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JP6686581B2 - 炭化珪素半導体素子および炭化珪素半導体素子の製造方法 - Google Patents

炭化珪素半導体素子および炭化珪素半導体素子の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、半導体材料として炭化珪素(SiC)を用い、特に、半導体基板のおもて面側から裏面側に電流を流す炭化珪素半導体素子および炭化珪素半導体素子の製造方法に関する。
炭化珪素半導体は、シリコン(Si)半導体と比較して大きなバンドギャップを持つため、高い絶縁破壊電界強度を有する。導通状態における抵抗であるオン抵抗は、その絶縁破壊電界強度の3乗に逆比例するため、例えば広く用いられている4H型と呼ばれる炭化珪素半導体(四層周期六方晶:4H−SiC)においては、そのオン抵抗をシリコン半導体の数100分の1に抑制することができる。
このため、炭化珪素半導体は、放熱が容易となる大きな熱伝導度の特性ともあいまって、次世代の低損失な電力用半導体素子としての期待が持たれている。例えば、炭化珪素半導体を用いて、ショットキーバリアダイオードやMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)、PNダイオード、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)など様々な構造の炭化珪素半導体素子が開発されている。
そして、炭化珪素半導体素子を形成する上で重要なオーミック電極の材料や形成方法が示されている(例えば、下記特許文献1参照。)。n型領域においては、材料としてニッケル(Ni)を用いて、減圧下または不活性ガス雰囲気においておよそ1000℃の加熱を行うことにより、ニッケルシリサイドを形成し、このシリサイドがオーミック電極として機能することが示されている。
一方で、MOSFETにおけるオーミック電極は、ゲート酸化膜、ゲート電極および層間絶縁膜を形成した後に、層間絶縁膜に開口されたオーミックコンタクトホール内部に形成される。このようなオーミック電極を形成する際のアニールにより、MOS界面で予期しない反応が進行し、MOS界面特性に深刻なダメージを与えることから、アニール温度を850℃以下に抑える必要があることが示されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
オーミック電極を形成する際のアニールを850℃以下に抑制する技術が開示されている(例えば、下記特許文献3参照。)。この技術では、ニッケル珪素合金を形成した後に700℃以下で熱処理し、炭化珪素半導体基板とニッケル珪素合金を反応させずに、ニッケル珪素合金の固相反応によりシリサイドを形成する。また、ニッケル珪素合金を形成後にレーザー照射を用いて局所的に短時間熱処理し、オーミック電極表面に到達する炭素量をニッケル元素より少ない濃度に抑制する技術が開示されている(例えば、下記特許文献4参照。)。
また、珪素基板上でニッケルシリサイドを形成する際に、ニッケル膜厚とアニール温度を規定することにより、形成されるニッケルシリサイドの組成を制御できることが開示されている。これは、ニッケルと珪素の接触界面における固相反応がおよそ250℃から始まり、温度にしたがって進行し、形成されるニッケルシリサイドの組成がニッケル膜厚により、一義的に決まるためと示されている。
特開平01−268121号公報 特開2003−243654号公報 特開平07−99169号公報 特開2012−99598号公報
しかし、特許文献3に記載された技術では、オーミック電極と炭化珪素半導体基板との反応を抑制しているため、オーミック電極と炭化珪素半導体基板とが密着していないか、または、部分的な密着部位しか有しないために、長時間の駆動を行った際に膜剥がれが起き、オーミック電極として機能しない欠点を有している。
また、特許文献4の技術では、レーザーを用いて、局所的に短時間、吸収波長の異なる金属膜または炭化珪素基板を直接加熱する方法であるため、金属膜の厚さや炭化珪素基板の厚さの影響により加熱状態がばらつきやすい課題を有している。
