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JP6637758B2 - 電子写真機器用導電性部材 - Google Patents

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JP6637758B2 JP2015250954A JP2015250954A JP6637758B2 JP 6637758 B2 JP6637758 B2 JP 6637758B2 JP 2015250954 A JP2015250954 A JP 2015250954A JP 2015250954 A JP2015250954 A JP 2015250954A JP 6637758 B2 JP6637758 B2 JP 6637758B2
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Description

本発明は、電子写真機器用導電性部材に関するものである。
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、感光ドラムの周囲には、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが配設されている。また、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルトなどの無端ベルト(導電性ベルト)が配設されている。これらの導電性部材は、導電性を有する弾性体からなる導電性弾性体層を備える。
特開2005−115204号公報
電子導電剤を配合する電子導電系では、配合する導電性粒子による硬度上昇、へたり悪化の問題がある。また、配合する導電性粒子の分散不良による抵抗ムラが生じ、帯電性の悪化の問題がある。イオン導電剤を配合するイオン導電系では、イオン導電性の発現に極性ポリマーが必要であり、極性が高いほど硬くポリマーの弾性が低下する。
本発明が解決しようとする課題は、従来よりも低抵抗、低硬度かつ低へたりで帯電性に優れるとともに汚染が抑えられた電子写真機器用導電性部材を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用導電性部材は、1種以上のポリマーを含有する導電性の第1ポリマー相と、1種以上のポリマーを含有し、前記第1ポリマー相と分離して存在する非導電性の第2ポリマー相と、前記第1ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分と前記第2ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分のうちのいずれか一方または両方を含むポリマーからなる相溶化剤を含有し、前記第1ポリマー相と前記第2ポリマー相との間に存在する界面相と、で構成される導電性弾性体層を備えることを要旨とするものである。
前記界面相の厚みは、10〜1000nmの範囲内であることが好ましい。前記導電性弾性体層の任意の5μm□の範囲内において、前記第1ポリマー相と前記第2ポリマー相の合計に対する前記第1ポリマー相の面積割合は10〜90%の範囲内であることが好ましい。前記相溶化剤は、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ブロック、ポリイソプレンブロック、変性天然ゴム成分からなるブロック、変性ポリイソプレン成分からなるブロックのうちの少なくとも1種のブロックを有するポリマーであることが好ましい。前記相溶化剤は、前記第1ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分と前記第2ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分の両方を含むポリマーからなるものであってもよい。
本発明に係る電子写真機器用導電性部材によれば、導電性弾性体層が導電性の第1ポリマー相と非導電性の第2ポリマー相を有し、導電性弾性体層において非導電相が存在することで、導電相だけでは得られない、低硬度かつ低へたりが発揮される。第1ポリマー相と第2ポリマー相は相溶化剤によってトナーサイズレベルで均一に分散(微分散)され、より低硬度かつ低へたりが発揮される。また、両相が均一に微分散されることで、トナーサイズレベルの荷電制御が可能となり、抵抗ムラが抑えられ、優れた帯電性が発揮される。そして、相溶化剤が第1ポリマー相と第2ポリマー相との間の界面相に存在することで、導電性弾性体層の表面に現れる相溶化剤が少なくなり、相溶化剤による汚染が抑えられる。
このとき、界面相の厚みが10〜1000nmの範囲内であると、導電性の第1ポリマー相と非導電性の第2ポリマー相の2相による低硬度かつ低へたりの特性が発揮されやすい。
そして、導電性弾性体層の任意の5μm□の範囲内において、導電性の第1ポリマー相と非導電性の第2ポリマー相の両相が所定の割合で存在すると、両相がトナーサイズレベルにおいて均一に分散(微分散)されているので、より低硬度かつ低へたりが発揮される。また、トナーサイズレベルの荷電制御が可能となり、抵抗ムラが抑えられ、優れた帯電性が発揮される。
そして、相溶化剤が上記する特定のポリマーからなるものであると、より一層、低硬度かつ低へたりとなる。
