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JP6517122B2 - T桁橋の上部構造 - Google Patents

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JP6517122B2 JP2015208655A JP2015208655A JP6517122B2 JP 6517122 B2 JP6517122 B2 JP 6517122B2 JP 2015208655 A JP2015208655 A JP 2015208655A JP 2015208655 A JP2015208655 A JP 2015208655A JP 6517122 B2 JP6517122 B2 JP 6517122B2
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Description

本発明は、橋の上部構造に関し、詳しくは、断面T字状のプレキャストコンクリート製のT桁が架け渡されたT桁橋の上部構造に関する。
従来、橋脚や橋台などの橋梁の下部構造の径間に、プレキャストコンクリート製のPCa桁やプレストレスコンクリートからなるPC桁が架け渡された橋の上部構造が知られている。
例えば、本願出願人が出願して公開された特許文献1には、下部構造物4上に支承装置5を介して橋幅方向を長手方向として橋軸方向に張り出す縦フランジ6を有するプレキャスト横桁1が複数本設置され、これらのプレキャスト横桁1の縦フランジ6間に、橋幅方向に間隔をおいて中空状のプレキャスト縦桁2が複数架設され、必要な支承装置5の数を低減することができるプレキャスト横桁とプレキャスト縦桁とを備えた橋梁が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0009]〜[0031]、図面の図1、図2等参照)。
しかし、特許文献1に記載のプレキャスト横桁とプレキャスト縦桁とを備えた橋梁は、高価な支承装置の数を低減することができるというメリットがあるものの、橋梁の軽量化のため縦桁に空洞を設ける構造であり、橋梁の完成後に縦桁の内部の空洞部分の点検ができないという問題があった。
一方、特許文献2には、コの字状の開口部分を下方に向け、桁同士の間隙を跨いで設けられる支持部材(支持パイプ10)と、該支持部材の軸方向の中央部に取り付けられた棒状の吊下部材(吊ボルト8)と、該吊下部材に吊り下げられ、桁同士の下縁間隔よりも長い幅を有する埋設部材(埋設板1)と、を備え、施工期間を短縮し、施工費用を軽減すると共に、高所での危険な作業を減少させ、しかも脱型の際に桁構造物下の交通を遮断しなくとも済む間詰めコンクリート用埋設型枠Aが開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0007]〜[0025]、図面の図1、図2等参照)。
しかし、特許文献2に記載のコンクリート用埋設型枠Aは、鋼製の吊下部材(吊ボルト8)で支持されているため、腐食により経年劣化で埋設部材(埋設板1)が落下するおそれがあるという問題があった。また、間詰めコンクリートの硬化後、支持部材(支持パイプ10)を撤去したり、Pコンを撤去いたうえPコン部分にモルタル等を埋めたりしなければならず、作業的にも手間が掛かるため、施工費が嵩むという問題があった。
さらに、特許文献3には、断面T字状のプレキャストコンクリート桁の間詰めコンクリートを打設する際に、複数の連続T形断面のリブ12をコンクリート側の面に突設した押出成型FRP板体からなる間詰め部の型枠(床版底板型枠10)を桁上から間詰部底面に吊下して間詰部空間のコンクリート下面に密着させ、間詰め部にコンクリートを打設し、型枠はそのまま残置することにより、型枠の組み払し用の足場を不要としたプレキャストコンクリート桁の間詰め部の型枠が開示されている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1,2、明細書の段落[0014]〜[0032]、図面の図10、図9等参照)。
