JP6770701B2 - 蓄電素子 - Google Patents
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Description
即ち、本実施形態の蓄電素子は、フッ素を含有する電解質塩を含む電解液と、電極とを含み、電極は、アルミニウム製の電極基材と、該電極基材の表面に沿って配置された活物質層と、電極基材と活物質層との間に配置された多孔質な中間層と、を有し、電極基材の表面をXPS測定したときの、Al2O3を表すピークの極大強度Aと、AlF3を表すピークの極大強度Bとは、0.7≦B/A≦1.0の関係式を満たす。
以下では、図1に示すように、蓋板32の長辺方向をX軸方向とし、蓋板32の短辺方向をY軸方向とし、蓋板32の法線方向をZ軸方向とする。
上記の蓄電素子1では、製造される前の金属箔111の表面全体に酸化アルミニウム(Al2O3)が生じている。一般的に、酸化アルミニウム(Al2O3)は、フッ素を含有する電解質塩のフッ素によって腐食されやすい。ところで、製造時には、金属箔111の表面の一部は、多孔質な中間層113の細孔に入った電解液と直接的に接触することとなる。金属箔111の表面が電解液と接触すると、金属箔111の表面がフッ素によって腐食され、フッ化アルミニウム(AlF3)やAlOxFyなどのフッ化物が生じ得る。AlOxFyが生じると、腐食がさらに進行して、電極基材と活物質層との間の抵抗が高くなり、電極基材と活物質層との間で集電性が低下する。ところが、電解液が細孔に入った状態では、電解液中の電解質塩のフッ素によって、酸化アルミニウム(Al2O3)の酸素(O)の一部だけがフッ化物化してAlOxFyへ変化することが抑制される一方、酸化アルミニウム(Al2O3)がフッ化アルミニウム(AlF3)へと変化する。即ち、細孔に入った電解液と金属箔111の表面とが接触した部分では、酸化アルミニウム(Al2O3)の酸素(O)の一部だけがフッ素に置き換わる反応よりも、酸化アルミニウム(Al2O3)の酸素(O)の全てがフッ素に置き換わる反応が優位となる。このように、金属箔111の表面の一部と、中間層113の細孔に入った電解液とが接触することで、金属箔111の表面の一部が腐食してAlF3が生じている。AlF3は、電解質塩のフッ素によってアルミニウム製の金属箔111の内部へ腐食がさらに進行することを抑制できる。一方で、金属箔111の表面において、中間層113の細孔に入り込んだ電解液と直接接していない部分には、フッ化物化しないAl2O3が存在する。Al2O3は、上述のごとく、フッ素によって腐食されやすいものの、Al2O3が存在する部分は、電解液と直接には接触しない。よって、Al2O3が存在する部分は、電解質塩のフッ素によって腐食されにくい。アルミニウム製の金属箔111と中間層113とを含む正極11を備えた上記蓄電素子1にて、Al2O3のピークの極大値を表す極大強度Aと、AlF3のピークの極大値を表す極大強度Bとの関係が0.7≦B/A≦1.0の関係式を満たすことにより、アルミニウム製の金属箔111の表面付近にて腐食が内部へと進行することをAlF3によって十分に抑制できる。これにより、腐食の進行によって電極基材と活物質層との間の抵抗が高くなって、電極基材と活物質層との間で集電性が低下してしまうことを抑制できる。従って、上記の蓄電素子1は、比較的高温で放置された場合でも、十分な出力耐久性を有することができる。
即ち、腐食によって金属箔111の表面に上記AlOxFyが生成してしまうと、内部への腐食の進行がAlOxFyによって抑えられない。これにより、金属箔111の表面付近に導電性に乏しい層が形成され得る。このような層が形成されると、金属箔111の集電性が低くなり、蓄電素子の出力耐久性が不十分になり得る。
詳しくは、ピーク細孔径が0.5μm以上であることにより、電解液が中間層113により浸透しやすくなる。電解液が浸透しやすくなる分、電池における異常反応によって電解液が分解した場合に、ガスが発生しやすくなる。これにより、中間層113の体積が膨張しやすくなり、中間層113が金属箔111から剥離しやすくなる。従って、異常反応をより止めやすくなり、電池の安全性をより向上させることができる。一方、ピーク細孔径が2.5μm以下であることにより、中間層113に浸透した電解液中のフッ素含有電解質塩によって、金属箔111の表面にフッ化アルミニウム(AlF3)をより確実に生じさせることができる。
