しかしながら、防矢ネットの厚みを厚く形成することや、網目を小さくすること、若しくは、防矢ネットを複数枚重ねることは、通気性および採光性が低下すると共に、重量が増加するため、網としての利点が損なわれる。
これに対し、本願出願人は、上述の問題点を解決するべく鋭意検討した結果、網目の形状安定性が高い(網目が変形しづらい)網として、網目が角目に形成されるラッセル網を防矢ネットに採用することに想到した(本出願時において未公知)。
しかしながら、網目の形状安定性を高くした結果、その分、網目の変形の余地が少なくなり、所定の貫通力で矢が刺さると、網目を形成する網糸やその網糸どうしの結節部分で破断しやすくなる(矢の貫通力が網目の剛性を超えた時点で、即座に破断が起きやすくなる)ため、矢の貫通力を効率良く吸収することができないことが判明した。
本発明は、このような事情を背景になされたものであり、矢の貫通力を効率良く吸収することができる防矢ネット、防矢ネットの製造方法および防矢ネットの取付け構造に関する。
課題を解決するための手段および発明の効果
請求項1記載の防矢ネット又は請求項4記載の防矢ネットの製造方法によれば、網目が菱目に形成されるので、網目が角目に形成されるラッセル網に比べ、網目に変形の余地を与えることができる。即ち、矢が網目を貫通する際に、網糸やその網糸どうしの結節部分が即座に破断することを抑制し、網目が広がりつつ矢の外周に網糸が当接する(摩擦力を与えることができる)ので、矢の貫通力を効率良く吸収することができるという効果がある。
なお、「菱目」とは、網目が菱形、亀甲形状、又は、略六角形に形成されるものと定義する(「略六角形」とは、六角形に近い形状ではあるが、実際には網目の内周が曲線を描くように形成されることがあるため、それを含むものと定義する)。即ち、「菱目」とは、編網方向(網糸の延在方向)に対して、網糸どうしの結節部が蛇行する態様で結節されることで形成されるものである。
よって、編網方向に対して平行または直角に網糸が延在(編網方向に対して結節部が平行または直角に点在する態様で結節され、網目が格子状に形成)される「角目」のラッセル網は、網目の変形の余地が少ないのに対し、「菱目」のラッセル網は、編網方向に対して網糸どうしの結節部が蛇行する態様で結節されるので、その分、網目に変形の余地を与えることができる。
また、網糸は、その網糸どうしが結節される結節部と、その結節部どうしが連設される連設部と、第1方向において網目内で対向する連設部どうしを連結する第1糸とを備えるので、矢が網目を貫通する際に、矢の外周に沿って第1糸を当接させることができる。よって、矢と網糸(第1糸)との当接面積が増大し、矢に加わる摩擦力を増大させることができるので、矢の貫通力を効率よく吸収することができるという効果がある。
また、網糸は、第1方向とは直交する方向である第2方向において、第1糸と網目内で対向する連設部どうしを連結する第2糸を備えるので、矢が網目を貫通する際に、矢の外周に沿って第2糸を当接させることができる。よって、矢が貫通する際の網目の形状を円形に近い形状にさせ、矢と網糸(第1糸および第2糸)との当接面積が増大し、矢に加わる摩擦力を増大させることができる。よって、矢の貫通力を効率よく吸収することができるという効果がある。
また、網目における第1糸および第2糸は、それぞれ同一の挿入糸から構成され、網目において第1糸および第2糸を構成する挿入糸は、第1方向における一側で網目に隣接する一対の結節部を結節すると共に、第2方向における両側で網目に隣接する一対の結節部を結節するので、矢が網目を貫通する際に網目が広がることにより、第1糸および第2糸が結節部を網目側に引き寄せ、網目が広がった際の網目の剛性を高めることができる。即ち、矢が貫通する初期段階では網目に変形の余地を持たせ、矢が貫通し始めてからは網目に高い剛性を持たせることができるので、矢の貫通力を効率よく吸収することができるという効果がある。
請求項2記載の防矢ネット又は請求項5記載の防矢ネットの製造方法によれば、請求項1記載の防矢ネット又は請求項4記載の防矢ネットの製造方法の奏する効果に加え、網目において第1糸および第2糸を構成する挿入糸は、それら第1糸および第2糸が形成される網目に隣接する2の網目において、第1糸および第2糸を形成するので、第1糸および第2糸によって結節部を網目側に引き寄せやすくすることができる。よって、網目が広がった際の網目の剛性をより高めることができ、矢の貫通力を効率よく吸収することができるという効果がある。
請求項3記載の防矢ネット又は請求項6記載の防矢ネットの製造方法によれば、請求項2記載の防矢ネット又は請求項5記載の防矢ネットの製造方法の奏する効果に加え、網糸における結節部どうしが結節される部位は、10000デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで形成され、網糸の充実率が65%以上80%以下で形成されるので、使用する原糸の重量の増加を抑制しつつ、網糸の充実率が65%以上80%以下の防矢ネットを形成することができる。よって、通気性および採光性を備える防矢ネットを低コストで形成することができるという効果がある。
請求項7記載の防矢ネットの製造方法によれば、請求項6記載の防矢ネットの製造方法の奏する効果に加え、編網工程は、11ゲージのラッセル網機によって編網するので、使用する原糸の重量の増加をより抑制しつつ、網糸の充実率が65以上〜80%以下の防矢ネットを形成することができる。よって、通気性および採光性を備える防矢ネットをより低コストで形成することができるという効果がある。
