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JP6631460B2 - シリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶 - Google Patents

シリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶 Download PDF

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Description

本発明は、シリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶に関する。
近年、低電気抵抗率のシリコン単結晶が求められている。このようなシリコン単結晶の製造方法としてn型ドーパントを高濃度に添加する方法があるが、単結晶化が阻害される場合があり、この不具合を抑制する検討がなされている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、ドーパントを大量に添加すると、凝固点降下度が非常に大きくなって組成的過冷却現象が生じ、この組成的過冷却が大きいと、結晶成長界面でシリコン成長面とは異なる異常成長(Cell成長)が始まり、この異常成長により単結晶化が阻害されると開示されている。
特許文献1の製造方法では、シリコン融液内の温度勾配を直接測定できない点に鑑み、その代わりに用いるシリコン単結晶側の温度勾配と、シリコン融液中のドーパント濃度と、引き上げ速度と、ドーパントの種類に応じた係数とが所定の関係を満たすように、シリコン単結晶を製造する。
特開2008−297167号公報
しかしながら、シリコン単結晶を製造していると、結晶成長の早い段階で有転位化が発生して単結晶化が阻害される場合があり、特許文献1の方法を用いても、この不具合を抑制できないことがあった。
本発明の目的は、品質が安定したシリコン単結晶を製造可能なシリコン単結晶の製造方法およびシリコン単結晶を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
シリコン単結晶の内部には、成長縞が発生する。この成長縞は、平面状ではなく、シリコン単結晶製造時の固液界面の形状に対応する曲面状、例えば中心が上方向に凹む曲面状に発生する。シリコン単結晶周囲のシリコン融液表面温度が安定している場合、成長縞の形状はほぼ同じになる。
しかし、シリコン融液表面には、このシリコン融液の対流に加え、パージガスによる抜熱やドーパント蒸発による気化熱など、温度が不安定になる要素が多い。シリコン融液表面温度が不安定になり固液界面に高温のシリコン融液が入り込むと、シリコン単結晶が溶かされ(リメルトが起こり)再度固化し、例えば中心が下方向に凹む曲面状の成長縞が発生する。その結果、図1に示すように、上方向に凹みかつ直胴部の径方向全域に発生した成長縞のうち最下部の成長縞P1と、この成長縞P1の下側に発生し下方向に凹む成長縞のうち最上部の成長縞P2との間、かつ、シリコン単結晶SMの直胴部の外周部に、リメルト成長領域Aが形成されることを知見した。特に、直胴部における肩部側の領域に、リメルト成長領域Aが形成されることを知見した。
そして、リメルト成長領域Aの発生状況と有転位化の発生状況との関係を調べたところ、高さの最大値H(以下、単に「高さ」と言う)が200μm以上のリメルト成長領域Aが発生している場合、直胴部に有転位化が発生していることを知見した。一方、高さHが200μm以上のリメルト成長領域Aが発生していない場合、直胴部全体に有転位化が発生していないことを知見した。
本発明は、上述のような知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明のシリコン単結晶の製造方法は、チャンバと、このチャンバ内に配置された坩堝と、前記坩堝を加熱することで、シリコン融液にドーパントが添加されたドーパント添加融液を生成する加熱部と、種結晶を前記ドーパント添加融液に接触させた後に引き上げる引き上げ部とを備えた単結晶引き上げ装置を利用したチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法であって、前記シリコン単結晶の直胴部を形成する直胴部形成工程は、前記直胴部の径方向全域に発生する成長縞のうち、その外縁部が直胴部の外周部まで伸びずに別の成長縞で中断されている成長縞で構成され、かつ、育成方向の高さが200μm以上のリメルト成長領域が発生しないように、前記直胴部を形成することを特徴とする。
