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JP6592460B2 - ベーカリー食品用加工澱粉及びベーカリー食品用ミックス - Google Patents

ベーカリー食品用加工澱粉及びベーカリー食品用ミックス Download PDF

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Description

本発明は、パン類等のベーカリー食品の製造に用いられるベーカリー食品用加工澱粉及びそれを利用したベーカリー食品用ミックスに関する。
加工澱粉は、澱粉の構造や性質を変化させるような化学的又は物理的な加工が施された澱粉であり、パン類、焼き菓子等のベーカリー食品に従来使用されている。例えば特許文献1には、焼き菓子の一種であるウエハースに用いられるウエハースシートの主原料として、置換度0.07〜0.18のヒドロキシプロピル澱粉を用いることが記載されており、また、このヒドロキシプロピル澱粉の原料としてタピオカ澱粉が好ましい旨も記載されている。特許文献1によれば、この特定のヒドロキシプロピル澱粉を用いることによって、食した際に適度な硬さがあって食べ応えのある食感を有すると共に、サクサクしてロ溶けの良い厚焼きウエハースシートが得られるとされている。
また特許文献2には、スポンジケーキ等の、小麦粉を主原料とする菓子類の品質の経時変化を防止することを目的として、置換度が0.01〜0.15のヒドロキシプロピル澱粉を用いることが記載されており、また、このヒドロキシプロピル澱粉の原料としてタピオカ澱粉が好ましい旨も記載されている。また、特許文献2の〔0018〕には、ヒドロキシプロピル澱粉は、原則として未架橋のものを用い、架橋した場合でも軽度に架橋したものであって膨潤度が25以上のものを用いることも記載されている。
特開2003−333984号公報 特開平8−242752号公報
本発明は、ヒドロキシプロピル化処理され、糊化ピーク温度が56〜63℃、糊化エネルギーが3.5〜7.0J/gであるベーカリー食品用加工澱粉である。
また本発明は、前記ベーカリー食品用加工澱粉を含有するベーカリー食品用ミックスである。
また本発明は、前記ベーカリー食品用加工澱粉又は前記ベーカリー食品用ミックスを用いて得られたベーカリー食品である。
本発明の課題は、外観及び食感の経時的な劣化が起こり難いベーカリー食品を提供可能なベーカリー食品用加工澱粉及びベーカリー食品用ミックスに関する。
本発明のベーカリー食品用加工澱粉は、原料澱粉に化学的加工処理としてヒドロキシプロピル化処理を施したものであり、いわゆるヒドロキシプロピル化澱粉である。本発明のベーカリー食品用加工澱粉の製造において、原料澱粉のヒドロキシプロピル化処理は、ヒドロキシプロピル化剤(プロピレンオキサイド)等の必要な試薬を用いて常法に従って行うことができ、ヒドロキシプロピル化処理の具体的な条件は、当業者であれば適宜設定することができる。
本発明のベーカリー食品用加工澱粉は、ヒドロキシプロピル化処理されていることに加えてさらに、糊化ピーク温度が56〜63℃、糊化エネルギーが3.5〜7.0J/gであることを主たる特徴の1つとしている。
澱粉は、グルコースがα−1,4結合で連なった直鎖状のアミロースとα−1,6結合を介して枝分かれ構造をもったアミロペクチンとの混合物であり、非加熱の生澱粉の状態においては、アミロースとアミロペクチンとが水素結合によって規則的に集合したミセル構造を有し、高度に結晶化した粒状をなしている。この生澱粉(澱粉粒)のミセル構造には水分子が入り込む余地はほとんどないが、生澱粉に水分を加えて加熱すると、熱エネルギーにより水素結合が切れてミセル構造が緩むため、ミセル構造に水分子が入り込む余地が生じ、澱粉粒は水和して次第に膨潤し、ある一定の温度(糊化ピーク温度)で一気に結晶構造が崩れ、糊状の糊化澱粉になる。また、この糊化澱粉を放置すると、時間経過に伴い澱粉分子が再び集合してミセル構造を形成し、凝集する。この現象を澱粉の老化という。ベーカリー食品は通常、焼成後経時的に硬くなり、所謂ボソボソとした好ましくない食感となる品質劣化が起こるところ、この品質劣化の主原因は澱粉の老化に依ると考えられている。糊化ピーク温度は、示差走査熱量測定による吸熱曲線の頂点を与える温度であり、澱粉中の糖鎖の水素結合が最も多く切断される温度であると考えられる。また、糊化エネルギーは、水素結合が切断され、澱粉が糊化するのに必要な熱エネルギーを示している。
