JP6626051B2 - サーボプレス機械 - Google Patents

Description

本発明は、サーボプレス機械に関し、特に、２つの摺動面の間に潤滑剤を確実に供給するサーボプレス機械及び潤滑剤の供給方法に関する。

従来からプレス機械のコネクティングロッド（以下、単に「コンロッド」という）とクランク軸との間には、滑り軸受構造が採用されている（例えば、特許文献１）。通常、コンロッドに設けられた滑り軸受構造のブッシュに油供給用の溝を設け、その溝に潤滑剤の供給を行うことで摺動箇所の潤滑不良を防止し、滑り軸受構造における焼付を防止する。

ブッシュに設けられた油供給用の溝は基本的に大気解放型であり、クランク軸が回転する間に溝に充填された潤滑剤がクランク軸とブッシュとの隙間に流れ込んで潤滑する。

近年、プレス機械がクランク軸（偏心軸）をサーボモータで回転させるサーボプレス機械が主流になると、サーボプレス機械に特有のプレス加工方法が採用されるようになってきている。例えば、サーボプレス機械においては、クランク軸が一方向に回転するだけでなく、往復回転（振り子運転）することによりコンロッドを昇降させる加工法がある。この場合に、１サイクルのスライドモーションのほとんどをプレス負荷が発生するプレス負荷期間に設定することで、プレス加工のサイクルタイムの短縮化を図ることができる。このような加工法では、クランク軸とコンロッドのプレス負荷側の面には隙間が生じることはほとんどなく、溝から潤滑剤が摺動面に十分に供給されなくなる。

特開２００６−１０５３７１号公報

そこで、本発明は、偏心軸側摺動面とコンロッド側摺動面との間に潤滑剤を確実に供給することができるサーボプレス機械及び潤滑剤の供給方法を提供することを目的とする。また、本発明は、コンロッド先端部側摺動面と連結部側摺動面との間に潤滑剤を確実に供給することができるサーボプレス機械及び潤滑剤の供給方法を提供することを目的とする。

本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。

［適用例１］
本適用例に係るサーボプレス機械は、
サーボモータによって回転駆動する偏心軸と、
前記偏心軸の回転駆動によって昇降するコンロッドと、
前記コンロッドの昇降によって昇降するスライドと、
を含むサーボプレス機械であって、
プレス加工時のプレス負荷が作用する偏心軸側摺動面と、
プレス負荷が作用すると共に前記偏心軸側摺動面と摺動するコンロッド側摺動面と、
前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面に開口し、前記偏心軸側摺動面と前記コンロッド側摺動面との間へ潤滑剤を供給する給油口と、
前記給油口へ潤滑剤を供給する供給機構と、
を含み、
前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面には、前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面の全体に延びる潤滑剤を供給する給油溝が形成され、
前記給油口は、前記給油溝が形成されていない領域に開口し、
前記供給機構は、
プレス負荷が作用している前記コンロッド側摺動面または前記偏心軸側摺動面によって前記給油口が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を前記給油口へ送り出して潤滑剤を加圧し、
プレス負荷が前記偏心軸側摺動面及び前記コンロッド側摺動面に作用していないプレス未負荷期間に、前記給油口から加圧された潤滑剤を前記偏心軸側摺動面と前記コンロッド側摺動面との間に供給することを特徴とする。

本適用例に係るプレス機械によれば、加圧された潤滑剤を用いることで、プレス未負荷期間に偏心軸側摺動面とコンロッド側摺動面との間に潤滑剤を確実に供給することができる。

［適用例４］
本適用例に係るサーボプレス機械は、
サーボモータによって回転駆動する偏心軸と、
前記偏心軸の回転駆動によって昇降するコンロッドと、
前記コンロッドの昇降によって昇降するスライドと、
前記コンロッドの先端部と前記スライドとを連結する連結部と、
を含むサーボプレス機械であって、
プレス加工時のプレス負荷が作用するコンロッド先端部側摺動面と、
プレス負荷が作用すると共に前記コンロッド先端部側摺動面と摺動する連結部側摺動面と、
前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面に開口し、前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部側摺動面との間へ潤滑剤を供給する給油口と、
前記給油口へ潤滑剤を供給する供給機構と、
を含み、
前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面には、前記コンロッド先端部
側摺動面または前記連結部側摺動面の全体に延びる潤滑剤を供給する給油溝が形成され、
前記給油口は、前記給油溝が形成されていない領域に開口し、
前記供給機構は、
プレス負荷が作用している前記連結部側摺動面または前記コンロッド先端部側摺動面によって前記給油口が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を前記給油口へ送り出して潤滑剤を加圧し、
プレス負荷が前記コンロッド先端部側摺動面及び前記連結部側摺動面に作用していないプレス未負荷期間に、前記給油口から加圧された潤滑剤を前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部側摺動面との間に供給することを特徴とする。

