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JP6636307B2 - 高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体 - Google Patents

高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体 Download PDF

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Description

本発明は高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体に関するものである。
アルミナ焼結体は、耐食性、耐熱性に優れ、他のセラミックスに比べて安価で取り扱いが容易であるため、古くから高温部材、熱処理用容器、セッター、炉芯管、測温用保護管等の分野で使用されている。
最近ではリチウム2次電池用正極材、電子材料や蛍光体材料等の熱処理用としても使用されているが、急速昇温、降温等の過酷な条件で使用されるケースが多い。また、熱処理の効率化のため、1度に多くの処理物が熱処理されており、従来品よりも大きな熱処理用部材が必要とされているが、このような大型熱処理用部材にかかる負荷は、小型熱処理用部材にかかる負荷よりも大きい。そこで、過酷な条件でも使用可能な、高温強度、クリープ特性、熱衝撃抵抗性等の高温特性に優れたアルミナ製熱処理用部材が要求されている。また、アルミナ製熱処理用部材の場合、繰り返し使用され高温環境に置かれる時間が長くなると、アルミナ粒子が粒成長し、特性の低下や特性のバラツキが大きくなる。そこで、長時間高温環境に置かれても粒成長しにくい、熱安定性に優れたアルミナ製熱処理用部材が要求されている。
しかし、従来のアルミナ焼結体は、該焼結体に含まれる不純物により結晶粒界に第2相やガラス相を有するため、温度の上昇に伴って高温強度、クリープ特性が低下するだけでなく、耐食性が低いという問題を有している。
従来技術として、特許文献1には、アルミナを主成分とし、ジルコニア、マグネシア、カルシアの含有量が0.05〜10重量%で、最大結晶粒径が30μm以下のアルミナ焼結体が開示されている。しかし、アルミナ焼結体にジルコニアが含まれていると、高温での機械的特性や耐食性が低下するという問題があり、カルシアが含まれていると、異常粒成長により強度が低下するという問題がある。また、シリカは高温特性だけでなく耐食性にも大きく影響を与える不純物であって、特性を左右する重要な因子であるが、シリカ量を制御する必要性については全く記載されていない。
また、特許文献2には、アルミナ含有量が99.8重量%以上、平均結晶粒径が2μm以上で、高温での耐クリープ性に優れたアルミナ焼結体が開示されている。しかし、このアルミナ焼結体は、アルミナが高純度で、かつ添加する焼結助剤量が0.2重量%以下と非常に少ないため、焼成時にアルミナ粒子が異常成長し易く、結晶粒径が不均一となり、高温特性や耐食性の低下及びバラツキが大きくなるといった問題がある。また、アルミナ焼結体を高温下で使用する場合には、熱衝撃抵抗性がアルミナ焼結体の寿命を左右するにも関わらず、熱衝撃抵抗性について全く記載されていない。
また、特許文献3には、α−Al及びその粒界に分散しているMgAlスピネルよりなる焼結体において、上記スピネルの粒径が0.1μm以下で、その含有量がマグネシア換算で1.5〜3.0重量%である耐熱セラミックスが開示されている。しかし、MgAlスピネルはアルミナよりも耐食性は高いが熱衝撃抵抗性が低いため、MgAlスピネル相を多く含有すると、熱衝撃抵抗性が低下し、様々な用途に適用可能な耐熱材料にはならない。また、同じ温度差でも、アルミナ焼結体のサイズが大きくなるに伴い、生じる熱衝撃は大きくなるため、上記のようなMgAlスピネルを多く含有する熱衝撃抵抗性が低いセラミックスは、大型化が難しいという問題がある。
特開2004−107193号公報 特許第3130987号公報 特許第2879169号公報
本発明は、高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体の提供を目的とする。
本発明者らは、前述したような現状に鑑み、アルミナ焼結体の化学組成、微構造に着目して鋭意研究を重ねた結果、焼結助剤としてマグネシアを用い、マグネシア添加量及び高温特性や耐食性を低下させる不純物量を一定の範囲とし、平均結晶粒径を特定の範囲内にすると共に、アルミナ粒子の粒界にMgAlスピネル粒子を特定の割合で生成させることにより、高温強度、耐クリープ性、熱衝撃抵抗性、熱安定性等の高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、上記課題は、次の1)〜3)の発明によって解決される。
1) 次の要件<1>〜<7>を満たすことを特徴とするアルミナ焼結体。
<1>アルミナ含有量が98.3重量%以上
<2>マグネシア含有量が0.1〜1.0重量%
<3>シリカ含有量が0.10重量%以下
<4>マグネシアとシリカの重量比(マグネシア/シリカ)が2.0以上
<5>かさ密度が3.85g/cm以上
<6>平均結晶粒径が3〜20μm
