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JP6772037B2 - マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マスクブランク、そのマスクブランクを用いて製造された転写用マスクおよびその製造方法、並びに、上記の転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には、通常何枚もの転写用マスクが使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体デバイス製造の際に用いられる露光光源は、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
転写用マスクの種類には、透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを備えたバイナリマスクの他に、ハーフトーン型位相シフトマスクがある。
特許文献1に開示されているように、ハーフトーン型位相シフトマスクの位相シフト膜には、モリブデンシリサイド(MoSi)系の材料が広く用いられている。この特許文献1の位相シフト膜は、耐薬性を向上させることなどを目的として、150℃以上の温度での加熱処理が行われている。
一方、特許文献2には、ArFエキシマレーザーの露光光(以下、ArF露光光という。)に対する透過率が10%以上である位相シフト膜を備えるマスクブランクが開示されている。この特許文献2の位相シフト膜は、MoSiONのようなモリブデンとケイ素とを含む材料が用いられている。また、この位相シフト膜は、反応性スパッタリングで形成されており、その反応性スパッタリングではモリブデンの含有比率が2%以上5%未満であるターゲットが用いられている。
一方、特許文献3には、遮光膜の黒欠陥部分に非励起状態の二フッ化キセノン(XeF)ガスを供給しつつ、その部分に電子線を照射することで黒欠陥部分をエッチングして除去する欠陥修正技術(以下、このような非励起状態のフッ素系ガスを供給しつつ、電子線等の荷電粒子を照射して行う欠陥修正を単にEB欠陥修正という。)が開示されている。このEB欠陥修正は、当初、EUVリソグラフィ(Extreme Ultraviolet Lithography)用の反射型マスクの吸収体膜における黒欠陥修正に用いられていたが、近年ではMoSi系材料のハーフトーン型位相シフトマスクの黒欠陥修正においても使用されている。
特開2002−162726号公報 特開2010−009038号公報 特表2004−537758号公報
ハーフトーン型位相シフトマスクに用いられる位相シフト膜は、ArF露光光を所定の透過率で透過させる機能を有するとともに、その位相シフト膜を透過した露光光に対し、その位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過したArF露光光との間で所定の位相差を生じさせる機能も有することが求められる。この透過率と位相差の2つの機能を有する位相シフト膜をより薄い厚さで実現するには、位相シフト膜の材料にMoSiN、MoSiON等の遷移金属シリサイド系材料を用いることが望ましい。
一方、特許文献2に開示されているようなArF露光光に対する透過率が10%以上という比較的高い透過率を有する位相シフト膜を遷移金属シリサイド系材料で形成する場合、遷移金属(M)とケイ素(Si)と窒素(N)のほかに酸素(O)も含有させる必要がある。遷移金属(M)とケイ素(Si)の合計含有量[原子%]に対する遷移金属(M)の含有量[原子%]の比率(すなわち、遷移金属(M)の含有量[原子%]を遷移金属(M)とケイ素(Si)の合計含有量[原子%]で除した比率。以下、M/[M+Si]比率という。)が0.08以上の遷移金属シリサイド系材料で透過率10%以上の位相シフト膜を形成する場合、膜中の酸素含有量を多くする必要がある。しかし、MSiON膜の酸素含有量が多くなると、膜の消衰係数kが小さくなるだけでなく、屈折率nも小さくなる。このため、酸素含有量を多くすることによって屈折率nが小さくなったMSiON膜で所定の位相差を確保するためには、膜厚を厚くする必要が生じる。
このため、遷移金属シリサイド系材料で透過率10%以上の位相シフト膜を形成する場合、M/[M+Si]比率が0.07以下であることが望まれる。MSiON膜のM/[M+Si]比率を0.07以下とすることで、比較的少ない酸素含有量でArF露光光に対する透過率を10%以上にすることが可能となる。
しかし、ガラス基板の主表面上にM/[M+Si]比率が0.07以下のMSiONからなる位相シフト膜を備えたマスクブランクから位相シフトマスクを製造する場合、EB欠陥修正時に問題が生じる場合があることが判明した。通常、マスクブランクの位相シフト膜に転写パターンをドライエッチングで形成した後に、マスク欠陥検査を行う。このマスク欠陥検査で位相シフト膜のパターンに黒欠陥部分が検出されると、その欠陥を除去する欠陥修正が行われる。この位相シフト膜のパターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った場合、修正レートが遅い(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が長い)場合があった。さらに、この位相シフト膜のパターンを上方からみたとき、修正レートの速い箇所と遅い箇所が存在し、面内における修正レートの均一性が低いことがわかった。このような位相シフト膜のパターンに対してEB欠陥修正を行うと、EB欠陥修正が長時間行われ、さらに、黒欠陥部分の除去がガラス基板との界面に到達するまでの面内での時間差が大きい。このため、黒欠陥部分が先に除去された領域のガラス基板の表面がEB欠陥修正に晒され続けることで、そのガラス基板の表面にダメージや局所的な掘り込みが生じるという問題を引き起こす場合がある。また、EB欠陥修正が長時間行われるため、黒欠陥部分に隣接する、本来除去すべきではない位相シフト膜のパターンが側壁方向でエッチングされてしまうという問題や、EB欠陥修正のスループットが低下するという問題を引き起こす場合がある。
これらの問題は、遷移金属シリサイドの酸化窒化物(MSiON)の薄膜だけでなく、遷移金属シリサイドの窒化物(MSiN)の薄膜でも発生することが判明した。また、これらの問題は、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する遷移金属シリサイド系材料の薄膜で共通の問題であることが判明した。さらに、これらの問題は、遷移金属以外の金属、ケイ素および窒素を含有する金属シリサイド系材料の薄膜にも見られると言える。
このため、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成される、転写パターンを形成するための薄膜を備えたマスクブランクにおいて、その薄膜における金属およびケイ素の合計含有量に対する金属の含有量の比率が0.07以下である場合でも、薄膜パターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、修正レートが速く(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が短い)、かつ、面内における修正レートの均一性が高いマスクブランクを提供することを目的とする。また、本発明は、このマスクブランクを用いて製造された転写用マスクを提供することを目的とする。さらに、本発明は、このような転写用マスクを製造する方法を提供することを目的とする。加えて、本発明は、このような転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板上に、転写パターンを形成するための薄膜を備えたマスクブランクであって、
前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成され、
前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.07以下であり、
前記薄膜は、前記透光性基板側とは反対側に、酸素を含有する表層を有し、
前記表層を除いた前記薄膜の内部領域に対して高分解能透過型電子顕微鏡によって顕微鏡像を取得したとき、前記顕微鏡像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が前記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であることを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.01以上であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記薄膜における窒素および酸素の合計含有量は、30原子%以上であることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記表層は、前記表層を除いた前記薄膜の内部領域よりも酸素含有量が多いことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記薄膜は、金属、ケイ素、窒素および酸素を含有する材料で形成されていることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を5%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする構成6記載のマスクブランク。
