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JP6597002B2 - 軸受装置及び軸受装置の製造方法 - Google Patents

軸受装置及び軸受装置の製造方法

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JP6597002B2 JP2015140238A JP2015140238A JP6597002B2 JP 6597002 B2 JP6597002 B2 JP 6597002B2 JP 2015140238 A JP2015140238 A JP 2015140238A JP 2015140238 A JP2015140238 A JP 2015140238A JP 6597002 B2 JP6597002 B2 JP 6597002B2
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Description

本発明は、軸受装置及び軸受装置の製造方法に関し、より詳細には、トランスミッションやデファレンシャル装置におけるギヤなどの回転支持部に用いられる軸受装置及びその軸受装置の製造方法に関する。
従来、自動車用変速機のプーリやギヤなどが設けられた回転軸を支持する軸受装置としては、内輪と外輪との間に複数の転動体が配設された転がり軸受と、該転がり軸受の外輪の軸方向端面に当接して転がり軸受をハウジングに固定する固定プレートと、を備えるものが知られている。また、近年、自動車の小型化と共にトランスミッションの小型化が要請されており、このような要請に応える軸受装置として、転がり軸受の外輪の軸方向端部外周部に形成した小径段部に、円周方向に延びる係止溝を設け、該小径段部に嵌合した固定プレートの内周部に係止爪を形成して、該係止爪を係止溝に係止するようにした軸受装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
図9,10は、特許文献3に記載の軸受装置110であり、転がり軸受130と、転がり軸受130を不図示のハウジングに固定する略三角板状の固定プレート140と、を備える。転がり軸受130の外輪131の軸方向端部外周部には、小径段部137が形成されている。小径段部137の軸方向長さL1は、固定プレート140の板厚T1と略同じ長さである。小径段部137の外周面には、係止溝137cが周方向全周に沿って形成されている。
固定プレート140は、三角形の各頂点に対応して設けられた3個の取付孔146と、外輪131の小径段部137に相対回転を許容するように嵌合する嵌合孔141と、を備える。嵌合孔141の内周部には、嵌合孔141の半径より大きな半径を有する3箇所の凹部149aが形成されており、嵌合孔141に小径段部137を嵌合させた後、凹部149aの周方向中央部をプレス装置のパンチにより軸方向に押圧して塑性変形させ、嵌合孔141の内周部に、径方向内側に突出する係止爪149を形成する。これにより、係止爪149は、小径段部137の係止溝137cに係止されて、外輪131と固定プレート140を不分離、且つ相対回転可能な状態に組み付けている。
特許文献3に記載の軸受装置110では、嵌合孔141の内周部に形成される係止爪149に求められる機能として、下記が挙げられる。
1.転がり軸受130と固定プレート140とを、不分離に組み付ける。
2.係止爪149の先端が、係止溝137cと干渉せず、転がり軸受130と固定プレート140との相対回転を阻害しない。
3.係止爪149の成形過程で、係止爪149の先端が外輪131と干渉するなどしてコンタミの原因となるバリを発生させない。
このような機能を満足させるためには、各係止爪149の形状ばらつきを抑制することが重要となる。このため、係止爪149の成形時には、外輪131と固定プレート140とを出来る限り調芯した状態で係止爪149を成形する必要がある。係止爪149の成形時には、転がり軸受130を型に固定した状態で、外輪131の小径段部137に固定プレート140を嵌合させて位置決めする。したがって、転がり軸受130と固定プレート140とを精度よく位置決めするために、外輪131の小径段部137の外径及び固定プレート140の嵌合孔141の内径は、精度良く加工されている。具体的には、小径段部137の外周面は研削加工が施されており、嵌合孔141はプレス加工により打ち抜き形成される。
特許第4877044号明細書 独国特許出願公開102004031830号明細書 特開2014−29196号公報
