<実施例1>
本発明を実施するための形態について実施例を挙げて具体的に説明する。まず、実施例1の画像形成装置の構成について、図1を用いて説明する。図1に示す画像形成装置100は、電子写真方式を用いたフルカラーのプリンタである。
[画像形成部]
画像形成装置100には、それぞれ色の異なる4色のトナー像を形成する4個の画像形成ユニットY(イエロー)・M(マゼンタ)・C(シアン)・Bk(ブラック)が配置される。また、これら画像形成ユニットに隣接して、各画像形成ユニットで形成された各色のトナー像が転写される中間転写体としての無端状の中間転写ベルト10が配置されている。これら4個の画像形成ユニットY・M・C・Bk、は、同様の構成であり、以下では、代表してイエローの画像形成ユニットYの構成を説明する。他の画像形成ユニットについては、画像形成ユニットYと同一の構成及び作用の部材には同じ番号を付し、各ユニットを示す添え字を変更する。
像担持体として、例えば表層が有機光半導体からなる円筒型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」と称する)1Yは、矢印方向へ回転駆動される。2Yは、感光ドラム1Yの表面を一様均一に帯電する帯電手段としての帯電ローラである。所定のバイアスが印加された帯電ローラ2Yは、感光ドラム1Yと接触することで従動回転して、感光ドラム1Y表面を所定の電位に帯電する。帯電された感光ドラム1Yは、露光装置3Yによる露光光(レーザー光など)による露光が行われて、スキャナや外部端末から入力された画像データの色分解画像に対応した静電潜像が形成される。現像装置4Yは、現像スリーブに担持したトナーを用いて静電潜像の現像を行い、静電潜像に対応したトナー像を、感光ドラム1Y表面に形成する。感光ドラム1Y上のトナー像は、感光ドラム1Yと中間転写ベルト10との1次転写ニップ部T1Yにおいて、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト10上に1次転写される。
1次転写後の感光ドラム1Y上の1次転写残トナーは、ブレード又はブラシ等が配置された感光ドラムクリーニング装置6Yにより除去、回収される。そして、1次転写残トナーが除去された感光ドラム1Yは、再び帯電ローラ2Yにより一様且つ均一に帯電されて繰り返し作像に使用される。中間転写ベルト10は、駆動ローラ11と、支持ローラ12と、バックアップローラ13と、に張架される。そして、中間転写ベルト10は、4個の画像形成ユニットY・M・C・Bkの感光ドラム1Y・1M・1C・1Bkに接触しながら、駆動ローラ11の矢印方向の回転により回転駆動される。
画像形成装置100にフルカラーモード(フルカラー画像形成)の画像形成ジョブ入力された場合は、以上のような作像動作が4個の画像形成ユニットY・M・C・Bkのそれぞれにおいて実行される。そして、感光ドラム1Y・1M・1C・1Bk上にそれぞれ形成されたイエロートナー像・マゼンタトナー像・シアントナー像・ブラックトナー像が中間転写ベルト10上に順次多重転写される。なお、色順は上記に限定されず画像形成装置により任意である。
中間転写ベルト10上に多重転写された4色のトナー像は、中間転写ベルト10を介してバックアップローラ13と2次転写ローラ14とが対向配置されている2次転写部T2に搬送される。そして、2次転写バイアスが印加された2次転写ローラ14によって、トナー像は2次転写部T2でシートPへ一括して2次転写される。シートPは、例えば用紙やOHPシートなどのシート材であり、複数の給送カセット40に種類に応じてそれぞれ収納されている。そして、シートPは、レジストローラ対41aを有する給送装置41によって複数の給送カセット40のいずれかから一枚ずつ分離されて取り出される。そして、シートPは、中間転写ベルト10上のトナー像と同期するように、レジストローラ対41aによって2次転写部T2に所定のタイミングで供給される。ここで、画像形成装置100は、例えば印刷条件(画像形成条件)に応じた種類のシートPを使用しているが、使用するシートPの選択はCPU400によって行っている。CPU400は画像形成装置100の各種制御を行う制御部である。本実施例では、実際に演算を行うCPUの他、各種制御の為のプログラム情報を記憶したROM等の周辺構成を含めてCPU400と呼ぶ。なお、制御部は単一のCPUを備える構成には限られず複数のCPUを備える構成であってもよい。
また、画像形成装置100は、印刷条件(画像形成条件)によらず、にユーザが選択した任意のシートを用いて画像形成を行ってもよい。
なお、印刷条件とは、シートPに形成する画像をカラー、モノクロのいずれにするかといった色数情報や、シートPの紙種などの、種々の情報に基づく設定条件である。
本実施例では、シート上に画像を形成する画像形成部を上述のように構成している。そして、このような画像形成部によりシート上に形成された画像(トナー像)、すなわち、2次転写部T2でシートに転写されたトナー像は、複数の定着装置に搬送され、シート上に定着される。本実施例では、まず、シートの搬送方向上流に設けられた第1の定着装置20に、トナー像が転写されたシートPが導入され、シートP上の未定着のトナー像が加圧・加熱されてシートP上に定着される。
2次転写後の中間転写ベルト10上の2次転写残トナーは、ブレード、ブラシ或いはウェブ(不織布)等が配置された中間転写クリーニング装置15により除去、回収される。そして、2次転写残トナーが除去された中間転写ベルト10は、繰り返し画像形成に使用される。
また、画像形成装置100は、シートPを第1の定着装置20のみを通過させる第1の搬送経路42と、シートPを第1の定着装置20及び第2の定着装置30を通過させる第2の搬送経路43と、を有する。したがって、トナー像が定着されたシートPは、第1の搬送経路42と、第2の搬送経路43と、のいずれかを通って搬送される。ここで、搬送経路決定部としてのCPU400は、シートPの種類に応じてシートPの搬送経路を第1の搬送経路42と第2の搬送経路43のいずれかに決定する。シートPの種類に基づき搬送路を変更する詳細な構成については、後述する。
シートPは、第2の搬送経路43を通る場合、搬送方向の最下流に設けられた第2の定着装置30へと搬送される。そして、シートPが第2の定着装置30で加熱・加圧されることで、シートPに定着していたトナー像が再溶融することで軟化してシートPに再定着される。シートPの片面に画像を形成する場合、シートPは、第1の搬送経路42又は第2の搬送経路43を通った後、排出トレイ44へと排出される。シートPの両面側に画像を形成する場合、画像形成装置100は片面にトナー像が定着されたシートPを反転路45によって反転させた後、両面搬送路46を介して再度、二次転写部T2に搬送する。その後、上述同様のプロセスによりシートPの裏面側にもトナー像が定着される。
[第1の定着装置]
