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JP6759147B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents

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JP6759147B2 JP2017086827A JP2017086827A JP6759147B2 JP 6759147 B2 JP6759147 B2 JP 6759147B2 JP 2017086827 A JP2017086827 A JP 2017086827A JP 2017086827 A JP2017086827 A JP 2017086827A JP 6759147 B2 JP6759147 B2 JP 6759147B2
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Description

本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)によって、シリコン単結晶を育成しながら引き上げる、シリコン単結晶の製造方法に関する。
近年、パワーMOSFETのON抵抗率(オン時の内部抵抗率)を小さくするために、デバイスメーカーからドーパント不純物を高濃度に添加したN型低抵抗率のシリコン単結晶が求められている。このN型低抵抗率のシリコン単結晶は、製造過程において有転位化しやすく、製造が困難であった。
具体的に説明すると、シリコン単結晶育成の際に、N型ドーパント不純物が高濃度に添加されると、凝固点降下度が非常に大きくなり、組成的過冷却現象が生じる。この組成的過冷却が大きい場合、結晶成長界面でシリコン成長面とは異なる成長が始まり、Cell成長と呼ばれる異常な成長を起こす。この異常成長に起因してシリコン単結晶の有転位化が発生する。また、揮発性のドーパント不純物を高濃度に添加した場合には、Cell成長によるシリコン単結晶の有転位化だけでなく、揮発性のドーパントに関係した有転位化も発生し易くなる。
このように、揮発性のドーパント不純物が高濃度に添加されることによって有転位化が発生し易いため、所望のシリコン単結晶を得ることが困難であった。
このシリコン単結晶の有転位化を抑制する方法が、特許文献1,2に示されている。
特許文献1には、シリコン単結晶の肩部成長工程において、Arガスを整流するガス整流筒の下端と、シリコン融液の自由液面との間の距離寸法を30mm超として、シリコン単結晶の肩部成長を行なう方法が示されている。また、肩部成長工程におけるガス整流筒の下端とシリコン融液の自由液面との間の距離寸法を、胴部成長工程における前記距離寸法よりも大きくすることが好ましいことが示されている。
また、特許文献2には、シリコン単結晶の直胴部分を成長させる期間の開始時点において、シリコン融液からの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽板と、シリコン融液の表面との距離寸法を20〜30mmとし、シリコン単結晶の肩部分と直胴部分との境界部分からシリコン単結晶の引き上げ方向と反対方向に200mm離れた位置以降の直胴部分を成長させる期間において、前記熱遮蔽板と前記シリコン融液の表面との距離寸法を6〜15mmとして、シリコン単結晶の製造を行うことが示されている。
特開2010−6646号公報 国際公開2010−21272号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載されたシリコン単結晶の製造方法においても、有転位化を十分に低減することができないという技術的課題があった。
本発明者らは、前記技術的課題を解決するために、シリコン単結晶の有転位化が発生する原因について鋭意研究した。その結果、特許文献1に記載されたシリコン単結晶の製造方法にあっては、Arガスを整流するガス整流筒の下端と、シリコン融液の自由液面との間の距離寸法が固定された距離寸法(30mm超)になされていることが、有転位化を十分に低減できない原因であることを知見した。
即ち、シリコン単結晶のネック部〜肩部の育成(クラウン育成)過程において、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面の形状が変化し、またネック部〜肩部(クラウン)の形状が変化するが、特許文献1に記載されたシリコン単結晶の製造方法にあっては、固定された距離寸法(30mm超)になされており、それが有転位化の原因であることを究明した。
