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JP6521668B2 - ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法 Download PDF

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JP6521668B2
JP6521668B2 JP2015033472A JP2015033472A JP6521668B2 JP 6521668 B2 JP6521668 B2 JP 6521668B2 JP 2015033472 A JP2015033472 A JP 2015033472A JP 2015033472 A JP2015033472 A JP 2015033472A JP 6521668 B2 JP6521668 B2 JP 6521668B2
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Description

本発明は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法に関する。詳しくは、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生用品の吸収体に用いられる吸水性樹脂の製造方法に関する。更に詳しくは、アクリル酸ダイマーの含有量が多いアクリル酸を原料として用いたとしても、残存モノマー量の少ない吸水性樹脂を効率的に得ることができる、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法に関する。
吸水性樹脂は、高度の吸水性を有する化合物として近年開発され、紙オムツや生理用ナプキン等の衛生用品の吸収体や、農園芸用の保水剤、工業用の止水剤等として、主に使い捨て用途で多用されている。該吸水性樹脂には多種多様な吸水性樹脂が存在し、その原料についても数多くの単量体や親水性高分子が存在する。中でも、アクリル酸及び/又はその塩を単量体として用いるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が、その吸水性能の高さから工業的に最も多く製造されている(特許文献5〜8)。
上記ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造にあたって、使用されるアクリル酸には、次式で示されるアクリル酸の二量体(以下、「アクリル酸ダイマー」と称する)が存在する。
Figure 0006521668
該アクリル酸ダイマーは、アクリル酸の製造工程における蒸留や晶析等の精製操作によって、除去することはできるものの、得られたアクリル酸を製品タンク等に保存している間にアクリル酸ダイマーが1日あたり数10〜数100ppm程度生成し、保存時の条件(温度、時間、水分等)によって、アクリル酸中の含有量が数重量%となることもある(非特許文献1、2)。
また、該アクリル酸ダイマーは、重合性二重結合を有していることからアクリル酸等の単量体と共重合し、主鎖ポリマーに組み込まれることになる。そのため、吸水性樹脂の乾燥工程等の加熱が行われる工程で、主鎖から分解しアクリル酸を生成する。その結果、吸水性樹脂中の残存モノマーが増加するという問題を有している。
そこで、上記残存モノマーの量を低減するため、アクリル酸を塩基性化合物で過剰に中和してアルカリ性(温度は20〜50℃)に保った後に、アクリル酸を加えて部分中和物とする技術(特許文献1)や、アクリル酸ダイマーの含有量が200ppm以上のアクリル酸を用いて吸水性樹脂を製造する際、吸水性樹脂中の残存モノマーを低減するために亜硫酸水素ナトリウムを添加する技術(特許文献2)が提案されている。
また、アクリル酸中からアクリル酸ダイマーを除去することや重合後での処理は高コストであるため、更に、アクリル酸中のアクリル酸ダイマーは上述したように残存モノマーの増加に繋がるため、アクリル酸ダイマー含有量の少ないアクリル酸を用いる技術(特許文献3、10)や、アクリル酸ダイマーを含むアクリル酸オリゴマー含有量の少ないアクリル酸を用いる技術(特許文献4)、純度99.8重量%未満のアクリル酸を用いる技術(特許文献9)が提案されている。なお、これらの技術では、特許文献5〜8と同様、アクリル酸の精製工程(特に蒸留)を行った後、吸水性樹脂の製造に使用されるまでの貯蔵時間をでき得る限り短くして、吸水性樹脂中の残存モノマーを低減している。
また、吸水性樹脂は部分中和ポリアクリル酸であるが、吸水性樹脂用のアクリル酸を中和する方法として特許文献11〜15が提案されている。なお、特許文献11はアクリル酸の中和方法が吸水性樹脂の着色に影響することが開示され、特許文献12では中和温度を70℃未満に維持した状態での連続中和を開示する。更に、中和温度に関し、重合時の危険性の観点から、中和温度を40℃未満、更には35℃未満とする技術が提案されている(特許文献16)。
特開平2−209906号公報 国際公開第2012/163930号パンフレット 特開平6−211934号公報 特表2006−509085号公報 特開2002−212204号公報 特開2004−155963号公報 特開2005−36100号公報 国際公開第2013/122246号パンフレット 国際公開第2012/164081号パンフレット 特開2006−219661号公報 国際公開第2009/123197号パンフレット 国際公開第2007/028751号パンフレット 国際公開第2007/028747号パンフレット 国際公開第2007/028746号パンフレット 国際公開第2003/095410号パンフレット 国際公開第98/49221号パンフレット
「アクリル酸とそのポリマー(1)」大森英三著、株式会社昭晃堂(1973)p.34 「Modern Superabsorbent Polymer Technology」(1998)p.24〜28
上述した従来技術では、以下に掲げる様々な問題を有していた。つまり、アクリル酸ダイマーの含有量が少ない高純度のアクリル酸を入手することが困難又は高価であったり(特許文献3、4、10等)、低温でのアクリル酸の中和は冷却する際にはエネルギー的に不利であったり(特許文献1、12、16等)、残存モノマーを低減する操作が煩雑であったり(特許文献1、2、9等)、工程が増えたりするため、生産性の低下を招いたり、更に余分な処理剤の添加による新たな問題が発生したりする等の問題を有していた。
また、アクリル酸の精製工程(特に蒸留)を行った後、吸水性樹脂の製造に使用されるまでの貯蔵時間(滞留時間)をでき得る限り短くするため、貯蔵タンクでの液面を極力低く抑える等の方策が採られてきた(特許文献11)。
しかしながら、生産調整で一時的に連続生産を停止させる場合や、吸水性樹脂の製造プラントにおけるトラブル等による休止の場合、該貯蔵タンクにアクリル酸を貯蔵することになるが、停止や休止期間が長引くと、高純度のアクリル酸でも該タンク内でアクリル酸ダイマー含有量が増加してしまい、再度、アクリル酸を精製工程に戻す必要がある等の問題を有していた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、コストや調達の面で不利な高純度アクリル酸の使用に限定されず、アクリル酸ダイマー含有量の高いアクリル酸であっても、生産性を落とすことなく、更に、処理剤を使用することなく、残存モノマーが低減される吸水性樹脂の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、中和時の温度条件について、最高到達温度を70℃以上とすることで、アクリル酸ダイマーを除去するための操作を必要とせず、アクリル酸ダイマー含有量の少ないアクリル酸を使用した場合と遜色ない吸水性樹脂が得られることを見い出した。なお、上記「重合組成物」とは、単量体、重合体、水及び重合開始剤等のことをいう。
即ち、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法は、アクリル酸ダイマーの含有量が150〜2000ppmであるアクリル酸で単量体水溶液を調製する工程、該単量体水溶液を重合する工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、上記単量体水溶液の調製工程において、上記アクリル酸を塩基性化合物で中和する工程が更に含まれ、該中和工程における最高温度が70℃以上である、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法を提供する。
本発明によれば、アクリル酸ダイマーの含有量が多いアクリル酸を吸水性樹脂の原料酸として使用したとしても、アクリル酸ダイマーに起因する残存モノマーが低減された吸水性樹脂が得られる。更に、アクリル酸ダイマーを除去するための操作が不要となるため、生産性の向上やコストダウンが図れる。
以下、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を指し、以下の物性を満たすものをいう。即ち、「水膨潤性」として、ERT441.2−02で規定されるCRCが5g/g以上、かつ、「水不溶性」として、ERT470.2−02で規定されるExtが50重量%以下の物性を満たす高分子ゲル化剤を指す。
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜、設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記物性(CRC、Ext)を満足する範囲内で、添加剤等を含んだ吸水性樹脂組成物であってもよい。
更に、本発明における吸水性樹脂は、最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体や乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もあり、上記吸水性樹脂組成物と合わせて、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。なお、吸水性樹脂の形状として、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状等が挙げられるが、本発明では粒子状の吸水性樹脂が好ましい。
