模式図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(加工設備)の模式図である。 抄造装置の一例を示す概略図である。 表面強度の評価を示すグラフである。 表面強度の評価を示すグラフである。 本実施形態に係るトイレクリーナーの他の一例を示す平面図である。 本実施形態に係るトイレクリーナーの他の一例を示す平面図である。 図12のA−A部分拡大図である。 (a)は、図13のB−B切断部端面図、(b)は、図13のC−C切断部端面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である水解性シートを詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
なお、水解性シートはトイレクリーナーを一例にして説明するが、水解性シートにはトイレクリーナー以外の清拭用途の水性薬剤を含浸させたウェットティシューなども含まれる。また、トイレクリーナーの製造時の紙の搬送方向をY方向(縦方向)、搬送方向に直交する方向をX方向(横方向)として説明する。
[トイレクリーナーの説明]
トイレクリーナー100は、複数枚(例えば、2枚)の原紙シートがプライ加工(積層)されたものであって、所定の水性薬剤が含浸されている。なお、原紙シートは、プライ加工されていない、1枚の原紙シートにより構成されていてもよい。
原紙シートの目付量は、30〜150gsm程度である。なお、目付量は、JIS P 8124に基づくものである。
トイレクリーナー100の原紙シートは、トイレを掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
繊維集合体としては、水解性を有する繊維集合体であれば特に限定されないが、単層又は複数層の紙又は不織布を好適に用いることができる。原料繊維は、天然繊維でも合成繊維でも良く、これを混合することも可能である。好適な原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、コットン等のセルロース系繊維、ポリ乳酸等からなる生分解性繊維等を挙げることができる。また、これらの繊維を主体としてポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニールアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリニトリル繊維、合成パルプ、ガラスウール等を併用することができる。
特に、繊維集合体として、少なくともパルプを含むものであることが好ましく、原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を適宜の割合で配合したものが適する。
より好ましくは、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50重量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものがあげられる。針葉樹晒クラフトパルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、繊維間隙間が減少し、水分蒸散が抑制されるため、乾きにくさを向上させることができる。
また、粉砕されたパルプからなるシート、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりしたシートにより構成されていてもよい。
また、トイレクリーナー100の原紙シートには紙力増強のための水溶性バインダーが付与されている。水溶性バインダーとしては、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
特に、水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロース(CMC)のアルカリ金属塩が好ましい。
CMCについては、そのエーテル化度が0.6〜2.0、特に0.9〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となるためである。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、水性薬剤中の架橋剤である特定金属イオンとの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができるからである。
本実施形態のトイレクリーナー100の場合には、水溶性バインダーとして、CMCが付与されている。
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
水溶性バインダー(本実施形態のトイレクリーナー100の場合には、CMC)には、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー(以下、CNFと称す)が添加されている。
CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率は、9:1〜1:1の割合であることが好ましい。即ち、水溶性バインダー溶液中に、カルボキシメチル化CNFが10重量%以上、50重量%以下含まれていることが好ましい。このような配合比率とすることで、CMCの量を増やすことなく、効果的にトイレクリーナー100の表面強度を向上させることができるからである。