そして、この変化に対応させて、ガス整流筒の下端と、シリコン融液の自由液面との間の距離寸法を変化させることにより、シリコン単結晶の有転位化を抑制できることを、本発明者らは知見した。
また、特許文献2記載されたシリコン単結晶の製造方法にあっても、成長初期工程(ネック部〜肩部)における熱遮蔽板とシリコン融液の表面との距離寸法が、固定した距離寸法(20〜30mm)になされているため、特許文献1記載のシリコン単結晶の製造方法と同様に、シリコン単結晶の有転位化の発生を抑制できるものではなかった。
更に、特許文献2記載されたシリコン単結晶の製造方法では、成長初期工程(ネック部〜肩部)の後、シリコン単結晶の肩部分と直胴部分との境界部分からシリコン単結晶の引き上げ方向と反対方向に200mm離れた位置以降の直胴部分を成長させる期間において、前記熱遮蔽板と前記融液の表面との距離寸法が6〜15mmとし、シリコン単結晶の有転位化の抑制を図っている。
しかしながら、成長初期工程(ネック部〜肩部)におけるシリコン単結晶の有転位化の影響を受けて、直胴部での有転位化が誘発され、シリコン単結晶の有転位化を抑制できないことを、本発明者らは知見した。
上記知見に基づき、本発明者らは、シリコン単結晶のクラウン育成工程において、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面の形状変化、クラウンの形状変化を考慮して、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法を変化させる必要があること、その上で、直胴部育成工程において、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法を更に変化させることにより、シリコン単結晶の有転位化を抑制できることを想到した。
そして、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法の可変範囲について鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
本発明は、上記状況のもとなされたものであり、シリコン単結晶製造工程における、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法の可変範囲内で、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法を変化させることにより、クラウン及び直胴部の有転位化を抑制したシリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法は、砒素、アンチモン、又はリンを含有するN型の低抵抗シリコン単結晶の製造方法において、クラウン育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を30〜50mmの範囲内に、かつ直胴部育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を15〜50mmの範囲内になすと共に、前記クラウン育成工程におけるクラウン育成開始からクラウン育成終了までに、クラウン育成開始時点の前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に拡げ、更に、前記直胴部育成工程における直胴部育成開始から直胴部育成終了に至る間に、クラウン育成終了時点の前記距離寸法を20〜35mmの範囲内で狭めることを特徴とする。
本発明によれば、クラウン育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を30〜50mmの範囲内に、かつ直胴部育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を15〜50mmの範囲内になされる。
前記クラウン育成工程での距離寸法が30mm未満では、クラウンの外表面近傍のドーパント濃度の揺らぎが大きくなり有転位化し易く、前記距離寸法が50mmを超える場合では、チャンバ内のパージ用不活性ガスによる整流化が弱くなり、固化したドーパントに起因する付着物の落下によって、クラウンの有転位化が発生し易く、好ましくない。