本発明によれば、直胴部全体に有転位化が発生せず、品質が安定したシリコン単結晶を製造できる。
本発明の他のシリコン単結晶の製造方法は、チャンバと、このチャンバ内に配置された坩堝と、この坩堝を加熱することで、シリコン融液に赤リンまたは砒素がドーパントとして添加されたドーパント添加融液を生成する加熱部と、種結晶を前記ドーパント添加融液に接触させた後に引き上げる引き上げ部とを備えた単結晶引き上げ装置を利用したチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法であって、前記シリコン単結晶における設定直径が200mm以上の直胴部を形成する直胴部形成工程は、前記直胴部の形成開始時に前記坩堝を9rpm以上で回転させることを特徴とする。
直胴部形成工程での一般的な坩堝の回転速度は0.1rpm以上7rpm以下だが、本発明によれば、直胴部の形成開始時に坩堝を上述のように比較的高速で回転させることで、シリコン融液の対流を抑制し、シリコン融液表面の温度変化を抑制できる。したがって、坩堝の回転速度を調整するだけで温度の不安定化によるリメルトを抑制でき、直胴部の肩部側(引き上げ方向上端側)の領域におけるリメルト成長領域Aの発生も抑制できる。その結果、直胴部全体に有転位化が発生せず、品質が安定したシリコン単結晶を製造できる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記直胴部形成工程は、前記直胴部の形成開始後における所定のタイミングから前記坩堝の回転速度を遅くすることが好ましい。
直胴部形成工程全体において9rpm以上で坩堝を回転させると、直胴部における引き上げ方向上端側以外の領域で、直胴部の面内の酸素濃度分布や電気抵抗率分布などの悪化を招くおそれがある。
本発明によれば、直胴部形成工程開始後の所定のタイミングから坩堝の回転速度を遅くすることで、直胴部全体の有転位化に加えて、酸素濃度分布や電気抵抗率分布などの悪化を抑制できる。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記直胴部形成工程は、前記ドーパントが砒素、設定直径が300mm、電気抵抗率が1.6mΩ・cm以上2.8mΩ・cm以下の前記直胴部を形成することが好ましい。
また、本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記直胴部形成工程は、前記ドーパントが赤リン、設定直径が300mm、電気抵抗率が0.7mΩ・cm以上1.5mΩ・cm以下の前記直胴部を形成することが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の製造方法において、前記単結晶引き上げ装置は、前記ドーパント添加融液に磁場を印加する電磁コイルを備え、前記直胴部形成工程は、前記直胴部を前記ドーパント添加融液に磁場を印加しながら形成することが好ましい。
本発明によれば、ドーパント添加融液への磁場の印加でドーパント添加融液の自然対流を抑制することで、直胴部全体における有転位化抑制効果を高めることができる。
本発明のシリコン単結晶は、砒素をドーパントとして含有する直胴部を備えたシリコン単結晶であって、直胴部の径方向全域に発生する成長縞のうち、その外縁部が直胴部の外周部まで伸びずに別の成長縞で中断されている成長縞で構成され、かつ、育成方向の高さが200μm以上のリメルト成長領域が0個であり、前記直胴部の設定直径は、200mmであり、前記直胴部の電気抵抗率は、1.4mΩ・cm以上2.4mΩ・cm以下であることを特徴とする。
本発明の他のシリコン単結晶は、砒素をドーパントとして含有する直胴部を備えたシリコン単結晶であって、直胴部の径方向全域に発生する成長縞のうち、その外縁部が直胴部の外周部まで伸びずに別の成長縞で中断されている成長縞で構成され、かつ、育成方向の高さが200μm以上のリメルト成長領域が0個であり、前記直胴部の設定直径は、300mmであり、前記直胴部の電気抵抗率は、1.6mΩ・cm以上2.8mΩ・cm以下であることを特徴とする。
本発明のさらに他のシリコン単結晶は、赤リンをドーパントとして含有する直胴部を備えたシリコン単結晶であって、直胴部の径方向全域に発生する成長縞のうち、その外縁部が直胴部の外周部まで伸びずに別の成長縞で中断されている成長縞で構成され、かつ、育成方向の高さが200μm以上のリメルト成長領域が0個であり、前記直胴部の設定直径は、200mmであり、前記直胴部の電気抵抗率は、0.6mΩ・cm以上1.2mΩ・cm以下であることを特徴とする。
