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JP6663561B2 - 非水系インクジェット組成物 - Google Patents

非水系インクジェット組成物 Download PDF

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JP6663561B2 JP2016013478A JP2016013478A JP6663561B2 JP 6663561 B2 JP6663561 B2 JP 6663561B2 JP 2016013478 A JP2016013478 A JP 2016013478A JP 2016013478 A JP2016013478 A JP 2016013478A JP 6663561 B2 JP6663561 B2 JP 6663561B2
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Description

本発明は、非水系インクジェット組成物に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、より安定して高品質な記録物を得ることについて種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、吐出安定性に優れたインクを提供することを目的として、は、水、水溶性有機溶剤、色材、標準状態(25℃、1気圧)における水への溶解量が10wt%以下のポリオールを含み、溶存酸素濃度を1としたときの溶存窒素濃度の重量比が10以上であるインクジェット用インクが開示されている。
特開2014−91795号公報
しかし、特許文献1に記載のインクジェット用インクは、水を含む水系インクジェット組成物であり、水を実質的に含有しない非水系インクジェット組成物ではない。水系インク組成物と非水系インクジェット組成物とでは、求められる特性もそのために必要な物性や原料も異なる。
一方、従来の非水系インクジェット組成物は、得られる記録物の彩度を向上させるため、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料を含むことができる。しかしながら、上記顔料を含むことにより、得られる記録物に凝集ムラが生じることに起因して、彩度に優れた記録物が得られない。また、非水系インクジェット組成物は、彩度に優れた記録物を得るとともに、少なくとも優れた吐出安定性を得ることも必要である。
そこで、本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、得られる記録物の彩度に優れ、かつ優れた吐出安定性を有する、非水系インクジェット組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくともジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と所定の有機溶剤とを含み、溶存窒素量が所定量以下である非水系インクジェット組成物を用いることで、優れた吐出安定性を有し、かつ優れた彩度の記録物を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と、有機溶剤と、を含む、非水系インクジェット組成物であって、前記有機溶剤は、グリコールエーテル類を含有し、かつ、溶存窒素量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、90質量ppm以下である。このような非水系インクジェット組成物が本発明の課題を解決できる要因は下記のように考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、ジケトピロロピロール顔料はそれ自体、彩度に優れた顔料であるものの、単にジケトピロロピロール顔料を含有する顔料を含む非水系インクジェット組成物を用いることでは、得られる記録物に凝集ムラが生じることに起因して、該記録物の彩度が十分に優れたものではない。凝集ムラを抑制するには、有機溶剤にグリコールエーテル類を用いることが考えられる。空気中の窒素や酸素に対して溶解性の高い性質を有する上記グリコールエーテル類には、不純物として窒素や酸素が多量に混入する。また、その有機溶剤を含む非水系インクジェット組成物を大気中等においた場合、経時的に空気中の窒素や酸素がその組成物に吸収される。ところが、非水系インクジェット組成物は、窒素や酸素が溶存していると、インクジェット法により吐出される際の各種変化(温度や圧力の変化)により組成物中にガスが生じ、優れた吐出安定性を得ることができない。そこで、本発明に係る非水系インクジェット組成物では、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と上記グリコールエーテル類とを併用し、かつ、溶存窒素量を90質量ppm以下としている。これにより、本発明に係る非水系インクジェット組成物は、ジケトピロロピロール顔料の凝集ムラを抑制し、その顔料の優れた彩度を有効に活用すると共に、吐出安定性にも優れたものとなる。
また、本発明に係る非水系インクジェット組成物において、前記溶存窒素量は、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、10質量ppm以上であると好ましく、前記グリコールエーテル類は、下記式(1)で表されるグリコールジエーテルを含有することが好ましく、下記式(2)で表されるグリコールモノエーテルを含有することも好ましい。
1O−(R3O)m−R2 (1)
(式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、mは、1〜7の整数を示す。)
OH−(R5O)n−R4 (2)
(式(2)中、R4は、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R5は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは、1〜7の整数を示す。)
さらに、本発明に係る非水系インクジェット組成物において、前記顔料の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、1.0質量%以上5.0質量%以下であると好ましく、前記グリコールエーテル類の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、10質量%以上90質量%以下であると好ましく、前記有機溶剤は、環状ラクトン類をさらに含有すると好ましく、塩化ビニル樹脂をさらに含むと好ましい。