ハウジングに対して転がり軸受130を強固に固定するためには、固定プレート140の板厚T1を厚くして、プレート強度の確保やバーリングによって成形される取付孔146の雌ネジ長さを確保する必要がある。しかしながら、外輪131の軸方向長さW1を保ったまま板厚T1を厚くすると、外輪131の外周面131aの軸方向長さW3が短くなり、小径段部137に形成された係止溝137cが外輪軌道132に近づき(外輪軌道132の接触角方向における外輪131の肉厚が小さくなり)、外輪軌道132をバックアップする外輪131の強度(剛性)が低下する。
外輪131の剛性低下を抑制するために小径段部137の軸方向長さL1を小さくすると、固定プレート140が外輪131から軸方向にはみ出して、隣接するギアなどと干渉する虞がある。外輪131の軸方向長さW1を大きくすれば、剛性低下することなく上記干渉を避ける事ができるが、近年の燃費規制からトランスミッションは小型・軽量化(軸方向距離の短縮)されており、軸受装置110の軸方向スペースを拡大するのは困難である。
軸受装置110の軸方向長さが抑制された場合、固定プレート140が嵌合する小径段部137の軸方向長さL1が小さくなり、これに伴い板厚T1は薄くせざるを得なくなる。一方、ターボチャージャー等の過給器を用いてトルクアップすることにより、トランスミッションの回転支持部に使用される転がり軸受130が受ける荷重は増大している。したがって、トルクの増大により転がり軸受130が支持するスラスト荷重が大きくなり、固定プレート140の取付孔146の締結力の確保が必要になるが、板厚の薄いプレートではバーリングで成形できる肉が足らず、必要な締結力に見合う雌ねじ強度の確保が難しくなる。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外輪の剛性及び固定プレートの強度を確保しながら、係止爪を安定して成形し、強固に軸受をハウジングに固定することができる軸受装置及び軸受装置の製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内輪と、軸方向の端部外周部に小径段部が設けられた外輪と、内外輪間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受と、
外輪に相対回転可能に取り付けられて、転がり軸受をハウジングに固定するための固定プレートと、を備える軸受装置であって、
小径段部には、外周面に円周方向に延びる係止溝が形成され、
固定プレートの内周面は、小径段部の外周面と対向する小径孔部と、小径孔部より大きな内径を有し、外輪の外周面と対向する大径孔部と、を備えて段付き形状に形成され、
固定プレートが小径孔部で外輪に案内されるように、係止溝より軸方向外側に位置する小径段部の外周面と小径孔部との径方向すきまが、外輪の外周面と大径孔部との径方向すきまよりも小さく設定され、且つ
固定プレートは、小径孔部を画成する固定プレートの内周部から径方向内側に突出して設けられ、係止溝に係止する複数の係止爪と、小径孔部の内周面と固定プレートの裏面との周縁に形成された第1の除肉部と、を備え
係止爪は、第1の除肉部を少なくとも含んで固定プレートの内周部を軸方向に押圧して、内周部が径方向内側に向かって突出するように塑性変形させることによって形成されており、
第1の除肉部の一部が係止爪の先端部に残留することを特徴とする軸受装置。
) 外輪は、小径段部の外周面と係止溝の側面との周縁に第2の除肉部を有することを特徴とする(1)に記載の軸受装置。
(3) 内輪と、軸方向の端部外周部に小径段部が設けられた外輪と、内外輪間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受と、
外輪に相対回転可能に取り付けられて、転がり軸受をハウジングに固定するための固定プレートと、を備える軸受装置の製造方法であって、
小径段部の外周面に、円周方向に延びる係止溝を形成し、
固定プレートの内周面を、小径段部の外周面と対向する小径孔部と、小径孔部より大きな内径を有し、外輪の外周面と対向する大径孔部と、を備えるように段付き形状に形成し、
固定プレートが小径孔部で外輪に案内されるように、係止溝より軸方向外側に位置する小径段部の外周面と小径孔部との径方向すきまを、外輪の外周面と大径孔部との径方向すきまよりも小さく設け、且つ
固定プレートを、小径孔部を画成する固定プレートの内周部から径方向内側に突出して設けられ、係止溝に係止する複数の係止爪を備えるように形成し、