より好ましくは、クラウン育成工程にあっては、輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法が30〜40mmの範囲内である。
また、直胴部育成工程における輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を15〜50mmの範囲内になされる。
前記距離寸法が15mm未満の場合、シリコン融液の表面位置の変動により、輻射シールドが融液界面に接触する危険があり、シリコン単結晶の温度勾配への影響が大きくなり、好ましくない。
一方、前記距離寸法が50mmを超える場合には、チャンバ内のパージガス用不活性ガスによる整流化が弱くなり、固化したドーパントに起因する付着物の落下による有転位化が多くなるため、好ましくない。
好ましくは、胴部育成工程における輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法は、15〜40mmである。
更に、前記クラウン育成工程におけるクラウン育成開始からクラウン育成終了までに、クラウン育成開始時点の前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に拡げられる。尚、拡げられた距離寸法は、前記した30〜50mmの範囲内にある。
このように、クラウン育成開始時点の前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に拡げるため、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面の形状変化、クラウンの形状変化を考慮した最適な距離寸法とすることができ、クラウンの有転位化を抑制することができる。
前記距離寸法が10mm未満、前記距離寸法が20mmを超える場合には、クラウンに転位が発生し、好ましくない。
尚、前記距離寸法を10〜20mm拡げる際、一定速度で連続的に行うのが好ましい。
また、前記直胴部育成工程における直胴部育成開始から直胴部育成終了に至る間に、クラウン育成終了時点の前記距離寸法を20〜35mmの範囲内で狭められる。尚、狭められた距離寸法は、前記した30〜50mmの範囲内にある。
ここで、前記距離寸法が20mm未満、前記距離寸法が35mmを超える場合には、直胴部に転位が発生し、好ましくない。
尚、前記距離寸法を20〜35mm狭める際、一定速度で連続的に行うのが好ましい。
このように本発明にあっては、シリコン単結晶製造工程における、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法を所定の範囲内で変化させることにより、クラウン及び直胴部の有転位化を抑制することができる。
ここで、前記クラウン育成工程及び前記直胴部育成工程における、シリコン単結晶の製造装置のチャンバの内圧が200〜300Torrになされていることが望ましい。
シリコン単結晶育成中のチャンバの内圧を200〜300Torrに制御するのは、シリコン単結晶の外表面からの揮発性ドーパントの蒸発をできるだけ少なくするためである。前記内圧が200Torr未満の場合には、結晶表面付近のドーパント濃度の揺らぎが大きくなり成長縞の曲率が不均一となり、有転位化し易くなるため、好ましくない。
一方、前記チャンバの内圧が300Torrを超える場合には、揮発したドーパントに起因する付着物が、チャンバ内のガス流速が低下することで整流作用が弱くなり、前記付着物の落下による有転位化が発生するため、好ましくない。
また、前記直胴部育成工程において、直胴部が200mm育成されるまでに、前記距離寸法をクラウン育成開始時点の距離寸法まで狭めることが望ましい。
即ち、直胴部育成終了前の直胴部が200mm育成されるまでに、クラウン育成終了時点の前記距離寸法を20〜35mmの範囲内で狭め、距離寸法をクラウン育成開始時点の距離寸法とするのが好ましい。
前記直胴部の育成が200mmを越えた以降の育成では、クラウン育成開始時の距離寸法より大きな距離寸法になされていると、シリコン単結晶の引上速度が低下し、良好な品質のシリコン単結晶が得られないため好ましくない。
更に、クラウン育成工程において、ルツボの回転数を1〜3rpmとし、クラウン育成開始の種結晶の回転数を、前記ルツボの回転方向と逆方向に25〜30rpmとし、その後、クラウン育成終了までに種結晶の回転数を10〜14rpmに減少させ、直胴部育成工程において、ルツボ回転数を1〜3rpmとし、種結晶回転数を10〜14rpmになすことが望ましい。