(構成8)
前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする構成6または7に記載のマスクブランク。
(構成9)
透光性基板上に、転写パターンを有する薄膜を備えた転写用マスクであって、
前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成され、
前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.07以下であり、
前記薄膜は、前記透光性基板側とは反対側に、酸素を含有する表層を有し、
前記表層を除いた前記薄膜の内部領域に対して高分解能透過型電子顕微鏡によって顕微鏡像を取得したとき、前記顕微鏡像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が前記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であることを特徴とする転写用マスク。
(構成10)
前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.01以上であることを特徴とする構成9記載の転写用マスク。
(構成11)
前記薄膜における窒素および酸素の合計含有量は、30原子%以上であることを特徴とする構成9または10に記載の転写用マスク。
(構成12)
前記表層は、前記表層を除いた前記薄膜の内部領域よりも酸素含有量が多いことを特徴とする構成9から11のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成13)
前記薄膜は、金属、ケイ素、窒素および酸素を含有する材料で形成されていることを特徴とする構成9から12のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成14)
前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする構成9から13のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成15)
前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を5%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする構成14記載の転写用マスク。
(構成16)
前記位相シフト膜上に、遮光帯パターンを含むパターンを有する遮光膜を備えることを特徴とする構成14または15に記載の転写用マスク。
(構成17)
構成1から8のいずれかに記載のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法であって、ドライエッチングにより前記薄膜に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成18)
構成9から16のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
(構成19)
構成17記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、転写パターンを形成するための薄膜が金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成され、その薄膜における金属およびケイ素の合計含有量に対する金属の含有量の比率が0.07以下であり、その薄膜が透光性基板側とは反対側に酸素を含有する表層を有し、その表層を除いた薄膜の内部領域に対して高分解能透過型電子顕微鏡によって顕微鏡像を取得したとき、その顕微鏡像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であることを特徴とする。このようなマスクブランクとすることにより、薄膜パターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、修正レートの遅い局所構造領域が少なく、その結果、修正レートが速くなる(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が短くなる)とともに、面内における修正レートの均一性が高くなる。このため、黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、透光性基板の表面のダメージや局所的な掘り込みを抑制することができる。また、黒欠陥部分に隣接する、本来除去すべきではない位相シフト膜のパターンの側壁方向のエッチングを抑制することができる。また、EB欠陥修正のスループットを高くすることができる。
また、本発明の転写用マスクは、転写パターンを有する薄膜が上記の本発明のマスクブランクの薄膜と同様の構成としていることを特徴としている。このような転写用マスクとすることにより、この転写用マスクの製造途上で転写パターンを形成するための薄膜のパターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った場合において、透光性基板の表面が局所的に掘り込まれる現象を抑制することができる。このため、本発明の転写用マスクは、転写精度の高い転写用マスクとなる。
本発明の実施形態におけるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本発明の実施形態における転写用マスクの製造工程を示す断面模式図である。 本発明の実施例におけるマスクブランクの加熱処理前のTEM像およびそのTEM像に対してFFTを行って得られた回折像である。 本発明の実施例におけるマスクブランクの加熱処理後のTEM像およびそのTEM像に対してFFTを行って得られた回折像である。 本発明の比較例におけるマスクブランクの加熱処理後のTEM像およびそのTEM像に対してFFTを行って得られた回折像である。
先ず、本発明の完成に至った経緯を述べる。
本発明者らは、マスクブランクのガラス基板上に設けられたMoSiONからなる薄膜において、Mo/[Mo+Si]比率が0.07以下の場合であっても、薄膜パターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、ガラス基板の表面に、ダメージや局所的な掘り込みが生じにくく、かつ、黒欠陥部分に隣接する、本来除去すべきではない薄膜のパターンに側壁方向のエッチングが生じにくいものを得ることを目的として、鋭意検討を行った。
その結果、薄膜のパターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、修正レートが速い(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が短い)場合があることがわかった。また、修正レートが速い場合、ガラス基板の表面に対する局所的な掘り込みが抑制されることがわかった。
そこで、修正レートが比較的速いMoSiONの薄膜と修正レートが比較的遅いMoSiONの薄膜の相違点を研究したところ、両者の薄膜の内部領域を高分解能透過型電子顕微鏡(HR−TEM:High Resolution Transmission Electron Microscope)によって観察したとき、両者の顕微鏡像(TEM像)に大きな相違があることが判明した。どちらの薄膜の場合も、HR−TEMによって取得したTEM像に、窒化ケイ素の微結晶構造が存在する領域が局所的に複数あることが確認された。しかし、窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所的な領域(局所構造領域)の数は、修正レートが比較的遅い薄膜の方が、修正レートが比較的速い薄膜より多かった。さらに、両者の薄膜の内部領域のTEM像に見られる各局所構造領域に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)による画像解析を行って回折像を取得したとき、両者の回折像に大きな相違があることも判明した。修正レートが比較的遅い薄膜の回折像には、α−Siの結晶構造を示す輝点が見られたが、修正レートが比較的遅い薄膜の回折像には、SiN系の結晶構造が存在することを示す輝点は見られるが、詳細な結晶構造を特定するほど鮮明な輝点は見られなかった。このことは、窒化ケイ素の微結晶の結晶化が、修正レートが比較的遅い薄膜の方が、修正レートが比較的速い薄膜より進んでいることを示す。
EB欠陥修正で黒欠陥部分が除去されるメカニズムから、薄膜の局所構造領域は、アモルファス領域に比べてEB欠陥修正で除去しにくいことが推測される。また、結晶化が進んだ局所構造領域は、結晶化の進んでいない局所構造領域よりEB欠陥修正で除去しにくいことが推測される。局所構造領域の数が多いMoSiONの薄膜の方が、局所構造領域の数が少ないMoSiONの薄膜よりもEB欠陥修正を行った際の修正レートが遅く(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が長く)、さらに、ガラス基板の表面に対して局所的な掘り込みも生じやすいことから、MoSiONの薄膜を局所構造領域が少ないものとすることで、上記の課題を解決できると本発明者らは考えた。