請求項8記載の防矢ネットの取付け構造によれば、被射撃側に配設される第1防矢ネットと、その第1防矢ネットの被射撃側とは反対側の背面側に配設されると共に第1防矢ネットよりも剛性が低く形成される第2防矢ネットとを備えるので、矢が刺さる初期段階の高い貫通力が第1防矢ネットによって吸収され、貫通力が弱まった矢を第2防矢ネットによって受け止めることができる。この場合、第2防矢ネットは、第1防矢ネットよりも剛性が低く形成されて撓みやすいので、矢の貫通力による荷重を第2防矢ネットの全体に受け流しやすくすることができる。よって、矢の貫通力を効率よく吸収することができるという効果がある。
また、第1防矢ネットは、請求項3記載の防矢ネットから構成されるので、第1防矢ネットによって効率よく矢の貫通力を吸収することができ、その分、第2防矢ネットの剛性を低く設定することができる。よって、第2防矢ネットに使用される原糸の重量を低減させることができるので、防矢ネットの設置コストを抑制できるという効果がある。
また、第2防矢ネットの網目を取り囲む網糸の充実率は、第1防矢ネットの網糸の充実率よりも低く形成されるので、防矢ネットの防矢能力が低下することを抑制しつつ、第2防矢ネットの重量を低減させる(通気性、採光性を高める)ことができる。よって、防矢ネットの設置コストを抑制できるという効果がある。
請求項9記載の防矢ネットの取付け構造によれば、請求項8記載の防矢ネットの取付け構造の奏する効果に加え、第1防矢ネット及び第2防矢ネットは、被射撃側と背面側とにそれぞれ離間して配設されるので、第2防矢ネットに対する矢の入射角を大きくさせやすくできる。
即ち、矢が第1防矢ネットを貫通し、その推力が弱まることにより、第1防矢ネットに対する矢の入射角よりも、第2防矢ネットに対する矢の入射角が大きくなりやすい。よって、矢の貫通力が第2防矢ネットの一点に集中することを抑制し、第2防矢ネットの撓みによる効果を高めることができるので、矢の貫通力を効率よく吸収することができるという効果がある。
請求項10記載の防矢ネットの取付け構造によれば、請求項9記載の防矢ネットの取付け構造の奏する効果に加え、第1防矢ネットと第2防矢ネットとの間隔が略600mm以下に設定されるので、防矢ネットの設置スペースを抑制することができる。また、想定される矢の貫通力に合わせて第1防矢ネットと第2防矢ネットとの間隔を調整することができる。よって、防矢ネットが占有する設置スペースを最小限に抑えることができるという効果がある。
請求項11記載の防矢ネットの取付け構造によれば、請求項8記載の防矢ネットの取付け構造の奏する効果に加え、第2防矢ネットは、請求項3記載の防矢ネットから構成され、第1防矢ネットの網糸における結節部どうしが結節される部位は、15500デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで形成されると共に網糸の充実率が71%以上80%以下で形成され、第2防矢ネットの網糸における結節部どうしが結節される部位は、10000デシテックス以上15500デシテックス未満の太さで形成されると共に網糸の充実率が65%以上71%未満で形成されるので、使用する原糸の重量の増加を抑制すると共に、矢の貫通力が比較的高い競技に適した防矢ネットを形成することができる(例えば、射撃位置から標的までの距離が約10mのアーチェリーのフィールド競技において、矢が防矢ネットを貫通する(突き抜ける)ことを抑制できる)。
請求項12記載の防矢ネットの取付け構造によれば、請求項8記載の防矢ネットの取付け構造の奏する効果に加え、第1防矢ネットの網糸における結節部どうしが結節される部位は、15500デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで形成されると共に網糸の充実率が71%以上80%以下で形成され、第2防矢ネットは、繊維材料の原糸から成る挿入糸およびループ糸から形成される網糸と、その網糸によって取り囲まれる開口として形成される網目とを備え、網目が角目のラッセル網として形成され、第2防矢ネットの網糸は、6000デシテックス以上10000デシテックス未満の太さで形成されると共に網糸の充実率が55%以上65%未満で形成されるので、使用する原糸の重量の増加を抑制すると共に、矢の貫通力が標準的な競技に適した防矢ネットを形成することができる(例えば、射撃位置から標的までの距離が約70mのアーチェリーの一般競技において、矢が防矢ネットを貫通する(突き抜ける)ことを抑制できる)。
請求項13記載の防矢ネットの取付け構造によれば、請求項8記載の防矢ネットの取付け構造の奏する効果に加え、第1防矢ネットの網糸における結節部どうしが結節される部位は、10000デシテックス以上15500デシテックス未満の太さで形成されると共に網糸の充実率が65%以上71%未満で形成され、第2防矢ネットは、繊維材料の原糸から成る挿入糸およびループ糸から形成される網糸と、その網糸によって取り囲まれる開口として形成される網目とを備え、網目が角目のラッセル網として形成され、第2防矢ネットの網糸は、6000デシテックス以上10000デシテックス未満の太さで形成されると共に網糸の充実率が55%以上65%未満で形成されるので、使用する原糸の重量の増加を抑制すると共に、矢の貫通力が比較的低い競技に適した防矢ネットを形成することができる(例えば、和弓の競技において、矢が防矢ネットを貫通する(突き抜ける)ことを抑制できる)。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、第1実施の形態における防矢ネット1の全体構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における防矢ネット1が設置された射撃場100を示す模式図である。なお、図1では、理解を容易にするために、防矢ネット1及び射撃場100が模式的に図示される。