本発明のさらに他のシリコン単結晶は、赤リンをドーパントとして含有する直胴部を備えたシリコン単結晶であって、直胴部の径方向全域に発生する成長縞のうち、その外縁部が直胴部の外周部まで伸びずに別の成長縞で中断されている成長縞で構成され、かつ、育成方向の高さが200μm以上のリメルト成長領域が0個であり、前記直胴部の設定直径は、300mmであり、前記直胴部の電気抵抗率は、0.7mΩ・cm以上1.5mΩ・cm以下であることを特徴とする。
リメルト成長領域の概略構成を示す図。 本発明の一実施形態に係る単結晶引き上げ装置の構成を示す模式図。 前記一実施形態の製造条件を示す図。 本発明の実施例における実験1の製造条件を示す図。 前記実施例における実験2のリメルト成長領域の高さとその個数との関係を示すグラフであり、比較例1、実施例1,2の結果を表す。 前記実験2のリメルト成長領域の高さとその個数との関係を示すグラフであり、比較例3、実施例6の結果を表す。
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
〔単結晶引き上げ装置の構成〕
図2に示すように、単結晶引き上げ装置1は、CZ法(チョクラルスキー法)に用いられる装置であって、引き上げ装置本体2と、制御部3とを備えている。
引き上げ装置本体2は、チャンバ21と、このチャンバ21内の中心部に配置された坩堝22と、この坩堝22を加熱する加熱部23と、断熱筒24と、引き上げ部としての引き上げケーブル25と、熱遮蔽体26とを備えている。
チャンバ21の上部には、Arガスなどの不活性ガスをチャンバ21内に導入するガス導入口21Aが設けられている。チャンバ21の下部には、図示しない真空ポンプの駆動により、チャンバ21内の気体を排出するガス排気口21Bが設けられている。
チャンバ21内には、制御部3の制御により、チャンバ21上部のガス導入口21Aから、不活性ガスが所定のガス流量で導入される。そして、導入されたガスが、チャンバ21下部のガス排気口21Bから排出されることで、不活性ガスがチャンバ21内の上方から下方に向かって流れる構成となっている。
チャンバ21内の圧力(炉内圧)は、制御部3により制御可能となっている。
坩堝22は、シリコンウェーハの原料である多結晶のシリコンを融解し、シリコン融液Mとするものである。坩堝22は、所定の速度で回転および昇降が可能な支持軸27に支持されている。坩堝22は、有底円筒形状の石英坩堝221と、この石英坩堝221を収納する炭素素材製の支持坩堝222とを備えている。
加熱部23は、坩堝22の周囲に配置されており、坩堝22内のシリコンを融解する。加熱部23は、坩堝22の側面の上部を加熱する上加熱部231と、上加熱部231の下方に配置され、坩堝22の側面の下部を加熱する下加熱部232とを備えている。
断熱筒24は、坩堝22および加熱部23を取り囲むように配置されている。
引き上げケーブル25は、一端が、坩堝22上方に配置された図示しない引き上げ駆動部に接続され、他端に、種結晶SCが取り付けられる。引き上げケーブル25は、制御部3による引き上げ駆動部の制御により、所定の速度で昇降するとともに、当該引き上げケーブル25の軸を中心にして回転する。
熱遮蔽体26は、加熱部23から上方に向かって放射される輻射熱を遮断する。
制御部3は、メモリ31に記憶された情報や作業者の設定入力などに基づいて、チャンバ21内のガス流量や炉内圧、加熱部23による坩堝22の加熱温度、坩堝22やシリコン単結晶SMの回転数などを制御して、シリコン単結晶SMを製造する。
〔シリコン単結晶の製造方法〕
次に、シリコン単結晶SMの製造方法について説明する。
なお、本実施形態では、直胴部の設定直径Rが200mmのシリコン単結晶SMを製造する場合を例示するが、300mm、450mmなど、他の設定直径のシリコン単結晶SMを製造してもよい。
まず、単結晶引き上げ装置1の制御部3は、シリコン単結晶SMの製造条件、例えば電気抵抗率、酸素濃度、Ar流量、炉内圧、坩堝22やシリコン単結晶SMの回転数、上加熱部231と下加熱部232との加熱比などを設定する。製造条件は、作業者が入力したものであってもよいし、作業者が入力した目標の酸素濃度などに基づき制御部3が演算して求めたものであってもよい。
電気抵抗率は、ドーパントが砒素の場合、1.4mΩ・cm以上2.4mΩ・cm以下にすることが好ましく、ドーパントが赤リンの場合、0.6mΩ・cm以上1.2mΩ・cm以下にすることが好ましい。
なお、直胴部の設定直径Rが300mmの場合、ドーパントが砒素のときには、1.6mΩ・cm以上2.8mΩ・cm以下にすることが好ましく、ドーパントが赤リンの場合、0.7mΩ・cm以上1.5mΩ・cm以下にすることが好ましい。