ここで、CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
また、CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、例えば、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のカルボキシメチル化CNFは、上記パルプ繊維に対してカルボキシメチル化処理を施したものを解繊することによって得ることができる。
CNFにカルボキシメチル化処理を施すことにより、CNF自体がCMCと同様に金属イオン(好ましくは2価)と架橋構造をとることができるようになり、CMCと同様の使用を行うことで水解紙の強度発現性が大きく向上する。CNFとCMCを併用使用することでより良好な強度発現性を水解紙に与えることができる。
カルボキシメチル化の一例としては、次のような方法を挙げることができる。なお、カルボキシメチル化は以下の方法に限定されず、従来公知の方法で行うことができる。また、市販品を使用することとしてもよい。
先ず、原料であるパルプ繊維、水および/または低級アルコールなどの溶媒、及び水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのマーセル化剤を混合して、マーセル化を行い、マーセル化後、例えば、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウムなどのカルボキシメチル化剤を反応系に添加し、エーテル化反応を行う。
また、解繊処理としては、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。また、ナノファイバー化は、TEMPO酸化処理、リン酸エステル化処理酸処理等の併用により促進される。
また、本実施形態のトイレクリーナー100の製造に用いられる水溶性バインダー溶液の濃度は、3.0%以上、4.0%以下であり、好ましくは、3.5%以上、4.0%以下、より好ましくは、3.8%以上、4.0%以下である。なお、それぞれの濃度の水溶性バインダー溶液は、その濃度に応じた塗布量で原紙シートに塗布され、塗布終了後に原紙シートに付着するCMC・CNFの合計量が一定となるようになっている。
水溶性バインダー溶液の濃度を3.0%以上とすることで、効果的にトイレクリーナー100の表面強度を向上させることができ、その濃度が3.5%、3.8%と高くなるにつれて、より効果を高めることができる。また、その濃度を4.0%以下とすることで、操業上、取扱いが容易となる。
このようなトイレクリーナー100は、原紙シートの厚み方向の内側から外側に向かうにつれて、CMC・CNFの含有量が徐々に増加した状態となっている。これにより、トイレクリーナー100は、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて便器の縁等を強く擦っても破れにくくすることができる。
また、本実施の形態のトイレクリーナー100は、学振子としてPPバンドを用いた学振型摩擦堅牢度試験機による耐摩耗性試験をMD方向、CD方向で各3回実施し、それぞれ各3回の測定値の平均を算出し、それぞれの平均値が50回以上となるようにする。
上記耐摩耗性試験の方法は、トイレクリーナー100を3つ折りにし、測定部分を学振型摩擦堅牢度試験機で擦り、目視で紙面に毛羽立ちや破れ等のダメージが確認された時点の回数を計測する。
上記耐摩耗性試験では、トイレクリーナーを実際に使用する場面を想定、すなわち汚れが付着したことにより便器の縁等がザラザラした状態を想定し、表面に網目模様が施されたPPバンドを学振子として使用している。これにより、トイレクリーナーの実際の使用時を想定した環境試験が可能となり、トイレクリーナーが実際の使用時に耐え得るか否かについて信頼性の高い評価を行うことができる。なお、上記耐摩耗性試験では、トイレクリーナーが実際の使用時に耐え得る目安として40回以上であることを条件としている。
また、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向の比率(縦/横)については、特に限定するものではないが、0.8〜2.0であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。
紙の製造工程である抄紙工程においては抄紙機のワイヤーの上に繊維を敷き詰めて搬送方向に流すため、一般的には、紙は、抄紙機の搬送方向である縦方向に多くの繊維が並んでいる(例えば、縦:横=2.3:1等。図2(a)参照)という特性がある。そのため、横方向の繊維密度が薄く繊維が断裂しやすい。即ち、拭くときの方向によって破れやすい。そこで、本実施形態においては、図2(b)に示すように、トイレクリーナー100の縦横の繊維配向比率を0.8〜2.0、好ましくは、0.8〜1.2とすることで、どの方向から拭いても破れにくいトイレクリーナー100を提供することができる。なお、縦横の繊維配向の比率は、MD及びCD方向の湿潤強度の比により求めることができる。
また、本実施形態のトイレクリーナー100には、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む所定の水性薬剤が含浸されており、具体的には、架橋剤の他、水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、有機溶剤等の補助剤を含む所定の水性薬剤が含浸されている。当該水性薬剤は、トイレクリーナー100の基材である原紙シートの重量に対して100〜500重量%含浸させるが、好ましくは150〜300重量%である。
