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JP6698400B2 - 赤外線遮蔽透明部材用樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

赤外線遮蔽透明部材用樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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JP6698400B2 JP2016065989A JP2016065989A JP6698400B2 JP 6698400 B2 JP6698400 B2 JP 6698400B2 JP 2016065989 A JP2016065989 A JP 2016065989A JP 2016065989 A JP2016065989 A JP 2016065989A JP 6698400 B2 JP6698400 B2 JP 6698400B2
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Description

本発明は赤外線吸収性能をもつ無機材料としての複合タングステン酸化物微粒子および特定のヒンダードアミン系光安定剤を含むポリカーボネート樹脂組成物ならびに該ポリカーボネート樹脂組成物から成る自動車用等の車両用窓部材、車両用灯具、建築材用窓部材に関する。
赤外線遮蔽性能を有する透明材料は室内の温度上昇抑制や人の体感温度上昇を抑制する効果があり、自動車用途や建材用途等の窓部材に用いることに環境負荷低減への効果が期待される。特に透明樹脂に赤外性線遮蔽性能を付与することによる軽量化とサーマルマネージメントの観点からCO排出量抑制など環境負荷低減への効果は大きい。そこで、赤外線遮蔽性能を発現する手法としてはいくつか技術がある。特許文献1のような金属蒸着膜を付与して赤外線遮蔽性能を発現する方法は作成コストが高い。特許文献2のような薄膜積層型のフィルムも作成コストが高いことに加え後加工するため熱を加えると性能が低下してしまう可能性がある。コストを抑える条件として特許文献3のように樹脂に練りこみ成形するものがあるが、赤外線遮蔽性能を発現するために透明性を損なうものが多い。さらに、特許文献4のように透明性を維持しながら性能を確保するものや、特許文献5のように耐光性を高める効果が発現するものもあるが、継時的に赤外線遮蔽性能が劣化する可能性があり、赤外線遮蔽性能の耐湿熱性の向上が求められている。
特開平7−187727号公報 特表平9−506837号公報 特開2008−44609号公報 特開2011−168636号公報 特開2006−282736号公報
本発明の目的は、高い透明性を保ちながら耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能を有する樹脂組成物およびそれから成る成形品を得ることである。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に複合タングステン酸化物微粒子および特定のヒンダードアミン系光安定剤を配合することで、耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能と可視光領域の高い透過性を示すポリカーボネート樹脂組成物およびそれから成る成形品が得られることを見出した。すなわち、上記課題は、(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)下記式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤(B成分)0.01〜1重量部および(C)一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子(C成分)0.0001〜0.2重量部を含有する樹脂組成物により達成される。
以下、本発明の各構成成分の詳細について説明する。
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
本発明でA成分として使用されるポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応方法の一例として界面重合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンなどが挙げられる。好ましい二価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカンであり、なかでも耐衝撃性の点からビスフェノールAが特に好ましい。
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、炭酸ジエステルまたはハロホルメートなどが使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメートなどが挙げられる。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によってポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤などを使用してもよい。また本発明のポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂、二官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート樹脂、並びにかかる二官能性カルボン酸および二官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネート樹脂を含む。また、得られたポリカーボネート樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる量は、芳香族ポリカーボネート全量中、好ましくは0.001〜1モル%、より好ましくは0.005〜0.9モル%、さらに好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、好ましくは0.001〜1モル%、より好ましくは0.005〜0.9モル%、さらに好ましくは0.01〜0.8モル%である。尚、かかる割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。二官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびトリシクロデカンジメタノールなどが例示される。