しかし、特許文献3に記載のプレキャストコンクリート桁の間詰め部の型枠は、吊り金具をFRP型枠のリブ12に引っかけて上から吊ることができるためボルト等でコンクリート部材に取付ける必要がなく、腐食による落下等の危険性はないものの、特許文献2のコンクリート用埋設型枠Aと同様に、角材91やフォームタイ(登録商標)95、横梁90(単管パイプ)などを撤去したり、Pコン部分にモルタル等を埋めたりしなければならず、作業的にも手間が掛かるため、施工費が嵩むという問題が残る。
また、存置型の間詰め部分のコンクリート埋設型枠としては、特許文献4に、帯状平底板12とその両側より延出する傾斜支承板13とを一体に形成した合成樹脂よりなる樋式溝型の型枠であって、傾斜支承板13はその先端寄りに上方への凸状弯曲部16を、また平底板12寄りに凹状弯曲部17を連接せしめた波形となし、凹凸両弯曲部の連接部および先端部の外側面にそれぞれ帯状パッキング14,15を装着してなるスラブ橋げたの間詰めコンクリート用型枠が開示されている(特許文献4の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0017]〜[0038]、図面の図3、図4等参照)。
しかし、従来、軸方向に直交する鉛直断面がT字状のT桁を架設する場合は、隣接するT桁間の間隔が通常100mm以上となっており、特許文献4に記載の間詰めコンクリート用型枠をそのまま使用することができないという問題があった。その上、単純にT桁同士の間隔を詰めると橋梁自体の重量が増し、不経済であるという問題があった。さらに、T桁同士の間隔を詰めて特許文献4に記載の間詰めコンクリート用型枠を使用したとしても、コンクリート打設時に樹脂製の型枠が変形してしまい間詰めコンクリート用型枠が落下してしまうという問題もあった。
特開2009−256873号公報 特開平10−1915号公報 特開2007−291710号公報 特開平10−298918号公報
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、高価な支承装置の数を低減することができるだけでなく、橋の完成後に点検できなくなる箇所がなく、且つ、施工費を低減することができるT桁橋の上部構造を提供することにある。
第1発明に係るT桁橋の上部構造は、橋の下部構造間に支承装置を介して架け渡された橋の上部構造であって、橋軸方向の一方又は両方に張り出したフランジを有する複数の横梁が、橋幅方向を長手方向として前記下部構造上に前記支承装置を介して載置され、断面T字状のプレキャストコンクリート製の複数のT桁が、橋軸方向を長手方向として橋幅方向に一定間隔を置いて、隣接する前記横梁の対向する前記フランジ間に架け渡されており、
前記T桁同士は、T桁を橋幅方向に貫通するPC鋼材により横締めされてプレストレスが負荷されており、橋台上方の橋の支点部だけ、橋幅方向に沿って設けられた横桁により前記T桁同士が連結されていることを特徴とする。
第2発明に係るT桁橋の上部構造は、第1発明において、橋幅方向に隣接する前記T桁同士の間には、橋軸方向に沿って複数の埋設型枠が連設され、これらの埋設型枠の上方のT桁間のスペースには、充填材が充填されていることを特徴とする。
第3発明に係るT桁橋の上部構造は、第1発明又は第2発明において、前記T桁は、その下面と前記フランジの上面との間の隙間を埋める隙間材を介して前記フランジ上に架け渡されていることを特徴とする。
第4発明に係るT桁橋の上部構造は、第3発明において、前記隙間材は、無収縮モルタル、感圧硬化ゴム、樹脂、又はこれらが複合されたものであることを特徴とする。
第6発明に係るT桁橋の上部構造は、第1発明ないし第5発明のいずれかの発明において、橋脚上において橋軸方向に沿って隣接する前記T桁同士は、支圧抵抗力を増すため鉄筋径より大きな径の鋼製筒状体が鉄筋の先端に嵌着されたエンドバンド鉄筋を有するコンクリートにより一体化されていることを特徴とする。