架橋剤としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができるが、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
水性洗浄剤としては、例えば、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。
香料としては、例えば、水性香料の他、オレンジオイル等の油性香料の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
また、上述した水性薬剤の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を水性薬剤に含ませてもよい。
このように、本発明によれば、原紙シートに、水溶性バインダー及びセルロースナノファイバーを配合するとともに、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を含浸させることで、原紙シートに水溶性バインダーを配合し、水溶性バインダーと架橋する架橋剤を含む水性薬剤を含浸させる場合より、湿潤引張り強度を向上させることができる。
また、トイレクリーナー100の表面は原紙シートのままでも良いが、エンボス加工が施されていることが好ましく、トイレクリーナー100の場合、例えば、図1に示す通り、2種類のエンボスEM11及びEM12がエンボス加工により施されている。
エンボスの形状、数、面積率等は任意であるが、トイレクリーナー100の場合、エンボスEM11は、菱形格子となるように配置されており、これにより、エンボスEM11が正方格子や矩形格子に配置される場合と比較して拭きムラを軽減することができる。また、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されている。
エンボスEM11は、図3(a)に示すように、膨出部PR21が曲面の形状を有している。
また、エンボスEM12は、図3(b)に示すように、膨出部PR22が平面の形状を有している。
そして、エンボスEM12は、エンボスEM11の間に配置されているので、エンボスEM11の膨出部PR21及びEM12の膨出部PR22は近接して密着することにより、図3(c)に示すように連なったエンボスEM21として形成されることになる。
また、エンボスEM11の膨出部PR21とエンボスEM12の膨出部PR22が近接するだけであって、連なっていない場合であってもよい。
このように形成された2種類のエンボスEM11及びEM12により、清掃対象物等との接触面積を増やすことができるので、トイレクリーナー100の硬さが緩和されて、拭き取り性能が高くなる。
すなわち、トイレクリーナー100のシート全面に、膨出部PR21が曲面であるエンボスEM11と、膨出部PR22が平面であるエンボスEM12を組み合わせて形成することにより、拭取り作業時にトイレクリーナー100に力が加わった時点で各エンボスが変形して、初めて接触面積が増加することになるので、接触面積を増加させると共に、各エンボスの変形に起因して、しなやかさも向上することになる。
例えば、図4(a)に示すように、単一のエンボスEM11の場合には、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11が変形して生じる接触面積CN31は、エンボスEM11近傍に離散的に生じる。これに対して、2種類のエンボスEM11及びEM12を組み合わせた場合には、図4(b)に示すように、拭取り作業時にトイレクリーナー100に加わる力によりエンボスEM11及びEM12が変形して生じる接触面積SN32は、図4(a)の接触面積CN31と比較して、増加することが分かる。
また、2種類のエンボスEM11及びEM12は、通常のエンボスの効果を同様に得ることができ、トイレクリーナーの風合い、吸収性及び嵩高性等を向上させることができる。さらに、連なったエンボスEM21は、通常のエンボスと同様に、エンボスを施すことによる見栄えの良さの効果も得ることができる。
また、トイレクリーナー100は、折り加工されることにより、Y方向の中央部で2つ折りに折り畳まれる。そして、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム内等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用される。なお、トイレクリーナー100の折り畳み方は、2つ折りに限ることはなく、例えば、4つ折りにしても良く8つ折りにしても良い。
[トイレクリーナーの製造方法]
次に、トイレクリーナーの製造方法について説明する。図5は、トイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。図6は、トイレクリーナーの原紙シート(抄紙シート)に対して水溶性バインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図7は、図6に示す溶液付与設備で水溶性バインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