図1に示すように、射撃場100は、アーチェリーの射撃を行うための場所であり、この射撃場100には、標的101が設置され、その標的101の背面側(図1の紙面奥側)には、一対の支柱102と、それら一対の支柱102に架設される一対のワイヤロープ103とが配設される。
支柱102及びワイヤロープ103は、防矢ネット1を支持するための支持部材である。一対の支柱102は、射撃場100の地面に鉛直方向に立設され、一対のワイヤロープ103は、それら一対の支柱102の上端(図1の上側の端部)どうしと、下端(図1の下側の端部)どうしとにそれぞれ架設される。これら支柱102及びワイヤロープ103によって、防矢ネット1の鉛直方向における両端部(図1の上側の端部および下側の端部)と、水平方向における両端部(図1の左側および右側の端部)とがそれぞれ支持(展張)される。
防矢ネット1は、標的101の背面側に配設されることで、標的101から逸れた矢を受け止めるための網であり、繊維材料の原糸から成る挿入糸およびループ糸(共に図示せず)からラッセル網として形成され、挿入糸およびループ糸が編網されることで形成される網糸2と、その網糸2に取り囲まれる開口として形成される網目3とを備える。
挿入糸およびループ糸を形成する原糸は、糸の太さが1670デシテックスのポリエステル繊維から形成され、その糸の強度が7.3cN/dTに設定されると共に、糸の伸度が15%に設定される。
網糸2は、挿入糸およびループ糸が編網されることによって形成され、網糸2どうしが結節される部位として形成される結節部20と、その結節部20どうしを連設する連設部21と、その連設部21を第1方向(図1の左右方向。網糸2の延在方向(編網方向)とは垂直な方向。)で連結する第1糸22と、第1方向とは垂直な方向(図1の上下方向。網糸2の延在方向(編網方向)。)で第1糸22と対向する(網目3の空間内で対向する)位置に形成されると共に、連設部21を第1方向で連結する第2糸23とを備える。
なお、理解を容易にするために、以下の説明において、第1方向(図1の左右方向。網糸2の延在方向とは垂直な方向。)を左右方向と定義し、第2方向(図1の上下方向。網糸2の延在方向。)を上下方向と定義する。
結節部20は、上下方向に延設される複数の網糸2どうしが結節される部位であり、上下方向および左右方向に沿って所定間隔で点在すると共に、上下方向に蛇行する態様で点在して形成される。
連設部21は、上下方向に対して傾斜した姿勢で形成され、上記した蛇行する結節部20どうしを連設する部位である。これら結節部20及び連設部21によって略六角形状の開口(空隙)として網目3が形成される。即ち、網目3は、菱目の形状に形成され、この菱目の網目3が防矢ネット1の空隙部分であり、本実施の形態では、防矢ネット1の外郭面積に対する網目3の空隙の割合が25%に設定される(防矢ネット1の網糸2の充実率(防矢ネット1の外郭面積に対する網糸2の実面積の割合)が75%に形成される)。
第1糸22は、網目3の上側に隣接する一対の連設部21どうしを連結する部位であり、第2糸23は、網目3の下側に隣接する一対の連設部21どうしを連結する部位である。第1糸22及び第2糸23は、網目3の左右方向に沿ってそれぞれ延設され、これら第1糸22及び第2糸23が形成されることにより、網目3の略六角形状の開口部分が円形に近い形状(略八角形状)となる。
次いで、図2(a)を参照し、第1糸22及び第2糸23を構成する挿入糸Yについて説明する。図2(a)は、防矢ネット1の部分拡大図である。なお、図2(a)では、理解を容易にするために、網糸2を構成する挿入糸およびループ糸のうち、一の網目3における第1糸22及び第2糸23を構成する挿入糸Yのみが図示されると共に、防矢ネット1が模式的に図示される。また、一の網目3以外のその他の複数の網目3における第1糸22及び第2糸23も、挿入糸Yと同様の経路を通る挿入糸から形成される。
図2(a)に示すように、一の網目3内で対向する第1糸22及び第2糸23は、同一の(一本の)挿入糸Yからそれぞれ構成される。この挿入糸Yは、左右方向(図2(a)の左右方向)で一の網目3に隣接する一対の結節部20のうち、一側の結節部20(本実施の形態では、左側の一対の結節部20)と、上下方向(図2(a)の上下方向)で網目3に隣接する一対の結節部20とをそれぞれ結節する挿入糸である。
より具体的には、挿入糸Yは、一の網目3の下側の結節部20を結節し、その結節部20に連設される一対の連設部21のうちの一側の連設部21(本実施の形態では、右側の連設部21)から左方向に延設されることにより、第2糸23と、その第2糸23の左側に連結される連設部21と、その連設部21の左側に連結される第1糸22と、その第1糸22の左側に連結される連設部21とを通ることで、連設部21を挟んで対向する第1糸22と第2糸23とを形成する。