また、特許文献4では、炭化珪素基板の吸収波長より短い波長のレーザーを用いることが望ましいことが述べられている。この場合、炭化珪素基板がレーザーにより加熱され、これによりニッケル珪素合金または、ニッケルと炭化珪素基板が反応し、電極表面側までシリサイド化が進行し、炭化珪素基板から供給された炭素が拡散する過程を経る。このため、オーミック電極部に隣接するゲート酸化膜も、炭化珪素基板の熱伝導により特許文献1と同様の温度まで加熱される恐れがある。
これを抑制するためにレーザー照射を抑制すると、シリサイド化が抑制され、特許文献3と同様に、炭化珪素半導体基板と密着が弱く、長時間の駆動を行った際に膜剥がれが起き、オーミック電極として機能しない欠点を有し、安定してオーミック電極を形成することが難しい欠点を有している。
本発明は上記課題に鑑み、MOS界面での反応を極力抑えるために、接触抵抗が低く長期にわたり駆動信頼性に優れるオーミック電極が形成できることを目的とする。
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するために、この発明にかかる炭化珪素半導体素子は、炭化珪素半導体基板と、前記炭化珪素半導体基板の表面に設けられ、コンタクト電極として機能するニッケルシリサイド膜と、前記ニッケルシリサイド膜と前記炭化珪素半導体基板と異なる側で接合する取り出し電極と、を有し、前記ニッケルシリサイド膜は、前記炭化珪素半導体基板側が主にNiSi相からなり、前記取り出し電極側が主にNi2Si相からなり、かつ、前記ニッケルシリサイド膜は、前記炭化珪素半導体基板側で炭素を含有し、前記取り出し電極側で炭素を含まないことを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法は、上記目的を達成するために、炭化珪素半導体基板の表面に形成された絶縁膜を弗素系ガスおよび希ガスを用いたドライエッチングにより除去する工程と、前記炭化珪素半導体基板の表面に20at%以上40at%以下の珪素を含むニッケル膜を選択的に形成する工程と、前記炭化珪素半導体基板を支持体からの熱伝導により間接的に温度を印加するアニール処理によりシリサイドを形成する工程と、を有し、前記アニール処理は、700℃よりも高く、850℃以下で行われることを特徴とする。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法は、上述した発明において、前記アニール処理は、400℃までの昇温および保持過程1と、前記昇温および保持過程1の後に850℃以下までの昇温および保持過程2を有し、前記昇温および保持過程1の全時間が、前記昇温および保持過程2の全時間に比べて長いことを特徴とする。
上述した発明によれば、700℃よりも高く850℃以下で熱処理することにより、n-型炭化珪素基板1側にNiSi相が層状に形成され、取り出し電極側にNi2Si相が形成され、炭素を含有しないオーミックコンタクト電極部を形成することができる。そして、従来より低温でオーミック電極を形成することで、接触抵抗が低く高性能で長期にわたる駆動信頼性を得ることができる。
本発明によれば、接触抵抗が低く長期にわたり駆動信頼性に優れるオーミック電極が形成できるようになる。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の断面図である。 図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の各温度でのNiSi相の厚さと炭素含有量を示す図表である。 図3は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の熱印加特性(アニールシーケンス)を示す図表である。(その1) 図4は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の熱印加特性(アニールシーケンス)を示す図表である。(その2) 図5は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の熱印加特性(アニールシーケンス)を示す図表である。(その3) 図6は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の各熱印加特性におけるコンタクト抵抗を示す図表である。 図7は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の希弗酸への浸漬時間と、TLM法により測定した接触抵抗とNiSi相の厚さを示す図表である。
