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JP6522222B1 - 建物の基礎構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の深層混合処理体の上に構造スラブが支持される基礎構造よりも安価であり、かつ、複数の深層混合処理体及び軟弱地盤の上に土間スラブが支持される基礎構造よりも構造信頼性の高い建物の基礎構造を提供すること。【解決手段】支持層G1の上の軟弱地盤Sの上にある建物の基礎構造40は、軟弱地盤Sの地表面側にある浅層混合処理層10と、浅層混合処理層10と支持層G1を鉛直方向に繋ぐ深層混合処理体20と、深層混合処理体20の上にあって建物の上部構造体60を支持する基礎体50と、浅層混合処理層10、もしくは既製杭と場所打ち杭を含む杭の上にあって、かつ基礎体50の側方にある土間コンクリートスラブ30と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は建物の基礎構造に関する。
沈下等の恐れのある軟弱地盤上に物流施設や倉庫等の建物を建設するに当たり、軟弱地盤の下方にある支持層まで深層混合処理体(深層混合柱状改良体)を所定ピッチにて造成し、複数の深層混合処理体の上に鉄筋コンクリート製の構造スラブを施工する方法が適用されている。この構造スラブが建物の一階床を構成し、一階床にて柱や壁、屋根等の上部構造体が支持される。ここで、「構造スラブ」とは、上部構造体の荷重を受け、自身の剛性にてこの受けた荷重を下方の深層混合処理体に伝達することのできるスラブのことである。構造スラブは、載荷される荷重に対する構造計算に基づき、スラブ厚や鉄筋量が設定される。尚、構造スラブは自身の剛性にて荷重の伝達を可能にすることから、下方の地盤に直接支持されることを要しない。
このような構造スラブに対して、地盤に直接支持され、それ自身は荷重を下方の深層混合処理体等に伝達しないスラブは「土間スラブ」、もしくは「土間コンクリートスラブ」と称されている。土間スラブは、その厚みと厚みに対する鉄筋量が、蓄積された過去の実績に基づいて一般に設定されている。具体的には、乾燥収縮ひび割れ等が土間スラブに入らないように、実績に基づいて土間スラブの厚みと厚みに応じた鉄筋量が設定されており、構造スラブのように載荷される荷重に基づいた構造計算により鉄筋量が設定されるものではない。
建物の一階床に対して構造計算に基づいてその仕様が設定される上記構造スラブを適用することは、性能に優れ、構造信頼性が高い一方で、建設費用が自ずと高価になるといった課題を有している。そこで、構造スラブに代えて上記する土間スラブを適用することにより、建設費用は安価になるものの、軟弱地盤に支持される土間スラブの沈下やひび割れの発生が新たな課題となる。
従って、複数の深層混合処理体の上に構造スラブが支持される基礎構造よりも安価であり、かつ、複数の深層混合処理体及び軟弱地盤の上に土間スラブが支持される基礎構造よりも構造信頼性の高い基礎構造の創出が望まれている。
ここで、軟弱地盤に複数の柱状体(上記する深層混合処理体に相当)を造成し、複数の柱状体の上に浅層改良土層が敷設され、浅層改良土層の上に道路舗装が敷設された構造の道路とその構築工法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3528950号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は対象が道路であり、上記するように建物の一階床の基礎構造に関する技術ではない。従って、構造スラブを含む基礎構造よりも安価であって、土間スラブを含む基礎構造よりも構造信頼性の高い建物の基礎構造を提案できるものではない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、複数の深層混合処理体の上に構造スラブが支持される基礎構造よりも安価であり、かつ、複数の深層混合処理体及び軟弱地盤の上に土間スラブが支持される基礎構造よりも構造信頼性の高い建物の基礎構造を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による建物の基礎構造の一態様は、