加えて、本発明に係るインクジェット記録方法は、本発明に係る非水系インクジェット組成物を用いて、被記録媒体にインクジェット法により記録を行う工程を有する。
本発明の実施形態に係るプリンターの構成を模式的に示す斜視図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で、適宜に変形して実施できる。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
〔非水系インクジェット組成物〕
本実施形態の非水系インクジェット組成物(以下、単に「インクジェット組成物」、「非水系組成物」、「組成物」ともいう。)は、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と、有機溶剤と、を含む、非水系インクジェット組成物であって、前記有機溶剤は、グリコールエーテル類を含有し、かつ、溶存窒素量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、90質量ppm以下である。
本実施形態の組成物は、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と共に上記グリコールエーテル類を含み、かつ、溶存窒素量が90質量ppm以下であることにより、吐出安定性に優れ、かつ得られる記録物の彩度にも優れる。この要因は、次のように推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。すなわち、ジケトピロロピロール顔料はそれ自体、彩度に優れた顔料であるものの、単にジケトピロロピロール顔料を含有する顔料を含む非水系インクジェット組成物を用いることでは、得られる記録物に凝集ムラが生じることに起因して、該記録物の彩度が十分に優れたものではない。凝集ムラを抑制するには、有機溶剤としてグリコールエーテル類を用いることが考えられる。空気中の窒素や酸素に対して溶解性の高い性質を有する上記グリコールエーテル類には、不純物として窒素や酸素が多量に混入する。また、その有機溶剤を含む非水系インクジェット組成物を大気中等においた場合、経時的に空気中の窒素や酸素がその組成物に吸収される。ところが、非水系インクジェット組成物は、窒素や酸素が溶存していると、インクジェット法により吐出される際の各種変化(温度や圧力の変化)により組成物中にガスが生じ、優れた吐出安定性を得ることができない。そこで、本実施形態に係る非水系インクジェット組成物では、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と上記グリコールエーテル類とを併用し、かつ、溶存窒素量を90質量ppm以下としている。これにより、本実施形態に係る非水系インクジェット組成物は、ジケトピロロピロール顔料の凝集ムラを抑制し、その顔料の優れた彩度を有効に活用すると共に、吐出安定性にも優れたものとなる。
本実施形態において「非水系」とは、有機溶剤等を主要な溶媒として、水を主要な溶媒としない組成物である。なお、ここで「主要な溶媒」とは、組成物中の含有量が組成物100質量%に対して50質量%以上であることをいい、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、水を含有する場合は、組成物の調製において主な溶媒成分として意図的に水を添加しない組成物であることが好ましく、不純物として不可避的に水分を含んでしまう場合であることが好ましい。
組成物中の水の含有量は、組成物100質量%に対して3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。水の含有量の下限は特に限定されず、検出限界以下であってもよく、0.01質量%であってもよい。
本実施形態において「溶存窒素量」とは、非水系組成物に溶存する窒素量であり、該非水系組成物に溶存する空気量の指標である。溶存窒素量は、非水系組成物の総量に対して、90質量ppm以下であり、好ましくは10質量ppm以上90質量ppm以下であり、より好ましくは20質量ppm以上90質量ppm以下であり、さらに好ましくは30質量ppm以上75質量ppm以下であり、さらに好ましくは40質量ppm以上60質量ppm以下である。上記溶存窒素量が90質量ppm以下であることにより、非水系組成物は吐出安定性に優れる。上記溶存窒素量が20質量ppm以上であることにより、得られる記録物の彩度により優れ、非水系組成物における溶存窒素量を調整するために必要な脱気処理の時間等を抑えられることから、製造性に優れる傾向にある。特に、ジケトピロロピロール顔料を含有する場合には、溶存窒素量が20質量ppm以上の場合に、他の顔料を含有するものに比べ脱気処理時間をより短く抑えることができる。また、溶存窒素量が20質量ppm以上であることにより、該溶存酸素量の下限値を下回る様な過脱気状態の非水系組成物と比較して、空気の吸収がより顕著になることに起因する吐出安定性の劣化を抑制できる傾向にある。
組成物における溶存窒素量を調整する方法としては、例えば、組成物の各成分から窒素や酸素の空気を除去する方法、具体的には有機溶剤に混入した窒素や酸素の空気を除去する方法、組成物から窒素や酸素の空気を除去する方法、及び組成物の調製時における窒素や酸素の空気の混入を抑制する方法が挙げられる。このうち、有機溶剤に混入した窒素や酸素の空気を除去する方法として、より具体的には、後述する実施例に記載する組成物を減圧処理する方法や組成物を加熱処理する方法が挙げられる。溶存窒素量は、後述する実施例に記載する方法により測定することができ、例えば、インクジェット記録装置に用いる直前の組成物を測定する。
本実施形態の非水系インクジェット組成物は、後述する顔料と有機溶剤とを含む。溶剤を含む組成物には大別して、リアルソルベント(高有機溶剤)組成物と、エコソルベント(低有機溶剤)組成物の2つがある。エコソルベント組成物は、低臭気性で人体や環境に配慮した組成物であり、労働安全衛生法が定める有機溶剤に該当しない、有機溶剤中毒予防則に定める第1種及び第2種有機溶剤にも該当しない、又は消防法に定める設置環境の屋内作業場において局所排気装置の義務付対象外となる有機溶剤を使用する。本実施形態の非水系組成物は、リアルソルベント組成物に用いられ得る有機溶剤と、エコソルベント組成物に用いられ得る有機溶剤のいずれも用いることができるが、中でもエコソルベント組成物に用いられ得る有機溶剤を含むことが好ましい。
本実施形態において「インクジェット組成物」は、インクジェット法により吐出して用いる組成物としての種々の用途に用いることができ、その用途は限定されない。用途として、具体的には、インク用が挙げられる。以下、本実施形態の組成物をインクジェット組成物の1実施形態である、インクジェット記録用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)として用いる場合についてより詳細に説明するが、本実施形態の組成物は、これに限定されない。