図2は、本実施例の定着装置20の構成を断面で示す図である。図3は、実施例1の第2の定着装置30の構成を断面で示す図である。なお、図2及び図3では、後述するリフレッシュローラ23、33を省略して示している。画像形成装置100は、シートPの搬送方向に直列に2以上の複数の定着装置をそなえるタンデム定着方式を採用している。本実施例では、画像形成装置100は、第1の定着装置20と、後述する第2の定着装置30とを備えている。画像形成装置100では、離型剤を含有するトナーを用いており、第1の定着装置20及び第2の定着装置30は、いずれもオイルレス方式の定着装置である。
第1の定着装置20は、シートPのトナー像が形成された面に接触し、シートP上の画像を加熱する回転可能な加熱回転体(第1の加熱回転体)としての定着ローラ21を有する。また、第1の定着装置20は、定着ローラ21との間に定着ニップN1を形成する回転可能なニップ形成部材(加圧回転体、第1の加圧回転体)としての加圧ローラ22を有する。第1の定着装置20は、定着ローラ21を、その内部に設けられた第1の熱源としての加熱源21aで加熱している。そして、トナー像を担持したシートPをニップN1において挟持搬送することにより、シートPを加熱・加圧し、トナー像を溶融してシートPに定着させる。加熱源21aは、例えばハロゲンヒータであり、熱源制御部CPU400によって通電のON/OFF制御されている。例えばCPU400は、温度センサ21eによって検知された定着ローラ21の表面の温度に基づいて、定着ローラ21の表面温度が所定の温度となるように、加熱源21aを制御する。
本実施例において、加熱源21aは、定着ローラ21の表面がシートPにトナー像を定着させるための所定の温度(例えば150〜180℃程度)となるように定着ローラ21を加熱する。
シートPにトナー像を定着させるための温度は、シートPの種類等によって異なるため、CPU400は、図4のテーブルに基づいて加熱源21aを制御する。図4は、第1、第2の定着装置のシートごとの加熱温度を示すテーブルである。また、本実施例において、加熱源21aは、定着ローラ21内に設けられているが、これに限らず、例えば外部から定着ローラ21を加熱するように構成されていてもよい。また、本実施例において、加熱源21aは、ハロゲンヒータから構成されているが、これに限らず、例えば誘導加熱によって加熱する構成など、定着ローラ21を加熱できるものであればよい。
定着ローラ21は、基層としての金属製の中空の芯軸21b上に、ゴム層からなる弾性層21cを設け、更にその上に表層として離型層21dを被覆して形成される。芯軸21bは、例えば外径68mmの円筒形状に形成されたアルミニウム製の部材から構成され、内部に加熱源21aが配置される。弾性層21cは、例えばJIS−A硬度20度のシリコーンゴムを厚さ1.0mmで成形したものから構成されている。離型層21dは、例えば厚さ50μmに成形されたフッ素樹脂などの、離型性に優れ、かつ温度上昇によって軟化する材料から構成されており、弾性層21cを被覆している。なお、離型層21dは、フッ素樹脂として、例えばPFA樹脂(4フッ化エチレン樹脂、パーフロロアルコキシエチレン樹脂の共重合体)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)などが用いられる。本実施例では、離型層21dとしてPFA樹脂チューブを用いた。定着ローラ21の表層である離型層21dの厚さは、例えば30μm〜100μmに構成されていることが好ましい。ここで、離型層21dは、チューブ形状に限らず、例えば弾性層21cをコーティングすることによって弾性層21cを被覆してもよい。
定着ローラ21は、芯軸21bの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材(不図示)によって回転自在に支持されており、モータ21f(図5参照)によって図中矢印方向に回転駆動される。図5は、画像形成装置の制御ブロック図である。モータ21fによって駆動されることにより、定着ローラ21は、例えば100mm/secの表面移動速度で回転駆動される。なお、以下の記載において、各回転体の表面移動速度を、周速度とも記載する。
加圧ローラ22は、基層としての金属製の中空の芯軸22a上に、ゴム層からなる弾性層22bを設け、更にその上に表層として離型層22cを被覆して形成される。芯軸22aは、例えば外径48mmの円筒形状に形成されたアルミニウム製の部材から構成される。弾性層22bは、例えばJIS−A硬度20度のシリコーンゴムを厚さ2.0mmで成形したものから構成される。離型層22cは、例えば厚さ50μmに成形されたフッ素樹脂などの、離型性に優れた材料から構成されており、弾性層22bを被覆している。ここで、離型層22cは、その材料及び弾性層21cを被覆する構成について、定着ローラ21の離型層21dと同様に本実施例に係る構成に限定されるものではない。また、加圧ローラ22の内部にはハロゲンヒータなどの加熱源22dを配置されている。加熱源22d、温度センサ22eによって検知された加圧ローラ22の表面の温度に基づき熱源制御部としてのCPU400によってON/OFFを制御される。
加圧ローラ22は、芯軸22aの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材(不図示)によって回転自在に支持されている。また、加圧ローラ22の長手方向両端部の支持部材が付勢手段としての加圧バネ(不図示)によってそれぞれ付勢されることによって、加圧ローラ22は、定着ローラ21とシートPの搬送方向において所定幅のニップN1を形成する。また、加圧ローラ22は、このように定着ローラ21と当接することで定着ローラ21に従動して回転する。本実施例において、加圧ローラ22は、定着ローラ21に対して、例えば総圧400Nで加圧される。また、ニップN1の幅(シートの搬送方向長さ)は、後述する第2の定着装置30のニップN2の幅(シートの搬送方向長さ)よりも広く構成されている。これにより、画像形成装置100は、第1の定着装置20におけるシートPの搬送速度を向上することができ、短時間で画像を形成することができる。
[第2の定着装置]
図3は、本実施例に係る第2の定着装置30の断面構成を示す図である。なお、本実施例において、第2の定着装置30を構成する各部材のうち、第1の定着装置20を構成する各部材と同様の構成を有するものについては、同一の符号を付すことで、説明を省略する。
第2の定着装置30は、第1の定着装置20よりもシート搬送方向の下流側に配置されている。本実施例では、定着装置が2個であるため、第2の定着装置30が搬送方向最下流に設けられた定着装置となる。第2の定着装置30は、シートPのトナー像が形成された面に接触し、シートP上の画像を加熱する回転可能な加熱回転体(第2の加熱回転体)としての定着ローラ31を有する。また、第2の定着装置30は、定着ローラ31との間に加熱ニップN2を形成する回転可能なニップ形成部材(加圧回転体、第2の加圧回転体)としての加圧ローラ32を有する。第2の定着装置30は、定着ローラ31を、その内部に設けられた第2の熱源としての加熱源31aで加熱し、ニップN2においてトナー像を定着したシートPを挟持搬送することにより、シートPを加熱・加圧し、トナー像を再溶融してシートPに再定着させる。