(1−2)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む重合体を意味する。
なお、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは実質100モル%であることをいう。
また、重合体としてのポリアクリル酸塩は、水溶性塩を含み、好ましくは一価の塩、より好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、更に好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩を含むものである。
(1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定/公知文献)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
(1−3−1)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
(1−3−2)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm、0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、荷重条件を4.83kPa(49g/cm、0.7psi)に変更して測定する場合もある。また、ERT442.2−02には、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。
(1−3−3)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される、吸水性樹脂の粒度分布を意味する。なお、重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定する。
(1−3−4)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水性樹脂の水可溶分(水可溶成分量)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位;重量%)のことをいう。溶解ポリマー量の測定は、pH滴定を用いて行う。
(1−3−5)「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂4.0gを105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;重量%)のことをいう。なお、吸水性樹脂を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定する場合もある。
(1−3−6)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)量(以下、「残存モノマー」と称する)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gを0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、500rpmで1時間攪拌した後の溶解残存モノマー量(単位;ppm)のことをいう。溶解残存モノマー量の測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行う。
(1−3−7)その他、EDANAで規定される吸水性樹脂の物性
「pH」(ERT400.2−02):吸水性樹脂のpHを意味する。
「Flow Rate」(ERT450.2−02):吸水性樹脂の流下速度を意味する。
「Density」(ERT460.2−02):吸水性樹脂の嵩比重を意味する。
「Respirable Particles」(ERT480.2−02):吸水性樹脂の呼吸域粉塵を意味する。
「Dust」(ERT490.2−02):吸水性樹脂中に含まれる粉塵を意味する。
(1−4)「通液性」
本発明における吸水性樹脂の「通液性」とは、荷重下又は無荷重下での膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流れ性のことをいい、代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/生理食塩水流れ誘導性)やGBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
「SFC」は、2.07kPa荷重下での吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、米国特許第5669894号に開示されるSFC試験方法に準拠して測定される。
「GBP」とは、荷重下又は自由膨潤での吸水性樹脂に対する0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、国際公開第2005/016393号に開示されるGBP試験方法に準拠して測定される。
(1−5)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、重量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「重量ppm」又は「質量ppm」を意味する。更に、「重量」と「質量」、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」はそれぞれ同義語として扱う。また、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
〔2〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法
以下、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法について説明する。
(2−1)単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を調製する工程である。なお、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下しない範囲で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本項では便宜上、単量体水溶液について説明を行う。
また、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の含有量(使用量)が、吸水性樹脂の重合反応に供される単量体(内部架橋剤は除く)全体に対して、通常50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上(上限は100モル%)であることをいう。
(アクリル酸(塩))
本発明では、得られる吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、単量体としてアクリル酸及び/又はその塩(以下「アクリル酸(塩)」と称する)が用いられる。上記「アクリル酸」として、重合禁止剤や有機不純物等の微量成分が含有するアクリル酸を使用することができる。
上記重合禁止剤として、好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp−メトキシフェノールを、アクリル酸の重合性や吸水性樹脂の色調の観点から、好ましくは10〜300ppm、より好ましくは30〜200ppm、更に好ましくは50〜150ppm、特に好ましくは60〜100ppmを含んでいればよい。なお、上記メトキシフェノール類の含有量が10ppm未満の場合、吸水性樹脂を製造するまでにアクリル酸の重合反応が始まる危険性が増大する。また、該含有量が300ppmを超える場合、吸水性樹脂を製造するための重合反応が遅延したり、得られた吸水性樹脂の色調が悪化したりするため、好ましくない。
上記有機不純物の一つとして、本発明では、「アクリル酸2分子が付加反応したアクリル酸ダイマー」に着目する。なお、本発明のアクリル酸中のアクリル酸ダイマー含有量は150〜2000ppmであり、好ましくは200〜1500ppm、より好ましくは250〜1000ppm、更に好ましくは300〜600ppmである。該アクリル酸ダイマー含有量が150ppm未満の場合、アクリル酸のコストが高くなったり、アクリル酸の精製後、速やかに使用したりする必要がある。一方、該含有量が2000ppmを超える場合、吸水性樹脂の製造工程(特に乾燥工程や、加熱処理工程)において、製造途中の吸水性樹脂を高温に加熱した際、残存モノマーが顕著に増加するため、好ましくない。
なお、本発明のアクリル酸には、上述したアクリル酸ダイマー以外の有機不純物や水を含有してもよい。該有機不純物の含有量としては、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下であり、水の含有量としては、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。
また、上記以外のアクリル酸中の重合禁止剤や不純物等の微量成分については、特許文献10や米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された化合物が本発明に適用される。
また、上記「アクリル酸塩」は、上記アクリル酸を下記塩基性組成物で中和したものであるが、該アクリル酸塩として、市販のアクリル酸塩(例えば、アクリル酸ナトリウムの水溶液や粉体))でもよいし、吸水性樹脂の製造プラント内で中和(以下、「中和工程」と称する)して得られたものでもよい。
(他の単量体)