<顔料>
本実施形態の顔料は、ジケトピロロピロール顔料を含有すれば特に限定されず、ジケトピロロピロール顔料のみであってもよく、ジケトピロロピロール顔料とジケトピロロピロール顔料以外の顔料(以下、「その他の顔料」ともいう。)との混合物であってもよい。本実施形態の組成物は、ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料を含むことにより、彩度に優れる記録物を得られる。また、ジケトピロロピロール顔料を含む組成物は、その他の顔料を含む組成物と比較して、吐出安定性に優れる。これは、ジケトピロロピロール顔料の疎水性が高く、非水系雰囲気との親和性が高いことに起因して、顔料中に微小気泡核を含み難く、結果としてインクジェット法による吐出の際に気泡が生じにくくなるためと推察される。また、それゆえ、本実施形態の顔料がジケトピロロピロール顔料を含む場合、ジケトピロロピロール顔料以外の顔料に比べ、比較的簡易な脱気処理で、溶存窒素量が多く含まれていたとしても吐出時の不具合を生じにくいし、顔料添加量が多い場合でも他の顔料に比べ気泡を生じにくく吐出時の不具合を生じにくいことが推察される。また、吐出安定性に優れるその他の理由として、ジケトピロロピロール顔料は、その他の顔料を含む組成物と比較して、より小さい含有量で彩度に優れる記録物を得られるためとも推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。
ジケトピロロピロール顔料としては、ジケトピロロピロール骨格を有するものであれば特に限定されず、ジケトピロロピロール骨格にアルキル基等の置換基を有するものであってもよく、有しないもの(置換基が全て水素原子であるもの)であってもよい。ジケトピロロピロール顔料の具体例として、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、及びC.I.ピグメントレッド272のようなレッド系の有機顔料;並びに、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、及びC.I.ピグメントオレンジ81のようなオレンジ系の有機顔料が挙げられる。これらの中でも、より優れた彩度の記録物を得る観点から、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、及びC.I.ピグメントレッド264のレッド系の有機顔料が好ましく、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255がより好ましく、C.I.ピグメントレッド254がさらに好ましい。これらのジケトピロロピロール顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
ジケトピロロピロール顔料は、ジケトピロロピロール赤色顔料であることが好ましい。ジケトピロロピロール赤色顔料とは、赤色を呈し、ジケトピロロピロール骨格を有するものであり、例えば、上述したレッド系顔料であるジケトピロロピロール赤色顔料が挙げられる。なお、ここで「赤色を呈」すとは、インクジェット組成物にして白色記録媒体の全面を覆うように塗布した記録物について、スペクトロリーノ(グレタグマクベス社製)を用いて測色した、CIE表色系におけるL**h色空間における、hが−30°〜45°となることであり、また、hが−30°〜32°となることが好ましく、hが−30°〜30°となることがより好ましく、hが−30°〜25°となることがさらに好ましい。
ジケトピロロピロール顔料の含有量は、特に限定されないが、顔料の総量(100質量%)に対して、30質量%以上100質量%以下であり、50質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下である。ジケトピロロピロール顔料の含有量がこのような範囲にある組成物を用いることにより、彩度により優れる傾向にある。
その他の顔料としては、ジケトピロロピロール顔料以外の顔料であれば特に限定されないが、例えば、従来の非水系インク組成物に通常用いられている無機顔料及び有機顔料等の顔料を用いることができる。これらのその他の顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、アゾ顔料(例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料)、多環式顔料(フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料)、染料レーキ(例えば、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、並びに昼光蛍光顔料が挙げられる。
無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン、シリカ、及びアルミナが挙げられる。
また、その他の顔料として、ジケトピロロピロール顔料以外のレッド系の有機顔料(以下、「その他のレッド系の有機顔料」ともいう。)及びジケトピロロピロール顔料以外のオレンジ系の有機顔料(以下、「その他のオレンジ系の有機顔料」ともいう。)を用いることも、吐出安定性及び耐擦性の点から好ましい。
その他のレッド系の有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド222、及びC.I.ピグメントレッド224が挙げられる。
その他のオレンジ系の有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、及びC.I.ピグメントオレンジ64が挙げられる。
顔料の含有量は、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上7.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以上3.0質量%以下である。顔料の含有量が0.5質量%以上であることにより、得られる記録物の彩度により優れる傾向にあり、また、顔料の含有量が10質量%以下であることにより、得られる記録物の保存安定性及び吐出安定性により優れる傾向にある。
<有機溶剤>