<7>MgAlスピネルとアルミナの結晶相量の比(MgAlスピネル/アルミナ)が0.01〜0.07
2) 次の要件<8>を満たすことを特徴とする1)記載のアルミナ焼結体。
<8>アルミナ結晶粒径の分布の変動係数が20%以下
3) 次の要件<9>を満たすことを特徴とする1)又は2)記載のアルミナ焼結体。
<9>ジルコニア含有量が0.10重量%以下、カルシア含有量が0.5重量%以下
本発明によれば、高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体を提供できる。
このアルミナ焼結体は、高温特性及び耐食性に優れるので、リチウム2次電池正極材料の合成、蛍光体材料の合成、圧電体、誘電体、磁性体、セラミックコンデンサー等の電子部品の焼成用部材として好適である。更に、金属及び合金の溶解用ルツボとしても好適である。更に、優れた熱衝撃抵抗性を有するので、各種電気炉用炉芯管、高温搬送用ローラー、サポートチューブ、ラジアンとチューブ、ガス吹込管、ガス採取管にも好適である。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
・要件<1>について
本発明では、アルミナ含有量を98.3重量%以上とする。好ましくは99.1重量%以上である。アルミナ含有量が98.3重量%未満の場合は、アルミナ粒子の粒界に第2相及びガラス相が多くなって耐食性が低下する上に、機械的特性、特に高温下での強度やクリープ特性が低下する。また、使用する原料に含まれる不純物量や原料処理中に混入する不純物量を考慮すると、上限は99.8重量%程度である。
・要件<2>について
本発明では、焼結助剤としてマグネシアを0.1〜1.0重量%含有させる。好ましくは0.2〜0.7重量%である。マグネシア含有量が前記範囲であると、焼成時にマグネシアがアルミナ粒子の異常粒成長を抑制するため、結晶粒径が均一なアルミナ焼結体が得られる。更に、アルミナ粒子の粒界にMgAlスピネル粒子が生成して耐食性が向上し、粒界が強化されて、高温強度、耐クリープ性、熱衝撃抵抗性、熱安定性等の高温特性が向上する。マグネシア含有量が0.1重量%未満の場合は、生成するMgAlスピネル粒子の量が少なく、高温特性及び耐食性を向上させる効果が小さい上に、焼成時にマグネシアがアルミナ粒子の異常粒成長を抑制する効果が小さいため、結晶粒径が大きくなり、更には粒径分布のバラツキも大きくなり、機械的特性が低下する。また、マグネシア含有量が1.0重量%を超えると、アルミナ粒子粒界に第2相やガラス相が多く形成されて耐食性が低下するし、アルミナ焼結体に含まれる、熱衝撃抵抗性が低いMgAlスピネル粒子が多くなったり大きくなったりするため、母材であるアルミナ焼結体の熱衝撃抵抗性が低下する。
・要件<3>について
本発明では、不純物であるシリカを0.10重量%以下とする。好ましくは0.07重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下である。シリカが0.10重量%を超えると、結晶粒界にシリカ以外の不純物とのガラス相や第2相を形成しやすくなり、耐食性の低下及び、高温強度や耐クリープ性、熱安定性等の高温特性の低下が起こる。特にシリカは、圧電体等に使用される鉛との反応性が高いため、鉛を使用する分野では極力シリカ含有量を減らし、鉛に対する耐食性を向上させることが望ましい。
・要件<4>について
本発明ではマグネシアとシリカの重量比(マグネシア/シリカ)を2.0以上とする。マグネシア含有量0.1〜1.0重量%、かつシリカ含有量0.10重量%以下という要件を満たしても、前記重量比が2.0未満の場合は、シリカとその他の成分でガラス相や第2相が多く形成され、MgAlスピネル粒子による高温強度、耐クリープ性、熱安定性等の高温特性及び耐食性向上の効果よりも、ガラス相や第2相による耐食性及び高温特性の低下の影響が著しくなる。また、シリカは高温特性を低下させる不純物であるから含有量は極力少ない方が望ましい。したがって、マグネシア/シリカの重量比が無限大に近付く可能性があるが、どれだけ大きい値になっても、得られるアルミナ焼結体の特性に悪影響を及ぼすことはないから、前記重量比に上限はない。
・要件<5>について
本発明では、アルミナ焼結体のかさ密度を3.85g/cm以上とする。好ましくは3.90g/cm以上である。かさ密度が3.85g/cm未満の場合は、焼結体内部に気孔が多く存在することになり、強度及び熱衝撃抵抗性の低下を引き起こす。また、気孔が起点となって腐食及び反応が進行し易くなるため耐食性の低下が起こる。アルミナ焼結体のかさ密度は理論上最大で3.99g/cmであるが、実際の上限は3.98g/cm程度である。かさ密度はJIS R 1634に準拠して測定する。
・要件<6>について
本発明では、アルミナ焼結体の平均結晶粒径を3〜20μmとする。好ましくは、5〜15μmである。平均結晶粒径が3μm未満の場合は、耐食性が低下し、特に高温下での耐クリープ性が低下する。一方、20μmを超えると、強度等の機械的特性が低下する。
なお、平均結晶粒径はアルミナ焼結体を鏡面研磨し、熱エッチングを施した後、走査型電子顕微鏡で、1視野にアルミナ粒子が100個以上入るように設定した倍率で観察し、インターセプト法による10点平均から下式により求めた。