トイレクリーナーの製造方法では、図5に示すように、先ず、抄紙機(図示省略)で原紙となる紙を抄造する抄紙工程(S1)を行う。
次いで、図5及び図6に示すように、溶液付与設備において、抄造された原紙を巻取った複数(例えば、2本)の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工しプライ連続シート1Bとするプライ加工工程(S2)と、プライ連続シート1Bに対して水溶性バインダー溶液を付与し連続シート1Cとする溶液付与工程(S3)と、連続シート1Cを乾燥させる乾燥工程(S4)と、乾燥させた連続水解性シート1Dをスリットし巻取るスリット・巻き取り工程(S5)とを行う。なお、1次原反ロールは2本以上であれば適宜本数を変更可能であるが、以下の説明においては、2本使用する場合の例について説明する。
次いで、図5及び図7に示すように、加工設備において、上記スリット・巻き取り工程(S5)で巻取った2次原反ロール11から繰り出される連続水解性シート1Dに対してエンボス加工を施すエンボス加工工程(S6)と、エンボス加工が施されたエンボス済シート1Eに対して仕上げ加工を施す仕上げ加工工程(S7)とを行う。
以下、各工程の詳細については、詳述する。
〔抄紙工程〕
まず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートを形成する。
なお、原紙シートには、パルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
また、本発明の実施形態では、後述する溶液付与設備の溶液付与工程で水溶性バインダー溶液が付与されるが、抄紙工程の段階で水溶性バインダー溶液を付与するようにしてもよい。
抄紙工程でも水溶性バインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更に水溶性バインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
抄紙工程で水溶性バインダー溶液を付与する方法としては、例えば、抄紙原料であるパルプを含む分散液中に水溶性バインダーと該水溶性バインダーのパルプ繊維への定着剤を添加して、これを原料として湿式抄造する方法が知られている(特開平3−193996号公報)。つまり水溶性バインダーを内添する方法である。また、パルプを含む分散液からシートを湿式抄紙し、プレス脱水或いは半乾燥した後に水溶性バインダーを噴霧乾燥或いは塗工乾燥して、所定量の水溶性バインダーを含有する繊維シートを製造することも可能である。つまり水溶性バインダーを外添する方法である。この際には、プレス脱水を行うよりも熱風通過乾燥機などのプレ乾燥方式を用いた方が、低密度でより水解性の良い繊維シートを得ることができる。更に上述の湿式抄紙法ではなく、水を使わずにパルプ繊維を乾式で解繊して、ウェブを形成した後に水溶性バインダーを噴霧し、その後乾燥して繊維シートを製造することも可能である。いわゆるエアレイド製法である。
図8には、バインダーとして水溶性バインダーを用いた場合の繊維シートの製造に好ましく用いられる製造装置の一例の概略図が示されている。図8に示す製造装置(湿式抄造機)は、フォーマー14と、ワイヤーパートと、第1ドライパート17と、スプレーパートと、第2ドライパート24とを備えて構成されている。
フォーマー14は、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパートへ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。また、パルプスラリーにバインダーを混合することも可能である。ワイヤーパートは、フォーマーから供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパート17は、ワイヤーパートにおいて形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパートは、第1ドライパート17で乾燥された紙にバインダーを噴霧するものである。第2ドライパート24は、スプレーパートでバインダーが噴霧され湿潤状態になっている紙を乾燥させるものである。
フォーマー14から供給された完成紙料がワイヤーパートにおいて抄造され、ワイヤー15上に湿紙が形成される。湿紙は、ワイヤーパートに設置されているサクションボックス16による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。次いで湿紙は、第1ドライパート17に導入されて乾燥される。第1ドライパート17はスルーエアードライヤー(以下、TADという)から構成されている。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム18と、該回転ドラム18をほぼ気密に覆うフード19とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード19内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム18の外側から内部に向けて流通する。湿紙は、図8中、矢印方向に回転する回転ドラム18の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙にはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙は乾燥され紙となる。