本実施形態の有機溶剤は、グリコールエーテル類を含有するものであれば、特に限定されない。上記グリコールエーテル類は、下記式(1)で表されるグリコールジエーテル(以下、「特定グリコールジエーテル」ともいう。)を含有することが、より優れた耐擦性の記録物を得る観点から好ましく、また分散安定性を良好とする観点でも好ましい。また、下記式(2)で表されるグリコールモノエーテル(以下、「特定グリコールモノエーテル」ともいう。)を含有することが、より優れた彩度の記録物を得る観点から好ましい。さらに、特定グリコールジエーテル及び特定グリコールモノエーテルを同時に含有することは、分散安定性が良好でかつより優れた彩度の記録物を得る観点でより好ましい。
1O−(R3O)m−R2 (1)
式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、mは、1〜7の整数を示す。
OH−(R5O)n−R4 (2)
式(2)中、R4は、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R5は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは、1〜7の整数を示す。
特定グリコールジエーテルの具体例としては、特に限定されないが、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、及び、ジプロピレングリコールジエチルエーテルが挙げられる。これらの中でも、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルがより好ましい。このような好ましい特定グリコールジエーテルを含有することにより、得られる記録物の耐擦性がより優れ、より優れた吐出安定性を得られる傾向にある。特定グリコールジエーテルは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
特定グリコールジエーテルの含有量は、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは5.0質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上80質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上75質量%以下である。特定グリコールジエーテルの含有量がこのような範囲にあることにより、得られる記録物の彩度及び吐出安定性により優れる傾向にある。なお、ここでの組成物中の特定グリコールジエーテルの含有量は、例えば分散液に用いた特定グリコールジエーテルも含む含有量である。
特定グリコールモノエーテルの具体例としては、特に限定されないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルトリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましく、トリエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。このような好ましい特定グリコールモノエーテルを含有することにより、得られる記録物の耐擦性がより優れ、より優れた吐出安定性を得られる傾向にある。特定グリコールモノエーテルは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
特定グリコールモノエーテルの含有量は、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは5.0質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは7.0質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上20質量%以下である。特定グリコールモノエーテルの含有量がこのような範囲にあることにより、得られる記録物の彩度及び吐出安定性により優れる傾向にある。なお、ここでの組成物中の特定グリコールモノエーテルの含有量は、例えば分散液に用いた特定グリコールモノエーテルも含む含有量である。
グリコールエーテル類の含有量は、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは5.0質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上85質量%以下である。グリコールエーテル類の含有量がこのような範囲にあることにより、得られる記録物の彩度及び吐出安定性により優れる傾向にある。なお、ここでの組成物中のグリコールエーテル類の含有量は、例えば分散液に用いたグリコールエーテル類も含む含有量である。
有機溶剤は、特定グリコールジエーテル及び特定グリコールモノエーテル以外のグリコールジエーテル(以下、「その他のグリコールジエーテル」ともいう。)及び/又はグリコールモノエーテル(以下、「その他のグリコールモノエーテル」ともいう。)を含有していてもよい。その他のグリコールジエーテルとしては、例えば、ヘプタエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられ、また、その他のグリコールモノエーテルとしては、例えば、ヘプタエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
有機溶剤は、環状ラクトン類をさらに含有することにより、耐擦性及び保存安定性により優れる記録物が得られる傾向にある。環状ラクトン類としては、エステル結合による環状構造を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、5員環構造のγ−ラクトン、6員環構造のδ−ラクトン、及び7員環構造のε−ラクトンが挙げられる。環状ラクトン類の具体例としては、特に限定されないが、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラクトン、δ−ヘプタラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、及びε−カプロラクタムが挙げられる。これらの中でも、5員環構造のγ−ラクトン及び6員環構造のδ−ラクトンが好ましく、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びδ−バレロラクトンがより好ましく、γ−ブチロラクトンがさらに好ましい。このような環状ラクトン類を含有することにより、耐擦性がより向上する傾向にある。環状ラクトン類は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