本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観模式図(a)と、そのA−A線断面図(b)である。 本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ベルト(無端ベルト)の外観模式図(a)と、そのB−B線断面図(b)である。 図1におけるC1部や図2におけるC2部を拡大して示した相構成を示す模式図である。 導電性弾性体層における導電性の第1ポリマー相と非導電性の第2ポリマー相の両相の面積比率を計測する方法を示した模式図である。 他の形態に係る相構成を示す模式図である。 実施例2の導電性弾性体層の断面拡大写真である。 比較例1の導電性弾性体層の断面拡大写真である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
本発明に係る電子写真機器用導電性部材(以下、本導電性部材ということがある)は、導電性を有する弾性体からなる導電性弾性体層を備える。本導電性部材は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において用いられる帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールや、中間転写ベルト、紙転写搬送ベルトなどの無端ベルト(導電性ベルト)などとして好適である。
図1には、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールを、図2には、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ベルト(無端ベルト)を、それぞれ示す。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロール10(以下、単に導電性ロール10ということがある)は、軸体12と、軸体12の外周に配置された導電性弾性体層14と、を備える。導電性弾性体層14は、導電性ロール10のベース層であり、必要に応じて、導電性弾性体層14の外周に抵抗調整層、表層などが設けられてもよい。
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを挙げることができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ベルト(無端ベルト)20(以下、単に導電性ベルト20ということがある)は、導電性弾性体層24を備える。導電性弾性体層24は、導電性ベルト20のベース層であり、必要に応じて、導電性弾性体層24の外周に表層などが設けられてもよい。
図3には、図1におけるC1部や図2におけるC2部を拡大して示した相構成を示す。導電性ロール10や導電性ベルト20などの本導電性部材において、導電性弾性体層は、図3に示すように、導電性の第1ポリマー相1と、第1ポリマー相1と分離して存在する非導電性の第2ポリマー相2と、第1ポリマー相1と第2ポリマー相2との間に存在する界面相3と、で構成されている。
図3においては、導電性の第1ポリマー相1は、連続相(海相)として示されており、非導電性の第2ポリマー相2は、分散相(非連続相、島相)として示されており、界面相3は、非導電性の第2ポリマー相2の周囲を連続的に覆う分散相として示されている。界面相3は、非導電性の第2ポリマー相2の全周囲を連続的に覆う分散相であったり、非導電性の第2ポリマー相2の周囲の一部を連続的に覆う分散相であったりする。
導電性の第1ポリマー相1は、1種以上のポリマーを含有する。1種以上のポリマーは、第1ポリマー相1のベースポリマーである。第1ポリマー相1のベースポリマーは、極性ポリマーであってもよいし、非極性ポリマーであってもよいし、極性ポリマーと非極性ポリマーの組み合わせであってもよい。導電性の観点から、第1ポリマー相1のベースポリマーは極性ポリマーであるか、極性ポリマーを一部に含むことが好ましい。第1ポリマー相1のベースポリマーが極性ポリマーである場合、あるいは極性ポリマーを一部に含む場合には、所望の導電性を満足するのであれば、第1ポリマー相1のベースポリマー中に導電剤が分散されていてもよいし、分散されていなくてもよい。導電剤は、導電系(イオン導電系、電子導電系)に応じて、イオン導電剤や電子導電剤が用いられる。所望の導電性を得やすいなどの観点から、導電剤が分散されていることが好ましい。第1ポリマー相1のベースポリマーが非極性ポリマーである場合、あるいは非極性ポリマーを一部に含む場合には、所望の導電性を満足する範囲において、第1ポリマー相1のベースポリマー中に導電剤が分散されていることが好ましい。
導電性の第1ポリマー相1は、導電性の観点から、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下の組成物からなることが好ましい。より好ましくは、体積抵抗率が1×10Ω・cm以下、さらに好ましくは体積抵抗率が1×10Ω・cm以下である。導電性の第1ポリマー相1を構成する組成物の体積抵抗率は、シート状に成形して得られるシート状サンプルを用い、JIS K 6911に準拠して23℃、53%RH環境下で測定することができる。また、導電性の第1ポリマー相1は、導電性の観点から、導電剤を含有する組成物からなることが好ましい。
非導電性の第2ポリマー相2は、1種以上のポリマーを含有する。1種以上のポリマーは、第2ポリマー相2のベースポリマーである。第1ポリマー相1と分離して存在する非導電性の第2ポリマー相2のベースポリマーは、第1ポリマー相1のベースポリマーとは異なるポリマーである。第2ポリマー相2のベースポリマーは、第2ポリマー相2が非導電性となるのであれば、極性ポリマーであってもよいし、非極性ポリマーであってもよいし、極性ポリマーと非極性ポリマーの組み合わせであってもよい。導電性の観点から、第2ポリマー相2のベースポリマーは非極性ポリマーであるか、非極性ポリマーを一部に含むことが好ましい。第2ポリマー相2は、非導電性となるのであれば、第2ポリマー相2のベースポリマー中に導電剤が分散されていてもよいが、導電性の観点から、第2ポリマー相2のベースポリマー中に導電剤が分散されていないことが好ましい。電子導電剤を第2ポリマー相2に配合しないで第1ポリマー相1のみに配合すると、導電相として機能していない非導電相に配合しない分、所望の導電性に必要な電子導電剤の使用量を減らすことができる。これにより、低硬度、低へたり、低コストとしやすい。