D=1.8×L/n
[D:平均結晶粒径(μm)、L:測定長さ(μm)、n:長さL当たりの結晶の数]
・要件<7>について
本発明では、アルミナ焼結体中にMgAlスピネル粒子を含有する必要がある。アルミナ粒子の粒界にMgAlスピネル粒子が存在することにより耐食性が向上し、粒界が強化されて高温強度、耐クリープ性、熱衝撃抵抗性、熱安定性等の高温特性が向上する。更に本発明では、アルミナ焼結体中に存在するMgAlスピネルとアルミナの結晶相量比(MgAlスピネル/アルミナ)が0.01〜0.07である必要があり、好ましくは0.02〜0.05の範囲である。マグネシア含有量0.1〜1.0重量%という要件<2>を満たしていても、前記比が0.01未満の場合は、アルミナ粒子の粒界に存在するMgAlスピネル粒子が少ないため、高温強度、耐クリープ性、熱衝撃抵抗性等の高温特性及び耐食性を向上させる効果が小さい上に熱安定性も著しく低下する。また、前記比が0.07を超えると、アルミナ粒子の粒界に存在するMgAlスピネル粒子が多くなったり大きくなったりする。MgAlスピネルはアルミナよりも熱衝撃抵抗性が低いため、MgAlスピネル粒子を多く含有するアルミナ焼結体は熱衝撃抵抗性が低下する。また、MgAlスピネル粒子のサイズは5μm以下が好ましく、5μmを超えるMgAlスピネル粒子を含有するアルミナ焼結体は熱衝撃抵抗性が低下する。上記MgAlスピネル粒子のサイズは、アルミナ焼結体を鏡面研磨し、熱エッチングを施した後、走査型電子顕微鏡で、1視野にアルミナ粒子が100個以上入るように設定した倍率で観察及びEDX分析し、マグネシアとアルミナが共存している粒子をMgAlスピネル粒子と定義し、MgAlスピネル粒子10個の最大径の平均から求めた。
なお、本発明でアルミナ焼結体中にMgAlスピネル粒子を含有するとは、アルミナ焼結体を研磨し、その鏡面を、X線源CuKα、管電圧40kV、管電流40mA、発散スリット0.3°、受光側スリットOPEN、スキャンスピード3.0°/min、走査軸2θ/θ、走査範囲10°〜70°の条件で、XRD(X線回折)測定した際に、アルミナ以外にMgAlスピネルの回折ピークが観測されることを言う。
そして、アルミナ焼結体中に存在するMgAlスピネル結晶相量とアルミナの結晶相量の比は、上記測定で得られたMgAlスピネル結晶相の(311)面ピークとアルミナ結晶相の(113)面ピークの強度比(次式参照)より求めた。

結晶相量の比=MgAlスピネルの(311)面のピーク強度/
アルミナの(113)面のピーク強度
・要件<8>について
本発明では、アルミナ結晶粒径の分布の変動係数が20%以下であることが好ましい。変動係数は、結晶粒径の標準偏差を平均結晶粒径で割った値(次式参照)である。