環状ラクトン類の含有量は、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは1.0質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以上30質量%以下である。環状ラクトン類の含有量が1.0質量%以上であることにより、耐擦性により優れる傾向にあり、また、環状ラクトン類の含有量が50質量%以下であることにより、彩度により優れる傾向にある。なお、ここでの組成物中の環状ラクトン類の含有量は、例えば分散液に用いた環状ラクトン類も含む含有量である。
グリコールジエーテル及びグリコールモノエーテル、並びに環状ラクトン以外の有機溶剤(その他の有機溶剤)としては、好ましくは炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、及びエステル系溶剤であり、より好ましくはエステル系溶剤である。
炭化水素系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、パラフィン、イソパラフィン)、脂環式炭化水素(例えば、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン等)、及び芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、テトラリン等)が挙げられる。このような炭化水素系溶剤としては、市販品を用いてもよく、IPソルベント1016、IPソルベント1620、IPクリーンLX(以上全て出光興産株式会社製の商品名)、Isopar(アイソパー)G、Isopar L、Isopar H、Isopar M、Exxsol D40、Exxsol D80、Exxsol D100、Exxsol D130、Exxsol D140(以上全て、Exxon社製の商品名)、NSクリーン100、NSクリーン110、NSクリーン200、NSクリーン220(以上全て、JX日鉱日石エネルギー株式会社の商品名)、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(以上全て、JX日鉱日石エネルギー株式会社の商品名)等の脂肪族炭化水素系溶剤または脂環式炭化水素系溶剤や、ソルベッソ200(Exxon社製の商品名)等の芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、イソアミルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2ペンタノール、アリルアルコール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、及び3−ヘプタノールが挙げられる。
エステル系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシブチル(3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート)、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。これらの中で好ましくは、酢酸メトキシブチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、乳酸メチル、及び乳酸エチルである。
有機溶剤としての炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤のいずれか1つ以上の合計の含有量としては、非水系組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以上55質量%以下である。上記含有量がこのような範囲にあることにより、得られる記録物の彩度及び吐出安定性により優れる傾向にある。
有機溶剤の含有量は、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは35質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以上90質量%以下である。なお、ここでの組成物中の有機溶剤の含有量は、例えば分散液に用いた有機溶剤も含む含有量である。
<樹脂>
本実施形態の組成物は、主に組成物の粘度を調整する目的で、樹脂をさらに含んでもよい。樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂等の塩化ビニル樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維系樹脂、及びビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂が挙げられる。これらの中でも、塩化ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂がより好ましい。このような樹脂を含むことにより、得られる記録物の耐擦性がより向上する傾向にある。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
塩化ビニル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニルと、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル、マレイン酸、及びビニルアルコールからなる群より選択される1種又は2種以上との共重合体樹脂が挙げられる。この中でも、塩化ビニルと酢酸ビニルとの塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂が好ましく、ガラス転移温度が60℃以上80℃以下である塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂がより好ましい。上記アクリルとしては、塩化ビニルと共重合である化合物であれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノ−n−ブチル、イタコン酸モノ−n−ブチル等のカルボキシル基含有モノマー;水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、アミド基含有モノマー類、グリシジル基含有モノマー類、シアノ基含有モノマー、水酸基含有アリル化合物、三級アミノ基含有モノマー、及びアルコキシシリル基含有モノマーが挙げられる。これらのアクリルは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
樹脂の含有量は、組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上5.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上3.0質量%以下である。樹脂の含有量がこのような範囲にある組成物は、耐擦性により優れる傾向にある。