加熱源31aは、例えばハロゲンヒータであり、熱源制御部CPU400によって通電のON/OFF制御されている。例えばCPU400は、温度センサ31eによって検知された定着ローラ21の表面の温度に基づいて、定着ローラ21の表面温度が所定の温度となるように、加熱源31aを制御する。
シートP上のトナー像に良好な光沢性を付与するための温度は、シートPの種類等によって異なる。そのため、CPU400は、図4のテーブルに基づいて加熱源31aを制御する。なお、坪量とは、1m2あたりのシートの重量(g/m2)である。また、加熱源31aは、加熱源21aと同様に、CPU400によって制御され且つ定着ローラ31を加熱できる構成であれば、その位置及び構成を特に限定されない。
定着ローラ31は、基層としての金属製の中空の芯軸21b上に、ゴム層からなる弾性層21cを設け、更にその上に表層として離型層31dを被覆して形成される。離型層31dは、例えば厚さ50μmに成形されたフッ素樹脂などの、離型性に優れ、かつ温度上昇によって軟化する材料から構成されており、弾性層21cを被覆している。なお、離型層31dは、フッ素樹脂として、例えばPFA樹脂(4フッ化エチレン樹脂、パーフロロアルコキシエチレン樹脂の共重合体)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)などが用いられる。本実施例では、離型層31dとしてPFA樹脂チューブを用いた。定着ローラ31の表層である離型層31dの厚さは、30μm〜100μmに構成されていることが好ましい。ここで、離型層31dは、チューブ形状に限らず、例えば弾性層21cをコーティングすることによって弾性層21cを被覆してもよい。
定着ローラ31は、芯軸21bの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材(不図示)によって回転自在に支持されており、モータ31f(図5参照)によって図中矢印方向に回転駆動される。モータ31fによって駆動されることにより、定着ローラ31は、例えば100mm/secの周速度で回転駆動される。
加圧ローラ32は、基層としての金属製の中空の芯軸22a上に、ゴム層からなる弾性層32bを設け、更にその上に表層としての離型層22cを被覆して形成される。弾性層32bは、例えばJIS−A硬度20度のシリコーンゴムを厚さ1.0mmで成形したものから構成される。また、加圧ローラ32の内部にもハロゲンヒータなどの加熱源32dを配置し、温度センサ32eによって検知された加圧ローラ32の表面の温度によって熱源制御部としてのCPU400に制御される。
加圧ローラ32は、芯軸22aの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材(不図示)によって回転自在に支持されている。また、加圧ローラ32の長手方向両端部の支持部材が付勢手段としての加圧バネ(不図示)によってそれぞれ付勢されることによって、加圧ローラ32は、定着ローラ31とシートPの搬送方向において所定幅のニップN2を形成する。本実施例において、加圧ローラ32は、定着ローラ31に対して、例えば総圧300Nで加圧される。
ここで、タンデム定着方式を採用する画像形成装置100は、シートの搬送方向の上流側の定着装置によってトナー像をシートに定着した後、搬送方向最下流の定着装置において再度定着を実行する。これにより、タンデム定着方式の画像形成装置は、トナー像のシートに対する定着性の向上や、画像表面の光沢性の向上を図っている。
また、2つ以上の定着装置を有する画像形成装置では、シートの搬送方向の最下流に設けられた定着装置と、それ以外の搬送方向上流側に設けられた定着装置と、では役割が異なる。具体的には、シートの搬送方向最下流に設けられた定着装置は、画像表面の光沢性を向上させるために設けられている。また、それ以外の搬送方向上流側に設けられた定着装置は、シートにトナー像を定着させるために設けられている。
そのため、第2の定着装置30においては、第1の定着装置20でシートPに定着したトナー像を再溶融し、再定着することにより適した圧力となるように、第1の定着装置20とは異なる圧力でニップN2を形成している。
本実施例において、シートPの搬送方向最下流に設けられた第2の定着装置30は、画像の光沢性を向上させるために、例えばニップ幅を第1の定着装置20のニップ幅よりも狭く構成している。これにより、第2の定着装置30は、シートPにかける線圧を高くすることができ、画像の光沢性を向上することができる。また、第2の定着装置20によってトナー像が再溶融、再定着されることにより、画像形成装置100は、シートPに形成される画像の表面の形状を平滑にし、均一な光沢性のある画像をシートPに形成することができる。
なお、本実施例において、画像形成装置100は、1つの第1の定着装置20と、1つの第2の定着装置30を備えているが、これに限らず、複数の第1の定着装置20を備えていてもよい。つまり、画像形成装置100は、シートPの搬送方向最下流に設けられた第2の定着装置30と、搬送方向上流側に設けられた第1の定着装置20と、の構成が異なっていればよく、第1の定着装置20の個数については、特に限定されない。
[制御部]
図5は、画像形成装置100の各種制御に関する構成のブロック図である。図5に示すように、CPU400は、第1の定着装置20と、第2の定着装置30と、のそれぞれに電気的に接続されている。CPU400によって制御されることにより、第1、第2の定着装置20、30は、シートPの搬送速度や、定着ローラ21、31の表面温度などが制御され、トナー像をシートPに定着及び再定着することができる。
また、CPU400は、給送カセット40と、操作部401と、とも電気的に接続されている。CPU400が印刷条件などに基づき複数設けられた給送カセット40からいずれか1つが選択することにより、画像形成装置100は、CPU400に選択された給送カセット40に格納されているシートPに、画像を形成することができる。また、操作部401は、ユーザーによる操作を受け付けるものであり、例えば液晶タッチパネルなどによって構成されている。なお、操作部401は、画像形成装置100に接続されるパーソナルコンピュータなどの外部端末であっても良い。
[定着ローラの各領域]
次に、定着ローラ21、31の長手方向における各領域について、図6(a)、(b)を用いて説明する。図6は、実施例1の第1の加熱回転体の構成を示す図(a)と、図(a)中の領域Aにおける第1の加熱回転体の表面粗さの変化を示すグラフ(b)である。なお、定着ローラ21、31の長手方向における各領域は、同様の構成であり、以下では、代表して定着ローラ21の構成を用いて説明する。また、以下の記載において、各定着ローラ21、31の表面とは、各定着ローラ21、31の表面に構成された離型層21d、31dを意味する。つまり、各定着ローラ21、31の表面粗さとは、離型層21d、31dの表面粗さと同義である。また、以下の記載において、各定着ローラ21、31がシートPを搬送するとは、各定着ローラ21、31がトナー像をシートPに定着することと同義である。