また、本実施形態では、シリコン単結晶SMの全製造工程において加熱比を1、すなわち坩堝22の上部と下部との加熱量が同じになるように設定するが、1以上4以下のいずれの値に設定してもよい。加熱比が1未満だと、すなわち下部の加熱量が上部よりも小さいと、坩堝22の底から固液界面下に向かう対流が強くならず、ドーパント添加融液MD表面から結晶に向かう液温が不安定な対流を弱くできないため、温度の不安定化による有転位化を抑制できないからである。一方、4を超えると、坩堝22下部の熱負荷が大きくなり、坩堝22の変形や石英の剥離が生じるおそれがあるからである。
次に、制御部3は、加熱比の設定値に基づき上加熱部231および下加熱部232を制御し、坩堝22を加熱することで、当該坩堝22内のポリシリコン素材(シリコン原料)およびドーパントを融解させ、ドーパント添加融液MDを生成する。その後、制御部3は、ガス導入口21Aからチャンバ21内にArガスを所定の流量で導入するとともに、チャンバ21内の圧力を減圧して、チャンバ21内を減圧下の不活性雰囲気に維持する。
その後、制御部3は、ネック部形成工程と、肩部形成工程と、直胴部形成工程と、テール部形成工程とを行う。
ネック部形成工程では、制御部3は、引き上げケーブル25を下降させることで種結晶SCをドーパント添加融液MDに浸漬して、坩堝22および引き上げケーブル25を所定の方向に回転させながら引き上げケーブル25を引き上げ、ネック部SM1を形成する。なお、ネック部形成工程での坩堝22の回転速度は、肩部形成工程初期と同じであることが好ましい。
肩部形成工程では、引き上げケーブル25をさらに引き上げ、肩部SM2を形成する。なお、肩部形成工程終了時における坩堝22の回転速度は、直胴部形成工程開始時と同じであることが好ましい。
直胴部形成工程では、直胴部SM3に図1に示すような高さHが200μm以上のリメルト成長領域Aが発生しないように、直胴部SM3を形成する。具体的には、制御部3は、図3に示すように、Sr1(Sr1≧9rpm)の回転速度で坩堝22を回転させながら、引き上げケーブル25を引き上げる。Sr1は、9rpm以上であればよいが、30rpm以下にすることが好ましい。30rpmを超えると、単結晶引き上げ装置1の稼動が安定しないうえ、直胴部SM3が変形するからである。なお、図3,4の横軸は、直胴部SM3の長さを示し、長さが0mmの位置が直胴部SM3の上端に対応する。
そして、直胴部形成工程開始直後に、回転速度を徐々に遅くし始める。この際、直胴部SM3の長さL1となるときに、直胴部の形成に適切なSr2となるように、回転速度を直線的に遅くする。
その後、回転速度をSr2に維持したまま直胴部SM3の形成を継続し、直胴部形成工程終了後、テール部形成工程を行い、シリコン単結晶SMの製造が終了する。
なお、L1は、50mm以上200mm以下にすることが好ましい。50mm未満の場合、プロセスの変化量が大きくなり有転位化のリスクが増加するおそれがある。一方、200mmを超えると、直胴部の狙ったプロセスにならない区間が増加し、その分狙った品質から外れるリスクが増加するおそれがある。
また、Sr2は、0.1rpm以上7rpm以下にすることが好ましい。0.1rpm未満だと、ドーパント添加融液MDが安定せず有転位化の原因となり、7rpmを超えると、シリコン単結晶SM面内の酸素濃度や電気抵抗率のばらつきが大きくなり、結晶品質が安定しないからである。
[実施形態の作用効果]
上記実施形態では、高さHが200μm以上のリメルト成長領域Aが直胴部SM3に発生しないように直胴部形成工程を行うため、直胴部SM3全体の有転位化発生を抑制できる。したがって、品質が安定したシリコン単結晶SMを製造できる。
また、直胴部形成工程開始時の坩堝22の回転速度を9rpm以上にするだけの簡単な方法で、有転位化が抑制されたシリコン単結晶を製造できる。
また、直胴部形成工程後の所定のタイミングから回転速度を徐々に遅くするため、直胴部の有転位化に加えて、酸素濃度分布や電気抵抗率分布などの悪化を抑制できる。
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能であり、その他、本発明の実施の際の具体的な手順、及び構造などは本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
