JP6757546B2 - 摺動部品 - Google Patents
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Description
本願の発明は、先行技術の改良に関するものである。
例えば、被密封流体の種類、温度及び圧力が一定の条件下において、摺動面の摺動速度を変化させた場合、中速回転域では漏れが認められ、高速回転域では漏れがほとんど認められないという現象が見られた。
一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面にディンプルが設けられ、各ディンプルの上流側のキャビテーション形成領域は低圧流体側に寄って配置されると共に下流側の正圧発生領域は高圧流体側に寄って配置され、前記正圧発生領域の下流側の先端には前記正圧発生領域と前記高圧流体側とを連通するともに前記ディンプルの深さより浅い深さを有する正圧逃し溝が設けられ、前記キャビテーション領域と前記正圧発生領域の大きさの比率が制御されるように構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、被密封流体の種類、温度、圧力及び摺動面の摺動速度等の環境に応じた漏れ防止と潤滑の両機能を有する摺動部品を提供することができる。
この特徴によれば、正圧逃し溝の形成を容易に行うことができる。
この特徴によれば、摺動面上に溝が形成されないので、摺動面をクリーンな状態に維持できると共に、摺動面の面積が減少しないので面圧の上昇を抑制することができる。
この特徴によれば、より一層の漏洩防止の効果を奏する。
この特徴によれば、ディンプル内の流体の流れがスムーズになると共に、低圧流体側から高圧流体側に向けて半径方向の流体の流れも発生されるため、より密封性を向上させることができる。
この特徴によれば、正圧発生領域で発生した正圧をスムーズに高圧流体側に逃すことができ、より一層、密封性を向上させることができる。
(1)正圧発生領域の下流側の先端には正圧発生領域と高圧流体側とを連通する正圧逃し溝が設けられ、キャビテーション領域と正圧発生領域の大きさの比率が制御されるように構成されることにより、被密封流体の種類、温度、圧力及び摺動面の摺動速度等の環境に応じた漏れ防止と潤滑の両機能を有する摺動部品を提供することができる。
なお、本実施例においては、メカニカルシールを構成する部品が摺動部品である場合を例にして説明する。
図1は、メカニカルシールの一例を示す縦断面図であって、摺動面の外周から内周方向に向かって漏れようとする高圧流体側の被密封流体を密封する形式のインサイド形式のものであり、高圧流体側のポンプインペラ(図示省略)を駆動させる回転軸1側にスリーブ2を介してこの回転軸1と一体的に回転可能な状態に設けられた円環状の回転環3と、ポンプのハウジング4に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた円環状の固定環5とが、この固定環5を軸方向に付勢するコイルドウェーブスプリング6及びベローズ7によって、ラッピング等によって鏡面仕上げされた摺動面S同士で密接摺動するようになっている。すなわち、このメカニカルシールは、回転環3と固定環5との互いの摺動面Sにおいて、被密封流体が回転軸1の外周から大気側へ流出するのを防止するものである。
なお、本発明は、インサイド形式のものに限らず、摺動面の内周から外周方向に向かって漏れようとする高圧流体側の被密封流体を密封するアウトサイド形式のものにも適用できることはいうまでもない。
なお、回転環3の摺動面にディンプル及び正圧逃し溝が形成される場合も同じである。
図2に示されたディンプル10は、上流側のキャビテーション形成領域10a及び下流側の正圧発生領域10bが、それぞれ、円弧状をなすように一定幅を有して周方向に延び、キャビテーション形成領域10a及び下流側の正圧発生領域10bが径方向において一体的に連通されてクランク状の形状をしており、また、キャビテーション形成領域10aの周方向の長さが正圧発生領域10bの周方向の長さより長く形成されている。図2のディンプル10では、キャビテーション形成領域10aの周方向の長さが正圧発生領域10bの周方向の長さより長いため、流体の吸入される量が多くなり、漏洩防止効果が大きい。
図4(a)において、矢印で示すように、固定環5に対して回転環3が反時計方向に回転移動するが、固定環5の摺動面Sにディンプル10が形成されていると、該ディンプル10の下流側には狭まり隙間(段差)11が存在する。相対する回転環3の摺動面は平坦である。
回転環3が矢印で示す方向に相対移動すると、回転環3及び固定環5の摺動面間に介在する流体が、その粘性によって、回転環3の移動方向に追随移動しようとするため、その際、狭まり隙間(段差)11の存在によって破線で示すような動圧(正圧)が発生される。
回転環3が矢印で示す方向に相対移動すると、回転環3及び固定環5の摺動面間に介在する流体が、その粘性によって、回転環3の移動方向に追随移動しようとするため、その際、拡がり隙間(段差)12の存在によって破線で示すような動圧(負圧)が発生される。