固定プレートにおいて、小径孔部の内周面と固定プレートの裏面との周縁に第1の除肉部を形成し、
係止爪を、第1の除肉部を少なくとも含んで固定プレートの内周部を軸方向に押圧して形成することを特徴とする軸受装置の製造方法。
本発明の軸受装置によれば、小径段部には、外周面に円周方向に延びる係止溝が形成され、固定プレートの内周面は、小径段部の外周面に嵌合する小径孔部と、小径孔部より大きな内径を有し、外輪の外周面と対向する大径孔部と、を備えて段付き形状に形成される。固定プレートが小径孔部で外輪に案内されるように、係止溝より軸方向外側に位置する小径段部の外周面と小径孔部との径方向すきまが、外輪の外周面と大径孔部との径方向すきまよりも小さく設定される。固定プレートは、小径孔部を画成する固定プレートの内周部から径方向内側に突出して設けられ、係止溝に係止する複数の係止爪を備える。したがって、固定プレートは、小径孔部で小径段部の外周面に案内され、また、係止爪を係止溝に係止させることで固定プレートと外輪とが不分離に組み付けられる。これにより、小径段部の軸方向長さを固定プレートの板厚とは係わりなく短くすることができ、外輪剛性の確保ならびに軸受の小型化が可能となる。さらに、固定プレートの板厚が小径段部の軸方向長さによらず厚くできる為、固定プレートの強度確保、ならびに取付孔の有効ネジ長さを大きくすることが可能となる。
また、軸受装置は、輸送時やトランスミッションへの組立て時に固定プレートと軸受とが分離しないこと、相対回転することが必要である。このため,係止爪は、小径段部の係止溝との間にすきまが存在するように成形されるが、固定プレートをミッションケースにボルト締結して組立が完了した状態(軸受の使用状態)において、軸受に荷重が働いて、固定プレートが変形した場合においても、係止溝と係止爪とが干渉(接触)しない形状・位置に、係止爪を成形している。本構成により、係止爪は軸受装置の輸送、組立時の慣性力に耐えるだけの強度を確保すればよく、係止爪の小型化による採用範囲の拡大、及びプレス荷重の低減(組立てコスト削減)が可能である。
本発明の実施形態に係る、軸受装置を表面側から見た斜視図。 図1の軸受装置を裏面側から見た斜視図。 図1の軸受装置の断面図。 図3のIII部拡大図。 図4の軸受装置の係止爪作成前の状態を示す、部分断面図。 図6の係止爪作成後の状態を示す、部分断面図。 図3の軸受装置の組付けに要する凹部、係止爪、及びパンチの寸法条件を説明するための断面図である。 変形例に係る軸受装置の要部拡大図。 従来の軸受装置を裏面側から見た斜視図。 図9の要部断面図。
以下、本発明の一実施形態に係る軸受装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜4に示すように、軸受装置10は、転がり軸受30と、転がり軸受30に相対回転可能、且つ、不分離に組み付けられて、転がり軸受30をハウジング60に固定するための固定プレート40と、を備える。
転がり軸受30は、内周面に外輪軌道32を有する外輪31と、外周面に内輪軌道34を有する内輪33と、保持器36に保持されて外輪軌道32と内輪軌道34との間に転動自在に配設された複数の転動体である玉35とを備える。また、外輪31の軸方向両端部には、外輪31と内輪33との間に封止部材38が配設されており、転がり軸受30を封止している。
外輪31の軸方向一端部の外周部には、外輪31の外径より小径の段部外周面37aと、段部外周面37aから径方向外方に延びる段差面37bとからなる小径段部37が形成されている。段部外周面37aには、係止溝37cが周方向全周に沿って形成されている。なお、図に示す実施形態においては、係止溝37cの軸方向内側壁が段差面37bと連続して形成されているが、係止溝37cは段部外周面37aの軸方向中間に形成してもよい。この場合、係止溝37cの軸方向内側壁は、段差面37bと異なる位置に形成される。
固定プレート40は、短辺40aと長辺40bとを円周方向に関して交互に配置した略六角形状の板状部材であり、中央には外輪31の小径段部37の段部外周面37aに嵌合する小径孔部41と、小径孔部41に隣接して、該小径孔部41より大きな内径を有し、外輪31の外周面31aと径方向に対向する大径孔部42と、が形成されている。大径孔部42は、固定プレート40の表面44側から形成された深さL3の穴であり、小径孔部41と大径孔部42との間には、径方向に延びる段差面43が形成されている。