本発明において、「他の単量体」とは、上記アクリル酸(塩)以外の単量体を指し、アクリル酸(塩)と併用して吸水性樹脂を製造することができる。
上記他の単量体として、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が挙げられる。具体的には、米国特許第4893999号、同第6241928号、同第6987151号、同第6710141号、米国特許出願公開第2005/0215734等に記載された化合物(但し、アクリル酸は除く)が本発明にも適用される。なお、本発明の吸水性樹脂には、上記水溶性又は疎水性の不飽和単量体を共重合成分とするものも含まれる。
(塩基性組成物)
本発明において、「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を指し、例えば、市販の水酸化ナトリウム水溶液等が該当する。
上記塩基性化合物として、具体的には、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられる。これらの中でも、得られる吸水性樹脂の物性の観点から、強塩基性であることが望まれる。即ち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
(中和工程)
本工程は、アクリル酸塩を得るため、アクリル酸を塩基性組成物で中和する工程である。なお、該中和工程は、アクリル酸に対する中和(重合前)又はアクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(重合後)(以下、「後中和」と称する)の何れか一方であってもよいし、又は併用してもよい。
また、これらの中和工程は、連続式でもバッチ式でもよく特に限定されないが、生産効率等の観点から連続式が好ましい。
本発明における中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは60〜90モル%、より好ましくは60〜85モル%、更に好ましくは60〜80モル%、特に好ましくは65〜75モル%である。該中和率が60モル%未満の場合、吸水倍率が低下することがある。一方、該中和率が90モル%を超える場合、加圧下吸水倍率の高い吸水性樹脂が得られないことがある。
上記中和率は、後中和の場合でも同様である。また、最終製品としての吸水性樹脂の中和率についても、上記中和率が適用される。なお、中和率75モル%とは、アクリル酸25モル%及びアクリル酸塩75モル%の混合物を意味する。また、該混合物をアクリル酸部分中和物と称する場合もある。
本発明において、中和工程での系の最高温度は、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。なお、上限としては単量体水溶液の沸点以下であればよく、好ましくは100℃以下であればよい。該「沸点」とは、中和系の常圧における沸点を意味する。
また、アクリル酸に対する中和である場合、つまり、中和物が単量体水溶液(以下、「中和液」と称する場合がある)である場合、上記最高温度に到達した後、該中和液を好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは30℃以下まで冷却し、その後、重合を行ってもよい。なお、冷却の下限温度としては、中和塩の溶解度の観点から、0℃程度である。
また、本発明では、上記最高温度に到達した後、以下の操作を行うことが好ましい。即ち、上記最高温度に到達した後、好ましくは20〜1200秒間、より好ましくは30〜800秒間、更に好ましくは60〜600秒間、特に好ましくは90〜500秒間(以下、当該時間を「保温時間」と称する)、温度を70℃以上に保温することが好ましい。
また、上記保温時間には、単量体水溶液である時間、重合反応を行っている時間が含まれる。具体的には、中和系の温度が最高温度(例えば、87℃)に到達した時点を起点として、40秒後に重合反応が80℃で開始し、70秒後に重合組成物の温度が最高到達温度(重合組成物の沸点)に到達し、200秒後に重合組成物の温度が70℃に下降するような場合が挙げられる。なお、該温度パターンは、本発明の最も好ましい態様の一つである。
また、アクリル酸ダイマーについても、本中和工程で中和され、アクリル酸ダイマー塩と成り得る。したがって、本工程で得られる単量体水溶液中のアクリル酸ダイマー(塩も含む)と、中和前のアクリル酸中のアクリル酸ダイマーとの比率(モル数)は、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下である。
なお、中和を行う装置や滞留時間等、その他の中和条件については、特許文献11(国際公開第2009/123197号)に記載された条件が本発明に適用される。
(内部架橋剤)
本発明で使用される内部架橋剤として、米国特許第6241928号に記載された化合物が本発明にも適用される。これらの中から反応性を考慮して1種又は2種以上の化合物が選択される。
また、得られる吸水性樹脂の吸水性能等の観点から、好ましくは重合性不飽和基を2個以上有する化合物、より好ましくは下記乾燥温度で熱分解性を有する化合物、更に好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造単位を有する重合性不飽和基を2個以上する化合物が、内部架橋剤として用いられる。
上記重合性不飽和基として、好ましくはアリル基、(メタ)アクリレート基、より好ましくは(メタ)アクリレート基が挙げられる。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造単位としてポリエチレングリコールが好ましく、n数として好ましくは1〜100、より好ましくは6〜50である。
したがって、本発明では、好ましくは(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート又は(ポリ)アルキレングリコールトリ(メタ)アクリレート、より好ましくは(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが用いられる。
上記内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.005〜2モル%、より好ましくは0.01〜1モル%、更に好ましくは0.05〜0.5モル%である。該使用量を上記範囲内とすることで所望する吸水性樹脂が得られる。なお、該使用量が少なすぎる場合、ゲル強度が低下し水可溶分が増加する傾向にあり、該使用量が多すぎる場合、吸水倍率が低下する傾向にあるため、好ましくない。
本発明では、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加しておき、重合と同時に架橋反応する方法が好ましく適用される。一方、該手法以外に、重合中や重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法や、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を用いた放射線架橋する方法等を採用することもできる。また、これらの方法を併用することもできる。
(その他、単量体水溶液に添加される物質)
本発明において、得られる吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記の物質を単量体水溶液の調製時に添加することもできる。
具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体等の親水性高分子を、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下(下限は0重量%)で添加したり、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等の発泡剤、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等を、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下(下限は0重量%)で添加したりすることができる。
また、上記物質は、単量体水溶液に添加される形態のみならず、重合途中で添加される形態でもよいし、これらの形態を併用することもできる。
なお、親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉−アクリル酸重合体、PVA−アクリル酸重合体等)が得られる。これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明の範疇である。
(2−2)重合工程
本工程は、上記単量体水溶液の調製工程で得られたアクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
(重合開始剤)
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、又はこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許第4893999号、同第6241928号、同第6987151号、同第6710141号、米国特許出願公開第2005/0215734号等に開示された重合開始剤のうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、重合開始剤の取扱性や吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が使用される。
該重合開始剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.001〜1モル%、より好ましくは0.001〜0.5モル%である。また、該還元剤の使用量は、単量体に対して、好ましくは0.0001〜0.02モル%である。
なお、上記重合開始剤に代えて、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤を併用してもよい。