本適用例に係るプレス機械によれば、コンロッド先端部側摺動面と連結部側摺動面との間に潤滑剤を確実に供給することができる。

本発明に係るプレス機械によれば、偏心軸側摺動面とコンロッド側摺動面との間に潤滑剤を確実に供給することができる。また、本発明に係るプレス機械によれば、コンロッド先端部側摺動面と連結部側摺動面との間に潤滑剤を確実に供給することができる。

第１実施形態に係るサーボプレス機械の正面図である。 図１におけるＡ−Ａ断面図である。 コンロッドの正面図である。 図３におけるＢ−Ｂ断面図である。 図３におけるＣ−Ｃ断面図である。 図４におけるＤ−Ｄ断面図である。 第１実施形態に係る潤滑剤の供給方法を説明するタイミングチャートである。 第２実施形態に係るサーボプレス機械の正面図である。 第２実施形態に係る連結部の拡大断面図である。 第２実施形態に係る滑り軸受の平面図である。 変形例に係る滑り軸受の平面図である。

以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。

本実施形態に係るサーボプレス機械は、サーボモータによって回転駆動する偏心軸と、前記偏心軸の回転駆動によって昇降するコンロッドと、前記コンロッドの昇降によって昇降するスライドと、を含むサーボプレス機械であって、プレス加工時のプレス負荷が作用する偏心軸側摺動面と、プレス負荷が作用すると共に前記偏心軸側摺動面と摺動するコンロッド側摺動面と、前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面に開口し、前記偏心軸側摺動面と前記コンロッド側摺動面との間へ潤滑剤を供給する給油口と、前記給油口へ潤滑剤を供給する供給機構と、を含み、前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面には、前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面の全体に延びる潤滑剤を供給する給油溝が形成され、前記給油口は、前記給油溝が形成されていない領域に開口し、前記供給機構は、プレス負荷が作用している前記コンロッド側摺動面または前記偏心軸側摺動面によって前記給油口が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を前記給油口へ送り出して潤滑剤を加圧し、プレス負荷が前記偏心軸側摺動面及び前記コンロッド側摺動面に作用していないプレス未負荷期間に、前記給油口から加圧された潤滑剤を前記偏心軸側摺動面と前記コンロッド側摺動面との間に供給することを特徴とする。

本実施形態に係るサーボプレス機械は、サーボモータによって回転駆動する偏心軸と、前記偏心軸の回転駆動によって昇降するコンロッドと、前記コンロッドの昇降によって昇降するスライドと、前記コンロッドの先端部と前記スライドとを連結する連結部と、を含むサーボプレス機械であって、プレス加工時のプレス負荷が作用するコンロッド先端部側摺動面と、プレス負荷が作用すると共に前記コンロッド先端部側摺動面と摺動する連結部側摺動面と、前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面に開口し、前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部側摺動面との間へ潤滑剤を供給する給油口と、前記給油口へ潤滑剤を供給する供給機構と、を含み、前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面には、前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面の全体に延びる潤滑剤を供給する給油溝が形成され、前記給油口は、前記給油溝が形成されていない領域に開口し、前記供給機構は、プレス負荷が作用している前記連結部側摺動面または前記コンロッド先端部側摺動面によって前記給油口が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を前記給油口へ送り出して潤滑剤を加圧し、プレス負荷が前記コンロッド先端部側摺動面及び前記連結部側摺動面に作用していないプレス未負荷期間に、前記給油口から加圧された潤滑剤を前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部側摺動面との間に供給する
ことを特徴とする。

１．第１実施形態
図１及び図２を用いて、第１実施形態に係るサーボプレス機械１０の概要について説明する。図１は第１実施形態に係るサーボプレス機械の正面図であり、図２は図１におけるＡ−Ａ断面図である。

図１に示すように、サーボプレス機械１０は、フレーム１２と、フレーム１２によって回転自在に支持された偏心軸１３と、偏心軸１３に大端部が連結されるコンロッド１４と、コンロッド１４の先端部１４ａに連結されるスライド１１と、を備える。

サーボプレス機械１０は、さらにフレーム１２に固定されたサーボモータ１８と、偏心軸１３の一端に固定されるメインギヤ１５と、を備える。サーボモータ１８が回転駆動することでメインギヤ１５を回転させ、偏心軸１３を回転駆動させることができる。コンロッド１４は偏心軸１３の回転駆動によって昇降し、スライド１１はコンロッド１４の昇降によって昇降する。