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピリジンなどが用いられる。
有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどの単官能フェノール類を用いるのが好ましい。更に単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。これらの比較的長鎖のアルキル基を有する単官能フェノール類は、流動性や耐加水分解性の向上が求められる場合に有効である。
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間、反応中のpHは通常10以上に保つのが好ましい。
溶融法による反応は、通常二価フェノールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールと炭酸ジエステルを混合し、減圧下通常120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には133Pa以下にして生成したフェノール類を系外に除去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
重合速度を速めるために重合触媒を使用することができ、重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用しても良いし、二種類以上を併用して使用しても良い。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
また、重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートなどの化合物を加えることができる。
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
上記以外の反応形式の詳細についても、成書及び特許公報などで良く知られている。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、14,000〜100,000であることが好ましく、20,000〜30,000がより好ましく、22,000〜28,000がさらに好ましく、23,000〜26,000が特に好ましい。上記範囲を超えて分子量が低すぎる場合にはハードコート剤に対する耐性が不十分となりやすく、上記範囲を超えて分子量が高すぎる場合には射出成形が困難となり成形品の割れや不均一な陰影が生じやすくなる。上記の好適な範囲においてはハードコート剤に対する耐性が十分な分子量において、本発明の樹脂組成物は樹脂流動の乱れにより生じる成形品の不均一な陰影が低減可能であり、ハードコート層を有する良好なポリカーボネート樹脂成形体の形成を可能とする。更により好ましい範囲においては、耐衝撃性と成形加工性との両立に優れる。尚、上記ポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量が上記範囲外のものを混合して得られたものであってもよい。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
本発明におけるポリカーボネート樹脂の態様として以下のものを挙げることができる。すなわち、粘度平均分子量70,000〜300,000の芳香族ポリカーボネート(PC−i)、および粘度平均分子量10,000〜30,000の芳香族ポリカーボネート(PC−ii)からなり、その粘度平均分子量が15,000〜40,000、好適には20,000〜30,000である芳香族ポリカーボネート(以下、“高分子量成分含有芳香族ポリカーボネート”と称することがある)も使用できる。
かかる高分子量成分含有芳香族ポリカーボネートは、PC−iの存在によりポリマーのエントロピー弾性を大きくし本発明において好適な射出プレス成形時においてより有利となる。例えばヘジテーションマークなどの外観不良はより低減でき、その分射出プレス成形の条件幅を広げることが可能である。一方PC−ii成分の低い分子量成分は全体の溶融粘度を低下し、樹脂の緩和を促進して、より低歪の成形を可能とする。尚、同様の効果は分岐成分を含有するポリカーボネート樹脂においても認められる。
(B成分:ヒンダードアミン系光安定剤)
ヒンダードアミン系光安定剤は一般にHALS(Hindered Amine Light Stabilizer)と呼ばれ、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を構造中に有する化合物であるが、本発明の樹脂組成物はB成分として、下記式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤を含有することが必要である。
なお、他のヒンダードアミン系光安定剤を使用した場合、耐湿熱性試験後のヘーズの上昇が大きくなり、また赤外線吸収性能の耐湿熱性が向上しない。
B成分の含有量は、A成分100重量部に対し、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.08〜0.7重量部、特に好ましくは0.1〜0.5重量部である。B成分の含有量が1重量部より多いと、耐湿熱性試験後のヘーズが上昇する。また、0.01重量部未満であると、赤外線吸収性能の耐湿熱性が向上しない。
(C成分:複合タングステン酸化物微粒子)
本願発明でC成分として使用される複合タングステン酸化物微粒子は一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.1≦x≦0.5、0.5≦y≦1.5、2.0≦z≦3.5)で表され、Mはアルカリ金属が好ましく、Csがさらに好ましい。平均粒径は35〜60nmであることが好ましく、38〜55nmがより好ましく、42〜50nmがさらに好ましい。粒径が35nmよりも小さいと赤外線遮蔽性能の耐湿熱性が低下する場合があり、60nmを超えると、曇り度が高くなり透明用途としての使用が困難になる場合がある。ここで、平均粒子径は、X線回折測定の半価幅の測定結果からシェラーの方法で算出される平均粒子径である。