例えば、直胴部の設定直径Rの大きさにかかわらず、MCZ(磁場印加チョクラルスキー)法を用いて、上記実施形態と同様のプロセスでシリコン単結晶SMを製造してもよい。この場合、図2に二点鎖線で示すように、チャンバ21の外側において坩堝22を挟んで対向するように一対の電磁コイル28を配置し、水平方向の横磁場でシリコン融液Mの自然対流を抑制すればよい。MCZ法を用いる場合、磁束密度は、0.1T以上0.4T以下にすることが好ましい。0.1T未満の場合、シリコン融液Mの対流抑制効果が低くなるため磁場印加の効果を発揮できず、0.4Tを超える場合、装置的な限界によりこのような大きさの磁場を印加できないおそれがある。
直胴部形成工程開始直後に、回転速度を徐々に遅くし始めたが、直胴部形成工程の開始から所定期間、回転速度をSr1で維持し、その後、徐々に遅くてもよい。
坩堝22の回転速度を小さくする方法として、直線的に減少させる事例を示したが、減少の仕方はこれに限定されるものではない。例えば曲線状や段階的に減少させる方法を用いてもよい。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
[実験1:坩堝の回転速度と有転位化との関係]
〔シリコン単結晶の製造方法〕
{比較例1、実施例1〜3}
比較例1では、図4および表1に示すように、肩部形成工程を行った後、直胴部形成工程全体において、6rpmで坩堝を回転させながらケーブルを引き上げ、直胴部を形成した。その後、テール部形成工程を行った。
実施例1では、直胴部形成工程開始時に9rpmで坩堝を回転させながらケーブルを引き上げ、その後、回転速度を徐々に遅くし、直胴部の長さが100mmとなるときに6rpmにした。その後、直胴部形成工程が終了するまで6rpmの回転速度を維持してから、比較例1と同じ条件でテール部形成工程を行った。
実施例2,3では、実施例1における9rpmで坩堝を回転させていた期間に、それぞれ11rpm、22rpmで坩堝を回転させたこと以外は、実施例1と同じ条件でシリコン単結晶を製造した。
なお、肩部形成工程を、当該肩部形成工程終了時の回転速度が直胴部形成工程開始時と同じ(比較例1、実施例1,2,3でそれぞれ6rpm、9rpm、11rpm、22rpm)になるようにして行った。
そして、比較例1、実施例1〜3で製造したシリコン単結晶の直胴部に、有転位化が発生しているか否かを観察した。
直胴部の設定直径、ドーパント、引き上げ回数(トライ回数)、各トライにおける直胴部上端での狙いの電気抵抗率(各トライにおける狙いの抵抗率)、有転位化が発生した回数(有転位化回数)、有転位化の発生率(有転位化率=有転位化回数/トライ回数)を表1に示す。
{比較例2〜4、実施例4〜9}
比較例2では、図4および表2に示すように、ドーパントを赤リンにしたこと以外は、比較例1と同じ条件でシリコン単結晶を製造した。
比較例3,4では、図4および表3,4に示すように、直胴部の設定直径を300mmにしたこと以外は、それぞれ比較例1,2と同じ条件でシリコン単結晶を製造した。
実施例4,5では、坩堝の回転速度を実施例1,3とそれぞれ同じにしたこと以外は、比較例2と同じ条件でシリコン単結晶を製造した。
実施例6,7では、坩堝の回転速度を実施例1,2とそれぞれ同じにしたこと以外は、比較例3と同じ条件でシリコン単結晶を製造した。
実施例8,9では、坩堝の回転速度を実施例2,3とそれぞれ同じにしたこと以外は、比較例4と同じ条件でシリコン単結晶を製造した。
比較例2〜4、実施例4〜9のトライ回数、各トライにおける狙いの抵抗率、有転位化回数、有転位化率を表2〜4に示す。
〔評価〕
表1〜4に示すように、比較例1〜4ではシリコン単結晶に有転位化が発生する場合があったが、実施例1〜9ではいずれの部位にも有転位化が発生しなかった。このことから、直胴部の形成開始時に坩堝を9rpm以上の速度で回転させることにより、直胴部全体に有転位化が発生しないシリコン単結晶を製造できることが確認できた。
また、表1,2の結果から、直胴部の設定直径が200mmのシリコン単結晶を製造する場合、ドーパントが砒素のときには、直胴部上端における狙いの電気抵抗率を1.4mΩ・cm以上2.4mΩ・cm以下に設定し、赤リンのときには0.6mΩ・cm以上1.2mΩ・cm以下に設定すればよいことが確認できた。
さらに、表3,4の結果から、直胴部の設定直径が300mmのシリコン単結晶を製造する場合、ドーパントが砒素のときには、狙いの電気抵抗率を1.6mΩ・cm以上2.8mΩ・cm以下に設定し、赤リンのときには0.7mΩ・cm以上1.5mΩ・cm以下に設定すればよいことが確認できた。
[実験2:有転位化とリメルト成長領域の高さとの関係]
有転位化が発生している比較例1,3のシリコン単結晶の径方向中心を上下方向に切断し、その直胴部断面のX線観察を行い、リメルト成長領域の個数と高さとを評価した。同様の評価を有転位化が発生していない実施例1,2,6のシリコン単結晶に対しても行った。比較例1、実施例1,2の結果を図5に、比較例3、実施例6の結果を図6に示す。