本願発明者の検討の結果、炭化珪素半導体とニッケル界面の固相反応よりも、炭化珪素半導体とニッケルシリサイド界面の固相反応が、より低温で起こることを見出した。これは、炭化珪素中の炭素が、ニッケルシリサイド中の珪素と結合する機構を有するため、炭化珪素中の珪素がニッケル側に拡散しやすいためと推定している。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、本明細書では、ミラー指数の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数を表している。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法について、p型ウェル領域とn型ソース領域とをそれぞれイオン注入で形成する二重注入(Double Implante)プロセスによって二重注入型MOSFET(DIMOSFET)を作製(製造)する場合を例に説明する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の断面図である。炭化珪素半導体素子の製造について説明する。例えば一方の主表面にn-型炭化珪素エピタキシャル層が積層された、炭化珪素の四層周期六方晶(4H−SiC)からなるn-型炭化珪素単結晶半導体基板(以下、n-型炭化珪素基板とする)1を用意する。
次に、n-型炭化珪素基板(n-型炭化珪素エピタキシャル層の表層)1にp型ウェル領域2と、p型ウェル領域2の内部に、p型コンタクト領域3とn型ソース領域4とをイオン注入により形成する。
このイオン注入は、p型ウェル領域2、p型コンタクト領域3、n型ソース領域4の形成時に、それぞれ対応する開口部を有する酸化珪素膜等のイオン注入用マスクが形成されたn-型炭化珪素基板1をイオン注入装置に導入して行う。n型の領域は、燐イオンまたは窒素イオンを注入して形成する。p型の領域は、アルミニウムイオン等を注入して形成する。これにより、n-型炭化珪素基板1には、イオン注入用マスクの開口部に、n型またはp型の領域が形成され、これを繰り返すことにより、p型ウェル領域2、p型コンタクト領域3、n型ソース領域4が形成される。
そして、p型ウェル領域が集中した活性領域を取り囲むように、p型耐圧リング形状部(図示略)を形成する。このp型耐圧リング形状部を形成した領域までが、1つの炭化珪素半導体素子(MOSFET素子)の領域となり、1つのn-型炭化珪素基板1上に複数の素子が配列される。
次に、イオン注入用マスクを取り除いた後に、アルゴンなどの不活性雰囲気において1700℃程度の温度で活性化アニールを行う。次に、n-型炭化珪素基板1表面に熱酸化によりゲート絶縁膜5を成長し、化学気相成長(CVD)法によりポリシリコン膜を形成し、フォトリソグラフィ工程により隣り合うp型ウェル領域2をまたぐ領域にゲート電極6を形成する。p型耐圧リング形状部上など、ゲート絶縁膜5が不要な部分にあらかじめ酸化珪素膜パターンを形成する場合もある。
次に、CVD法により酸化珪素膜からなる層間絶縁膜7を形成し、フォトリソグラフ工程により、n型ソース領域4およびp型コンタクト領域3上に層間絶縁膜7の開口部を形成する。開口部の形成には、弗素系ガスと希ガスの混合ガスを用いる。これにより高精細なパターン加工が可能になるだけでなく、n-型炭化珪素基板1の露出部もエッチングされることにより、露出部に凹凸が形成される。露出部表面では、炭素と珪素の結合が一部切れ、反応しやすい状態になっていると推定される。
次に、20at%から40at%のSiを含んだNiターゲットを用いて厚さ50nmのNiSi混合膜をスパッタ法で製膜し、n型ソース領域4およびp型コンタクト領域3を被覆する領域にフォトリソグラフィによりNiSi混合膜パターンを形成する。