変動係数(%)=(アルミナ結晶粒径の標準偏差/アルミナの平均結晶粒径)×100

変動係数が20%より大きいとは、結晶粒径の分布が広いことを意味し、結晶粒径が小さい部分と大きい部分が存在し、結晶粒径が小さい部分は耐食性の低下、特に耐クリープ性の低下を引き起こし、結晶粒径が大きい部分は曲げ強度や熱衝撃抵抗性の低下を引き起こすので好ましくない。
・要件<9>について
シリカ以外の不純物もアルミナ焼結体の高温特性及び耐食性を低下させるため、少ない方が好ましい。中でも、ジルコニアは0.10重量%以下が好ましく、0.05重量%以下がより好ましく、0.01重量%以下が更に好ましい。0.10重量%を超えると、高温での機械的特性の低下や耐食性の低下を引き起こす可能性があるので好ましくない。
更に、カルシアは0.5重量%以下が好ましく、0.3重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下が更に好ましい。0.5重量%を超えると、アルミナ粒子の異常粒成長を助長し、結晶粒径が大きくなり、更には粒径分布のバラツキが大きくなり、機械的特性の低下を引き起こす可能性があるので好ましくない。
本発明のアルミナ焼結体は次のようにして製造できる。
アルミナ原料には、純度99.7重量%以上、好ましくは99.8重量%以上、平均粒子径3μm以下、好ましくは2μm以下、比表面積3〜10m/g、好ましくは4〜8m/gのものを使用する。平均粒子径が3μmより大きく、比表面積が3m/gより小さい粉体は成形性が低く、そのため焼結体内部に欠陥が生じやすく、強度及び耐食性が低下するので好ましくない。また、比表面積が10m/gより大きい粉体は、焼成時に異常粒成長を起こし易いため、アルミナ焼結体の微構造が不均一になり、高温特性及び耐食性が低下するので好ましくない。
焼結助剤としては、純度98重量%以上、好ましくは99重量%以上、平均粒子径5μm以下、比表面積5m/g以上のマグネシア粉体が使用可能であるが、均一分散性等の点から、平均粒子径8μm以下、比表面積10m/g以上で、酸化物にした場合の純度が98重量%以上の水酸化物、炭酸化物等の塩、又は、平均粒子径3μm以下、比表面積5m/g以上のMgAlスピネル粉体が好ましい。
これらの粉体の平均粒子径や比表面積が上記範囲を外れると、粉砕・分散混合においてアルミナ粉体への混合分散性が低下し、焼結体に含まれるMgAlスピネル相量やMgAlスピネル粒子サイズが所定の範囲にならず、耐食性及び高温特性が低下したりバラツキが大きくなるため好ましくない。
アルミナ原料に対し、所定の量及び組成になるように焼結助剤を添加し、水を溶媒として湿式でポットミル、アトリッションミル等により高純度アルミナボールを用いて粉砕・分散混合する。粉砕・分散混合後の粉体の平均粒子径は0.4〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.0μmとする必要がある。平均粒子径が上記範囲を外れると、成形性の低下や焼結性の低下を来たし、焼結体内部にポア等の欠陥が多くなり、機械的特性及び耐食性が低下するので好ましくない。また、粉砕・分散混合により、ミル、ボール等からの不純物の混入があるため、不純物混入量が極力少なくなるように粉砕・分散混合条件を適宜設定し、得られる粉体の平均粒子径及び不純物量が特定の範囲内になるようにする。
成形方法としてプレス成形、ラバープレス成形等を採用する場合には、分散・混合スラリーに、必要に応じて公知の成形助剤(例えばワックスエマルジョン、PVA、アクリル系樹脂等)を加え、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥させて成形粉体を作製し、これを用いて成形する。
また、鋳込成形法を採用する場合には、分散・混合スラリーに、必要に応じて公知の成形助剤(ワックスエマルジョン、アクリル系樹脂等)を加え、石膏型又は樹脂型を用いて排泥鋳込、充填鋳込、加圧鋳込法により成形する。
また、押出成形法を採用する場合には、分散・混合したスラリーを乾燥させ、整粒し、混合機を用いて水、バインダー(例えばメチルセルロース等)などを混合して坏土を作製し、押出成形する。
以上のようにして得られた成形体を1500℃〜1750℃、好ましくは1550℃〜1700℃で焼成することによって、本発明の高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体が得られる。焼成温度が上記範囲外の場合、得られるアルミナ焼結体は、本発明の要件を少なくとも1つ以上満たさなくなるため、本発明の高温特性及び耐食性に優れたアルミナ焼結体が得られない。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。
実施例1〜14、比較例1〜11
平均粒子径0.8μm、比表面積6m/g、アルミナ純度99.8重量%のアルミナ原料に、焼結助剤のマグネシア源である水酸化マグネシウム(比表面積32m/g)を、表1の実施例及び比較例の各欄に示すようなマグネシア含有量となるように添加配合し、92重量%アルミナ製ポットミル及びボールを用いて粉砕・混合した。得られたスラリーにバインダーとしてアクリル樹脂を添加し、スプレードライヤー乾燥して成形用粉体を作製した。得られた成形用粉体を成形圧100MPaでCIP成形し、大気中、1480〜1780℃で2時間焼成した。得られたアルミナ焼結体を研削加工し、曲げ試験用テストピース(3mm×4mm×50mm)、クリープ試験用テストピース(2mm×5mm×140mm)、熱衝撃試験用テストピース(5mm×6mm×50mm)、熱安定性試験用テストピース(20mm×20mm×5mm)、耐PbO性試験用テストピース(15mm×15mm×2mm)を作製した。テストピースの表面粗さは0.20μmRa以下とした。
なお、比較例5では、粉砕・分散混合に使用するボールとしてジルコニアボールを使用した。
また、比較例9では、平均粒子径3.5μmのアルミナ原料を使用したため、粉砕・分散混合後の粉体平均粒子径が1.59μmと、所定の範囲を超えていた。
実施例及び比較例の原料特性を表1に、焼結体特性を表2に示す。各特性の測定方法は以下のとおりである。