(重合形態)
本発明に適用される重合形態としては、特に限定されないが、吸水特性や重合制御の容易性等の観点から、好ましくは噴霧液滴重合、水溶液重合、逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、逆相懸濁重合、更に好ましくは水溶液重合が挙げられる。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、連続ベルト重合、連続ニーダー重合の何れでも適用されるが、連続ベルト重合が最も好ましい。
具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号、同第6906159号、同第7091253号、米国特許出願公開第2005/0215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号、同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
また、上記連続水溶液重合の好ましい形態として、「高温開始重合」や「高濃度重合」が挙げられる。これらの重合形態は特許文献5〜8で詳細に述べられているが、本発明の重合形態としてそのまま適用することができる。
具体的には、「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する形態をいい、「高濃度重合」とは、モノマー濃度を好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは45重量%以上(上限は飽和濃度)で重合を開始する形態をいう。これらの重合形態を併用することもできる。
なお、上記高温開始重合では、重合開始時の温度と重合時の最高到達温度との温度差(ΔT)が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下、特に好ましくは30℃以下、最も好ましくは25℃以下となるように制御する。該ΔTが60℃を超える場合、得られる吸水性樹脂の物性が低下するため、好ましくない。
また、本発明においては、上記の重合形態により重合期間中に単量体水溶液の固形分を上昇させてもよい。該単量体水溶液の固形分は、下式(1)から求められる値である。なお、重合後に得られる含水ゲル状架橋重合体についても、下式(1)から求められる値を固形分とする。
Figure 0006521668
上式(1)中、「重合系内の成分」とは、単量体水溶液や、グラフト成分、吸水性樹脂、その他の固形分(例えば、水不溶性微粒子等)の成分のことをいい、逆相懸濁重合における疎水性溶媒は含まれない。
本発明において、重合後の含水ゲル状架橋重合体の固形分は、特に限定されないが、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜75重量%、更に好ましくは50〜70重量%、特に好ましくは55〜65重量%である。該固形分が80重量%を超える場合、吸水倍率の低下や可溶分の増加といった問題が発生する。一方、該固形分が30重量%未満の場合、乾燥工程での負荷が大きく、好ましくない。
また、上記固形分について、重合期間中の変化の割合(固形分上昇の指標)を「濃縮比」として、下式(2)により定義することができる。
Figure 0006521668
本発明における上記濃縮比は、特に限定されないが、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.15以上、更に好ましくは1.20以上、特に好ましくは1.25以上である。
本発明において好ましく適用される高温開始・高濃度重合では、重合期間中の最高到達温度が重合組成物の沸点にまで到達し、水蒸気が発生する。そのため、重合期間中に固形分が上昇する。また、該水蒸気には、アクリル酸等の吸水性樹脂の原材料が含まれている。そこで、該水蒸気を回収し、単量体水溶液として再利用することが望まれる。この場合、アクリル酸の回収率としては、使用した全アクリル酸(中和前)の重量に対して、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは2重量%以上である。
また、本発明においては、空気雰囲気下で重合を行うこともできるが、得られる吸水性樹脂の色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で重合を行うことが好ましい。また、上記高温開始重合の場合は、空気雰囲気下で実施でき、作業員の事故(酸素欠乏症)を考慮する必要がないため、好ましい。
(2−3)ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルを、例えば、ニーダー、ミートチョッパー等のスクリュー押出し機、カッターミル等のゲル粉砕機でゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。なお、上記重合工程がニーダー重合の場合、重合工程とゲル粉砕工程が同時に実施されている。
上記以外のゲル粉砕条件や形態については、国際公開第2011/126079号に開示される内容が、本発明に好ましく適用される。
(2−4)乾燥工程
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の重量変化)から求められ、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85〜99重量%、更に好ましくは90〜98重量%、特に好ましくは92〜97重量%である。
上記粒子状含水ゲルの乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。
上記熱風乾燥における乾燥温度(熱風の温度)としては、吸水性樹脂の色調や乾燥効率の観点から、好ましくは120〜250℃、より好ましくは150〜200℃である。また、熱風の露点としては、特に限定されないが、残存モノマー低減の観点から、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃、更に好ましくは65〜75℃である。該熱風の露点が50℃未満の場合、残存モノマーの低減効果が小さく、また、該熱風の露点が90℃を超える場合、装置内で結露が発生しやすく装置の劣化を促進するため、好ましくない。
なお、熱風の風速や乾燥時間等、上記乾燥温度や露点以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総重量及び目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。
上述した乾燥温度や乾燥時間、露点を上記範囲とすることで、得られる吸水性樹脂のCRC(吸水倍率)やExt(水可溶分)、色調を所望する範囲(下記〔3〕を参照)とすることができる。
(2−5)粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。
本発明の粉砕工程で使用される機器としては、ロールミル及び/又はロールグラニュレーターが必須に使用されるが、その他併用される機器として、例えば、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられる。
また、本発明の分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程、分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)、その他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)で適宜実施できる。
本発明で得られる吸水性樹脂粉末は、重量平均粒子径(D50)として、好ましくは200〜600μm、より好ましくは200〜550μm、更に好ましくは250〜500μm、特に好ましくは350〜450μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値としては、何れの場合も少ないほど好ましく、0重量%が望まれるが、0.1重量%程度でもよい。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.40、更に好ましくは0.27〜0.35である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2−02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての吸水性樹脂についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理(表面架橋工程)されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。
(2−6)表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、加熱処理工程及び冷却工程(任意)から構成される。
該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)が得られる。
(表面架橋剤)
本発明で使用される表面架橋剤としては、特に限定されないが、有機又は無機の表面架橋剤が挙げられる。中でも、吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。例えば、米国特許6071976号に開示される1種又は2種以上の表面架橋剤(但し、多価金属化合物は除く)が挙げられる。また、該表面架橋剤の使用量や、溶媒として水、必要に応じて使用される親水性有機溶媒の種類や使用量についても、該米国特許文献の開示内容が本発明に適用される。
(混合工程)
本工程は、吸水性樹脂粉末と上記表面架橋剤を混合する工程である。該表面架橋剤の混合方法については、特に限定されないが、予め表面架橋剤溶液を作成しておき、該液を吸水性樹脂粉末に対して、好ましくは噴霧又は滴下して、より好ましくは噴霧して混合する方法が挙げられる。