図6(a)に示すように、定着ローラ21の長手方向は、長手方向中央部でシートPと接触する通過部(通紙部)211と、長手方向外側でシートPと接触しない非通過部(非通紙部)212とを備える。そして、通過部211及び非通過部212の境界にはコバ部213が形成される。なお、ここで用いるシートPは、画像形成装置に使用可能な最大の幅サイズのシートPよりも幅狭なサイズのシートPであり、通過部(通紙部)211は最大の幅サイズのシートPがトナー像を担持し得る領域(最大サイズの画像が通過し得る領域)よりも狭い。ここで、定着ローラ21において最大サイズの画像が通過し得る領域は、定着ローラ21のうち未定着トナー像と接触し得る領域と換言できる。
なお、定着ローラ31においても定着ローラ21の同様の関係が言える。すなわち、定着ローラ31の長手方向は、長手方向中央部でシートPと接触する通過部(通紙部)311と、長手方向外側でシートPと接触しない非通過部(非通紙部)312と、通過部311及び非通過部312の境界のコバ部313と、で構成される。なお、ここで用いるシートPは、画像形成装置に使用可能な最大の幅サイズのシートPよりも幅狭なサイズのシートPであり、通過部(通紙部)311は最大の幅サイズのシートPがトナー像を担持し得る領域(最大サイズの画像が通過し得る領域)よりも狭い。ここで、定着ローラ31において最大サイズの画像が通過し得る領域は、定着ローラ31のうち定着トナー像と接触し得る領域と換言できる。
通過部211と、非通過部212と、コバ部213と、の表面粗さには、大量のシートPを挟持搬送した場合に、それぞれ異なる変化が生じる。なお、以下の記載において、各表面粗さは、(株)小坂研究所の表面粗さ測定器SE−3400を使用して十点平均粗さRzを測定している。測定条件としては、送り速さ:0.5mm/s、カットオフ:0.8mm、測定長さ:2.5mmを採用している。
通過部211における定着ローラ21の表面粗さは、シートPを挟持搬送した場合、シートPを構成する繊維や、シートPに塗布された添加剤などのシートPの表面状態が転写されることによって変更される。例えば定着ローラ21の表面粗さを、一般的な初期表面粗さであるRz0.1μm〜0.3μmの鏡面状態とした場合には、シートPによってRz0.5μm〜1.0μm程度まで徐々に変更される。ここで、以下の記載において、シートPの通過によって各定着ローラ21、31の表面粗さが変更されることを、シートPによるアタックとも記載する。
非通過部212における定着ローラ21の表面粗さは、加圧ローラ22の離型層22cと当接し、加圧ローラ22の離型層22cによって変更される。定着ローラ21の表面粗さは、加圧ローラ22と長時間にわたって当接することにより、例えばRz0.1μm〜0.3μmからRz0.4μm〜0.7μm程度に変更される。
コバ部213における定着ローラ21の表面粗さは、シートPの両端部に発生するバリによるアタックを受けることで変更される。ここで、バリとは、鋭利なカッターによって行なわれる紙の裁断時の裁断跡として生じるシートPの断面形状である。より詳しくは、後述する。コバ部213において、シートPのバリが定着ローラ21と加圧ローラ22とに挟み込まれると、定着ローラ21の表面に方向性のない微小な穴が生じる。同一サイズのシートPを連続して挟持搬送(通紙)することで、定着ローラ21の表面には、シートPのバリのアタックによる微小な穴が多数生じ、コバ部213において円周方向に沿った筋状の傷が生じる。この傷は、ミクロ的にみると方向性の無い傷となる。このとき、コバ部213における定着ローラ21の表面粗さは、図6(b)に示すように、例えばRz1.0μm〜1.2μmと、通過部211における表面粗さと、非通過部212における表面粗さと、比べて大きな表面粗さとなっている。ここで、コバ部213における傷は、シートPの種類によって発生の程度が異なり、紙裁断時に大きいバリが生じたシートPを搬送した場合に、一般的な厚紙やコート紙を搬送した場合と比べて、より顕著に発生する。
ここで、図7に示すように、ニップにかかる圧力は、シートPの厚みが300μmと比較的厚い場合に、通過部211にかかる圧力が非通過部212にかかる圧力よりも2倍程度大きくなる。図7は、実施例1のニップとシートとの間に生じる圧力のグラフである。通過部211にかかる圧力が非通過部212にかかる圧力よりも大きくなることにより、定着ローラ21の通過部211の表面粗さは、非通過部212の表面粗さよりも変更されやすくなる。このため、画像形成装置100は、比較的厚いシートPを500枚程度連続して挟持搬送すると、通過部211の表面粗さがシートPのアタックによってRz0.9μm程度になる。また、画像形成装置100は、非通過部212の表面粗さが加圧ローラ22のアタックによってRz0.5μm程度になる。
このように、画像形成装置100は、シートPの連続処理(連続通紙)によって、定着ローラ21の表面粗さが長手方向の各領域によって異なる状態となる。ここで、一般に、定着装置においては、未定着のトナー像を加熱及び加圧することでシートに定着する場合に、定着ローラの表面の形状が定着後のトナー像の表面に転写されることが知られている。したがって、定着ローラ上の表面状態が異なると、これに対応してトナー像上に表面状態の差が生じ、その結果、画像上の光沢ムラ(グロスムラ)が生じる。例えば上述のように定着ローラ21の長手方向の表面粗さが各領域によって大きく異なる状態になると、シートPに定着した画像に光沢ムラが生じてしまう。具体的には、定着ローラ21の長手方向に関する長さが異なるシートPを連続してニップN1を通過させた場合を考える。このとき、小サイズのシートPを連続して通過させることで、定着ローラ21の長手方向の表面粗さが各領域で異なってくる。そして、この状態で大サイズのシートPを通過させた場合、表面粗さが異なる部分を通過することで、画像に光沢ムラが生じてしまう。
ここで、例えばシートPを普通紙であるUPM Paper社製 UPM Fine300g/m2紙として説明する。この場合、用紙の裁断などが良好にできバリが少ない場合でも、連続して大量に処理することで、画像形成装置100は、定着ローラ21の長手方向の表面粗さが各領域で異なる状態となる。このとき、画像形成装置100は、シートPのバリが少ないことから、定着ローラ21のコバ部213の表面粗さが大きく変更されず、シートPのうちコバ部213に対応する位置に光沢ムラを生じない。しかしながら、上述した通り、画像形成装置100は、シートPを大量に処理することで、定着ローラ21の長手方向の各領域のうち、通過部211の表面粗さと、非通過部212の表面粗さとが初期表面粗さから変更され、それぞれ異なる表面粗さとなる。これにより、画像形成装置100は、シートPのうち通過部211に対応する位置と、非通過部212に対応する位置と、の間での光沢ムラが認識されてしまう画像をシートPに形成してしまう。