<原料特性>
アルミナ含有量、マグネシア含有量及び不純物含有量は、島津製作所社製ICP発光分析装置ICPS−8100を用いて測定した。粉砕・混合後の粉体の平均粒子径は、日機装社製マイクロトラック3300EXを用いて測定した。

<焼結体特性>
かさ密度は、JIS R 1634に準拠し、メトラー・トレド社製電子天秤XP205DRを用いて測定した。
平均結晶粒径は、アルミナ焼結体を鏡面研磨し、熱エッチングを施した後、日立ハイテクノロジーズ社製の電界放出形走査電子顕微鏡SU8020を用いてインターセプト法により求めた。また、得られた平均結晶粒径及び標準偏差から、結晶粒径の分布の変動係数(結晶粒径変動係数)を求めた。
MgAlスピネル/アルミナ結晶相量比は、ブルカー・エイエックスエス社製X線回折装置D8ADVANCEを用いて測定した。
上記実施例及び比較例の各試験用テストピースを用いて、下記のテストを行った。
結果を纏めて表2に示す。

<曲げ強さ>
室温ではJIS R 1601に準拠し、1400℃(高温)ではJIS R 1604に準拠し曲げ試験を行い、曲げ強さ(MPa)を測定した。室温での曲げ強さの測定にはINSTRON社製の万能材料試験機5965型を用い、高温での曲げ強さの測定には島津製作所製の精密万能試験機AG−500Cを用いた。
<耐クリープ性>
支点間距離100mmで固定したテストピースの中央に、負荷応力が2MPaになるように長さ31mmのアルミナ焼結体からなるオモシを載せ、電気炉を用いて大気中、1450℃で2時間加熱し、加熱後のテストピースのたわみ量(mm)を測定した。測定にはMITUTOYO社製のLINEAR GAGE LG−150を用いた。
<熱衝撃抵抗性>
テストピースを大気中で100〜230℃に保持した電気炉に挿入し、30分保持した後、10℃の水中へ投入し、30分後に水中からテストピースを取り出して室温での曲げ試験を行い、曲げ強さが低下する温度差〔ΔT(℃)〕を測定した。なおΔT(℃)は次式により求めた。

ΔT(℃)=電気炉での加熱温度(℃)−水温(℃)
<熱安定性>
テストピースを、電気炉を用いて、大気中、1500℃で100時間加熱した。加熱前後のテストピースをそれぞれ鏡面研磨し、熱エッチングを施した後、走査型電子顕微鏡を用いてインターセプト法により、加熱前後のアルミナ粒子の平均結晶粒径を求め、次式により粒成長率(%)を算出した。微構造の観察には、日立ハイテクノロジーズ社製の電界放出形走査電子顕微鏡SU8020を用いた。