該混合を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が挙げられる。
(加熱処理工程)
本工程は、上記混合工程から排出された混合物に熱を加えて、吸水性樹脂粉末の表面上で架橋反応を起させる工程である。
なお、該加熱処理工程での加熱処理条件についても、米国特許第6071976号に開示される内容が本発明に適用される。
(冷却工程)
本工程は、上記加熱処理工程後に必要に応じて設置される任意の工程である。
該冷却を行う装置としては、特に限定されないが、好ましくは加熱処理工程で使用される装置と同一仕様の装置であり、より好ましくはパドルドライヤーである。熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるためである。なお、上記加熱処理工程で得られた吸水性樹脂粒子は、該冷却工程において、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃に、必要に応じて強制冷却される。
(2−7)再加湿工程
本工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、下記の多価金属塩化合物、ポリカチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加する工程である。
なお、上記添加剤は水溶液又はスラリー液で添加されるため、吸水性樹脂粒子は再度、水膨潤する。このため、本工程を「再加湿工程」と称する。また、上述したように、該添加剤は上記表面架橋剤(水溶液)と同時に、吸水性樹脂粉末と混合することもできる。
(多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー)
本発明において、得られる吸水性樹脂の吸水速度、通液性、吸湿流動性等の観点から、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを添加することが好ましい。
上記多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーとして、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔7〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
(キレート剤)
本発明において、得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)、劣化防止等の観点から、キレート剤を添加することが好ましい。
上記キレート剤として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔2〕キレート剤」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
(無機還元剤)
本発明において、得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)、劣化防止、残存モノマー低減等の観点から、無機還元剤を添加することが好ましい。
上記無機還元剤として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔3〕無機還元剤」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
(α−ヒドロキシカルボン酸化合物)
本発明において、得られる吸水性樹脂の色調(着色防止)等の観点から、α−ヒドロキシカルボン酸を添加することが好ましい。なお、「α−ヒドロキシカルボン酸化合物」とは、分子内にヒドロキシル基を有するカルボン酸又はその塩のことで、α位にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸である。
上記α−ヒドロキシカルボン酸化合物として、具体的には、国際公開第2011/040530号の「〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物」に開示された化合物及びその使用量が、本発明に適用される。
(2−8)その他の添加剤添加工程
本発明においては、上述した添加剤以外の添加剤を、吸水性樹脂に種々の機能を付加させるため、添加することもできる。該添加剤として、具体的には、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、水不溶性無機微粒子、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。なお、上記界面活性剤は、国際公開第2005/075070号に開示された化合物が、また、上記水不溶性無機微粒子は、国際公開第2011/040530号の「〔5〕水不溶性無機微粒子」に開示された化合物が、それぞれ本発明に適用される。
該添加剤の使用量(添加量)は、得られる吸水性樹脂の用途に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、吸水性樹脂粉末100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。また、該添加剤は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の何れかの製造工程で添加することができる。
(2−9)その他の工程
本発明においては、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉の再利用工程等を必要に応じて設けることができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等の1種又は2種以上の工程を更に含んでもよい。なお、「整粒工程」は、表面架橋工程以降の微粉除去工程や吸水性樹脂が凝集し、所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程を含む。また、「微粉の再利用工程」は、本発明のように微粉をそのまま添加する形態の他、大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程に添加する工程を含む。
〔3〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の物性
本発明に係る製造方法で得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、該吸水性樹脂を衛生用品、特に紙オムツに使用する場合には、下記の(3−1)〜(3−10)に掲げた物性のうち、少なくとも1つ以上、好ましくはAAPを含めた2つ以上、より好ましくはAAPを含めた3つ以上、最も好ましくは全ての物性を、所望する範囲に制御することが望まれる。これらの物性が下記の範囲を満たさない場合、本発明の効果が十分に得られず、高濃度紙オムツにおいて十分な性能を発揮しない虞がある。
また、本発明に係る製造方法で得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、その形状について特に限定されないが、好ましくは粒子状である。本項においては、好ましい態様である粒子状の吸水性樹脂について、その物性を説明する。なお、下記の物性は、特に断りのない限り、EADANA法に準拠して測定した。
(3−1)CRC(無加圧下吸水倍率)
本発明の吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)は、通常5g/g以上であり、好ましくは15g/g以上、より好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されず高値ほど好ましいが、他の物性とのバランスの観点から、好ましくは70g/g以下、より好ましくは50g/g以下、更に好ましくは40g/g以下である。
該CRCが5g/g未満の場合、吸収量が少なく、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。また、該CRCが70g/gを超える場合、尿や血液等の体液等を吸収する速度が低下するため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適さない。なお、CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等で制御することができる。
(3−2)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明の吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、好ましくは20g/g以上、より好ましくは22g/g以上、更に好ましくは23g/g以上、特に好ましくは24g/g以上、最も好ましくは25g/g以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは30g/g以下である。
該AAPが20g/g未満の場合、吸収体に圧力が加わった際の液の戻り量(通常、「Re−Wet(リウェット)」と称する)が多くなり、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。なお、AAPは、粒度や表面架橋剤等で制御することができる。
(3−3)粒度(粒度分布、重量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))
本発明の吸水性樹脂の粒度(粒度分布、重量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))は、表面架橋を施す前の吸水性樹脂粉末の粒度と同じになるように、制御される。
(3−4)Ext(水可溶分)