このように、種結晶の回転数を25〜30rpmから、成長に伴い種結晶の回転数を徐々に下げ、クラウン育成が終了する時点には10〜14rpmまで下げることにより、クラウン育成における成長縞の不均一を回避でき、有転位化を抑制することができる。
また、直胴部育成工程におけるルツボの回転数を1〜3rpmとすることにより、シリコン単結晶面内の濃度分布をより均一にすることがで、有転位化を抑制することができる。
また、シリコン単結晶の直径が6インチ以上8インチ以下であることが望ましい。
本発明によれば、シリコン単結晶製造工程における、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法を所定の範囲内で変化させることにより、クラウン及び直胴部の有転位化を抑制したシリコン単結晶の製造方法を得ることができる。
図1は、本発明に用いられるシリコン単結晶の製造装置の概略構成図である。 図2は、図1に示したシリコン単結晶の製造装置の要部拡大図である。 図3は、実施例、比較例における無転位率を示す図である。
まず、図1、図2に基づいて、本発明に用いられるシリコン単結晶の製造装置について説明する。
この製造装置1は、円筒形状のチャンバ(チャンバ)2と、チャンバ2内に設けられたルツボ3と、ルツボ3に装填された原料シリコンを溶融するカーボンヒータ4とを有している。このルツボ3は、内側が石英ガラスルツボ3a、外側が黒鉛ルツボ3bで構成されている。
また、チャンバ2内において、カーボンヒータ4の外周囲には保温筒5が設けられている。この保温筒5は円筒状に形成され、その上端部に内方に延設された保温板6が設けられている。また、育成中(引上げ中)のシリコン単結晶Cに、カーボンヒータ4等からの余計な輻射熱を与えないようにするための輻射シールド7が設けられている。
前記輻射シールド7は、ルツボ3の上方且つ近傍には、シリコン単結晶Cの周囲を包囲するように上部と下部に開口7a,7bが形成され、上部から下部に行くにしたがって、開口の面積が徐々に小さくなるようにテーパ面7cが形成されている。
この輻射シールド7が設けられることにより、上方からルツボ3内に供給されたパージ用不活性ガス(Arガス)Gは、輻射シールド7とシリコン融液Mの表面との隙間を通って、ルツボ3外に流れ、最終的にチャンバ2外(チャンバ外)に排出される。
尚、図示しないが、チャンバ2の上方には、シリコン単結晶Cを引上げる引上げ機構が設けられている。この引上げ機構は、モータ駆動される巻取り機構と、この巻取り機構に巻き上げられる引上げワイヤ8とにより構成される。
そして、ワイヤ8の先端に種結晶Pが取り付けられ、シリコン単結晶Cを育成しながら引上げるようになされている。
また、シリコン単結晶の製造装置1は、図示しないが、ルツボ3を回転させるモータと、ルツボ3の高さを制御する昇降装置と、前記モータ、前記昇降装置を制御する制御装置を備え、ルツボ3を回転させると共に、ルツボ3の高さを上昇させながら、シリコン単結晶Cを育成するように構成されている。
また、図示しないが、チャンバ2の上部にはガス供給口が設けられ、パージ用不活性ガス(Arガス)がチャンバ2内に供給されるように構成されている。また、チャンバ2の底面には、複数の排気口(図示せず)が設けられ、この排気口には排気手段としての排気ポンプ(図示せず)が接続されている。
したがって、ガス供給口からチャンバ2内に供給されたパージ用不活性ガス(Arガス)Gは、排気ポンプによって、輻射シールド7とシリコン融液Mの表面との隙間を通って、ルツボ外に流れ、最終的にチャンバ2外(チャンバ外)に排出される。
更に、図2に基づいて輻射シールド7について詳細に説明する。
この輻射シールド7は、図示しない昇降装置によりシリコン融液Mの表面M1と輻射シールド7の下端7dの間の距離寸法(間隔)Xを可変できるように構成されている。即ち、シリコン単結晶の製造工程において、この輻射シールド7を昇降させ、シリコン融液Mの表面M1と輻射シールドの下端7dの距離寸法(間隔)Xを最適値になすことができる。
このシリコン融液Mの表面M1と輻射シールド7の下端7dの距離寸法(間隔)Xを可変するには、輻射シールド7自体を昇降させる場合と、ルツボ3を昇降させる場合が考えられる。