図２に示すように、偏心軸１３は、クランク軸である。偏心軸１３としてエキセントリック軸（以下「エキセン軸」という）を採用してもよい。偏心軸１３とコンロッド１４とで偏心機構が形成される。偏心機構は、回転運動を往復直線運動に変換する機構であり、偏心機構によって、コンロッド１４に接続されたスライド１１は、静止側のボルスタに対して昇降可能になる。スライド１１には上金型が装着され、ボルスタには下金型が装着される。サーボモータ１８によって偏心軸１３を回転させると、コンロッド１４の先端部１４ａがスライド１１を上下に昇降する。

コンロッド１４は、先端部１４ａの反対側の大端部に滑り軸受２０を有する。滑り軸受２０は、その内周面が偏心軸１３の外周面と接触する。

スライド１１は、フレーム１２にガイドされてサーボモータ１８の駆動により昇降する。スライド１１の下面には金型が固定される。

サーボモータ１８は、例えば電動モータであり、交流サーボモータ、誘導モータ、リラクタンスモータ、直流サーボモータなどを採用することができる。サーボモータ１８が図示しない制御部の指令により駆動することで、ワークに対しスライド１１に固定された金型を予めプログラムされたスライドモーションで昇降させることができる。なお、図１及び図２ではスライド１１は上死点にある。

サーボプレス機械１０は、スライド１１の下死点で最大の加圧力が得られるため、下死点付近でプレス加工を行うことが一般的であるが、近年、サーボモータ１８を用いることで、プレス負荷が発生する期間が長くなってきている。また、サーボプレス機械１０に特有の振り子運転では、生産数を増加させるために、加工ストロークの長さに対する非加工ストロークの長さを必要最小限としたプレス加工が行われるため、スライドモーションにおいてプレス加工を行っていない期間は短くなる傾向にある。

１−１．給油口及び供給機構
図３〜図６を用いて、潤滑剤の給油口及び供給機構について説明する。図３はコンロッドの正面図であり、図４は図３におけるＢ−Ｂ断面図であり、図５は図３におけるＣ−Ｃ断面図であり、図６は図４におけるＤ−Ｄ断面図である。

図３に示すように、サーボプレス機械１０は、プレス加工時のプレス負荷が作用する偏心軸１３の外周面の一部である摺動面２２（以下、偏心軸側摺動面２２という。）と、プレス負荷が作用すると共に偏心軸側摺動面２２と摺動する滑り軸受２０の内周面である摺動面４０（以下、コンロッド側摺動面４０という。）と、偏心軸側摺動面２２またはコンロッド側摺動面４０に開口し、偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間へ潤滑剤を供給する給油口２４と、給油口２４へ潤滑剤を供給する供給機構３０と、を含む。

このように、コンロッド１４は滑り軸受２０を有し、コンロッド側摺動面４０は偏心軸１３とコンロッド１４との間に介在する滑り軸受２０の内周面であり、給油口２４は、滑り軸受２０に形成される。給油口２４が滑り軸受２０に形成されることで、コンロッド１４自体に給油口２４を形成する場合に比べて、給油口２４を比較的容易に加工することが
できる。

供給機構３０は、コンロッド１４内に延びる給油路３２と、給油路３２へ潤滑剤を分配する分配器３６と、分配器３６へ潤滑剤を送り出すポンプ３８と、を含む。給油路３２の一方の端部は給油口２４であり、他方の端部は分配器３６に連結される。ここで、給油路３２は、給油口２４の近傍に至るまではコンロッド１４の外周表面上に延在して設けられていてもよい。分配器３６は、ポンプ３８から送り出された潤滑剤を複数の給油口２４へ分配して送り出すことができる。分配器３６は、逆止弁及びリリーフバルブを内部に備えることができる。分配器３６を備えることで、一方の給油口２４から潤滑剤が吐出することができない状態になったとしても、他方の給油口２４へ潤滑剤を送り出す能力の低下はリリーフバルブにより回避することができる。

分配器３６は、複数の潤滑剤吐出ブロックＤ１〜Ｄ４（以下、ブロックＤ１〜Ｄ４という）からなる。複数のブロックＤ１〜Ｄ４はいずれも給油口２４に接続される。プレス加工に伴って給油口２４が塞がれている間に、ブロックＤ１〜Ｄ４から潤滑剤が吐出されることによって潤滑剤が加圧される。

