次に、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態の水栓装置を説明する。本実施形態の水栓装置は、本発明の第1実施形態のタッチ検出装置が組み込まれたものであり、このタッチ検出装置により使用者の操作を検知して、吐水、止水を切り換えることができるように構成されている。
図1は、本実施形態の水栓装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態のタッチ検出装置の概略構成を示す回路図である。図3は、水栓装置の先端部に設けられた検知部を拡大して示す断面図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態の水栓装置1は、カウンターボードC上に取り付けられた水栓本体2と、この水栓本体2の先端部に設けられた検知部2aと、この検知部2aに取り付けられた振動励起素子である圧電素子4と、水栓本体2の基部に内蔵された湯水混合バルブ6と、を有する。さらに、水栓装置1は、カウンターボードCの下側に配置された、湯及び水の供給、停止を夫々切り換える開閉弁である湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bと、これらの電磁弁の開閉を制御する水栓コントローラ10と、検知部2aへの操作に応じて水栓コントローラ10に信号を送る検出回路12と、を有する。なお、本実施形態の水栓装置1のうち、検知部2a、圧電素子4及び検出回路12は、本発明の第1実施形態によるタッチ検出装置を構成する。
本実施形態の水栓装置1は、水栓本体2の先端部に設けられた検知部2aを、使用者が軽くタッチすることにより、湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bが開閉され、止水状態と吐水状態を切り換えることができるように構成されている。従って、本実施形態においては、検知部2aが設けられた水栓本体2の先端部が、水栓装置1の操作部として機能する。
水栓本体2は、カウンターボードCからほぼ垂直に立ち上がる基部と、この基部の先端からほぼ水平方向に延びる水平部とを有する金属製の管状の部材であり、水平部の先端には吐水口2bが設けられている。
検知部2aは、水栓本体2の先端に、その先端面を形成するように設けられており、使用者の手指等の対象物が検知部2aに接触しているか否かを検知するための信号が検出回路12に送られるように構成されている。後述するように、検知部2aには圧電素子4が内蔵されており、この圧電素子4は、水栓本体2内部に通された2本の信号線4a、4bによって検出回路12に電気的に接続されている。
湯水混合バルブ6は、水栓本体2の基部に内蔵されると共に、湯用電磁弁8aの下流側に接続された給湯管14a、及び水用電磁弁8bの下流側に接続された給水管14bに夫々接続されている。また、湯水混合バルブ6には温調ハンドル6aが取り付けられており、この温調ハンドル6aを調整することにより、給湯管14aから供給された湯及び給水管14bから供給された水の混合比が設定され、吐水口2bから吐出される湯水の温度を調整することができる。また、湯水混合バルブ6において混合された湯水は、水栓本体2の内部に配置された通水部材(図示せず)を介して導かれ、吐水口2bから吐出される。
湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bは、水栓コントローラ10からの制御信号に応じて開閉される電磁弁である。湯用電磁弁8aは、給湯器(図示せず)からの配管に接続され、開弁されると給湯管14aへ湯を流出させるように構成されている。水用電磁弁8bは、上水道に接続されており、開弁されると給水管14bへ水を流出させるように構成されている。
水栓コントローラ10は、検出回路12からの出力信号に応じて、湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bに制御信号を出力し、これらを開閉させるように構成されている。
検出回路12は、検知部2aに内蔵された圧電素子4に電気的に接続されると共に、水栓コントローラ10に判定出力信号を出力するように構成されている。検出回路12は、圧電素子4に交流電圧を印加することにより、これを所定の周波数で超音波振動させ、また、圧電素子4の端子から出力信号を取得するように構成されている。さらに、検出回路12は、圧電素子4から取得した出力信号に基づいて、対象物である使用者の手指等が検知部2aにタッチ(接触)したか否かを判定し、判定結果を判定出力信号として水栓コントローラ10に出力するように構成されている。
具体的には、水栓コントローラ10及び検出回路12は、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータ、半導体、電気抵抗、コンデンサ等の電子部品、及びマイクロプロセッサ等を作動させるプログラムを組み合わせることにより構成することができる。また、水栓コントローラ10及び検出回路12を上記の電子部品により一体的に構成することもできる。
次に、図2を参照して、検出回路12の構成を説明する。
図2に示すように、検出回路12には、マイクロコンピュータ16と、駆動回路18と、信号変換回路20と、分圧回路22と、が内蔵されている。
マイクロコンピュータ16は、これを作動させるプログラムにより、接触判定回路16a、接触判定確認回路16b、異常検知回路16c及び周波数調整回路16dとして機能するように構成されている。これらの回路の作用については後述する。また、マイクロコンピュータ16は、2つの出力ポートP1、P2からの出力信号により、駆動回路18を構成する2つのトランジスタを制御するように構成されている。さらに、マイクロコンピュータ16は、信号変換回路20から出力されたアナログ電圧の信号をディジタル値に変換するA/D変換回路を内蔵している。マイクロコンピュータ16に内蔵された各回路は、変換されたディジタル値に基づいて演算を行い、検知部2aへのタッチの有無を判定している。
駆動回路18は、電源側に接続されたPNPトランジスタ18a、アース側に接続されたNPNトランジスタ18b、及び2本の電気抵抗18c、18dから構成されている。PNPトランジスタ18aのエミッタ端子は電源に接続され、ベース端子はマイクロコンピュータ16の出力ポートP1に接続されている。また、電気抵抗18cは、PNPトランジスタ18aのベース−エミッタ間に接続されている。一方、NPNトランジスタ18bのエミッタ端子はアースに接続され、ベース端子はマイクロコンピュータ16の出力ポートP2に接続されている。また、電気抵抗18dは、NPNトランジスタ18bのベース−エミッタ間に接続されている。さらに、PNPトランジスタ18a及びNPNトランジスタ18bの各コレクタ端子は互いに接続され、信号線4aを介して圧電素子4の一方の電極(入力端子)に接続されている。また、圧電素子4の他方の電極は、信号線4bを介してアースに接続されている。
PNPトランジスタ18a及びNPNトランジスタ18bは、マイクロコンピュータ16の出力ポートP1、P2からの信号により、所定の周期で交互にオン−オフされる。PNPトランジスタ18aがオン、NPNトランジスタ18bがオフとされた状態では信号線4aには電源電圧と等しい電圧が出力され、一方、PNPトランジスタ18aがオフ、NPNトランジスタ18bがオンとされた状態では信号線4aはアース電位となる。これらの状態が所定周期で交互に繰り返されることにより、圧電素子4の一方の電極には、信号線4aを介して所定周波数の交流電圧が印加される。また、圧電素子4に交流電圧が印加されていない状態においては、両方のトランジスタがオフにされ、各トランジスタのコレクタはハイインピーダンスな状態(実質的に、電気的に切り離された状態)にされる。なお、本実施形態においては、PNPトランジスタ及びNPNトランジスタを交互にオン−オフすることにより、圧電素子4に交流電圧を印加しているが、FET等、任意のスイッチング素子を使用して交流電圧を印加することができる。
分圧回路22は、2本の電気抵抗22a、22bから構成され、圧電素子4の一方の端子に現れる電圧を分圧し、適正な電圧に調整するように構成されている。即ち、電気抵抗22aの一方の端子は信号線4aに接続され、他方の端子は電気抵抗22bの一方の端子に接続されている。また、電気抵抗22bの他方の端子はアースに接続されている。これにより、信号線4aに現れた電圧が、電気抵抗22a、22bの抵抗比により分圧され、適正な電圧に調整される。上記のように、圧電素子4に交流電圧が印加されている状態においては、圧電素子4の一方の端子(信号線4a)には、電源電圧とアース電位が所定周期で交互に現れる。これに対して、駆動回路18の出力がハイインピーダンスにされた状態(両方のトランジスタがオフ)では、信号線4aには、圧電素子4により生成された起電力が現れる。分圧回路22は、これらの電圧を分圧し、分圧された電圧を信号変換回路20に出力する。即ち、圧電素子4の一方の電極に接続された端子は、交流電圧を印加するための入力端子として機能し、また、この入力端子から、圧電素子4の出力信号が取得される。
信号変換回路20は、2つのコンデンサ20a、20b、ダイオード20c、及び電気抵抗20dから構成されている。コンデンサ20aの一方の端子は、分圧回路22の電気抵抗22a、22bの接続点に接続され、他方の端子は、ダイオード20cのアノード端子に接続されている。さらに、ダイオード20cのカソード端子は、マイクロコンピュータ16に内蔵されたA/D変換器の入力端子に接続されている。また、ダイオード20cのカソード端子は、コンデンサ20b及び電気抵抗20dを介して夫々アースに接続されている。これにより、分圧回路22からの出力信号は、直流成分がコンデンサ20aにより除去され、直流成分が除去された信号がダイオード20cにより検波されると共に、コンデンサ20bにより高周波成分がカットされ、マイクロコンピュータ16のA/D変換器に入力される。
次に、図2及び図3を参照して、検知部2aの構成を説明する。
図3に示すように、検知部2aは、水栓本体2の先端に取り付けられた金属製の部材によって構成されており、水栓本体2と共に水栓装置1の外観を形成している。検知部2aは、使用者の手指等が触れる円板部と、この円板部から背面側に延びる円筒部と、を有し、円板部裏側の円筒部の中に圧電素子4が取り付けられている。
圧電素子4は、本実施形態においては、チタン酸バリウム、ジルコンチタン酸鉛等の圧電セラミックスを使用した円盤状の素子であり、この圧電セラミックスの両面に夫々電極が設けられている。これらの電極間に信号線4a、4bを介して交流電圧を印加することにより、圧電素子4は全体として屈曲するような変形を繰り返し、振動する。また、圧電素子4は、検知部2aの円板部の背面側に接着剤により固着されているので、圧電素子4及び円板部は、一体となって屈曲振動する。即ち、圧電素子4に所定周波数の交流電圧を印加することにより、検知部2aは数μm程度の振幅で屈曲振動する。また、逆に、圧電素子4が屈曲振動されると、その電極間(信号線4a、4b間)に起電力が発生する。なお、本実施形態においては、印加される交流電圧の周波数は、圧電素子4と円板部が一体となって屈曲振動する際の共振周波数である約40kHzに設定されている。好ましくは、共振周波数は、約20kHz〜約60kHzの超音波帯域に設定する。
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第1実施形態によるタッチ検出装置における検出原理を説明する。
図4は、本発明の第1実施形態のタッチ検出装置において、使用者が検知部2aにタッチしていない場合の圧電素子4の典型的な出力波形を示し、図5は使用者が検知部2aにタッチした場合の圧電素子4の典型的な出力波形を示す。なお、図4及び図5は、上段にマイクロコンピュータ16の出力ポートP1、P2(図2)からの出力電圧波形、中段に圧電素子4の出力電圧波形(信号線4a、4b間の電圧波形)、下段に信号変換回路20回路からの出力電圧波形(マイクロコンピュータ16のA/D変換器入力波形)を示すものである。なお、図4及び図5等は信号波形を模式的に示したものであり、交流電圧の印加中において出力される波の数等、実際の波形とは異なっている。
まず、図4の時刻t1において、圧電素子4への交流電圧の印加が開始される。即ち、図4の上段に示すように、マイクロコンピュータ16の出力ポートP1、P2に交互に電圧パルスが出力されることにより、駆動回路18(図2)のPNPトランジスタ18aとNPNトランジスタ18bが交互にオンにされる。これにより、図4の中段に示すように、圧電素子4の両電極間(信号線4a、4b間)にはパルス状の交流電圧が印加される。この交流電圧の印加により、圧電素子4は屈曲振動される。上述したように、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数は、一体化されて振動する検知部2a及び圧電素子4の共振周波数と一致するように設定されている。このため、交流電圧の印加による検知部2a及び圧電素子4の屈曲振動の振幅は数μm程度であり、他の周波数で振動が励起された場合よりも振幅が大きくなる。なお、交流電圧の印加中においては、圧電素子4の端子(信号線4a)は、PNPトランジスタ18a又はNPNトランジスタ18bによって電源電圧又はアースの何れかに接続されているため、圧電素子4の両電極間電圧(図4の中段)は、これらに支配される(圧電素子4の屈曲振動により生成された起電力が表れているのではない)。
次に、図4の時刻t2において、圧電素子4への交流電圧の印加が停止される。交流電圧の印加が停止されると、駆動回路18のPNPトランジスタ18a及びNPNトランジスタ18bは何れもオフにされ、駆動回路18の出力はハイインピーダンス(電気的に切り離された状態)となる。一方、検知部2a及び圧電素子4は、時刻t1〜t2間の振動の励起により共振周波数で屈曲振動されており、時刻t2において交流電圧の印加が停止された後もこの振動が残留し(一般的に、この現象を「残響」と言う)、次第に減衰する(振動振幅が小さくなる)。また、交流電圧の印加停止後は、駆動回路18の出力がハイインピーダンスとされているので、圧電素子4の両端子間(信号線4a、4b間)には、圧電素子4の屈曲振動により生成された起電力が表れる(図4中段の時刻t2〜)。
本発明の第1実施形態のタッチ検出装置は、このような交流電圧の印加停止後において検知部2a(及び圧電素子4)に残る「残響振動」の大きさに基づいて、検知部2aへのタッチ操作の有無を判定している。
ここで、図4の中段に示すように、検知部2aへのタッチ操作が行われていない場合には、交流電圧の印加が停止した時刻t2後の電圧振幅が大きく、その振動が減衰するまでの時間も長くなる。一方、図5の中段に示すように、検知部2aへのタッチ操作が行われている(検知部2aに使用者の手指等が接触している)場合には、時刻t2後の電圧振幅が小さく、その振動も短時間で減衰している。即ち、検知部2aに使用者の手指等が接触している場合には、検知部2aの振動が接触している手指等に吸収され、交流電圧の印加停止後に残る「残響振動」が小さくなるものと考えられる。
本実施形態においては、図4及び図5の中段に示す圧電素子4の電圧波形の直流成分を除去し、検波した信号変換回路20の出力波形(図4及び図5の下段)に基づいてタッチの有無を判定している。具体的には、本実施形態においては、時刻t2後の信号変換回路20の出力波形によって囲まれた面積(図4及び図5下段の斜線部の面積。励振停止後の検知部2a及び圧電素子4の振動エネルギーに比例する。)の大きさに基づいてタッチの有無を判定している。
次に、図6乃至図15を参照して、本発明の第1実施形態による水栓装置1の作用を説明する。