局所構造領域の数とEB欠陥修正を行った際の修正レート(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間)との関係は、MoSiONの薄膜だけでなく、MoSiNの薄膜でも同様の傾向があることが判明した。また、モリブデン、ケイ素および窒素を含有する、他のモリブデンシリサイド系材料の薄膜でも同様の傾向があることが判明した。さらに、モリブデン以外の他の遷移金属、ケイ素および窒素を含有する遷移金属シリサイド系材料の薄膜でも同様の傾向があることが判明した。これらの傾向は、遷移金属以外の金属、ケイ素および窒素を含有する金属シリサイド系材料の薄膜にも見られると言える。
本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、金属(M)、ケイ素(Si)および窒素(N)を含有する材料から形成され、M/[M+Si]比率が0.07以下である薄膜において、その薄膜の内部領域をHR−TEMによって観察したとき得られるTEM像から特定される上記局所構造領域の数が上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下である場合、その薄膜のパターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際の修正レートを十分に速くすることができ、さらに、EB欠陥修正を行った際のガラス基板の表面のダメージや局所的な掘り込みの発生を抑制することができるという結論に至り、本発明を完成させた。
次に、本発明の各実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るマスクブランク100の構成を示す断面図である。
マスクブランク100は、透光性基板1上に、転写パターンを形成するための薄膜である位相シフト2、遮光膜3およびハードマスク膜4がこの順に積層された構造を有する。位相シフト膜2は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成され、位相シフト膜2における金属およびケイ素の合計含有量に対する金属の含有量の比率は、0.07以下である。また、位相シフト膜2は、透光性基板1側とは反対側に、酸素を含有する表層を有し、表層を除いた位相シフト膜2の内部領域に対して高分解能透過型電子顕微鏡によって顕微鏡像を取得したとき、顕微鏡像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であることを特徴とする。
透光性基板1は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)などのガラス材料で形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArF露光光に対する透過率が高く、マスクブランクの透光性基板を形成する材料として特に好ましい。
転写パターンを形成するための位相シフト膜2は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成される。
位相シフト膜2に含まれる金属として、遷移金属が好ましい。位相シフト膜2に含まれる遷移金属として、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)などが挙げられる。遷移金属以外の金属として、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)およびガリウム(Ga)などが挙げられる。位相シフト膜2は2種類以上の金属を含有していてもよい。位相シフト膜2は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素を含有してもよい。
位相シフト膜2は、窒素に加え、いずれの非金属元素を含有してもよい。ここで、非金属元素とは、狭義の非金属元素(炭素、酸素、リン、硫黄、セレン、水素)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)および貴ガスを含むものをいう。狭義の非金属元素の中でも、位相シフト膜2の透過率を所定の値にするため、酸素を含有することが好ましい。貴ガスは、反応性スパッタリングで位相シフト膜2を成膜する際に成膜室内に存在することによって成膜速度を大きくし、生産性を向上させることができる元素である。この貴ガスがプラズマ化し、ターゲットに衝突することでターゲットからターゲット構成元素が飛び出し、途中、反応性ガスを取りこみつつ、透光性基板1上に積層されて位相シフト膜2が形成される。このターゲット構成元素がターゲットから飛び出し、透光性基板に付着するまでの間に成膜室中の貴ガスがわずかに取り込まれる。この反応性スパッタリングで必要とされる貴ガスとして、アルゴン、クリプトン、キセノンが好ましい。また、位相シフト膜2の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを位相シフト膜2に積極的に取りこませることができる。なお、貴ガスは、位相シフト膜2に対してRBS(Rutherford Back−Scattering Spectrometry)やXPS(X−ray Photoelectron Spectrometry)のような組成分析を行っても検出することが困難な元素である。このため、前記の金属、ケイ素および窒素を含有する材料には、貴ガスを含有する材料も包含しているとみなすことができる。
位相シフト膜2における金属およびケイ素の合計含有量[原子%]に対する金属の含有量[原子%]の比率は0.07以下であるとより好ましい。含有量の比率が0.07を超えると、位相シフト膜2に求められる所定の透過率が得られにくくなる。含有量の比率は0.01以上であると好ましく、0.02以上であるとより好ましい。0.01未満であると、位相シフト膜2の導電性が低くなり過ぎる。
位相シフト膜2における窒素および酸素の合計含有量は30原子%以上であると好ましく、40原子%以上であるとより好ましい。窒素および酸素の合計含有量が30原子%以上であると、位相シフト膜に求められる所定の透過率および位相差を確保しやすい。また、位相シフト膜2における窒素および酸素の合計含有量は70原子%以下であると好ましく、65原子%以下であるとより好ましい。
位相シフト膜2は、表層を除いた位相シフト膜2の内部領域に対してHR−TEMによってTEM像を取得したとき、TEM像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であり、上記内部領域の実面積0.01μm当たり40個以下であるとより好ましく、上記内部領域の実面積0.01μm当たり30個以下であるとさらに好ましい。局所構造領域は、EB欠陥修正で除去しにくい領域である。このため、局所構造領域の数が上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であると、位相シフト膜2のパターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、修正レートの遅い局所構造領域が少なく、その結果、修正レートが速くなる(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が短くなる。)とともに、面内における修正レートの均一性が高くなる。このため、黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、透光性基板の表面のダメージや局所的な掘り込みを抑制することができる。また、黒欠陥部分に隣接する、本来除去すべきではない位相シフト膜のパターンの側壁方向のエッチングを抑制することができる。また、EB欠陥修正のスループットを高くすることができる。
局所構造領域は、HR−TEMによって取得したTEM像に対してFFTによる画像解析を行って得られる回折像に、SiN系の結晶構造が存在することを示す輝点が見られる領域である。この輝点は、結晶構造を特定するほど鮮明な輝点である必要はない。
金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成される位相シフト膜のパターンの黒欠陥部分のEB欠陥修正では、黒欠陥部分に非励起状態のフッ素系ガスを供給しつつ、その部分に電子線を照射することで黒欠陥部分をエッチングして除去する。EB欠陥修正で使用するフッ素系ガスとして、XeF、XeF、XeF、XeOF、XeOF、XeO、XeO、XeO、ClF、ClF、BrF、BrF、IF、IFなどが挙げられ、特にXeFが好適である。
位相シフト膜2は、透光性基板1側とは反対側に、酸素を含有する表層を有する。この表層は、表層を除いた位相シフト膜2の内部領域よりも酸素含有量が多い表面酸化層であることが好ましい。酸素含有量が多い表面酸化層を有する位相シフト膜2は、転写用マスクの製造時の洗浄工程や転写用マスクの繰り返し使用時に行われるマスク洗浄で使用される洗浄液に対する耐性が高い。