本実施形態の組成物は、上記の各成分の他に、従来の非水系インクジェット用インク組成物に用いられ得る任意の成分の1種又は2種以上を含んでもよい。そのような任意の成分として、具体的に、染料等の色材、界面活性剤、分散剤、浸透剤、保湿剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤その他の添加剤及び溶媒等が挙げられる。これらはそれぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
[インクジェット記録方法]
本実施形態のインクジェット記録方法は、上述した非水系組成物を用いて、被記録媒体にインクジェット法により記録を行う工程を有する。具体的には、上記非水系組成物の液滴を吐出し、被記録媒体、好ましくは低吸収性被記録媒体、に該液滴を付着させて画像を記録する。
本明細書において「低吸収性被記録媒体」とは、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である被記録媒体のことをいい、少なくとも被記録面がこの性質を備えていればよい。この定義によれば、本発明における「低吸収性被記録媒体」には、水を全く吸収しない非吸収性被記録媒体も含まれる。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
低吸収性被記録媒体としては、具体的には、低吸収性の材料を含むシート、フィルム、繊維製品等が挙げられる。また、低吸収性被記録媒体は、基材(例えば、紙、繊維、皮革、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等)の表面に、低吸収性の材料を含む層(以下、「低吸収性層」ともいう)を備えたものであってもよい。低吸収性の材料としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂が挙げられる。
これらの中でも、低吸収性被記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含む被記録面を有するものを好ましく用いることができる。塩化ビニル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルエーテル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及び塩化ビニル−ウレタン共重合体が挙げられる。なお、低吸収性被記録媒体の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性については特に制限されない。
本実施形態の非水系組成物は、上記の組成を有することにより、特に低吸収性被記録媒体、とりわけ塩化ビニル系樹脂を含む被記録媒体に対して、優れた彩度及び耐擦性という効果を発揮することができる。そのため、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、特に低吸収性被記録媒体、とりわけ塩化ビニル系樹脂を含む被記録媒体に上記非水系組成物の液滴を付着させることで、彩度及び耐擦性に一層優れた画像を記録することができる。
本実施形態のインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、特に限定されないが、ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置が好ましい。ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法を採用したもの、記録ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法を採用したもの等があるが、いずれの記録方法も採用することができる。以下、本実施形態のインクジェット記録装置の一例について、より詳細に説明する。
[インクジェット記録装置]
本実施形態のインクジェット記録装置には、従来公知のインクジェットプリンターを用いることができる。インクジェットプリンターとしては、例えば、図1に示すようなインクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)が挙げられる。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。図1に示すように、プリンター1は、インクジェット式記録ヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、インクジェット式記録ヘッド(インクジェットヘッド)2の下方に配設され被記録媒体6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を被記録媒体6の媒体幅方向(主走査方向S)に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体6を媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御部CONTを有している。
記録ヘッド2は、収容した非水系組成物をノズルから吐出させるキャビティーと、当該キャビティー毎に設けられた、非水系組成物に吐出の駆動力を付与する吐出駆動部と、当該キャビティー毎に設けられた、ヘッドの外へ非水系組成物を吐出するノズルと、を有する。キャビティー、並びにキャビティー毎に設けられる吐出駆動部及びノズルは、それぞれ互いに独立して、一のヘッドに複数個設けられていてもよい。吐出駆動部は、機械的な変形によりキャビティーの容積を変化させる圧電素子等の電気機械変換素子や、熱を発することにより非水系組成物に気泡を発生させ吐出させる電子熱変換素子などを用いて形成することができる。プリンター1は、1種の非水系組成物につきヘッドを1個設けていても複数個設けていてもよい。
インクカートリッジ3は、独立した複数のカートリッジからなり、カートリッジ毎に上述した非水系組成物が充填されている。なお、非水系組成物が充填されたカートリッジは、通常の印刷時にはキャリッジ4上に搭載されていなくてもよく、少なくとも非水系組成物の流路を洗浄する場合にキャリッジ4に装着されていればよい。
プラテン5はプラテンヒーターを備え、被記録媒体を設定温度に加熱できるように構成されている。記録ヘッド2にはヒーターは内蔵されていない。ただし、被記録媒体の加熱により記録ヘッドの温度も結果的に上昇し、記録ヘッド2内に収容された非水系組成物の温度も上昇する傾向にある。図示はしないが、プリンター1は、プラテンヒーターよりも下流の被記録媒体搬出経路にアフターヒーターを備えていてもよい。