図6は本実施形態の水栓装置1の作用を示すメインフローであり、図7は作用の一例を示したタイムチャートである。また、図8は、図6のメインフローからサブルーチンとして呼び出されるタッチ検出フローである。なお、図7のタイムチャートは、図4及び図5のタイムチャートと同様に、1段目に出力ポートP1、P2からの出力電圧波形、2段目に圧電素子4の出力電圧波形、3段目に信号変換回路20回路からの出力電圧波形を示し、最下段には、検出回路12から水栓コントローラ10に出力される判定出力を示したものである。
図6のフローチャートにおける処理は、検出回路12に内蔵されたマイクロコンピュータ16及びプログラムによって実行される。
まず、ステップS1においては、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数調整が実行される。この周波数調整は、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数を、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数に正確に一致させるための処理であり、この処理は、本実施形態においては、検出回路12に対する電源投入時に実行される。また、変形例として、検出回路12に、周波数調整実行用のスイッチ(図示せず)を設けておき、このスイッチの操作により周波数調整が実行されるように本発明を構成することもできる。
本実施形態のタッチ検出装置は、その性能を十分に発揮させるためには、印加する交流電圧の周波数と、共振周波数を十分に一致させておく必要がある。検知部2a及び圧電素子4が大きく振動する共振周波数には個体差があり、検出回路12に対して組み合わせる水栓本体2(検知部2a及び圧電素子4)に応じて、印加する交流電圧の周波数を調整することが望ましい。また、このような周波数調整機能を備えておくことにより、検出回路12に組み合わせる水栓本体2の個体ごとのバラツキに対応することができると共に、複数種類の水栓本体2に組み合わせることができる汎用の検出回路12を構成することも可能となる。ステップS1における具体的な処理については、後述する。
次に、図6のステップS2においては、10msタイマーがリセットされる。本実施形態においては、圧電素子4への交流電圧の印加がセンシング周期である10msごとに間欠的に実行される。ステップS2においては、この交流電圧の印加の間隔を制御する10msタイマーがリセットされ、タイマーの積算が開始される。好ましくは、センシング周期は、約10〜100msに設定する。
さらに、ステップS3においては、サブルーチンとして、図8に示すタッチ検出フローが実行される。ステップS3において実行されるタッチ検出は、図4及び図5を使用して説明した原理に基づいて実行されるものであり、図8のフローにおける具体的処理については後述する。また、図7に示す例では、時刻t10においてステップS3が実行され、圧電素子4に対する交流電圧の印加が行われている。
次いで、ステップS4においては、ステップS3における検出結果が「タッチ」であったか、「非タッチ」であったかが判定される。「タッチ」であった場合にはステップS5に進み、「非タッチ」であった場合にはステップS11に進む。図7に示す例では、時刻t10〜t11間に実行された励振(交流電圧の印加)後の残響が大きいため、「非タッチ」と判定されている。「非タッチ」と判定された後のステップS11においては、ステップS2において積算が開始されたタイマーが10msになるまで待機され、10ms経過するとステップS2に戻る。
ステップS2においては、10msタイマーがリセットされて再び積算が開始され、ステップS3において再びタッチ検出が実行される。図7に示す例では、時刻t10における前回の励振開始から10ms経過後の時刻t12において再びステップS3が実行されている。さらに、図7の例では、時刻t12において開始された励振停止後(時刻t13〜)の残響が小さいため、ステップS3における検出結果が「タッチ」と判定されている。ステップS3において「タッチ」と判定された場合には、ステップS4からステップS5に進む。
ステップS5においては、ステップS3における検出結果が「非タッチ」から「タッチ」に変化したか否かが判断される。図7の例では、時刻t10において開始された前回の検出結果が「非タッチ」であり、時刻t12において開始された今回の検出結果が「タッチ」であるため、ステップS6に進む。
ステップS6においては、「タッチ確認検出」である図8に示すフローチャートが、サブルーチンとして実行される。この「タッチ確認検出」は、ステップS3における「タッチ検出」による誤検知を防止するために、ステップS3による検出結果が「非タッチ」から「タッチ」に変化した場合に実行される処理である。具体的には、「タッチ確認検出」は、「タッチ検出」よりも長い期間圧電素子4に交流電圧を印加することにより実行されるものであり、具体的な処理については後述する。図7の例では、ステップS3における「タッチ検出」が終了した直後の時刻t14において「タッチ確認検出」が開始されている。
ステップS7においては、「タッチ確認検出」の結果が「タッチ」であったか否かが判断される。「非タッチ」であった場合には、ステップS3における「タッチ」の検出が誤検知であった可能性が高いため、電磁弁の開閉を行うことなく、ステップS11に進み、時刻t12から10ms経過するまで待機される。一方、「タッチ確認検出」の結果が「タッチ」であった場合には、「タッチ」の判定が確定され、ステップS8に進む。
ステップS8においては、水栓装置1が吐水状態であるか否かが判断され、吐水中である場合にはステップS10に進み、吐水中でない場合にはステップS9に進む。ステップS10では、吐水状態において新たに検知部2aがタッチされた(時刻t12)ことになるため、湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bが閉弁され、止水状態に切り換えられる。具体的には、検出回路12において「タッチ」の検出が確定されると、「タッチ確定」を表す信号が検出回路12から水栓コントローラ10に出力され、水栓コントローラ10は湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bに制御信号を送って、これらを閉弁させる。一方、ステップS9では、止水状態において新たに検知部2aがタッチされた(時刻t12)ことになるため、湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bが開弁され、吐水状態に切り換えられる。図7に示す例においては、時刻t14において開始されたステップS6のタッチ確認検出により「タッチ」の検出が確定され、時刻t15において「タッチ」の検出が確定されたことを示す判定出力が水栓コントローラ10に出力されている。
このように、検知部2aへの「タッチ」が検出された場合であっても、ステップS3におけるタッチ検出は、所定のセンシング周期である10msごとに等間隔で実行される。即ち、図7に示す例では、時刻t12から10ms後の時刻t16においてステップS3が実行される。時刻t16において実行されたタッチ検出においても依然として残響が小さく、検知部2aはタッチされたままの状態にあるため、図6のフローにおける処理は、ステップS3→S4→S5→S12の順に実行される。
ステップS12においては、「タッチ」された状態の継続時間が計測される。具体的には、図7の時刻t15において「タッチ」の判定が確定された後の経過時間が計測される。
次いで、ステップS13においては、ステップS12において計測されたタッチ継続時間が1分を超えたか否かが判断される。1分を超えていない場合には、ステップS11に進み、使用者が検知部2aにタッチしている間は、ステップS11→S2→S3→S4→S5→S12→S13→S11の処理が繰り返される。一方、1分を超えた場合にはステップS13→S10に進み、水栓装置1の状態に関わらず湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bが閉弁される。即ち、使用者が1分を超えて検知部2aにタッチしているのは異常な操作であり、タッチの誤検知、又は故障の可能性が高い。このため、水栓装置1の状態に関わらず湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bを閉弁させ、水の浪費を防止する。
さらに、図7の時刻t17において実行されたステップS3のタッチ検出において「非タッチ」が検出されると、使用者が検知部2aから手指を離したことが認識され、検出回路12からの判定出力は、「非タッチ」に変更される(時刻t18)。しかしながら、水栓装置1の状態は、図7の時刻t15において切り換えられた状態(吐水状態又は止水状態)が継続される。時刻t18以後、使用者によって検知部2aが再びタッチされるまでは、図6のフローにおいては、ステップS3→S4→S11→S2→S3の処理が繰り返される。
その後、使用者が検知部2aを再びタッチし、このタッチが確認された場合には、図6のフローでは、ステップS3→S4→S5→S6→S7→S8の順に処理が行われ、水栓装置1の状態が切り換えられる(図7の時刻t15以前の状態に戻る)。このように、本実施形態の水栓装置1は、使用者が検知部2aにタッチする(使用者が検知部2aに触れてから離すまでの動作)ごとに吐水状態と止水状態が交互に切り換えられる。
次に、図4、図5及び図8を参照して、図6のステップS3において実行されるタッチ検出の詳細を説明する。
図8に示すタッチ検出フローにおいては、まず、1msに亘って圧電素子4に交流電圧を印加して、検知部2aを励振する。次いで、交流電圧の印加停止後の1ms間の残響の大きさによって、使用者が検知部2aに触れているか否かを判定している。なお、図8に示すタッチ検出フローは、マイクロコンピュータ16及びプログラムによって構成された接触判定回路16a及び異常検知回路16cにより実行される。
まず、図8のステップS21において、圧電素子4への交流電圧の印加が開始される(図4及び図5の時刻t1)。次いで、ステップS22において、変数nの値が1にセットされる。さらに、ステップS23〜S27では、交流電圧の印加中において、信号変換回路20(図2)の出力電圧(図4及び図5の下段)が250μs毎に4回サンプリングされA/D変換される。これにより、1msの励振期間において、信号変換回路20からの4つの出力電圧値AD21、AD22、AD23、AD24(図4及び図5の下段)が取得される。
次いで、ステップS28においては、マイクロコンピュータ16(図2)のポートP1、P2の出力が夫々Hi及びLoに設定され、これによりPNPトランジスタ18a及びNPNトランジスタ18bが何れもオフにされる(交流電圧出力終了、図4及び図5の時刻t2)。また、ステップS29において、変数nの値が1にセットされる。さらに、ステップS30〜S34では、交流電圧の印加停止直後に、信号変換回路20の出力電圧が250μs毎に4回サンプリングされA/D変換される。これにより、励振停止後の1msの残響期間において、信号変換回路20からの4つの出力電圧値AD11、AD12、AD13、AD14(図4及び図5の下段)が取得される。
次に、ステップS35においては、ステップS30〜S34において取得された出力電圧値AD11、AD12、AD13、及びAD14の合計SUM1が計算される。このSUM1の値は、図4及び図5の斜線部の面積と強い相関関係があり、検知部2aの振動の残響エネルギーを表す量となる。
さらに、ステップS36においては、直近の過去3分間に図8のフローチャートが実行された際に夫々計算された各SUM1の値の平均値SUM1AVが計算される。即ち、SUM1AVは、SUM1の過去3分間の移動平均値である。ここで、一回の操作で使用者が検知部2aに触れている時間は、長くとも1s程度であるため、過去3分間に計算された多数のSUM1の値は、大部分が「非タッチ」状態において取得されたものであるということができる。従って、SUM1の平均であるSUM1AVは、「非タッチ」状態における平均的な残響エネルギーの大きさを表すことになる。
次いで、ステップS37においては、SUM1とSUM1AVの値が比較される。SUM1がSUM1AVの1/2よりも大きい場合にはステップS38に進む。即ち、SUM1がSUM1AVの1/2よりも大きい場合には、今回検出された残響エネルギーSUM1が、「非タッチ」の場合における平均的な残響エネルギーSUM1AVと大きく異なることはないので、ステップS38においては「非タッチ」と判定し、図8のフローチャートの一回の処理を終了する。この「非タッチ」の判定は、メインフロー(図6)のステップS4における判断に使用される。
一方、SUM1がSUM1AVの1/2以下の値である場合にはステップS39に進む。即ち、SUM1がSUM1AVの1/2以下の値である場合には、今回検出された残響エネルギーSUM1が、「非タッチ」の場合における平均的な残響エネルギーSUM1AVよりも大幅に低下しているので、検知部2aにタッチ操作が行われている可能性が高い。即ち、本実施形態においては、交流電圧の印加停止後における検知部2aの振動エネルギーに基づいて、検知部2aへの「タッチ」が行われたか否かが判定され、振動エネルギーが所定の閾値以下の場合に「タッチ」が行われた、と判定される。
ステップS39においては、交流電圧の印加中に取得された4つの出力電圧値AD21、AD22、AD23、AD24の中から最大値と最小値が抽出される。
さらに、ステップS40においては、ステップS39で抽出された最大値から最小値を減じた値が、所定の閾値よりも大きいか否かが判断される。最大値から最小値を減じた値が所定の閾値以下である場合には、ステップS41に進み、ステップS41においては「タッチ」と判定し、図8のフローチャートの一回の処理を終了する。この「タッチ」の判定は、メインフロー(図6)のステップS4における判断に使用される。
一方、ステップS39で抽出された最大値から最小値を減じた値が、所定の閾値よりも大きい場合にはステップS38に進み、ステップS38においては「非タッチ」と判定し、図8のフローチャートの一回の処理を終了する。即ち、マイクロコンピュータ16に内蔵された異常検知回路16cは、圧電素子4への交流電圧の印加中において、出力電圧値が所定値以上変動した場合には、異常を検知し、「タッチ」の判定をしない。このように、ステップS37において今回検出された残響エネルギーSUM1が大幅に低下していることが判定されたにも関わらず、ステップS40において最大値と最小値の差が所定値よりも大きい場合に「非タッチ」と判定される理由を以下に説明する。
図9は、検知部2aの共振周波数が、印加される交流電圧の周波数から僅かにずれた場合における、出力波形の一例を示す図である。なお、図9は、検知部2aがタッチされていない状態における波形である。
上述したように、本発明の第1実施形態のタッチ検出装置は、一体化されて振動する検知部2a及び圧電素子4の共振周波数と一致する周波数の交流電圧を圧電素子4に印加し、交流電圧の印加が終了した後の残響振動に基づいて、タッチ操作の有無を判定するものである。しかしながら、本実施形態のように水周り器具に使用されるタッチ検出装置においては、検知部に水滴が付着することが多い。このように水滴が付着した場合には、付着した水滴の質量により、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数が僅かに低下し、これが判定の信頼性に悪影響を及ぼすことが、本件発明者により見出された。
このように、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数が変化すると、共振周波数と、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数が僅かにずれ、所謂「うなり」のような現象が発生することが、本件発明者により見出された。また、このような共振周波数の変化は、検知部2aに湯がかかる、或いは冷水がかかる、などの影響により、検知部2aの温度が変化した場合等にも発生する場合がある。図9は、周波数のずれにより「うなり」現象が発生した場合における出力波形の一例であり、この場合には、交流電圧の印加中における圧電素子4の出力波形が、図4及び図5とは異なったものとなる。