支持層の上の軟弱地盤の上にある建物の基礎構造であって、
前記軟弱地盤の地表面側にある浅層混合処理層と、
前記浅層混合処理層と前記支持層を鉛直方向に繋ぐ深層混合処理体と、
前記深層混合処理体、もしくは既製杭と場所打ち杭を含む杭の上にあって建物の上部構造体を支持する基礎体と、
前記浅層混合処理層の上にあって、かつ前記基礎体の側方にある土間コンクリートスラブと、を有することを特徴とする。
本態様によれば、構造スラブよりも安価な土間コンクリートスラブが浅層混合処理層を介して深層混合処理体に支持されていることにより、深層混合処理体の上に構造スラブが支持される基礎構造よりも安価であり、かつ、深層混合処理体及び軟弱地盤の上に土間スラブが支持される基礎構造よりも構造信頼性の高い建物の基礎構造を提供することができる。ここで、「土間コンクリートスラブ」とは、軟弱地盤を含む地盤や、地盤改良が行われた浅層混合処理層に直接支持されるスラブのことを意味し、以下、土間スラブと称する場合もある。すなわち、構造スラブのように、自身の剛性により建物の上部構造体の荷重を下方の深層混合処理体や、既製杭、場所打ち杭といった杭に伝達するスラブではなく、下方の浅層混合処理層等に直接支持された状態で、一階床に載荷される分布荷重等に対して沈下やひび割れを生じない程度の構造(厚みと鉄筋量)を有するスラブである。この「建物の上部構造体」には、柱や壁、屋根等が含まれ、建物が2階以上の場合は上階の床も含まれる。また、建物の上部構造体を支持する「基礎体」としては、鉄筋コンクリート製の独立基礎や布基礎等が含まれる。さらに、「軟弱地盤」とは、沈下等の恐れのある地盤を意味しているが、この沈下の有無は、載荷される荷重と地盤強度との関係により決定されることから、定量的な地盤の強度範囲で規定できるものではない。従って、建設予定地の原地盤の強度に対して、建設予定の建物荷重により当該建物が沈下の恐れがある場合において、当該原地盤は建設予定の建物に対して「軟弱地盤」となり得る。
深層混合処理体は、基礎体を直接支持して、建物の上部構造体の荷重が基礎体を介して伝達され、伝達された荷重を支持層に伝える例えば相対的に大径の処理体と、浅層混合処理層を介して土間コンクリートスラブを支持する例えば相対的に小径の処理体とを有することができる。尚、基礎体を直接支持する形態は、上記する相対的に大径の深層混合処理体の他にも、PHC杭や鋼管杭等の既製杭、造成孔に鉄筋籠が挿入されてコンクリートが打設されてなる場所打ち杭等の杭も含まれる。そして、深層混合処理体も杭状に造成され得るが、本明細書では、既製杭や場所打ち杭を含む杭と区別するものとする。
本態様の基礎構造では、土間スラブを一階床に適用しつつ、土間スラブは浅層混合処理層を介して下方の深層混合処理体に支持させ、建物の上部構造体を支持する基礎体は下方の深層混合処理体もしくは杭に支持させる形態の基礎構造である。本態様の基礎構造によれば、構造スラブを構成要素としないことから、基礎構造の施工費を低減することができる。その一方で、土間スラブを軟弱地盤に直接支持させず、浅層混合処理層を介して深層混合処理体や軟弱地盤に支持させることから、土間スラブの沈下やひび割れの発生を抑制できる。さらに、土間スラブを深層混合処理体に直接支持させず、比較的強度のある浅層混合処理層を介して深層混合処理体に支持させることから、深層混合処理体の本数を可及的に低減でき、このこともまた施工費の低減に繋がる。比較的強度のある浅層混合処理層を介して土間スラブが深層混合処理体に支持される構造では、浅層混合処理層内において、一本当たりの深層混合処理体が支持し得る土間スラブの範囲を増加させることができ、このことにより、深層混合処理体のピッチを広げることが可能になり、深層混合処理体の本数の低減に繋がる。