ベーカリー食品用加工澱粉の糊化ピーク温度が63℃を超える、又は糊化エネルギーが7.0J/gを超えると、澱粉の糊化が遅く、澱粉のもつ糖鎖が凝集しやすく、老化が早くなるため、ベーカリー食品の老化耐性を効果的に向上し得る加工澱粉は得られない。また、ベーカリー食品用加工澱粉の糊化ピーク温度が56℃未満、又は糊化エネルギーが3.5J/g未満であると、これを用いて得られるベーカリー食品のもちもちした食感がねちゃつくおそれがある。ベーカリー食品用加工澱粉の糊化ピーク温度は、好ましくは58〜62℃であり、糊化エネルギーは、好ましくは4.5〜6.0J/gである。糊化ピーク温度及び糊化エネルギーは、それぞれ、下記の方法で測定される。
<糊化ピーク温度及び糊化エネルギーの測定方法>
示差走査型熱量計(セイコー社製)を用い、供試澱粉の乾物重量10mgに対し40mgの蒸留水を加えてなる試料と、同量の蒸留水のみからなる比較対照とを用意し、両者を個別にアルミセルに収容した状態で25℃から140℃まで毎分5℃ずつ昇温させて、両者の吸熱エネルギーの差異を測定する。供試澱粉が糊化される時に生じる吸熱エネルギー(30℃から100℃の間に形成されるピーク)の頂点を糊化ピーク温度(℃)とし、また、該該吸熱エネルギーの乾物1g当たりの糊化熱を糊化エネルギー(J/g)とする。
ヒドロキシプロピル化澱粉の糊化ピーク温度及び糊化エネルギーの調整は、ヒドロキシプロピル基の置換度を制御することによって実施できる。ヒドロキシプロピル化澱粉におけるヒドロキシプロピル基の置換度を増加させた場合は、糊化ピーク温度及び糊化エネルギーがそれぞれ低下し、該置換度を減少させた場合は、糊化ピーク温度及び糊化エネルギーがそれぞれ上昇する。
糊化ピーク温度及び糊化エネルギーを前記特定範囲に調整する観点から、本発明のベーカリー食品用加工澱粉におけるヒドロキシプロピル基の置換度は、好ましくは0.13〜0.18、さらに好ましくは0.15〜0.18である。ここでいう「置換度」(DS:Degree of Substitution)は、澱粉のグルコース残基1個当たりのヒドロキシプロピル基の数を意味する。



また、本発明のベーカリー食品用加工澱粉は、糊化ピーク温度及び糊化エネルギーがそれぞれ前記範囲にあることに加えてさらに、RVAピーク粘度が2300〜3300cP、さらに好ましくは2600〜3000cPの範囲にあることが好ましい。RVAは、澱粉が加熱されて糊になった際の糊化特性を表し、澱粉が加熱膨潤した際の粘度(糊化ピーク粘度)を表す。RVAピーク粘度が斯かる範囲にあることにより、特にベーカリー食品用加工澱粉の原料としてタピオカ澱粉を用いた場合に、該加工澱粉を用いて得られるベーカリー食品の食感のもちもち感がより増強されるという効果が奏される。加工澱粉のRVAピーク粘度は、加工前の原料澱粉の種類、ヒドロキシプロピル基の置換度等を適宜調整することで調整可能であり、また、後述するように加工澱粉をリン酸架橋する場合には、その架橋度を適宜調整することによっても調整可能である。RVAピーク粘度は下記の方法で測定される。
<RVAピーク粘度の測定方法>
迅速粘度測定装置(ニューポート サンエンティフィク社製)を用い、該測定装置に付属のアルミ缶(測定対象物の収容容器)に供試澱粉(水分14%換算)2g及び蒸留水25mlを加えた後、さらにパドル(撹拌子)を入れ、該アルミ缶をタワーにセットし、該パドルを回転数160rpm/minで回転させながら該アルミ缶を加熱してその内容物(供試澱粉懸濁液)の温度を上昇させつつ該内容物の粘度を測定する。この供試澱粉懸濁液の加熱条件は、はじめに供試澱粉懸濁液を50℃で1分間保持した後、7分30秒をかけて95℃まで上昇させ、同温度で5分間保持し、次いで7分30秒をかけて50℃まで冷却した後、同温度で2分間保持する条件とする。そして、この加熱処理中の供試澱粉懸濁液の粘度測定値のピーク値を、供試澱粉のRVAピーク粘度とする。