ここで、光沢性は、一般に、正反射光像の再現性が高い状態を高光沢、再現性が低い或いは無い状態を低光沢と認識される。例えば蛍光灯照明下で銀塩写真のような画像を見て、蛍光灯の光が反射するだけでなく、蛍光灯の形状まで写り込んでいる場合には、意識するかしないかによらず高光沢と認識している。このとき、写真画像の表面状態は、凹凸の少ない鏡面状態である。一方、低光沢の場合は、逆の状態である。つまり、画像の表面状態は、凹凸が大きく、蛍光灯の光は乱反射するため、蛍光灯の形状が画像上に写りこむことはない。このように、画像上の表面状態の凹凸と、光沢性と、には相関がある。
定着ローラ21の長手方向の各領域の表面粗さが異なることによって生じる画像上の光沢ムラは、例えば一般に使用される上質紙などでは、通常視認できないレベルである。一方、光沢ムラは、シートの表面の平滑性がよく、光沢性に優れたコート紙において特に顕著に生じる。例えば高画質を要求される高光沢のコート紙等に画像を定着するような場合には、定着ローラ21のコバ部213に対応する位置に低光沢の筋が付いたり、通過部211と非通過部212との間に光沢差、すなわち、画像上に光沢ムラが生じる。シートPに生じる光沢ムラにおいて、コバ部213の位置に生じる筋は、約1〜2mm程度であり、処理するシートPを現在処理している用紙よりも大きい用紙に変更した場合に顕著に表れる。一方、シートPに生じる光沢ムラにおいて、通過部211と非通過部212との間に生じる光沢ムラは、コバ部213の位置に生じる光沢ムラと比べて広範囲なため、光沢ムラが生じている印象を強く与える。
なお、以下の記載において、光沢性のことをグロスとも記載する。また、コバ部213と、通過部211及び非通過部212と、の間で生じるグロスムラを、コバ傷とも記載する。また、通過部211と、非通過部212と、の間で生じるグロスムラを、グロス段差とも記載する。
[シートのバリ]
次に、シートの幅方向の両端部に生じるバリについて説明する。図8に示すように、シートPの両端部には、紙を切断するときに発生する突起状のバリがある。図8は、シートの断面形状の拡大図である。ここで、一般に、シートのバリは、製紙過程での大判からの裁断工程で、裁断する刃が磨耗して切れ味が悪くなったときなどに発生し易い。また、シートのバリは、用紙の繊維の集まりであるため、紙厚の厚いシートにおいてより顕著に発生する傾向にある。また、シートがグロスコート紙やマットコート紙など、顔料で表面をコートした用紙である場合には、裁断工程で繊維が乱れにくく、バリが発生しにくい。
用紙の種類と、用紙の坪量と、用紙の厚さと、用紙の表面粗さと、バリの高さと、の関係について、図9、図10を用いて示す。図9は、シートの種類に応じた特性をまとめたテーブルである。図10は、シートの坪量とバリの高さとの関係を示すグラフである。
ここで、用紙の表面粗さは、一般的に物性値として計測可能な、ベック平滑度を測定している。また、バリの高さは、用紙の厚さよりも突出したバリの高さを意味する。
図9、図10に示すように、シートにおいては、坪量の大きく厚みのある用紙の方が、裁断時に強い力が加わるとともに、用紙を構成する繊維が多いために、バリの高さが大きくなりやすい。また、普通紙は、平均的なバリの高さが大きくなりやすく、200g/m2を超える用紙に関しては、15μm程のバリの高さのものも存在する。また、コート紙は、全般的にバリの高さが小さく、端部切断面の紙粉も少なかった。なお、ベック平滑度は、普通紙やマットコート紙が荒れている傾向にあり、グロスコート紙は平滑であった。
[定着ローラの表面粗さの範囲]
次に、本実施例における、定着ローラ21、31の表面粗さの最適な範囲について説明する。まず、図11ないし図14に沿って、本実施例における第1の定着装置20の定着ローラ21の表面粗さと、第2の定着装置30の定着ローラ31の表面粗さと、シートPに形成される画像の光沢性と、の関係について詳細に説明する。
図11は、搬送方向最下流に設けられた定着装置の定着ローラの表面粗さと、シートに形成された画像に入射角60°で入射した入射光の反射率に基づき画像の光沢度を表す60°グロス値と、の関係を示す図である。本実施例において、画像形成装置100のCPU400は、用紙の厚みや熱容量によって画像の定着や光沢度の向上に必要な熱量が異なることから、印刷条件として、シートの坪量が150g/m2(所定値)以下か否かによって搬送経路を変更する。具体的には、CPU400は、シートPの坪量が150g/m2以下である場合、第1の定着装置20のみを通過する第1の搬送経路42に搬送する。また、画像形成装置100は、シートPの坪量が150g/m2よりも大きい場合、第1の定着装置20及び第2の定着装置30を通過する第2の搬送経路43に搬送するように構成されている。ここで、CPU400は、各給送カセット40に格納されているシートの坪量を予め記憶しておくことで、シートPの坪量を取得している。このように、本実施例において、CPU400は、シートPの種類を取得する種類取得部を構成する。また、各給送カセット40に格納されているシートの種類は、ユーザが予め入力しておく。そして、CPU400が、メモリに予め記憶されているシートの種類と坪量との関係(テーブル)から、画像形成を行うシートの坪量を取得する。
上記構成により、坪量81g/m2の普通紙は、第1の定着装置20のみを通過している。また、坪量157g/m2のコート紙及び坪量209g/m2の普通紙は、第1の定着装置20と、第2の定着装置30と、を通過している。なお、図11においては、第1の定着装置20のみを通過する坪量81g/m2の普通紙の場合には、定着ローラ21の表面粗さと光沢度との関係を示している。一方、第2の定着装置30も通過する坪量157g/m2のコート紙及び坪量209g/m2の普通紙の場合には、第1の定着装置20の定着ローラ21の表面粗さをRz約1.0μmに固定し、定着ローラ31の表面粗さと光沢度との関係を示している。また、各普通紙及びコート紙は、それぞれA3ノビサイズのものが用いられており、ブラック単色の濃度約1.6(最大濃度)の画像が用紙全面(全面ベタ画像)に均一に形成されている。
ここで、一般に、画像が形成されたシートは、シート自身の光沢度である用紙光沢度よりも画像の光沢度が低くなった場合に、画像表面にトナー像の荒れ(光沢ムラ)が目視で分かりやすくなる。そのため、光沢性に優れた高画質の画像をシートに形成するためには、用紙光沢度よりも高い光沢度を有する画像を形成する。
[第1の定着装置の定着ローラの表面粗さの範囲]
図11に示すように、坪量81g/m2の普通紙の場合、シートPの60°グロス値は、定着ローラ21の表面粗さがRz1.5μmよりも大きくなると、用紙光沢度の約7よりも低いグロス値となる。つまり、定着ローラ21の表面粗さがRz1.5μmよりも大きくなると、画像の光沢度が普通紙の用紙光沢度よりも低くなり、画像部分が沈んだ印象となる。また、定着ローラ21の表面粗さがRz1.5μmよりも大きくなることで、画像表層の光沢ムラが目視で分かり易くなる。また、定着ローラの表面粗さがRz1.5μmよりも大きくなると、定着ローラ表面からのトナーの離型性が低下して、シートの画像の一部が定着ローラに転移するホットオフセットが生じ易くなる。したがって、第1の定着装置20の定着ローラ21の表面粗さは、Rz1.5μm以下とすることが好ましい。なお、定着ローラ21の表面粗さが1.5μm以下であっても、一点の傷が深い場合は画像の乱れが目立ってしまう。そのため、傷の深さの最大値は大きくても2.0μmであることが望ましい。