前記ルツボ3を昇降させる場合には、昇降によってシリコン融液Mの表面M1が揺れ、シリコン融液Mの表面M1の表面位置が変動し、シリコン単結晶の径に変動をきたす虞がある。
一方、輻射シールド7を昇降させる場合には、昇降によってシリコン融液Mの表面M1が揺れることがないため、シリコン単結晶の径に変動をきたす虞がなく、好ましい。
また、輻射シールド7は、輻射シールド7に取付けられたワイヤをモータでドラムに巻上げ、ワイヤをドラムから引出すことにより、容易に昇降させることができる。しかも、輻射シールド7の昇降動作を滑らかに、連続的に行うことができる。
そのため、本発明の実施形態では、より好ましい輻射シールド7を移動させる方法で、シリコン融液Mの表面M1と輻射シールド7の下端7dの間の距離寸法(間隔)Xを可変することとした。尚、当然のことながら、ルツボ3を昇降させて行っても良い。
次に、本発明にかかる製造方法について説明する。
本発明にかかる製造方法は、ウエハの抵抗値が0.01Ω・cm以下のN型シリコン単結晶を製造(育成)する際に、揮発性の高い砒素、アンチモン、又はリンをドーパントとして使用するシリコン単結晶の製造方法であり、歩留低下の最大要因となるシリコン単結晶の有転位化を低減するものである。
尚、下記に説明する製造方法にあっては、輻射シールド7を昇降させる場合について説明するが、本発明は特にこれに限定されるものでなく、ルツボ3を昇降させても良い。
図1を参照しつつ、シリコン単結晶の製造方法の概略を説明すると、まず、ルツボ3に多結晶シリコン原料を充填し、ルツボ3をゆっくり回転させながらカーボンヒータ4で加熱し、多結晶シリコン原料を溶融する。
次に、多結晶シリコン原料の溶融が完了した後、シリコン融液の表面温度を融点の1420℃まで降温調整し、揮発性の高い砒素、アンチモン、又はリンのドーパントを添加する。その後、ワイヤ8で吊り下げた種結晶Pをシリコン融液Mに浸漬し、馴染ませてシリコン単結晶の育成を開始し、シリコンインゴット(シリコン単結晶)を引き上げる。
前記シリコンインゴット(シリコン単結晶)は、ネック育成工程、クラウン育成工程、直胴部育成工程、テール育成工程を経て、引上げられる(製造される)。
前記クラウン育成工程における輻射シールド7の下端7dからシリコン融液Mの表面M1までの距離寸法Xは、30〜50mmの範囲内に規制される。即ち、輻射シールド7は、シリコン融液Mの表面M1までの距離寸法は30〜50mmの範囲内で移動が制限される。
このように距離寸法X(間隙)が30mm以上としたのは、距離寸法X(間隙)が30mm以下では、クラウンの外表面近傍のドーパント濃度の揺らぎが大きくなり、有転位化し易くなるからである。
一方、距離寸法X(間隙)が50mm以下としたのは、前記距離寸法Xが50mm以上では、パージ用不活性ガス(Arガス)による整流化が弱くなり、揮発したドーパントがチャンバ内に付着し、これが固化した付着物がクラウンに落下することにより、クラウンの有転位化が発生する虞があるからである。
尚、前記クラウンの育成開始時点では、クラウンの形状が小さいことを考慮すると、輻射シールド7下端7dからシリコン融液Mの表面M1までの距離寸法Xが30〜40mmとするのが好ましい。
そして、クラウン育成工程におけるクラウン育成開始からクラウン育成終了までに、クラウン成長に伴う固液界面形状変化、クラウン形状変化に応じて、クラウン育成開始時点から前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に増加(上昇)させる。
前記クラウンの育成開始時点における距離寸法Xが30〜40mmに設定されている場合には、前記距離寸法Xを10mm〜20mmの範囲内で増加(上昇)させた場合にも、輻射シールド7は、シリコン融液Mの表面M1までの距離寸法Xは30〜50mmの範囲内におくことができる。
尚、前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に増加(上昇)させる際、一定速度で連続的に行うのが好ましい。
このように、クラウン育成開始時点の前記距離寸法から、前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に増加(上昇)させるため、シリコン単結晶とシリコン融液との固液界面の形状変化、クラウンの形状変化に対応して、最適な距離寸法とすることができ、クラウンの有転位化を抑制することができる。