本発明の吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、通常50重量%以下であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは0重量%、より好ましくは0.1重量%程度である。
該Extが50重量%を超える場合、ゲル強度が弱く、液透過性に劣った吸水性樹脂となる虞がある。更に、リウェットが多くなるため、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。なお、Extは、内部架橋剤等で制御することができる。
(3−5)含水率
本発明の吸水性樹脂の含水率は、好ましくは0重量%を超えて15重量%以下、より好ましくは1〜13重量%、更に好ましくは2〜10重量%、特に好ましくは2〜9重量%である。
該含水率を上記範囲内とすることで、粉体特性(例えば、流動性、搬送性、耐ダメージ性等)に優れた吸水性樹脂が得られる。
(3−6)残存モノマー
本発明の吸水性樹脂に含有する残存モノマーは、安全性の観点から、好ましくは500ppm以下、より好ましくは400ppm以下、更に好ましくは300ppm以下である。下限値については特に限定されないが、好ましくは0ppm、より好ましくは10ppm程度である。
該残存モノマーの含有量を上記範囲内とすることで、人体の皮膚等への刺激が軽減される吸水性樹脂が得られる。
(3−7)SFC(生理食塩水流れ誘導性)
本発明の吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)は、好ましくは50×10−7・cm・s・g−1以上、より好ましくは60×10−7・cm・s・g−1以上、更に好ましくは70×10−7・cm・s・g−1以上、特に好ましくは80×10−7・cm・s・g−1以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは3000×10−7・cm・s・g−1以下、より好ましくは2000×10−7・cm・s・g−1以下である。
該SFCが50×10−7・cm・s・g−1未満の場合、尿や血液等の体液等の液透過性が低いため、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。また、該SFCが3000×10−7・cm・s・g−1を超える場合、尿や血液等の体液等が十分に吸収されずに液漏れが発生する虞があるため、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。なお、SFCは、粒度や表面架橋剤、多価金属塩、カチオン性ポリマー等で制御することができる。
(3−8)FSR(吸水速度)
本発明の吸水性樹脂のFSR(吸水速度)は、好ましくは0.10g/g/s以上、より好ましくは0.15g/g/s以上、更に好ましくは0.20g/g/s以上、特に好ましくは0.25g/g/s以上である。上限値については特に限定されないが、好ましくは5.0g/g/s以下、より好ましくは3.0g/g/s以下である。
該FSRが0.10g/g/s未満の場合、尿や血液等の体液等が十分に吸収されずに液漏れが発生する虞があるため、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。なお、FSRは、発泡重合や粒度等で制御することができる。
(3−9)初期色調
本発明の吸水性樹脂の初期色調は、ハンターLab表色系において、L値が好ましくは88以上、より好ましくは89以上、更に好ましくは90以上である。上限値は100であるが、少なくとも88を示せば色調による問題は発生しない。また、a値は好ましくは−3〜3、より好ましくは−2〜2、更に好ましくは−1〜1である。更に、b値は好ましくは0〜12、より好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜9である。なお、上記L値は100に近づくほど白色度が増し、a値及びb値は0に近づくほど低着色で実質的に白色となる。
(3−10)経時色調
本発明の吸水性樹脂の経時色調は、ハンターLab表色系において、L値が好ましくは80以上、より好ましくは81以上、更に好ましくは82以上、特に好ましくは83以上である。上限値は100であるが、少なくとも80を示せば色調による問題は発生しない。また、a値は好ましくは−3〜3、より好ましくは−2〜2、更に好ましくは−1〜1である。更に、b値は好ましくは0〜15、より好ましくは0〜12、更に好ましくは0〜10である。なお、上記L値は100に近づくほど白色度が増し、a値及びb値は0に近づくほど低着色で実質的に白色となる。
〔4〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の用途
本発明の吸水性樹脂の用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生用品の吸収体用途が挙げられる。特に、原料由来の臭気、着色等が問題となっていた高濃度紙オムツ(紙オムツ1枚あたりの吸水性樹脂の使用量が多いもの)の吸収体として使用することができる。更に、上記吸収体の上層部に使用される場合に、顕著な効果が期待できる。
また、上記吸収体として、吸水性樹脂以外にパルプ繊維等の吸収性材料を使用することもできる。この場合、吸収体中の吸水性樹脂の含有量(コア濃度)としては、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは40〜100重量%、更に好ましくは50〜100重量%、更により好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%、最も好ましくは75〜95重量%である。
上記コア濃度を上記範囲とすることで、該吸収体を吸収性物品の上層部に使用した場合、吸収性物品が清浄感のある白色状態を保つことができる。更に、尿や血液等の体液等の拡散性に優れるため、効率的な液分配によって吸収量の向上が見込める。
以下の実施例・比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれるものとする。
なお、製造例、実施例及び比較例で使用する電気機器(吸水性樹脂の物性測定も含む)は、特に注釈のない限り、200V又は100Vの電源を使用した。また、本発明の吸水性樹脂の諸物性は、特に注釈のない限り、室温(20〜25℃)、相対湿度50%RH±10%の条件下で測定した。
また、便宜上、「リットル」を「l」又は「L」、「重量%」を「wt%」と表記する場合がある。更に微量成分の測定において、検出限界以下を「N.D」(Non Detected)と表記する。
[吸水性樹脂の物性測定]
(a)CRC(無加圧下吸水倍率)
本発明の吸水性樹脂のCRC(無加圧下吸水倍率)は、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
(b)AAP(加圧下吸水倍率)
本発明の吸水性樹脂のAAP(加圧下吸水倍率)は、EDANA法(ERT442.2−02)に準拠して測定した。なお、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更した。
(c)粒度(粒度分布、重量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))
本発明の吸水性樹脂の粒度(粒度分布、重量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に準拠して測定した。
(d)Ext(水可溶分)
本発明の吸水性樹脂のExt(水可溶分)は、EDANA法(ERT470.2−02)に準拠して測定した。
(e)含水率、樹脂固形分
本発明の吸水性樹脂の含水率は、EDANA法(ERT430.2−02)に準拠して測定した。なお、本発明においては、試料量を1.0g、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更して測定した。
なお、樹脂固形分(重量%)は、(100−含水率)(重量%)で規定した。
(f)残存モノマー及び微量成分(酢酸、アクリル酸ダイマー等)
本発明の吸水性樹脂に含有する残存モノマーは、EDANA法(ERT410.2−02)に準拠して測定した。また、残存モノマー以外の微量成分(例えば、酢酸、アクリル酸ダイマー等)についても、EDANA法(ERT410.2−02)に準拠して測定した。
また、含水ゲル状架橋重合体中の微量成分(例えば、酢酸等)については、試料量を2g、攪拌時間を24時間にそれぞれ変更して測定した。
(g)SFC(生理食塩水流れ誘導性)
本発明の吸水性樹脂のSFC(生理食塩水流れ誘導性)は、米国特許第5669894号に開示された測定方法に準拠して測定した。
(h)FSR(吸水速度)
本発明の吸水性樹脂のFSR(吸水速度)は、国際公開第2011/078298号に開示された測定方法に準拠して測定した。
(i)初期色調及び経時色調
本発明の吸水性樹脂の初期色調及び経時色調は、国際公開第2011/040530号に開示された測定方法に準拠して測定した。
[製造例1]
市販のアクリル酸を入手し、アクリル酸ダイマー及びp−メトキシフェノールの含有量を測定したところ、アクリル酸ダイマーは5000ppm、p−メトキシフェノールは70ppmであった。なお、該アクリル酸を便宜上、アクリル酸(A)とした。
次に、上記アクリル酸(A)を再蒸留することによって、アクリル酸ダイマーの含有量が80ppm、p−メトキシフェノールの含有量が0.1ppmの再精製アクリル酸を得た。その後、p−メトキシフェノールを添加して、その含有量が70ppmであるアクリル酸(B)を作製した。
次に、上記アクリル酸(A)及びアクリル酸(B)を以下の重量比で混合することによって、アクリル酸ダイマーの含有量が異なる3種類のアクリル酸を作製した。
即ち、アクリル酸(1)として、アクリル酸(A):アクリル酸(B)=1:53.9(重量比)で、アクリル酸(2)として、アクリル酸(A):アクリル酸(B)=1:8.65(重量比)で、アクリル酸(3)として、アクリル酸(A):アクリル酸(B)=1:3.97(重量比)で、それぞれ混合することで得た。なお、アクリル酸ダイマーの含有量は、アクリル酸(1)が170ppm、アクリル酸(2)が590ppm、アクリル酸(3)が1070ppmであった。また、p−メトキシフェノールの含有量は、何れのアクリル酸も70ppmであった。