非導電性の第2ポリマー相2は、導電性の観点から、導電性の第1ポリマー相1よりも体積抵抗率が高いことが好ましい。第2ポリマー相2を構成する組成物の体積抵抗率は、第1ポリマー相1を構成する組成物と同様に、シート状に成形して得られるシート状サンプルを用い、JIS K 6911に準拠して23℃、53%RH環境下で測定することができる。また、非導電性の第2ポリマー相2は、導電性の観点から、導電剤を含有しない組成物からなることが好ましい。
導電性弾性体層において、導電性の第1ポリマー相1は、配合される電子導電剤(導電性粒子)による硬度上昇、弾性回復率の低下、圧縮永久歪の悪化がある。また、配合される電子導電剤(導電性粒子)の分散不良による抵抗ムラ(帯電性の悪化)がある。また、用いられる極性ポリマーによる弾性の低下がある。したがって、導電性の第1ポリマー相1だけで導電性弾性体層が構成されると、低硬度、低へたりが満足されない。
非導電性の第2ポリマー相2は、導電性の第1ポリマー相1よりも導電剤の配合量が少ないか、導電剤が配合されない。また、導電性の第1ポリマー相1よりも極性ポリマーの使用量が少ないか、極性ポリマーが使用されない。このため、比較的柔軟性に優れる。そうすると、導電性弾性体層が導電性の第1ポリマー相1と非導電性の第2ポリマー相2の2相を有しており、非導電相(第2ポリマー相2)が存在することで、導電相(第1ポリマー相1)だけでは得られない、低硬度かつ低へたりが発揮される。そして、導電相(第1ポリマー相1)と非導電相(第2ポリマー相2)の両相が微分散されるほど、より低硬度かつ低へたりが発揮される。
第1ポリマー相1や第2ポリマー相2のベースポリマーとして挙げられる極性ポリマーは、極性基を有するポリマーである。極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などが挙げられる。極性ポリマーとしては、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2−クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などが挙げられる。これらは、極性ポリマーとして単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、より低抵抗であるなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)が好ましい。
第1ポリマー相1や第2ポリマー相2のベースポリマーとして挙げられる非極性ポリマーは、極性基を有していないゴムである。極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などが挙げられる。非極性ポリマーとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、水添イソプレンゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、シリコーンゴム(Q)などが挙げられる。これらは、非極性ポリマーとして単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、低硬度かつ低へたりにしやすいなどの観点から、天然ゴム、イソプレンゴムが好ましい。
第1ポリマー相1のベースポリマー(a)と第2ポリマー相2のベースポリマー(b)の組み合わせとしてより好適な組み合わせとしては、(a)がヒドリンゴムおよび/またはニトリルゴム(NBR)であり(b)が天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムである組み合わせが挙げられる。
導電性の第1ポリマー相1は、導電相として機能する。非導電性の第2ポリマー相2は、柔軟相として機能する。非導電性の第2ポリマー相2は、導電性の第1ポリマー相1と分離して存在する。このように、本導電性部材は、導電相と柔軟相を分けた設計を行っている。この場合、機能分離のため、導電相と柔軟相のポリマーは、互いに混ざり合わないように異なる種類のポリマーが用いられる。種類の異なるポリマー、特に極性ゴムと非極性ゴムの組み合わせなどは、混ざりにくく、相分離する。相分離状態が悪化すると、部材としての特性にムラが大きくなる。
界面相3は、相溶化剤を含有する。相溶化剤は、界面活性剤の役割を持ち、例えば製造工程中などに第1ポリマー相1と第2ポリマー相2の相分離が進まないようにする。相溶化剤は、混ざり合わない両相とそれぞれ親和性を有するため、各相にも含まれる場合がある。相溶化剤が導電性の第1ポリマー相1や非導電性の第2ポリマー相2に多く含まれると、本導電性部材の表面f(ロール表面やベルト表面)に多く現れる。そうすると、トナー固着や感材汚染などの汚染を発生しやすい。本導電性部材では、第1ポリマー相1と第2ポリマー相2との間に偏在しやすい相溶化剤を用いる。これにより、界面相3が形成される。相溶化剤が第1ポリマー相1と第2ポリマー相2との間の界面相3に存在することで、導電性弾性体層の表面fに現れる相溶化剤が少なくなり、相溶化剤による汚染が抑えられる。