本発明のベーカリー食品用加工澱粉は、リン酸架橋されていることが好ましく、即ち、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉であることが好ましい。ベーカリー食品用加工澱粉が架橋処理されていると、これを用いてベーカリー食品を製造する際の加熱(例えば焼成、フライ)による澱粉粒の崩壊が効果的に抑制される。また、澱粉の架橋処理には、リン酸架橋以外にも例えばアジピン酸架橋等があるが、リン酸架橋は、風味に大きな影響を与えないため、本発明のベーカリー食品用加工澱粉の架橋処理として特に好ましい。澱粉のリン酸架橋は、常法に従って行うことができる。
本発明のベーカリー食品用加工澱粉の膨潤度は、好ましくは25未満、さらに好ましくは18〜24である。ベーカリー食品用加工澱粉の膨潤度が前記範囲にあることにより、これを用いて得られるベーカリー食品の口溶けが一層向上し、また、該ベーカリー食品の製造直後の食感が一層長く維持され得る。ベーカリー食品用加工澱粉の膨潤度は、加工前の原料澱粉の種類、ヒドロキシプロピル基の置換度等を適宜調整することで調整可能であり、また、後述するように加工澱粉をリン酸架橋する場合には、その架橋度を適宜調整することによっても調整可能である。膨潤度は下記の方法で測定される。
<膨潤度の測定方法>
測定対象物(澱粉)を乾燥物換算で1g用意し、これを純水100ml中に分散させ、90℃、30分間加熱後30℃に冷却して糊化液を得る。この糊化液を遠心分離(3000rpm、10分間)してゲル層と上澄層とに分け、該ゲル層の重量を測定して、その測定値をAとする。次に、重量測定したゲル層を乾固(105℃、恒量)してその乾固物の重量を測定し、その測定値をBとする。こうして求めたAをBで除する、即ちA/Bにより、測定対象物の膨潤度が求められる。
本発明のベーカリー食品用加工澱粉は、糊化ピーク温度、糊化エネルギー等を前記特定範囲に調整する点を除き、基本的には常法に従って製造することができる。加工澱粉は通常、タピオカ、コーン、馬鈴薯等の原料を水溶液中で粗砕きする磨砕工程、外皮等の繊維を除く篩工程、澱粉及び蛋白質が含有する懸濁液を両者の比重差によって分離して澱粉を分取する工程、ヒドロキシプロピル化処理や架橋処理等の化学的加工処理を行う工程、洗浄・脱水する工程、乾燥工程を経て製造される。本発明のベーカリー食品用加工澱粉の原料澱粉は特に制限されないが、これを用いて得られたベーカリー食品にもちもちとした食感を付与する観点から、タピオカ澱粉を原料とすることが好ましい。
次に、本発明のベーカリー食品用ミックスについて説明する。本発明のベーカリー食品用ミックスは、前記の本発明のベーカリー食品用加工澱粉を含有し、常温常圧下において粉体である。本発明のベーカリー食品用ミックス中における本発明のベーカリー食品用加工澱粉の含有量は、ベーカリー食品の種類等に応じて適宜調整することができ特に制限されないが、該ミックスの全質量に対して、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは10〜60質量%である。
本発明のベーカリー食品用ミックスは、通常、前記の本発明のベーカリー食品用加工澱粉に加えてさらに穀粉を含有する。穀粉としては、ベーカリー食品の製造に通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉等の小麦粉の他、ライ麦粉、大麦粉、そば粉、米粉、コーンフラワー等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明のベーカリー食品用ミックス中における穀粉の含有量は、該ミックスの全質量に対して、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