また、分配器３６の内部に潤滑剤の送り出し機能を備えていてもよい。分配器３６としては、プログレッシブ定量分配弁を採用することができる。プログレッシブ定量分配弁は、ブロックＤ１〜ブロックＤ４の各ポートの内部に潤滑剤を吐出させるためのピストンを有し、例えば１分間に数十サイクルで間欠的に潤滑剤を給油口２４から吐出することができる。潤滑剤を確実に給油口２４へ送るために、プレス加工の成形サイクルに応じて分配器３６の複数のポートを１つの給油口２４に接続することができる。図３のように例えばブロックＤ１及びブロックＤ３のポートから１つの給油口２４に潤滑剤を送ることで、ブロックＤ１のポートの送り出しサイクルをブロックＤ３のポートが補完できる。

ポンプ３８は、図示しない潤滑剤タンクから潤滑剤を給油路３２へと送り出すことができる。ポンプ３８で送り出された潤滑剤は、分配器３６でブロックＤ１〜ブロックＤ４の４つのポートから２つの給油路３２へ送り出され、偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０とによって給油口２４が塞がれている間にポンプ３８で送り出された潤滑剤が加圧される。給油路３２へ潤滑剤を送り出しかつ加圧できれば、他の公知の手段を採用してもよい。

供給機構３０は、プレス負荷が作用している偏心軸側摺動面２２またはコンロッド側摺動面４０によって給油口２４が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を給油口２４へ送り出して潤滑剤を加圧し、プレス負荷が偏心軸側摺動面２２及びコンロッド側摺動面４０に作用していないプレス未負荷期間に、給油口２４から加圧された潤滑剤を偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に供給する。供給機構３０により加圧された潤滑剤を用いることで、プレス未負荷期間に偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に潤滑剤を確実に供給することができる。

プレス負荷期間は、１成形サイクルにおけるプレス加工する期間であって、スライド１１が下降してスライド１１に装着された金型がワークに接触して加工を開始してから加工が終了（スライド１１が下死点に到達）するまでの間である。プレス未負荷期間は、スライドモーションにおけるプレス負荷期間以外の期間であり、スライド１１に装着した金型がワークに接触していない期間である。

図３において、例えば滑り軸受２０内に斜線を用いて示した範囲がプレス負荷期間においてプレス負荷の作用する領域である。一点鎖線の矢印で示した範囲を偏心軸１３が往復する場合には、斜線で示した領域の両側に残るわずかな範囲がプレス未負荷期間における
プレス負荷が偏心軸側摺動面２２及びコンロッド側摺動面４０に作用しない領域である。このように短い領域では、従来のプレス機械では十分に潤滑剤を供給するほどの隙間が得られない。しかし、このように短い領域であっても、プレス負荷期間に加圧された潤滑剤がプレス未負荷期間に、短時間で偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に広がることで潤滑剤を確実に供給することができる。

図４及び図５に示すように、コンロッド側摺動面４０には、潤滑剤を供給する給油溝２６がコンロッド側摺動面４０の全体に延びるように形成される。給油溝２６は、偏心軸側摺動面２２に形成されてもよい。コンロッド１４の上端に設けられた給油ニップル３４から潤滑剤が注入され、給油溝２６に沿って潤滑剤が流れる。給油溝２６は、偏心軸１３の外径とコンロッド１４の内径の差による隙間があり大気解放型であるため、プレス加工時も給油溝２６の全てが偏心軸側摺動面２２によって塞がれることはない。給油ニップル３４から注入される潤滑剤は、給油溝２６に沿って流れればよいため、常時低圧で送り込まれる。

給油溝２６は、給油ニップル３４から連続するコンロッド側摺動面４０の全体に延びる溝である。プレス加工時に偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との所定範囲にプレス負荷が作用すると、その範囲にある給油溝２６からは偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間へ潤滑剤が十分には供給されない。偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０とが隙間なく密着して給油溝２６が塞がれてしまうからである。

給油口２４は、給油溝２６が形成されていない領域に開口する。給油口２４が大気解放される給油溝２６のない領域に開口することで、プレス負荷期間に潤滑剤の圧力を所定の圧力まで上昇させることができる。給油口２４は、プレス負荷期間において偏心軸側摺動面２２によって塞がれてメタルシールされるコンロッド側摺動面４０の領域に形成される。プレス負荷期間の間に給油口２４内の潤滑剤の圧力を上昇させるためである。また、プレス加工中に潤滑剤が切れる領域に確実に注油するためである。