相溶化剤は、第1ポリマー相1のベースポリマーおよび第2ポリマー相2のベースポリマーのいずれとも異なるポリマーである。相溶化剤は、第1ポリマー相1に含まれるポリマーの構成成分と第2ポリマー相2に含まれるポリマーの構成成分のうちのいずれか一方または両方を含むポリマーからなる。ポリマーの構成成分としては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ブロック、ポリイソプレンブロック、変性天然ゴム成分からなるブロック、変性ポリイソプレン成分からなるブロックなどが挙げられる。相溶化剤は、例えば上記するポリマーの構成成分の1種を有するポリマーであってもよいし、2種以上を有するポリマーであってもよい。相溶化剤が上記するポリマーの構成成分の少なくとも1種のブロックを有するポリマーであると、より一層、低硬度かつ低へたりとなる。
変性天然ゴム成分からなるブロックを有するポリマーとしては、変性天然ゴムが挙げられる。変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム、塩素化天然ゴム、ニトリル化天然ゴム(アクリロニトリル化天然ゴム)などが挙げられる。変性ポリイソプレン成分からなるブロックを有するポリマーとしては、変性イソプレンゴムが挙げられる。変性イソプレンゴムとしては、エポキシ化イソプレンゴム、塩素化イソプレンゴム、ニトリル化イソプレンゴム(アクリロニトリル化イソプレンゴム)、マレイン酸変性イソプレンゴム、(メタ)アクリル酸変性イソプレンゴムなどが挙げられる。
相溶化剤は、第1ポリマー相1に含まれるポリマーの構成成分と第2ポリマー相2に含まれるポリマーの構成成分の両方を含むポリマーからなるものであってもよい。このようなポリマーとしては、ニトリルゴム成分からなるブロックとイソプレンゴム成分からなるブロックとを有するポリマーなどが挙げられる。
相溶化剤は、上記するポリマーの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、相溶化効果に特に優れるなどの観点から、エポキシ化天然ゴム、エポキシ化イソプレンゴムが特に好ましい。
界面相3の厚みは、10〜1000nmの範囲内であることが好ましい。相溶化剤が適量であり、導電性の第1ポリマー相1と非導電性の第2ポリマー相2の2相による低硬度かつ低へたりの特性が発揮されやすい。界面相3の厚みが十分であると、相溶化剤の配合量を少なくできる。界面相3の厚みは、2相による低硬度かつ低へたりの特性がより発揮されやすいなどの観点から、より好ましくは10〜500nmの範囲内、さらに好ましくは10〜300nmの範囲内、特に好ましくは10〜200nmの範囲内である。界面相3の厚みは、相容化剤の両相(第1ポリマー相1と第2ポリマー相2)への親和性のコントロールと配合量により調整可能である。
導電性弾性体層において、第1ポリマー相1と第2ポリマー相2は、均一に分散(微分散)されていることが好ましい。両相がトナーサイズレベルにおいて均一に分散(微分散)されているので、より低硬度かつ低へたりが発揮される。また、トナーサイズレベルの荷電制御が可能となり、抵抗ムラが抑えられ、優れた帯電性が発揮される。
具体的には、導電性弾性体層の任意の5μm□(5μm×5μm)の範囲内において、第1ポリマー相1と第2ポリマー相2の合計に対する第1ポリマー相1の面積割合は10〜90%の範囲内であることが好ましい。また、相対的に第2ポリマー相2の面積割合は10〜90%の範囲内であることが好ましい。任意とは、どの場所においても、という意味である。第1ポリマー相1と第2ポリマー相2の両相の面積比率は、任意の5μm□の範囲内におけるものであるが、具体的には、図4に示すように、導電性弾性体層の任意の断面を観察し、その断面における任意の40×40μmの範囲を64分割し、斜線が引いてある斜め方向に並ぶ16マスを選択し、各5×5μm角内における第1ポリマー相1(または第2ポリマー相2)の面積割合をそれぞれ計測し、選択した16マスのうちの14マス以上(8.5割以上)が該当する値である。
任意の5μm□の範囲内において第1ポリマー相1(導電相)の面積割合が10%以上であると、第1ポリマー相1(導電相)の分散性が特に良好となる。そうすると、第1ポリマー相1(導電相)における電子導電剤の凝集(分散性)の影響が特に小さくなり、導電性弾性体層における電子導電剤の分散性が特に良好となる。これにより、抵抗ムラがより抑えられ、帯電性が特に良好となる。また、任意の5μm□の範囲内において第1ポリマー相1(導電相)の面積割合が90%以下であると、第1ポリマー相1(導電相)が十分小さく、第1ポリマー相1(導電相)がトナーサイズレベルに分散される。そうすると、第1ポリマー相1(導電相)における電子導電剤の凝集(分散性)の影響が特に小さくなり、導電性弾性体層における電子導電剤の分散性が特に良好となる。これにより、抵抗ムラがより抑えられ、帯電性が特に良好となる。
導電性弾性体層の任意の5μm□の範囲内において、導電相の面積割合が20〜80%の範囲内であると、より一層、帯電性に優れる。また、帯電性に優れる観点から、導電相の面積割合としては、より好ましくは30〜70%の範囲内、さらに好ましくは40〜60%の範囲内である。
このように、第1ポリマー相1(導電相)と第2ポリマー相2(非導電相)の両相がトナーサイズレベルにおいて均一に分散(微分散)するには、例えば、第1ポリマー相1(導電相)と第2ポリマー相2(非導電相)の両相の分散性を向上させる相溶化剤を用いる、第1ポリマー相1(導電相)のベースポリマーと第2ポリマー相2(非導電相)のベースポリマーの配合割合を調整する、所望の分散度まで十分に混練する、などの方法を用いることが考えられる。