次に、RTA(Rapid Thermal Annealing)法により不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気において700℃よりも高く850℃以下の温度で加熱を実施し、p型コンタクト領域3とn型ソース領域4上のNiSi混合膜パターンをNiシリサイド化し、オーミックコンタクト(電極部)8を形成する。後述するが、n-型炭化珪素基板1表面(主面側)には取り出し電極9が設けられ、裏面側にはドレイン電極(裏面電極)10が設けられる。
上記のRTA法では、カーボンまたは粗面化した炭化珪素からなる支持体(サセプタ)上に、NiSi混合膜パターンを形成したn-型炭化珪素基板1を配置し、赤外線ランプヒーターを用いて支持体を加熱し、支持体を介した熱伝導により間接的にn-型炭化珪素基板1を加熱する。炭化珪素基板は赤外線を透過する性質を持つため、熱源からの赤外線を支持体に吸収させ、熱伝導を利用することにより、n-型炭化珪素基板1を概ね一様に、一定の時間加熱することが可能となる。
-型炭化珪素基板1を間接的に均一に加熱する方法であれば、縦型炉等の熱処理装置等を用いることができ、熱の印加方法としては、支持体からの熱伝導による方法や、雰囲気からの熱伝導を用いることができる。これによりゲート酸化膜に影響を与える過剰な温度の印加を抑制し、かつシリサイドの形成に十分な熱を与えることが可能となる。
ここで、上記のRTA法を用いて、昇温速度毎秒2℃で、到達温度を300℃から600℃まで100℃毎変更し、NiSi混合膜の相状態の変化をX線回折により特定した。到達温度での保持時間は5分とした。300℃で、NiSi混合膜中の固相反応により、化学式Ni2Siで示されるシリサイド(Ni2Si相)が形成され始め、400℃でNi2Si相の回折強度が強くなり、これ以上の温度ではNi2Si相の回折強度は同程度か減少する傾向が見られた。
この観察結果から、室温から昇温させるとまずNi2Si相が形成される傾向があることがわかった。Siの組成を10at%から50at%まで5%ごと変更したターゲットにおいて、Si組成が20at%から40at%でNi2Si相の回折強度が大きくなることから、この組成範囲においてNiSi混合膜中で十分固相反応が進行することがわかった。Si組成が低いと未反応のNiが残り、Si組成が高いとSiノジュールとしてSiが基板上に残留する傾向が見られた。
更に、到達温度を600℃から1000℃まで50℃毎に変更し、断面TEM(Transmission Electron Microscope)とSIMS( 二次イオン質量分析法)を用いて観察を行った。700℃以上になるとn-型炭化珪素基板1とNi2Si界面に数ナノメートルの、化学式NiSiで示されるシリサイド(NiSi相)が形成され、800℃で約10nmの層状のNiSi相が形成された。1000℃では、n-型炭化珪素基板を侵食するようにシリサイド化し、全体がNiSi相となることがわかったが、温度上限はゲート酸化膜への影響が小さい850℃とした。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の各温度でのNiSi相の厚さと炭素含有量を示す図表である。断面TEMとSIMSから算定した各温度でのNiSi相の厚さと炭素含有量を示す。SIMSでの炭素含有量の算定は、境界面を除いて、境界近傍から5nmの幅の平均値とし、NiSiとNi2Siの標準試料により、感度の補正を行った。
図2に示すように、850℃より低い温度では、n-型炭化珪素基板1と逆側の取り出し電極9側に炭素の供給が行われないため、n-型炭化珪素基板1近傍に炭素が多く存在し、n-型炭化珪素基板1と逆側でほぼ検出されない傾向が見られた。一方で、900℃では、NiSi相の形成が取り出し電極9側まで進行するため、取り出し電極9側で炭素が検出され始め、1000℃ではおよそ20at%の炭素が検出された。
したがって、上記RTA法により700℃よりも高く850℃以下で熱処理することにより、n-型炭化珪素基板1側にNiSi相が層状に形成され、取り出し電極9側にNi2Si相が形成され、炭素を含有しないオーミックコンタクト電極部8を形成することができる。