固定プレート40には、短辺40aに対応する円周方向等間隔の3箇所に、それぞれ固定プレート40の表面44側に突出するボス部45が形成されている。ボス部45の内周面には、軸受装置10をハウジングに固定するための締結ねじ(図示せず)が螺合又は挿通する取付孔46が形成されている。
このような固定プレート40は、まず、固定プレート40の表面44側から大径孔部42を形成した後、小径孔部41を打ち抜き形成するプレス加工によって製作される。また、プレス加工によらず、切削工程で製作することもできる。
小径孔部41の内周面には、扇形状に径方向外側に凹んだ凹部49aが、円周方向等間隔の3箇所に形成されている。各凹部49aの内周面の周方向中央部には、小径孔部41の内周面よりも径方向内側に突出し、外輪31の係止溝37cと係止する係止爪49がそれぞれ形成されている。係止爪49は、外輪31の段部外周面37a及び係止溝37cに干渉することなく、外輪31と固定プレート40とが相対回転可能な状態に形成される。本実施形態の小径孔部41は、各係止爪49や凹部49aを除く内周面が、単一の円によって形成される略円形孔である。
なお、小径孔部41に形成された凹部49aの内周面で、固定プレート40の裏面47との周縁部分に、第1の除肉部としてのテーパ部48を予め形成している(図5参照)。凹部49aに予めテーパ部48を形成しておくことで、後述する係止爪49の形成過程において段部外周面37aとの干渉を確実に防止することができ、安定して係止爪49を形成することができる。
ここで、本実施形態の軸受装置10において、外輪31及び固定プレート40は、小径段部37の段部外周面37aの外径をφ1、小径孔部41の内径をφ2、外輪31の外径をφ3、大径孔部42の内径をφ4、固定プレート40の板厚をT1、小径孔部41の板厚をT2としたとき、T1>T2(好ましくは、2×T2≧T1>T2)、且つφ4>φ3>φ2>φ1、且つ、0<φ2−φ1<φ4−φ3を満足する。
即ち、小径孔部41の内周面と小径段部37の段部外周面37aとの間に設けられる径方向すきまB(=(φ2−φ1)/2)は、固定プレート40の大径孔部42と外輪31の外周面31aとの径方向すきまA(=(φ4−φ3)/2)よりも小さい(B<A)。
また、外輪31の外周面31a及び軸方向側面31bは、ハウジング60が嵌合する又は当接する面であり、小径段部37の段部外周面37aは、固定プレート40の小径孔部41が嵌合する面となるため、通常、研削加工が施されて高精度に仕上げられている。一方、本実施形態では、段差面37b、及び係止溝37cは、比較的高精度を必要としないため、旋削加工による切削面となっている。
次に、軸受装置10の組付け手順について図5,6を参照して説明する。先ず、固定プレート40の大径孔部42に外輪31を挿入し、固定プレート40の小径孔部41に小径段部37の段部外周面37aを所定の径方向すきまAを持って嵌合させ、大径孔部42の段差面43と小径段部37の段差面37bとを当接させて転がり軸受30に固定プレート40をセットする。
次いで、プレス装置のパンチ50を、凹部49aのテーパ部48と固定プレート40の裏面47の両者に跨るように配置して軸方向(図5において左側)に押圧する。これにより、先ず、パンチ50が固定プレート40の裏面47に当接して潰し加工が開始され、続いてテーパ部48が潰されて塑性変形し、係止爪49が径方向内側、即ち、段部外周面37aに向かって突出する。
係止爪49の形成過程において、凹部49aの内周面と小径段部37の段部外周面37aとの間には、径方向すきまBよりも大きい径方向すきまCが設けられているので(C>B)、形成される係止爪49の先端と段部外周面37aとの間には径方向のすきまが維持されて、係止爪49と段部外周面37aとの干渉が防止される。
更にパンチ50による潰し加工が進行し、パンチ50がテーパ部48の下端部に達しても、テーパ部48の形状の一部が係止爪49の先端部に残留しており、段部外周面37aとの間には径方向のすきまが維持されて、係止爪49が段部外周面37aと干渉することはない。
そして、図6に示すように、パンチ50が所定の位置まで移動して潰し加工が終了したとき、係止爪49は、係止溝37cの軸方向中間位置に、係止溝37cの両側面との間にそれぞれ軸方向のすきまを持ち、且つ係止溝37cの底部との間に径方向のすきまを持った状態で形成される。これにより、係止爪49は、段部外周面37aに形成された係止溝37cに係止され、転がり軸受30と固定プレート40とが不分離、且つ相対回転可能な状態に組み付けられる。
なお、図5に示すテーパ部48は、凸状の曲面部や凹状の曲面部とすることもできる。