表面酸化層(表層)は、位相シフト膜2の上に遮光膜3等の他の膜が形成される前にその位相シフト膜2に対して酸素含有雰囲気中での加熱処理を行うことで形成されることが好ましい。成膜後の加熱処理により、位相シフト膜2の膜応力を低減することもできる。表面酸化層は、その他の種々の酸化処理により形成することもできる。この酸化処理としては、例えば、酸素を含有する気体中におけるフラッシュランプ等による光照射処理、オゾンや酸素プラズマを最上層に接触させる処理などが挙げられる。フラッシュランプ等による光照射処理では、位相シフト膜2の膜応力を低減することもできる。位相シフト膜2の表面酸化層は、厚さが1nm以上であると好ましく、1.5nm以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜2の表面酸化層は、厚さが5nm以下であると好ましく、3nm以下であるとより好ましい。表面酸化層の厚さは、表面酸化層を除いた位相シフト膜2の内部領域の厚さより非常に小さいので、表面酸化層がEB欠陥修正に与える影響を考慮する必要はない。
位相シフト膜2は、ArF露光光を所定の透過率で透過させる機能を有する。位相シフト膜2は、ArF露光光を5%以上の透過率で透過させる機能を有することが好ましい。透過率が5%以上であると、位相シフトマスクとして使用する際に必要なパターン解像性を満たすことができる。透過率は10%以上であるとより好ましい。透過率が10%以上であると、位相シフト膜2のパターンのエッジ近傍を透過する透過したArF露光光に対してより高い位相シフト効果をもたらすことができる。透過率は40%以下であると好ましく、30%以下であるとより好ましい。
位相シフト膜2は、適切な位相シフト効果を得るために、透過したArF露光光に対して、この位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過したArF露光光との間で所定の位相差を生じさせる機能を有する。その位相差は、透過したArF露光光に対して、150度以上200度以下の範囲であると好ましい。位相差は、160度以上であるとより好ましく、170度以上であるとさらに好ましい。一方、位相差は、190度以下であるとより好ましく、180度以下であるとさらに好ましい。
位相シフト膜2は、ArF露光光に対する屈折率nが1.9以上であると好ましく、2.0以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜2は、ArF露光光に対する屈折率nが3.1以下であると好ましく、2.7以下であるとより好ましい。位相シフト膜2は、ArF露光光に対する消衰係数kが0.26以上であると好ましく、0.29以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜2は、ArF露光光に対する消衰係数kが0.62以下であると好ましく、0.54以下であるとより好ましい。位相シフト膜2が、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にあると、位相シフト膜に求められる所定の位相差および透過率を確保しやすい。
位相シフト膜2の厚さは、90nm以下であると好ましく、80nm以下であるとより好ましい。位相シフト膜2の厚さが90nmを超えると、位相シフト膜2のパターンの倒壊が発生しやすくなる。また、位相シフト膜2の厚さは、50nm以上であると好ましく、60nm以上であるとより好ましい。位相シフト膜2の厚さが50nm未満であると、所定の位相差を確保できなくなる恐れがある。
位相シフト膜2は、スパッタリングによって成膜される。DCスパッタリング、RFスパッタリングおよびイオンビームスパッタリングなどのいずれのスパッタリングも適用可能である。成膜レートを考慮すると、RFスパッタリングを適用することがより好ましい。
例えば、位相シフト膜2が、遷移金属、ケイ素、窒素および酸素を含有する材料で形成される場合、遷移金属シリサイドターゲットまたは遷移金属シリサイドに半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素ガスと酸素ガスと貴ガスとを含むスパッタリングガスまたは一酸化窒素ガスと貴ガスとを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって形成される。また、例えば、位相シフト膜2が、遷移金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成される場合、遷移金属シリサイドターゲットまたは遷移金属シリサイドに半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料からなるターゲットを用い、窒素ガスと貴ガスとを含むスパッタリングガス中での反応性スパッタリングによって形成される。
スパッタリングガスとして用いる貴ガスの種類に制限はないが、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いることが好ましい。また、位相シフト膜2の応力を緩和するために、原子量の小さいヘリウム、ネオンを位相シフト膜2に積極的に取りこませることができる。
位相シフト膜2は、成膜後に加熱処理されることが好ましい。成膜後の加熱処理時の加熱温度は、180℃以上であると好ましく、200℃以上であるより好ましい。また、成膜後の加熱処理時の加熱温度は、300℃以下であると好ましく、280℃以下であるとより好ましい。300℃以下であると、位相シフト膜2の内部領域に対してHR−TEMによってTEM像を取得したとき、TEM像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数を上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下に抑えることができる。位相シフト膜2をスパッタリング法で形成するときの成膜条件を調整すること等、ほかの方法によっても局所構造領域の数を上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下に抑えることも可能である。いずれの方法を用いる場合でも、位相シフト膜(転写パターンを形成するための薄膜)2における局所構造領域の数を少なくすることがEB欠陥修正の修正レートを向上させるために重要であり、このような技術思想は従来にはないものである。
マスクブランク100において、位相シフト膜2上に遮光膜3を備えることが好ましい。一般に、転写用マスク200(図2参照)では、転写パターンが形成される領域(転写パターン形成領域)の外周領域は、所定値以上の光学濃度(OD)を確保することが求められている。露光装置を用いて半導体基板上のレジスト膜に露光転写した際に外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないようにするためである。転写用マスク200の外周領域では、光学濃度が2.0よりも大きいことが少なくとも求められている。上記の通り、位相シフト膜2は所定の透過率で露光光を透過する機能を有しており、位相シフト膜2だけでは上記の光学濃度を確保することは困難である。このため、マスクブランク100を製造する段階で位相シフト膜2の上に、不足する光学濃度を確保するために遮光膜3を積層しておくことが望まれる。このようなマスクブランク100の構成とすることで、転写用マスク200を製造する途上で、位相シフト効果を使用する領域(基本的に転写パターン形成領域)の遮光膜3を除去すれば、外周領域に上記の光学濃度が確保された転写用マスク200を製造することができる。なお、マスクブランク100は、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における光学濃度が2.5以上であると好ましく、2.8以上であるとより好ましい。また、遮光膜3の薄膜化のため、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における光学濃度は4.0以下であると好ましい。
遮光膜3は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜3および2層以上の積層構造の遮光膜3の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であってもよく、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
遮光膜3は、位相シフト膜2との間に別の膜を介さない場合においては、位相シフト膜2にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。この場合、遮光膜3は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。この遮光膜3を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料が挙げられる。
一般に、クロム系材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでエッチングされるが、クロム金属はこのエッチングガスに対するエッチングレートがあまり高くない。塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスのエッチングガスに対するエッチングレートを高める点を考慮すると、遮光膜3を形成する材料としては、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を用いることが好ましい。また、遮光膜3を形成するクロムを含有する材料に、インジウム、モリブデンおよびスズのうち1以上の元素を含有させてもよい。インジウム、モリブデンおよびスズのうち1以上の元素を含有させることで、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスに対するエッチングレートをより高くすることができる。
