JP6612014B2 - 耐震補強装置、耐震補強構造、耐震建家、耐震補強方法 - Google Patents
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Description
また、これら住宅の殆どは木造軸組構造の建物であり、耐震性が不足しているものが多く、耐震補強が必要とされている。
しかし、現実には耐震補強への歩みは遅く、耐震補強が必要な住宅が1500万棟以上あるにもかかわらず、その対策が進んでいないのが現状である。
例えば、特許文献1では、特殊な形状の制震素子を有する制震デバイスが提供されている。これは制震素子の塑性曲げ変形によって、建物構造枠に作用する地震力を吸収し、建物の変形を防止するものであり、これにより耐震補強を行うことができる。しかし、この制震デバイスを既存の建物に設置するには、天井や床の一部を取り外すなど工事が比較的大掛かりになり、居住者にとって負担が大きいという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、建家の外部から耐震壁の取付け部材を兼ねた水平繋梁を介して新たに耐震壁構面を取り付けるので、たとえ昭和55年改正の新耐震基準以前の物件であっても簡便に取り付けることが可能で、居住者に大きな負担を与えずに耐震強度の高い耐震補強構造を提供するものである。
また、本発明の外付け耐震壁構面は、補強を要する既存建家壁面に並行に外壁から若干のクリアランスをとって所要数だけ取り付ければよいので、設置スペースが節約できるというメリットがある。
具体的には、本発明の外付け耐震壁構造には次のような効果がある。
(1)既設建家の構造種別を問わず、木造でも鋼構造でも適用できる耐震補強構造を提供できる。
(2)既存建家を壊さずに外壁の外側からワンサイドで耐震ブラケットと耐震壁構面の取り付けが可能で、設置場所をとらずに済む。
(3)後述するように、設置が非常に簡便で、居住者の煩わしさを軽減する。
(4)既設建家の桁梁にワンサイドで直接耐力ブラケットを介して耐震壁構面を設置するので、地震力をダイレクトに吸収し、高性能が期待できる。
(5)温度依存性がなく、屋外でも性能に変化がない。
(6)繰り返しの余震にも耐え得る靱性ある構造である。
(7)簡単構造で施工性が良く、耐久性のある金属製でローコストである。また、従来の技術よりも更に簡便な工事で済むので、建築年度の経った建家であっても大掛かりな工事を行うことなく耐震補強を行うことができる。
本発明は、既存建家1に制震機能を備えた耐震壁構面11(制震手段としての耐震壁構面11)を外壁の外側に取り付けて、既存建家の耐震補強をするものである。なお、本発明は、木造構造の建家に対しても、鉄骨構造(非木造)の建家に対しても耐震補強できるものであるが、ここでは鉄骨構造の建家を例に説明する。また本発明は新築建家の耐震補強にも利用できる構造であるが、主に既存建家を補強するものであるので、ここでは既存建家を例に説明する。なお、「建家」とは既に建っている家屋だけでなく、新築の家も含む場合があるものとする。さらに本明細書において「耐震壁構面」とは「耐力耐震壁構面」の略称であるが、これに限らず制震機能を伴わない耐力壁構面をも含む場合があるものとする。
支柱12bは、内側側面の上段部に止め金具15bを備え、内側側面の下段部に止め金具15dを備え、内側側面の中段部に制震素子14bを備える。
制震素子14とは、例えば、特願2008−130300号に記載された略Ω状の形状をした素子(図2)であり、制震素子の塑性曲げ変形により建家に作用する地震の力を吸収するものである。なお、制震機能のない耐力壁構面にあっては制震素子に変えて止め金具15はこれと同構の固定金具を転用する。
まず、柱頭部17の固定方法について説明する。柱頭部17を固定するためには、耐力ブラケット21を取り付ける部分の外壁16を必要範囲だけ切欠き、既設構造体である建家の桁梁を露出させたうえ、桁梁3側面に上端設置手段を設ける。この上端設置手段は、先ず耐力ブラケット21をワンサイドから桁梁3に螺接したのち、耐力ブラケット21のアームの先端部分に、桁梁3に沿って水平に水平繋梁22を設置する。
耐力ブラケット21は、四角形の底面板27と2枚の対向する三角形のアーム板26とからなる。アーム板26の桁梁3側の切断面には連結穴が設けられ、2枚のアーム板26同士が主柱12を挟むようにして、ボルトとナットあるいはワンサイドボルト等で強固に連結されている。また、アーム板26の底辺と底面板27の上面とは溶着されている。また、底面板27には水平繋梁22を緊結するための連結穴が設けられている。
耐震壁構面11は、既存建家1の外壁16との間に若干の空間31が生じるように取り付けることが好ましい。即ち、耐震壁構面11の支柱中心と既存建家1の外壁中心との間には約100mm程度の間隔を設け、耐震壁構面11と既存建家1とが地震加振時に接触しないようにする。これにより地震が生じた際に、耐震壁構面11と既存建家1とが干渉して、取り付け部分が破損したり、外壁16に傷がつくことを防止できるからである。なお、両者の間隔は選択事項であり100mmに限らない。