給油口２４は、スライド１１が下死点にあるときにコンロッド側摺動面４０におけるプレス負荷を最も受ける部分以外の領域に形成されている。給油口２４が偏心軸側摺動面２２に形成される場合にも同様にプレス負荷を最も受ける部分以外の領域に給油口２４を設ける。給油口２４がプレス負荷を最も受ける部分以外の領域に形成されることで、プレス負荷を最も受ける部分の機械的強度を低下することなく、給油口２４を偏心軸側摺動面２２またはコンロッド側摺動面４０に設けることができる。通常、スライド１１が下死点にあるときに最もプレス負荷を受ける部分は、偏心軸１３の回転中心Ｑの鉛直方向下方になる。図３に示すように、給油口２４は、スライド１１が下死点にあるときの偏心軸１３の回転中心Ｑの鉛直下方から左右に離れた位置に設けられているが、偏心軸１３及びコンロッド１４の機械的強度が十分であれば鉛直下方にも設けることが可能である。

図６に示すように、給油口２４は、給油口２４へ向かう給油路３２の横断面の面積よりも広い開口面積を有する油溜まり部２５を含む。油溜まり部２５を滑り軸受２０に設けることで、偏心軸側摺動面２２に効率良く潤滑剤を供給することができる。給油口２４は、図４のように平面視で扁平形状を有しているが、これに限るものではない。

プレス負荷期間において給油口２４に供給される潤滑剤については、プレス未負荷期間において偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０とが密着する負荷又は力を超える力に対応するように、その最大圧力が設定されている。このような最大圧力に設定されることで、プレス未負荷期間における偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０とが密着する負荷又は力に抗して潤滑剤を給油口２４から偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に供給することができる。給油口２４における潤滑剤の最大圧力は、偏心
軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との密着を解消させ、潤滑剤を偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に広げることができる圧力である。

サーボプレス機械１０は、プレス未負荷期間が極端に短いスライドモーションを採用することがある。例えば、いわゆる振り子運転（図３における一点鎖線の矢印）の場合があり、プレス未負荷期間においても図３の斜線で示した領域は偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０とが密着した状態を維持している。この場合、偏心軸側摺動面２２の内、給油溝２６が形成されていない領域には給油溝２６から潤滑剤は十分には供給されない。給油溝２６から潤滑剤が流れるほどの隙間が偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０の間に生じないからである。しかし、プレス負荷期間に給油口２４で圧力が上昇した潤滑剤は、プレス未負荷期間において、偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０とが密着する力に勝って偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に短時間で広がる。

このようにプレス未負荷期間が短時間であっても、プレス加工の負荷がかかる偏心軸１３とコンロッド１４との間に潤滑剤を確実に供給することができ、摺動箇所の潤滑不良を防止し、滑り軸受構造における焼付を防止することができる。

２．潤滑剤の供給方法
次に、図１〜図７を用いて、本実施形態に係る潤滑剤の供給方法について説明する。図７は、本実施形態に係る潤滑剤の供給方法を説明するタイミングチャートである。

本実施形態に係る潤滑剤の供給方法は、サーボプレス機械１０におけるプレス加工時のプレス負荷が作用する偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間へ潤滑剤を供給する潤滑剤の供給方法である。

図７に示すように、時刻Ｔ１〜時刻Ｔ５は１成形サイクルを表し、時刻Ｔ１〜時刻Ｔ３はプレス負荷期間であり、時刻Ｔ０〜時刻Ｔ１及び時刻Ｔ３〜時刻Ｔ５はプレス未負荷期間である。偏心軸側摺動面２２またはコンロッド側摺動面４０に開口する給油口２４が、プレス負荷が作用しているコンロッド側摺動面４０または偏心軸側摺動面２２によって塞がれているプレス負荷期間（時刻Ｔ１〜時刻Ｔ３）に、潤滑剤を給油口２４へ送り出して潤滑剤を加圧する。潤滑剤の圧力は、供給機構３０から潤滑剤が送り出され、給油口２４がコンロッド側摺動面４０で塞がれることにより時刻Ｔ１〜時刻Ｔ２の間で上昇し、設定圧力に到達する。あるいは、潤滑剤の圧力を時刻Ｔ１〜時刻Ｔ３の間で継続して上昇させることにより設定圧力に到達させてもよい。時刻Ｔ２の時点で設定圧力に到達した場合は、図３に示されている分配器３６を用いることにより、時刻Ｔ２〜時刻Ｔ３の間は、給油路３２に設けられたリリーフ弁により設定圧力を保持する。

プレス負荷が偏心軸側摺動面２２及びコンロッド側摺動面４０に作用していないプレス未負荷期間（時刻Ｔ３〜時刻Ｔ５）に、給油口２４から加圧された潤滑剤を偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に供給する。加圧された潤滑剤は、偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０とを押し開くようにして一瞬（時刻Ｔ３〜時刻Ｔ４の間）で偏心軸側摺動面２２に沿って広がる。加圧された潤滑剤を用いることで、短時間のプレス未負荷期間であっても、偏心軸側摺動面２２とコンロッド側摺動面４０との間に潤滑剤を確実に供給することができる。