一方、マスクブランク100において、遮光膜3と位相シフト膜2との間に別の膜を介する構成とする場合においては、前記のクロムを含有する材料でその別の膜(エッチングストッパ兼エッチングマスク膜)を形成し、ケイ素を含有する材料で遮光膜3を形成する構成とすることが好ましい。クロムを含有する材料は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングされるが、有機系材料で形成されるレジスト膜は、この混合ガスでエッチングされやすい。ケイ素を含有する材料は、一般にフッ素系ガスや塩素系ガスでエッチングされる。これらのエッチングガスは基本的に酸素を含有しないため、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによってエッチングする場合よりも、有機系材料で形成されるレジスト膜の減膜量が低減できる。このため、レジスト膜の膜厚を低減することができる。
遮光膜3を形成するケイ素を含有する材料には、遷移金属を含有させてもよく、遷移金属以外の金属元素を含有させてもよい。遮光膜3に遷移金属を含有させると、含有させない場合に比べて遮光性能が大きく向上し、遮光膜の厚さを薄くすることが可能となる。遮光膜3に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
一方、遮光膜3を形成するケイ素を含有する材料として、ケイ素および窒素からなる材料、またはケイ素および窒素からなる材料に半金属元素および非金属元素から選ばれる1以上の元素を含有する材料を適用してもよい。
上記の位相シフト膜2に積層して遮光膜3を備えるマスクブランク100において、遮光膜3の上に遮光膜3をエッチングするときに用いられるエッチングガスに対してエッチング選択性を有する材料で形成されたハードマスク膜4をさらに積層させた構成とするとより好ましい。遮光膜3は、所定の光学濃度を確保する機能が必須であるため、その厚さを低減するには限界がある。ハードマスク膜4は、その直下の遮光膜3にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学的な制限を受けない。このため、ハードマスク膜4の厚さは遮光膜3の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。そして、有機系材料のレジスト膜は、このハードマスク膜4にパターンを形成するドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能するだけの膜の厚さがあれば十分であるので、従来よりも大幅にレジスト膜の厚さを薄くすることができる。
このハードマスク膜4は、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合は、前記のケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜4の表面にHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、SiO、SiN、SiON等で形成されることがより好ましい。また、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜4の材料として、前記のほか、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる1以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。その材料として、たとえば、Ta、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCN、TaBOCNなどが挙げられる。一方、このハードマスク膜4は、遮光膜3がケイ素を含有する材料で形成されている場合は、上記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
マスクブランク100において、上記ハードマスク膜4の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、ハードマスク膜4に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)に、線幅が40nmのSRAF(Sub−Resolution Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも、レジストパターンの断面アスペクト比が1:2.5と低くすることができるので、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜は、膜厚が80nm以下であるとより好ましい。
図2に、本発明の実施形態に係るマスクブランク100から転写用マスク200を製造する工程の断面模式図を示す。
転写用マスク200は、透光性基板1上に、転写パターンを有する薄膜である位相シフト2と、遮光帯を含むパターンを有する遮光膜3がこの順に積層された構造を有する。転写用マスク200は、透光性基板1上に、転写パターンを有する位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)を備え、位相シフト膜2は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成され、位相シフト膜2における金属およびケイ素の合計含有量に対する金属の含有量の比率は、0.07以下であり、位相シフト膜2は、透光性基板1側とは反対側に、酸素を含有する表層を有し、表層を除いた位相シフト膜2の内部領域に対して高分解能透過型電子顕微鏡によって顕微鏡像を取得したとき、顕微鏡像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が上記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であることを特徴とする。
この転写用マスク200は、マスクブランク100と同様の技術的特徴を有している。転写用マスク200における透光性基板1、位相シフト膜2および遮光膜3に関する事項については、マスクブランク100と同様である。
このような転写用マスク200の位相シフト膜2には、EB欠陥修正を行った際の修正レートが遅い局所構造領域が少ない。このため、転写用マスク200の位相シフトパターンの黒欠陥部分にEB欠陥修正を行った際、EB欠陥修正後の透光性基板1の表面はダメージや局所的な掘り込みが少なく、また、EB欠陥修正後の位相シフトパターン2aのパターン側壁はがたつきが少なく良好である。
このため、ArFエキシマレーザーを露光光源として用いる露光装置のマスクステージに、転写用マスク200をセットし、半導体基板上のレジスト膜に位相シフトパターン2aを露光転写する際も、半導体基板上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度でパターンを転写することができる。その結果、このレジストパターンをマスクとして、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを半導体基板上に形成することができる。
本発明の実施形態に係る転写用マスク200の製造方法は、上記のマスクブランク100を用い、ドライエッチングにより位相シフト膜2に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴とする。
図2に示す転写用マスク200の製造方法は、ドライエッチングにより遮光膜3に転写パターンを形成する工程と、転写パターンを有する遮光膜3(遮光パターン3a)をマスクとするドライエッチングにより位相シフト膜2に転写パターンを形成する工程と、遮光帯を含むパターンを有するレジスト膜(レジストパターン6b)をマスクとするドライエッチングにより遮光膜3(遮光パターン3a)に遮光帯を含むパターン(遮光パターン3b)を形成する工程とを備える。
以下、図2に示す製造工程にしたがって、転写用マスク200の製造方法の一例を説明する。なお、この例では、遮光膜3にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜4にはケイ素を含有する材料を適用している。
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(図2(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成する(図2(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン5aを除去してから、ハードマスクパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成する(図2(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aも除去する(図2(d)参照)。
