JP6535261B2 - リチウムイオン二次電池の製造方法及びリチウムイオン二次電池の電極構造 - Google Patents
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Description
例えば、リチウムイオン二次電池の放電容量は初期充電後に低下することが知られていた。このことを解決するために、リチウムイオン二次電池を製造するにあたり、初期充電工程を行う前に、酸化ケイ素(SiO及びSiO2)を負極活物質として用いた負極とリチウム金属とを反応させるリチウムプレドープ工程が行われている(例えば、特許文献1参照)。リチウムプレドープ工程により、その後に行われる初期充電工程において、リチウムシリケート等の副生成物が生成される、或いは電解液中のリチウムイオンが失われて放電容量が低下する、という事態が回避される。
幅方向の両端から間隔をあけた位置に所定幅をもって長さ方向に沿う帯状に設けられる非パンチング部、及び該非パンチング部を除く部分に多数の貫通孔を有するパンチング部からなる電極集電体を形成する工程と、前記電極集電体の表面の前記非パンチング部同士の間に電極活物質を塗布する工程と、前記電極活物質にリチウムイオンをドープすることにより電極活物質層を形成する工程と、前記電極活物質層の表面全域を被覆し、且つ前記非パンチング部から張り出さないように前記非パンチング部の表面上に重なるように被覆して表面コーティング層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
前記電極は、負極であってもよく、正極であってもよい。
また、上述のリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、非パンチング部同士の間に電極活物質層が設けられ、表面コーティング層が該電極活物質層から張り出し、且つ非パンチング部から張り出さないように形成される。従って、電極活物質層は電極集電体の幅方向において中央部のパンチング部の上に形成され、且つ表面コーティング層は電極活物質層を完全に被覆し、該電極活物質層から張り出した部分が非パンチング部のみを被覆するように形成される。これにより、表面コーティング層がパンチング部に形成された貫通孔から該パンチング部を挟んで反対側に通過することを防止し、ローラー等の搬送部材を電極活物質層が形成される部分の両側のみで電極集電体に当接するように構成した際に、前記搬送部材への表面コーティング層の付着も防止することができる。
前記電極活物質層の表面全域を被覆し、且つ幅方向の両端が前記非パンチング部の表面上に重なるように被覆された表面コーティング層と、
が積層されている積層体を備えることを特徴とする電極構造ことを特徴とする。
前記積層体は、負極であるであってもよく、正極であってもよい。
正極4は、正極集電体2の表面2a,2b上に正極活物質層3が形成された電極である。一方、負極7は、負極集電体(電極集電体)5の表面5a,5b上に負極活物質層(電極活物質層)6が形成された電極である。
正極活物質層3が両面に形成された正極集電体2のそれぞれからリードタブ2tが引き出され、複数のリードタブ2tは互いに電気的に接続されている。同様に、負極活物質層6が両面に形成された負極集電体5のそれぞれからリードタブ5tが引き出され、複数のリードタブ5tは互いに電気的に接続されている。
正極集電体2はアルミ箔製である。正極集電体2の面積、及び厚みは特に制限されず、公知のリチウムイオン二次電池の負極集電体と同じ材料、面積、及び厚みが適用可能である。正極集電体2のアルミニウム以外の材料としては、例えばチタン、ニッケル、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。正極集電体2の面積は、リチウムイオン二次電池1の大きさに応じて適切に設定され、例えば40cm×20cmである。正極集電体2の厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
好適な正極活物質としては、例えばリチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物等の金属酸リチウム化合物が挙げられる。金属酸リチウム化合物として、一般式「LiMxOy(式中、Mは金属であり;x及びyは、金属Mと酸素Oとの組成比である。)」で表される金属酸リチウム化合物が挙げられる。具体的な金属酸リチウム化合物としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等が挙げられる。また、正極活物質の構成材料として、類似の組成であるオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)及び三元系正極材(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)等も好適である。
なお、金属酸リチウム化合物の前記一般式において、Mは複数種の金属であってもよい。このような金属酸リチウム化合物としては、例えば一般式「LiM1 pM2 qM3 rOy(式中、M1、M2及びM3は互いに異なる種類の金属である。また、p、q、r及びyは、金属M1、M2及びM3と酸素Oとの組成比である。)」で表されるものが挙げられる。ここで、p+q+r=xである。前記一般式で表される金属酸リチウム化合物としては、例えばLiNi0.33Mn0.33Co0.33O2等が挙げられる。
図3に示すように、負極構造20は、幅方向の両端5eから間隔(即ち、幅寸法w3)をあけた位置に所定の幅寸法w4をもって長さ方向に沿う帯状に設けられる非パンチング部5n及び非パンチング部5nを除く部分に多数の貫通孔22を有するパンチング部5pからなる負極集電体5と、負極集電体5の表面(一方の面)5a及び表面5bの非パンチング部5n同士の間に塗膜された電極活物質26に、リチウムイオンをドープすることにより形成された負極活物質層6と、負極活物質層6の表面6a全域を被覆し、且つ幅方向の両端28eが非パンチング部5nの表面上に重なるように被覆された表面コーティング層28と、が積層された構造体(積層体)である。そして、この積層体が負極となっている。