上述した本実施形態の非水系組成物は、記録ヘッド2から吐出される。ここで、記録ヘッド2から非水系組成物が吐出される際のプラテンの温度は35℃以上が好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、記録ヘッド2から非水系組成物が吐出される際のプラテンの温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましく、50℃以下が特に好ましい。プラテンヒーターによりプラテンを上記範囲内の温度とすることで記録物の品質をより良好にできる点で好ましい。
また、本実施形態では、記録ヘッド2から吐出される際の吐出周波数が1.0kHz以上200kHz以下であることが好ましい。吐出周波数が上記以下の場合、吐出安定性がより優れる点で好ましく、上記以上の場合、記録速度がより速い点で好ましい。吐出周波数は、1非水系組成物滴の吐出単位の吐出の周波数を意味する。吐出周波数は、記録速度を更に高める観点から、2.0kHz以上が好ましく、3.0kHz以上がより好ましく、5.0kHz以上が更に好ましく、10kHz以上が特に好ましい。また、吐出周波数は、吐出安定性をより高める観点から、200kHz以下が好ましく、150kHz以下がより好ましく、100kHz以下が更に好ましく、50kHz以下が特に好ましい。さらに言えば、記録速度を確保しつつ吐出安定性に一層優れる点で、吐出周波数は、20kHz以下が好ましく、15kHz以下がより好ましい。一方、吐出安定性を確保しつつ記録速度に一層優れる点で、吐出周波数は、15kHz以上が好ましく、20kHz以上がより好ましい。
本実施形態のプリンター1としては、インクカートリッジ3をキャリッジ4に搭載した、いわゆるオンキャリッジタイプのプリンターを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、非水系組成物が充填されたインク収容体(例えば、インクパック、インクカートリッジ等)をプリンター1の筐体等に装着して、インク供給チューブを介してヘッド2に供給する、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。
本実施形態のインクジェット記録装置には、複数の非水系組成物を有するインクセットを用いることができる。本実施形態のインクセットは、複数の本実施形態の非水系インクジェット組成物を有するものであってもよく、その他に、本実施形態の非水系インクジェット組成物とは異なる非水系組成物(その他の非水系組成物)をさらに有するものであってもよい。また、その場合には、インクセットは、本実施形態の非水系組成物をマゼンタインク、その他の非水系組成物をイエローインク、及びシアンインクとして有するインクセットであってもよく、本実施形態の非水系組成物をレッドインク、その他の非水系組成物をマゼンタインク、イエローインク、及びシアンインクとして有するインクセットであってもよい。色再現性をより優れたものとする観点で、本実施形態の非水系組成物をレッドインクとして用い、その他の非水系組成物であるマゼンタインク、イエローインク、及びシアンインクと併用することが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例において用いた非水系組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔非水系組成物用〕
〔顔料〕
C.I.ピグメントレッド254(PR−254)(東京化成工業社製、商品名Pigment Red 254)
C.I.ピグメントレッド177(PR−177)(Hangzhou Xcolor Chemical Company社製、商品名Pigment Red 177)
C.I.ピグメントレッド179(PR−179)(Gaoyou Auxiliary Factory社製、商品名Pigment Red 179)
C.I.ピグメントレッド224(PR−224)(Hangzhou Xcolor Chemical Company社製、商品名Pigment Red 224)
〔有機溶剤〕
ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(日本乳化剤社製、商品名MEDG)
ジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製、商品名DEDG)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業社製、商品名Triethylen Glycol Monobutyl Ether)
テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(KHネオケム社製、商品名ブチセノール40)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業社製、商品名Dipropylene Glycol Monomethyl Ether)
γ−ブチロラクトン(東京化成工業社製、商品名γ-Butyrolactone)
δ−バレロラクトン(東京化成工業社製、商品名δ-Valerolactone)
カプリル酸メチル(東京化成工業社製、商品名Methyl n-Octanoate)
カプリン酸メチル(東京化成工業社製、商品名Methyl Decanoate)
3−メトキシブチルアセテート(ダイセル社製、商品名3−メトキシブチルアセテート)
3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート(クラレ社製、商品名ソルフィットAC)
乳酸メチル(東京化成工業社製、商品名Methyl D-(+)-Lactate)
乳酸エチル(東京化成工業社製、商品名Ethyl L-(-)-Lactate)
〔樹脂〕
ソルバインCL(塩化ビニル及び酢酸ビニルの共重合樹脂、日信化学工業社製商品名)
〔顔料分散剤〕
Solsperse37500(ルーブリゾール社製商品名)
〔界面活性剤〕
BYK−340(ビックケミージャパン社製商品名)
[非水系組成物の調製]
各材料を下記の表1及び表2に示す組成で混合し、十分に撹拌し、各非水系組成物を得た。なお、下記の表1及び表2中、用いた材料に関する数値の単位は質量%であり、合計は100.0質量%である。また、各非水系組成物における溶存窒素量を、下記の「(物性1)溶存窒素量」に記載する通りの方法で、表1及び表2の数値となるよう調整した。
(物性1)溶存窒素量
得られた各非水系組成物800mLを1Lビーカーに移し、真空ゲージ値を約0.08MPaに設定した市販の真空脱気装置(200×200×300mmの容積を持つアクリル製密閉容器に真空ゲージと真空ポンプを接続した脱気装置中で、回転速度500rpmに設定した5cm長スターラーで撹拌し、溶存窒素量を調整した。また、各非水系組成物中の溶存窒素量は、ガスクロマトグラフ6890N(Agilent社製商品名)で測定した。測定結果を表1及び表2に示す。数値の単位は質量ppmである。