３．第２実施形態
次に、図８〜図１０を用いて、第２実施形態に係る滑り軸受１２０について説明する。図８は第２実施形態に係るサーボプレス機械１１０の正面図であり、図９は第２実施形態に係る連結部１１９の拡大断面図であり、図１０は第２実施形態に係る滑り軸受１２０の
平面図である。

図８に示すサーボプレス機械１１０は、偏心軸１１３としてエキセン軸を用いている。

サーボプレス機械１１０は、サーボモータ１１８によって回転駆動する偏心軸１１３と、偏心軸１１３の回転駆動によって昇降するコンロッド１１４と、コンロッド１１４の昇降によって昇降するスライド１１１と、コンロッド１１４の先端部１１４ａとスライド１１１とを連結する連結部１１９と、を含む。

サーボモータ１１８の回転は、ドライブギヤ６０及び同期分配ギヤ６２を介し、メインギヤ１１５へと伝えられ、偏心軸１１３を回転駆動する。

連結部１１９は、スライド１１１の上面に形成される。連結部１１９とコンロッド１１４の先端部１１４ａは、水平ピン５０によって先端部１１４ａに対して連結部１１９が回転可能に連結される。この構成により、水平ピン５０を中心にコンロッド１１４は回転可能であり、コンロッド１１４の昇降により連結部１１９が昇降する。

図９に示すように、サーボプレス機械１１０は、プレス加工時のプレス負荷が作用する摺動面１２２と、プレス負荷が作用すると共に摺動面１２２と摺動する摺動面１４０と、摺動面１２２または摺動面１４０に開口し、摺動面１２２（以下、コンロッド先端部側摺動面１２２という。）と摺動面１４０（以下、連結部側摺動面１４０という。）との間へ潤滑剤を供給する給油口１２４と、給油口１２４へ潤滑剤を供給する図示しない供給機構と、を含む。供給機構としては、第１実施形態で説明した供給機構３０を適用することができる。

図示しない供給機構は、プレス負荷が作用している連結部側摺動面１４０またはコンロッド先端部側摺動面１２２によって給油口１２４が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を給油口１２４へ送り出して潤滑剤を加圧する。加圧された潤滑剤は、プレス負荷がコンロッド先端部側摺動面１２２及び連結部側摺動面１４０に作用していないプレス未負荷期間に、給油口１２４からコンロッド先端部側摺動面１２２と連結部側摺動面１４０との間に供給する。

コンロッド１１４の先端部１１４ａの外周面の一部であるコンロッド先端部側摺動面１２２は、連結部１１９の凹面である連結部側摺動面１４０と摺動する関係にある。連結部側摺動面１４０は、コンロッド先端部側摺動面１２２と連結部１１９との間に介在する滑り軸受１２０の内周面である。給油口１２４は、滑り軸受１２０の連結部側摺動面１４０に形成される。給油口１２４からプレス加工の負荷がかかるコンロッド１１４の先端部１１４ａと連結部１１９との間に潤滑剤を確実に供給することができる。なお、給油口１２４は、コンロッド先端部側摺動面１２２に形成することも可能である。

コンロッド先端部側摺動面１２２または連結部側摺動面１４０には、コンロッド先端部側摺動面１２２または連結部側摺動面１４０の全体に延びる潤滑剤を供給する給油溝１２６が形成される。給油口１２４は、給油溝１２６が形成されていない領域に開口する。プレス加工中に給油溝１２６から給油されない連結部側摺動面１４０の領域に、給油口１２４から潤滑剤を供給するためである。

連結部１１９は、先端部１１４ａと摺動する部分に滑り軸受１２０を有する。滑り軸受１２０は、連結部１１９に固定される。滑り軸受１２０は、下方に凸状の円弧面（コンロッド先端部側摺動面１２２）を有する先端部１１４ａに適合する凹状の円弧面からなる連結部側摺動面１４０を有する。滑り軸受１２０は、湾曲したシートメタルである。

滑り軸受１２０は、連結部側摺動面１４０に開口する複数の給油口１２４を有する。給油口１２４は、連結部１１９から滑り軸受１２０を貫通して延びる給油路１３２の開口端である。給油路１３２は、図示しない供給機構に連結されて、潤滑剤が連続してまたは間欠的に送り込まれる。