本導電性部材は、10V印加時の抵抗が1×10〜1×10Ωの範囲内であることが好ましい。電子写真機器用導電性部材に求められる導電性を確保しつつ、低硬度、低へたりを満足しやすい。低硬度、低へたりは、低抵抗とするために配合される電子導電剤、極性ポリマーなどに影響される。導電性の観点から、10V印加時の抵抗は、より好ましくは1×10Ω以下、さらに好ましくは1×10Ω以下である。また、低硬度、低へたりの観点から、10V印加時の抵抗は、より好ましくは1×10Ω以上、さらに好ましくは1×10Ω以上である。
イオン導電剤としては、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。イオン導電系の第1ポリマー相1(導電相)におけるイオン導電剤の含有量は、低抵抗、ブリードなどの観点から、第1ポリマー相1(導電相)のベースポリマー100質量部に対し、0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5〜5.0質量部の範囲内である。
電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどが挙げられる。これらのうちでは、導電性などの観点から、カーボンブラック、グラファイトが好ましい。電子導電系の第1ポリマー相1(導電相)における電子導電剤の含有量は、導電性(低抵抗)などの観点から、第1ポリマー相1(導電相)のベースポリマー100質量部に対し、6質量部以上であることが好ましい。より好ましくは7質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上である。また、低硬度、低へたりなどの観点から、第1ポリマー相1(導電相)のベースポリマー100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましい。より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
導電性ゴム弾性体層は、第1ポリマー相1(導電相)を構成する組成物と、第2ポリマー相2(非導電相)を構成する組成物と、相溶化剤を含む界面相3を構成する組成物と、を少なくとも含有する導電性組成物から形成される。この導電性組成物は、必要に応じ、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫助剤(架橋助剤)などを含有する。また、増量剤、補強剤、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤などの添加剤を1種または2種以上含有することができる。
この導電性組成物は、第1ポリマー相1(導電相)を構成する組成物と、第2ポリマー相2(非導電相)を構成する組成物と、相溶化剤を含む界面相3を構成する組成物と、必要に応じて配合される加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫助剤(架橋助剤)、添加剤などを配合し、混練することにより調製される。第1ポリマー相1(導電相)を構成する組成物は、この導電性組成物を調製する前に、予めベースポリマーと必要に応じて配合される導電剤、添加剤とを配合し、混練して調製する。また、第2ポリマー相2(非導電相)を構成する組成物も、この導電性組成物を調製する前に、予めベースポリマーと必要に応じて配合される添加剤とを配合し、混練して調製する。
第1ポリマー相1(導電相)のベースポリマー(a)と第2ポリマー相2(非導電相)のベースポリマー(b)の配合比率は、第1ポリマー相1(導電相)と第2ポリマー相2(非導電相)の両相がトナーサイズレベルにおいて均一に分散(微分散)しやすいなどの観点から、質量比で、a/b=10/90〜90/10の範囲内が好ましい。より好ましくはa/b=20/80〜80/20の範囲内、さらに好ましくはa/b=30/70〜70/30の範囲内である。
相溶化剤の配合量は、第1ポリマー相1(導電相)と第2ポリマー相2(非導電相)の両相がトナーサイズレベルにおいて均一に分散(微分散)しやすいなどの観点から、第1ポリマー相1(導電相)のベースポリマー(a)と第2ポリマー相2(非導電相)のベースポリマー(b)の合計100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.5〜15質量部の範囲内、さらに好ましくは1.0〜10質量部の範囲内である。
加硫剤(架橋剤)としては、硫黄、過酸化物などが挙げられる。加硫剤(架橋剤)のうちでは、より低へたりにしやすいなどの観点から、過酸化物がより好ましい。過酸化物の配合量は、低へたりにしやすいなどの観点から、第1ポリマー相1(導電相)のベースポリマー(a)と第2ポリマー相2(非導電相)のベースポリマー(b)の合計100質量部に対し、0.5〜7質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.0〜5質量部の範囲内である。
加硫剤(架橋剤)としての過酸化物は、炭酸カルシウムなどの担体に担持して用いるとよい。この場合、導電性組成物中に炭酸カルシウムなどの担体が残存することになる。図5に示すように、相溶化剤を含む界面相3に炭酸カルシウムなどの担体4を集めることで、第1ポリマー相1や第2ポリマー相2に炭酸カルシウムなどの担体4の存在量が少なくなるため、第1ポリマー相1や第2ポリマー相2の特性をより発揮しやすくする。したがって、相溶化剤の種類などを適宜選択し、相溶化剤を含む界面相3に炭酸カルシウムなどの担体4を集めるとよい。