第1ドライパート17で得られた紙には、スプレーパートにおいてバインダーを含む水溶液(水溶性バインダー溶液)が噴霧される。スプレーパートは第1及び第2ドライパート17,24間の位置である。両ドライパート17,24は、コンベアを介して連結されている。
コンベアは、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト20と下コンベアベルト21とを備えている。コンベア20は、第1ドライパート17のTADによって乾燥されて紙をこれら両ベルト20,21間に挟持した状態で第2ドライパート24へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト20の下流側の折り返し端には真空ロール22が配置されている。真空ロール22は、上コンベアベルト20の裏面に紙を吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト20を搬送させるようになっている。
図8に示すように、スプレーパートはスプレーノズル23を備えている。スプレーノズル23は第2ドライパート24の下方で且つ真空ロール22に対向するように配設されている。スプレーノズル23は、真空ロール22に向けてバインダーを含む噴霧液を噴霧して、紙に該噴霧液を添加(外添)するものである。
スプレーパートにおいてバインダーが供給された後、紙は第2ドライパート24へ搬送される。第2ドライパート24はヤンキードライヤーから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙は、フード26内に設置されたヤンキードライヤーの回転ドラム25の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム25に抱かれて搬送されている間に紙の乾燥が進行する。
なお、スプレーパートにおいてバインダーを供給する位置は、第1及び第2ドライパート17,24間の位置であればよく、例えば、上コンベアベルト20の上方(図8に示す第1及び第2ドライパート17,24間の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、さらに第2ドライパート24で乾燥させた後の紙に対して上方(図8に示す第2ドライパート24の右側の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、第1及び第2ドライパート17,24間、及び第2ドライパート24の後において、バインダーを噴霧する方向は上方からに限らず、下方からでも、上下両方からでもよい。
本実施形態では、抄紙工程において、原紙シートの縦横の繊維配向の比率(縦/横)が0.8〜2.0、好ましくは0.8〜1.2となるように調整が行われる。繊維配向の調整は、例えば、抄紙機において、抄紙原料をワイヤーパートに供給する角度を調整することで行うことができる。抄紙原料を供給する角度は、例えば、ヘッドボックスのスライス開度を調整することにより行うことができる。または、抄紙機の搬送方向(走行方向)と直交する方向に振動を与える等により繊維配向を調整することとしてもよい。
〔プライ加工工程〕
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図6に示すように、原反ロール1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工し、プライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
〔溶液付与工程〕
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、図6に示すように、プライ連続シート(抄紙シート)1Bの両方の外面(連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工した時に連続乾燥原紙1A,1A同士が対向しない面)に2流体方式の各スプレーノズル3,3により水溶性バインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
水溶性バインダー溶液は、カルボキシルメチルセルロース(CMC)を水溶性バインダーとして含むものである。また、水溶性バインダー溶液には、カルボキシメチル化CNFが添加されている。CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率としては、9:1〜1:1の割合であることが好ましい。
なお、水溶性バインダー溶液の噴霧方法として、プライ連続シート1Bの片方の外面に上述の水溶性バインダー溶液を噴霧するようにしても良い。また、上述の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aの少なくとも一方のシートの外面(各シートが対向しない面)に対して、2流体方式のスプレーノズルより上述の水溶性バインダー溶液を噴霧し、直後に当該連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工することにより、上述の連続シート1Cと同等のシートを生成するようにしても良い。