C成分の含有量はA成分100重量部に対し、0.0001〜0.2重量部であり、好ましくは0.001〜0.1重量部であり、より好ましくは0.004〜0.05重量部である。含有量が0.0001重量部未満では赤外線遮蔽性能の効果を十分発現せず、0.2重量部を超えると、全光線透過率を維持することが困難になる。さらに、耐湿熱性試験後のヘーズも上昇し、また赤外線吸収性能の耐湿熱性も向上しない。
(D成分:熱安定剤)
本発明の樹脂組成物はD成分として、熱安定剤を含有することが好ましい。熱安定剤としては、リン系熱安定剤(D−1成分)、ヒンダードフェノール系熱安定剤(D−2成分)およびイオウ系熱安定剤(D−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱安定剤が好ましい。D成分の含有量はA成分100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部であることが好ましく、0.001〜0.08重量部であることがより好ましく、0.01〜0.07重量部であることがさらに好ましい。含有量が0.0001重量部未満では熱安定性の効果を発現することが難しくなる場合があり、0.1重量部を超えると複合タングステンと併用した際成形時の色相安定性を維持することが難しくなる場合がある。
(D−1成分:リン系熱安定剤)
リン系熱安定剤は、芳香族ポリカーボネートの熱安定剤として既に広く知られている。本発明においてはリン系熱安定剤は、樹脂組成物が極めて過酷な熱負荷に耐え得る程度まで、その熱安定性を高める。リン系熱安定剤としては主にホスファイト化合物とホスホナイトが上げられる。
ここで、ホスファイト化合物としては例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが例示される。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどが例示される。
ホスホナイト化合物としては、例えばテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトなどが挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物はアルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
(D−2成分:ヒンダードフェノール系熱安定剤)
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系熱安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。ヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量は、A成分100重量部に対し、0.0001〜0.1重量部が好ましく、0.0005〜0.08重量部がより好ましく、0.002〜0.05重量部が更に好ましく、0.005〜0.05重量部が特に好ましい。
(D−3成分:イオウ系熱安定剤)
イオウ系化合物として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
(E成分:紫外線吸収剤)
本発明の樹脂組成物は、塗装などを施すことなく使用される場合がある。かかる場合には良好な耐光性を要求される場合があるため紫外線吸収剤を配合することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系では、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
ベンゾトリアゾール系では、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル、並びに2−(2’−ヒドロキシ−5−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2−(2’―ヒドロキシ−5−アクリロキシエチルフェニル)―2H―ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2−ヒドロキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4−ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
環状イミノエステル系では、例えば2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
シアノアクリレート系では、例えば1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。前記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
上記化合物の中でも、本発明において、下記式(2)、(3)および(4)のいずれかで表される化合物がより好適に用いられる。
上記紫外線吸収剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
E成分の含有量は、A成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜1重量部であり、より好ましくは0.1〜0.7重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部である。E成分の含有量が0.1重量部未満であると、十分な耐光性が発現しない場合があり、1重量部より多いとガス発生による外観不良や物性低下が発生する場合がある。
(F成分:離型剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、その成形時の生産性向上や成形品の歪みの低減を目的として、更に離型剤を配合することが好ましい。かかる離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、3〜32の範囲、より好適には5〜30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明の脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3〜32であることが好ましく、特に炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、ベヘン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14〜20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。