具体的には、負極7は上述した長尺の負極構造20から切り出したものであって、負極構造20はロール・ツー・ロール方式で製造され、所定の方向に搬送されるものである。以下、搬送方向に平行する方向を長さ方向とし、搬送方向に直交する方向を幅方向とする。
なお、貫通孔22の形状、大きさ、個数、相対配置は特に制限されない。複数の貫通孔22は、互いに独立していてもよいし、互いに連結していてもよい。貫通孔22の個数が多過ぎたり、偏って配置されたりしていると、負極集電体5の表面5a,5bに負極活物質層6を保持することが難しくなる場合がある。この場合を考慮して、貫通孔22の個数や配置等は適宜調整されている。
貫通孔22の開口直径は、50μm以上1000μm以下であることが好ましく、500μm以上1000μm以下であることがより好ましい。貫通孔22の開口直径が前記範囲よりも大きくなると、電極活物質26を塗布する際に塗液が裏面に抜けてロールを汚し、生産性が低下する。また、貫通孔22の開口直径が前記範囲よりも小さくなると、加工のコストが増大する。
また、貫通孔の開孔率(単位面積中の貫通孔の面積割合)は5%から30%以内であることが好ましく、より好ましくは10%以上20%以下であることがより好まし。開口率が多すぎると箔の強度が低下し、電極活物質を塗布する際に箔が破断し生産性が低下する。開口率が小さすぎるとLiドープの効率が落ちて生産性が低下する。
好適な電極活物質26としては、例えば炭素、炭素化合物、金属酸化物が挙げられる。負極活物質としては、例えば酸化ケイ素等のリチウムと合金化可能な金属酸化物、黒鉛、アセチレンブラック等の炭素材料等が挙げられる。酸化ケイ素としては、一般式「SiOz(式中、zは0.5以上1.5以下の何れかの数である。)」で表される物質が挙げられる。ここで、酸化ケイ素を「SiO」単位で見た場合、このSiOは、アモルファス状のSiOであるか、又はSi:SiO2のモル比が約1:1となるように、ナノクラスターのSiの周囲にSiO2が存在する物、或いはSi及びSiO2の複合物である。
正極活物質としては、一般式「LiMxOy(式中、Mは金属であり;x及びyは、金属Mと酸素Oとの組成比である。)」で表される金属酸リチウム化合物が例示できる。
このような金属酸リチウム化合物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等が例示できる。
バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンブロック共重合体、ポリビニルアセタール樹脂、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルニトリル等を例示できる。
導電助剤は、活物質よりも導電性が高い材料が好ましく、金属粒子、炭素粒子、繊維状炭素化合物等を例示できる。
電極の構成材料において、活物質、導電助剤及びバインダーの総配合量に対する、バインダーの配合量の割合は、3質量%から30質量%であることが好ましく、5質量%から20質量%であることがより好ましい。
導電助剤を含む場合は、電極の構成材料において、活物質、導電助剤及びバインダーの総配合量に対する、導電助剤の配合量の割合は、1質量%から25質量%であることが好ましく、2質量%から15質量%であることがより好ましい。
表面コーティング層28は、絶縁性を有し、電解液を保持又は通過させることが可能なものであれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池で使用される無機フィラーコーティング層が適用可能である。このような無機フィラーコーティングとしては、例えばオレフィン系樹脂からなるバインダーと酸化アルミのような無機フィラーの混合物が挙げられる。
セパレータ8は、絶縁性を有し、電解液を保持又は通過させることが可能なものであれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池で使用されるセパレータであってよい。
セパレータ8としては、例えばオレフィン系樹脂からなる多孔質膜又は不織布、絶縁性粒子からなる多孔性絶縁膜等が挙げられる。また、セパレータ8は、絶縁性粒子を含む組成物を正極4又は負極7の表面に塗布することで形成される絶縁性膜であってもよい。セパレータ8の厚みは、絶縁性が保たれる厚みであれば特に限定されず、例えば5μm以上50μm以下とされている。
但し、表面コーティング層28はセパレータ8と同様に絶縁性を有しているので、負極7に設けられた表面コーティング層28がセパレータ8として取り扱われてもよく、表面コーティング層28がセパレータ8の一部を構成していてもよい。
電極積層体9の最外層部である最上部と最下部の二箇所には、セパレータ8で隔てられた金属箔積層体11が設置されている。金属箔積層体11は、リードタブ2tを介して正極集電体2に導通されたアルミ箔である第一金属箔12と、リードタブ5tを介して負極集電体5に導通された銅箔である第二金属箔15とが、絶縁シート10を介して積層された積層体である。第一金属箔12及び第二金属箔15の表面には、電極活物質は積層されておらず、露出した金属面の間に絶縁シート10が挟持されている。
金属箔積層体11は、リチウムイオン二次電池1の最外層部である最上部及び最下部の少なくとも何れか一方に備えられていればよく、どちらか一方のみに備えられた構成であっても構わない。なお、不慮の衝撃が上方と下方の両方から加わる可能性がある場合には、金属箔積層体11が最上部及び最下部の両方に備えられていることが好ましい。