2流体方式のスプレーノズル3は、2系統に分けられた圧縮空気と液体を混合し、噴射させる方式のスプレーノズルであり、圧縮した液体を単独で噴射させる1流体方式のスプレーノズルに比べて、液体をきめ細かく均一に噴霧することができる。
本実施形態において、スプレーノズル3のノズル径は、0.09gal/min以下とする。また、本実施形態のスプレー条件としては、水溶性バインダー溶液の濃度;3.0〜4.0%、出温度;50〜70℃、液圧;2MPa以上、エア圧;0.05〜0.2MPsとなるようにすることが好ましい。
このようにして、プライ連続シート1Bの外面に水溶性バインダー溶液を噴霧することで、トイレクリーナーは、厚み方向において内側から外側に向かうにつれてCMC及びカルボキシメチル化CNFの含有量が徐々に増加した状態となるので、水解性を確保しつつ、表面強度を向上させることができ、強く擦ってもダメージが生じにくいトイレクリーナーを製造することが可能となる。
なお、厚み方向において内側及び外側とは、両面に塗布した場合には、厚み方向の中央部を内側とし、外面を外側とする。また、片面に塗布した場合には、水溶性バインダー溶液の非塗布面を内側とし、塗布面を外側とする。
〔乾燥工程〕
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、図6に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cの水溶性バインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの厚み方向外側から内側に向かうにつれて、水溶性バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で水性薬剤が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シート内部に当該水性薬剤を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナーを乾き難くすることができる。また、連続シート1Cの厚み方向外側付近にCNFが多く存在し、且つ連続シート1Cの厚み方向外側付近でCMCの架橋反応が多く生じることとなるので、得られるトイレクリーナーの表面強度を強固なものとすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
また、上記乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該連続シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
〔エンボス加工工程〕
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、図7に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
〔仕上げ加工工程〕
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、図7に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの水性薬剤(水性洗浄剤、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等を含む)の含浸、当該水性薬剤を含浸させた各シートの包装を一連の流れで行う。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナーが製造される。
次に、本発明の実施例及び比較例について、表面強度を評価した結果を説明する。
先ず、CMCと、カルボキシメチル化CNF又はCNF(カルボキシメチル化していないもの)との配合比率が、下記[実施例1]〜[実施例3]、[比較例1]〜[比較例6]となるよう調整した水溶液(水溶性バインダー溶液)を作製した。
[実施例1]
CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率;1:1
[実施例2]
CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率;7:3
[実施例3]
CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率;9:1
[比較例1]
CMCとCNFの配合比率;1:1
(ここでは、カルボキシメチル化していないCNFを用いた。)
[比較例2]
CMCとCNFの配合比率;7:3
(ここでは、カルボキシメチル化していないCNFを用いた。)
[比較例3]
CMCとCNFの配合比率;9:1
(ここでは、カルボキシメチル化していないCNFを用いた。)
[比較例4]
CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率;0:10
[比較例5]
CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率;10:0
[比較例6]
CMCとCNFの配合比率;10:0
(ここでは、カルボキシメチル化していないCNFを用いた。)
なお、実施例1〜3及び比較例4で使用したカルボキシメチル化CNFは、株式会社スギノマシン製、BiNFi−s(TMa−100)である。
また、比較例1〜3及び比較例6で使用したCNFは、NBKPにカルボキシメチル化処理を施さず、解繊することによって得たものである。