図7により、本実施形態の軸受装置10において、外輪31に干渉することなく係止爪49を成形するための転がり軸受30と固定プレート40の形状に関する条件を説明する。段部外周面37aの外径をφ1、外輪31の外径をφ3、大径孔部42の内径をφ4、凹部49aの内径をφ5、テーパ部48の外径をφ6、パンチ50の外径をφ7、パンチ50の内径をφ8としたとき、φ5≧φ8>φ1、且つφ3>φ8、φ3>φ5を満足する。また、φ3≧φ7≧φ6を満足することが望ましい。
なお、テーパ部48の角度、軸方向長さなどの形状は、固定プレート40の厚さなどに応じて任意に設定される。
以上説明したように、本実施形態の軸受装置10によれば、固定プレート40は、凹部49aの内周面と固定プレート40の裏面47との周縁に形成されたテーパ部48を備え、係止爪49は、テーパ部48を少なくとも含んで固定プレート40の内周部を軸方向に押圧して形成されるので、外輪31との干渉を防止しつつ、係止爪49を安定して成形することができ、軸受装置10の生産性を向上することができる。
また、本実施形態の軸受装置10では、小径孔部41の内周面に径方向外側に凹んだ状態で凹部49aを形成し、凹部49aと外輪31の段部外周面37aとの間には、径方向すきまC(=φ5−φ1)が設けられているので、外輪31との干渉を防止しつつ、係止爪49を安定して成形することができる。
更に、固定プレート40は、大径孔部42が外輪31の外周面31aに所定の径方向すきまAを有して対向しているので、従来の軸受装置110の外輪131の小径段部137の軸方向長さL1と比較して(図10参照)、本実施形態の外輪31の小径段部37の軸方向長さL2を、大径孔部42の軸方向長さL3分だけ短くすることができる(L2=L1−L3)。これにより、外輪31の外周面31aの軸方向長さW2が長くなるので(W2>W3)、外輪31の剛性が向上し、固定プレート40を固定する際のボルト軸力による外輪軌道32の変形を抑制することができる。
加えて、外輪31の左側面31bと固定プレート40の表面44との間の軸方向長さ(W2−L3)は、従来の軸受装置110での外周面131aの軸方向長さW3と同じであるので(W3=W2−L3)、ハウジング形状を変更することなく、従来のハウジングに対して本実施形態の軸受装置10をそのまま適用することができる。
また、大径孔部42と段差面43との間には隅R51が形成されているが(図5参照)、外輪31の外周面31aと大径孔部42の内周面との間には大きな径方向すきまAを有しているので、応力集中を緩和する為に隅R51を大きくした場合でも、固定プレート40の隅R51と外輪31の外周面31aとが干渉するのを防止できる。また、外輪31の強度を確保する為に、外周面31aと段差面37bとの間の面取り52を小さくした場合でも、固定プレート40の隅R51と外輪31との干渉を防止できる。
軸受装置10の輸送時、或いは軸受装置10をハウジングに組み付ける時、固定プレート40と軸受30とは分離せず、且つ相対回転することが必要である為、係止爪49は、小径段部37の係止溝37cとの間に隙間がある形状に成形される。一方、ねじにより固定プレート40をハウジングに締結固定して、軸受30がハウジングに嵌合固定された状態においては、固定プレート40には軸方向の荷重が働いて、固定プレート40は若干変形する。このような状態においても、係止爪49は、係止溝37cの溝底及び両側壁と干渉(接触)しない位置及び形状に成形されている。本構成により、係止爪49は、輸送、組付け時における軸受30の慣性力に耐えるだけの強度を確保すればよいため、係止爪49を小型化して、軸受装置10の適用範囲の拡大、プレス荷重の低減(組立コストの削減)が可能となる。
図8は、本実施形態の変形例を示している。本変形例の場合、小径段部37の係止溝37cは、係止溝37cの軸方向外側壁37dと段部外周面37aとの周縁に第2の除肉部としてのテーパ部39を形成している。これにより、潰し加工の初期段階から係止爪49が形成されても、係止爪49は、小径段部37の段部外周面37aとの干渉をより確実に防止され、確実に係止溝37c内に形成される。
なお、テーパ部39は、凸状の曲面部や凹状の曲面部とすることもできる。
また、大径孔部42の内周面は、段差面43に向かうに従い小径となるテーパ面に形成されており、最も小径となる段差面43側端部において、外輪31の外周面31aとの間に径方向すきまAを有している。径方向すきまAは前述した径方向すきまBよりも大きくしている(A>B)。本構成により、固定プレート40の肉厚が小径孔部41から大径孔部42に変化する部分の応力集中を緩和して、固定プレートの強度を確保している。