また、上記RTA法について、昇温のシーケンスの効果を接触抵抗率で比較した。接触抵抗率測定は、オーミック電極上に取り出し電極9を形成後に行い、電極面積を一定として、TLM(Transmission Line Model)法により測定した。
図3〜図5は、それぞれ実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の熱印加特性(アニールシーケンス)を示す図表である。図3の例は、毎秒2℃の一定な昇温速度で800℃まで到達させ800℃で5分間保持した後に降温する、標準的な(既存の)シーケンスである。
図4は、400℃まで毎秒0.5℃で昇温させた後に毎秒2℃の昇温速度で800℃まで到達させ5分間保持した後、降温するシーケンスである。図5は、毎秒2℃の昇温速度で400℃まで昇温し10分保持した後に毎秒2℃の昇温速度で800℃まで到達させ5分間保持した後、降温するシーケンスである。
図4および図5のアニールシーケンスでは、400℃までの昇温および保持過程1にかかる時間T1と、保持過程1の後に850℃以下までの昇温および保持過程2にかかる時間T2を有する。これら昇温および保持過程1の全時間T1は、昇温および保持過程2の全時間T2に比べて長く設定する。
図6は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の各熱印加特性におけるコンタクト抵抗を示す図表である。図6に示すように、図4や図5で示すアニールシーケンスで処理した場合に、接触抵抗が小さくなる傾向が見られた。断面TEMによる観察の結果、図4や図5で示すアニールシーケンスで作製したシリサイドは、図3で示す標準的なアニールシーケンスで作製したシリサイドと比較して、n-型炭化珪素基板1界面に形成されるNiSi相の平均的な厚さは同等であるが、凹凸やTEM像の濃淡が少なく、NiSi相が密な傾向が見られた。
これは、図4や図5で示す実施の形態1のアニールシーケンスによれば、Ni2Si相が形成される中間温度での滞留時間があるため、ニッケルや珪素の偏析を少なくでき、Ni2Si相を十分に形成する効果や、ニッケルシリサイドとn-型炭化珪素基板1との接触面を広く形成する効果を有するものと推定される。この結果、引き続き昇温した場合に、n-型炭化珪素基板1界面にNiSi相が形成されやすい効果があると考えられる。
更に、層間絶縁膜7の開口部の表面処理方法について比較を行った。層間絶縁膜7の開口部を形成したn-型炭化珪素基板1を0.5%濃度の希弗酸へ浸漬した後に、膜厚50nmのNiをスパッタし、図3に示す既存のアニールシーケンスでRTAを行った。
図7は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体基板の希弗酸への浸漬時間と、TLM法により測定した接触抵抗とNiSi相の厚さを示す図表である。図7に示すように、n-型炭化珪素基板1をおよそ1分間浸漬すると接触抵抗が高くなり、NiSi相がほぼ形成されないことがわかった。これは、希弗酸へ浸漬することにより、ドライエッチングによりダメージを受けた層間絶縁膜7の開口部の、不安定な結合状態の珪素等を除去する結果、層間絶縁膜7の開口部に安定したSiC界面が形成されるため、NiSi混合膜との固相反応が抑制されるためと推定される。
したがって、NiSi相を形成するために、層間絶縁膜7の開口部は安定したSiC界面を有しないことが望ましく、ニッケルのスパッタ前処理としては、希弗酸を用いた前処理でなく、弗素系ガスや希ガスによりn-型炭化珪素基板1がエッチングされていることが望ましい。
以上の工程によりオーミックコンタクト電極部8を形成した後、オーミックコンタクト電極部8を被覆するように、厚さ5μmのAlの取り出し電極9をパターン形成する(図1参照)。取り出し電極9は、ゲート電極6上にもソース領域と分離して形成され、ソースとゲートが独立して駆動される。そして、n-型炭化珪素基板1の裏面にTiとNiの積層膜を形成し、ドレイン電極(裏面電極)10とすることで、炭化珪素半導体素子(MOSFET素子)が形成される。