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべき遮光帯を含むパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成する(図2(e)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク200を得る(図2(f)参照)。
得られた転写用マスク200の位相シフトパターン2aに黒欠陥部分がある場合、その黒欠陥部分のEB欠陥修正を行う。位相シフト膜2には、EB欠陥修正を行った際の修正レートが遅い局所構造領域が少ないので、EB欠陥修正後の透光性基板1の表面はダメージや局所的な掘り込みが少なく、また、EB欠陥修正後の位相シフトパターン2aのパターン側壁はがたつきが少ない良好なものである。
なお、上記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。たとえば、塩素系ガスとして、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、CCl、BCl等が挙げられる。また、上記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。たとえば、フッ素系ガスとして、CHF、CF、C、C、SF等が挙げられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス材料の透光性基板1に対するエッチングレートが比較的低いため、透光性基板1へのダメージをより小さくすることができる。
本発明の実施の形態に係る半導体デバイスの製造方法は、前記の転写用マスク200または前記のマスクブランク100を用いて製造された転写用マスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜にパターンを露光転写することを特徴とする。
本発明の実施形態に係る転写用マスク200やマスクブランク100は、上記の通りの効果を有するため、ArFエキシマレーザーを露光光源として用いる露光装置のマスクステージに、転写用マスク200をセットし、半導体基板上のレジスト膜に位相シフトパターン2aを露光転写すると、半導体基板上のレジスト膜に設計仕様を十分に満たす精度のパターンが形成される。その結果、このレジストパターンをマスクとして回路パターンを形成する場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンが形成された半導体デバイスを製造することができる。
なお、上述した実施の形態では、透光性基板上に設けられる薄膜が位相シフト膜である位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクの場合について説明したが、透光性基板上に設けられる薄膜が遮光膜であるバイナリマスクブランクおよびバイナリマスクの場合でも同様に本発明を適用することができる。その場合、遮光膜である薄膜上にハードマスク膜を設ける構造とすることが好ましい。また、上述した実施の形態では、露光光源としてArFエキシマレーザーを用いる場合について説明したが、他の露光光源を用いる場合でも同様に本発明を適用することができる。
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面が所定の表面粗さ(二乗平均平方根粗さRqで0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理が施されたものであった。
次に、枚葉式DCスパッタリング装置内に透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=4原子%:96原子%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N)、酸素(O)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガス(成膜室内のガス圧力:0.3Pa)とする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、透光性基板1上に、モリブデン、ケイ素、窒素および酸素からなる、位相シフト膜2(MoSiON膜)を74nmの厚さで成膜した。
また、別の透光性基板上に、同条件で位相シフト膜を成膜したもの(以下、非加熱処理品という。)を準備した。位相シフト量測定装置(例えば、レーザーテック社製、MPM−193)を用いて、ArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における非加熱処理品の透過率および位相差を測定したところ、透過率は15.7%、位相差は178.6度であった。また、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)による分析で、非加熱処理品の位相シフト膜の膜組成を測定したところ、表層を除いた位相シフト膜2の内部領域の平均組成は、Moが2.6原子%、Siが36.8原子%、Oが15.5原子%、Nが45.1原子%であった。したがって、表層を除いた位相シフト膜2の内部領域のMo/(Mo+Si)は0.066、NおよびOの合計含有量は60.6原子%である。なお、成膜後の位相シフト膜2の厚さは、例えば、X線反射率法(XRR(X−Ray Reflectometry))を用いた測定装置(例えば、リガク社製 GXR−300)によって確認することができる。その他の膜厚も同様に確認することができる。
また、HR−TEM(例えば、FEI社製、Tecnai F20)を用いて、倍率40万倍の条件で、非加熱処理品の、表層を除いた位相シフト膜の内部領域を複数箇所観察した。図3(a),(b)はHR−TEMによって取得された非加熱処理品のTEM像を示す。各TEM像を小領域のグリッドに区分し、すべてのグリッドに対してFFTによる画像解析を行って回折像を取得した。図3(c)は図3(a)中の四角で囲んだグリッドX1に対する回折像を示し、図3(d)は図3(c)中の四角で囲んだグリッドY1に対する回折像を示す。図3(c)のリング状の回折像から、グリッドX1はアモルファス領域であると判定でき、図3(d)の輝点が見られる回折像から、グリッドY1は窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域であると判定できる。図示しない他のグリッドについても同様に判定した結果から、非加熱処理品のTEM像から特定される局所構造領域の数は上記内部領域の実面積0.01μm当たり73.53個であった。なお、非加熱処理品の位相シフト膜の内部領域は、大部分がアモルファス構造である。
また、非加熱処理品の位相シフト膜をX線回折(XRD:X−ray Diffraction)による分析を行ったところ、格子面間隔dは4.361オングストロームであった。
また、XPSによる分析で非加熱処理品の位相シフト膜の各結合状態の存在比率を測定したところ、SiN結合が12.96%、Si結合が82.58%、SiOまたはSiONのどちらかと認められる結合が4.45%であった。
次に、上記の位相シフト膜2が形成された透光性基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中において加熱温度280℃、加熱時間30分の条件で加熱処理を行った。加熱処理により、位相シフト膜2の透光性基板1側とは反対側に表面酸化層(表層)が形成された。
また、別の透光性基板上に、同条件で位相シフト膜を成膜し、加熱処理を行ったもの(以下、低温加熱処理品という。)を準備した。非加熱処理品と同様に低温加熱処理品の透過率および位相差を測定したところ、透過率は17.2%、位相差は178.3度であった。また、非加熱処理品と同様に低温加熱処理品の位相シフト膜の膜組成をXPSによる分析で測定したところ、表面酸化層を除いた位相シフト膜2の内部領域の平均組成は、Moが2.5原子%、Siが37.2原子%、Oが14.9原子%、Nが45.3原子%であった。したがって、表面酸化層を除いた位相シフト膜2の内部領域のMo/(Mo+Si)は0.063、NおよびOの合計含有量は60.2原子%である。また、走査透過電子顕微鏡法(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)とエネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)で、低温加熱処理品の位相シフト膜を分析したところ、位相シフト膜2の表面から約1.5nm程度の厚さで表面酸化層が形成されていることが確認できた。
また、非加熱処理品と同様に低温加熱処理品の、表面酸化層を除いた位相シフト膜の内部領域を複数箇所観察した。図4(a),(b)はHR−TEMによって取得された低温加熱処理品のTEM像を示す。各TEM像を小領域のグリッドに区分し、すべてのグリッドに対してFFTによる画像解析を行って回折像を取得した。図4(c)は図4(a)中の四角で囲んだグリッドX2に対してFFTによる画像解析を行って得られた回折像を示し、図4(d)は図4(b)中の四角で囲んだグリッドY2に対してFFTによる画像解析を行って得られた回折像を示す。図4(c)のリング状の回折像からグリッドX2はアモルファス領域であると判定でき、図4(d)の輝点が見られる回折像からグリッドY2は窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域であると判定できる。図示しない他のグリッドについても同様に判定した結果から、低温加熱処理品のTEM像から特定される局所構造領域の数は上記内部領域の実面積0.01μm当たり25.95個であり、後述する高温加熱処理品の場合に比べて非常に少ない。このことから、低温加熱処理品の位相シフト膜には、EB欠陥修正を行った際の修正レートの遅い局所構造領域が少ないと考えられる。修正レートの遅い局所構造領域が少ないことから、低温加熱処理品では、位相シフト膜のパターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、修正レートが速い(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が短い)とともに、面内における修正レートの均一性が高いと考えられる。なお、低温加熱処理品の位相シフト膜の内部領域は、大部分がアモルファスである。
