JP6627662B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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0.4≦(CCr´/CAl´)/(CCr/CAl)≦0.8 (1)
ここで、式(1)中のCCr´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるCr濃度(質量%)が代入される。CAl´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるAl濃度(質量%)が代入される。また、CCrにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のCr濃度(質量%)が代入される。CAlにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のAl濃度(質量%)が代入される。
0.4≦(CCr´/CAl´)/(CCr/CAl)≦0.8 (1)
ここで、式(1)中のCCr´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるCr濃度(質量%)が代入される。CAl´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるAl濃度(質量%)が代入される。また、CCrにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のCr濃度(質量%)が代入される。CAlにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のAl濃度(質量%)が代入される。
0.4≦(CCr´/CAl´)/(CCr/CAl)≦0.8 (1)
ここで、式(1)中のCCr´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるCr濃度(質量%)が代入される。CAl´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるAl濃度(質量%)が代入される。また、CCrにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のCr濃度(質量%)が代入される。CAlにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のAl濃度(質量%)が代入される。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は主にCrと結合して炭化物を形成し、高温クリープ強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、鋼の鋳造後の凝固組織中に粗大な共晶炭化物を多数形成し、鋼の靭性を低下する。したがって、C含有量は0.25〜0.7%である。C含有量の好ましい下限は0.27%であり、より好ましくは0.3%である。C含有量の好ましい上限は0.6%であり、より好ましくは0.5%である。
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。他の元素で脱酸を十分に実施できる場合、Siの含有量は出来るだけ少なくてもよい。一方、Si含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.01〜2.0%である。Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Si含有量の好ましい上限は1.0%である。
マンガン(Mn)は不可避に含有される。Mnは鋼中に含まれるSと結合してMnSを形成し、鋼の熱間加工性を高める。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、鋼が硬くなりすぎ、熱間加工性及び溶接性が低下する。したがって、Mn含有量は2.0%以下である。Mn含有量の好ましい下限は0.1%であり、さらに好ましくは0.2%である。Mn含有量の好ましい上限は1.2%である。
燐(P)は不純物である。Pは鋼の溶接性及び熱間加工性を低下する。したがって、P含有量は0.04%以下である。P含有量の好ましい上限は0.03%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の溶接性及び熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.01%以下である。S含有量の好ましい上限は0.008%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
クロム(Cr)は、高温環境での鋼の表面において、保護性のあるCr2O3皮膜を形成する。Cr2O3皮膜は鋼の耐食性(耐酸化性、耐水蒸気酸化性等)を高める。Crはさらに、鋼中のCと結合してCr炭化物を形成し、高温強度を高める。本発明のオーステナイト系ステンレス鋼においては、Crはさらに、上述のTEE効果により、Al2O3皮膜の形成を促進する。Cr含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、炭化水素ガス雰囲気では、Crは雰囲気ガス由来のCと結合し、鋼表面にCr炭化物を形成する。Cr炭化物が形成されるとCrが局所的に欠乏する。このためTEE効果が低下し、均一なAl2O3皮膜が形成されない。Cr含有量が高すぎればさらに、Cr炭化物がAl2O3皮膜の形成を物理的に阻害する。したがって、Cr含有量は10〜19%である。Cr含有量の好ましい下限は11%であり、さらに好ましくは12%である。Cr含有量の好ましい上限は18.5%であり、さらに好ましくは18%である。
ニッケル(Ni)は、オーステナイトを安定化させ、高温強度を高める。Niはさらに、鋼の耐食性を高める。Ni含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、これらの効果が飽和するだけでなく、原料コストが高くなる。したがって、Ni含有量は20〜40%である。Ni含有量の好ましい下限は22%であり、さらに好ましくは25%である。Ni含有量の好ましい上限は39%であり、さらに好ましくは38%である。
アルミニウム(Al)は、高温環境において鋼表面にAl2O3皮膜を形成し、鋼の耐食性を高める。特に本発明にて想定している高温環境においては、従来用いられているCr2O3皮膜と比較して、Al2O3皮膜は熱力学的に安定である。Al含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、組織安定性が低下し、高温強度が著しく低下する。したがって、Al含有量は2.5超〜4.5%未満である。Al含有量の好ましい下限は2.55%であり、さらに好ましくは2.6%である。Al含有量の好ましい上限は4.2%であり、さらに好ましくは4.0%である。本発明によるオーステナイト系ステンレス鋼において、Al含有量は、鋼材中に含有する全Al量を意味する。
ニオブ(Nb)は、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相及びNi3Nb相)を形成して、結晶粒界及び結晶粒内を析出強化し、鋼のクリープ強度を高める。一方、Nb含有量が高すぎれば、金属間化合物が過剰に生成して、鋼の靭性が低下する。Nb含有量が高すぎればさらに、長時間時効後の靭性も低下する。したがって、Nb含有量は0.01〜3.5%ある。Nb含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.1%である。Nb含有量の好ましい上限は3.2%未満であり、さらに好ましくは3.0%である。
窒素(N)はオーステナイトを安定化し、不可避に含有される。しかしながら、N含有量が高すぎれば、溶体化処理後でも未固溶で残存する粗大な炭窒化物が生成する。粗大な炭窒化物は鋼の靱性を低下する。したがって、N含有量は0.03%以下である。好ましいN含有量の上限は0.01%である。