また、実施例1〜3及び比較例1〜3、5で使用したCMCは、CMC1330(ダイセル社)である。
次いで、水溶性バインダー塗布設備にて、ドライ状態で秤量45gsmの原紙(パルプ配合;NBKP:LBKP=40:60)を2プライにした後、各シートの外面に、調整したそれぞれの水溶液を、スプレー塗布した。
このとき、水溶液の濃度は、3.0%、3.3%、3.5%、3.8%、4.0%とした。また、スプレー塗布終了後に各シート上に付着するCMC・カルボキシメチル化CNF(又はCNF)の合計量が一定となるように、水溶液の濃度に応じて、シートに対する塗布量を調整した。具体的に、シートに対する水溶液の塗布量は、3.0%ではウェット塗布量40gsm、3.3%ではウェット塗布量36.4gsm、3.5%ではウェット塗布量34.3gsm、3.8%ではウェット塗布量31.6gsm、4.0%ではウェット塗布量30gsmとした。なお、ドライ塗布量は全て1.2gsmである。
その後、熱風乾燥機(温度180℃)を通過させ、水分率が約8%になるまで乾燥させ、所定幅にスリットしながら、原紙シートの加工用原反を作成する。サンプリングした原紙シートに、シリンジで、薬液(水性薬剤)をシートの重量の200重量%となるよう均一に含浸させ、実施例1〜3及び比較例1〜6に対応するサンプルとした。
[表面強度の評価]
<試験方法>
実施例1〜3及び比較例1〜6に対応するサンプルにつき、プライを剥がさずに幅75mm×長さ240mmでMD方向とCD方向にそれぞれ切り取って、幅方向の両端部領域が重なるように3つ折りにし、測定部分を学振型摩擦堅牢度試験機で擦り、目視で紙面に毛羽立ちや破れ等のダメージが確認された時点の回数を計測する。この計測をMD方向、CD方向で各3回実施し、それぞれ各3回の測定値の平均を算出する。
学振型摩擦堅牢度試験機による試験条件は下記のとおりである。
・学振型摩擦堅牢度試験機:テスター産業株式会社製 品番AB301
・摩擦子:形状 20mm×R50mm
荷重 200gf(白綿布止め、アーム含む)
単位面積あたりの荷重 50gf/cm(荷重200gf/接触面積4.0
cm
摩擦子の綿布止めにPPバンド(積水樹脂株式会社 品番19K(幅15mm
×長さ60mm))1枚を隙間が生じたり、しわが生じたりしないように、ね
じ止めで摩擦子に固定する。
・試料台:形状 R200mm
ストローク 120mm
往復速度 30cps
・サンプル:幅25mm(プライを剥がさず幅75mmを3つ折り)
×長さ240mm(試料台側)
・試験手順:(1)サンプルを試料台に弛まないように取り付ける。
(2)摩擦子を試料台に静かに降ろす。
(3)スタートSWを押して試験開始。
・判定方法:学振させてサンプルの状態を確認し、目視で紙面に毛羽立ちや破れ
等のダメージが確認された時点の回数を計測した。
上記試験では、トイレクリーナーを実際に使用する場面を想定、すなわち汚れが付着したことにより便器の縁等がザラザラした状態を想定し、表面に網目模様が施されたPPバンドを学振子として使用している。これにより、トイレクリーナーの実際の使用時を想定した環境試験が可能となり、トイレクリーナーが実際の使用時に耐え得るか否かについて信頼性の高い評価を行うことができる。
<評価>
図9は、MD方向の上記試験の結果を示すグラフである。図10は、CD方向の上記試験の結果を示すグラフである。
トイレクリーナーが実際の使用時に耐え得るか否かの目安となる数値は40回であるが、図9、図10に示すとおり、実施例1〜3では、水溶液の濃度が3.%以上、4.0%以下の範囲において、数値が50回以上であり、高い強度を有することがわかる。
また、実施例1〜3から、水溶液の濃度が高くなるほど数値が高く、水溶液の濃度が高くなるほど強度が高くなることがわかる。
また、実施例1〜3と比較例1〜3から、カルボキシメチル化CNFを用いた場合、カルボキシメチル化していないCNFを用いた場合と比べて、強度が高くなることがわかる。これは、CNFにカルボキシメチル化処理を施すことにより、CNF自体の強度が高められたためと考えられる。
また、比較例4〜6では、この目安となる数値を下回っており、実際の使用時に耐え得ることができないことがわかる。
以上のように、本実施形態によれば、CMCとカルボキシメチル化CNFの配合比率が9:1〜1:1の割合である水溶性バインダー溶液を用い、その濃度を3.0%以上、4.0%以下とすることによって、水解性を維持しつつ、表面強度を向上させることができる。
従って、水溶性バインダー溶液に含まれるCMCの塗布量を増量することなく表面強度を向上させることができる。
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本発明の実施形態等の説明に際しては、水解性シートとして、トイレクリーナーを例示したが、これに限らず、身体を拭くための体拭き用シート、お尻拭き用シートなど、使用後にトイレなどで大量の水とともに流して廃棄するニーズのある物品に適用可能である。
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、膨出部PR21が曲面の形状を有しているエンボスEM11と、膨出部PR22が平面の形状を有しているエンボスEM12を例示しているが、必ずしもこの形状に限定されるものではなく、いかなる形状のエンボスでも適用可能である。