[実施例1]
上記製造例1で得られたアクリル酸(1)について、以下の操作を行った。
即ち、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液297g/分、アクリル酸(1)367g/分、30重量%のポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量523)水溶液4.0g/分、20重量%のアクリル酸水溶液97.9重量部に2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノン0.989重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム1.08重量部を溶解した溶液4.5g/分、及びイオン交換水314g/分を連続的にミキサーに供給して、混合液(1)を作製した。このとき、該混合液(1)は、溶解熱及び中和熱によって、最高温度95℃まで上昇した。
実施例1では、中和率70モル%、単量体濃度45重量%であった。また、上記中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算して、90ppmであった。
次に、上記混合液(1)の温度が90℃まで下降した時点で、該混合液(1)に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液20.1g/分を添加して、単量体水溶液(1)とした後に、重合装置に連続的に供給した。なお、上記混合液(1)の温度が最高温度となった時点を起点として、単量体水溶液(1)が重合装置に供給されるまでの時間は300秒間であった。
上記重合装置は、単量体水溶液の供給口から含水ゲル状架橋重合体が排出されるまでの長さで定義される有効長が3.2mの連続ベルト重合機である。また、該ベルトは、ガラス繊維基材の表面にフッ素樹脂がコーティングされたエンドレスベルトであり、走行速度を1.7m/分に設定した。また、ベルトの表面温度は約100℃に保温した。
上記単量体水溶液(1)は、上記連続ベルト重合機のベルト上に、厚さ4.9cmとなるように連続的に供給した。このときの単量体水溶液(1)の温度としては88℃であり、該温度を重合開始温度とした。
ベルト上に供給された単量体水溶液(1)は速やかに重合を開始し、水蒸気を発生しながら膨張した。また、最高到達温度として109℃(重合組成物(1)の沸点)を記録した。該膨張過程において、含水ゲル状架橋重合体は不規則的にベルトから剥離したが、重合開始から約60秒後に収縮した。
続いて、上記収縮した含水ゲル状架橋重合体に、紫外線照射装置(VB15201BY/ウシオ電機)を用いて、光量210mJ/cmの紫外線を照射した。なお、紫外線の光量は、受光機(UVD−S365/ウシオ電機)を取り付けた紫外線積算光量計(UIT−150/ウシオ電機)を用いて測定した。以上の操作により、シート状の含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。
得られたシート状の含水ゲル状架橋重合体(1)は、ミートチョッパー(VR−400K/飯塚工業;ダイス孔径10mm)によってゲル粉砕した後、温度180℃、露点70℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥重合体(1)を得た。
上記乾燥重合体(1)をロールミルで粉砕した後、目開きが850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μmのJIS標準篩を用いて分級し、以下の重量割合で混合することによって、吸水性樹脂粉末(1)を得た。
即ち、粒子径が150μm以上300μm未満の粒子を15重量%、同300μm以上500μm未満の粒子を45重量%、同500μm以上600μm未満の粒子を25重量%、同600μm以上710μm未満の粒子を10重量%、同710μm以上850μm未満の粒子を5重量%となるように混合した。
上記操作で得られた吸水性樹脂粉末(1)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。
続いて、上記吸水性樹脂粉末(1)100重量部に対して、1,4−ブタンジオール0.34重量部、プロピレングリコール0.56重量部及びイオン交換水3.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、208℃で40分間、加熱処理を行った後、60℃まで強制冷却した(表面架橋工程)。
その後、目開き850μmnJIS標準篩を通過するまで解砕することによって(整粒工程)、表面架橋された吸水性樹脂(1)を得た。得られた吸水性樹脂(1)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[実施例2]
上記実施例1において、アクリル酸(2)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(2)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(2)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。なお、中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算すると、260ppmであった。
続いて、実施例1と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された吸水性樹脂(2)を得た。得られた吸水性樹脂(2)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[実施例3]
上記実施例1において、アクリル酸(3)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(3)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(3)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。なお、中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算すると、540ppmであった。
続いて、実施例1と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された吸水性樹脂(3)を得た。得られた吸水性樹脂(3)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[実施例4]
容量500mlのセパラブルフラスコに、実施例1の連続中和で得られた混合液(1)300gを投入した後、直ちに氷水浴に浸し、20℃まで急速に冷却した。なお、該混合液(1)の温度が21℃付近となった時点で氷水浴を外し、空気浴とした。
続いて、窒素雰囲気下、上記混合液(1)の温度が20℃となった時点で、5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液2.4g及び1重量%のL−アスコルビン酸水溶液0.5gを、攪拌下で添加し、単量体水溶液(4)とした。
10分経過後、単量体水溶液(4)は徐々に白濁し、重合が開始した。なお、このときの単量体水溶液(4)の温度は30℃であり、当該温度を重合開始温度とした。
重合開始後30分程度で最高到達温度として85℃を記録した。この時点から、上記セパラブルフラスコを85℃の湯浴に浸し、1時間、加熱を継続した。その後、湯浴を外して放冷し、含水ゲル状架橋重合体(4)を取り出した。
得られた含水ゲル状架橋重合体(4)は、ミートチョッパー(VR−400K/飯塚工業;ダイス孔径10mm)によってゲル粉砕した後、温度180℃、露点70℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥重合体(4)を得た。
上記乾燥重合体(4)をロールミルで粉砕した後、目開きが850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μmのJIS標準篩を用いて分級し、以下の重量割合で混合することによって、吸水性樹脂粉末(4)を得た。
即ち、粒子径が150μm以上300μm未満の粒子を15重量%、同300μm以上500μm未満の粒子を45重量%、同500μm以上600μm未満の粒子を25重量%、同600μm以上710μm未満の粒子を10重量%、同710μm以上850μm未満の粒子を5重量%となるように混合した。
上記操作で得られた吸水性樹脂粉末(4)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。
続いて、実施例1と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された吸水性樹脂(4)を得た。得られた吸水性樹脂(4)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[実施例5]
上記実施例4において、アクリル酸(2)に変更した以外は実施例4と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(5)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(5)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。なお、中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算すると、260ppmであった。