第1発明〜第発明によれば、橋の下部構造と上部構造の主桁との間に横梁を介して支承装置を設置できるため、高価な支承装置の数を低減することができ、橋の上部構造の施工費を低減することができる。また、中空桁ではなくT桁が設置されているので、橋の完成後に点検できなくなる箇所がない。
また、橋台上方の橋の支点部だけ、橋幅方向に沿って設けられた横桁により前記T桁同士が連結されているので、橋脚の上方となる橋の中間部での横梁の設置作業がなくなるだけでなく、危険な吊り足場の組み払し作業もなくなるため、省力化により施工費を削減できるだけでなく、安全性も向上する。
特に、第2発明によれば、前記作用効果に加え、無足場で間詰めコンクリートの型枠を簡単に短時間で設置することができるため足場の組み払し作業も行わなくて済むうえ、型枠を撤去する必要もないため、型枠の組み払し作業を大幅に省略することができる。このため、橋の上部構造の施工費を大幅に削減することができる。
特に、第3発明及び第4発明によれば、T桁が隙間材を介して横梁のフランジ上に架け渡されているので、橋の上部構造に作用する活荷重等の応力が均等に橋の下部構造に伝達できるため、橋の上部構造の耐久性が向上する。
特に、第5発明によれば、橋脚の上方となる橋の中間部での横梁の設置作業がなくなるだけでなく、危険な吊り足場の組み払し作業もなくなるため、省力化により施工費を削減できるだけでなく、安全性も向上する。
特に、第発明によれば、施工時の天候に品質が左右されない高品質なプレキャスト製のT桁同士を強固に一体化できるため、橋の上部構造の実際の強度が増強して、活荷重、風、地震等による振動に対する耐久性が向上する。
特に、第発明によれば、必要な強度を有したままT桁の軽量化が図られるため、橋の上部構造全体としても軽量化することができ、施工費を削減できるだけでなく、安全性、耐久性も向上する。
本発明の実施形態に係るT桁橋の上部構造の一部を鉛直断面にして示す斜視図である。 同上の上部構造を橋軸方向と直交する鉛直面で切断した状態で示す断面図である。 同上の上部構造を橋幅方向に沿って水平に見た立面図である。 同上の上部構造の橋台上に設置する横梁を示す斜視図である。 同上の横梁の別形態である橋脚上に設置する横梁を示す斜視図である。 図2のT桁及び間詰め部を拡大して示す拡大断面図である。 同上のT桁を従来のT桁と比較して示す拡大断面図である。 同上のT桁のテーパー面に設置する補強繊維を主に示す桁の軸方向に直交する鉛直断面図である。 図3の一部を拡大して主に打ち継ぎコンクリートの配筋状況を示す説明図である。 同上の打ち継ぎコンクリートの配筋状況を示す部分拡大平面図である。 図1の上部構造に埋設している埋設型枠を示す斜視図である。
以下、本発明に係るT桁橋の上部構造を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜図10を用いて、本発明の実施形態に係るT桁橋の上部構造について説明する。なお、橋の下部構造Aとして2つの橋台A1と1つの橋脚A2からなる2径間の橋を例示して説明する。本発明の実施形態に係るT桁橋の上部構造1は、図1〜図3に示すように、支承装置S1を介して橋台A1や橋脚A2などの橋の各下部構造A上に、長手(軸)方向を橋幅方向(図のY方向)として設置された複数本の横梁2(2’)と、この横梁2(2’)間に長手(軸)方向を橋軸方向(図のX方向)として橋幅方向(図のY方向)に所定間隔をあけて架け渡された複数本のT桁3と、これら複数のT桁3上に形成される平板状の床版4と、この床版4の幅方向(図のY方向)の端部(縁部)に沿って形成される高欄5など、から構成されている。なお、図中のZ方向は、上下方向を示している。
(横梁)
本実施形態に係る横梁は、橋台A1や橋脚A2などの橋の各下部構造A上に設置されるプレキャストコンクリート製の部材であり、図3に示すように、橋台A1上に設置される長手方向と直交する鉛直断面において断面L字状の横梁2と、橋脚A2上に設置される長手方向と直交する鉛直断面において断面凸字状の横梁2’の2種類の形態がある。