連設部21を挟んで対向する第1糸22と第2糸23とを形成する挿入糸Yは、その第1糸22の上側に位置する結節部20を結節し、その結節部20に連設される一対の連設部21のうちの一の連設部21(本実施の形態では、左側の連設部21)から右方向に延設されることにより、第2糸23と、その第2糸23の右側に連結される連設部21と、その連設部21の右側に連結される第1糸22と、その第1糸22の右側に連結される連設部21とを通ることで、連設部21を挟んで対向する第1糸22と第2糸23とを形成する。以降、同様の経路を辿って結節部20を結節しつつ、第1糸22及び第2糸23を形成する。
即ち、一の網目3内で対向する第1糸22及び第2糸23を構成する挿入糸Yは、それら第1糸22及び第2糸23が形成される一の網目3に隣接する他の2個の網目3(本実施の形態では、一の網目3の左上および左下に隣接する網目3)の第1糸22及び第2糸23(一の網目3の左上に隣接する他の網目3の第2糸23、及び、一の網目3の左下に隣接する他の網目3の第1糸22)を形成する糸である。
ここで、挿入糸およびループ糸は、それぞれが一本の原糸(太さは1670デシテックス)から形成されるが、ループ糸は、円環状のループを形成しつつ編網されるため、ループ糸の太さは、実質的には原糸三本分の太さとなる。本実施の形態では、結節部20は、二本の挿入糸と一本のループ糸とから形成されるため、結節部20の太さは原糸五本分の太さ(8350デシテックス)となる。
これに対して、挿入糸Yによって第1糸22及び第2糸23が形成される(挿入糸Yが連設部21の延在方向に沿って編網されるのではなく、連設部21を横切る態様で編網される)ことにより、連設部21の太さは、結節部20の太さよりも挿入糸一本分(原糸一本分)細く形成されている。
請求項における「網糸における結節部どうしが結節される部位」とは、一対の結節部20どうしが結節される部位に対応しており、本実施の形態では、それら一対の結節部20どうしが結節される部位は、16700デシテックスの太さに形成されている(一本の結節部20の太さが8350デシテックスであるため)。
この場合、一対の結節部20どうしが結節される部位は、10000デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで形成されることが好ましい。例えば、10000デシテックスよりも細くすると、網目の空隙が大きくなり、矢の貫通力を効率良く吸収することが困難となり、19000デシテックスよりも太くすると、充実率が過剰となり、網としての利点が損なわれる。
これに対して、一対の結節部20どうしが結節される部位を10000デシテックス以上19000デシテックス以下(本実施の形態では、16700デシテックス)の太さに設定し、網糸2の充実率を65%以上80%以下(本実施の形態では、75%)に設定することにより、使用する原糸の重量の増加を抑制しつつ、防矢能力を備える(後述する矢Aの外周よりも網目3の内周が小さく形成される)防矢ネット1を形成することができる。よって、通気性および採光性を備える防矢ネット1を低コストで形成することができる。
また、一対の結節部20どうしが結節される部位を15500デシテックス以上19000デシテックス以下の太さに設定し、網糸2の充実率を71%以上80%以下に設定することがより好ましい。これにより、防矢ネット1を標的101の背面側に1枚設置する場合であっても、後述するアーチェリーの一般競技において、矢Aが防矢ネット1を貫通することを抑制できる(矢Aの全てが突き抜けることなく、受け止めることができる)。
次いで、図2(b)を参照し、防矢ネット1(網目3)にアーチェリーの矢Aが貫通する場合について説明する。図2(b)は、図2(a)の防矢ネット1に矢Aが貫通した状態を示す部分拡大図である。なお、図2(b)では、理解を容易にするために、防矢ネット1及び矢Aが模式的に図示される。
図2(b)に示すように、防矢ネット1(網目3)に矢が貫通すると、網目3を形成する網糸2が押し広げられつつ矢Aに当接することで矢Aに摩擦力が作用し、矢Aの貫通力が吸収される。この場合、網目3が菱目のラッセル網として形成されるので、網目が角目に形成されるラッセル網に比べ、網目3に変形の余地を持たせることができる。
即ち、矢Aが網目3を貫通する際に、網目3が広がることにより、網糸2やその網糸2どうしが結節される結節部20が即座に破断することを抑制することができる。よって、網目3が広がりつつ矢Aの外周に網糸2が当接するので、貫通する矢Aに対して効率よく摩擦力を与えることができる。
ここで、防矢ネットを菱目のラッセル網として形成した場合であっても、例えば、四角形(菱形)の菱目に形成するのでは、矢Aが網目を貫通する際に、矢Aの外周の全体に沿って網糸2を当接させることが困難であり、矢Aに効率よく摩擦力を与えることができない。
これに対して、本実施の形態の防矢ネット1によれば、網目3が略六角形状の菱目に形成されるので、網目3の形状をより円形に近い形状とし、矢Aに効率よく摩擦力を与えることができる。
また、網目3内の左右方向で対向する連設部21どうしを連結する第1糸22を備えるので、矢Aが網目3を貫通する際に、矢Aの外周に沿って第1糸22を当接させることができる。よって、矢Aと網糸2との当接面積が増大し、矢Aに加わる摩擦力を増大させることができる。