導電性弾性体層は、導電性に優れ(低抵抗で)、低硬度かつ低へたりを満足する。導電性の観点から、導電性弾性体層の抵抗値は1.0×10〜1.0×10Ωの範囲内であることが好ましい。また、従来よりも低硬度の観点から、導電性弾性体層のMD−1硬度は50以下であることが好ましい。より好ましくは45以下、40以下である。また、従来よりも低へたりの観点から、導電性ゴム弾性体層の弾性回復率は80%以上であることが好ましい。より好ましくは80%超、85%以上、90%以上である。MD−1硬度は、片持ち梁形板バネ式の荷重方式のスプリング式硬さ試験機(高分子計器社製、「マイクロゴム硬度計・MD−1型」)を用いて測定される。MD−1硬度測定値は、測定するポリマーの厚みが1〜2mmのもので測定した値とする。弾性回復率は、ISO14577−1に準拠し、微小硬度計(Fischer社製、フィッシャースコープH100C)を用いて測定される。
導電性弾性層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜10mm程度に形成され、好ましくは1〜5mmである。導電性弾性層は、ソリッド状の非発泡体であってもよいし、スポンジ状等の発泡体であってもよい。
導電性ロール10は、例えば次のように製造することができる。まず、必要に応じ、軸体12の外周に接着剤組成物を塗布する。次いで、塗布した接着剤組成物の外周に導電性組成物を層状に成形する。導電性組成物の成形は、押出成形あるいは型成形により行うことができる。導電性組成物は、押出成形時あるいは型成形時の加熱等により、架橋・硬化される。これにより、軸体12の外周に導電性弾性体層14を有する導電性ロール10が得られる。
導電性弾性体層14の外周には、必要に応じて、導電性弾性体層14の表面を保護する、導電性ロール10の表面特性(低摩擦性、離型性、荷電性など)を付与するなどの目的で、表層が形成されていても良い。また、導電性弾性体層14の外周で表層下には、導電性ロール10全体の抵抗を調整する抵抗調整層などの中間層が形成されていても良い。
表層を形成する主材料としては、特に限定されるものではなく、ポリアミド(ナイロン)系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、変性されたものであっても良い。変性基としては、例えば、N−メトキシメチル基、シリコーン基、フッ素基などを挙げることができる。
表層には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO、c−ZnO、c−SnO(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。
表層を形成するには、表層形成用組成物を用いる。表層形成用組成物は、上記主材料、導電剤、必要に応じて含有されるその他の添加剤を含有するものからなる。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
表層形成用組成物は、粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。
表層は、導電性弾性体層14の外周に表層形成用組成物を塗工するなどの方法により、形成できる。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。塗工された表層には、必要に応じて、紫外線照射や熱処理を行なっても良い。
表層の厚さは、通常、0.01〜100μm、0.1〜20μm、あるいは、0.3〜10μmに設定される。表層の体積抵抗率は、通常、10〜10Ω・cm、10〜10Ω・cm、あるいは、10〜10Ω・cmに設定される。
また、表層の形成に代えて、導電性弾性体層14あるいは抵抗調整層などの中間層に表面改質を施すことにより、表層を形成することと同等の表面特性を有するようにすることもできる。表面改質方法としては、UVや電子線を照射する方法、基層の不飽和結合やハロゲンと反応可能な表面改質剤、例えば、イソシアネート基、ヒドロシリル基、アミノ基、ハロゲン基、チオール基などの反応活性基を含む化合物と接触させる方法などが挙げられる。
導電性ベルト20は、導電性組成物を金型(円筒形基体)の表面にスプレーコーティングなどのコーティング方法でコーティングし、これを所定の温度(好ましくは150〜300℃)に加熱して所定の時間(好ましくは3〜6時間)乾燥することにより、形成することができる。導電性弾性体層24の外周には、必要に応じて、導電性弾性体層24の表面を保護する、導電性ベルト20の表面特性(低摩擦性、離型性、荷電性など)を付与するなどの目的で、表層が形成されていても良い。表層材料としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、図1では、導電性弾性体層は導電性ロールのベース層として示されているが、表層であってもよい。同様に、図2では、導電性弾性体層は導電性ベルトのベース層として示されているが、表層であってもよい。
また、図3では、導電性の第1ポリマー相1は連続相(海相)として示され、非導電性の第2ポリマー相2は分散相(非連続相、島相)として示されているが、第1ポリマー相1が分散相(非連続相、島相)であり、第2ポリマー相2が連続相(海相)となるものであってもよい。この場合、界面相3は、導電性の第1ポリマー相1の周囲を連続的に覆う分散相となる。また、第1ポリマー相1および第2ポリマー相2の両相が連続相(海相)であってもよい。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
使用した材料の詳細について以下に示す。
・ニトリルゴム(NBR):JSR社製「N237H」
・イソプレンゴム(IR):JSR社製「JSR IR2200」