また、本発明による建物の基礎構造の他の態様は、前記基礎体が前記深層混合処理体に支持される場合において、前記深層混合処理体は、前記基礎体を支持する第一深層混合処理体と、前記基礎体の直下になくて前記浅層混合処理層の直下にある第二深層混合処理体と、を有し、
前記浅層混合処理層において、前記第二深層混合処理体の天端から所定の広がり勾配を有して該浅層混合処理層の天端に投影される投影領域に亘る領域は、前記土間コンクリートスラブから前記第二深層混合処理体に荷重伝達できる荷重伝達可能領域であり、
前記土間コンクリートスラブのうち、前記投影領域に対応する領域は構造計算を不要とする非構造計算領域であり、該非構造計算領域以外の領域は、ひび割れと沈下が防止される設計仕様を有している構造計算領域であることを特徴とする。
本態様によれば、深層混合処理体により土間スラブが間接的に支持される領域を、浅層混合処理層において一般の構造設計の際に汎用的に用いられている所定勾配の広がりを適用して設定することにより、浅層混合処理層の構造により当該浅層混合処理層のひび割れや沈下を抑止する領域を一定の範囲に限定することができる。そして、このことは、浅層混合処理層のひび割れや沈下を抑制しながら、深層混合処理体のピッチを可及的に広くできることを意味する。ここで、「所定の広がり勾配」に関しては、直角三角形の底辺と高さの比率が1:1乃至1:2程度の勾配が含まれる。例えば、広がり勾配を1:1に設定した場合、広がり勾配が1:2の場合に比べて、広がりの範囲が広くなり、浅層混合処理層の構造計算領域を狭くでき、もしくは深層混合処理体の改良ピッチを広げることが可能になる。
土間スラブにおける構造計算領域では、土間スラブに設定される分布荷重に対して、構造計算領域においてひび割れと沈下が防止される設計仕様で厚みと鉄筋量が設定される。例えば、構造計算領域の中で最も長いスパンを有する梁モデルを構造モデルとして適用し、所定の分布荷重を構造モデルに載荷した際に生じる曲げモーメント等により浅層混合処理層の厚みと鉄筋量が設定でき、最大変位量を沈下量として許容沈下量以下となるように浅層混合処理層の厚みと鉄筋量が設定される。構造モデルの設定方法は、1方向の梁モデル(二点支持モデル、片持ち梁モデル)の他、2方向の梁モデル(矩形平面の4辺が固定されたモデル、矩形平面の4辺が単純支持されたモデル)等、様々な設定方法がある。このように、本態様の基礎構造を構成する土間スラブにおいては、設定された構造計算領域においては構造計算により、厚みと鉄筋量が設定される。また、構造計算領域に設定された厚みと鉄筋量に基づいて、全ての土間スラブの構造を設定してもよいし、構造計算領域と非構造計算領域で厚みや鉄筋量が異なる土間スラブとしてもよい。
また、本発明による建物の基礎構造の他の態様において、前記土間コンクリートスラブと前記基礎体は、前記上部構造体の荷重が該基礎体から該土間コンクリートスラブに伝達されない状態で縁切りされていることを特徴とする。
本態様によれば、建物の上部構造体を支持する基礎体から土間スラブへ上部構造体の荷重が伝達されない(応力伝達がない)ことにより、上部構造体の荷重が伝達されることによる土間スラブのひび割れや沈下等を抑止できる。
また、本発明による建物の基礎構造の他の態様において、前記支持層は、下方にある相対的に硬質な第一支持層と、軟弱地盤の途中にある相対的に軟質な第二支持層とを有し、
前記第一深層混合処理体が前記第一支持層に支持され、前記第二深層混合処理体が前記第二支持層に支持されていることを特徴とする。
本態様によれば、硬度の異なる複数の支持層が存在する場合において、上部構造体の荷重が伝達される第一深層混合処理体を相対的に硬質の下方の第一支持層に支持させ、浅層混合処理層を介して土間スラブを支持する第二深層混合処理体を相対的に軟質の上方の第二支持層に支持させることにより、より一層経済的な基礎構造を提供できる。