この横梁2は、図4に示すように、鉛直断面が縦長な長方形状の梁本体20と、この梁本体20から橋軸方向の一方に張り出した後述のT桁の長手方向の端部を支持するフランジ21を備えている。また、この梁本体20の梁成(梁の高さ)は、フランジ21にT桁3を載置したときに、梁本体20の上面とT桁3の上面とが略同じ高さとなるように設定されている(図3参照)。
横梁2’は、図5に示すように、鉛直断面が縦長な長方形状の梁本体20’と、この梁本体20’から橋軸方向の両方に張り出した後述のT桁3の長手方向の端部を支持するフランジ21’,22’を備えている。また、この梁本体20’の梁成(梁の高さ)は、フランジ21’,22’にT桁3,3を載置したときに、T桁3同士を一体化するコンクリートを打設するスペースがとれるように、梁本体20’の上面がT桁3の上面より低くなるように設定されている(図3参照)。
なお、本実施形態に係る横梁としてプレキャストコンクリート製の物を例示して説明したが、プレキャスト製ではなく場打ちの通常の鉄筋コンクリート製としても構わない。プレキャスト製の横梁と比べて現場打ちの場合多少工期は掛かるものの、横梁を介して橋脚上に主桁を設置することで、主桁ごとに必要であった支承装置S1の数を低減できることは明らかである。
(T桁)
T桁3は、図1、図2等で示した上部構造1を構成する主桁であり、設計基準強度を70N/mm2として調合され、工場等で打設されて蒸気養生等で養生され、プレストレスが負荷されたプレキャスト製の鉄筋コンクリートからなるPCa桁である。
このT桁3は、図6、図7に示すように、軸方向と直交する鉛直断面が略T字状を呈し、床版4を直接下から支える厚板状の床版部30と、この床版部30の下面中央に接続する鉛直断面が縦長な長方形である桁部31など、から構成され、幅方向の中心線で左右対称に形成されている。
また、このT桁3の床版部30の幅方向の端面には、上方に向かって狭くなるように傾斜したテーパー面30a(傾斜面)が形成されているとともに、図7等に示すように、桁部31には、下部にハンチ31aが形成されており、上部の幅が下部の幅より狭くなっている。このため、必要な強度を有したままT桁3の軽量化が図られるため、橋の上部構造全体としても軽量化することができ、施工費を削減できるだけでなく、安全性、耐久性も向上する。
なお、図7に示す一点鎖線は、従来のT桁の鉛直断面の外形を示したものであり、図から明らかなように、本実施形態に係るT桁3は、床版部30が従来のものより広くなっている。このため、従来のT桁同士の橋幅方向の間隔は、200mm〜300mm程度であったものを、本実施形態に係るT桁橋の上部構造1では、T桁3同士の橋幅方向の間隔が70mm程度となっている。即ち、後述の間詰め部6の幅が従来のものより狭くなっており、PC鋼材P1(図2参照)を緊張する前に、現場で打設して早期に強度を発現しなければならないコンクリートの分量を少なくすることができ、安価に施工することが可能となる。
また、図7から明らかなように、桁部31は、従来のものより上部の幅が狭くなっているので、床版部30を広げても桁全体として重量が増えないうえ、重心位置が従来のものより下がることとなり、結果的に、T桁を架設する際にT桁3が回転して転倒するおそれがすくなくなる。このため、桁架設作業の安全性が向上する。
その上、本実施形態に係るT桁3は、高さが700mm程度となっており、従来のT桁と比べて300mm程度低く設定されている。このため、横梁2の上にT桁3を載置しても橋の上部構造全体の高さが従来のものと比べて同程度かそれより低くなっており、建築限界や空頭制限があった場合でも問題が少ないうえ、重心が低くなり、さらに転倒しにくくなっている。
なお、前述のテーパー面30aには、図8に示すように、工場等でプレキャストのコンクリートが打設される際に、打ち継ぎ部分に作用する引張力に対抗するための補強繊維RFが、発泡樹脂や粘土等の繊維保持材Fに差し込まれてセットされることにより、T桁3のテーパー面30aの内部から外側となる後述の間詰め部6に向け突設されていると好ましい。この補強繊維RFは、後述の間詰め部6及びT桁3のいずれからも所定の付着力が得られる長さを有している。