・天然ゴム(NR):国際規格の等級がRSS1のもの
・エポキシ化天然ゴム(エポキシ化NR):Muang Mai Guthrie Public Company Limited社製、「EPOXYPRENE50」(50%変性品)
その他の変性率のエポキシ化天然ゴム(エポキシ化NR)は、WO2013/133380A1を参考に調整した。
・NBRとIRのブロック共重合体(NBIR):日本ゼオン社製「Nipol DN1201」
・イオン導電剤:テトラブチルアンモニウムブロマイド、ライオン・アクゾ(株)製「TBAB−100」
・カーボンブラック(電子導電剤):デグサ社製「Printex XE2B」、BET比表面積950(m/g)
・過酸化物加硫剤:日油(株)製「パークミルD40」
(実施例1〜5、比較例1〜2)
<導電性組成物の調製>
表1に示す配合組成(質量比)で各成分を配合し、攪拌機により撹拌、混合して、導電性組成物を調製した。
<導電性ロールの作製>
φ9mmの円筒状の成形キャビティを有する成形金型の中心軸上に芯金(直径6mm)をセットし、この成形金型内に導電性組成物を注入し、160℃で30分加熱・架橋させ、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.5mmの導電性弾性体層を形成した。これにより、導電性ロールを作製した。
得られた各導電性ロールの導電性弾性体層について、相構造の観察、弾性回復率、MD−1硬度、抵抗値を測定した。また、セット性、初期および耐久カブリ性、画像濃度、トナー固着性の各製品特性を評価した。これらの結果を表1に示した。セット性は、導電性弾性体層のへたり性に影響される。初期カブリ性は、帯電性(導電性弾性体層の各相の面積比)に影響される。耐久カブリ性は、導電性弾性体層の硬度に影響される。画像濃度は、導電性弾性体層の抵抗値(導電性)に影響される。
また、代表例として、実施例2の導電性ロールの導電性弾性体層の断面写真を図6に示し、比較例1の導電性ロールの導電性弾性体層の断面写真を図7に示す。図6(b)は、図6(a)の四角で囲った部分の拡大写真である。図6(c)は、図6(b)の四角で囲った部分の拡大写真である。図6、図7において、比較的色の薄い部分は導電性の第1ポリマー相であり、比較的色の濃い部分は非導電性の第2ポリマー相であり、図6(c)示すように第2ポリマー相の周囲に存在する相が界面相である。各写真の右下には、相の大きさを示すためのスケールが記してある。
(界面相の厚み)
導電性弾性体層の任意の断面を観察し、その断面における任意の40×40μmの範囲で観測される界面相の厚みを測定した。
(面積比)
導電性弾性体層の任意の断面を観察し、図4に示すように、その断面における任意の40×40μmの範囲を64分割し、斜線が引いてある斜め方向に並ぶ16マスを選択し、各5×5μm角内における第1ポリマー相(導電相)と第2ポリマー相(非導電相)の面積割合をそれぞれ計測し、16マスのうち14マス以上(8.5割以上)が該当する値とした。第1ポリマー相と第2ポリマー相の合計に対する第1ポリマー相の面積割合が10〜90%の範囲内である場合を「○」とし、範囲外を「×」とした。
(弾性回復率)
ISO14577−1に準拠し、微小硬度計(Fischer社製、フィッシャースコープH100C)を用いて、導電性弾性体層の表面を下記の測定条件にて測定し、ηIT[%]を求めた。すなわち、微小硬度計を用いて、試験荷重を一定にして、材料表面に圧子を押し込むと、押し込み仕事中に示されるくぼみの全機械的仕事量Wtotalは、くぼみの塑性変形仕事量Wplastとしてごく一部だけ消費される。試験荷重の除荷時に、残りの部分は、くぼみの弾性戻り変形仕事Welastとして開放される。この機械的仕事をW=∫Fdhと定義とすると、その関係は以下の通りである。弾性回復率が80%以上を低へたりとし、80%未満を高へたりとした。
ηIT[%]=Welast/Wtotal
但し、Wtotal=Welast+Wplast
<測定条件>
圧子:対面角度136°の四角垂型ダイヤモンド圧子
初期荷重:0mN
押込み最大荷重:20mN(定荷重)
最大荷重到達時間:0.25〜10sec
最大荷重保持時間:5sec
抜重時間:0.25〜10sec
測定温度:25℃
(MD−1硬度(マイクロゴム硬度))
片持ち梁形板バネ式の荷重方式のスプリング式硬さ試験機(高分子計器社製、「マイクロゴム硬度計・MD−1型」)を用い、保持された各導電性ロールの導電性弾性体層の軸方向中央部の表面に、該硬さ試験機の押針の先端を接触させ、更に該試験機を33.85gの荷重で垂直に加圧して、直ちに目盛りを読み取ることにより測定した。MD−1硬度が50以下を低硬度、50超を高硬度とした。
(抵抗値)
導電性ロールの両端を所定の荷重にて金属ロール(直径:30mm)に押圧した状態で、かかる金属ロールを所定の回転数にて回転させることにより、導電性ロールを連れ回りさせた。かかる状態を保ちながら(金属ロール及び導電性ロールを共に回転させながら)、導電性ロールと金属ロールの端部間に10Vの電圧を印加して、流れる電流値を測定し、電気抵抗値(ロール抵抗:Ω)を求めた。抵抗値が1×10Ω超の場合を高抵抗とし、1×10Ω〜1×10Ωの範囲の場合を低抵抗とした。
(セット性)
導電性ロールをカートリッジに組み付け、密封して常温常湿環境で14日間放置した。その後、常温常湿環境で画出しを行った。画にスジ状の不具合が見られた場合を不合格「×」とし、見られなかった場合を合格「○」とした。また、ロンコムにて導電性弾性体層の真円度を計測し、真円度からの凹み量からへたり量を測定した。へたり量が5μm以下の場合を低へたりとし、5μm超の場合を高へたりとした。セット性が合格「○」のうち、へたり量が2μm以下の場合を特に良好「◎」とした。