詳しくは、上記の細孔径の容積の合計が0.5mL/g以上であることにより、電解液が中間層113により浸透しやすくなる。電解液が浸透しやすくなる分、電池における異常反応によって電解液が分解した場合に、ガスが発生しやすくなる。これにより、中間層113の体積が膨張しやすくなり、中間層113が金属箔111から剥離しやすくなる。従って、異常反応をより止めやすくなり、電池の安全性をより向上させることができる。一方、上記の細孔径の容積の合計が2.0mL/g以下であることにより、中間層113に浸透した電解液中のフッ素含有電解質塩によって、金属箔111の表面にフッ化アルミニウム(AlF3)をより確実に生じさせることができる。なお、細孔の大きさが適度に小さいことにより、酸化アルミニウムから、より確実にフッ化アルミニウムが生じる。即ち、部分的にフッ素化された酸化アルミニウム(例えばAlOxFyで示される化合物)が生じることが抑制される。部分的にフッ素化された酸化アルミニウムは、アルミニウム製の金属箔111の具色の進行を止めることが困難なものである。
(1)正極の作製
溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、導電助剤(アセチレンブラック)と、バインダ(ヒドロキシエチルキトサン)と、硬化剤(ピロメリット酸)とを、混合し、混練することで、中間層用の組成物を調製した。中間層を形成した後(塗布、乾燥後)の組成が、導電助剤33質量%、バインダ34質量%、硬化剤33質量%となるように、それぞれ配合した。調製した中間層用の組成物を、アルミニウム箔(15μm厚み)の両面に、乾燥後の塗布量(目付量)が0.14mg/cm2となるようにそれぞれ塗布し、乾燥させた。
次に、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、導電助剤(アセチレンブラック)と、バインダ(PVdF)と、平均粒子径D50が5μmの活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の粒子とを、混合し、混練することで、正極用の合剤を調製した。導電助剤、バインダ、活物質の配合量は、それぞれ4.5質量%、4.5質量%、91質量%とした。調製した正極用の合剤を、中間層に、乾燥後の塗布量(目付量)が9.0mg/cm2となるようにそれぞれ塗布した。乾燥後、ロールプレスを行った。その後、真空乾燥して、水分等を除去した。プレス後の活物質層(1層分)の厚みは、35μmであった。活物質層の密度は、2.57g/cm3であった。プレス後の中間層の厚みは、約1μmであった。
活物質としては、平均粒子径D50が4μmの粒子状の非晶質炭素(難黒鉛化炭素)を用いた。また、バインダとしては、PVdFを用いた。負極用の合剤は、溶剤としてNMPと、バインダと、活物質とを混合、混練することで調製した。バインダは、7質量%となるように配合し、活物質は、93質量%となるように配合した。調製した負極用の合剤を、乾燥後の塗布量(目付量)が4.0mg/cm2となるように、銅箔(10μm厚み)の両面にそれぞれ塗布した。乾燥後、ロールプレスを行い、真空乾燥して、水分等を除去した。活物質層(1層分)の厚みは、35μmであった。活物質層の密度は、1.14g/cm3であった。
基材層として厚みが22μmのポリエチレン製微多孔膜を用いた。ポリエチレン製微多孔膜の透気度は、100秒/100ccであった。
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、いずれも1容量部ずつ混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1mol/LとなるようにLiPF6を溶解させ、電解液を調製した。
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、セパレータが上記の正極および負極の間に配されて積層されてなるシート状物を巻回した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋板を取り付けた。上記の電解液を、ケースの蓋板に形成された注液口からケース内に注入した。さらに、0.5Cの電流値で設計容量の50%となる電気量を通電することにより、組み立てた電池を充電した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
表1に示す構成となるように中間層を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
表1に示す構成となるように正極を作製した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
不活性ガスが充填された気体雰囲気下で、各電池(4時間の2V、CCCV放電後)を解体して、正極を取り出した。正極活物質層及び中間層をNMP又はアセトンを含浸させたウエスで取り除いた。アルミニウム金属箔を1〜4cm2の大きさで切り出し、DMCで洗浄した後、乾燥させた。このようにして作製した測定用試料を大気に暴露しないように保管し、XPS測定した。