また、第1の定着装置20の定着ローラ21の表面粗さを、例えばRz0.1μm〜0.3μmにした場合には、図12に示すように、シートPのバリのアタックによってコバ部213の表面粗さがRz1.0μmを上回りやすい。図12は、画像形成装置において、画像を定着したシートの枚数と第1、第2の加熱回転体の表面粗さとの関係を示すグラフである。このような場合、画像形成装置100は、処理総数が1万枚未満と少量であっても、通過部211の表面粗さと、コバ部213の表面粗さと、に大きな差が生じやすく、コバ傷が表出し、十分な光沢性を得ることができなくなってしまう。以上より、本実施例では、図13に示すように、定着ローラ21(第1定着部)の表面粗さを、0.5μm以上1.5μm以下としている。図13は、加熱回転体の表面粗さの上限値及び下限値を示すグラフである。
[第2の定着装置の表面粗さの範囲]
図11に示すように、コート紙の場合、シートPの60°グロス値は、定着ローラ31の表面粗さがRz1.0μmよりも大きくなると、用紙光沢度の約38よりも低いグロス値となる。つまり、定着ローラの表面粗さがRz1.0μmよりも大きくなると、画像の光沢度がコート紙の用紙光沢度よりも低くなる。表面の光沢性が重視されやすく、また用紙光沢度が高いコート紙においては、このように画像の光沢度が用紙光沢度よりも低くなることは好ましくない。また、定着ローラの表面粗さがRz1.0μmよりも大きくなることで、表面性が平滑であるコート紙では、画像の凹凸が目立つようになり、グロスムラが発生していると認識され易い。したがって、第2の定着装置30の定着ローラ31の表面粗さは、Rz1.0μm以下とすることが好ましい。定着ローラ31の表面粗さが1.0μm以下であっても、一点の傷が深い場合は画像の乱れが目立ってしまう。そのため、傷の深さの最大値は大きくても1.5μmであることが望ましい。
また、第2の定着装置30の定着ローラ31においては、シートPが上流側の第1の定着装置20のニップN1で加圧されることでシートPのバリが潰され、高さが低くなり形状も鋭利な部分が減少する。このため、シートPのバリのアタックによる影響が定着ローラ21ほど顕著ではない。しかしながら、定着ローラ31の表面粗さも、定着ローラ21の表面粗さと同様に、Rz0.1μm〜0.2μmと表面粗さが小さすぎると、シートPのバリのアタックを受けコバ部213の表面粗さがRz1.0μmを上回りやすい。また、紙粉や金属粉などの微小な異物が第2の定着装置30のニップN2に混入した場合、表面粗さがRz0.5μm〜0.7μmの定着ローラ31であれば、表面の荒れに埋もれて画像には顕在化しない。しかしながら、表面粗さがRz0.1μm〜0.2μmの定着ローラ31の場合には、異物によって付けられた表面の傷が画像に表出してしまう。以上より、本実施例では、図13に示すように、定着ローラ31(第2定着部)の表面粗さを、0.2μm以上、1.0μm以下としている。図14は、上述した各定着ローラ21、31の表面粗さの特性に基づき、各定着ローラ21、31の表面粗さの上限と、下限とを設定するための要件をまとめた表である。
第1の定着装置20及び第2の定着装置30は、上述した通りそれぞれの役割が異なっている。したがって、第1の定着装置20及び第2の定着装置30の各定着ローラ21、31の表面粗さの適正値は、それぞれ異なっている。つまり、搬送方向上流側の定着ローラ21は、ホットオフセットなどのトナー像の定着性に影響を及ぼさず、かつ坪量の低い普通紙に画像を形成する場合に十分な光沢性を得ることができる範囲で、長手方向の表面粗さを均一にすることが好ましい。また、搬送方向最下流の定着ローラ31は、細かい擦摺キズが画像に出ることから、光沢性に優れた画像をシートPに形成するためにより平滑に近い表面粗さにすることが好ましい。
したがって、本実施例においては、第1の定着装置20の定着ローラ21の表面粗さを、第2の定着装置30の定着ローラ31の表面粗さよりも大きくする。図14に示したように、それぞれの条件で表面粗さRzの上下限が決定されるため、その範囲は上述の図13のようになる。なお、図13では、第1定着部、第2定着部それぞれのコバ部の荒れの範囲に応じて、表面粗さの範囲が示してある。ここで、未使用の新規の定着ローラの表面粗さはコバ傷のグロスムラのためには高い方が有利であるが、前述のように粗さの上限にはそれぞれ制限がある。第1の定着装置20の定着ローラ21の表層粗さは、第2の定着装置30の定着ローラ31の表面粗さよりも高い値をとることができる。このため、寿命の対策と画像グロスの最適化のために、定着ローラ21と定着ローラ31とで、初期のローラ表層に差を付けることが望ましい。また、同様に、定着ローラの表面粗さの下限値についても、定着ローラ21の表層の許容する表面粗さの最低値は、定着ローラ31の許容する表面粗さの最低値よりも高い値とする。
[効果の検証]
次に、上述したような定着ローラ21、31の表面粗さの関係を踏まえて、定着処理による表面のグロスムラ対策に対しての効果を検証する施行を行った。ここで、第1の定着装置20の定着ローラ21の初期表面粗さを、Rz1.4μmに設定し、第2の定着装置30の定着ローラ31の初期表面粗さを、Rz1.0μmに設定した。また、各定着ローラ21、31は、離型層21d、31dがフッ素チューブであり、製造直後の表面粗さがRz0.1μm〜0.3μmであるため、ラッピングフィルムなどの研磨部材によって加圧、摺擦して、各初期表面粗さに設定した。
すなわち、定着ローラ21の表面粗さは、シートPのバリのアタックの影響を抑えコバ傷の発生を防ぐためには表面粗さが高い方が有利であるが、トナー像の定着性に悪影響を与えない必要がある。また、定着ローラ21は、トナー像をシートPに定着でき、かつ坪量の小さい普通紙に画像を定着する場合に十分な光沢性を得ることができればよく、画像の光沢性を向上させる第2の定着装置30の定着ローラ31の表面粗さよりも大きくすることができる。そこで、定着ローラ21の表面粗さは、トナー像の定着性に影響をおよぼさず、かつ坪量の少ない普通紙に画像を形成する場合に、十分な光沢性を得ることができる範囲で、長手方向の粗さを均一にするために、初期表面粗さをRz1.4μmに設定した。また、定着ローラ31の表面粗さは、コート紙などのシートPに形成される画像の光沢性を向上させるために、より平滑に近い表面粗さに保つ必要があることから、初期表面粗さをRz1.0μmに設定した。
以上の初期表面粗さが各定着ローラ21、31に設定された第1、第2の定着装置20、30に、それぞれ坪量209g/m2でA4サイズの普通紙からなるシートPを、連続して挟持搬送させ各シートPに画像を定着させた。