更に、第1糸22に加え、その第1糸22と網目3内において上下方向で対向配置されると共に、連設部21どうしを連結する第2糸23を備えるので、矢Aが網目3を貫通する際に、矢Aの外周に沿って第2糸23を当接させることができる。即ち、第1糸22と第2糸23とによって、網目3の形状がより円形に近い形状となるため、矢Aが貫通する際に、矢Aと網糸2との当接面積を増大させ、矢Aに加わる摩擦力をより増大させることができる。
また、これら第1糸22及び第2糸23は、同一の(一本の)挿入糸Yから構成され、この挿入糸Yは、一の網目3に左右方向で隣接する一対の結節部20のうち、一側の結節部20と、上下方向で網目3に隣接する一対の結節部20とをそれぞれ結節する挿入糸として形成されるので、矢Aが網目3を貫通して網目3が広がると、第1糸22および第2糸23によって結節部20が網目3側に引き寄せられる。
即ち、矢Aが貫通する初期段階では、網目3が変形の余地を持った状態であるのに対し、矢Aが貫通し始めると、第1糸22および第2糸23によって結節部20が網目3側に引き寄せられて網目3の剛性が高まる。よって、矢Aが貫通する初期段階の高い貫通力を、変形の余地を持つ網目3によって吸収し、矢Aが貫通し始めることで推進力が弱まった貫通力を、剛性が高まった(第1糸22及び第2糸23が結節部20を網目3側に引き寄せることで、矢Aの貫通前よりも剛性が高まった)網目3によって吸収させることができる。
この場合、一の網目3内で対向する第1糸22および第2糸23を構成する挿入糸Yは、それら第1糸22および第2糸23が形成される一の網目3に隣接する2の他の網目3においても、第1糸22および第2糸23を形成するので、第1糸22および第2糸23によって、結節部20を網目3側に引き寄せやすくすることができる。よって、網目3が広がった際の網目の剛性をより高めることができる。
以上により、本実施の形態の防矢ネット1によれば、矢Aの貫通力を効率良く吸収することができる。
次いで、防矢ネット1の製造方法について説明する。防矢ネット1の製造方法は、上記した防矢ネット1と同じ形状で編網体(熱処理が行われる前であり、防矢ネット1が熱処理によって収縮する前の状態(生生地))を形成する編網工程と、その編網工程によって形成された編網体に熱処理を加える熱処理工程とを備える。
編網工程は、ラッセル網機によって編網体を編網し、本実施の形態では、11ゲージ(1インチ辺りの針の本数が11本)のラッセル網機によって編網する。熱処理工程は、編網工程の後に行われる工程であり、編網工程で編網された編網体に加熱炉内で180〜190°の熱風を送風し、加熱処理を行う。この加熱処理により、編網体が収縮することで網糸2の充実率が75%の防矢ネット1が形成される。
ここで、防矢ネット1を製造する場合、編網工程では、10ゲージ〜12ゲージのラッセル網機を用いて、一対の結節部20どうしが結節される部位を10000デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで編網することが好ましく、11ゲージのラッセル網機によって編網することがより好ましい。
例えば、一対の結節部20どうしが結節される部位を10000デシテックス未満の太さで編網すると、網糸の太さが細くなるため、網目の空隙の面積が増大し、矢Aの貫通力を吸収することが困難となる。また、一対の結節部20どうしが結節される部位を19000デシテックスよりも太く形成すると、充実率が過剰となり、通気性、採光性が低下し、網としての利点が損なわれる。
また、一対の結節部20どうしが結節される部位を10000デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで編網する場合、9ゲージのラッセル網機によって編網すると、ラッセル網機の針間の間隔が広いため、網糸の充実率を65%以上80%以下で形成することが困難となる(充実率を上げるには、その分、原糸を太くする必要がある)。また、13ゲージ以上のラッセル網機によって編網するのでは、網糸の充実率が80%を超える(充実率が過剰となる)ため、網としての利点が損なわれる。また、12ゲージ以上のラッセル網機は、針間の間隔が狭くなり、例えば、1670デシテックスの原糸を用いて編網すると、針が折れるという問題が生じる。
これに対して、編網工程において、10〜12ゲージのラッセル網機を用いて、一対の結節部20どうしが結節される部位を10000デシテックス以上19000デシテックスの太さで編網することにより、使用する原糸(繊維材料)の重量の増加をより抑制しつつ、網糸2の充実率が65%以上80%以下の防矢ネット1を形成することができるので、通気性および採光性を備える防矢ネット1を低コストで製造することができる。
この場合、本実施の形態では、編網工程において、防矢ネット1が11ゲージのラッセル網機によって編網されるので、使用する原糸の重量の増加をより抑制することができ、通気性および採光性を備える防矢ネット1をより低コストで製造することができる。更に、11ゲージのラッセル網機を用いることにより、ラッセル網機の針間の間隔が12ゲージよりも広くなるので、上記したラッセル網機の針が折れるという不具合を抑制することができる。