本実施形態の製造方法は、負極集電体5の表面5a,5bに負極活物質層6が形成されてなる負極7を備えたリチウムイオン二次電池1の製造方法において、幅方向の両端5eから間隔(即ち、幅寸法w3)をあけた位置に所定の幅寸法w4をもって長さ方向に沿う帯状に設けられる非パンチング部5n、及び非パンチング部5nを除く部分に多数の貫通孔22を有するパンチング部5C,5Eからなる負極集電体5を形成する工程と、負極集電体5の表面5a,5bの非パンチング部5n同士の間に電極活物質26を塗布する工程と、電極活物質26にリチウムイオンをドープすることにより負極活物質層6を形成する工程と、負極活物質層6の表面6a全域を被覆し、且つ非パンチング部5nから張り出さないように非パンチング部5nの表面上に重なるように被覆して表面コーティング層28を形成する工程と、を有する。
パンチング加工に使用する押し型に配置される針の直径、及び打ち抜き型に配置される穴の直径は特に制限されず、例えば、0.01mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.05mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上1.0mm以下であることがさらに好ましい。押し型に配置される針の直径が上記範囲の下限値以上であると、リチウムイオンが通過し易い貫通孔22を容易に形成することができる。また、押し型に配置される針の直径が上記範囲の上限値以下であると、負極7の内部抵抗を低減し、負極7の構造的強度を充分に維持することができる。
なお、電極活物質26にリチウムイオンをドープする方法として、例えば電気化学的にリチウムイオンを電極活物質26にドープさせる方法、負極活物質層6とリチウム金属を物理的及び/又は化学的に接触させる方法等を採用してもよい。より具体的には、例えば、電解液中にリチウム金属を配置するとともに、このリチウム金属を所定の電極と導通接続させることにより、電極活物質26にリチウムイオンをドープし、負極活物質層6を形成することができる。
以上の工程により、図1に示すリチウムイオン二次電池1が完成する。
従って、負極集電体5の撓みや皺の発生を抑え、負極構造20及び負極7の製造不良を防止することができる。
また、負極活物質層6から張り出した表面コーティング層28の両端部が非パンチング部5nのみを被覆するように非パンチング部5nの幅寸法w4を減じれば、負極集電体5の撓みをより抑えることができる。
負極構造20では、負極活物質層6が負極集電体5の表面5a,5bの両方に形成されていることで、一方の電極活物質26の表面上にリチウム金属箔を配置すれば、リチウム金属箔からリチウムイオンが一方の電極活物質26に拡散してドープされ、さらに中央部のパンチング部5Cの貫通孔22を通り、他方の電極活物質26に拡散してドープされる。従って、生産性を高めて負極活物質層6を形成することができる。なお、表面コーティング層28が厚み方向にリチウムイオンを通過させることが可能であれば、表面コーティング層28を形成した後に、表面コーティング層28の上にリチウム金属箔を配置しても、同様の効果が得られる。
即ち、正極集電体2の表面の非パンチング部同士の間に塗膜され、且つ正極活物質を含む電極活物質26に、リチウムイオンをドープして形成された正極活物質層3と、正極活物質層3の表面全域を被覆し、且つ幅方向の両端が非パンチング部の表面上に重なるように被覆された表面コーティング層と、が積層された積層体(図示略)が正極4であってもよい。
上述の正極4の製造方法は、上述した負極7の製造方法において、負極集電体5を正極集電体2に置き換え、電極活物質26を正極活物質を含む電極活物質に置き換え、負極活物質層6を正極活物質層3に置き換えればよい。
Claims (6)
- 電極集電体の少なくとも一方の面に電極活物質層が形成されてなる電極を備えたリチウムイオン二次電池の製造方法において、
幅方向の両端から間隔をあけた位置に所定幅をもって長さ方向に沿う帯状に設けられる非パンチング部、及び該非パンチング部を除く部分に多数の貫通孔を有するパンチング部からなる電極集電体を形成する工程と、
前記電極集電体の表面の前記非パンチング部同士の間に電極活物質を塗布する工程と、
前記電極活物質にリチウムイオンをドープすることにより電極活物質層を形成する工程と、
前記電極活物質層の表面全域を被覆し、且つ前記非パンチング部から張り出さないように前記非パンチング部の表面上に重なるように被覆して表面コーティング層を形成する工程と、
を有するリチウムイオン二次電池の製造方法。 - 前記電極が負極である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
- 前記電極が正極である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
- 幅方向の両端から間隔をあけた位置に所定幅をもって長さ方向に沿う帯状に設けられる非パンチング部、及び該非パンチング部を除く部分に多数の貫通孔を有するパンチング部からなる電極集電体と、
前記電極集電体の少なくとも一方の面の前記非パンチング部同士の間に塗膜された電極活物質に、リチウムイオンをドープすることにより形成された電極活物質層と、
前記電極活物質層の表面全域を被覆し、且つ幅方向の両端が前記非パンチング部の表面上に重なるように被覆された表面コーティング層と、
が積層されている積層体を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池の電極構造。 - 前記積層体が負極である請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の電極構造。
- 前記積層体が正極である請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の電極構造。
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