定着ローラ21は、初期表面粗さをRz1.4μmに設定することで、シートPのバリのアタックによる影響を大きく受けることがない。このため、定着ローラ21において、コバ部213の表面粗さは、シートPのバリのアタックによって初期表面粗さRz1.4μmに近い値に維持される。一方、定着ローラ21において、通過部211の表面粗さは、シートPのアタックによって均されることで、徐々に表面粗さが小さくなる。しかしながら、シートPを5万枚挟持搬送するまでにおいて、シートPに形成された画像には、グロスムラが発生しなかった。なお、定着ローラ21において、通過部211の表面粗さは、最終的にRz0.5μm程度まで低下した。また、シートPが5万枚以上挟持搬送された段階において、定着ローラ21は、通過部211の表面粗さと、コバ部213の表面粗さと、の差が開き、コバ傷や用紙サイズの変更時におけるグロス段差といったグロスムラを視認できる状態となった。
定着ローラ31は、初期表面粗さがRz1.0μmであるが、シートPのバリは第1の定着装置20のニップN1で潰されるため、このバリのアタックによる影響を大きく受けることがない。このため、定着ローラ31において、コバ部213の表面粗さは、第1の定着装置20のニップN1で潰されたシートPのバリのアタックによって初期表面粗さRz1.0μmに近い値に維持される。一方、定着ローラ31において、通過部211の表面粗さは、シートPのアタックによって均されることで、徐々に表面粗さが小さくなる。しかし、定着ローラ21よりもコバ部213の表面が荒れないため、通過部211の表面粗さとの差は、それほど大きくはならなかった。また、通過部211の表面粗さと、非通過部212の表面粗さと、の差は、シートPを5万枚、挟持搬送した時点において、グロス段差が生じる差となっていた。
比較例1として、図12に示した施行を行った。これは、初期の第1の定着装置の定着ローラ(第1定着部)の表面粗さをRz0.3μm、第2の定着装置の定着ローラ(第2定着部)の表面粗さをRz1.4μmとして、処理を開始したものである。他の条件は上述の場合の施行と同等とした。第1定着部ついては、通過部とコバ部との粗さの差分が、約1万枚の時点で大きく広がり、前述の紙コバ傷として視認された。第2定着部については、コバ部と通過部の差は大きく広がらなかったが、定着ローラの用紙の通過域(通紙域)と非通過域(非通紙域)で表面粗さの差が生じた。そして、連続処理の施行の際に用いた用紙よりも幅の広い高光沢の用紙を通した際に、画像上のグロスが通過域の中央付近と非通過域の端部付近で画像上の光沢が異なることで、グロス段差として認識された。これは、通過部においては、表面粗さがRz0.6μmまで比較的早く均されるのに対し、非通過部においては、シートPの影響がなく加圧ローラのアタックによって均され、粗さの変化が緩やかなために生じたものである。なお、このグロス段差は、定着ローラ31の初期表面粗さを大きくするとより顕著に発生する。
図15に、比較例1の検証結果を上述の各定着ローラ21、31の初期表面粗さに差を持たせる構成の検証結果と簡易に比較したものを示す。比較例1の場合、各定着ローラ21、31の初期表面粗さに差を持たせた場合と比べて、用紙の紙バリキズ(コバ傷)の影響が顕著に見られた。
上述のように本実施例の場合には、第1の定着装置20の定着ローラ21の方が、第2の定着装置30の定着ローラ31よりも表面粗さが大きい。このため、定着ローラ21に対するシートPのバリによる摺擦などの影響を長期にわたって低減でき、装置の寿命を向上できる。また、シートPのバリによる摺擦の影響が小さい第2の定着装置30の定着ローラ31の表面粗さを定着ローラ21の表面粗さよりも小さくすることで、光沢性に優れた高画質の画像をシートPに形成することができる。
上述した構成においては、単位時間当たりの出力枚数が少ない、すなわち、プロセススピードが低ければ、各定着装置のニップにおける圧力を低く抑えてもニップでのシートへの熱量の供給を十分に行えるため、シートのバリのアタックによる影響を抑えられる。このため、各定着装置の定着ローラの初期表面粗さを上述のように設定することで、各定着装置を数万枚の画像形成に耐えうる寿命に向上させることができる。しかしながら、画像形成装置の生産性を高めるべく、単位時間当たりの出力枚数を多く、すなわち、プロセススピードを高くした場合、ニップでのシートに対する熱量の供給を十分に行うために、各定着装置のニップにおける圧力を高くする。このような場合、第1、第2の定着装置20、30の定着ローラ21、31は、シートPのバリのアタックやシートの通過による影響、加圧ローラ22、32との当接の影響などを強く受け、表面性状が初期の状態から変化しやすくなる。
したがって、本実施例では、各定着ローラ21、31の表面粗さを変更することができる構成とした。すなわち、各定着ローラ21、31の表面に形成されている離型層21d、31dを摺擦し、各定着ローラ21、31の表面粗さを変更する第1の摺擦部材(摺擦ローラ)及び第2の摺擦部材(摺擦ローラ)としてのリフレッシュローラ23、33を有する。そして、リフレッシュローラ23、33により各定着ローラ21、31の表面を摺擦することで、各定着ローラ21、31の表面粗さを所望の表面粗さに安定的に維持する。
[第1の定着装置と第1の摺擦部材]
図16は、本実施例における第1の定着装置20と、第1の摺擦部材としてのリフレッシュローラ23とを示す図である。図16に示すように、リフレッシュローラ23は、定着ローラ21の表面である離型層21dに接触できる位置に設けられており、後述する移動機構23fによって定着ローラ21に接触及び離隔する方向に移動可能に構成されている。ここで、リフレッシュローラ23は、定着ローラ21の表面のうち、少なくとも画像形成領域を所望の粗さに粗す。画像形成領域とは、定着ローラ21の表面のうちシートP上の未定着のトナー像と接触し得る領域を指す。つまり、画像形成領域は、画像形成装置100に使用可能な最大の幅サイズのシートPに形成可能な最大幅サイズのトナー像に対応している。なお、本実施例では、リフレッシュローラ23は、定着ローラ21の表面の全域を粗している。
本実施例において、第1の定着装置20の加圧ローラ22は、定着ローラ21に対して、例えば総圧800Nで加圧される。つまり、加圧ローラ22は、上述した第1の定着装置20がリフレッシュローラ23を備えない場合の加圧ローラ22よりも、定着ローラ21に対して強く加圧される。これにより、第1の定着装置20は、モータ21fによって定着ローラ21を、上述した周速度(100mm/sec)よりも速い、例えば220mm/secの周速度で回転駆動しても、シートPの担持するトナー像を十分に加熱・加圧することができる。
図17は、第1の摺擦部材を正面から見た図(a)と、図(a)のB−B断面を矢視した図(b)である。