上述した実施の形態1にかかる炭化珪素半導体素子の製造方法にしたがい、二重注入型MOSFETを作製した。具体的には、まず、n型ドーピング濃度が2×1015cm-3の高抵抗層を15μmの厚さでエピタキシャル成長したn-型炭化珪素基板1を用意した。次に、厚さ1.5μmのシリコン酸化膜からなるイオン注入マスクを形成し、500℃の温度でAlイオンを注入することによりp型ウェル領域2を形成した。ドーピング濃度を1×1016cm-3、注入深さを1μmとした。
次に、p型ウェル領域2の中央に開口部を有するシリコン酸化膜からなるイオン注入マスクを形成し、Alイオンを注入することによりp型コンタクト領域3を形成した。ドーピング濃度を1×1018cm-3とした。
次に、n-型炭化珪素基板1をアニール炉に挿入し、Ar雰囲気において1700℃で5分間の活性化処理を行った。次に、p型ウェル領域2内でp型コンタクト領域3の側部に開口を有するシリコン酸化膜からなるイオン注入マスクを形成し、燐イオンを注入することでドーピング濃度が1×1019cm-3のn型ソース領域4を形成した。
次に、n-型炭化珪素基板1を再度アニール炉に挿入し、Ar雰囲気において1700℃で5分間の活性化処理を行った。次に、n-型炭化珪素基板1を石英管内に挿入し、酸素を純水に通し、水蒸気を含ませた雰囲気において1200℃で熱酸化処理を行い、n-型炭化珪素基板1の表面(n-型炭化珪素エピタキシャル層の表面)にゲート絶縁膜5となるシリコン酸化膜を成長させた。シリコン酸化膜の厚さを700Åとした。
次に、CVD法により0.5μmの厚さで燐をドープしたポリシリコン膜を形成し、フォトリソグラフィによりポリシリコン膜をパターニングしてゲート電極6を形成した。ゲート電極6は、隣り合うp型ウェル領域2をまたぐ領域から、p型ウェル領域2の、n-型炭化珪素基板1とn型ソース領域4とに挟まれた領域にわたって形成した。
次に、CVD法により1μmの厚さでPSG(Phosphorus Silicate Glass)膜を形成し、フォトリソグラフィによりPSG膜をパターニングして、ゲート電極6を被覆する領域に、層間絶縁膜7を形成した。PSGのエッチングはCHF3とCF4とAr混合ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)により行った。
次に、30at%の珪素を含むNiターゲットを用いて、厚さ60nmのNiSi混合膜をスパッタ法で形成し、オーミックコンタクト電極部8およびTLMパターン領域上に残留するようにNiSi混合膜をパターニングした。また、n-型炭化珪素基板1の裏側にも、Ni膜を60nm形成した。
次に、n-型炭化珪素基板1をRTA炉に挿入し、窒素雰囲気で、カーボンサセプタに設置した熱電対での測定において、毎秒2℃で800℃まで昇温し、5分間保持して、NiSi混合膜パターン10およびTLM測定用のNiSi混合膜パターンをシリサイド化した。昇温シーケンスは図3(標準的なアニールシーケンス)と同じとした。
この時のオーミック電極8中のNiSi相の厚さは、およそ15から20nmであり、オーミック電極8のn-型炭化珪素基板1の炭素検出量はおよそ15〜20at%であり、検出オーミック電極8の取り出し電極9側から炭素は検出されなかった。
次に、膜厚5μmのAl膜をスパッタ法で形成し、ソースコンタクトパッド、ゲートコンタクトパッドおよびTLM用の電極パッド(取り出し電極)9を形成した。次に、n-型炭化珪素基板1の裏側に、Ti100nmおよび金(Au)200nmを加熱による蒸着法により製膜し、裏面電極10とした。
以上の工程によりMOSFET素子を作製し、TLMパターン領域において接触抵抗(n型コンタクト領域4とn型コンタクトパターン8との接触抵抗)の測定を行い、ウエハ面内の測定値から平均値を算出した。
RTAの昇温シーケンスを変更した以外は、実施例1と同じ作成条件で素子を作製した。実施例2のRTAの昇温シーケンスは、図4と同じであり、400℃まで毎秒0.5℃で昇温させた後に毎秒2℃の昇温速度で800℃まで到達させ5分間保持した後、降温するシーケンスとした。
この時のオーミック電極8中のNiSi相の厚さは、およそ15から20nmであり、オーミック電極8のn-型炭化珪素基板1の炭素検出量はおよそ15〜20at%であり、検出オーミック電極8の取り出し電極9側から炭素は検出されなかった。
また、実施例1と同様にTLMパターン領域において接触抵抗の測定を行った。