また、非加熱処理品と同様に低温加熱処理品の位相シフト膜の格子面間隔dをXRDによる分析で測定したところ、格子面間隔dは4.219オングストロームであった。低温加熱処理品の格子面間隔dは非加熱処理品の場合より小さいため、低温加熱処理品の方が非加熱処理品より位相シフト膜の結晶化が進んでいると考えられる。低温加熱処理品の格子面間隔dは後述する高温加熱処理品の場合より大きいため、低温加熱処理品の方が高温加熱処理品より位相シフト膜の結晶化が進んでいないと考えられる。
また、非加熱処理品と同様に低温加熱処理品の位相シフト膜の各結合状態の存在比率をXPSによる分析で測定したところ、SiN結合が11.16%、Si結合が82.75%、SiOまたはSiONのどちらかと認められる結合が6.09%であった。低温加熱処理品のSi結合の割合は非加熱処理品の場合より大きいため、低温加熱処理品の方が非加熱処理品より位相シフト膜の結晶化が進んでいると考えられる。低温加熱処理品のSi結合の割合は後述する高温加熱処理品の場合より小さいため、低温加熱処理品の方が高温加熱処理品より位相シフト膜の結晶化が進んでいないと考えられる。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に加熱処理後の位相シフト膜2が形成された透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2上にCrOCからなる遮光膜3(Cr:71原子%、O:15原子%、C:14原子%)を36nmの厚さで成膜した。
この位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1に対し、分光光度計(アジレントテクノロジー社製 Cary4000)を用い、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造のArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であった。
さらに、枚葉式RFスパッタ装置内に、位相シフト膜2および遮光膜3が積層された透光性基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガス(圧力=0.03Pa)をスパッタリングガスとするRFスパッタリングにより、遮光膜3上に、ケイ素および酸素からなるハードマスク膜4を5nmの厚さで成膜した。
以上の手順により、透光性基板1上に、位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4が積層された構造を備える実施例1のマスクブランク100を作製した。
[転写用マスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の転写用マスク200を作製した。
最初に、ハードマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(図2(a)参照)。なお、この時電子線描画した第1のパターンには、位相シフト膜2に黒欠陥が形成されるように、本来形成されるべき位相シフトパターンの他にプログラム欠陥を加えておいた。
次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(図2(b)参照)。
次に、第1のレジストパターン5aを除去した。続いて、ハードマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=13:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成した(図2(c)参照)。
次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SFとHeの混合ガス)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aを除去した(図2(d)参照)。
次に、遮光パターン3a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべき遮光帯を含むパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成した(図2(e)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、転写用マスク200を得た(図2(f)参照)。
作製した転写用マスク200に対してマスク検査装置によって位相シフトパターン2aの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターン2aに黒欠陥部分が確認された。その黒欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行った。EB欠陥修正後の透光性基板1の表面はダメージや局所的な掘り込みが少なく、また、EB欠陥修正後の位相シフトパターン2aのパターン側壁はがたつきが少ない良好なものであった。
EB欠陥修正後の転写用マスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体基板上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。
このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、実施例1の転写用マスク200を露光装置のマスクステージにセットし、半導体基板上のレジスト膜に露光転写した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線のない高精度で歩留まりの高い回路パターンを半導体基板上に形成することができるといえる。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
比較例1のマスクブランクは、位相シフト膜の加熱処理の加熱温度を変更した以外は、実施例1のマスクブランク100と同様の手順で作製された。
具体的には、実施例1と同様に、透光性基板を準備し、透光性基板上に位相シフト膜を成膜した。
次に、この位相シフト膜2が形成された透光性基板に対して、電気炉を用いて、大気中において加熱温度550℃、加熱時間1時間の条件で加熱処理を行った。加熱処理により、位相シフト膜の透光性基板側とは反対側に表面酸化層(表層)が形成された。
また、別の透光性基板上に、同条件で位相シフト膜を成膜し、加熱処理を行ったもの(以下、高温加熱処理品という。)を準備した。非加熱処理品と同様に高温加熱処理品の透過率および位相差を測定したところ、透過率は20.6%、位相差は177.5度であった。また、非加熱処理品と同様に高温加熱処理品の位相シフト膜の膜組成を測定したところ、表面酸化層を除いた位相シフト膜の内部領域の平均組成は、Moが2.7原子%、Siが36.4原子%、Oが16.9原子%、Nが44.0原子%であった。したがって、表面酸化層を除いた位相シフト膜の内部領域のMo/(Mo+Si)は0.069、NおよびOの合計含有量は60.9原子%である。また、低温加熱処理品と同様に、STEMとEDXで高温加熱処理品の位相シフト膜を分析したところ、位相シフト膜の表面から約1.5nm程度の厚さで表面酸化層が形成されていることが確認できた。
また、非加熱処理品と同様に高温加熱処理品の、表面酸化層を除いた位相シフト膜の内部領域を複数箇所観察した。図5(a),(b)はHR−TEMによって取得された高温加熱処理品のTEM像を示す。各TEM像を小領域のグリッドに区分し、すべてのグリッドに対してFFTによる画像解析を行って回折像を取得した。図5(c)は図5(a)中の四角で囲んだグリッドX3に対してFFTによる画像解析を行って得られた回折像を示し、図5(d)は図5(b)中の四角で囲んだグリッドY3に対してFFTによる画像解析を行って得られた回折像を示す。図5(c)のリング状の回折像からグリッドX3はアモルファス領域であると判定でき、図5(d)の輝点が見られる回折像からグリッドY3は窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域であると判定できる。図示しない他のグリッドについても同様に判定した結果から、高温加熱処理品のTEM像から特定される局所構造領域の数は上記内部領域の実面積0.01μm当たり250.87個であり、低温加熱処理品の場合に比べて非常に多い。このことから、高温加熱処理品の位相シフト膜には、EB欠陥修正を行った際の修正レートの遅い箇所が多数存在していると考えられる。修正レートの遅い箇所が多数存在する結果、高温加熱処理品では、位相シフト膜のパターンの黒欠陥部分に対してEB欠陥修正を行った際に、修正レートが遅い(すなわち、黒欠陥部分をすべて除去するまでの時間が長い)とともに、面内における修正レートの均一性が低いと考えられる。なお、高温加熱処理品の位相シフト膜の内部領域も、大部分がアモルファスである。また、図5(d)の回折像には、α−Siの結晶構造の存在を示す、(11−20)面,(2−1−10)面,(−2110)面,(−1−120)面に対応する4つの輝点が見られる。このため、高温加熱処理品の方が、非加熱処理品および低温加熱処理品より、微結晶の結晶化がすすんでいると考えられる。