上述の現象を説明する。検知部2a及び圧電素子4が屈曲振動をしている場合、圧電素子4はその変形により電極間(信号線4a、4b間)に起電力が発生する。これは、圧電素子4に対して、入力端子(信号線4a)へ交流電圧が印加されている状態でも同じである。しかしながら、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数と、印加される交流電圧の周波数が一致している場合、圧電素子4の入力端子(信号線4a)にマイナスの起電力が発生するタイミングでPNPトランジスタ18aがオンし、プラスの起電力が発生するタイミングでNPNトランジスタ18bがオンするように動作する。すなわち、交流電圧の印加電圧と圧電素子の起電力が、逆位相となる関係が理想的な励振状態である。その際、圧電素子4のインピーダンスよりも、PNPトランジスタ18a及びNPNトランジスタ18bのオン時のインピーダンスの方が小さいため、圧電素子4の入力端子(信号線4a)は、電源電圧又はアースの何れかに接続された状態にあるように見える波形となる。
図9に示す出力波形では、交流電圧の印加中における電圧波形が、パルスの立ち上がり時において、瞬間的に電源電圧を超えた値となっている。同様に、パルスの立ち下がり時において、瞬間的にアース電位以下の値となっている。これは、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数と交流電圧の印加周波数が僅かに一致しないために起きる現象である。検知部2a及び圧電素子4に交流電圧を印加すると、固有の共振周波数で屈曲振動が発生する。この屈曲振動による起電力と完全な逆位相で交流電圧を印加した場合が、前述の図4及び図5の波形である。しかし、例えば検知部2aに水滴が付着して共振周波数が僅かに低下した場合、マイクロコンピュータ16(図2)が出力するポートP1、P2の周波数は一定なので、共振周波数よりも高い周波数で交流電圧が印加されることになる。すると、圧電素子4が、まだプラスの起電力を発生しているタイミングで、PNPトランジスタ18aがオンしてプラスの電圧を印加し、まだマイナスの起電力を発生しているタイミングでNPNトランジスタ18bがオンしてマイナスの電圧が印加されるという、本来の逆位相から同位相へのタイミングのずれが発生する。
例えば、PNPトランジスタ18aがオンして信号線4aが電源電圧近くの電位まで上昇し、これに圧電素子4の起電力で更にプラスの電圧が印加されると、PNPトランジスタ18aのコレクタに電源電圧を超える電圧が印加されることになる。詳細には、圧電素子4のプラスの起電力による電流は、PNPトランジスタ18aのコレクタからベースへと流れ(この間はPN接合なので順方向ダイオードとなる)、更に電気抵抗18cを介して電源側へ流れる。よって、PNPトランジスタ18aはトランジスタスイッチとして機能せず、図9のごとく、信号線4aに電源電圧を超えた波形が現れる。マイナスの起電圧とNPNトランジスタ18bの関係も、極性を逆にした同様の現象である。また、圧電素子4の共振周波数が高くなった場合(一般に、低温でこの傾向となる)も、タイミングのずれ方は逆に考える必要があるが、上述の共振周波数が低くなった場合と同様の現象が発生する。
このように、共振周波数と印加される交流電圧の周波数にずれがある場合には、交流電圧印加中のパルス波形が乱れ、振幅が変化する、という現象が発生する。このような周波数にずれがある状態において「タッチ」を検出し、誤検知となるのを防止するために、図8のステップS40においては、交流電圧印加中における最大値と最小値の差が所定の閾値を超えた場合には、「非タッチ」と判定している。
また、図9に示す出力波形においては、パルス波形の立ち下がり部に出現する波形の乱れが次第に大きくなっている。この現象の主たる要因は、圧電素子4の共振周波数と交流電圧の印加周波数の差により、圧電素子4の起電力と印加する交流電圧のタイミングのずれが徐々に大きくなっていくためと考えられる。加えて、交流電圧の印加により励振が開始された後、圧電素子4の振動振幅が次第に大きくなり、発生する起電力が増大することも、その一因であると考えられる。また、図9に示す出力波形においては、交流電圧の印加停止後の残響振動が、検知部2aへのタッチがなされていないにも関わらず、図4よりも小さくなっている。これは、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数と、これを励振する交流電圧の周波数がずれているため、圧電素子4の振動振幅が十分に大きくなっていないためである。従って、共振周波数と交流電圧の周波数がずれている状態で、残響振動に基づいて「タッチ」、「非タッチ」の判定を行うと、誤検知が生じる虞がある。
図6のステップS6において実行される「タッチ確認検出」処理は、このような誤検知を防止するために設けられた処理である。
次に、図10及び図11を参照して、タッチ確認検出の詳細を説明する。この「タッチ確認検出」処理は、使用者の「タッチ」が一旦判定された後、接触判定確認動作として実行されるものである。なお、図10に示すタッチ確認検出のフローは、マイクロコンピュータ16及びプログラムによって構成された接触判定確認回路16bにより実行される。
図10は、図6のステップS6において、サブルーチンとして呼び出される「タッチ確認検出」処理を示すフローチャートである。図11は、検知部2aの共振周波数が、印加される交流電圧の周波数から僅かにずれた状態において、タッチ確認検出が行われた場合の出力波形の一例を示す図である。なお、図11は、検知部2aがタッチされていない状態における波形である。
ここで、図10に示すタッチ確認検出のフローチャートは、ステップS127及びS139を除き、図8に示したタッチ検出のフローチャートと同一である。即ち、図8に示す「タッチ検出」においては、1msに亘って交流電圧が印加され、この間250μs毎に4つの出力電圧値AD21〜AD24が取得されていたのに対し、図10に示す「タッチ確認検出」においては、所定の確認期間として2msに亘って交流電圧が印加され、この間250μs毎に8つの出力電圧値AD21〜AD28が取得される。これに伴い、ステップS139においては、8つの出力電圧値AD21〜AD28の中から最大値及び最小値が抽出され、ステップS140において、これらの差が閾値と比較される。
このようなタッチ確認検出により取得された出力波形は、図11に示すように、交流電圧を印加する時間が確認期間として延長されているため、交流電圧の印加中におけるパルス波形の振幅の乱れ(変化)が把握しやすくなっている。また、図11の出力波形においては、パルス波形の電源電圧を超える振幅が一旦増大した後、減少している。これは、検知部2a及び圧電素子4が振動する周波数と、印加する交流電圧の周波数がずれているため、両者の振動の位相関係が時間と共に変化し、圧電素子4の起電力の極性と、駆動回路18の出力の極性が一致したとき、すなわち同位相となったとき(図11下段のAD25付近)、パルス波形の振幅が増大しているものと考えられる。更に交流電圧の印加を続けると、前述の同位相となったタイミングは、時間経過と共に、本来の交流電圧の印加タイミングである逆位相のタイミングに戻る(図11下段のAD28付近)。これが、波形に「うなり」のような現象が発生する理由である。このため、交流電圧の印加時間を長く設定することにより、交流電圧印加中(確認期間中)のパルス波形の振幅の増大を確実に検出し、その結果、共振周波数の僅かなずれを検出することが可能になり、誤判定を防止することができる。
なお、交流電圧を印加する時間は、図8は1ms、図10は2msと2倍になっている。しかし本実施形態においては、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数にて交流電圧を印加した場合、安定的な屈曲振動状態に達するための十分な時間として1msを設定している。よって、交流電圧の印加を1ms以上続けても、屈曲振動の振幅がそれ以上に増加することはない。よって、交流電圧の印加終了後の残響振動の判定処理は図8と図10で同様の処理で良い。
また、本実施形態においては、検知部2aに水滴等が付着していない場合には、「タッチ検出」処理による1msの励振で検知部2aを十分な振動振幅で振動させることができ、「タッチ」を検出することができる。このため、図7により説明したように、通常時においてはセンシング周期である10ms毎に「タッチ検出」処理を行い、この処理により「タッチ」と判定された場合(図7の時刻t12〜t14)に「タッチ確認検出」処理(図7の時刻t14〜t15)を実行して、「タッチ」の判定を確認し、誤検知を防止している。これにより、検知部2aを励振する時間を最少限にすることができ、励振に要する電力を節約すると共に、圧電素子4の耐用年数を延長することができる。
さらに、検知部2aに水滴等が付着している状態において、使用者の手指が検知部2aに触れた場合には、圧電素子4への交流電圧の印加中における検知部2a(及び圧電素子4)の振動振幅が抑制されるので、圧電素子4が発生する起電力も小さくなる。このため、検知部2aに手指等が触れている状態では、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数と、印加する交流電圧の周波数がずれている場合でも、交流電圧の印加中において、パルス波形が乱れることはない(パルス波形の振幅が大きく変化し、図9や図11のような波形になることはない)。従って、交流電圧の印加中におけるパルス波形が乱れた場合について、「非タッチ」と判定(図8のステップS40、図10のステップS140)しても、使用者によるタッチ操作があった場合には、これを確実に検知することができる。
次に、図12乃至図15を参照して、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数の自動調整を説明する。
図12は、図6のステップS1において、サブルーチンとして呼び出される「周波数調整」処理を示すフローチャートである。この「周波数調整」処理は、マイクロコンピュータ16及びプログラムによって構成された周波数調整回路16dにより実行される。図13乃至図15は、検知部2aの共振周波数と印加する交流電圧の周波数のずれと、出力される波形の関係を示す図である。図13は、検知部2aの共振周波数と印加する交流電圧の周波数が比較的大きくずれている場合における出力波形の一例である。図14は、検知部2aの共振周波数と印加する交流電圧の周波数が僅かにずれている場合における出力波形の一例である。図15は、検知部2aの共振周波数と印加する交流電圧の周波数が十分に一致している場合における出力波形の一例である。
上述したように、一体的に振動する検知部2a及び圧電素子4の共振周波数は、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数と十分に一致している必要がある。ところが、検知部2a及び圧電素子4には個体差があり、その共振周波数には或る程度のバラツキがある。このため、検出回路12(図2)が出力する交流電圧の周波数を、これに接続して使用する検知部2a及び圧電素子4の共振周波数に合わせて調整しておくことが望ましい。本実施形態のタッチ検出装置に内蔵されている検出回路12は、印加する交流電圧の周波数を、接続された検知部2a及び圧電素子4の共振周波数に合わせて自動調整する機能を備えている。この機能を備えておくことにより、検知部2a及び圧電素子4のバラツキに対応することができると共に、経年変化による共振周波数の変化や、製品出荷後の検知部2a及び圧電素子4の交換にも対応することができる。さらに、形状や寸法等の基本設計が異なり、共振周波数が異なる複数種類の検知部及び圧電素子に対しても、自由に組み合わせて使用することができる汎用的な検出回路を構成することもできる。
図12は「周波数調整」処理を示すフローチャートである。この「周波数調整」処理では、まず、2msに亘って圧電素子4に交流電圧が印加され、この間250μs毎に8つの出力電圧値AD21〜AD28が取得され(図12のステップS202〜S209)、次いで、印加停止後の1msの間の残響振動における4つの出力電圧値AD11〜AD14が250μs毎に取得される(ステップS210〜S214)。さらに、このようにして取得された出力電圧値AD21〜AD28のうちの最大値と最小値の差AD2PPの値、及び出力電圧値AD11〜AD14の合計値が、印加した交流電圧の周波数と共に記憶される(ステップS216〜S218)。このような交流電圧の印加及び出力電圧値の取得が、複数の周波数について実行され(ステップS201、S219、S220)、そのうちの、最も共振周波数に近い周波数が、「タッチ検出」処理、及び「タッチ確認検出」において印加する交流電圧の周波数として設定される(ステップS221)。
具体的には、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数の設計値である標準周波数Frに対し、±10%の範囲内で、0.5%ずつ交流電圧の周波数を変化させ、各周波数に対する出力電圧値(最大値と最小値の差AD2PP、及びAD11〜AD14の合計値)が記憶される。
図13乃至図15は、このようにして取得された出力波形の一例である。
まず、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数と印加した交流電圧の周波数が比較的大きくずれている場合には、図13に示すように、交流電圧の印加停止後における残響振動が非常に小さくなる。このような場合には、出力電圧値AD11〜AD14の合計値が非常に小さくなる。また、交流電圧の印加中におけるパルス波形の振幅も一定になる(出力電圧値AD21〜AD28の最大値と最小値の差AD2PPがほぼ0になる)。これは、共振周波数と印加した交流電圧の周波数が比較的大きくずれていることにより、交流電圧を印加しても、あまり大きな振幅まで圧電素子4が励振されないためである。
次に、図14に示すように、共振周波数と印加した交流電圧の周波数が僅かにずれている場合には、交流電圧の印加により圧電素子4は比較的大きな振幅まで励振される。このため、交流電圧の印加停止後における残響振動が比較的大きく、出力電圧値AD11〜AD14の合計値も比較的大きくなる。一方、交流電圧の印加中における圧電素子4の振動と、交流電圧のパルス波形の位相が僅かにずれているため、交流電圧印加中の一部の出力電圧値(AD25付近)が大きくなる。これにより、出力電圧値AD21〜AD28の最大値と最小値の差AD2PPが大きくなる。
さらに、図15に示すように、共振周波数と印加した交流電圧の周波数が十分に一致している場合には、交流電圧の印加により圧電素子4は大きく励振されるので、交流電圧の印加停止後における残響振動が最大となり、出力電圧値AD11〜AD14の合計値も最大となる。一方、交流電圧の印加中における圧電素子4の振動と、交流電圧のパルス波形の位相関係も一定となり、交流電圧の印加中にパルス波形の振幅が電源電圧の幅を超えることはない。これにより、出力電圧値AD21〜AD28の最大値と最小値の差AD2PPは小さくなる。
図12のフローチャートのステップS221においては、上記のような性質を利用して、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数を求めている。具体的には、まず、残響振動(出力電圧値AD11〜AD14の合計値)が最も大きくなった周波数を共振周波数として選択する。次に、残響振動が最大となる周波数が複数存在した場合には、それらの周波数のうち、最大値と最小値の差AD2PPが最も小さくなった周波数を共振周波数として選択する。残響振動、最大値と最小値の差AD2PPが両方とも等しい周波数が複数存在した場合には、それらのうち最も低い周波数を共振周波数として選択する。これは、圧電素子4の電気インピーダンスが極小となる共振周波数と、極大となる反共振周波数が近接して存在した場合には、共振周波数が低周波側に表れることによる。