図5,6に示すように、実施例1,2,6の直胴部には、高さが200μm未満のリメルト成長領域が存在するものの、200μm以上のものが存在しなかった。一方、比較例1,3の直胴部には、200μm未満のリメルト成長領域に加え、200μm以上のものも存在していた。また、実施例3〜5,7〜9のシリコン単結晶には有転位化が発生していないことから、これらの直胴部には、高さが200μm以上のリメルト成長領域が存在していないと推定できる。また、比較例2のシリコン単結晶には有転位化が発生していることから、この直胴部には、高さが200μm以上のリメルト成長領域が存在すると推定できる。
このことから、高さが200μm以上のリメルト成長領域が直胴部に発生していないように、直胴部形成工程を行うことで、有転位化が発生しないシリコン単結晶を製造できることが確認できた。
1…単結晶引き上げ装置、21…チャンバ、22…坩堝、23…加熱部、25…引き上げケーブル(引き上げ部)、28…電磁コイル、M…シリコン融液、MD…ドーパント添加融液、SC…種結晶、SM…シリコン単結晶、SM3…直胴部。

Claims (8)

  1. チャンバと、
    このチャンバ内に配置された坩堝と、
    前記坩堝を加熱することで、シリコン融液にドーパントが添加されたドーパント添加融液を生成する加熱部と、
    種結晶を前記ドーパント添加融液に接触させた後に引き上げる引き上げ部とを備えた単結晶引き上げ装置を利用したチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法であって、
    前記シリコン単結晶の直胴部を形成する直胴部形成工程は、前記直胴部の径方向全域に発生する成長縞のうち、その外縁部が直胴部の外周部まで伸びずに別の成長縞で中断されている成長縞で構成され、かつ、育成方向の高さが200μm以上のリメルト成長領域が発生しないように、前記直胴部の形成開始時に前記坩堝を9rpm以上30rpm以下で回転させ、前記直胴部の形成開始直後に前記坩堝の回転速度を徐々に遅くし始め、前記直胴部が所定の長さとなるときに所定の回転速度となるように前記坩堝の回転速度を直線的、曲線的、あるいは段階的に遅くして前記直胴部を形成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記所定の回転速度を維持したまま前記直胴部の形成を継続することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記所定の長さは50mm以上200mm以下であり、前記所定の回転速度は0.1rpm以上7rpm以下であることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記単結晶引き上げ装置は、前記ドーパント添加融液に磁場を印加する電磁コイルを備え、
    前記直胴部形成工程は、前記直胴部を前記ドーパント添加融液に磁場を印加しながら形成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記直胴部形成工程は、前記ドーパントが砒素、設定直径が300mm、電気抵抗率が1.6mΩ・cm以上2.8mΩ・cm以下の前記直胴部を形成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造方法において
    記直胴部形成工程は、前記ドーパントが赤リン、設定直径が300mm、電気抵抗率が0.7mΩ・cm以上1.5mΩ・cm以下の前記直胴部を形成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記直胴部形成工程は、前記ドーパントが砒素、設定直径200mm、電気抵抗率1.4mΩ・cm以上2.4mΩ・cm以下の前記直胴部を形成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法
  8. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
    前記直胴部形成工程は、前記ドーパントが赤リン、設定直径200mm、電気抵抗率0.6mΩ・cm以上1.2mΩ・cm以下の前記直胴部を形成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法
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