続いて、実施例4と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された吸水性樹脂(5)を得た。得られた吸水性樹脂(5)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[実施例6]
上記実施例4において、アクリル酸(3)に変更した以外は実施例4と同様の操作を行って、吸水性樹脂粉末(6)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(6)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。なお、中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算すると、540ppmであった。
続いて、実施例4と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された吸水性樹脂(6)を得た。得られた吸水性樹脂(6)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[比較例1]
容量500mlのセパラブルフラスコに、製造例1で得られたアクリル酸(1)79.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(数平均分子量523)0.52g、及びイオン交換水57.3gを投入した後、窒素雰囲気下でマグネチックスターラーで攪拌した。また、該セパラブルフラスコを氷水浴に浸した。
続いて、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液63.5gにイオン交換水100gを加えて溶解した液を徐々に添加した。このとき、セパラブルフラスコ内の液温が30℃を超えないように除熱しながら中和を行った。
比較例1では、中和率70モル%、単量体濃度30重量%であった。また、上記中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算して、200ppmであった。
続いて、窒素雰囲気下、上記セパラブルフラスコ内の液温が20℃となった時点で、5重量%の過硫酸ナトリウム水溶液2.4g及び1重量%のL−アスコルビン酸水溶液0.5gを、攪拌下で添加し、比較単量体水溶液(1)とした。
10分経過後、比較単量体水溶液(1)は徐々に白濁し、重合が開始した。なお、このときの比較単量体水溶液(1)の温度は30℃であり、当該温度を重合開始温度とした。
重合開始後30分程度で最高到達温度として82℃を記録した。この時点から、上記セパラブルフラスコを85℃の湯浴に浸し、1時間、加熱を継続した。その後、湯浴を外して放冷し、比較含水ゲル状架橋重合体(1)を取り出した。
得られた比較含水ゲル状架橋重合体(1)は、ミートチョッパー(VR−400K/飯塚工業;ダイス孔径10mm)によってゲル粉砕した後、温度180℃、露点70℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、比較乾燥重合体(1)を得た。
上記比較乾燥重合体(1)をロールミルで粉砕した後、目開きが850μm、710μm、600μm、500μm、300μm、150μmのJIS標準篩を用いて分級し、以下の重量割合で混合することによって、比較吸水性樹脂粉末(1)を得た。
即ち、粒子径が150μm以上300μm未満の粒子を15重量%、同300μm以上500μm未満の粒子を45重量%、同500μm以上600μm未満の粒子を25重量%、同600μm以上710μm未満の粒子を10重量%、同710μm以上850μm未満の粒子を5重量%となるように混合した。
上記操作で得られた比較吸水性樹脂粉末(1)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。
続いて、実施例1と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された比較吸水性樹脂(1)を得た。得られた比較吸水性樹脂(1)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[比較例2]
上記比較例1において、アクリル酸(2)に変更した以外は比較例1と同様の操作を行って、比較吸水性樹脂粉末(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(2)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。なお、中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算すると、600ppmであった。
続いて、比較例1と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された比較吸水性樹脂(2)を得た。得られた比較吸水性樹脂(2)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
[比較例3]
上記比較例1において、アクリル酸(3)に変更した以外は比較例1と同様の操作を行って、比較吸水性樹脂粉末(3)を得た。得られた比較吸水性樹脂粉末(3)の物性値(CRC、残存モノマー、可溶分)を表1に示す。なお、中和後のアクリル酸ダイマーは、アクリル酸中の含有量に換算すると、1100ppmであった。
続いて、比較例1と同様の表面架橋工程、整粒工程を行うことによって、表面架橋された比較吸水性樹脂(3)を得た。得られた比較吸水性樹脂(3)の物性値(CRC、AAP、残存モノマー)を表1に示す。
Figure 0006521668
(まとめ)
中和時の温度の影響について、実施例1〜6及び比較例1〜3では中和率は70モル%と同じであるものの、中和時の最高温度が95℃の場合(実施例1〜3)と、30℃を超えない場合(比較例1〜3)とでは、中和後のアクリル酸ダイマー含有量が大きく異なっている。中和時の温度を高温にすることで、アクリル酸ダイマーが低減されることが分かる。
また、重合方法の影響について、実施例1〜3及び実施例4〜6との対比から、重合時の最高到達温度が、吸水性樹脂粉末中の残存モノマー量に影響していると判断される。即ち、重合時の最高到達温度が109℃の実施例1〜3の方が、重合時の最高到達温度が85℃の実施例4〜6より、残存モノマーが低減されていることが分かる。
つまり、中和工程や重合工程において高温状態とすることで、アクリル酸ダイマーの分解が促進されるため、吸水性樹脂の主鎖部に組み込まれるアクリル酸ダイマーが減少する。そのため、乾燥工程や表面架橋工程での加熱操作で、分解されるアクリル酸ダイマーが相対的に減少していることから、その結果として、残存モノマーが低減されると推定される。
本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法は、アクリル酸ダイマーを多量に含むアクリル酸を用いた吸水性樹脂の生産、特に大量生産に適用することができる。また、本発明によって得られる吸水性樹脂は、紙オムツ等の衛生用品の吸収体用途に適している。

Claims (10)

  1. アクリル酸ダイマーの含有量が150〜2000ppmであるアクリル酸で単量体水溶液を調製する工程、該単量体水溶液を重合する工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法であって、
    上記単量体水溶液の調製工程において、上記アクリル酸を塩基性化合物で中和する工程が更に含まれ、該中和工程における最高温度が70℃以上であり、該中和工程において、最高温度に到達した後、70℃以上に保温する時間が20〜1200秒間である、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
  2. 上記アクリル酸にp−メトキシフェノールが更に含まれ、その含有量が50〜150ppmである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記中和工程において、最高温度を70℃以上とした中和液を70℃以下まで冷却する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 上記中和工程で得られる単量体水溶液中のアクリル酸ダイマー(塩も含む)と、中和前のアクリル酸中のアクリル酸ダイマーとの比率(モル数)が80%以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の製造方法。
  5. 上記中和工程で得られるアクリル酸(塩)の中和率が60〜90モル%である、請求項の何れか1項に記載の製造方法。
  6. 上記単量体水溶液のモノマー濃度を30重量%以上で重合を開始する、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
  7. 上記重合工程が、単量体水溶液の温度を60℃以上で重合を開始する高温開始重合とし、該重合工程での最高到達温度を単量体水溶液の沸点とする、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
  8. 上記重合工程を空気雰囲気下で行う、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
  9. 上記重合工程で得られる含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程を更に含み、当該乾燥工程において、露点が50〜90℃の熱風を用いて乾燥する、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
  10. 上記ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂中の残存モノマーが300ppm以下である、請求項1〜の何れか1項に記載の製造方法。
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