粒成長率(%)=〔(加熱後平均結晶粒径−加熱前平均結晶粒径)/
加熱前平均結晶粒径〕×100
<耐PbO性>
テストピースにφ12mm×1mmのPbO成形体を載せ、その上に、荷重が0.5×10Paになるように高純度ZrO焼結体からなるオモシを載せ、アルミナ焼結体からなる容器で密閉し、電気炉を用いて、大気中、870℃で20時間の加熱を3サイクル行い、加熱前後のテストピースの重量を測定して、次式により重量変化率を算出した。
測定にはsartorius社製の電子天秤LC1201Sを用いた。

重量変化率(%)=
〔(加熱後テストピース重量−加熱前テストピース重量)/加熱前テストピース重量〕
×100
Figure 0006636307
Figure 0006636307
上記表1、表2から分かるように、本発明のアルミナ焼結体は、マグネシア源添加量の制御によりアルミナ粒子の粒界にMgAlスピネル粒子が生成し、それにより粒界が強化されて高温強度、耐クリープ性、熱衝撃抵抗性等の高温特性が向上し、更に粒界にMgAlスピネル粒子が存在し且つ粒界の不純物が少ないため、高い耐食性を有している。
したがって、耐熱及び耐食材料として有用であり、更に、高温下での結晶粒成長が非常に小さく熱安定性に優れるため、熱処理用部材として長寿命を有している。
これに対し、本発明の要件<1>〜<7>を一つ以上満たさないアルミナ焼結体は高温特性及び耐食性が劣る。
即ち、比較例1、2は、マグネシア含有量が要件<2>の範囲外の例である。
比較例3は、マグネシア含有量が要件<2>の下限値に近く且つ焼成温度が1500℃より低かったため、MgAlスピネル粒子の生成量が少なくなり、MgAlスピネル/アルミナの結晶相量比が要件<7>の範囲より小さくなった例である。
比較例4は、マグネシア含有量が要件<2>の上限値に近く且つ焼成温度が1750℃より高かったため、MgAlスピネル粒子の生成量が多くなり、MgAlスピネル/アルミナの結晶相量比が要件<7>の範囲より大きくなった例である。
比較例5は、アルミナ原料及び水酸化マグネシウムを粉砕・分散混合する際に、アルミナボールではなくジルコニアボールを使用したため、ミル容器や粉砕ボールからシリカやジルコニアが混入して含有量が増加した例である。
比較例6は、アルミナ原料及び水酸化マグネシウムを粉砕・分散混合する際に、シリカ含有量が要件<3>の範囲より多くなるようにシリカを添加した例である。
比較例7は、アルミナ原料及び水酸化マグネシウムを粉砕・分散混合する際に、カルシア含有量が0.5重量%より多くなるようにカルシアを添加したため、アルミナ含有量が要件<1>の範囲よりも少なくなった例である。
比較例8は、マグネシア及びシリカ含有量は要件<2><3>の範囲内であるが、マグネシア/シリカの重量比が要件<4>の範囲より小さい例である。
比較例9は、平均粒子径の大きいアルミナ原料を使用したため、粉砕・分散混合後の粉体平均粒子径が大きく、且つ、焼成温度が1500℃より低かったため、かさ密度が要件<5>の範囲より小さくなった例である。
比較例10は、焼成温度が1500℃より低かったため、アルミナ結晶粒子の平均結晶粒径が要件<6>の範囲より小さくなった例である。
比較例11は、焼成温度が1750℃より高かったため、アルミナ結晶粒子の平均結晶粒径が要件<6>の範囲より大きくなった例である。

Claims (3)

  1. 次の要件<1>〜<7>を満たすことを特徴とするアルミナ焼結体。
    <1>アルミナ含有量が98.3重量%以上
    <2>マグネシア含有量が0.1〜1.0重量%
    <3>シリカ含有量が0.10重量%以下
    <4>マグネシアとシリカの重量比(マグネシア/シリカ)が2.0以上
    <5>かさ密度が3.85g/cm以上
    <6>平均結晶粒径が3〜20μm
    <7>MgAlスピネルとアルミナの結晶相量の比(MgAlスピネル/アルミナ)が0.01〜0.07
  2. 次の要件<8>を満たすことを特徴とする請求項1記載のアルミナ焼結体。
    <8>アルミナ結晶粒径の分布の変動係数が20%以下
  3. 次の要件<9>を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載のアルミナ焼結体。
    <9>ジルコニア含有量が0.10重量%以下、カルシア含有量が0.5重量%以下
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