図１０に示すように、給油溝１２６が連結部側摺動面１４０の全体に延びるように形成される。少なくともプレス加工時のプレス負荷が作用する連結部側摺動面１４０の領域に、給油溝１２６で区画された連結部側摺動面１４０の各区画に給油口１２４が設けられる。給油口１２４は、スライド１１１が下死点にあるときにプレス負荷を最も受ける部分以外の領域に形成されている。給油口１２４がプレス負荷を最も受ける部分以外の領域に形成されることで、プレス負荷を最も受ける部分の機械的強度を低下することなく、給油口１２４をコンロッド先端部側摺動面１２２又は連結部側摺動面１４０に設けることができる。図１０の中心の区画は、スライド１１１が下死点にあるときに、コンロッド１１４からのプレス負荷が最大となる部分を含む区画であり、この区画には給油口１２４は形成されないが、機械的強度が十分であれば形成されていてもよい。

図１０に示すように、給油口１２４は、給油口１２４へ向かう給油路１３２（図９）の横断面の面積よりも広い開口面積を有する油溜まり部を含む。油溜まり部は、第１実施形態の油溜まり部２５を採用できる。油溜まり部を滑り軸受１２０に設けることで、コンロッド先端部側摺動面１２２に効率良く潤滑剤を供給することができる。

プレス負荷期間において給油口１２４に供給される潤滑剤については、プレス未負荷期間においてコンロッド先端部側摺動面１２２と連結部側摺動面１４０とが密着する負荷又は力を超える力に対応するように、その最大圧力が設定されている。このような最大圧力に設定されることで、プレス未負荷期間におけるコンロッド先端部側摺動面１２２と連結部側摺動面１４０とが密着する負荷又は力に抗して潤滑剤を給油口１２４からコンロッド先端部側摺動面１２２と連結部側摺動面１４０との間に供給することができる。給油口１２４における潤滑剤の最大圧力は、コンロッド先端部側摺動面１２２と連結部側摺動面１４０との密着を解消させ、潤滑剤をコンロッド先端部側摺動面１２２と連結部側摺動面１４０との間に広げることができる圧力である。

図４に示した滑り軸受２０にも図１０と同様に各区画に給油口２４を設けることができる。

４．変形例
次に、図１１を用いて、変形例に係る滑り軸受２２０について説明する。図１１は変形例に係る滑り軸受２２０の平面図である。

図１１の滑り軸受２２０は、第２実施形態の滑り軸受１２０の代わりにサーボプレス機械１１０に採用することができる。滑り軸受２２０は、第２実施形態の滑り軸受１２０とは給油溝１２６の平面視の形状と給油口の形成位置が異なる。湾曲する連結部側摺動面２４０の長手方向に延びる給油溝２２６Ａ〜２２６Ｃが部分的に連続しておらず、給油溝２２６Ａが形成されている場所に開口することにより給油口２２４が設けられている点で第２実施形態の滑り軸受１２０と異なる。なお、大気解放となる給油溝２２６Ｂ及び２２６Ｃが形成されている場所に給油口２２４は設けられていない。

図４に示した滑り軸受２０においても図１１と同様に、給油溝２６が形成されている場所に開口することにより給油口２４を設けることができる。

本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成（機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成）を含む。例えば、偏心軸１３におけるフレーム１２によって回動自在に支持されている部分の上側外周面と、フレーム１２における偏心軸１３を支持する部分の上側内周面との間（図２における点線枠内）において、フレーム１２又は偏心軸１３のいずれかの側に上述した実施形態と同様の潤滑剤供給機構を設けることによって、フレーム１２と偏心軸１３との間に確実に潤滑剤を供給することができる。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

１０，１１０…サーボプレス機械、１１，１１１…スライド、１２…フレーム、１３，１１３…偏心軸、１４，１１４…コンロッド、１４ａ，１１４ａ…先端部、１５，１１５…メインギヤ、１７…ウォームホイール、１８，１１８…サーボモータ、１９，１１９…連結部、２０，１２０，２２０…滑り軸受、２２…偏心軸側摺動面、４０…コンロッド側摺動面、２４，１２４，２２４…給油口、２５…油溜まり部、２６，１２６，２２６Ａ〜２２６Ｃ…給油溝、３０…供給機構、３２，１３２…給油路、３４…給油ニップル、３６…分配器、３８…ポンプ、１２２…コンロッド先端部側摺動面、１４０，２４０…連結部側摺動面、５０…水平ピン、６０…ドライブギヤ、６２…同期分配ギヤ

Claims (9)