また、本発明による建物の基礎構造の他の態様は、前記軟弱地盤において前記荷重伝達可能領域にのみ前記浅層混合処理層が形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、荷重伝達可能領域にのみ浅層混合処理層が形成され、他の領域は軟弱地盤を残置することにより、より一層経済的な基礎構造を提供できる。例えば、深層混合処理体のピッチが広く、重機による浅層混合処理層の造成において軟弱地盤の一部を残した造成を効率的に行うことができる状況下において、経済的な基礎構造となり得る。
以上の説明から理解できるように、本発明の建物の基礎構造によれば、複数の深層混合処理体の上に構造スラブが支持される基礎構造よりも安価であり、かつ、複数の深層混合処理体及び軟弱地盤の上に土間スラブが支持される基礎構造よりも構造信頼性の高い建物の基礎構造を提供することができる。
第1実施形態に係る建物の基礎構造の側面図である。 図1のII−II矢視図であって、第1実施形態に係る建物の基礎構造の平面図である。 第1比較例の建物の基礎構造の側面図である。 第2比較例の建物の基礎構造の側面図である。 第2実施形態に係る建物の基礎構造の側面図である。 第3実施形態に係る建物の基礎構造の側面図である。
以下、本発明の各実施形態に係る建物の基礎構造について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[第1実施形態に係る建物の基礎構造]
はじめに、図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る建物の基礎構造について説明する。ここで、図1は、本発明の第1実施形態に係る建物の基礎構造の側面図であり、図2は、図1のII−II矢視図であって、第1実施形態に係る建物の基礎構造の平面図である。
図1及び図2に示す建物の基礎構造40は、硬質な支持層G1の上の軟弱地盤Sの上に構築される基礎構造である。支持層G1は、例えばN値50乃至60程度を有している。また、軟弱地盤Sは、構築される建物の荷重に対して沈下等の恐れのある地盤であり、構築される建物荷重に対して強度の弱い地盤である。
基礎構造40は、軟弱地盤Sの地表面側にある浅層混合処理層10と、浅層混合処理層10と支持層G1を鉛直方向に繋ぐ深層混合処理体20と、深層混合処理体20の上にあって建物の上部構造体60を支持する基礎体50と、浅層混合処理層10の上にあり、基礎体50の側方にある土間コンクリートスラブ30と、を有する。
基礎構造40を有する建物には、工場や倉庫、物流施設、プラント施設の他、事務所、マンション等、様々な建物が含まれる。
浅層混合処理層10は、原地盤である軟弱地盤Sの表層500mm乃至2000mm程度の範囲において、軟弱地盤Sに対して例えばセメント系硬化材の粉体やスラリーを提供し、バックホー等の重機にて撹拌混合することにより造成される。
一方、図示例の深層混合処理体20は、基礎体50を支持する相対的に大径の第一深層混合処理体20Aと、浅層混合処理層10を支持する相対的に小径の第二深層混合処理体20Bとを有する。深層混合処理体20は、例えばセメント系硬化材のスラリーを軟弱地盤Sに注入し、軟弱地盤Sと撹拌混合することにより造成された固結パイルからなる。また、一軸の形態、二軸の形態、及び三軸の形態等の各種形態の撹拌機械により造成される、φ500mm乃至φ2000mm程度の様々な断面寸法の改良処理杭である。図2に示すように、例えば、基礎体50を4本の第一深層混合処理体20Aが支持し、4基の基礎体50により挟まれる矩形エリアの中央側において、4本の第二深層混合処理体20Bが配設されて浅層混合処理層10を支持する。ここで、基礎体50を支持する第一深層混合処理体20Aの本数や浅層混合処理層10を支持する第二深層混合処理体20Bは、それらの断面寸法や載荷される荷重等により種々設定される。尚、図示例は、基礎体50を相対的に大径の第一深層混合処理体20Aが支持する形態を示しているが、基礎体50を、PHC杭や鋼管杭等の既製杭、場所打ち杭(場所打ちコンクリート杭)等の杭(いずれも図示せず)が支持する形態であってもよい。