本発明の第1実施形態のタッチ検出装置によれば、交流電圧の印加が停止した後(図4及び図5の時刻t2〜)の検知部2aの振動に基づいて、使用者の手指等の検知部2aへの接触が判定されるので、検知部2aへの軽い「タッチ」によっても検知部2aの振動が変化され、「タッチ」を確実に検知することができる。また、圧電素子4は、検知部2aに振動を励起するために取り付けられているので、圧電素子4を駆動回路18や接触判定回路16a等から離間した場所に配置した場合でも、回路が不安定になり、誤動作することはない。これにより、検出回路12を自由に配置することが可能になり、デザイン性の高い水周り器具を構成することが可能になる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、振動励起素子は圧電素子4により構成されているので、簡便な構造で振動励起素子を構成することができる。また、接触判定回路16aは、圧電素子4からの出力信号に基づいて、使用者の手指等の検知部2aへの接触を判定するので、検知部2aの振動を検出するための素子又は装置を別途設けることなく、検知部2aの振動を検出することができ、タッチ検出装置の構成を簡単にすることができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、出力信号が、圧電素子4に交流電圧を印加する信号線4aから取得されるので、交流電圧を印加する配線と、出力信号を取得する配線の少なくとも一部を共通にすることができ、信号線の配線を簡略化することができる。また、駆動回路18の出力が、交流電圧の印加停止後(図4及び図5の時刻t2〜)にはハイインピーダンスとなるので、圧電素子4からの出力信号のインピーダンスが高い場合でも、十分に正確な出力信号を取得することができる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、接触判定回路16aは、交流電圧の印加停止後(図4及び図5の時刻t2〜)における検知部2aの振動エネルギー(図4及び図5の斜線部の面積、図8のSUM1)に基づいてタッチを検出する(図8のステップS37)ので、手指等のタッチによる僅かな振動の減衰も確実に捉えることができ、高感度なタッチ検出装置を構成することができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、異常検知回路16cは、圧電素子4への交流電圧の印加中(図9の時刻t1〜t2)における出力信号(図8の出力電圧値AD21〜AD24)に基づいて異常を検知する(図8のステップS39、S40)ので、タッチ検出の工程を複雑化することなく、異常を検知することができると共に、誤検知の発生を抑制することができる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、異常検知回路16cは、交流電圧の印加中(図9の時刻t1〜t2)における出力信号の振幅の変動(出力電圧値AD21〜AD24の最大値−最小値の値)に基づいて異常を検知する(図8のステップS39、S40)ので、異常の発生を確実に検知することができると共に、誤検知による誤動作を防止することができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、接触判定確認回路16bは、接触判定回路16aにより手指等の接触が一旦判定された(図6のステップS3、S4)後、接触判定確認動作(図6のステップS6、図10)を実行するので、より確実に誤検知を防止することができる。また、接触判定確認動作は、接触判定回路16aにより対象物の接触が一旦判定された後で実行されるので、誤検知の虞がない状況で無駄に接触判定確認動作が行われるのを防止(図6のステップS4→S11、ステップS5→S12)することができる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、接触判定確認動作(図6のステップS6)では、通常よりも長い所定の確認期間(図11の時刻t1〜t2)圧電素子4に交流電圧が印加されるので、交流電圧の印加中における異常を、より確実に検出することができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、周波数調整回路16dは、印加する交流電圧の周波数を、圧電素子4を取り付けた検知部2aが共振する周波数に調整する(図15)。このように、検知部2aを共振周波数で励振するので、小さな励振力により検知部2aを大振幅で振動させることができ、タッチ検出装置を少ない消費エネルギーで作動させることができる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、周波数調整回路16dは、所定時間(図13乃至図15の時刻t1〜t2)の交流電圧の印加を異なる周波数で複数回実行し、交流電圧の印加停止後(図13乃至図15の時刻t2〜)における圧電素子4からの出力信号の振幅が最大となる周波数を、圧電素子4を取り付けた検知部2aが共振する周波数として決定する(図12のステップS221)。これにより、検知部2a及び圧電素子4を水周り器具に組み付けた後でも交流電圧の周波数を調整することができるので、経年変化によって共振周波数がずれた場合でも、印加する交流電圧の周波数を共振周波数に合わせることができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、周波数調整回路16dは、交流電圧の印加停止後(図13乃至図15の時刻t2〜)における出力信号の振幅が最大となる周波数が複数存在する場合には、振幅が最大となった周波数のうち、圧電素子4への交流電圧の印加中における出力信号の振幅の変動が最も少ない周波数を、圧電素子4を取り付けた検知部2aが共振する周波数として決定する(図12のステップS221)。このため、圧電素子4を取り付けた検知部2aの共振周波数を、簡単なアルゴリズムで自動的に、確実に設定することができる。
次に、図16乃至図21を参照して、本発明の第2実施形態による水栓装置を説明する。
本実施形態の水栓装置は、内蔵されているタッチ検出装置において、図6のメインフローのステップS3及びS6から夫々サブルーチンとして呼び出される「タッチ検出」処理及び「タッチ確認検出」処理のみが、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の部分については説明を省略する。
図16は、本発明の第2実施形態において、図6のメインフローからサブルーチンとして呼び出されるタッチ検出フローである。図17は、本発明の第2実施形態のタッチ検出装置において、使用者が検知部にタッチしていない場合の圧電素子の典型的な出力波形を示す図である。図18は、本発明の第2実施形態のタッチ検出装置において、使用者が検知部にタッチした場合の圧電素子の典型的な出力波形を示す図である。図19は、検知部の共振周波数が、印加される交流電圧の周波数から僅かにずれた場合における、出力波形の一例を示す図である。図20は、本発明の第2実施形態において、図6のメインフローからサブルーチンとして呼び出されるタッチ確認検出フローである。図21は、検知部の共振周波数が、印加される交流電圧の周波数から僅かにずれた状態において、タッチ確認検出が行われた場合の出力波形の一例を示す図である。
本実施形態のタッチ検出装置においては、「タッチ検出」処理を行うサブルーチンとして、図16のフローチャートが実行される。
まず、ステップS301においては、圧電素子4への交流電圧の印加が開始される。次いで、ステップS302においては、検波出力(信号変換回路20からの出力)が所定の「周波数ずれ閾値」以上であるか否かが判断され、この処理が、交流電圧の印加開始から1ms経過するまで繰り返される(ステップS303、S305)。また、交流電圧の印加中において、検波出力が「周波数ずれ閾値」以上になった場合にはステップS304に進み、閾値を超えていたことが記憶される。
図17及び図18の下段に示すように、「周波数ずれ閾値」は、検知部2aの共振周波数と、印加する交流電圧の周波数が一致している場合における通常の検波出力よりも僅かに大きい値に設定されている。即ち、第1実施形態において説明したように、検知部2aの共振周波数と、印加する交流電圧の周波数が十分に一致している場合には、交流電圧の印加中(励振中)におけるパルス波形の振幅は、ほぼ電源電圧と同一であり(図17及び図18の中段)、このパルス波形が検波されたものが、信号変換回路20から出力される。一方、図19の中段に示すように、検知部2aへの水滴の付着等により、検知部2aの共振周波数が、印加する交流電圧の周波数からずれた場合には、交流電圧の印加中におけるパルス波形の振幅が正常時における振幅よりも大きくなり、電源電圧の幅を超える部分が表れる。これにより、図19の下段に示すように、信号変換回路20からの出力が「周波数ずれ閾値」を超える。
次に、ステップS306においては、交流電圧の印加停止後、検波出力(信号変換回路20からの出力)が所定の「残響閾値」以下に低下したか否かが判断される。この処理が、交流電圧の印加停止後500μs経過するまで繰り返される(ステップS307)。なお、図17乃至図19の下段に示すように、本実施形態においては、「残響閾値」は通常の検波出力の約50%の大きさに設定されている。
交流電圧の印加停止後500μs経過する前に、検波出力が「残響閾値」以下に低下した場合にはステップS308に進み、一方、印加停止後500μs経過しても検波出力が「残響閾値」以下に低下しない場合には、ステップS310に進む。ステップS310においては、使用者の手指等が検知部2aにタッチしていない、即ち、「非タッチ」と判定される。これは、「非タッチ」の場合には、交流電圧の印加停止後の残響振動が大きく、停止後500μs経過しても依然として比較的大きな振動が残留していることから、このように判定される。
一方、ステップS308では、交流電圧の印加中において、検波出力が「周波数ずれ閾値」以上になっていたか否かが判断され、「周波数ずれ閾値」以上になっていた場合には、ステップS310に進み、「非タッチ」と判定される。これは、検知部2aの共振周波数が印加する交流電圧の周波数からずれている場合には、「非タッチ」であっても残響振動が小さく、残響振動が早期に「残響閾値」以下に低下するので、「非タッチ」と判定することにより、誤検知を防止している。なお、第1実施形態において説明したように、使用者が「タッチ」している場合には、検知部2aに水滴等が付着していても、検波出力が「周波数ずれ閾値」以上になることはないので、水滴等の付着があっても「タッチ」と、判定することができる。
また、交流電圧の印加中において、検波出力が「周波数ずれ閾値」以上になっていない場合には、ステップS308からS309へ進み、使用者の手指等が検知部2aにタッチしている、即ち、「タッチ」と判定される。これは、使用者が「タッチ」している場合には、残響振動が小さく、残響振動が早期に「残響閾値」以下に低下するためである。このように、交流電圧の印加停止後、所定時間経過後の振動振幅が、所定の振幅以下に減衰している場合には、「タッチ」と判定される。
次に、図20及び図21を参照して、本発明の第2実施形態におけるタッチ確認検出を説明する。
図20は、図6のステップS6において、サブルーチンとして呼び出される「タッチ確認検出」処理を示すフローチャートである。図21は、検知部2aの共振周波数が、印加される交流電圧の周波数から僅かにずれた状態において、タッチ確認検出が行われた場合の出力波形の一例を示す図である。なお、図21は、検知部2aがタッチされていない状態における波形である。
ここで、図20に示すタッチ確認検出のフローチャートは、ステップS323が図16のステップS303とは異なる点を除き、図16に示したタッチ検出のフローチャートと同一である。即ち、図16に示す「タッチ検出」処理においては、1msに亘って交流電圧を印加していたのに対し、図20に示す「タッチ確認検出」処理では、交流電圧が2msに亘って印加される。
図21に示すように、交流電圧が2msに亘って印加されると、交流電圧の印加中におけるパルス波形の乱れをより正確に検出することができ、交流電圧の印加中において、「周波数ずれ閾値」を超えたか否かを、正確に判定することができる。このように、交流電圧の印加時間を長くすることにより、検知部2aの共振周波数と、印加される交流電圧の周波数のずれを、確実に検出することができ、誤検知を防止することができる。
また、上述した第2実施形態においては、交流電圧の印加停止後、検波出力(信号変換回路20からの出力)が所定の「残響閾値」以下に低下した時間が500μs以下であるか否かによって、「タッチ」、「非タッチ」を判定している。このため、第1実施形態のように、マイクロコンピュータを使用して、信号変換回路20からの出力値に積分演算(複数のA/D変換された値を合計する処理)を施すことなく、「タッチ」、「非タッチ」を判定することができる。例えば、第2実施形態においては、交流電圧の印加停止後の時間を計測するタイマーと、検波出力が「残響閾値」以下に低下したか否かを検出するコンパレータと、を使用して判定を行うことができる。即ち、コンパレータが「残響閾値」への低下を検出するまでの時間をタイマーで計測することにより、「タッチ」、「非タッチ」を判定することができる。これにより、検出回路を簡略化することができる。
さらに、上述した第2実施形態においては、検波出力が所定の「残響閾値」以下に低下するまでの時間に基づいて判定を行っていたが、変形例として、交流電圧の印加停止後、所定時間経過した時点での検波出力を計測し、この検波出力が所定の閾値以下であるか否かによって、「タッチ」、「非タッチ」を判定することもできる。即ち、交流電圧の印加停止後、所定時間経過後の振動振幅が、所定の振幅以下に減衰している場合に「タッチ」と判定する。この変形例についても、コンパレータ及びタイマーで判定を行うことができ、簡単な回路で、判定を行うことができる。
次に、図22乃至図32Cを参照して、本発明の第3実施形態による水栓装置を説明する。
本実施形態の水栓装置は、検出回路の構成及び作用のみが上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様の部分については説明を省略する。
上述した本発明の第1、第2実施形態は水周り器具に使用するタッチ検出装置であって、検知部2aに取り付けられた圧電素子4に、検知部2aの共振周波数と一致する周波数の交流電圧を間欠的に印加し、印加が停止した後の検知部2aの残響振動(図4)に基づいて検知部2aへの使用者の手指等の接触を検知していた。即ち、使用者の手指等が検知部2aに接触すると残響振動が減少する(図5)という特性に基づいて、検知部2aへの「タッチ」を判定している。
また、上述した本発明の第1、第2実施形態においては、交流電圧印加中における圧電素子4からの出力信号の振幅が増大する場合(図9)に、検知部2aの共振周波数が温度変化や水滴の付着等の要因で変化して、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数との間にずれが生じていると判断し、残響が減少していても「タッチ」と判定していない。
また、印加する交流電圧の周波数を変化させて残響の大きさを測定し、これが最大となる周波数を検知部2aの共振周波数と推定して、交流電圧の周波数を自動調整している(図12)。
印加する交流電圧の周波数の自動調整を行うことにより、検知部2aや検出回路12のバラツキ、変動等を吸収することができ、交流電圧の周波数を共振周波数に一致させることができる。しかしながら、周波数の自動調整は、調整が行われる環境によっては正確な調整ができない場合もある。周波数の自動調整は、水栓装置の工場からの出荷前に実施するならば、調整を行う環境を一定条件に整えることができるので、正確な調整を行うことができる。しかしながら、検知部2aの共振周波数の経時変化や、故障時に検知部2aを交換する場合等を考えると、水栓装置の実際の使用現場においても自動調整可能であることが望ましい。