XPS測定は、下記のようにして行った。C1sスペクトルにおけるC−C結合ピーク位置(284.8eV)を基にして、結合エネルギーを補正した。測定条件については、単色化AlKα線源、エミッション電流1mA、加速電圧15kVであった。なお、Al2pスペクトルをXPS測定したチャートの模式図を図9に示す。
JIS R1655:2003に従い、水銀圧入法によって細孔分布測定を行った。詳しくは、低湿度の大気中(露点−20℃以下)で各電池(4時間の2V、CCCV放電後)を解体して、正極を取り出した。正極をNMPに浸漬させ、活物質層を取り除き、中間層と中間層に付いた金属箔とを取り出した。その後、質量変化がなくなるまで80℃で乾燥処理を行った。乾燥処理後のサンプルを用いて、細孔分布測定装置(マイクロメリティクス社製「AutoPore IV 9500」)で細孔分布測定をおこなった。
得られた細孔分布から、ピーク細孔径を読み取った。また、中間層の0.5〜20μmの細孔径の容積の合計を求めた。即ち、取得した測定データから0.5〜20μmの範囲の積算細孔容積を読み取った。
・高温放置試験
電池SOCを85%に調整(電流値1C、CCCV充電3時間)した後、65℃の恒温槽に電池を入れて、放置した。60日経過後に電池を取り出し、25℃でDCR(出力)測定を実施した。
・DCR(出力)測定
電池の温度を25℃に調整した後、55%SOCまで充電した。12Cの電流値で10秒間放電をおこない、1秒目の電圧を読み取った。同様に、55%SOC状態で、18C、24C、30C、40Cでの10秒放電を実施し、各電流値で1秒目の電圧を読み取った。得られた5点でI−Vプロットを作成し、傾きからDCRを求めた。
DCR増加率[%]=(放置試験後DCR/放置試験前DCR)×100―100
上記B/Aの値を上記のごとき所定範囲内にするためには、例えば、中間層におけるバインダの配合比率を調整することが考えられる。バインダの配合比率を上げるとピーク細孔径が上がり、バインダの配合比率を下げるとピーク細孔径が下がると考えられる。バインダの配合比率を調整することにより、B/Aの値を調整できると考えられる。
中間層の0.5〜20μmの細孔径の容積の合計が、所定範囲内であることにより、より確実に、酸化アルミニウム(Al2O3)が適度にフッ化アルミニウム(AlF3)に変わると考えられる。細孔径の容積の合計を小さくするためには、例えば中間層のバインダの配合比率を下げることが考えられるものの、アルミニウム箔と中間層との密着性を十分に確保する点、密着不良によって酸化アルミニウム(Al2O3)から上記AlOxFyが生じることを抑える点では、バインダの配合比率は、所定率以上であることが好ましい。
2:電極体、
26:非被覆積層部、
3:ケース、 31:ケース本体、 32:蓋板、
4:セパレータ、
5:集電体、 50:クリップ部材、
6:絶縁カバー、
7:外部端子、 71:面、
11:正極、
111:正極の金属箔(正極基材)、 112:正極活物質層、
113:中間層、
12:負極、
121:負極の金属箔(負極基材)、 122:負極活物質層、
91:バスバ部材、
100:蓄電装置。
Claims (3)
- フッ素を含有する電解質塩を含む電解液と、電極とを含み、
前記電極は、アルミニウム製の電極基材と、該電極基材の表面に沿って配置された活物質層と、前記電極基材と前記活物質層との間に配置された多孔質な中間層と、を有し、
前記電極基材の表面における、単位体積あたりのAl2O3に対するAlF3の存在比は、0.7以上1.0以下であり、
前記中間層の細孔分布測定によるピーク細孔径は、0.5μm以上2.5μm以下である、蓄電素子。 - フッ素を含有する電解質塩を含む電解液と、電極とを含み、
前記電極は、アルミニウム製の電極基材と、該電極基材の表面に沿って配置された活物質層と、前記電極基材と前記活物質層との間に配置された多孔質な中間層と、を有し、
前記電極基材の前記表面をXPS測定したときの、Al2O3を表すピークの極大強度Aと、AlF3を表すピークの極大強度Bとは、0.7≦B/A≦1.0の関係式を満たし、
前記中間層の細孔分布測定によるピーク細孔径は、0.5μm以上2.5μm以下である、蓄電素子。 - 前記中間層の細孔分布測定による0.5μm以上20μm以下の細孔径の容積の合計は、前記中間層の単位質量あたり0.5mL/g以上2.0mL/g以下である、請求項1又は2に記載の蓄電素子。
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