本発明のベーカリー食品用ミックスの好ましい一実施形態として、「前記の本発明のベーカリー食品用加工澱粉に加えてさらに小麦粉を含有し、該小麦粉と該ベーカリー食品用加工澱粉を含めた該ミックス中の全澱粉との混合物の、ヒドロキシプロピル基の置換度が0.03を超えるベーカリー食品用ミックス」が挙げられる。ここでいう「混合物のヒドロキシプロピル基の置換度」は、小麦粉、澱粉の総量に対するヒドロキシプロピル基の置換度を意味し、より具体的には、前記混合物(ミックス中の全小麦粉と全澱粉との混合物)中の小麦粉についてのヒドロキシプロピル基の置換度を0とし、該混合物中の澱粉についてのヒドロキシプロピル基の置換度と、該小麦粉と該澱粉との含有質量比とから、相加平均して算出される置換度を意味する。ベーカリー食品用ミックス中の前記混合物のヒドロキシプロピル基の置換度が0.03を超えることにより、該ミックスを用いて得られるベーカリー食品の食感の経時劣化が効果的に抑制され、製造直後のベーカリー食品の食感が長期間維持されるようになる。このベーカリー食品用ミックスの好ましい一実施形態におけるベーカリー食品用加工澱粉としては、タピオカ澱粉を原料とするものが好ましい。前述した通り、ベーカリー食品用加工澱粉の原料としてタピオカ澱粉を用いることで、ベーカリー食品にもちもちとした食感を付与することが可能となるが、このもちもち感はベーカリー食品の製造直後から経時的に低下する傾向があり、通常、ベーカリー食品の製造から数日経過すると、ベーカリー食品が硬く脆くなってもちもち感が失われるところ、ベーカリー食品用ミックス中の前記混合物のヒドロキシプロピル基の置換度が0.03を超えることにより、該ミックスを用いて得られるベーカリー食品のもちもち食感がより長く継続するようになり、条件によっては、もちもち感が製造後1ヵ月程度維持されるようになる。前記混合物のヒドロキシプロピル基の置換度は、好ましくは0.03〜0.14、さらに好ましくは0.09〜0.13である。前記混合物のヒドロキシプロピル基の置換度は、本発明のベーカリー食品用加工澱粉のヒドロキシプロピル基の置換度、小麦粉と該加工澱粉との含有質量比等を適宜調整することにより調整可能である。
本発明のベーカリー食品用ミックスは酵素を含有していても良い。ミックス中に酵素を含有させることで、該ミックスを用いて得られるベーカリー食品の食感、特にもちもち感の経時劣化がより一層起こり難くなる。本発明のベーカリー食品用ミックスにおいて酵素として好ましいものはリパーゼであり、特にホスホリパーゼが好ましい。本発明のベーカリー食品用ミックス中における酵素の含有量は、該ミックスの全質量に対して、好ましくは0.00005〜0.1質量%、さらに好ましくは0.0001〜0.05質量%である。ベーカリー食品用ミックス中における酵素の含有量が少なすぎると、酵素を用いる意義に乏しく、酵素の含有量が多すぎると、該ミックスを用いて得られるベーカリー食品の口溶けが悪くなり、食感の低下を招くおそれがある。
本発明のベーカリー食品用ミックスには、前記成分(本発明のベーカリー食品用加工澱粉、穀粉、酵素)以外の他の成分を含有させることができる。この他の成分としては、例えば、前記ベーカリー食品用加工澱粉以外の他の澱粉;炭酸水素ナトリウム(重曹)、ベーキングパウダー、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム等の膨張剤又はイースト;サラダ油等の油脂類;砂糖等の糖類;全卵、卵白、卵黄等の卵類;牛乳、脱脂粉乳、バター等の乳製品;食塩等の塩類;乳化剤、増粘剤、酸味料、香料、香辛料、着色料、果汁、ビタミン類等の添加物等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のベーカリー食品用加工澱粉及びベーカリー食品用ミックスは、ベーカリー食品の製造に用いることができる。本発明でいうベーカリー食品は、穀粉を主原料とし、これに必要に応じてイーストや膨張剤(ベーキングパウダー等)、水、食塩、砂糖などの副材料を加えて得られた発酵又は非発酵生地を、焼成、蒸し、フライ等の加熱処理に供して得られる食品をいう。