ステアリン酸やパルミチン酸など上記の脂肪族カルボン酸は通常、牛脂や豚脂などに代表される動物性油脂およびパーム油やサンフラワー油に代表される植物性油脂などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明の脂肪酸エステルの製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる脂肪族カルボン酸、殊にステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。
本発明の脂肪酸エステルは、部分エステルおよび全エステル(フルエステル)のいずれであってもよい。しかしながら部分エステルでは通常水酸基価が高くなり高温時の樹脂の分解などを誘発しやすいことから、より好適にはフルエステルである。本発明の脂肪酸エステルにおける酸価は、熱安定性の点から好ましく20以下、より好ましくは4〜20の範囲、更に好ましくは4〜12の範囲である。尚、酸価は実質的に0を取り得る。また脂肪酸エステルの水酸基価は、0.1〜30の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下が好ましい。尚、ヨウ素価は実質的に0を取り得る。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
F成分の含有量は、A成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜0.5重量部、より好ましくは0.01〜0.4重量部、更に好ましくは0.05〜0.3重量部である。かかる範囲においては、ポリカーボネート樹脂組成物は良好な離型性および離ロール性を有する。特にかかる量の脂肪酸エステルは良好な色相を損なうことなく良好な離型性および離ロール性を有するポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
本発明の樹脂組成物は、高い透明性を保ちながら耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能を有するため、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明者の実施する形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例などにより何ら制限されるものではない。また、以下“部”は特に断りのない限り“重量部”を、%は“重量%”を示す。
(実施例1〜12および比較例1〜5)
(1)樹脂組成物の作成
(1−1)使用原料
(A成分)
A−1:下記製法により得られた分子量24,200のポリカーボネート樹脂パウダー
バッフル付反応容器に、三段六枚羽根の攪拌機および還流冷却管を取り付けた。この反応容器に、ビスフェノールA45.6部、p−tert−ブチルフェノールをビスフェノールAに対して2.78モル%、ジクロロメタン265部及び水200部を入れ、反応容器内の酸素を除去する為に窒素パージを行った。尚、かかる段階で反応容器中の内容物は、容器容量の8割弱であった。次に、上記懸濁液にナトリウムハイドロサルファイト0.09部および水酸化ナトリウム21.8部を供給するための水溶液約80部を供給し、15℃でビスフェノールAを溶解した。撹拌下、この混合物にホスゲン23.35部を30分間で供給した。その後、トリエチルアミン0.016部(ビスフェノールAに対して0.08モル%)を添加して60分間攪拌し、反応を終結させた。その後、反応混合物を静置し、有機相を分液した。得られたポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液に塩化メチレンを加えて14重量%の濃度の溶液とし、更に多孔板付遠心抽出機(川崎エンジニアリング(株)製KCC遠心抽出機)を用いて0.5%水酸化ナトリウム水溶液を流量1,000ml/min、有機相を流量1,000ml/minの速度で供給し、3,500rpmの条件で処理した後、有機相を塩酸酸性とし、その後水洗を繰り返し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで塩化メチレンを蒸発してポリカーボネート樹脂パウダーを得た。
(B成分)
B−1:上記式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン(株)製 Tinuvin622 SF(製品名))
B−2:ヒンダードアミン系光安定剤(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(城北化学工業(株)製 JF−90(製品名))
(C成分)
C−1:Cs0.33WO約23重量%および有機分散樹脂からなる熱線吸収剤(住友金属鉱山(株)製YMDS−874)
(D成分)
D−1:リン系熱安定剤(クラリアントジャパン(株)製P−EPQ)
D−2−1:リン系熱安定剤(BASFジャパン(株)製 Irgafos 168(製品名))
D−2−2:ヒンダードフェノール系熱安定剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製:Irganox1076)
D−3:イオウ系熱安定剤(旭電化工業(株)製AO412S)
(E成分)
E−1:ベンゾトリアジン系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティケミカルズ社製:Tinuvin1577)
E−2:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ケミプロ化成(株)社製ケミソーブ79)
(F成分)
F−1:脂肪酸フルエステル(コグニスジャパン(株)製:VPG861)
F−2:脂肪酸部分エステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
(2)試験片作成
(2−1)樹脂組成物の製造