次いで、図3を参照して、第2実施の形態の防矢ネット201について説明する。第1実施の形態では、支柱102及びワイヤロープ103に1枚の防矢ネット1が支持(展張)される場合を説明したが、第2実施の形態では、支柱102及びワイヤロープ103に2枚の第1防矢ネット201A及び第2防矢ネット201Bが支持される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図3(a)は、第2実施の形態における防矢ネット201が設置された射撃場100を示す模式図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における防矢ネット201の断面図である。なお、図3では、理解を容易にするために、防矢ネット201及び射撃場100が模式的に図示される。
図3に示すように、防矢ネット201は、被射撃側(標的101側)に配設される第1防矢ネット201Aと、その第1防矢ネット201Aの被射撃側とは反対側の背面側に配設される第2防矢ネット201Bとを備え、それら第1防矢ネット201A及び第2防矢ネット201Bが密着した状態で配設される。
第1防矢ネット201Aは、第1実施の形態の防矢ネット1と同じ構成で形成され、第2防矢ネット201Bは、第1防矢ネット201Aよりも剛性が低い(撓みやすい)網として形成される。より具体的には、第2防矢ネット201Bは、一対の結節部20どうしが結節される部位の太さが14000デシテックスであり、充実率が68%に形成され、それ以外の構成は、第1防矢ネット201Aと同じ構成とされる。
次いで、図4(a)を参照して、防矢ネット201に矢が貫通する場合について説明する。図4(a)は、図3(b)の防矢ネット201に矢が貫通した状態を示す断面図である。なお、図4(a)では、理解を容易にするために、防矢ネット201及び矢Aが模式的に図示される。
図4(a)に示すように、防矢ネット201に矢が刺さると、第1防矢ネット201Aを貫通した矢Aは、第2防矢ネット201Bに当接する。この場合、被射撃側に配設される第1防矢ネット201Aよりも背面側に配設される第2防矢ネット201Bの剛性が低く設定されるので、矢Aが刺さる初期段階の高い貫通力が第1防矢ネット201Aによって吸収され、第1防矢ネット201Aによって貫通力が弱められた矢Aを第2防矢ネット201Bによって受け止めることができる。
即ち、第2防矢ネット201Bは、第1防矢ネット201Aよりも剛性が低く形成されることで撓みやすいので、矢Aの貫通力による荷重が第2防矢ネット201Bの全体に受け流される。よって、矢Aの貫通力を効率よく吸収することができる。
また、矢Aが刺さる初期段階の高い貫通力が第1防矢ネット201Aによって吸収されるので、その分、第2防矢ネット201Bの剛性を低く設定することができる。即ち、本実施の形態のように、第2防矢ネット201Bの一対の結節部20どうしが結節される部位の太さ(本実施の形態では、14000デシテックス)を、第1防矢ネット201Aの一対の結節部20どうしが結節される部位の太さ(本実施の形態では、16700デシテックス)よりも細くする(充実率を低くする)ことができるので、防矢ネット201の防矢能力が低下することを抑制しつつ、第2防矢ネット201Bの重量を低減させる(通気性および採光性を高める)ことができる。よって、防矢ネット201の設置コストを抑制することができる。
ここで、アーチェリーの競技には複数の種類があり、射撃位置から標的101までの距離が競技ごとに相違する。例えば、アーチェリーの一般的な競技は射撃位置から標的101までの距離が約70mに設定されるのに対し、アーチェリーのフィールド競技は10〜60mに設定され、屋内競技では約18mに設定される。防矢ネット201を標的101の背面側に配置した場合、射撃位置から標的101までの距離が短くなると、その分、防矢ネット201の防矢能力を高める必要がある。また、射撃位置から標的101までの距離が長くなると、防矢能力が過剰になる恐れがある。
この場合、第1防矢ネット201Aの一対の結節部20どうしが結節される部位の太さが15500デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで形成されると共に、網糸2の充実率が71%以上80%未満で形成され(それ以外の構成は防矢ネット1と同じ構成で形成され)、第2防矢ネット201Bの一対の結節部20どうしが結節される部位の太さが10000デシテックス以上15500デシテックス未満の太さで形成されると共に、網糸2の充実率が65%以上71%未満で形成される(それ以外の構成は防矢ネット1と同じ構成で形成される)ことにより、例えば、フィールド競技において射撃位置から標的101までの距離が10mに設定される場合であっても、矢Aが防矢ネット201を貫通する(突き抜ける)ことを抑制できる(防矢ネット201の充実率の過剰を抑制しつつ、フィールド競技に適した防矢ネット201を形成することができる)。
次いで、図4(b)を参照して、第1防矢ネット201A及び第2防矢ネット201Bの取付け方による防矢ネット201の強度の相違について説明する。図4(b)は、防矢ネット201の強度検証試験(以下、「試験」と称す)の結果を示した表である。この試験では、防矢ネット201の被射撃側と背面側とに第1防矢ネット201A又は第2防矢ネット201Bを密着した状態で配設し、矢Aを被射撃側の面に向けて射撃するものとする。なお、試験では防矢ネット201に対して10回の矢Aの射撃を行い、防矢ネット201の背面側からの矢Aの貫通距離の平均値(図4(b)の貫通距離の欄を参照)を算出した。