この補強繊維RFとしては、鋼繊維(スチール、ステンレス)、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維、又はアラミド繊維やナイロン繊維などのポリアミド繊維、ビニロン(PVA)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維などの有機繊維を用いることができる。
(床版及び高欄)
図1、図2に示す床版4及び高欄5は、一般的な現場打ちの鉄筋コンクリート製のものであり、詳細な説明は省略する。
(間詰め部)
図1、図2、図6等に示すように、橋幅方向に隣接するT桁3と他のT桁3との間の橋軸方向に沿ったスペース(空間)が間詰め部6である。この間詰め部6には、後述の埋設型枠7が設置されて、その埋設型枠7の上方のスペースには、現場においてコンクリートが打設され、打設されたコンクリートが硬化して間詰めコンクリート6Cが形成されることにより、橋幅方向に隣接する複数のT桁3同士が一体化されている。なお、前述のように、間詰め部6の幅が従来のものより狭くなっており、間詰めコンクリート6Cの形成に必要なコンクリートの分量は、従来のものより少なくなくなっている。
また、間詰め部6に間詰めコンクリート6Cが打設される場合を例示して説明したが、間詰め部6には、コンクリートだけでなくモルタルや石膏などの水和反応により硬化する物質を始め、充填されて経時的に硬化して間詰め部6に作用する圧縮力に対抗しうる経時硬化性物質からなる充填材であれば用いることができる。特に、間詰め部6の幅が狭い場合には、接着樹脂などのコンクリートより養生期間(硬化するまでの時間)が短い経時硬化性物質を用いると養生期間及び施工期間を短縮できるため好ましい。
(横桁)
また、図3に示すように、橋幅方向に間隔をあけて並設された複数のT桁3同士は、さらに橋台A1付近で橋幅方向に延びる、現場打ちの鉄筋コンクリートからなる横桁8で連結・一体化されている。そして、この横桁8及び前述の間詰めコンクリート6Cが硬化して所定強度が発現された後、図2に示すT桁3内に挿通されたPC鋼材P1が緊張されてポストテンション方式でプレストレスが付与され、複数のT桁3同士がさらに強固に一体化される。
このように、本実施形態に係る上部構造1では、T桁橋の支点部のみに横桁8を設置する。これは、従来のT桁橋の上部構造では、前述のように、床版部の狭いT桁を設置していたが、本実施形態に係る上部構造1では、幅の広い床版部30を有するT桁3を設置しているため、T桁3の間隔が狭く、床版4等の荷重の分配作用が大きくなるとともに、PC鋼材P1によりプレストレスが付与されてT桁同士が幅方向に強固に一体化されるため、橋梁の中間部の横桁を省略することができる。このため、中間部の横桁の設置作業の手間を省いて施工費を低減することができる。
(隙間材)
なお、前述の横梁2(2’)のフランジ21(フランジ21’,22’)間にT桁3を架け渡す際には、T桁3の長手方向の端部をフランジ21(21’,22’)上に載置する前に、隙間材をフランジ21(21’,22’)上に敷設しておく。そうすることで、フランジ21(21’,22’)やT桁3の下面に反りや凹凸があった場合でも、横梁2(2’)とT桁3の間に生じる隙間を埋めて、活荷重等の上部構造1に作用する応力を、下部構造Aに均等に伝達することができる。このため、上部構造1の耐久性が向上する。
隙間材としては、隙間を確実に手間を掛けずに埋めることができるため感圧硬化ゴムやセルフレベリング材などの無収縮モルタル等が好ましい。また、隙間材としては、高分子系材料などの樹脂であっても構わないし、感圧硬化ゴム、無収縮モルタル、樹脂のうちの2種又はそれ以上のものを複合・積層したものも適用することができる。要するに、横梁2(2’)のフランジ21(フランジ21’,22’)上に、ガタつかず、T桁3を載置できるように、固まるまでは適度な粘度を有して両者の間を埋められる材料であって、経時的に硬化して応力の伝達が可能な材料であれば、適用することができる。
(T桁の接続)