前記距離寸法が10mm未満の場合には、クラウンの形状変化に対応しきれず、クラウン表面のドーパントの揺らぎが生じ、有転位化を抑制できないため、好ましくない。
また、前記距離寸法が20mmを超える場合には、クラウンの形状変化以上の隙間が形成されるため、付着物がクラウンに落下することにより、クラウンの有転位化が発生する虞があり、好ましくない。
続いて、クラウン育成工程に続く直胴部育成工程では、輻射シールド7の下端7dからシリコン融液Mの表面M1までの距離寸法Xは、15〜50mmの範囲内に規制される。
即ち、輻射シールド7は、シリコン融液Mの表面M1までの距離寸法Xは、15〜50mmの範囲内で移動が制限される。
特に、直胴部の育成工程にあっては、前記距離寸法Xは15〜40mmの範囲内が好ましく、輻射シールド7の移動が前記15〜40mmの範囲内に制限されるのがより望ましい。
この輻射シールド7の下端7dからシリコン融液Mの表面M1までの距離寸法Xが、15mm以上に制限されるのは、ルツボの肉厚の公差等によってGapの誤差が生じ、またシリコン単結晶の太さのズレによる融液面の変化によってGapの誤差等が生じることによって、温度勾配への影響が大きくなるためである。また、距離寸法Xが、15mm以上に制限されるのは、輻射シールドが融液界面に近づき過ぎることによる安全性を確保するためである。
尚、チャンバ内圧が200〜300Torrの場合、Gap15mmが下限の適切な値である。
また、前記距離寸法Xが50mmを超える場合には、チャンバ内のガスによる整流化が弱くなり、付着物の落下による有転位化が多くなるので好ましくない。
好ましくは、直胴育成工程では、前記距離寸法Xは15〜40mmになされるのが良い。
また、この直胴部育成工程では、組成的過冷却による有転位化が起こり易くなるため、輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を狭め、結晶育成の温度勾配を大きくする。
そのため、直胴部育成工程では、クラウン育成工程で拡げられた前記距離寸法Xを直胴部の育成開始から直胴終了至る間に徐々に狭める。
具体的には、クラウン育成工程で拡げられた前記距離寸法Xを、輻射シールド7を下降させ、クラウン育成工程終了時点の距離寸法から20〜35mm狭める。尚、下降した輻射シールド7の距離寸法Xは、前記した15〜50mmの範囲内にある。
ここで、前記距離寸法が20mm未満の場合には、結晶育成の温度勾配を充分大きくできないため、組成的過冷却による有転位化が起こり易くなり、好ましくない。
また、前記距離寸法が35mmを超える場合には、結晶育成の温度勾配が小さく、組成的過冷却による有転位が発生し易いため、好ましくない。
尚、前記距離寸法を20mm〜35mmの範囲内で徐々に狭める(下降)させる際、一定速度で連続的に行うのが好ましい。
また、クラウンの育成開始時点での距離寸法Xを基準として、クラウン育成では前記距離寸法Xを拡げ、直胴部の育成工程では、その拡がった距離寸法Xを狭める。
直胴部育成工程での距離寸法Xの狭め方は、直胴部育成開始から直胴部育成終了に至る間、好ましくは直胴部の育成開始から直胴部が200mm育成されるまでに狭めるのが好ましい。
このように、直胴部の育成が200mmなされた以降において、クラウンの育成開始時の距離寸法Xよりも大きい場合、シリコン単結晶が変形する虞があり、必要な引上速度で引き上げるのが困難となり、良好な品質のシリコン単結晶が得られなくなる。
一方、直胴部の育成長さが200mm未満の場合には、クラウンの育成開始時の距離寸法Xより距離寸法Xが大きくても、シリコン単結晶化による潜熱が比較的逃げやすいため、必要な引上げ速度を得ることができ、良好な品質のシリコン単結晶を得ることができる。
このように、本発明にあっては、シリコン単結晶製造工程における、輻射シールドとシリコン融液の表面との距離寸法を所定の範囲内で変化させることにより、クラウン及び直胴部の有転位化を抑制することができる。
次に、本発明にかかる製造方法における製造条件について説明する。
シリコン単結晶の製造工程(クラウン育成工程、直胴部育成工程)におけるチャンバの内圧は、200〜300Torrに制御される。チャンバの内圧を200〜300Torrとするのは、シリコン単結晶の外表面からの揮発性ドーパントの蒸発をできるだけ少なくするためである。
また、チャンバの内圧が200Torr未満の場合、シリコン結晶表面付近のドーパント濃度の揺らぎが大きくなり、成長縞の曲率が不均一となり、有転位化し易くなる。そのため、チャンバの内圧は200Torr以上が好ましい。