このように、使用現場で周波数の自動調整を行う場合、自動調整中に検知部に使用者が触れている、検知部2aに水滴などが付着している、検知部2aがお湯や氷に触れて極端な高温または低温になっている等、正確な調整が困難な状況にある場合もある。また、自動調整中に偶発的に電気的なノイズが入って、調整結果に誤差が混入することも考えられる。
また、水滴等の付着や、極端な高温、低温による共振周波数の変化は、一時的なものであり、水滴等が脱落、蒸発したり、検知部2aの温度が室温に戻ることにより、共振周波数は通常の値に復帰する。従って、印加する交流電圧の周波数と共振周波数の間のずれは、その発生原因により適切な対処が異なるものとなる。一時的な共振周波数の変化に対し、頻繁に自動調整を実行して交流電圧の周波数を変更すると、却ってタッチ検出装置の動作を不安定にしてしまう場合がある。また、頻繁に自動調整が実行されると、その間はタッチ検出ができないため、タッチ検出装置の使い勝手が悪くなる。
さらに、水回り器具の検知部2aには頻繁に水滴等が付着する。このため、印加する交流電圧の周波数と検知部の共振周波数にずれが生じてしまった場合に、自動調整の実行を待つことなく、「タッチ」の誤検知を防止することが望ましい。
本発明の第3実施形態による水栓装置は、これらの問題を解決することを目的としたものである。
図22は、本実施形態における検出回路の概略構成を示す回路図である。
図22に示すように、本実施形態における検出回路12には、マイクロコンピュータ16と、駆動回路18と、信号変換回路20と、分圧回路22と、が内蔵されている。
本実施形態における駆動回路18は、その出力(PNPトランジスタ18a及びNPNトランジスタ18bの各コレクタの接続点)が結合コンデンサ18eを介して信号線4aに接続されている点が第1実施形態とは異なる。これにより、駆動回路18の電圧出力にオフセットがある場合でも、その交流電圧成分のみが信号線4aに印加される。
また、本実施形態におけるマイクロコンピュータ16は、接触判定回路16a、接触判定確認回路16b、異常検知回路16c、及び周波数調整回路16dに加え、周波数ずれ検知回路16e及び共振周波数検出の成否を判定する判定回路16fが内蔵されている点が第1実施形態とは異なる。これらの周波数ずれ検知回路16e及び判定回路16fも、マイクロコンピュータ16を作動させるプログラムにより実現されている。
次に、図23乃至図32Cを参照して、本発明の第3実施形態による水栓装置の作用を説明する。
図23は本実施形態の水栓装置の作用を示すメインフローである。
図23のフローチャートにおける処理は、検出回路12に内蔵されたマイクロコンピュータ16及びプログラムによって実行される。
まず、図23のステップS401においては、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数調整が実行される。この周波数調整は、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数を、検知部2a及び圧電素子4の共振周波数に正確に一致させるための処理であり、この処理は、本実施形態においては、検出回路12に対する電源投入時に実行される。このステップS401においては、図26に示すフローチャートがサブルーチンとして呼び出される。図26のフローチャートにおける具体的処理については後述する。
次に、図23のステップS402においては、10msタイマーがリセットされる。本実施形態においては、圧電素子4への交流電圧の印加がセンシング周期である10msごとに間欠的に実行される。ステップS402においては、この交流電圧の印加の間隔を制御する10msタイマーがリセットされ、タイマーの積算が開始される。
さらに、ステップS403においては、使用者による検知部2aへのタッチが検出される。即ち、圧電素子に所定周波数の交流電圧が印加され、交流電圧の印加が停止した後の検知部2aの振動に基づいて、使用者が検知部2aにタッチしたか否かが判定される。具体的には、ステップS403においては、図24に示すフローチャートがサブルーチンとして呼び出される。図24のフローチャートにおける具体的処理については後述する。
次に、ステップS404においては、共振周波数との一致を確認する所定のタイミングが到来しているか否かが判断される。即ち、圧電素子に印加している交流電圧の周波数が、検知部2aの共振周波数と一致しているか否かが所定の時間間隔で確認される。本実施形態においては、圧電素子に印加する交流電圧の周波数と検知部2aの共振周波数が一致していることが望ましい。マイクロコンピュータ16によって実現されている周波数ずれ検知回路16eは、交流電圧の周波数と共振周波数が十分に一致しているか否かを、検出回路12の作動中1分毎に確認する。周波数の一致を確認すべき時機である場合にはステップS405に進んで一致しているか否かが確認され、確認すべき時機でない場合には、確認を行わずにステップS406に進む。
ステップS405においては、図27に示すフローチャートがサブルーチンとして呼び出される。図27のフローチャートにおける具体的処理については後述する。
ステップS406においては、ステップS405の確認において、交流電圧の周波数と共振周波数が一致していたか否かが判断され、一致していた場合にはステップS407に進み、ずれていた場合にはステップS419に進む。なお、ステップS404において共振周波数との一致を確認するタイミングではないと判定され、ステップS404→S407と進んだ場合には、ステップS406における判断は直近の過去に実行されたステップS405における確認結果に基づいて行われる。従って、ステップS405において一旦、交流電圧の周波数と共振周波数のずれが確認されると、その後少なくとも1分間は、ステップS406からステップS419に処理が移行することとなる。
次に、ステップS419においては、ステップS406において「周波数ずれが発生している」と判断された後の周波数ずれの継続時間の積算が開始される。この積算は、ステップS406において「周波数ずれが発生していない」と判断され、ステップS407において継続時間の積算がリセットされるまで、継続的に行われる。
次いで、ステップS420においては、積算されている周波数ずれの継続時間がn分か否か(nは整数)が判断される。n分である場合にはステップS421に進み、n分でない場合にはステップS418に進む。ステップS418においては、ステップS402において積算が開始されたタイマーが10msになるまで待機され、10ms経過するとステップS402に戻って、ステップS402以下の処理が繰り返される。
一方、積算されている周波数ずれの継続時間がn分である場合にはステップS421に進み、ステップS421においては、図29に示す周波数再調整フローがサブルーチンとして実行される。従って、ステップS421の周波数再調整フローは、周波数ずれが継続している間、1分ごとに実行されることとなる。図29のフローチャートにおける具体的処理については後述する。
一方、交流電圧の周波数と共振周波数が一致している場合にはステップS407に進み、ステップS407においては、積算されていた周波数ずれの継続時間がリセットされる。上記のように、ステップS419以下の処理においては、圧電素子に印加する交流電圧の周波数と検知部2aの共振周波数がずれている状態が継続している時間が積算されている。ステップS407においては、ステップS406において「周波数はずれていない」と判定されたため、積算されていた周波数ずれの継続時間がリセットされる。
次いで、ステップS408においては、ステップS403における検出結果が「タッチ」であったか、「非タッチ」であったかが判定される。「タッチ」であった場合にはステップS409に進み、「非タッチ」であった場合にはステップS418に進む。「非タッチ」と判定された後のステップS418においては、ステップS402において積算が開始されたタイマーが10msになるまで待機され、10ms経過するとステップS402に戻って、ステップS402以下の処理が繰り返される。
一方、ステップS408において、ステップS403における検出結果が「タッチ」であった場合にはステップS409に進み、ステップS409においては、前の状態が「タッチ」であったか否かが判断される。即ち、ステップS409においては、前回ステップS409が実行されたとき「タッチ」の判定が確定していたか否かが判断される。なお、前回のループにおいて実行されたステップS413(後述する)において「タッチ」と判定された状態を「タッチの判定が確定」と呼んでいる。ステップS409において、前の状態が「タッチ(タッチの判定が確定)」であった場合にはステップS422に進み、前の状態が「非タッチ(タッチの判定が確定していない)」であった場合にはステップS410に進む。
次いで、ステップS410においては、「仮タッチフラグ」が0であるか否かが判断される。ここで、「仮タッチフラグ」は、「タッチの判定が確定」していないが、前回実行されたステップS403のタッチ検出において「タッチ」と判定されている状態において「1」に変更されるフラグである。即ち、ステップS410の実行時において、「仮タッチフラグ」=0である場合にはステップS411に進み、ステップS411において「仮タッチフラグ」が1に変更される。
ステップS411において「仮タッチフラグ」が1に変更された後、ステップS418に進み、積算が開始されたタイマーが10msになるとステップS402以下の処理が繰り返される。「仮タッチフラグ」=1の状態において、再びステップS410が実行されると、ステップS412のタッチ確認検出に処理が移行する。このように、「非タッチ」(「仮タッチフラグ」=0)の状態から、ステップS403(タッチ検出)で検出された状態がステップS408において2回連続で「タッチ」と判定された場合において、処理がステップS410からステップS412に移行し、タッチ確認検出が実行されることとなる。
ステップS412においては、「タッチ確認検出」である図25に示すフローチャートが、サブルーチンとして実行される。この「タッチ確認検出」は、ステップS403における「タッチ検出」による誤検知を防止するために、ステップS403による検出結果が「非タッチ」から2回連続で「タッチ」に変化した場合に実行される処理である。「タッチ確認検出」における具体的な処理については後述する。
ステップS413においては、「タッチ確認検出」の結果が「タッチ」であったか否かが判断される。「非タッチ」であった場合には、ステップS403における「タッチ」の検出が誤検知であった可能性が高いため、電磁弁の開閉を行うことなく、ステップS418に進み、ステップS402以下の処理が繰り返される。一方、「タッチ確認検出」の結果が「タッチ」であった場合には、「タッチの判定が確定」され、ステップS415に進む。
ステップS415においては、水栓装置1が吐水状態であるか否かが判断され、吐水中である場合にはステップS416に進み、吐水中でない場合にはステップS417に進む。ステップS417では、吐水状態において新たに検知部2aがタッチされたことになるため、湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bが閉弁され、止水状態に切り換えられる。一方、ステップS416では、止水状態において新たに検知部2aがタッチされたことになるため、湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bが開弁され、吐水状態に切り換えられる。
このように、検知部2aへの「タッチの判定が確定」された場合であっても、ステップS403におけるタッチ検出は、所定のセンシング周期である10msごとに等間隔で実行される。「タッチの判定が確定」した状態において、使用者が検知部2aへの「タッチ」を継続していると、図23のメインフローにおける処理は、ステップS403→S404→S406→S407→S408→S409→S422のように進む(ただし、「周波数ずれ」は発生していないものとする)。
ステップS422においては、「タッチ」状態の継続時間が計測される。具体的には、ステップS413において「タッチの判定が確定」された後の経過時間が計測される。
次いで、ステップS423においては、ステップS422において計測されたタッチ継続時間が1分を超えたか否かが判断される。1分を超えていない場合には、ステップS418に進み、使用者が検知部2aにタッチしている間は、ステップS418→S402→S403→S404→S406→S407→S408→S409→S422→S423→S418の処理が繰り返される(ただし、「周波数ずれ」は発生していないものとする)。一方、1分を超えた場合にはステップS423→S417に進み、水栓装置1の状態に関わらず湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bが閉弁される。即ち、使用者が1分を超えて検知部2aにタッチしているのは異常な操作であり、タッチの誤検知、又は故障の可能性が高い。このため、水栓装置1の状態に関わらず湯用電磁弁8a及び水用電磁弁8bを閉弁させ、水の浪費を防止する。
さらに、ステップS403のタッチ検出において「非タッチ」が検出されると、使用者が検知部2aから手指を離したことが認識され、検出回路12からの判定出力は、「非タッチ」に変更される。しかしながら、水栓装置1の状態は、直近で切り換えられた状態(吐水状態又は止水状態)が継続される。「非タッチ」の検出以降、使用者によって検知部2aが再びタッチされるまでは、図23のメインフローにおいては、ステップS402→S403→S404→S406→S407→S408→S418→S402の処理が繰り返される(ただし、「周波数ずれ」は発生していないものとする)。
その後、使用者が検知部2aを再びタッチし、この状態が継続された場合には、図23のメインフローでは、ステップS402→S403→S404→S406→S407→S408→S409→S410→S411→S418→S402→S403→S404→S406→S407→S408→S409→S410→S412→S413→S415の順に処理が行われて「タッチの判定が確定」され、水栓装置1の状態が切り換えられる。このように、本実施形態の水栓装置1は、使用者が検知部2aにタッチする(使用者が検知部2aから手指を離した状態から、触れるまでの動作)ごとに吐水状態と止水状態が交互に切り換えられる。
次に、図24、図30及び図31を参照して、図23のステップS403において実行されるタッチ検出の詳細を説明する。
図24はメインフローからサブルーチンとして呼び出されるタッチ検出フローであり、図30はタッチ検出フローからサブルーチンとして呼び出される検波波形データ取得フローである。なお、図24に示すタッチ検出フローは、マイクロコンピュータ16及びプログラムによって構成された接触判定回路16a及び異常検知回路16cにより実行される。
また、図31は、取得される検波波形の一例を示す図である。なお、図31は、上段にマイクロコンピュータ16の出力ポートP1、P2(図22)からの出力電圧波形、中段に圧電素子4の出力電圧波形(信号線4a、4b間の電圧波形)、下段に信号変換回路20回路からの出力電圧波形(検波波形:マイクロコンピュータ16のA/D変換器入力波形)を示すものである。なお、図31は信号波形を模式的に示したものであり、交流電圧の印加中において出力される波の数等、実際の波形とは異なっている。
まず、メインフローである図23のステップS403から、サブルーチンとして図24に示すタッチ検出フローが呼び出され、このタッチ検出フローのステップS501から、サブルーチンとして図30に示す検波波形データ取得フローが呼び出される。
図30に示す検波波形データ取得フローにおいては、まず、0.8msに亘って圧電素子4に交流電圧を印加して、検知部2aを励振して検波波形の値AD21〜AD28を取得する。次いで、交流電圧の印加停止後の0.8ms間の残響の大きさとして検波波形の値AD11〜AD18を取得している。