このため、ディンプル10内の上流側には負圧が発生し、下流側には正圧が発生することになる。そして、上流側の負圧発生領域にはキャビテーションが発生する。
上記の「正圧発生領域10bの下流側の先端」とは、正圧発生領域10bのうち、高圧流体側の圧力より大きくなる位置を意味する。
また、図2の例では、正圧逃し溝15は相手摺動面との相対摺動により生成される流体の流れに直交する方向に設けられているが、これに限らず、正圧を高圧流体側にスムーズに逃せるような角度であればよい。
このように、正圧逃し溝15を設けることにより正圧発生領域10bにおいて発生する正圧の大きさ、すなわち、上流側のキャビテーション領域10aと下流側の正圧発生領域10bの大きさの比率を制御することが可能になるため、摺動面における漏れ防止と潤滑の両立を図ることができる。
この例では、摺動面S上に溝が形成されないので、摺動面Sをクリーンな状態に維持できると共に、摺動面の面積が減少しないので面圧の上昇を抑制することができる。
なお、正圧逃し溝15’断面は略矩形状に限らず、円形、半円形、三角形等でもよい。
(1)正圧発生領域10bの下流側の先端には、正圧発生領域10bと高圧流体側とを連通する正圧逃し溝15が設けられ、キャビテーション領域10aと正圧発生領域10bの大きさの比率が制御されるように構成されることにより、被密封流体の種類、温度、圧力及び摺動面の摺動速度等の環境に応じた漏れ防止と潤滑の両機能を有する摺動部品を提供することができる。
(2)正圧逃し溝15が摺動面S上に形成される場合、正圧逃し溝15の形成を容易に行うことができる。
(3)正圧逃し溝15が摺動面S内を貫通するように形成される場合、摺動面S上に溝が形成されないので、摺動面Sをクリーンな状態に維持できると共に、摺動面の面積が減少しないので面圧の上昇を抑制することができる。
なお、回転環3の摺動面にディンプル及び正圧逃し溝が形成される場合も同じである。
図5の例では、正圧逃し溝25は摺動面S上に形成されているが、これに限らず、摺動面S内を貫通するように設けられてもよい。
また、正圧逃し溝25も、正圧発生領域20bの下流側の終端20dと平行に傾斜して設けられるため、正圧発生領域20bで発生した正圧をスムーズに高圧流体側に逃すことができ、より一層、密封性を向上させることができる。
(1)正圧発生領域20bの下流側の先端には、正圧発生領域20bと高圧流体側とを連通する正圧逃し溝25が設けられ、キャビテーション領域20aと正圧発生領域20bの大きさの比率が制御されるように構成されることにより、被密封流体の種類、温度、圧力及び摺動面の摺動速度等の環境に応じた漏れ防止と潤滑の両機能を有する摺動部品を提供することができる。
(2)正圧逃し溝25が摺動面S上に形成される場合、正圧逃し溝25の形成を容易に行うことができる。
(3)正圧逃し溝25が摺動面S内を貫通するように形成される場合、摺動面S上に溝が形成されないので、摺動面Sをクリーンな状態に維持できると共に、摺動面の面積が減少しないので面圧の上昇を抑制することができる。
(4)ディンプル20の正圧発生領域20bの下流側の終端20d、及び、キャビテーション形成領域20aと正圧発生領域20bと接続する接続領域20cの下流側の端20eが低圧流体側から高圧流体側に向けて下流側に傾斜するように形成されることにより、ディンプル20内の流体の流れがスムーズになると共に、低圧流体側から高圧流体側に向けて半径方向の流体の流れも発生されるため、より密封性を向上させることができる。
(5)正圧逃し溝25が正圧発生領域20bの下流側の終端20dと平行に傾斜して設けられることにより、正圧発生領域20bで発生した正圧をスムーズに高圧流体側に逃すことができ、より一層、密封性を向上させることができる。
なお、回転環3の摺動面にディンプル及び正圧逃し溝が形成される場合も同じである。
上流側に位置するディンプル30の正圧発生領域30bで動圧(正圧)が発生すると、流体は正圧発生領域30bに近い高圧流体側に主として戻されるが、一部の流体は低圧流体側に漏れようとする。しかし、当該正圧発生領域30bの低圧流体側には下流側のディンプル30のキャビテーション形成領域30aが配設されているため、低圧流体側に漏洩しようとする流体は当該キャビテーション形成領域30aに吸入されるので、低圧流体側への漏洩は防止される。
図6の例では、正圧逃し溝35は摺動面S上に形成されているが、これに限らず、摺動面S内を貫通するように設けられてもよい。
(1)正圧発生領域30bの下流側の先端には、正圧発生領域30bと高圧流体側とを連通する正圧逃し溝35が設けられ、キャビテーション領域30aと正圧発生領域30bの大きさの比率が制御されるように構成されることにより、被密封流体の種類、温度、圧力及び摺動面の摺動速度等の環境に応じた漏れ防止と潤滑の両機能を有する摺動部品を提供することができる。
(2)正圧逃し溝35が摺動面S上に形成される場合、正圧逃し溝35の形成を容易に行うことができる。
(3)正圧逃し溝35が摺動面S内を貫通するように形成される場合、摺動面S上に溝が形成されないので、摺動面Sをクリーンな状態に維持できると共に、摺動面の面積が減少しないので面圧の上昇を抑制することができる。