1. サーボモータによって回転駆動する偏心軸と、
   前記偏心軸の回転駆動によって昇降するコンロッドと、
   前記コンロッドの昇降によって昇降するスライドと、
   を含むサーボプレス機械であって、
   プレス加工時のプレス負荷が作用する偏心軸側摺動面と、
   プレス負荷が作用すると共に前記偏心軸側摺動面と摺動するコンロッド側摺動面と、
   前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面に開口し、前記偏心軸側摺動面と前記コンロッド側摺動面との間へ潤滑剤を供給する給油口と、
   前記給油口へ潤滑剤を供給する供給機構と、
   を含み、
   前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面には、前記偏心軸側摺動面または前記コンロッド側摺動面の全体に延びる潤滑剤を供給する給油溝が形成され、
   前記給油口は、前記給油溝が形成されていない領域に開口し、
   前記供給機構は、
   プレス負荷が作用している前記コンロッド側摺動面または前記偏心軸側摺動面によって前記給油口が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を前記給油口へ送り出して潤滑剤を加圧し、
   プレス負荷が前記偏心軸側摺動面及び前記コンロッド側摺動面に作用していないプレス未負荷期間に、前記給油口から加圧された潤滑剤を前記偏心軸側摺動面と前記コンロッド側摺動面との間に供給することを特徴とする、サーボプレス機械。
2. 請求項１において、
   前記コンロッド側摺動面は、前記偏心軸と前記コンロッドとの間に介在する滑り軸受の内周面であり、
   前記給油口は、前記滑り軸受に形成されることを特徴とする、サーボプレス機械。
3. 請求項１または請求項２において、
   前記プレス負荷期間における前記給油口における潤滑剤の最大圧力は、前記プレス未負
   荷期間における前記偏心軸側摺動面と前記コンロッド側摺動面とが密着する力を超える力に対応する圧力に設定されていることを特徴とする、サーボプレス機械。
4. サーボモータによって回転駆動する偏心軸と、
   前記偏心軸の回転駆動によって昇降するコンロッドと、
   前記コンロッドの昇降によって昇降するスライドと、
   前記コンロッドの先端部と前記スライドとを連結する連結部と、
   を含むサーボプレス機械であって、
   プレス加工時のプレス負荷が作用するコンロッド先端部側摺動面と、
   プレス負荷が作用すると共に前記コンロッド先端部側摺動面と摺動する連結部側摺動面と、
   前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面に開口し、前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部側摺動面との間へ潤滑剤を供給する給油口と、
   前記給油口へ潤滑剤を供給する供給機構と、
   を含み、
   前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面には、前記コンロッド先端部側摺動面または前記連結部側摺動面の全体に延びる潤滑剤を供給する給油溝が形成され、
   前記給油口は、前記給油溝が形成されていない領域に開口し、
   前記供給機構は、
   プレス負荷が作用している前記連結部側摺動面または前記コンロッド先端部側摺動面によって前記給油口が塞がれているプレス負荷期間に、潤滑剤を前記給油口へ送り出して潤滑剤を加圧し、
   プレス負荷が前記コンロッド先端部側摺動面及び前記連結部側摺動面に作用していないプレス未負荷期間に、前記給油口から加圧された潤滑剤を前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部側摺動面との間に供給することを特徴とする、サーボプレス機械。
5. 請求項４において、
   前記連結部側摺動面は、前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部との間に介在する滑り軸受の内周面であり、
   前記給油口は、前記滑り軸受に形成されることを特徴とする、サーボプレス機械。
6. 請求項４または請求項５において、
   前記プレス負荷期間における前記給油口における潤滑剤の最大圧力は、前記プレス未負荷期間における前記コンロッド先端部側摺動面と前記連結部側摺動面とが密着する力を超える力に対応する圧力に設定されていることを特徴とする、サーボプレス機械。
7. 請求項１〜６のいずれか１項において、
   前記給油口は、前記給油口へ向かう給油路の横断面の面積よりも広い開口面積を有する油溜まり部を含むことを特徴とする、サーボプレス機械。
8. 請求項１〜７のいずれか１項において、
   前記給油口は、前記スライドが下死点にあるときにプレス負荷を最も受ける部分以外の領域に形成されていることを特徴とする、サーボプレス機械。
9. 請求項１〜８のいずれか１項において、
   複数の潤滑剤吐出ブロックからなる分配器と、
   前記分配器へ潤滑剤を送り出すポンプとを備え、
   前記複数の潤滑剤吐出ブロックはいずれも前記給油口に接続されており、
   前記プレス加工に伴って前記給油口が塞がれている間に、前記潤滑剤吐出ブロックから前記潤滑剤が吐出されることによって前記潤滑剤が加圧されることを特徴とする、サーボプ
   レス機械。

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