次に、図9、図10を用いて、橋軸方向に沿って隣接するT桁3同士の接続について説明する。橋軸方向に沿って隣接するT桁3同士は、橋脚A2上において打ち継ぎコンクリート9を打設して一体化させて接続する。図8は、図3の一部を拡大して主に打ち継ぎコンクリート9の配筋状況を示す説明図であり、図9は、打ち継ぎコンクリート9の配筋状況を示す部分拡大平面図である。
図9、図10に示すように、橋軸方向に沿って隣接するT桁3同士は、支圧抵抗力を増すため鉄筋径より大きな径の鋼製筒状体が鉄筋の先端に嵌着されたエンドバンド鉄筋EBや所定の配力筋、横梁2’を貫通するあばら筋等が配筋された上、コンクリートが打設されて、打ち継ぎコンクリート9が構築され、T桁3同士及び横梁2’が一体化されている。このため、上部構造1の実際の強度が増強して、活荷重、風、地震等による振動に対する上部構造1の耐久性が向上する。
また、上部構造1の打ち継ぎコンクリート9は、前述のように、エンドバンド鉄筋DBで内部補強されているので、鉄筋の長さに比して支圧抵抗力が高く、打ち継ぎ長さが短くても、強固に一体化することができる。なお、この打ち継ぎコンクリート9も間詰めコンクリート6Cと同様にコンクリート以外の経時硬化性物質からなる充填材とすることも可能である。
その上、本実施形態に係るT桁橋の上部構造1では、従来のT桁橋と同様に、橋幅方向に隣接するT桁3同士も一体化されている。図2に示すように、前述のT桁3の床版部30に設けたシース管内にPC鋼材P1が挿通されているとともに、前述の横桁8に設けたシース管内にPC鋼材P1と同様のPC鋼材が挿通されており、これらのPC鋼材が緊張されて橋幅方向に隣接するT桁3同士が横締めされてポストテンション方式で上部構造1の橋幅方向にプレストレスが付与されている。
<埋設型枠>
次に、図11を用いて、前述の間詰め部6に設置する埋設型枠7について詳細に説明する。本実施形態に係る埋設型枠7は、高密度樹脂からインジェクション成形等により一体成形された樹脂製の埋設型枠であり、コンクリート打設時の型枠として用いられるだけでなく、コンクリート打設後も払す(解体する)ことなくそのまま存置する存置型の永久型枠である。なお、高密度樹脂とは、高密度ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、メタクリル樹脂(PMMA樹脂)などの密度が0.94g/cm3以上の樹脂を指している。
この埋設型枠7は、図11に示すように、平面視で長方形状の底板70と、この底板70の短手方向の両端部から上方に向け互いに広がるように傾斜する一対の側板71と、これら一対の側板71同士を連結する連結リブ72と、を備えており、複数の埋設型枠7が底板70の長手方向に沿って連設されたうえ、前述の間詰め部6に設置され、間詰めコンクリート6Cの型枠として用いられる。
(底板)
底板70は、平面視で長方形状(四角形状)の波形の板材であり、短手方向に沿った鉛直断面形状は、短手方向である幅方向の中央付近を頂点として弓なりに反った円弧状となっている。この弓なりの反りは、コンクリートを打設するとその重量で中央付近が下がり略水平状になるように設定されている。また、図11に示すように、底板70の長手方向(奥行方向)に沿った鉛直断面形状は、曲げ剛性を上げるためコルゲート加工が施されて波形となっている。
(側板)
側板71は、長方形状の板材であり、一対の側板71は、それぞれ短手方向に沿った鉛直断面において底板70と鈍角に交差するように一体成形されており、底板70の短手方向の両端部から上方に向け互いに広がるように形成されている。この底板70と側板71とが交差する鈍角の角度、即ち、側板71の傾斜角度は、前述のT桁3のテーパー面30aに合わせて形成されている。
また、側板71には、上端部が曲がって一対の側板71同士が広がらないように曲げ剛性を上げるため、補強リブ71aが所定間隔を置いて短手方向に沿って形成されているとともに、一対の側板71同士を連結する連結リブ72が形成されている。
(連結リブ)
連結リブ72は、底板70の長手方向に沿った立面視が逆台形状の板材であり、一対の側板71同士を連結することにより、両者の間隔を保持し、その間隔がそれ以上広がったり縮まったりしないようにすることで、埋設型枠7全体の曲げ剛性を上げ、埋設型枠7がコンクリート打設時にズレたり、落下したりすることを防止する機能を有している。