また、非加熱処理品と同様に高温加熱処理品の位相シフト膜の格子面間隔dをXRDによる分析で測定したところ、格子面間隔dは4.104オングストロームであった。高温加熱処理品の格子面間隔dは非加熱処理品および低温加熱処理品の場合より小さいため、高温加熱処理品の方が非加熱処理品および低温加熱処理品より位相シフト膜の結晶化が進んでいると考えられる。
また、非加熱処理品と同様に高温加熱処理品の位相シフト膜の各結合状態の存在比率をXPSによる分析で測定したところ、SiN結合が10.86%、Si結合が84.19%、SiOまたはSiONのどちらかと認められる結合が4.95%であった。高温加熱処理品のSi結合の割合は非加熱処理品および低温加熱処理品の場合より大きいため、高温加熱処理品の方が非加熱処理品および低温加熱処理品より位相シフト膜の結晶化が進んでいると考えられる。
次に、実施例1と同様に、加熱処理後の位相シフト膜上にCrOCからなる遮光膜(Cr:71原子%、O:15原子%、C:14原子%)を36nmの厚さで形成した。
この位相シフト膜および遮光膜が積層された透光性基板に対し、実施例1と同様に、位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造のArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における光学濃度を測定したところ、3.0以上であった。
さらに、実施例1と同様に、遮光膜上に、ケイ素および酸素からなるハードマスク膜を5nmの厚さで形成した。
以上の手順により、透光性基板上に、位相シフト膜、遮光膜およびハードマスク膜が積層された構造を備える比較例1のマスクブランクを製造した。
[転写用マスクの製造]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の転写用マスクを作製した。
作製した比較例1の転写用マスクに対してマスク検査装置によって位相シフトパターンの検査を行ったところ、プログラム欠陥を配置していた箇所の位相シフトパターンに黒欠陥部分が確認された。その黒欠陥部分に対し、電子線とXeFガスを用いるEB欠陥修正を行った。EB欠陥修正後の透光性基板の表面はダメージや局所的な掘り込みが見られ、また、EB欠陥修正後の位相シフトパターンのパターン側壁にがたつきが見られた。
EB欠陥修正後の比較例1の転写用マスクに対し、実施例1の場合と同様に、波長193nmの露光光で半導体基板上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。
このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、EB欠陥修正を行った部分の転写像は転写不良が発生するレベルのものであった。この結果から、比較例1の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体基板上のレジスト膜に露光転写した場合、精度不足や転写不良に起因する配線短絡や断線が生じる回路パターンが半導体基板上に形成されると予想される。
1 透光性基板
2 位相シフト膜
2a 位相シフトパターン
3 遮光膜
3a,3b 遮光パターン
4 ハードマスク膜
4a ハードマスクパターン
5a 第1のレジストパターン
6b 第2のレジストパターン
100 マスクブランク
200 転写用マスク

Claims (19)

  1. 透光性基板上に、転写パターンを形成するための薄膜を備えたマスクブランクであって、
    前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成され、
    前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.07以下であり、
    前記薄膜は、前記透光性基板側とは反対側に、酸素を含有する表層を有し、
    前記表層を除いた前記薄膜の内部領域に対して高分解能透過型電子顕微鏡によって顕微鏡像を取得したとき、前記顕微鏡像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が前記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であることを特徴とするマスクブランク。
  2. 前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.01以上であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記薄膜における窒素および酸素の合計含有量は、30原子%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記表層は、前記表層を除いた前記薄膜の内部領域よりも酸素含有量が多いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記薄膜は、金属、ケイ素、窒素および酸素を含有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
  7. 前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を5%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項6記載のマスクブランク。
  8. 前記位相シフト膜上に、遮光膜を備えることを特徴とする請求項6または7に記載のマスクブランク。
  9. 透光性基板上に、転写パターンを有する薄膜を備えた転写用マスクであって、
    前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料で形成され、
    前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.07以下であり、
    前記薄膜は、前記透光性基板側とは反対側に、酸素を含有する表層を有し、
    前記表層を除いた前記薄膜の内部領域に対して高分解能透過型電子顕微鏡によって顕微鏡像を取得したとき、前記顕微鏡像から特定される窒化ケイ素の微結晶構造が存在する局所構造領域の数が前記内部領域の実面積0.01μm当たり50個以下であることを特徴とする転写用マスク。
  10. 前記薄膜における前記金属およびケイ素の合計含有量に対する前記金属の含有量の比率は、0.01以上であることを特徴とする請求項9記載の転写用マスク。
  11. 前記薄膜における窒素および酸素の合計含有量は、30原子%以上であることを特徴とする請求項9または10に記載の転写用マスク。
  12. 前記表層は、前記表層を除いた前記薄膜の内部領域よりも酸素含有量が多いことを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の転写用マスク。
  13. 前記薄膜は、金属、ケイ素、窒素および酸素を含有する材料で形成されていることを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の転写用マスク。
  14. 前記薄膜は、位相シフト膜であることを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載の転写用マスク。
  15. 前記位相シフト膜は、ArFエキシマレーザーの露光光を5%以上の透過率で透過させる機能と、前記位相シフト膜を透過した前記露光光に対して前記位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記露光光との間で150度以上200度以下の位相差を生じさせる機能とを有することを特徴とする請求項14記載の転写用マスク。
  16. 前記位相シフト膜上に、遮光帯パターンを含むパターンを有する遮光膜を備えることを特徴とする請求項14または15に記載の転写用マスク。
  17. 請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法であって、ドライエッチングにより前記薄膜に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
  18. 請求項9から16のいずれかに記載の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
  19. 請求項17記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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