図30のステップS521において、圧電素子4への交流電圧の印加が開始される(図31の時刻t1)。次いで、ステップS522において、変数nの値が1にセットされる。さらに、ステップS523〜S527では、交流電圧の印加中において、信号変換回路20(図22)の出力電圧(検波波形:図31の下段)が100μs毎に8回サンプリングされA/D変換される。これにより、0.8msの励振期間において、信号変換回路20からの8つの出力電圧値AD21〜AD28(図31の下段)が取得される。
次いで、ステップS528においては、マイクロコンピュータ16(図22)のポートP1、P2の出力が夫々Hi及びLoに設定され、これによりPNPトランジスタ18a及びNPNトランジスタ18bが何れもオフにされる(交流電圧出力終了、図31の時刻t2)。また、ステップS529において、変数nの値が1にセットされる。さらに、ステップS530〜S534では、交流電圧の印加停止直後に、信号変換回路20の出力電圧が100μs毎に8回サンプリングされA/D変換される。これにより、励振停止後の0.8msの残響期間において、信号変換回路20からの8つの出力電圧値AD11〜AD18(図31の下段)が取得され、図30のフローチャートの1回の処理が終了し、図24に示すタッチ検出フロー(のステップS501)に戻る。
次に、図24のステップS502においては、ステップS501において取得された出力電圧値AD21〜AD28のうちの最大値から最小値を減じた値が計算され、この値がAD2PPとされる。図31に示す例においては、AD23が最大でAD21が最小であるためAD2PPは、AD23−AD21により計算される。
さらに、ステップS503においては、ステップS501において取得された出力電圧値AD21〜AD28について隣り合うデータの差が計算され、この差の最大値がAD2DIFとされる。図31に示す例においては、隣り合うデータのうち、D23とAD22の差が最大であるため、AD2DIFはAD23−AD22により計算される。
次に、ステップS504においては、ステップS501において取得された出力電圧値AD11〜AD18の合計SUM1が計算される。このSUM1の値は、図31の斜線部の面積と強い相関関係があり、検知部2aの振動の残響エネルギーを表す量となる。
さらに、ステップS505においては、出力電圧値AD11〜AD18が単調減少しているか否かが判断される。即ち、AD11〜AD18の順に後の値が前の値よりも小さくなっていれば単調減少であるということができる。図31に示す例においては、AD13に対してAD14が増加しているため、出力電圧値AD11〜AD18は「単調減少していない」と判断される。
さらに、ステップS506においては、直近の過去3分間に図24のフローチャートが実行された際に夫々計算された各SUM1の値の平均値SUM1AVが計算される。即ち、SUM1AVは、SUM1の過去3分間の移動平均値である。ここで、一回の操作で使用者が検知部2aに触れている時間は、長くとも1s程度であるため、過去3分間に計算された多数のSUM1の値は、大部分が「非タッチ」状態において取得されたものであるということができる。従って、SUM1の平均であるSUM1AVは、「非タッチ」状態における平均的な残響エネルギーの大きさを表すことになる。
次いで、ステップS507においては、ステップS503において計算されたAD2DIFが所定のノイズ判定閾値と比較され、AD2DIFがノイズ判定閾値よりも小さい場合にはステップS508に進み、AD2DIFがノイズ判定閾値以上の場合にはS511に進む。即ち、検出回路12が電気的なノイズを拾った場合や、包丁等の硬い物体が検知部2aに当たった場合は、検波波形にパルス状の乱れが生じる。図31は、検出回路12がノイズを拾った場合の例を示しており、中段に「ノイズ」として示された部分で検波波形に乱れが生じている。このような乱れが生じた場合には、検波波形が急激に変化し、その時間微分値が大きくなるので、隣り合う検出値の差の最大値AD2DIFをノイズ判定閾値と比較することにより、検波波形に乱れが生じたか否かを判定することができる。なお、隣り合う検出値の差の最大値AD2DIFに基づいて判定を行うことにより、ノイズ等による波形の乱れと、印加する交流電圧の周波数と検知部2aの共振周波数がずれた場合に生じる波形の乱れ(図9、図11等)を明確に区別することができる。
次に、図24のステップS511においては、検出したデータがノイズ等を拾っているため、今回の検波波形からはタッチ検出に関する判定は行なわれず、前回このフローチャートが実行されたときの「タッチ」又は「非タッチ」の判定がそのまま維持され、図24に示すフローチャートの1回の処理を終了する。
一方、ステップS507において、AD2DIFがノイズ判定閾値よりも小さい場合には、ステップS508に進む。ステップS508においては、残響を表すAD11〜AD18の値が単調減少しているか否かが判断され、単調減少している場合にはステップS509に進み、単調減少していない場合にはステップS511に進む。上述したように、検出回路12がノイズ等を拾った場合には検波波形が乱れ、AD11〜AD18の値が単調減少しなくなる。この場合には、検出したデータがノイズ等を拾っているため、ステップS511に進み、今回の検波波形からはタッチ検出に関する判定は行なわない。
一方、ステップS509においては、SUM1とSUM1AVの値が比較される。SUM1がSUM1AVの1/2以下の場合にはステップS510に進み、SUM1AVの1/2よりも大きい場合にはステップS514に進む。即ち、SUM1がSUM1AVの1/2よりも大きい場合には、今回検出された残響エネルギーSUM1が、「非タッチ」の場合における平均的な残響エネルギーSUM1AVと大きく異なることはないので、ステップS514においては「非タッチ」と判定し、図24のフローチャートの1回の処理を終了する。この「非タッチ」の判定は、メインフロー(図23)のステップS408における判断に使用される。
一方、SUM1がSUM1AVの1/2以下の値である場合にはステップS510に進む。即ち、SUM1がSUM1AVの1/2以下の値である場合には、今回検出された残響エネルギーSUM1が、「非タッチ」の場合における平均的な残響エネルギーSUM1AVよりも大幅に低下しているので、検知部2aにタッチ操作が行われている可能性が高い。即ち、本実施形態においては、交流電圧の印加停止後における検知部2aの振動エネルギーに基づいて、検知部2aへの「タッチ」が行われたか否かが判定され、振動エネルギーが所定の閾値以下の場合に「タッチ」が行われた、と判定される。
ステップS510においては、ステップS502において計算された出力電圧値AD21〜AD28の最大値と最小値の差AD2PPと、所定のずれ判定閾値が比較される。最大値と最小値の差AD2PPが、所定のずれ判定閾値未満である場合には、ステップS512に進み、ステップS512においては「タッチ」と判定し、図24のフローチャートの1回の処理を終了する。この「タッチ」の判定は、メインフロー(図23)のステップS408における判断に使用される。
一方、ステップS510において、最大値と最小値の差AD2PPが、所定のずれ判定閾値以上である場合にはステップS513に進む。このように、残響エネルギーが小さく、励振期間中における検波出力波形が一定値でない場合は、第1実施形態において、図9等を参照して説明したように、圧電素子4に印加している交流電圧の周波数と、検知部2aの共振周波数がずれていると考えられる。このため、ステップS513においては「周波数ズレ」と判定し、次いで、ステップS514においては「非タッチ」と判定し、図24のフローチャートの一回の処理を終了する。即ち、マイクロコンピュータ16に内蔵された異常検知回路16cは、圧電素子4への交流電圧の印加中において、検波波形の出力電圧値が所定のずれ判定閾値以上変動した場合には、異常を検知し、「タッチ」の判定をしない。
このように、共振周波数と印加される交流電圧の周波数にずれがある場合には、交流電圧印加中のパルス波形が乱れ、振幅が変化する、という現象が発生する。このような周波数にずれがある状態において「タッチ」を検出し、誤検知となるのを防止するために、図24のステップS510において、交流電圧印加中における最大値と最小値の差が所定のずれ判定閾値を超えた場合には、「非タッチ」と判定している。
次に、図25及び図32A〜図32Cを参照して、「タッチ」の判定を確認し、「タッチの判定を確定」させるタッチ確認検出フローを説明する。
図25はタッチ確認検出フローであり、このタッチ確認検出フローは、図23に示すメインフローのステップS412において、サブルーチンとして呼び出される。図32A〜図32Cは、「タッチ」の判定と、「タッチ」の判定を確定させる処理を説明するためのタイムチャートである。
まず、図25のステップS541においては、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数が、通常のタッチ検出において印加される周波数よりも1%低い確認周波数に設定される。本実施形態においては、タッチ検出において印加される交流電圧の周波数は約40kHzであるため、ステップS541においては交流電圧の周波数は約39.6kHzに設定される。このように、接触判定確認回路16bは、使用者がタッチしたことが接触判定回路16aにより一旦判定された(図23のステップS410)後、接触判定確認動作として、通常の交流電圧の周波数とは異なる確認周波数の交流電圧を圧電素子4に印加する。
次に、ステップS542においては、上述したタッチ検出フロー(図24)がサブルーチンとして呼び出される。ここで実行されるタッチ検出フローは、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数が約39.6kHzに変更されていることを除き、上述した処理と同様である。
さらに、ステップS543においては、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数が、通常のタッチ検出の周波数よりも1%高い確認周波数に設定される。このため、ステップS543においては交流電圧の周波数は約40.4kHzに設定される。
次いで、次に、ステップS544においては、上述したタッチ検出フロー(図24)がサブルーチンとして再び呼び出される。ここで実行されるタッチ検出フローは、圧電素子4に印加される交流電圧の周波数が約40.4kHzに変更されていることを除き、ステップS542と同様である。
次に、ステップS545においては、ステップS542及びS544におけるタッチ検出の結果が判定される。即ち、ステップS542及びS544においてサブルーチンとして実行されたタッチ検出フローからの戻り値が、両方とも「タッチ」の判定(図24のステップS512)である場合にはステップS546に進み、どちらか一方でも「非タッチ」の判定(図24のステップS514)であった場合にはステップS547に進む。
ステップS546においては、使用者が本当に検知部2aにタッチしていると判定し、「タッチ」の判定が確定される(図23のメインフローにおいて、ステップS413→S415に移行する)。このように、接触判定確認回路16bは、確認周波数の交流電圧の印加によっても、使用者の「タッチ」が接触判定回路16aにより判定された場合に、検知部2aへの「タッチ」の判断を確定する。一方、ステップS547においては、(図23のメインフローのステップS403において)一旦「タッチ」の判定がなされたものの、実際にはタッチが行われていないと判定され、「非タッチ」の判定が確定される(図23のメインフローにおいて、ステップS413→S418に移行する)。
次に、図32A乃至図32Cを参照して、タッチ確認検出の原理を説明する。
図32A乃至図32Cは、横軸を時間とし、上段には、各交流電圧の印加によって生じる残響振動のエネルギレベルを示し、下段には「タッチの判定の確定」の有無を示したタイムチャートである。
図32Aは、検知部2aの共振周波数のずれが発生していない場合の一例を示している。まず、図32Aの時刻t0以前においては、使用者が検知部2aに「タッチ」しておらず、圧電素子4に交流電圧を印加することにより、印加後、大きな残響振動が発生する。このため、時刻t0以前においては、図32Aの上段に一点鎖線で示す閾値よりも高いレベルの残響振動が、10msec毎に検出されている。
次に、時刻t0において、使用者が検知部2aに「タッチ」すると、その直後の時刻t1において実行されるタッチ検出(図23のステップS403)において検出される残響振動のエネルギーが閾値よりも低下する。上述したように、一旦「タッチ」が検知されると、「仮タッチフラグ」が1に変更され(図23のステップS411)、時刻t2において再びタッチ検出が実行される(図23のステップS403)。この時刻t2において実行されるタッチ検出においても残響振動のエネルギーが低い場合には、タッチ確認検出(図23のステップS412)が実行される。
タッチ確認検出(図23のステップS412で呼び出される図25のサブルーチン)では、まず、時刻t3において、通常のタッチ検出よりも低い周波数の交流電圧が圧電素子4に印加される(図25のステップS541)。使用者が検知部2aに「タッチ」している状態では、交流電圧の周波数を下げることにより、検知部2aの周波数に対してずれが生じているとしても、残響振動のエネルギーは低くなる。続いて、時刻t4において、通常のタッチ検出よりも高い周波数の交流電圧が圧電素子4に印加される(図25のステップS543)。使用者が検知部2aに「タッチ」している状態では、同様に、交流電圧の周波数を高くしても残響振動のエネルギーは低くなる。これにより、タッチ確認検出フロー(図25)において、「タッチ」が判定される(図25のステップS545→S546)。このように、タッチ確認検出フローにおいて「タッチ」が判定されると、メインフロー(図23)において「タッチ」の判定が確定される(図23のステップS413→S415、図32Aの時刻t5)。
図32Aの時刻t5において「タッチ」の判定が確定された後、時刻t6において「非タッチ」となるまで(使用者が検知部2aから手を離すまで)、10msec毎にタッチ検出(図23のステップS403)が実行される。この間は、検出される残響振動のエネルギーは閾値よりも低い値となる。時刻t6の後、時刻t7においてタッチ検出が実行されると、検出される残響振動のエネルギーは閾値よりも高い値となり、「非タッチ」の状態となったことが確定する(図32Aの時刻t8、図23のステップS408→S418)。
次に、図32Bを参照して、温度変化により検知部2aの共振周波数が上昇した場合におけるタッチ確認検出の作用を説明する。
図32Bにおいては、時刻t13まで使用者による「タッチ」は行われていないが、検知部2aの温度変化により、時刻t0以降、タッチ検出(図23のステップS403)により検出される残響振動のエネルギーが低下傾向となる。即ち、検知部2aの温度低下により検知部2aの共振周波数が上昇することにより、タッチ検出において印加されている交流電圧の周波数との間にずれが生じる。この結果、検知部2aが十分に励振されずに検出される残響振動のエネルギーが低下する。
図32Bの時刻t1においては、検知部2aの共振周波数の上昇により残響振動のエネルギーが低下し、「タッチ」されていないにも関わらずエネルギーが閾値よりも低い値となっている。これにより、誤って「タッチ」の判定がなされ(図23のステップS408→S409)、さらに時刻t2において「タッチ」の判定がなされると(図23のステップS408→S409→S410)、タッチ確認検出が実行される(図23のステップS410→S412、図25)。