図4(b)に示すように、第1防矢ネット201Aを2枚重ねて取り付けた場合の矢Aの貫通距離の平均が289mmであるのに対し、第2防矢ネット201Bを2枚重ねて取り付けた場合の矢Aの貫通距離の平均は336mmであった。即ち、より剛性が高い第1防矢ネット201Aを2枚重ねた場合の方が、矢Aの貫通力をより効果的に吸収することができる。
これに対し、第1防矢ネット201Aと第2防矢ネット201Bとを2枚重ねる場合、被射撃側に第1防矢ネット201Aを取り付けた場合の矢Aの貫通距離の平均は307mmであったが、被射撃側に第2防矢ネット201Bを取付けた場合の矢Aの貫通距離の平均は326mmであった。即ち、第2実施の形態の防矢ネット201のように、剛性(撓みやすさ)の異なる第1防矢ネット201A及び第2防矢ネット201Bを重ねて取付ける場合、剛性の高い第1防矢ネット201Aを被射撃側に配置させ、それよりも剛性の低い第2防矢ネット201Bを背面側に配設することにより、矢Aの貫通力を効率よく吸収することができる。
次いで、図5を参照して、第3実施の形態の防矢ネット301について説明する。第2実施の形態では、第1防矢ネット201A及び第2防矢ネット201Bが密着した状態で配設される場合を説明したが、第3実施の形態では、第1防矢ネット301A及び第2防矢ネット301Bが被射撃側および背面側にそれぞれ離間した状態で配設される。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図5(a)は、第3実施の形態における防矢ネット301の断面図であり、図5(b)は、図5(a)の第1防矢ネット301Aに矢Aが貫通した状態を示す断面図であり、図5(c)は、図5(b)の状態から第2防矢ネット301Bに矢Aが当接した状態を示す断面図である。なお、図5では、理解を容易にするために、防矢ネット301及び矢Aが模式的に図示される。
図5に示すように、防矢ネット301は、被射撃側(標的101側)に配設される第1防矢ネット301Aと、その第1防矢ネット301Aの被射撃側とは反対側の背面側に配設される第2防矢ネット301Bとを備え、それら第1防矢ネット301A及び第2防矢ネット301Bが被射撃側および背面側にそれぞれ離間した状態で配設される。
第1防矢ネット301Aは、第1防矢ネット201Aと同じ構成から形成され、第2防矢ネット301Bは、第2防矢ネット201Bと同じ構成から形成される。また、第1防矢ネット301Aと第2防矢ネット301Bとの間隔(離間する距離)は500mmに設定される。
この場合、第1防矢ネット301A及び第2防矢ネット301Bは、被射撃側と背面側とにそれぞれ離間して配設されるので、第1防矢ネット301Aを貫通した矢Aはその推力が弱まり、第1防矢ネット301Aに対する入射角よりも第2防矢ネット301Bに対する矢Aの入射角が大きくなりやすい。よって、矢Aの貫通力が第2防矢ネット301Bの一点に集中することを抑制し、第2防矢ネット301Bの撓みによる衝撃吸収の効果を高めることができる。
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態では、網目3が略六角形状の菱目に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、六角形以外の多角形であっても良く、略円形状であっても良い。即ち、結節部20が蛇行する態様で形成される菱目に形成すれば網目の形状は限定されないが、より円形に近い形状にすることが好ましい。
上記各実施の形態では、連設部21に第1糸22及び第2糸23が連結される(一の網目3内に第1糸22及び第2糸23が形成される)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、連設部21に第1糸22のみを連結する構成でも良い。この場合も、矢Aが網目3を貫通する際に、矢Aの外周に沿って第1糸22を当接させることができる。よって、例えば、網目を四角形の菱目に形成するに比べ、矢Aと網糸2との当接面積が増大し、矢Aに加わる摩擦力を増大させることができる。
上記各実施の形態では、一の網目3内で対向する第1糸22及び第2糸23は、同一の(一本の)挿入糸Yからそれぞれ構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、網目3内で対向する第1糸22及び第2糸23をそれぞれ異なる挿入糸やループ糸から構成しても良い。
上記各実施の形態では、挿入糸Yは、一の網目3における第1糸22及び第2糸23を形成すると共に、その一の網目3に隣接する他の2個の網目3の第1糸22及び第2糸23を形成する糸である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、一の挿入糸によって、一の網目3における第1糸22及び第2糸23のみを形成しても良い。
即ち、一の挿入糸によって、一の網目3の下側の結節部20を結節し、その結節部20に連設される一対の連設部21のうちの一側(例えば、右側)の連設部21から左方向に延設させ、第2糸23と、その第2糸23の左側に連結される連設部21とを通り、その連設部21の上側に連結される結節部20を結節する構成でも良い。この場合にも、矢Aが網目3を貫通する際に網目3が広がることにより、第1糸22および第2糸23が結節部20を網目3側に引き寄せ、網目3が広がった際の網目3の剛性を高めることができる。
上記各実施の形態では、網糸2(挿入糸およびループ糸)がポリエステル繊維から形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、ナイロン繊維やポリエチレン繊維の合成繊維であっても良い。