この連結リブ72には、幅方向の中央付近にD10、D13程度の径からなる異形鉄筋や丸鋼などの鉄筋を挿通するための鉄筋孔72aが穿設されている。この鉄筋孔72aは、鉄筋が挿通された状態でコンクリートが打設され、間詰めコンクリート6Cと鉄筋が一体化されることにより、間詰めコンクリート6C及び埋設型枠7が剥落することを防止する機能を有している。このように、埋設型枠7には、連結リブ72と、その連結リブ72に設けられた鉄筋孔72aによる二重の落下対策が取られているため、より安全性が高くなっている。
(係合部)
また、底板70及び側板71の長手方向の一端には、係合爪を有する係合爪部73が形成され、長手方向の他端には、その係合爪部73と係合して連結する係合受け部74が形成されている。このため、埋設型枠7の係合爪部73を他の埋設型枠7の係合受け部74に差し込んで係合させることで、複数の埋設型枠7の長手方向の端部同士が連結可能となっており、前述の間詰め部6の長さに応じて複数の埋設型枠7が連結される。このように、ある埋設型枠7の係合爪部73と他の埋設型枠7の係合受け部74とで係合部が形成される。
(その他)
なお、符号75は、外コンクリート打設時や打設前に埋設型枠7がズレるのを防止するため、外面に高摩擦係数の材料が貼着されたズレ止め板であり、符号76は、揚重の際に使用する吊りフックを掛け止めたりワイヤロープを挿通したりするためのフック孔が穿設されたフックプレートである。
このような埋設型枠7によれば、高密度樹脂から一体成形されているため、腐食等による経時的な埋設型枠の落下の心配もないうえ、吊りボルトなどの鋼材がつかわれていないので、経時的に鋼材が腐食して膨張し、間詰めコンクリートが剥落する心配もない。
しかも、前述のように存置型の埋設型枠7を設置しているので、間詰め部6に設置する型枠を解体撤去する必要がない。そのため、間詰め部6に設置する型枠の解体撤去作業の手間を省いて施工費を低減することができる。
その上、従来のT桁橋の上部構造では、間詰め部の幅方向の間隔は、200mm〜300mm程度であり、間詰めコンクリートを打設するための型枠は、その下面に支保工を組んで支える構造であったため、間詰め部の型枠設置作業に先立って、吊り足場などの足場を組んで設置する作業が必要であった。
しかし、本実施形態に係るT桁橋の上部構造1では、間詰め部6の上から複数連結した埋設型枠7を吊り降ろして載置するだけで間詰めコンクリート6C用の型枠を設置できるので、足場の設置作業及び足場の解体撤去作業を省略することが可能となる。また、型枠の設置作業自体も、コンクリートパネルに孔を開け、そこにフォームタイ(登録商標)を取り付け、取り付けたフォームタイ(登録商標)で締め付けて単管パイプを装着するなどの作業が必要な従来の型枠設置作業と比べて、既成品の埋設型枠7を連結して吊り降ろして置くだけの作業で済むため、大幅に作業時間を短縮することができる。
[実施形態に係るT桁橋の上部構造の作用効果]
以上説明した実施形態に係るT桁橋の上部構造1によれば、橋の下部構造Aと上部構造1のT桁3との間に横梁2(2’)を介して支承装置S1を設置できるため、桁ごとに必要であった高価な支承装置S1の数を低減することができ、橋の上部構造1の施工費を削減することができる。また、中空桁ではなく断面T字状のT桁3が設置されているので、橋の完成後に点検できなくなる箇所がない。
また、T桁橋の上部構造1によれば、連結リブ72が形成された剛性の高い埋設型枠7が埋設されているので、コンクリート打設時に埋設型枠7が落下するおそれがないとともに、樹脂製の埋設型枠7が埋設されているので、腐食等による経時的な埋設型枠の落下の心配もない。また、埋設型枠7には、吊りボルトなどの鋼材がつかわれていないので、経時的に鋼材が腐食膨張して間詰めコンクリート(充填材)が剥落することもない。
その上、実施形態に係るT桁橋の上部構造1によれば、埋設型枠7を間詰め部6にT桁3の上面から無足場で設置するだけで型枠を設置できるとともに、型枠を払す(撤去する)必要もない。このため、型枠の組み払し作業を大幅に省略することができるうえ、足場の組み払し作業も行わなくて済むため、T桁3の架設作業に手間が掛からず、T桁橋の上部構造1の施工費を大幅に低減することができる。