一方、チャンバの内圧が300Torrを超える場合には、揮発したドーパントに起因した付着物が、パージ用不活性ガスの流速が低下することで整流作用が弱くなり、前記付着物の落下による有転位化が発生する。そのため、チャンバの内圧は300Torr以下が好ましい。
また、CZ法によって、シリコン単結晶Cを育成しながら引き上げる場合、種結晶Pとルツボ3を逆方向に、所定の回転する数で回転させる。
具体的は、クラウン育成工程において、ルツボ回転数を1〜3rpmとし、クラウン育成開始の結晶回転数を25〜30rpmとし、その後、クラウン育成終了までに種結晶の回転数を10〜14rpmに減少させる。そして、直胴部育成工程において、ルツボ回転数を1〜3rpmとし、種結晶の回転数を10〜14rpmになして、シリコン単結晶を引き上げる。
クラウンの育成工程における種結晶Pの回転数が早い場合には、成長縞が不均一になり易い。この成長縞の不均一は、微視的に見れば界面が荒れていることと同じであり有転位化し易い。
そのため、成長縞の不均一を回避するために、クラウン育成の早い段階で結晶回転数を25〜30rpmに調整し、成長に伴い種結晶Pの回転数を徐々に下げ、クラウン育成が終了するころには10〜14rpmまで下げることが望ましい。
また、直胴部育成工程においても、前記成長縞の不均一を回避するため、種結晶Pの回転数は10〜14rpmが維持されながら、シリコン単結晶Cの引上げがなされる。
また、クラウンの育成工程及び直胴育成工程におけるルツボ3の回転数は、シリコン単結晶面内の濃度分布を出来るだけ均一にするため、1〜3rpmにするのが好ましい。
本発明にかかるシリコン単結晶の製造法の実施例、比較例を図3に示す。
このシリコン単結晶の製造では、Φ24インチの石英ルツボに150kgの多結晶シリコン原料をチャージし、高濃度のリンをドープして、固化率80%で0.9mΩ・cmを狙ってシリコン単結晶を育成(製造)した。
シリコン単結晶を育成する条件としては、製造装置のチャンバの内圧を250Torr一定とし、クラウン育成中の種結晶の回転速度をクラウンの育成開始時で27rpmとし、クラウン育成中に徐々に下げき、最終的に12rpmまで下げた。そして、直胴部育成工程においても、種結晶の回転数を10〜14rpmが維持した。尚、クラウンの育成工程及び直胴育成工程におけるルツボ3の回転数は1〜3rpmとした。
そして、輻射シールド7の下端7dからシリコン融液Mの表面M1までの距離寸法Xを、表1に示すように種々変化させて、シリコン単結晶の無転位率を測定した。その結果を表1、図3に示す。
このシリコン単結晶の無転位率は、シリコン単結晶育成中の炉内監視で有転位化したかを目視で判断して測定した。
Figure 0006759147
尚、表1中の○は無転位率80%以上を示す。△は無転位率50〜80%、×は無転位率50%未満であることを示している。したがって、最適な距離寸法条件は、クラウンも直胴部も○で示す範囲である。
図3において、矢印の太線がクラウンの場合で、クラウンの育成開始から終了までの距離寸法の変化を示している。同様に矢印の細線が直胴部における距離寸法の変化を示している。具体的に、図3の見方を、実施例1(符号1)を例にとって説明する。
実施例1では、図3に示すように、クラウンの育成開始時は輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法Xを30mmとしている。その後、距離寸法を徐々に拡げ、クラウン育成終了時には、前記距離寸法を10mm拡げ、40mmとしている。そして、直胴部の育成開始時の距離寸法Xの40mmから距離寸法を徐々に狭め、直胴部の200mm育成までに前記距離寸法Xを25mm狭め、15mmとしている。
尚、図3中の○は無転位率80%以上を示す。△は無転位率50〜80%、×は無転位率50%未満であることを示している。したがって、最適な距離寸法条件は、クラウンも直胴部も○で示す範囲である。
図3の実施例1〜5から明らかなように、実施例1〜5にあっては、無転位が80%と好ましい結果が得られた。
比較例1の場合は、クラウンは無転位であったが、直胴部育成工程で距離寸法Xが53mmとやや広い状態で育成を開始したため、結晶が変形し易くなり、直胴部に転位が発生した。