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記実施形態では、固定プレートの内周部に3箇所の係止爪を形成した場合を例示したが、これに限定されず、固定プレートの内周部に2箇所あるいは4箇所以上の係止爪を形成してもよい。
また、上記実施形態では、小径段部の外周面の周方向全周に係止溝を形成した場合を例示したが、これに限定されず、例えば、小径段部の外周面において、係止爪が形成される箇所で周方向に延びる複数の係止溝を形成するようにしてもよい。
10 軸受装置
30 転がり軸受
31 外輪
32 外輪軌道
31a 外周面
33 内輪
34 内輪軌道
35 玉(転動体)
37 小径段部
37a 段部外周面
37b 段差面
37c 係止溝
38 封止部材
39 テーパ部(第2の除肉部)
40 固定プレート
40a 短辺
40b 長辺
41 小径孔部
42 大径孔部
43 段差面
44 表面
45 ボス部
46 取付孔
47 裏面
48 テーパ部(第1の除肉部)
49 係止爪
49a 凹部
50 パンチ
51 隅R
52 面取り
60 ハウジング

Claims (3)

  1. 内輪と、軸方向の端部外周部に小径段部が設けられた外輪と、前記内外輪間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受と、
    前記外輪に相対回転可能に取り付けられて、前記転がり軸受をハウジングに固定するための固定プレートと、を備える軸受装置であって、
    前記小径段部には、外周面に円周方向に延びる係止溝が形成され、
    前記固定プレートの内周面は、前記小径段部の外周面と対向する小径孔部と、前記小径孔部より大きな内径を有し、前記外輪の外周面と対向する大径孔部と、を備えて段付き形状に形成され、
    前記固定プレートが前記小径孔部で前記外輪に案内されるように、前記係止溝より軸方向外側に位置する前記小径段部の外周面と前記小径孔部との径方向すきまが、前記外輪の外周面と前記大径孔部との径方向すきまよりも小さく設定され、且つ
    前記固定プレートは、前記小径孔部を画成する前記固定プレートの内周部から径方向内側に突出して設けられ、前記係止溝に係止する複数の係止爪と、前記小径孔部の内周面と前記固定プレートの裏面との周縁に形成された第1の除肉部と、を備え
    前記係止爪は、前記第1の除肉部を少なくとも含んで前記固定プレートの内周部を軸方向に押圧して、前記内周部が径方向内側に向かって突出するように塑性変形させることによって形成されており、
    前記第1の除肉部の一部が前記係止爪の先端部に残留することを特徴とする軸受装置。
  2. 前記外輪は、前記小径段部の外周面と前記係止溝の側面との周縁に第2の除肉部を有することを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
  3. 内輪と、軸方向の端部外周部に小径段部が設けられた外輪と、前記内外輪間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受と、
    前記外輪に相対回転可能に取り付けられて、前記転がり軸受をハウジングに固定するための固定プレートと、を備える軸受装置の製造方法であって、
    前記小径段部の外周面に、円周方向に延びる係止溝を形成し、
    前記固定プレートの内周面を、前記小径段部の外周面と対向する小径孔部と、前記小径孔部より大きな内径を有し、前記外輪の外周面と対向する大径孔部と、を備えるように段付き形状に形成し、
    前記固定プレートが前記小径孔部で前記外輪に案内されるように、前記係止溝より軸方向外側に位置する前記小径段部の外周面と前記小径孔部との径方向すきまを、前記外輪の外周面と前記大径孔部との径方向すきまよりも小さく設け、且つ
    前記固定プレートを、前記小径孔部を画成する前記固定プレートの内周部から径方向内側に突出して設けられ、前記係止溝に係止する複数の係止爪を備えるように形成し、
    前記固定プレートにおいて、前記小径孔部の内周面と前記固定プレートの裏面との周縁に第1の除肉部を形成し、
    前記係止爪を、前記第1の除肉部を少なくとも含んで前記固定プレートの内周部を軸方向に押圧して形成することを特徴とする軸受装置の製造方法。
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