タッチ確認検出においては、まず、通常のタッチ検出よりも低い周波数の交流電圧が圧電素子4に印加される(図25のステップS541、図32Bの時刻t3)。時刻t3においては、使用者は検知部2aに「タッチ」していないが、検知部2aの共振周波数が上昇しているため、印加された交流電圧の周波数と共振周波数の差が大きく、検出される残響振動のエネルギーが低下する。次に、時刻t4においては、通常のタッチ検出よりも高い周波数の交流電圧が圧電素子4に印加される(図25のステップS543)。ここで、検知部2aの共振周波数は上昇しているので、印加される交流電圧の周波数と共振周波数は近似した値となり、検出される残響振動のエネルギーが閾値よりも大きくなる。これにより、タッチ確認検出において「非タッチ」と判定され(図25のステップS545→S547)、共振周波数の上昇による誤検知が回避される。
図32Bの時刻t4以降、時刻t13まで、使用者による「タッチ」は行われていないが、検知部2aの共振周波数が上昇しているためタッチ検出においては、残響振動のエネルギーが閾値よりも低くなる(時刻t5〜t7、t9〜t11における残響振動のエネルギー)。しかしながら、タッチ確認検出において実行される交流電圧の印加では、通常の交流電圧よりも高い周波数が印加されるため、残響振動のエネルギーが閾値よりも大きくなり(時刻t8、t12における残響振動のエネルギー)「非タッチ」と判定される。これにより、共振周波数の上昇による誤検知が回避される。
次に、図32Bの時刻t13において使用者が「タッチ」すると、その後、時刻t14、t15のタッチ検出による残響振動のエネルギーは低くなる。加えて、時刻t16、t17におけるタッチ確認検出による残響振動のエネルギーも低くなる。即ち、使用者が検知部2aに「タッチ」している状態では、印加される交流電圧の周波数と検知部2aの共振周波数が近い状態(時刻t17)においても残響振動のエネルギーが閾値よりも低くなり、時刻t18において、「タッチの判定が確定」される。このように、タッチ確認検出において、通常のタッチ検出よりも高い周波数及び低い周波数の交流電圧を圧電素子4に印加することにより、誤検知を回避しながら確実に「タッチ」を検出することができる。
図32Bの時刻t18において、「タッチの判定が確定」された後、時刻t19において「非タッチ」となるまで(使用者が検知部2aから手を離すまで)、10msec毎にタッチ検出が実行される。この間は、検出される残響振動のエネルギーは閾値よりも低い値となる。図32Bに示す例では、時刻t19の後、時刻t20においてタッチ検出が実行されると、このときには検知部2aの温度が上昇しており、共振周波数が通常のタッチ検出における交流電圧の周波数に近くなっている。このため、時刻t20におけるタッチ検出により検出される残響振動のエネルギーは閾値よりも高い値となり、「非タッチ」の状態となったことが確定する(図32Bの時刻t21〜)。
また、図32Bに示す例では、温度低下により検知部2aの共振周波数が上昇した場合について説明したが、検知部2aの温度上昇や、水滴等の付着により検知部2aの共振周波数が低下した場合においても、タッチ確認検出により誤検知を回避しながら確実に「タッチ」を検出することができる。なお、検知部2aの構成や使用環境により、共振周波数の低下のみが想定される場合には、通常のタッチ検出における交流電圧よりも低い周波数のみでタッチ確認検出を行うように本発明を構成することもできる。逆に、検知部2aの共振周波数の上昇のみが想定される場合には、通常のタッチ検出における交流電圧よりも高い周波数のみでタッチ確認検出を行うように本発明を構成することもできる。
次に、図32Cを参照して、温度上昇により検知部2aの共振周波数が低下した場合におけるタッチ確認検出の作用を説明する。
図32Cにおいては、使用者による「タッチ」は行われていないが、検知部2aの温度変化により、時刻t0以降、タッチ検出により検出される残響振動のエネルギーが低下傾向となっている。即ち、検知部2aの温度上昇により検知部2aの共振周波数が低下することにより、タッチ検出において印加されている交流電圧の周波数との間にずれが生じる。この結果、通常のタッチ検出における交流電圧の周波数では検知部2aが十分に励振されずに検出される残響振動のエネルギーが低下する。
このため、図32Cの時刻t1及びt2においては、使用者がタッチしていないにもかかわらず、タッチ検出における残響振動のエネルギーが閾値よりも低くなり、「タッチ」と判定されている。「タッチ」と判定されることにより、タッチ確認検出(図23のステップS412)が実行される。タッチ確認検出においては、まず、通常のタッチ検出よりも低い周波数の交流電圧が印加され(図25のステップS541、図32Cの時刻t3)、次いで、通常のタッチ検出よりも高い周波数の交流電圧が印加される(図25のステップS543、図32Cの時刻t4)。
ここで、温度上昇により検知部2aの共振周波数が低下しているため、図32Cの時刻t3において印加される、通常のタッチ検出よりも低い周波数の交流電圧は、検知部2aの共振周波数に近くなる。このため、時刻t3における交流電圧の印加において、残響振動のエネルギーが閾値よりも大きくなる。一方、時刻t4において実行される、通常のタッチ検出よりも高い周波数の交流電圧の印加では、検知部2aの共振周波数から離れているため、残響振動のエネルギーが低くなる。タッチ確認検出においては、時刻t3における交流電圧の印加において、残響振動のエネルギーが閾値を超えたため「非タッチ」と判定され(図25のステップS545→S547)、誤検知が排除される。
検知部2aの温度が上昇して共振周波数が低下している状態においては同様に、通常のタッチ検出(図32Cの時刻t5、t6、t9、t10、t13、t14、t17、t18)における残響振動のエネルギーが閾値よりも低くなる。一方、タッチ確認検出における低い周波数の交流電圧の印加(図32Cの時刻t7、t11、t15、t19)では、残響振動のエネルギーが閾値よりも大きくなり、誤検知が回避される。さらに、図32Cの時刻t21において、検知部2aの温度が低下して共振周波数が通常の値に戻ると、通常のタッチ検出における残響振動のエネルギーが閾値よりも大きくなり、以降、タッチ確認検出が実行されることなく「非タッチ」と判定される。
次に、図26を参照して、周波数初期調整を説明する。
図26は、周波数調整回路16dによって実行される周波数初期調整フローである。図26に示すフローチャートは、図23に示すメインフローのステップS401においてサブルーチンとして呼び出されるものである。周波数調整回路16dは、第1の調整モードとして、所定の周波数範囲内で検知部2aの共振周波数を探索する。即ち、周波数調整回路16dは、所定の周波数範囲内の複数の周波数について圧電素子4に交流電圧を印加し、交流電圧が印加されたときの圧電素子4からの出力信号を夫々取得し、これらの出力信号の検波波形を解析することにより周波数調整を実行する。第1の調整モードにより、タッチ検出において圧電素子4に印加される交流電圧の周波数が、実際の検知部2aの共振周波数と一致するように決定される。
まず、図26のステップS601においては、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数を標準周波数Frの90%の値に設定する。なお、標準周波数Frは、検知部2a及び圧電素子4が一体となって振動するときの共振周波数の設計値である。本実施形態においては、標準周波数Fr=40kHzであるため、交流電圧の周波数は、まず36kHzに設定される。図26のフローチャートにおいては、標準周波数Frの90%〜110%の間の複数の周波数について、圧電素子4に交流電圧を印加し、その残響振動のエネルギーに基づいて圧電素子4に印加すべき交流電圧の周波数を決定している。即ち、第1の調整モードにおいては、標準周波数Frを含む第1の周波数範囲内で共振周波数が探索される。
次に、ステップS602においては、図30に示すフローチャートがサブルーチンとして実行される。上述したように、図30に示すフローチャートにおいては、ステップS601において設定された周波数の交流電圧が印加され、その際に取得された検波波形の出力電圧値AD11〜AD18及びAD21〜AD28(図31)が取得される。
次いで、図26のステップS603においては、ステップS602において取得された出力電圧値AD21〜AD28のうちの最大値から最小値を減じた値が計算され、この値がAD2PPとされる。この値が、印加した交流電圧の周波数と共に記憶される。
さらに、ステップS604においては、ステップS602において取得された出力電圧値AD21〜AD28について隣り合うデータの差が計算され、この差の最大値がAD2DIFとされる。この値が、印加した交流電圧の周波数と共に記憶される。
次に、ステップS605においては、ステップS602において取得された出力電圧値AD11〜AD18の合計SUM1が計算される。この値が、印加した交流電圧の周波数と共に記憶される。
さらに、ステップS606においては、出力電圧値AD11〜AD18が単調減少しているか否かが判断される。単調減少しているか否かが、印加した交流電圧の周波数と共に記憶される。
次に、ステップS607においては、ステップS601において設定された交流電圧の周波数が0.5%分増加される。即ち、ステップS607において交流電圧の周波数が36.2kHzに変更され、ステップS608によりステップS602以下の処理が繰り返される。この後、交流電圧の周波数を0.2kHz刻みで増加させ、44kHzとなるまでステップS602〜ステップS607の処理が繰り返される。
次いで、ステップS609においては、ステップS604において各周波数について計算されたAD2DIFが所定のノイズ判定閾値と比較され、全てのAD2DIFがノイズ判定閾値よりも小さい場合にはステップS610に進み、AD2DIFの値が1つでもノイズ判定閾値以上の場合にはステップS601に戻る。即ち、AD2DIFの値がノイズ判定閾値以上である場合には、検出したデータにノイズが混入している可能性が高いため、ステップS601に戻って測定をやり直す。
一方、ステップS609において、全てのAD2DIFがノイズ判定閾値よりも小さい場合には、ステップS610に進む。ステップS610においては、残響を表すAD11〜AD18の値が単調減少しているか否かが判断され、全ての周波数について単調減少している場合にはステップS611に進み、単調減少していない場合にはステップS601に戻る。上述したように、検出回路12がノイズ等を拾った場合には検波波形が乱れ、AD11〜AD18の値が単調減少しなくなる。この場合には、検出したデータがノイズ等を拾っているため、ステップS601に戻って測定をやり直す。
次に、ステップS611においては、残響振動(出力電圧値AD11〜AD18の合計値SUM1)が最も大きくなった周波数を共振周波数として選択する。次に、残響振動が最大となる周波数が複数存在した場合には、それらの周波数のうち、最大値と最小値の差AD2PPが最も小さくなった周波数を共振周波数として選択する。残響振動、最大値と最小値の差AD2PPが両方とも等しい周波数が複数存在した場合には、それらのうち最も低い周波数を共振周波数として選択する。
さらに、ステップS611においては、残響振動が最も大きくなった周波数における出力電圧値AD11〜AD18の合計値SUM1が所定の閾値と比較される。合計値SUM1が所定の閾値よりも小さい場合には、ステップS601に戻って測定をやり直す。即ち、共振周波数における残響振動が、設計上想定されている残響振動よりも大幅に小さい場合には、測定に不備がある可能性があるため測定をやり直す。圧電素子4に印加する交流電圧の周波数はタッチ検出の基礎となる値であるため、周波数調整回路16dは、周波数調整が成功するまで共振周波数の探索を繰り返す。なお、図26のフローチャートの処理開始後、所定時間経過しても処理が終了しない場合には、処理を停止させると共にアラームを発するように本発明を構成することもできる。
一方、合計値SUM1が所定の閾値以上である場合にはステップS613に進む。ステップS613においては、ステップS611において選択された周波数を、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数(駆動周波数)として決定し、図26に示すフローチャートの1回の処理を終了する。この図26に示すフローチャートにより決定された周波数は、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数の初期値として、タッチ検出(図23のステップS403)において使用される。
次に、図27及び図28を参照して、共振周波数の確認処理を説明する。
図27は、図23に示すメインフローからサブルーチンとして呼び出される共振周波数確認フローであり、図28は、図27に示すフローチャートからサブルーチンとして呼び出される共振周波数検出フローである。
上述したように、本実施形態のタッチ検出装置においては、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数が、検知部2aの共振周波数と良く一致していることが望ましい。この交流電圧の周波数は、上述したように、メインフローの実行開始時(図23のステップS401)に図26に示す周波数初期調整フローにより正確に調整される。しかしながら、検知部2aの共振周波数は、検知部2aの温度変化や、検知部2aへの水滴等の付着、経年変化等により変化する可能性がある。このため、本実施形態においては、メインフローの実行途中においても所定の時間間隔で、検知部2aの共振周波数が確認される。具体的には、メインフローの実行中、1分経過するごとに図23のステップS404からステップS405に処理が移行し、ステップS405からサブルーチンとして図27に示す共振周波数確認フローが実行される。
まず、図27のステップS621において、図28に示す共振周波数検出フローがサブルーチンとして実行される。後述するように、図28に示す共振周波数検出フローにおいては、上述した周波数初期調整フロー(図26)と類似の処理により、検知部2aの共振周波数が検出される。
次に、図27のステップS622においては、図28に示す共振周波数検出フローにおいて、共振周波数の検出に成功したか否かが判断される。共振周波数の検出に成功している場合にはステップS623に進み、共振周波数の検出に失敗した場合にはステップS625に進む。
さらに、ステップS623においては、ステップS621において検出された共振周波数と、圧電素子4に印加している交流電圧の現行の周波数が一致しているか否かが判断される。本実施形態においては、共振周波数と交流電圧の現行の周波数の差が0.5%未満である場合には、共振周波数と交流電圧の周波数にずれは無いと判定し、ステップS625に進む。
また、共振周波数と、交流電圧の現行の周波数の差が0.5%以上である場合には、共振周波数と、交流電圧の周波数がずれていると判定し、ステップS624に進む。これらの判定結果は、図23に示すメインフローのステップS406における周波数ずれ有無の判断に使用される。
一方、ステップS622において、共振周波数の検出に失敗したと判定された場合にも、ステップS625に進み、「共振周波数と交流電圧の周波数にずれは無い」との判定がなされる。この場合には、実際には共振周波数は検出されていないが、メインフローの作動途中であるため、仮に、共振周波数の検出に成功するまで検出が繰り返されたとすれば、その間タッチ検出の処理が実行できないこととなり、タッチ検出装置の機能が損なわれる結果となる。そこで、本実施形態においては、共振周波数の検出に失敗した場合でも、「周波数ずれ無し」として処理し、メインフローの処理を続行している。また、本実施形態においては、図28に示す共振周波数検出フローは1分間隔で実行されているため、共振周波数の検出に1回の失敗があったとしても、タッチ検出装置の機能に支障はない。
次に、図28を参照して、共振周波数検出フローを説明する。
図28に示すように、共振周波数検出フローは、上述した図26に示す周波数初期調整フローとほぼ同一の処理を行っている。