(初期カブリ性)
導電性ロールをカートリッジに組み付け、白べた画を印字した。白色光度計で濃度を測定し、任意の9点で1.40〜1.46の範囲内であれば初期カブリ性が良好「○」、範囲外であれば不良「×」とした。初期カブリ性が良好「○」のうち、白色光度が任意の9点で1.43〜1.45の範囲内のものを特に良好「◎」とした。
(耐久カブリ性)
導電性ロールをカートリッジに組み付け、低温低湿環境下(15℃、湿度10%)に12時間以上放置後、この環境下にて5%印字で10000枚の実機耐久を行った。その後、白色光度計で濃度を測定し、任意の9点で1.40〜1.46の範囲内であれば耐久カブリ性が良好「○」、範囲外であれば不良「×」とした。耐久カブリ性が良好「○」のうち、白色光度が任意の9点で1.43〜1.45の範囲内のものを特に良好「◎」とした。
(画像濃度)
導電性ロールをカートリッジに組み付け、黒べた画を印字した。白色光度計で濃度を測定し、任意の9点で1.0〜2.0の範囲内であれば良好「○」、範囲外であれば不良「×」とした。画像濃度が良好「○」のうち、白色光度が任意の9点で1.3〜1.6の範囲内のものを特に良好「◎」とした。
(トナー固着性)
導電性ロールをカートリッジに組み付け、ベタ画像にて1ページのみ印字した後、常温常湿環境で14日間放置した。その後、導電性ロールを取り出し、表面をエアブローした。導電性ロールの表面にスジ状のトナーの固着が見られた場合を不合格「×」とし、見られなかった場合を合格「○」とした。
比較例1は、図7に示すように、導電性弾性体層において、第1ポリマー相(導電相)と第2ポリマー相(非導電相)は存在するが、界面相が存在しない。このため、比較例1では、トナー固着(汚染)が抑えられていない。また、導電性弾性体層の任意の5μm□の範囲において第1ポリマー相(導電相)の面積割合が大きく、第1ポリマー相(導電相)がトナーサイズレベルに分散されていない。このため、第1ポリマー相(導電相)における電子導電剤の凝集(分散性)の影響を大きく受けて、導電性弾性体層における電子導電剤の分散性は悪い。これにより、抵抗ムラが生じ、帯電性が悪く、初期カブリ性の点で満足できない。また、弾性回復率も低く、セット性も満足していない。
一方、実施例は、図6に示すように、導電性弾性体層において、第1ポリマー相(導電相)と第2ポリマー相(非導電相)とともに、第1ポリマー相(導電相)と第2ポリマー相(非導電相)の間に相溶化剤を含む界面相が存在している。このため、実施例では、トナー固着(汚染)が抑えられている。また、導電性弾性体層の任意の5μm□の範囲において第1ポリマー相(導電相)の面積割合が所望の範囲にあり、図6(a)に示すように第1ポリマー相(導電相)と第2ポリマー相(非導電相)の両相がトナーサイズレベルにおいて均一に分散(微分散)されているので、導電性弾性体層における導電剤の分散性に優れ、帯電性に優れる。これにより、初期カブリ性を満足する。また、低硬度、低へたり、低抵抗から、セット性、画像濃度および耐久カブリ性も満足する。
そして、実施例から、界面相の厚みが10〜300nmの範囲内であると、より低硬度、低へたりにすることができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
1 第1ポリマー相(導電相)
2 第2ポリマー相(非導電相)
3 界面相
10 電子写真機器用導電性ロール
12 軸体
14 導電性弾性体層
20 電子写真機器用導電性ベルト
24 導電性弾性体層

Claims (4)

  1. 1種以上のポリマーを含有する導電性の第1ポリマー相と、
    1種以上のポリマーを含有し、前記第1ポリマー相と分離して存在する非導電性の第2ポリマー相と、
    前記第1ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分と前記第2ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分のうちのいずれか一方または両方を含むポリマーからなる相溶化剤を含有し、前記第1ポリマー相と前記第2ポリマー相との間に存在する界面相と、
    で構成される導電性弾性体層を備え、前記導電性弾性体層の任意の5μm×5μmの範囲内において、前記第1ポリマー相と前記第2ポリマー相の合計に対する前記第1ポリマー相の面積割合が10〜90%の範囲内であることを特徴とする電子写真機器用導電性部材。
  2. 前記界面相の厚みが、10〜1000nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用導電性部材。
  3. 前記相溶化剤が、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ブロック、ポリイソプレンブロック、変性天然ゴム成分からなるブロック、変性ポリイソプレン成分からなるブロックのうちの少なくとも1種のブロックを有するポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性部材。
  4. 前記相溶化剤が、前記第1ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分と前記第2ポリマー相に含まれるポリマーの構成成分の両方を含むポリマーからなることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性部材。
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