例えば、本発明の実施形態等の説明に際しては、すべてのエンボスEM11及びEM12が、図1の図面手前方向に凸になっているが、図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12と、図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12を交互に配置するものであってもよい。
具体的には、図11に示すように、図11の図面手前方向に凸なエンボスEM11及びEM12(実線部分)と、図11の図面手前方向に凹なエンボスEM11及びEM12(破線部分)を交互に配置することにより、エンボス加工により水解性シートの表面強度を高めると共に、トイレクリーナー101両面のどちらでも拭き取り性能の高い水解性シートを提供することができる。
また、トイレクリーナーのエンボスパターンのみを変更した変形例を図12〜図14に示す。
図12〜図14において、凹部e2は、凸部e1を反転した形状である。凸部e1と凹部e2は、交互に一例に配置され、この列が多列に、かつ隣り合う列における凸部e1と凹部e2が互いに半ピッチずれるように配列されたエンボスパターンを形成している。このように、凸部e1及び凹部e2が縦方向においても横方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。なお、凸部e1と凹部e2の形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形等が用いられる。各形状を組み合わせたものとしてもよい。
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、スプレー方式により、水溶性バインダー溶液を付与するようにしたが、1次原反ロール1から連続的に繰り出される連続乾燥原紙1Aに対して、ドクターチャンバー方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対してバインダー溶液を付与するドクターチャンバーを備える転写設備)、または/および、3ロール方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対してバインダー溶液を付与するディップロールと、ディップロールにバインダー溶液を付与するパンを備える転写設備)によってバインダー溶液を付与するようにしてもよい。つまり、溶液付与工程において、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対応して設けられた印刷機から水溶性バインダー溶液を対応する原紙に転写するようにすることとしても良い。
100、101 トイレクリーナー
1 1次原反ロール
1A 連続乾燥原紙
1B プライ連続シート
1C 連続シート
1D 連続水解性シート
1E エンボス済シート
2 重ね合わせ部
3 スプレーノズル
4 第1乾燥設備
5 スリッター
6 ワインダー設備
11 2次原反ロール
12 エンボスロール
13 仕上げ加工設備
14 フォーマー
15 ワイヤー
16 サクションボックス
17 第1ドライパート
18 回転ドラム
19 フード
20 上コンベアベルト
21 下コンベアベルト
22 真空ロール
23 スプレーノズル
24 第2ドライパート
25 回転ドラム
26 フード
EM11、EM12、EM21 エンボス
PR21、PR22 膨出部
HT21、HT22 膨出部の高さ
CN31、SN32 接触面積
e1 凸部
e2 凹部

Claims (4)

  1. 原紙シートに対して水性薬剤を含浸させた水解性シートであって、
    前記原紙シートは、目付量が30〜150gsmであり、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチル化セルロースナノファイバーが含有されており、
    前記水性薬剤は、前記カルボキシメチルセルロースと架橋する多価金属イオンが含まれていることを特徴とする水解性シート。
  2. 前記原紙シートは、
    学振子としてPPバンドを用いた学振型摩擦堅牢度試験機による耐摩耗性試験をMD方向、CD方向で各3回実施し、それぞれ各3回の測定値の平均を算出すると、それぞれの平均値が50回以上であることを特徴とする請求項1に記載の水解性シート。
  3. 原紙シートの外面に対して、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有する溶液を付与する溶液付与工程と、
    前記溶液が付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
    乾燥後のシートに、前記カルボキシメチルセルロースと架橋する多価金属イオンを含む水性薬剤を付与する薬剤付与工程と、
    を含み、
    前記溶液付与工程において付与する前記溶液の濃度は、3.0%以上であり、当該溶液の前記カルボキシメチルセルロースと前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの配合比率は、9:1〜1:1の割合であることを特徴とする水解性シートの製造方法。
  4. 前記溶液付与工程において付与する前記溶液の濃度は、3.5%以上であることを特徴とする請求項3に記載の水解性シートの製造方法。
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