基礎体50は鉄筋コンクリート製の独立基礎や布基礎から形成される。図2に示すように、図示例の基礎体50は独立基礎により形成され、各基礎体50が地中梁51により接続された構成を有している。
上部構造体の荷重Pは、上部構造体60を構成する柱61を介し、基礎体50を介して第一深層混合処理体20Aに伝達され、第一深層混合処理体20Aを介して支持層G1に伝達される。
土間コンクリートスラブ30は、上部構造体の荷重Pが基礎体50から土間コンクリートスラブ30に伝達されない状態で基礎体50と縁切りされている。例えば、基礎体50の内部の鉄筋が所定の定着長さだけ土間スラブ30に埋め込まれた状態で双方が接合されていてもよいし、せん断伝達筋等を介して双方が接合されていてもよいし、鉄筋等による接合がない状態で双方が面接触していてもよい。いずれの構造であっても、基礎体50からの応力伝達がない態様で土間スラブ30と基礎体50は縁切りされている。図示するように、土間スラブ30は浅層混合処理層10に直接支持されており、浅層混合処理層10は複数本(図示例は4本)の第二深層混合処理体20Bにより支持されている。
図1に示すように、土間スラブ30には、所定の床荷重(分布荷重q)が載荷され、この分布荷重qに対して、土間スラブ30にひび割れや沈下が生じないように土間スラブ30が設計されている。すなわち、従来の土間スラブは、乾燥収縮ひび割れ等が土間スラブに入らないように、実績に基づいて土間スラブの厚みと厚みに応じた鉄筋量が設定されており、構造スラブのように載荷される荷重に基づいた構造計算により厚みと鉄筋量が設定されるものではない。これに対して、図示する基礎構造40を形成する土間スラブ30は、その一部が構造計算により厚みと鉄筋量が設定される。
具体的には、浅層混合処理層10において、第二深層混合処理体20Bの天端20aから所定の広がり勾配を有して浅層混合処理層10の天端に投影される投影領域10aに亘る領域を、土間スラブ30から第二深層混合処理体20Bに荷重伝達できる荷重伝達可能領域10bに設定する。そして、土間スラブ30のうち、投影領域10aに対応する領域を、構造計算を不要とする非構造計算領域30aに設定する。図示例では、広がり勾配として、直角三角形の底辺と高さの比率が1:2の勾配(コンクリートスラブの設計において、汎用的に用いられる荷重の広がり勾配)を適用し、第二深層混合処理体20Bの天端20aから浅層混合処理層10内をこの勾配で広がって浅層混合処理層10の天端に形成された領域を投影領域10aとしている。土間スラブ30において、この投影領域10aに対応する領域は、載荷される分布荷重qがそのまま荷重伝達可能領域10bを介して(図1のX方向)第二深層混合処理体20Bに伝達されることから、土間スラブ30の構造計算を必要としない非構造計算領域30aとなる。
一方、土間スラブ30において、非構造計算領域30a以外の領域は、ひび割れと沈下が防止される設計仕様を有している構造計算領域30bとなる。例えば、図2に示すように、土間スラブ30のうち、4つの円形の非構造計算領域30a以外の領域は構造計算領域30bとなる。この構造計算領域30bでは、例えば、最もスパンの長い場所を特定し(図示例では例えばスパンt1)、この最も長いスパンを有する1方向もしくは2方向の梁モデル(エリアQ1)に対して分布荷重qを載荷し、生じ得る曲げモーメントや撓み等に対して構造計算領域30bにひび割れと沈下が生じない厚みや鉄筋量(設計仕様)が設定される。
尚、仮に浅層混合処理層10が存在しない場合、浅層混合処理層における所定勾配の広がりを考慮することができないため、土間スラブ30における構造計算領域における2方向の梁モデルは、最も長いスパンt2(>t1)を対角線に有するエリアQ2(エリアQ1よりも広い領域)となる。構造計算領域が広くなることにより、土間スラブの厚みは厚くなり、土間スラブ内の配筋量は多くなることから施工費の増大に繋がる。
構造計算領域30bは、このように構造計算にて設定された厚みや鉄筋量を有する設計仕様を有しているが、非構造計算領域30aも構造計算領域30bと同様の厚みと鉄筋量を有していてもよいし、非構造計算領域30aの厚みを相対的に薄くし、鉄筋量を相対的に少なくする等、双方の厚みと鉄筋量を異ならせてもよい。