Figure 0006663561
Figure 0006663561
〔記録物の作製〕
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製の商品名「SC−S30650」)に被記録媒体である塩ビメディア(3M社製、型番「IJ180−10」)を搬入し、吐出ヘッドに実施例及び比較例で得られた各組成物を充填し、プラテンの温度を記録物の作製中及び記録物の作製後1分間の間45℃に保持し、塗布量10mg/inch2で、狙い解像度720×720dpiの条件下で、ベタパターンを作製し、各記録物を得た。なお、吐出不良により吐出が不足する部分があっても、不良箇所を補う操作は行わなかった。
(評価1)吐出安定性
実施例及び比較例で得られた各組成物を、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、商品名「SC−S30650」)に充填した。次いで、360ノズルを備えたインクジェットヘッドから周波数7kHzで吐出し、被記録媒体である塩ビメディア(3M社製、型番「IJ180−10」)にベタパターンを連続して300秒間形成し続けた(Lドット、600×600dpi)後、吐出を停止し、これを1シーケンスとした。その後、同様の操作を10シーケンス繰り返した。こうして得られた記録物のベタパターンから、インクのドット抜け、飛行曲がり、及び飛び散りを確認した。これらの現象が確認されたノズルを不良ノズルとし、全ノズル数(360ノズル)に対する不良ノズル数の割合をカウントし、吐出安定性を評価した。得られた結果を、表1及び表2に示す。
(評価基準)
4:不良ノズル割合が0%
3:不良ノズル割合が0%超5%未満
2:不良ノズル割合が5%以上10%未満
1:不良ノズル割合が10%以上
(評価2)画質(彩度)
得られた各記録物について、彩度(C*)の評価を行った。具体的には、得られた各記録物について、スペクトロリーノ(商品名、グレタグマクベス社製分光光度計)を用いてa*値b*値の測色を行い、C*を算出し、下記評価基準により彩度を評価した。なお、C*の値は、C*の算出値の小数点以下を四捨五入した整数値とした。得られた結果を、表1及び表2に示す。
(評価基準)
4:C*値が100以上
3:C*値が90〜99
2:C*値が80〜89
1:C*値が79以下
(評価3)製造コスト
各非水系組成物における溶存窒素量の調整時の脱気時間から、下記評価基準により製造コストを評価した。得られた結果を、表1及び表2に示す。ここで、「脱気時間」とは、真空脱気装置中に各非水系組成物を置いてから回収するまでの時間である。
(評価基準)
4:脱気時間が10分未満である。
3:脱気時間が10分以上20分未満である。
2:脱気時間が20分以上30分未満である。
1:脱気時間が30分以上である。
表1及び表2に示す実施例及び比較例の対比により、本発明に係る非水系インクジェット組成物により、優れた彩度の記録物が得られることが分かった。さらには、該非水系インクジェット組成物は、吐出安定性にも優れることが分かった。また、当該非水系インクジェット組成物を製造するコストにも優れることが分かった。
1…プリンター、2…インクジェット式記録ヘッド、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…被記録媒体、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、70…インクパック、72…カートリッジケース、74…インク供給口、76…本体ケース、78…蓋部

Claims (9)

  1. ジケトピロロピロール顔料を含有する顔料と、有機溶剤と、を含む、非水系インクジェット組成物であって、
    前記有機溶剤として、グリコールエーテル類を含有し、かつ、
    溶存窒素量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、90質量ppm以下であり、
    前記グリコールエーテル類は、下記式(2)で表されるグリコールモノエーテルを、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、7.0質量%以上50質量%以下含有する、非水系インクジェット組成物。
    OH−(R 5 O) n −R 4 (2)
    (式(2)中、R 4 は、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R 5 は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、nは、1〜7の整数を示す。)
  2. 前記溶存窒素量は、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、10質量ppm以上である、請求項1に記載の非水系インクジェット組成物。
  3. 前記グリコールエーテル類は、下記式(1)で表されるグリコールジエーテルを含有する、請求項1又は2に記載の非水系インクジェット組成物。
    1O−(R3O)m−R2 (1)
    (式(1)中、R1及びR2は、各々独立に、炭素数1〜7のアルキル基を示し、R3は、炭素数1〜3のアルキレン基を示し、mは、1〜7の整数を示す。)
  4. 前記顔料の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、1.0質量%以上5.0質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
  5. 前記グリコールエーテル類の含有量が、前記非水系インクジェット組成物の総量に対して、10質量%以上90質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
  6. 前記有機溶剤は、環状ラクトン類をさらに含有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
  7. 塩化ビニル樹脂をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
  8. 塩化ビニル系樹脂を含む被記録媒体に付着させて用いるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の非水系インクジェット組成物を用いて、被記録媒体にインクジェット法により記録を行う工程を有する、インクジェット記録方法。
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