本発明が適用可能なベーカリー食品の例としては、パン類;ピザ類;ケーキ類;ワッフル、シュー、ビスケット、どら焼き、焼き饅頭等の和洋焼き菓子;ドーナツ等の揚げ菓子等が挙げられる。パン類としては、食パン(例えばロールパン、白パン、黒パン、フランスパン、乾パン、コッペパン、クロワッサン等)、調理パン、菓子パン、蒸しパン等が挙げられる。ケーキ類としては、スポンジケーキ、バターケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、ブッセ、バームクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、マフィン、バー、クッキー、パンケーキ等が挙げられる。
本発明は、特にイースト菌による発酵をさせずに得られるベーカリー食品、即ちイースト菌非発酵生地を加熱処理して得られるベーカリー食品に好適である。本発明のベーカリー食品用加工澱粉及びベーカリー食品用ミックスを適用可能な、イースト菌発酵を必要としないベーカリー食品の具体例としては、例えば、マフィン、パウンドケーキ、パンケーキ、ホットケーキ等のケーキ類;鯛焼き、今川焼、どら焼き、ワッフル、クッキー、ビスケット、ドーナツ等が挙げられる。また、本発明のベーカリー食品用加工澱粉及びベーカリー食品用ミックスは、イースト菌発酵を要するベーカリー食品にも適用可能であり、該ベーカリー食品の具体例としては、例えば、イーストドーナツ、カレーパン、餡ドーナツ、調理パン、菓子パン等が挙げられる。
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
〔実施例1〜5及び比較例1〜3〕
水120質量部に硫酸ソーダ20質量部及びタピオカ澱粉100質量部を加えたスラリーを8点用意し、各スラリーを撹拌しつつこれに、3%苛性ソーダ水溶液30質量部と、所定質量部のプロピレンオキサイドと、トリメタリン酸ソーダ0.02質量部とを添加し、40℃で24時間反応させた後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥、乳鉢で粉砕後に、100メッシュの篩を通し、ヒドロキシプロピル基の置換度が所定範囲にあるヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を得た。前記スラリーに添加したプロピレンオキサイドの量と、それによって得られたヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の置換度との関係は次の通り。プロピレンオキサイド添加量(質量部):ヒドロキシプロピル基の置換度=(5質量部:0.08)、(6質量部:0.10)、(7.5質量部:0.13)、(9質量部:0.15)、(9.5質量部:0.16)、(11質量部:0.18)、(11.5質量部:0.19)、(13質量部:0.22)。
〔実施例6〕
水120質量部に硫酸ソーダ20質量部及びタピオカ澱粉100質量部を加えたスラリーを用意し、該スラリーを攪拌しつつこれに、3%苛性ソーダ水溶液30質量部、とプロピレンオキサイド9.5質量部とを添加し、40℃で24時間反応させた後、塩酸で中和し、水洗、脱水、乾燥、乳鉢で粉砕後に、100メッシュの篩を通し、ヒドロキシプロピル基の置換度0.16のヒドロキシプロピル化澱粉を得た。
前記の各実施例及び比較例の澱粉(以下、特定加工澱粉ともいう)について、糊化ピーク温度、糊化エネルギー、RVAピーク粘度、膨潤度をそれぞれ前記方法によって測定し、また、置換度を下記方法によって測定した。それらの結果を下記表1に示す。
Figure 0006592460
〔実施製造例1〜9及び比較製造例1〜4〕
前記特定加工澱粉と小麦粉(日清製粉株式会社製、商品名「フラワー」)とを混合して、下記表2に示す組成のベーカリー食品用ミックスを調製した。得られたミックスについて、該ミックス中の小麦粉と全澱粉(前記特定加工澱粉)との混合物の置換度を測定した。その結果を下記表2に示す。