表1および表2に記載の各成分を表1および表2記載の割合で計量して混合しブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、C成分の含有量は括弧内に示したC−1に含まれる無機系紫外線吸収材料であるCs0.33WOの量である。(括弧外の数字はC−1の樹脂組成物中の重量部を表す。)ポリカーボネート樹脂に添加する添加剤はそれぞれ配合量の10〜100倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂との予備混合物として作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量20kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで280℃とした。尚、上記の樹脂組成物の製造はHEPAフィルターを通した清浄な空気が循環する雰囲気において実施し、また作業時に異物の混入がないよう十分に注意して行った。
(2−2)試験片作成方法
得られたペレットを110〜120℃で6時間熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機[住友重機械工業(株)製SG260M−HP]により、シリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で評価用の試験片である幅150mm×長さ150mm×厚さ2mmおよび5mm並びに幅50mm×長さ50mm×厚さ18mmの板を成形した。
(3)評価項目
(3−1)耐湿熱性試験後の赤外線遮蔽性能の変化量
各厚みの試験片から50mm角の試験片を切り出した。その分光光線を(株)日立ハイテクノロジーズ製分光光線測定器U−4100を用いて初期のTotal transmission of solar energy(Tts)をISO13837に準拠して算出した。次に、かかる試験片をプレッシャークッカー試験機TPC−412(ESPEC株式会社製)で120℃、95%Rhの条件にて40時間の湿熱処理を行い、上記方法と同様の方法でTtsを算出した。湿熱処理後のTtsと初期のTtsの差(湿熱処理後のTts−初期のTts)を算出し、耐湿熱性試験前後の赤外線遮蔽性能の変化量(ΔTts)とした。結果を表1および表2に示す。
(3−2)全光線透過率
試験片から50mm角の試験片を切り出し、(株)村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHR−100を用いISO13468に準拠して全光線透過率を測定した。結果を表1および表2に示す。
(3−3)耐湿熱試験後のヘーズ
各厚みの試験片から50mm角の試験片を切り出した。次に、かかる試験片をプレッシャークッカー試験機TPC−412(ESPEC株式会社製)で120℃、95%Rhの条件にて40時間の湿熱処理を行い、(株)村上色彩技術研究所製ヘーズメーターHR−100を用いISO13468に準拠してヘーズを測定した。結果を表1および表2に示す。
上記表から明らかなように、本発明によれば、ポリカーボネートに複合酸化タングステンと特定のヒンダードアミン系光安定剤を添加することによって、高い透明性を保ちながら耐湿熱性が良好な赤外線遮蔽性能を有する樹脂組成物およびそれからなる成形品が得られることが分かる。
本発明は、車輌用グレージング材、特にバックドアウインドウ、サンルーフ、およびルーフパネルに好適なポリカーボネート樹脂成形体を提供するが、本発明の成形体は、その特有の特徴から車輌用グレージング材以外にも、建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、および温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、ミラー、眼鏡、ゴーグル、消音壁、バイクの風防、銘板、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用カバー、タッチパネル、並びに遊技機(パチンコ機など)用部品(回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などの幅広い用途に使用可能である。したがって本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具および雑貨などの各種用途に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。

Claims (8)

  1. (A)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)下記式(1)で表されるヒンダードアミン系光安定剤(B成分)0.01〜1重量部および(C)一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子(C成分)0.0001〜0.2重量部を含有する樹脂組成物。
    [式中、n=10.9〜14.0である。]
  2. A成分100重量部に対し、(D)熱安定剤(D成分)0.0001〜0.1重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. D成分が、リン系熱安定剤(D−1成分)、ヒンダードフェノール系熱安定剤(D−2成分)およびイオウ系熱安定剤(D−3成分)からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱安定剤である請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. A成分100重量部に対し、(E)紫外線吸収剤(E成分)0.1〜1重量部を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
  5. A成分100重量部に対し、(F)離型剤(F成分)0.0001〜0.5重量部を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物よりなる成形品。
  7. 表面にハードコート処理を施される請求項6に記載の成形品。
  8. 成形品が車両用窓部材、車両用灯具もしくは建築材用窓部材である請求項6または7に記載の成形品。
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