まず、図28に示す共振周波数検出フローのステップS631〜S638は、図26に示す周波数初期調整フローのステップS601〜S608に対応している。ただし、周波数初期調整フロー(図26)においては検知部2aの共振周波数が標準周波数Frの±10%の範囲内で探索されたのに対し、共振周波数検出フロー(図28)においては共振周波数が現行の交流電圧の周波数の±3%の範囲内で探索される点が異なっている。即ち、周波数調整回路16dは、第2の調整モードとして、第1の周波数範囲よりも狭く、現行の交流電圧の周波数を含む第2の周波数範囲内で検知部2aの共振周波数を探索する。
ここで、周波数初期調整フロー(図26)では、検知部2aの個体差や、型式の変更等に対応して共振周波数を探索する必要がある。これに対し、共振周波数検出フロー(図28)では、周波数初期調整後の共振周波数のずれに対応すれば十分であり、周波数初期調整後に共振周波数が大きくずれることはない、という本件発明者の知見に基づくものである。また、共振周波数検出フロー(図28)において、共振周波数を探索する範囲を狭く設定しておくことにより、共振周波数の探索に要する時間を短縮することができる。
また、図28に示す共振周波数検出フローのステップS639〜S642は、図26に示す周波数初期調整フローのステップS609〜S612に対応している。即ち、マイクロコンピュータ16によって実現される判定回路16fは、周波数調整回路16dによる周波数調整の成否を判定する。しかしながら、周波数初期調整フロー(図26:第1の調整モード)においては、検出したデータにノイズ等が混入している場合(ステップS609、S610)や、残響振動の大きさが十分でない場合(ステップS612)には、フローチャートの初めに戻り、検出を繰り返していた。これに対し、第2の調整モードとして実行される共振周波数検出フロー(図28)においては、これらの場合(ステップS639、S640、S642)には、共振周波数の探索を繰り返すことなく、「共振周波数検出失敗」(ステップS645)と判定して、フローチャートの1回の処理を終了している。
即ち、判定回路16fは、検波波形の中に、交流電圧の印加終了後に波形が単調減少しないものが含まれている場合(ステップS640→S645)には、周波数調整回路16dによる周波数調整が失敗したと判定する。また、判定回路16fは、決定された共振周波数の交流電圧の印加停止後における検知部2aの振動エネルギーが所定の閾値に達しない場合(ステップS642→S645)も、周波数調整回路16dによる周波数調整が失敗したと判定する。このように、従って、共振周波数の検出に失敗した場合には、現行の交流電圧の周波数が維持される。
一方、共振周波数の検出に成功した場合(ステップS643)には、ステップS641において選択された周波数を、検知部2aの現在の共振周波数として設定し(ステップS644)、図28に示すフローチャートの1回の処理を終了する。この図28のステップS644において設定された共振周波数は、図27に示す共振周波数検出フローのステップS623において、圧電素子4に印加している交流電圧の現行の周波数と比較され、周波数ずれの有無の判断に使用される。
次に、図29を参照して、交流電圧の周波数再調整フローを説明する。
上述したように、メインフロー(図23)の作動中において、検知部2aの共振周波数が検出され、現行の交流電圧の周波数と比較され、周波数ずれが発生しているか否かが判断されている(図23のステップS406)。しかしながら、以下に説明するように、周波数ずれが検知された場合であっても、交流電圧の周波数は、共振周波数と一致するように即座に変更されることはない。
例えば、検知部2aに水滴が付着することにより検知部2aの共振周波数が低下している状況においては、水滴が脱落したり、蒸発することにより、共振周波数は比較的短時間で元の周波数に復帰する。また、検知部2aに冷水が掛かったり、熱湯が掛かることにより共振周波数が変化した場合でも、検知部2aの温度が室温に戻れば、共振周波数は比較的短時間で元の周波数に復帰する。このため、共振周波数の変化が検知される度に交流電圧の周波数を変更していると、印加する交流電圧の周波数が不安定になったり、タイムラグにより、却って共振周波数と交流電圧の周波数の差が大きくなってしまう場合がある。そこで、本実施形態においては、周波数再調整フローにより、共振周波数と交流電圧の周波数との間のずれの継続状況に基づいて、交流電圧の周波数(駆動周波数)を再調整している。
上述したように、検知部2aの共振周波数と、現行の交流電圧の周波数との間に周波数ずれが発生していると判断された場合には、周波数ずれが継続している時間が積算される(図23のステップS419)。この周波数ずれの継続中、1分ごとに図29に示す交流電圧の周波数再調整フローが実行される(図23のステップS421)。
まず、図29のステップS651においては、上述した共振周波数検出フロー(図28)がサブルーチンとして実行される。
次いで、ステップS652においては、ステップS651において実行された共振周波数の検出が成功したか否かが判断される。成功した場合にはステップS653に進み、失敗した場合にはステップS656に進む。
ステップS656においては、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数(駆動周波数)の再調整を実行せず、現行の周波数を維持したまま図29に示すフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、共振周波数検出において信頼性の高い検出結果が得られていない状態で交流電圧の周波数を変更すると、測定誤差等により却って交流電圧の周波数が共振周波数から離れてしまう場合があるからである。
一方、共振周波数の検出に成功した場合にはステップS653に進み、ステップS653においては、ステップS651において検出された共振周波数と、現行の交流電圧の周波数が比較される。共振周波数が交流電圧の周波数よりも低い場合にはステップS655に進み、共振周波数が交流電圧の周波数以上の場合にはステップS654に進む。
ステップS654においては、積算されている周波数ずれの継続時間が、周波数ずれ判定時間である5分以上であるか否かが判断される。継続時間が5分以上である場合にはステップS657に進み、5分以上でない場合にはステップS656に進む。ステップS656においては、交流電圧の周波数(駆動周波数)の再調整を実行せず、現行の周波数を維持したまま図29に示すフローチャートの1回の処理を終了する。即ち、周波数ずれが5分以上継続していない場合には、周波数ずれをそのまま放置することにより、共振周波数が元の周波数に戻る可能性があるためである。
一方、周波数ずれの継続時間が5分以上である場合にはステップS657に進み、ステップS657においては、圧電素子4に印加する交流電圧の周波数(駆動周波数)を変更(再調整)して、ステップS651において検出された共振周波数に一致させる。このように、共振周波数と交流電圧の周波数の間の周波数ずれが、周波数ずれ検知回路16eによって検知されると、周波数調整回路16dは、交流電圧の周波数(駆動周波数)を共振周波数に一致するように調整する。しかしながら、周波数調整回路16dによる周波数調整は、周波数ずれ検知回路16eによって周波数ずれが検知されている状態が所定の周波数ずれ判定時間以上継続した場合に実行される。
一方、共振周波数が交流電圧の周波数よりも低い場合にはステップS655に進む。ステップS655においては、積算されている周波数ずれの継続時間が、周波数ずれ判定時間である30分以上であるか否かが判断される。周波数ずれの継続時間が30分以上である場合にはステップS657に進み、30分以上でない場合にはステップS656に進む。上記のように、ステップS656においては、交流電圧の周波数(駆動周波数)の再調整は実行されない。また、ステップS657においては、交流電圧の周波数(駆動周波数)を共振周波数に一致させる。
このように、本実施形態においては、共振周波数が交流電圧の周波数よりも高い場合(ステップS654)と、低い場合(ステップS655)で周波数ずれ判定時間が異なっており、共振周波数が交流電圧の周波数よりも低い場合には、高い場合よりも周波数ずれ判定時間が長く設定されている。即ち、共振周波数が交流電圧の周波数よりも低い場合(ステップS655)として、最も可能性が高い状態は、水滴が検知部2aに付着して共振周波数が低下した状態である。一方、共振周波数が交流電圧の周波数よりも高い場合(ステップS654)として、最も可能性が高い状態は、過去に検知部2aに水滴が付着して、これに合わせて交流電圧の周波数が低下され、その後、水滴が脱落又は蒸発して共振周波数が上昇した状態である。
このため、共振周波数が交流電圧の周波数よりも高い場合には、比較的早期に交流電圧の周波数を真の共振周波数に一致させておくことが好ましい。これに対して、共振周波数が交流電圧の周波数よりも低い場合には、周波数ずれを放置しても、水滴が少しずつ脱落又は蒸発することにより、共振周波数が交流電圧の周波数に少しずつ復帰していく可能性が高い。このため、共振周波数が交流電圧の周波数よりも低い場合には周波数ずれ判定時間を長く取り、交流電圧の周波数が不安定になるのを防止することが好ましい。
本発明の第3実施形態のタッチ検出装置によれば、検知部2aの共振周波数と圧電素子4に印加する交流電圧の周波数との間のずれの発生を検知する周波数ずれ検知回路16eを備え、周波数調整回路16dは、周波数ずれ検知回路16eによって周波数ずれが検知されると、交流電圧の周波数が検知部の共振周波数と一致するように調整を行う(図23のステップS406→S419→S420→S421)ので、周波数のずれを監視して、タッチ検出装置を常に良好な状態に保つことができる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、周波数調整回路16dは、周波数ずれ検知回路16eによって周波数ずれが検知されている状態が所定の周波数ずれ判定時間以上継続した場合に周波数の調整を実行する(図29のステップS654→S657、及びステップS655→S657)ので、より確実に周波数調整回路16dによる自動調整を行うことができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、周波数ずれ判定時間は、検知部2aの共振周波数が圧電素子4に印加する交流電圧の周波数よりも低い場合(図29のステップS653→S655)には、検知部2aの共振周波数が圧電素子4に印加する交流電圧の周波数よりも高い場合(図29のステップS653→S654)よりも長く設定されるので、水滴の付着による一時的な共振周波数の変化にも効果的に対処することができる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、第1の調整モード(図26)においては、検知部2aの標準周波数を含む第1の周波数範囲(標準周波数の±10%)内で共振周波数が探索され、第2の調整モード(図28)においては、現行の交流電圧の周波数を含む、第1の周波数範囲よりも狭い第2の周波数範囲(現行の交流電圧の周波数の±3%)内で共振周波数が探索されるので、周波数ずれの発生原因に応じた調整を短時間で実行することができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、第1の調整モード(図26)においては、周波数調整が失敗した場合に、成功するまで繰り返し共振周波数が探索され(図26のステップS609→S601、S610→S601、S612→S601)、第2の調整モード(図28)においては、周波数調整が失敗した場合に、共振周波数の探索を繰り返すことなく、現行の交流電圧の周波数が維持される(図28のステップS639→S645、S640→S645、S642→S645)ので、周波数ずれの発生状況や、タッチ検出装置の使用状況に応じて適切な周波数調整を行うことができ、確実な周波数調整と、使用不能期間の削減を両立することができる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、検波波形の中に、交流電圧の印加終了後に波形が単調減少しないもの(図31の下段)が含まれている場合には、周波数調整回路による周波数調整に失敗したと判定される(図26のステップS610、図28のステップS640)ので、ノイズ等の影響による誤った周波数調整を防止することができる。
さらに、本実施形態のタッチ検出装置によれば、決定された共振周波数の交流電圧の印加停止後における検知部2aの振動エネルギーが所定の閾値に達しない場合には、周波数調整回路による周波数調整が失敗したと判定する(図26のステップS612→S601、図28のステップS642→S645)ので、不適切な環境における周波数調整により、誤った周波数調整がなされるのを防止することができる。例えば、周波数調整の実行中に使用者が検知部2aに触れてしまった場合でも、誤った周波数調整を防止できる。
また、本実施形態のタッチ検出装置によれば、接触判定確認動作(図25)として、通常の交流電圧の周波数とは異なる確認周波数(図25のステップS541、S543)の交流電圧を圧電素子4に印加し、確認周波数の交流電圧の印加によっても、対象物の接触が接触判定回路16aにより判定された場合に、検知部2aへの接触の判断を確定する。このため、周波数のずれにより接触判定回路16aが対象物の接触を誤って判定した場合においても、接触判定確認回路16bが、通常の交流電圧の周波数とは異なる確認周波数の交流電圧により励振を行うので、共振周波数がずれている場合でも大きな残響振動が励起され、周波数ずれによる誤検知を効果的に抑制することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に、種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、本発明を水栓装置の吐水、止水の切り換え操作の検出に適用していたが、吐水、止水の切り換えの他、吐水形態(シャワー吐水、ストレート吐水等)の切り換え、流量調整操作、温度調整操作等、任意の操作の検出に本発明を適用することができる。また、本実施形態においては、タッチ検出装置を、吐水部が固定された水栓装置に適用していたが、本発明のタッチ検出装置は、吐水ヘッドが引き出し可能なプルアウト式の水栓装置に適用することもできる。この場合には、水栓装置本体から引き出されるホースに沿って信号線を内蔵しておき、吐水ヘッド先端に設けられた検知部と、カウンターボードの下側に配置された検出回路を電気的に接続することができる。さらに、本実施形態においては、タッチ検出装置を水栓装置に適用していたが、吐水装置、流量調整装置、温度調整装置、及びこれらを組み合わせた装置等、任意の水周り器具に本発明を適用することができる。
また、上述した実施形態においては、振動励起素子として圧電素子を使用していたが、検知部に振動を励起することができる任意の素子又は装置を、振動励起素子として使用することができる。さらに、上述した実施形態においては、圧電素子により検知部に振動を励起した後、残響振動を圧電素子により検出していたが、振動を励起するための素子又は装置とは別に、検知部の残響振動を検出するための素子又は装置を設けることもできる。また、上述した実施形態においては、圧電素子の1つの端子に交流電圧を印加すると共に、その同一の端子から残響振動を検出するための信号を取得していたが、圧電素子又は振動励起素子に、残響振動検出用の端子を、交流電圧印加用の端子とは別に設けておくこともできる。
さらに、上述した実施形態においては、圧電素子に印加する交流電圧の周波数を、一体的に振動する検知部及び圧電素子の共振周波数に一致させていたが、交流電圧の周波数は共振周波数に一致していなくても良い。即ち、これらの周波数が異なっている場合でも、検知部がタッチされている状態では、タッチされていない場合よりも残響振動が小さくなるので、残響振動に基づいてタッチを検出することは原理的に可能である。また、上述した実施形態においては、2つのトランジスタのスイッチングにより、直接、圧電素子に交流電圧を印加していたが、昇圧用のトランスやコンデンサ等を介して圧電素子に交流電圧を印加することもできる。