上述のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Tiを含有してもよい。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Tiは、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相及びNi3Ti相)を形成して、析出強化によりクリープ強度を高める。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、金属間化合物が過剰に生成して、高温延性及び熱間加工性が低下する。Ti含有量が高すぎればさらに、長時間時効後の靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.2%未満である。Ti含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは、0.01%である。Ti含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは、0.1%である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を高める。一方、Ca含有量が高すぎれば、靱性、延性及び清浄性が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.05%である。Caの好ましい下限は0.0005%である。Ca含有量の好ましい上限は0.01%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Mgは、Sを硫化物として固定し、鋼の熱間加工性を高める。一方、Mg含有量が高すぎれば、靱性、延性及び清浄性が低下する。したがって、Mg含有量は0〜0.05%である。Mgの好ましい下限は0.0005%である。Mg含有量の好ましい上限は0.01%である。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼はさらに、式(1)を満たす。
0.4≦(CCr´/CAl´)/(CCr/CAl)≦0.8 (1)
ここで、式(1)中のCCr´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表層におけるCr濃度(質量%)が代入される。CAl´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表層におけるAl濃度(質量%)が代入される。また、CCrにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のCr濃度(質量%)が代入される。CAlにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のAl濃度(質量%)が代入される。
本実施形態のオーステナイト系耐ステンレス鋼の製造方法の一例として、鋼管の製造方法を説明する。
上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼に対して、必要に応じて周知の脱ガス処理を実施する。溶鋼を用いて、鋳造により素材を製造する。素材は、造塊法によるインゴットであってもよいし、連続鋳造法によるスラブやブルーム、ビレット等の鋳片であってもよい。また、遠心鋳造法により、管形状の鋳造体を製造してもよい。
製造された素材に対して熱間鍛造を実施してもよい。熱間鍛造を実施すれば、準備工程で製造した溶鋼の内部組織を、凝固組織から均質な整粒組織へと変化させることができる。
準備工程で製造された素材、又は熱間鍛造された素材に対して熱間加工及び/又は冷間加工を実施して、中間材である鋼素管を製造してもよい。熱間加工はたとえば、熱間押出し加工や熱間圧延加工である。冷間加工はたとえば、冷間引抜き加工や冷間圧延加工である。以上の工程により、中間材を製造する。
製造された素材又は中間材に対して、大気雰囲気で熱処理を実施する。大気雰囲気での熱処理により、鋼表面にCr2O3を主体とするスケールが形成される。これにより鋼表面のCrが欠乏し、式(1)を満たすオーステナイト系ステンレス鋼を得ることができる。
表1に示す化学組成を有する溶鋼を、真空溶解炉を用いて製造した。
取鍋に出鋼した溶鋼を採取し、スパーク放電分光分析法により母材のCr濃度及びAl濃度を測定した。各サンプルでピーク値を求め、それらの平均を母材のCr濃度CCr及びAl濃度CAlとした。
各試験番号の鋼材の圧延方向と垂直な断面の中央部から顕微鏡観察用の試験片を作製した。試験片の表面のうち、上記断面に相当する表面(観察面という)を用いて、ASTM E 112に規定される顕微鏡試験方法を実施し、結晶粒径を測定した。具体的には、観察面を機械研磨後、腐食液を用いて腐食し、観察面の結晶粒界を現出させた。腐食した表面上の10視野において、各視野の平均結晶粒径を求めた。各視野の面積は、約0.75mm2である。
各試験番号の鋼材を圧延方向に対して垂直に切断し、表面を含むサンプルを採取した。サンプルを樹脂に埋め込み、表面近傍の断面を含む観察面を研磨した。研磨後の観察面に対して、上述の方法を用いて表層(表面から2μm深さまでの範囲)のCr濃度CCr´及びAl濃度CAl´を求めた。
各試験番号の鋼材を、H2−CH4−CO2雰囲気にて1100℃×96時間保持した。浸炭後の鋼材表面を#600研磨紙で乾式手研磨して、表面のスケール等を除去した。鋼材表面から0.5mmピッチで4層分の分析切粉を採取した。得られた分析切粉について、高周波燃焼赤外吸収法にてC濃度を測定した。測定結果から、鋼に元から含有されているC濃度を差し引いて、C濃度増加量とした。4層分のC濃度増加量の平均を、侵入C量とした。
製造された中間材から、クリープ試験片を作製した。クリープ試験片は、鋼材の厚さ中心部から圧延方向に平行に採取した。試験片は丸棒試験片であり、平行部の直径は6mm、標点間距離は30mmであった。試験片を用いて、クリープ破断試験を行った。クリープ破断試験は1000℃の大気雰囲気において、15MPaの引張り負荷をかけて実施した。破断時間が1.0×103時間以上のものを合格(表2中の○)、1.0×103時間未満のものを不合格(表2中の×)とした。
試験結果を表2に示す。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.25〜0.7%、
Si:0.01〜2.0%、
Mn:2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Cr:10〜19%、
Ni:20〜40%、
Al:2.5超〜4.5%未満、
Nb:0.01〜3.5%、
N:0.03%以下、
Ti:0〜0.2%未満、
Ca:0〜0.05%、及び、
Mg:0〜0.05%を含有し、
残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、
式(1)を満たす、オーステナイト系ステンレス鋼。
0.4≦(CCr´/CAl´)/(CCr/CAl)≦0.8 (1)
ここで、式(1)中のCCr´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるCr濃度(質量%)が代入される。CAl´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるAl濃度(質量%)が代入される。また、CCrにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のCr濃度(質量%)が代入される。CAlにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のAl濃度(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
前記化学組成は、
Ti:0.005〜0.2%未満を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼。 - 請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
前記化学組成は、
Ca:0.0005〜0.05%、及び、
Mg:0.0005〜0.05%からなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼。
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