それに加え、T桁橋の上部構造1によれば、橋梁の中間部の横桁の型枠設置作業を省略することができるともに、橋梁の中間部における危険な吊り足場を設ける必要がなくなる。このため、安全性が向上するとともに、橋梁の中間部における足場の組み払し作業を省略することができ、さらに、施工費を低減することができる。
さらに、T桁橋の上部構造1によれば、T桁3が隙間材を介して横梁2(2’)のフランジ21(21’、22’)上に架け渡されているので、橋の上部構造1に作用する活荷重等の応力が均等に橋の下部構造Aに伝達できるため、橋の上部構造1の耐久性が向上する。
以上、本発明の実施形態に係るT桁橋の上部構造について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
1 :上部構造(T桁橋の上部構造)
2,2’ :横梁
20,20’ :梁本体
21,21’,22’ :フランジ
3 :T桁(主桁)
4 :床版
5 :高欄
6 :間詰め部
6C :間詰めコンクリート(充填材)
7 :埋設型枠
70 :底板
71 :側板
71a :補強リブ
72 :連結リブ
72a :鉄筋孔
73 :係合爪部(係合部)
74 :係合受部(係合部)
75 :ズレ止め板
76 :フックプレート
8 :横桁
9 :打ち継ぎコンクリート(充填材)
P1 :PC鋼材
A :下部構造
A1 :橋台(下部構造)
A2 :橋脚(下部構造)
S1 :支承装置
EB :エンドバンド鉄筋
RF :補強繊維
F :繊維保持材

Claims (6)

  1. 橋の下部構造間に支承装置を介して架け渡された橋の上部構造であって、
    橋軸方向の一方又は両方に張り出したフランジを有する複数の横梁が、橋幅方向を長手方向として前記下部構造上に前記支承装置を介して載置され、
    断面T字状のプレキャストコンクリート製の複数のT桁が、橋軸方向を長手方向として橋幅方向に一定間隔を置いて、隣接する前記横梁の対向する前記フランジ間に架け渡されており、
    前記T桁同士は、T桁を橋幅方向に貫通するPC鋼材により横締めされてプレストレスが負荷されており、
    橋台上方の橋の支点部だけ、橋幅方向に沿って設けられた横桁により前記T桁同士が連結されていること
    を特徴とするT桁橋の上部構造。
  2. 橋幅方向に隣接する前記T桁同士の間には、橋軸方向に沿って複数の埋設型枠が連設され、
    これらの埋設型枠の上方のT桁間のスペースには、充填材が充填されていること、
    を特徴とする請求項1に記載のT桁橋の上部構造。
  3. 前記T桁は、その下面と前記フランジの上面との間の隙間を埋める隙間材を介して前記フランジ上に架け渡されていること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のT桁橋の上部構造。
  4. 前記隙間材は、無収縮モルタル、感圧硬化ゴム、樹脂、又はこれらが複合されたものであること
    を特徴とする請求項3に記載のT桁橋の上部構造。
  5. 橋脚上において橋軸方向に沿って隣接する前記T桁同士は、支圧抵抗力を増すため鉄筋径より大きな径の鋼製筒状体が鉄筋の先端に嵌着されたエンドバンド鉄筋を有するコンクリートにより一体化されていること
    を特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のT桁橋の上部構造。
  6. 前記T桁は、床版を直接下から支える床版部と、この床版部の下面中央に接続する桁部を有し、
    この桁部は、下部にハンチが形成されて上部の幅が下部の幅より狭くなっていること
    を特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のT桁橋の上部構造。
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