比較例2の場合は、クラウンは無転位であったが、直胴部育成工程で、距離寸法Xを10mmと狭くしたため、パージ用の不活性ガス(Arガス)の流速が早くなり、シリコン融液の表面に揺らぎが生じ、直胴部の無転位率が低下した(有転位化が増えた)。
比較例3の場合、クラウン育成工程での距離寸法Xが狭く、クラウンの無転位率が低かった(有転位化が高かった)。また、クラウンの無転位率が低い状態で直胴部を育成しているため、直胴部の無転位率は50%未満と低かった。
比較例4の場合には、クラウンでの距離寸法を25mm一定としているため、クラウンの無転位率が50%〜80%と低かった(有転位化が高かった)。更にこの状態で直胴部を育成したため、直胴部の無転位率は50%未満と低かった。
比較例5の場合には、クラウンでの距離寸法Xを、50mmを超えて拡げたため、クラウンの無転位率が50%〜80%と低かった(有転位化が高かった)。更にこの状態で直胴部を育成したため、直胴部の無転位率は50%未満と低かった。
比較例6の場合には、クラウン育成工程及び直胴部育成工程の距離寸法Xが大きく、直胴部の無転位率は50%未満と低かった。
以上のように、クラウン育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を30〜50mmの範囲内に、かつ直胴部育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を15〜50mmの範囲内になすと共に、前記クラウン育成工程におけるクラウン育成開始からクラウン育成終了までに、クラウン育成開始時点の前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に拡げ、更に、前記直胴部育成工程における直胴部育成開始から直胴部育成終了までに、クラウン育成終了時点の前記距離寸法を20〜35mmの範囲内で狭めることにより、シリコン単結晶の無転位率を80%以上に高めることができる。
1 シリコン単結晶製造装置
2 チャンバ(炉)
3 ルツボ
4 カーボンヒータ
7 輻射シールド
7d 輻射シールドの下端
C シリコン単結晶
G パージ用不活性ガス
M シリコン融液
M1 シリコン融液の表面
P 種結晶
X 輻射シールドの下端とシリコン融液の表面との間の距離寸法

Claims (5)

  1. 砒素、アンチモン、又はリンを含有するN型の低抵抗シリコン単結晶の製造方法において、
    クラウン育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を30〜50mmの範囲内に、かつ直胴部育成工程での輻射シールド下端からシリコン融液の表面までの距離寸法を15〜50mmの範囲内になすと共に、
    前記クラウン育成工程におけるクラウン育成開始からクラウン育成終了までに、クラウン育成開始時点の前記距離寸法を10mm〜20mmの範囲内で徐々に拡げ、更に、前記直胴部育成工程における直胴部育成開始から直胴部育成終了に至る間に、クラウン育成終了時点の前記距離寸法を20〜35mmの範囲内で狭めることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 前記クラウン育成工程及び前記直胴部育成工程における、シリコン単結晶の製造装置のチャンバ内圧が200〜300Torrになされていることを特徴とする請求項1記載のシリコン単結晶の製造方法。
  3. 前記直胴部育成工程において、
    直胴部が200mm育成されるまでに、前記距離寸法をクラウン育成開始時点の距離寸法まで狭めることを特徴とする請求項1または請求項2記載のシリコン単結晶の製造方法。
  4. クラウン育成工程において、ルツボの回転数を1〜3rpmとし、クラウン育成開始の種結晶回転数を、前記ルツボの回転方向と逆方向に25〜30rpmとし、その後、クラウン育成終了までに種結晶の回転数を10〜14rpmに減少させ、
    直胴部育成工程において、ルツボ回転数を1〜3rpmとし、種結晶回転数を10〜14rpmになすことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のシリコン単結晶の製造方法。
  5. シリコン単結晶の直径が6インチ以上8インチ以下である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のシリコン単結晶の製造方法。
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