上記各実施の形態では、防矢ネット1,201,301が標的101の背面側に配設され、支柱102及びワイヤロープ103に支持(展張)される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、射撃場100の側面や天井面(射撃方向に対して平行な面)に防矢ネット1,201,301を配設しても良い。また、防矢ネット1,201,301を天井面から支持部材によって垂下させる構成でも良い。
上記各実施の形態では、アーチェリーの射撃を行う射撃場100に防矢ネット1,201,301が設置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、防矢ネット1,201,301は、矢を用いる競技であればいずれの射撃場においても採用することは可能である。一例として、防矢ネット1,201,301を和弓の弓道場に設置することが挙げられる。
上記各実施の形態では、一の網目3内で対向する第1糸22及び第2糸23が、一本の挿入糸Yから形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1糸22及び第2糸23は、複数本の挿入糸またはループ糸から形成されても良い。
上記第2実施の形態では、第1防矢ネット201A及び第2防矢ネット201Bが菱目のラッセル網から形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、矢Aの外周よりも網目の内周が小さく形成される網であれば、いずれの網から形成されても良い。この場合でも、剛性の異なる2の網を取付ける場合に、剛性の高い網を被射撃側に配置することで、矢Aの貫通力を効率よく吸収することができる。
また、第1防矢ネット201Aの一対の結節部20どうしが結節される部位の太さを15500デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで形成すると共に、網糸2の充実率が71%以上80%未満で形成し(それ以外の構成は防矢ネット1と同じ構成で形成し)、第2防矢ネット201Bを角目のラッセル網から形成しても良い。この場合には、第2防矢ネット201Bの網糸2を、6000デシテックス以上10000デシテックス未満の太さで形成すると共に、網糸2の充実率を55%以上65%未満に設定することが好ましい。
これにより、例えば、上記したアーチェリーの一般競技において射撃位置から標的101までの距離が70mに設定される場合に、矢Aが防矢ネット201を貫通する(突き抜ける)ことを抑制できる(防矢ネット201の充実率の過剰を抑制しつつ、一般競技に適した防矢ネット201を形成することができる)。
上記第2実施の形態では、第1防矢ネット201Aの一対の結節部20どうしが結節される部位の太さが15500デシテックス以上19000デシテックス以下の太さで形成されると共に、網糸2の充実率が71%以上80%未満で形成される(それ以外の構成は防矢ネット1と同じ構成で形成される)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1防矢ネット201Aの一対の結節部20どうしが結節される部位を10000デシテックス以上15500デシテックス未満の太さで形成すると共に、網糸2の充実率を65%以上71%未満で(それ以外の構成は防矢ネット1と同じ構成で)形成しても良い。
この場合には、第2防矢ネット201Bを角目のラッセル網から形成し、網糸2を6000デシテックス以上10000デシテックス未満の太さで形成すると共に、網糸2の充実率を55%以上65%未満に設定することが好ましい。これにより、例えば、和弓の競技において、矢Aが防矢ネット201を貫通する(突き抜ける)ことを抑制できる(防矢ネット201の充実率の過剰を抑制しつつ、和弓の競技に適した防矢ネット201を形成することができる)。
上記第3実施の形態では、第1防矢ネット301Aと第2防矢ネット301Bとの間隔(離間する距離)が500mmに設定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1防矢ネット301Aと第2防矢ネット301Bとの間隔(離間する距離)は、略600mm以下に設定されることが好ましい。なお、略600mmの「略」とは、防矢ネット301の取り付け時の公差を許容することが主旨であり、630mm以下の範囲と定義する。
これにより、想定される矢Aの貫通力に合わせて第1防矢ネット301Aと第2防矢ネット301Bとの間隔を調整することができるので、防矢ネット301が占有する設置スペースを最小限に抑えることができる。
また、一般的な矢Aは略700mmの長さで形成されると共に、矢Aのシャフト部分が樽状に(シャフトの中心に比べ、両端が細く)形成されるので、第1防矢ネット301Aの摩擦力は、矢Aの先端から略600mmまでの部分にしか加わらない。よって、第1防矢ネット301Aと第2防矢ネット301Bとの間隔を略600mmよりも長くすると、防矢ネット301の設置スペースが増大する(過多となる)。
これに対して、第1防矢ネット301Aと第2防矢ネット301Bとの間隔(離間する距離)を略600mm以下(即ち、0〜略600mmの範囲)に設定することにより、矢Aの貫通力を効率良く吸収しつつ、防矢ネット301の設置コストを抑制することができる。