ここで、図3は、構造スラブ70を有する従来の建物の基礎構造K1の側面図である。構造スラブ70が自身の剛性により上部構造体60の荷重を第一深層混合処理体20Aに伝達することから、第二深層混合処理体20Bを不要にできるものの、構造スラブ70の施工費用が一般に高価であることから、基礎構造K1の施工費も高価になる。
一方、図4は、浅層混合処理層を有さず、土間スラブ30が第二深層混合処理体20Bに直接支持される従来の基礎構造K2の側面図である。浅層混合処理層を有していないことから、浅層混合処理層における荷重伝達可能領域を考慮することができない。そのため、土間スラブ30にひび割れや沈下を生じさせないようにするべく、第二深層混合処理体20Bの本数は自ずと増加する(ピッチが狭くなる)ことになり、結果として基礎構造K2の施工費も高価になる。
図3及び図4に示す従来の基礎構造K1,K2に対して、基礎構造40によれば、図3に示すように構造スラブ70を構成要素としないことから、基礎構造40の施工費を低減することができる。その一方で、土間スラブ30を軟弱地盤Sに直接支持させず、浅層混合処理層10を介して深層混合処理体20Bや軟弱地盤Sに支持させることから、土間スラブ30の沈下やひび割れの発生を抑制できる。さらに、土間スラブ30を深層混合処理体20に直接支持させず、比較的強度のある浅層混合処理層10を介して深層混合処理体20Bに支持させることから、深層混合処理体20Bの本数を可及的に低減でき、このこともまた施工費の低減に繋がる。
以上のことより、図示例の基礎構造40によれば、複数の深層混合処理体20Aの上に構造スラブ70が支持される基礎構造K1よりも安価であり、かつ、複数の深層混合処理体20Bの上に土間スラブ30が支持される基礎構造K2よりも安価であり、かつ構造信頼性の高い建物の基礎構造となる。
[第2実施形態に係る建物の基礎構造]
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る建物の基礎構造について説明する。ここで、図5は、本発明の第2実施形態に係る建物の基礎構造の側面図である。
図5に示す基礎構造40Aが施工される原地盤が2つの支持層G1、G2を有しており、より具体的には、下方にある相対的に硬質な第一支持層G1と、軟弱地盤Sの途中にある相対的に軟質な第二支持層G2とを有している。そして、基礎構造40Aでは、上部構造体60の荷重Pが載荷される第一深層混合処理体20Aが第一支持層G1に支持され、土間スラブ30を浅層混合処理層10を介して支持する第二深層混合処理体20Bが第二支持層G2に支持されている。
例えば、20t/m乃至50t/m程度の荷重が伝達される第一深層混合処理体20Aは、N値50乃至60程度の第一支持層G1に支持させ、数t乃至10t/m程度の荷重が伝達される第二深層混合処理体20Bは、N値10程度の第二支持層に支持させることができる。
図示例のように硬度の異なる複数の支持層G1,G2が存在する場合において、上部構造体60の荷重Pが伝達される第一深層混合処理体20Aを相対的に硬質の下方の第一支持層G1に支持させ、浅層混合処理層10を介して土間スラブ30を支持する第二深層混合処理体20Bを相対的に軟質の上方の第二支持層G2に支持させることにより、より一層経済的な基礎構造40Aとなる。
[第3実施形態に係る建物の基礎構造]
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る建物の基礎構造について説明する。ここで、図6は、本発明の第3実施形態に係る建物の基礎構造の側面図である。
図6に示す基礎構造40Bは、軟弱地盤Sにおいて荷重伝達可能領域にのみ浅層混合処理層10Aを有する基礎構造である。荷重伝達可能領域にのみ浅層混合処理層10Aが形成され、他の領域は軟弱地盤Sを残置することにより、より一層経済的な基礎構造40Bとなる。例えば、深層混合処理体20のピッチが広く、重機による浅層混合処理層10Aの造成において軟弱地盤Sの一部を残した造成を効率的に行うことができる状況下において、経済的な基礎構造となり得る。