(4)周方向において隣接するディンプル30において、上流側に位置するディンプル30の正圧発生領域30bと下流側に位置するディンプル30のキャビテーション形成領域30aとが径方向において重複するように配設されていることにより、より一層の漏洩防止の効果を奏する。
なお、回転環3の摺動面にディンプル及び正圧逃し溝が形成される場合も同じである。
上流側に位置するディンプル40の正圧発生領域40bで動圧(正圧)が発生すると、流体は正圧発生領域40bに近い高圧流体側に主として戻されるが、一部の流体は低圧流体側に漏れようとする。しかし、当該正圧発生領域40bの低圧流体側には下流側のディンプル40のキャビテーション形成領域40aが配設されているため、低圧流体側に漏洩しようとする流体は当該キャビテーション形成領域40aに吸入されるので、低圧流体側への漏洩は防止される。
図7の例では、正圧逃し溝25は摺動面S上に形成されているが、これに限らず、摺動面S内を貫通するように設けられてもよい。
また、正圧逃し溝45も、正圧発生領域40bの下流側の終端40dと平行に傾斜して設けられるため、正圧発生領域40bで発生した正圧をスムーズに高圧流体側に逃すことができ、より一層、密封性を向上させることができる。
(1)正圧発生領域40bの下流側の先端には、正圧発生領域40bと高圧流体側とを連通する正圧逃し溝45が設けられ、キャビテーション領域40aと正圧発生領域40bの大きさの比率が制御されるように構成されることにより、被密封流体の種類、温度、圧力及び摺動面の摺動速度等の環境に応じた漏れ防止と潤滑の両機能を有する摺動部品を提供することができる。
(2)正圧逃し溝45が摺動面S上に形成される場合、正圧逃し溝45の形成を容易に行うことができる。
(3)正圧逃し溝45が摺動面S内を貫通するように形成される場合、摺動面S上に溝が形成されないので、摺動面Sをクリーンな状態に維持できると共に、摺動面の面積が減少しないので面圧の上昇を抑制することができる。
(4)ディンプル40の正圧発生領域40bの下流側の終端40d、及び、キャビテーション形成領域40aと正圧発生領域40bと接続する接続領域40cの下流側の端40eが低圧流体側から高圧流体側に向けて下流側に傾斜するように形成されることにより、ディンプル40内の流体の流れがスムーズになると共に、低圧流体側から高圧流体側に向けて半径方向の流体の流れも発生されるため、より密封性を向上させることができる。
(5)正圧逃し溝45が正圧発生領域40bの下流側の終端40dと平行に傾斜して設けられることにより、正圧発生領域40bで発生した正圧をスムーズに高圧流体側に逃すことができ、より一層、密封性を向上させることができる。
(6)周方向において隣接するディンプル40において、上流側に位置するディンプル40の正圧発生領域40bと下流側に位置するディンプル40のキャビテーション形成領域40aとが径方向において重複するように配設されていることにより、より一層の漏洩防止の効果を奏する。
2 スリーブ
3 回転環
4 ハウジング
5 固定環
6 コイルドウェーブスプリング
7 ベローズ
10、20、30、40 ディンプル
10a、20a、30a、40a キャビテーション形成領域
10b、20b、30b、40b 正圧発生領域
10c、20c、30c、40c 接続領域
11 狭まり隙間(段差)
12 拡がり隙間(段差)
15、25、35、45 正圧逃し溝
20d、40d 正圧発生領域の下流側の終端
20e、40e 接続領域の下流側の端
S 摺動面
Claims (6)
- 一対の摺動部品の互いに相対摺動する一方側の摺動面にディンプルが設けられ、各ディンプルの上流側のキャビテーション形成領域は低圧流体側に寄って配置されると共に下流側の正圧発生領域は高圧流体側に寄って配置され、前記正圧発生領域の下流側の先端には前記正圧発生領域と前記高圧流体側とを連通するともに前記ディンプルの深さより浅い深さを有する正圧逃し溝が設けられ、前記キャビテーション領域と前記正圧発生領域の大きさの比率が制御されるように構成されることを特徴とする摺動部品。
- 前記正圧逃し溝は、前記摺動面上に形成されることを特徴とする請求項1記載の摺動部品。
- 前記正圧逃し溝は、前記摺動面内を貫通するように形成されることを特徴とする請求項1記載の摺動部品。
- 周方向において隣接する前記ディンプルにおいて、上流側に位置するディンプルの前記正圧発生領域と下流側に位置するディンプルの前記キャビテーション形成領域とが径方向において重複するように配設されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摺動部品。
- 前記ディンプルは径方向に一定の幅を有して周方向に延びた形状を有し、前記正圧発生領域の下流側の終端、及び、前記キャビテーション形成領域と前記正圧発生領域と接続する接続領域の下流側の端は、前記低圧流体側から前記高圧流体側に向けて下流側に傾斜するように形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の摺動部品。
- 前記正圧逃し溝は、前記正圧発生領域の下流側の終端と平行に傾斜して設けられることを特徴とする請求項5記載の摺動部品。
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