(比較例)
比較例として、オーミックコンタクトホール開口部の表面処理を行った素子を作製した。実施例1と同様に、1μmの厚さのPSG(Phosphorus Silicon Glass)膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、ゲート電極6を被覆する領域に、層間絶縁膜7を形成した。この後に、室温の0.5wt%弗酸に1分間基板を浸漬し、オーミックコンタクト形成面の酸化膜を除去する処理を行った。また、オーミックコンタクト電極以降は、実施例1と同様の方法で実施した。
この時のオーミック電極8中のNiSi相の厚さは、およそ0から2nmであり、オーミック電極8のn-型炭化珪素基板1の炭素検出量はおよそ0〜5at%でありオーミック電極8の取り出し電極9側から炭素は検出されなかった。
また、実施例1と同様にTLMパターン領域において接触抵抗の測定を行い、実施例1および2と比較した。比較例では、接触抵抗が1400×10-5Ωcm2であり、実施例1で5×10-5および実施例2では3×10-5Ωcm2の接触抵抗となった。
以上説明した実施の形態によれば、従来より低温で接触抵抗が低いオーミック電極を形成し、より高性能で長期にわたる駆動信頼性を得ることができる。
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明は、p型とn型とを入れ替えた場合や、炭化珪素基板と炭化珪素基板主表面に成長させるエピタキシャル層とを異なる導電型とした場合も同様に成り立つ。この場合、ソース領域またはコンタクト領域となるp型領域に接するpコンタクトパターンを形成し、ソース領域またはコンタクト領域となるn型領域に接するNiSi混合層を形成し、シリサイド化すればよい。
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体素子および炭化珪素半導体素子の製造方法は、半導体基板のおもて面側から裏面側に電流を流す縦型半導体素子に適し、例えば、パワーデバイス等の電力用半導体素子や、産業用のモーター制御やエンジン制御に使用されるパワー半導体素子に有用である。
1 n-型炭化珪素基板
2 p型ウェル領域
3 p型コンタクト領域
4 n型ソース領域
5 ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 層間絶縁膜
8 オーミック電極
9 取り出し電極
10 裏面電極

Claims (3)

  1. 炭化珪素半導体基板と、
    前記炭化珪素半導体基板の表面に設けられ、コンタクト電極として機能するニッケルシリサイド膜と、
    前記ニッケルシリサイド膜と前記炭化珪素半導体基板と異なる側で接合する取り出し電極と、を有し、
    前記ニッケルシリサイド膜は、前記炭化珪素半導体基板側が主にNiSi相からなり、前記取り出し電極側が主にNi2Si相からなり、かつ、前記ニッケルシリサイド膜は、前記炭化珪素半導体基板側で炭素を含有し、前記取り出し電極側で炭素を含まないことを特徴とする炭化珪素半導体素子。
  2. 炭化珪素半導体基板の表面に形成された絶縁膜を弗素系ガスおよび希ガスを用いたドライエッチングにより除去する工程と、
    前記炭化珪素半導体基板の表面に20at%以上40at%以下の珪素を含むニッケル膜を選択的に形成する工程と、
    前記炭化珪素半導体基板を支持体からの熱伝導により間接的に温度を印加するアニール処理によりシリサイドを形成する工程と、を有し、
    前記アニール処理は、700℃よりも高く、850℃以下で行われることを特徴とする炭化珪素半導体素子の製造方法。
  3. 前記アニール処理は、
    400℃までの昇温および保持過程1と、
    前記昇温および保持過程1の後に850℃以下までの昇温および保持過程2を有し、
    前記昇温および保持過程1の全時間が、前記昇温および保持過程2の全時間に比べて長いことを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体素子の製造方法。
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