[施工コストの比較検証]
本発明者等は、浅層混合処理体を有する基礎構造モデル(実施例)と、浅層混合処理体を有さない基礎構造モデル(比較例)を試作し、実施例と比較例の施工コストの比較を行った。
例えば、図2に示す平面視矩形の土間スラブの構造計算領域に関し、実施例はエリアQ1となり、比較例はエリアQ2となる。平面視矩形のエリアQ2の4つの隅角部が接する第二深層混合処理体20Bの処理体芯間の間隔を3200mm乃至4000mm程度に設定し、土間スラブの構造計算にて適用する積載荷重を15kN/mに設定した。
実施例のエリアQ1のスパンt1が2400mm、比較例のエリアQ2のスパンt2が3500mmに設定されるとして、土間スラブの最小スラブ厚は、実施例が100mmであるのに対して、比較例は150mmと試算された。
また、実施例に比べて比較例の土間スラブは厚みが厚くなることに加えて、配筋量も増加することとなり、浅層混合処理費用の有無を勘案しても(実施例は処理費用有り、比較例は処理費用無し)、比較例に比べて実施例の施工コストを低減できることが試算されている。
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
10 :浅層混合処理層
10a :投影領域
10b :荷重伝達可能領域
20 :深層混合処理体
20a :天端
20A :第一深層混合処理体
20B :第二深層混合処理体
30 :土間コンクリートスラブ(土間スラブ)
30a :非構造計算領域
30b :構造計算領域
40,40A,40B :建物の基礎構造(基礎構造)
50 :基礎体
60 :上部構造体
G1 :支持層(硬質な第一支持層)
G2 :支持層(軟質な第二支持層)
S :軟弱地盤

Claims (4)

  1. 支持層の上の軟弱地盤の上にある建物の基礎構造であって、
    前記軟弱地盤の地表面側にある浅層混合処理層と、
    前記浅層混合処理層と前記支持層を鉛直方向に繋ぐ深層混合処理体と、
    前記深層混合処理体の上にあって建物の上部構造体を支持する基礎体と、
    前記浅層混合処理層の上にあって、かつ前記基礎体の側方にある土間コンクリートスラブと、を有し、
    前記深層混合処理体は、前記基礎体を支持する第一深層混合処理体と、前記基礎体の直下になくて前記浅層混合処理層の直下にある第二深層混合処理体と、を有し、
    前記浅層混合処理層において、前記第二深層混合処理体の天端から所定の広がり勾配を有して該浅層混合処理層の天端に投影される投影領域に亘る領域は、前記土間コンクリートスラブから前記第二深層混合処理体に荷重伝達できる荷重伝達可能領域であり、
    前記土間コンクリートスラブのうち、前記投影領域に対応する領域は構造計算を不要とする非構造計算領域であり、該非構造計算領域以外の領域は、ひび割れと沈下が防止される設計仕様を有している構造計算領域であることを特徴とする、建物の基礎構造。
  2. 前記土間コンクリートスラブと前記基礎体は、前記上部構造体の荷重が該基礎体から該土間コンクリートスラブに伝達されない状態で縁切りされていることを特徴とする、請求項に記載の建物の基礎構造。
  3. 前記支持層は、下方にある相対的に硬質な第一支持層と、軟弱地盤の途中にある相対的に軟質な第二支持層とを有し、
    前記第一深層混合処理体が前記第一支持層に支持され、前記第二深層混合処理体が前記第二支持層に支持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の建物の基礎構造。
  4. 前記軟弱地盤において前記荷重伝達可能領域にのみ前記浅層混合処理層が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の基礎構造。
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