〔実施製造例10〜16〕
実施製造例7のベーカリー食品用ミックスに酵素(ホスホリパーゼA2)を所定量配合して、下記表3に示す組成のベーカリー食品用ミックスを調製した。
〔評価試験〕
前記の各実施製造例及び比較製造例のミックスを用いて、イースト菌発酵を必要としないベーカリー食品であるマフィンを製造した。即ち、評価対象のミックスにさらに、砂糖、サラダ油(植物油脂)、食塩、ベーキングパウダー(膨張剤)、グリセリン脂肪酸エステル(乳化剤)を配合して、下記組成のマフィン用ミックスを得、該マフィン用ミックス100質量部に、全卵40質量部、水20質量部、サラダ油35質量部を加えてミキシングし、生地を調製した。10分間のフロアタイムをとった後、グラシン紙に生地を40〜50gずつ注下し、180℃にて25分間焼成してマフィンを製造した。
得られたマフィンについて、製造直後に室温(約25℃)で1時間放置し、ポリ袋で包装24時間後に、外観(ボリューム感)及び食感(もちもち感)を10人のパネラーに下記評価基準により評価してもらった。即ち、マフィンの外観及び食感の経時変化を評価した。その結果(パネラー10人の平均点)を下記表2及び表3に示す。
<マフィン用ミックスの組成>
・砂糖 40.0質量%
・小麦粉 17.0質量%
・サラダ油 3.0質量%
・食塩 0.3質量%
・特定加工澱粉 38.0質量%
・ベーキングパウダー 1.6質量%
・グリセリン脂肪酸エステル 0.1質量%
合計100質量%
(外観の評価基準)
5点:製造直後のものと比較して膨らみが変わらず、ボリューム感が十分にあり、非常に良好。
4点:製造直後のものと比較して膨らみがやや足りないが、ボリューム感があり、良好。
3点:製造直後のものと比較して膨らみがやや足りず、ボリューム感がやや足りない。
2点:製造直後のものと比較して膨らみが不十分で、ボリューム感に乏しい。
1点:製造直後のものと比較して全く膨らまず、ボリューム感がなく、非常に不良。
(食感の評価基準)
5点:製造直後のものと比較して食感が変わらず、もちもち感が十分にあり、非常に良好。
4点:製造直後のものと比較して食感にやや劣るが、もちもち感があり、良好。
3点:製造直後のものと比較して食感にやや劣り、もちもち感がやや足りない。
2点:製造直後のものと比較して食感が不十分で、もちもち感に乏しい。
1点:製造直後のものと比較して食感がかなり低く、もちもち感が無く、非常に不良。
Figure 0006592460
Figure 0006592460
本発明によれば、老化耐性に優れ、外観及び食感の経時的な劣化が起こり難いベーカリー食品を提供することができる。

Claims (8)

  1. ヒドロキシプロピル化処理及びリン酸架橋され、糊化ピーク温度が5〜6℃、糊化エネルギーが4.56.0J/gであり、RVAピーク粘度が2300〜3300cPであり、タピオカ澱粉を原料とする、イースト菌による発酵をさせずに得られるベーカリー食品用加工澱粉。
  2. ヒドロキシプロピル基の置換度が0.13〜0.18である請求項に記載のベーカリー食品用加工澱粉。
  3. 膨潤度が18〜24である、請求項1又は2に記載のベーカリー食品用加工澱粉。
  4. α化処理されていない、請求項1〜3の何れか1項に記載のベーカリー食品用加工澱粉。
  5. RVAピーク粘度が2600〜3000cPである、請求項1〜4の何れか1項に記載のベーカリー食品用加工澱粉。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載のベーカリー食品用加工澱粉を含有するベーカリー食品用ミックス。
  7. さらに小麦粉を含有し、該小麦粉と前記ベーカリー食品用加工澱粉を含めた前記ベーカリー食品用ミックス中の全澱粉との混合物のヒドロキシプロピル基の置換度が0.09以上である請求項に記載のベーカリー食品用ミックス。
  8. さらに酵素を含有する請求項又はに記載のベーカリー食品用ミックス。
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