耐力ブラケット21は既存建家1の外壁に切欠きを設けて設置するのであるが、帯状の連続切欠き部を設けると既存建家1に何らかの耐力欠損をもたらすことになるが、ここでは点状に耐力ブラケット21を設けるので既存建家1への負担を最小限にできるのである。
また、既存建屋の桁梁3と水平繋梁22が一体となってより強固に耐震補強され、既存建家1に作用する地震力を耐震壁構面に確実に伝達することになり、既存建家への地震力の負担を最小限にすることができる。
アーム板63と背面板61はコの字型に折り曲げられ、底面板27に溶着されている。背面板62には既存建家1の桁梁3との連結穴が設けられている。
耐力ブラケット21は、既存建家1の桁梁3への取り付けに際して、既存建家1の主柱4の位置に関係なく、桁梁3へのウェブに外側からワンサイドボルトで緊結される。
また、底面板61には桁梁3の下フランジと水平繋梁22を緊結するための連結穴が設けられている。
本実施例の場合、外付け耐震壁構面11を既存建家1(外壁16)の任意の位置に設置することができ、非常に有効である。
図6および図7の耐力ブラケット21の詳細を図8に示す。図8で図示した通り、耐力ブラケット21は、既存建家1の桁梁3の外部に面する側面に取り付けるための四角形の背面板71と、この中央部に垂直に取り付けられるほぼ三角形状のアーム板72(アーム部)および背面板71とアーム板72を水平に接続する水平振れ止め板73(アーム板72が水平方向に振れることを防止する水平振れ止め手段)とからなり、水平振れ止め板73の外側には水平繋梁22を取り付けるアングル74が溶着されている。この構造の耐力ブラケット21と水平繋梁22とを木造の既存建家1に装着することによって確実に地震水平力を外付け耐震壁構面11に伝達することができる。また、水平振れ止め板73を設けることにより耐力ブラケット21の数を少なくすることができる。
まず、耐力ブラケット21を取り付けるため、既存建家1の外壁に複数の切欠きを点状に設ける。切り欠く部分は耐力ブラケット21を取り付ける部分のみであり、切欠く大きさは耐力ブラケット21の背面(取り付け部分)とほぼ同じ大きさを切り欠く。このように切欠く部分を最小限にすることにより、既存建家1の耐力の欠損を最小限にすることができる。
2 基礎
3 桁梁
4 主柱
11 耐震壁構面
16 外壁
21 耐力ブラケット
22 水平繋梁
Claims (6)
- 軸組構造建家の耐震補強構造において、
前記軸組構造建家の桁梁の外側の任意の位置に所定の間隔で取付け可能な複数のブラケットのみを介して水平に固定されて前記桁梁に伝わった地震力を受けるための水平繋梁と、
前記水平繋梁の任意の位置の下部と基礎とのみに取付可能であり、かつ前記水平繋梁が受けた地震力を受けるための一対の縦材と、前記一対の縦材を繋いで設けられて前記一対の縦材が受けた地震力を受ける耐震手段または制震手段と、を備えた耐震壁構面と、
を備えることを特徴とする耐震補強構造。 - 前記耐震壁構面は、前記軸組構造建家の外壁との間に所定の空間が生じるよう設置されていることを特徴とする請求項1記載の耐震補強構造。
- 前記ブラケットは、前記ブラケットのアーム部が水平方向に振れることを防止するための水平振れ止め手段を備えることを特徴とする請求項1乃至2記載の耐震補強構造。
- 軸組構造建家の耐震補強装置において、
前記軸組構造建家の桁梁の外側の任意の位置に所定の間隔で取付け可能な複数のブラケットのみを介して水平に固定されて前記桁梁に伝わった地震力を受けるための水平繋梁と、
前記水平繋梁の任意の位置の下部と基礎とのみに取付可能であり、かつ前記水平繋梁が受けた地震力を受けるための一対の縦材と、前記一対の縦材を繋いで設けられて前記一対の縦材が受けた地震力を受ける耐震手段または制震手段と、を備えた耐震壁構面と、
を備えることを特徴とする耐震補強装置。 - 軸組構造建家の耐震建家において、
前記軸組構造建家の桁梁の外側の任意の位置に所定の間隔で取付け可能な複数のブラケットのみを介して水平に固定されて前記桁梁に伝わった地震力を受けるための水平繋梁と、
前記水平繋梁の任意の位置の下部と基礎とのみに取付可能であり、かつ前記水平繋梁が受けた地震力を受けるための一対の縦材と、前記一対の縦材を繋いで設けられて前記一対の縦材が受けた地震力を受ける耐震手段または制震手段と、を備えた耐震壁構面と、
を備えることを特徴とする耐震建家。 - 軸組構造建家の桁梁の外側に所定の間隔で取付け可能な複数のブラケットのみを介して水平に固定される水平繋梁と、前記水平繋梁の下部と基礎とのみに繋がれて固定される耐震機能または制震機能のうち少なくとも一方を備えた耐震壁構面とを備える耐震補強装置を用いた耐震補強方法であって、
前記桁梁の外側の任意の位置に前記複数のブラケットを所定の間隔で取付ける工程と、
前記複数のブラケットを繋いで前記桁梁に伝わった地震力を受けるための前記水平繋梁を水平に固定する工程と、
前記水平繋梁の任意の位置の下部と前記基礎とのみに取付可能であり、かつ前記水平繋梁が受けた地震力を受けるための一対の縦材と、前記一対の縦材を繋いで設けられて前記一対の縦材が受けた地震力を受ける耐震手段または制震手段と、を備えた耐震壁構面を固定する工程と、
を備えることを特徴とする耐震補強方法。
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