図17(a)、(b)に示すように、リフレッシュローラ23は、回転可能な摺擦回転体によって構成されており、基層としての金属製の芯軸23a上に、中間層としての接着層23bを設け、更にその上に表層として摺擦層23cを設けることで形成される。芯軸23aは、例えば外径12mmの円筒形状に形成されたSUS304(ステンレススチール)製の部材から構成される。接着層23bは、摺擦層23cを構成する摺擦材を芯軸23aに接着できる接着剤から構成される。摺擦層23cは、摺擦材としての砥粒を密に接着することで形成される。ここで、摺擦層23cを構成する摺擦材としては、例えば酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化チタン、ジルコニア及びリチウムシリケートを用いることができる。また、摺擦層23cを構成する摺擦材としては、上記材料の他に、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化鉄、酸化クロム、酸化アンチモン、ダイヤモンド及び上記した各材料の混合物が挙げられる。
本実施例において、摺擦層23cを構成する摺擦材は、酸化アルミニウム、いわゆるアルミナ系(アランダム又はモランダム(登録商標)と称される)材料を主成分とするものを用いた。アルミナ系の砥粒は、一般に幅広く用いられる砥粒であり、定着ローラ21の離型層21dを構成するフッ素系樹脂に比べて十分硬度が高いとともに、鋭角形状のため切削性に優れている。また、摺擦層23cを構成する摺擦材の各粒径が、例えば5μm〜20μmの粒子によって構成されることにより、摺擦層23cの厚さは、例えば5μm〜20μmの厚さとなる。摺擦層23cを構成する摺擦材の各粒径が5μm〜20μmである場合、リフレッシュローラ23は定着ローラ21の表面を次のように粗す。すなわち、後述する摺擦条件に基づいて摺擦動作を実行し、定着ローラ21の表面粗さを、所望の表面粗さである0.5μm〜1.5μm(0.5μm以上1.5μm以下)に安定して維持する。なお、本実施例では、定着ローラ21の表面をリフレッシュローラ23が50m以上走行すると定着ローラ21の表面粗さが1.5μmに収束する構成となっている。このとき、リフレッシュローラ23は、定着ローラ21の表面を表面粗さ1.5μmに粗すための粗し部材として機能する。
リフレッシュローラ23は、芯軸23aの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材23dによって回転自在に支持され、第1の回転駆動手段としてのモータ23eによって回転駆動される。モータ23eは、定着ローラ21の周速度に対して第1の周速度差を有する第1の摺擦周速度でリフレッシュローラ23を回転駆動する。また、リフレッシュローラ23は、支持部材23dに設けられた第1の移動手段(接離部)としての移動機構23fによって、定着ローラ21に接触及び離隔する方向に移動される。移動機構23fは、詳しい図示は省略するが、カム機構とバネとを備え、カムを駆動することでリフレッシュローラ23を定着ローラ21に接触及び離隔する方向に移動させる。すなわち、移動機構23fは、第1の定着装置20がシートPを挟持搬送しない非定着時において、適宜のタイミングで、リフレッシュローラ23を定着ローラ21に接触させ、接触時に定着ローラ21に対して押し付ける。これにより、リフレッシュローラ23と定着ローラ21との間には、所定幅の摺擦ニップが形成される。一方、移動機構23fは、これ以外の時は、リフレッシュローラ23を定着ローラ21から離隔させる。リフレッシュローラ23が定着ローラ21の離型層21dを摺擦し、定着ローラ21の表面粗さを変更する摺擦動作については、後述する。
[第2の定着装置と第2の摺擦部材]
図18(a)は、第2の加熱回転体及び第2の摺擦部材を正面から見た図であり、図18(b)は図18(a)のC−C断面を矢視した図である。
ここで、本実施例において、第2の定着装置30及びリフレッシュローラ33を構成する各部材のうち、第1の定着装置20及びリフレッシュローラ23を構成する各部材と同様の構成を有するものについては、同一の符号を付すことで、説明を省略する。
ここで、リフレッシュローラ33は、定着ローラ31の表面のうち、少なくとも画像形成領域を所望の粗さに粗す。画像形成領域とは、定着ローラ31の表面のうちシートP上の定着済みのトナー像と接触し得る領域を指す。つまり、画像形成領域は、画像形成装置100に使用可能な最大の幅サイズのシートPに形成可能な最大幅サイズのトナー像に対応している。なお、本実施例では、リフレッシュローラ33は、定着ローラ31の表面の全域を粗している。
図18(a)、(b)に示すように、リフレッシュローラ33は、回転可能な摺擦回転体によって構成されており、基層としての金属製の芯軸23a上に、中間層としての接着層23bを設け、更にその上に表層として摺擦層33cを設けることで形成される。摺擦層33cは、摺擦材としての砥粒を密に接着することで形成される。ここで、摺擦層33cを構成する摺擦材としては、リフレッシュローラ23の摺擦層23cと同様の摺擦材を用いることができる。そのため、リフレッシュローラ33と定着ローラ31の接触面積は、リフレッシュローラ23と定着ローラ21の接触面積と同様である。したがって、リフレッシュローラ23とリフレッシュローラ33にかかる加圧力が同じ場合、リフレッシュローラ33と定着ローラ31の間の接触圧は、リフレッシュローラ23と定着ローラ21の間の接触圧と同様である。
本実施例において、摺擦層33cを構成する摺擦材の各粒径が例えば5μm〜20μmの粒子構成されることにより、摺擦層33cの厚さは、例えば5μm〜20μmの厚さとなる。摺擦層33cを構成する摺擦材の各粒径を5μm〜20μmであり場合、リフレッシュローラ33は、後述する摺擦条件に基づいて摺擦動作を実行することで定着ローラ31の表面を次のように荒らす。定着ローラ31の表面粗さを、所望の表面粗さである0.2μm〜1.0μm(0.2μm以上1.0μm以下)に安定して維持できる。なお、本実施例では、定着ローラ31の表面をリフレッシュローラ33が50m以上走行すると定着ローラ31の表面粗さが1.0μmに収束する構成となっている。このとき、リフレッシュローラ33は、定着ローラ31の表面を表面粗さ1.0μmに粗すための粗し部材として機能する。
なお、上述した通り、シートPに形成される画像の光沢性は、定着ローラ31の表面粗さによる影響が大きい。このため、画像形成装置100は、リフレッシュローラ33の摺擦条件とリフレッシュローラ23の摺擦条件を異ならせることで定着ローラ21と定着ローラ31の粗さを異ならせている。本実施例ではリフレッシュローラ33によって変更される定着ローラ31の表面粗さが定着ローラ21の表面粗さよりも小さくなるように構成している。
リフレッシュローラ33は、芯軸23aの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材23dによって回転自在に支持され、第2の回転駆動手段としてのモータ33eによって回転駆動される。モータ33eは、定着ローラ31の周速度に対して第2の周速度差を有する第2の摺擦周速度でリフレッシュローラ33を回転駆動する。また、リフレッシュローラ33は、支持部材23dに設けられた第2の移動手段(接離部)としての移動機構33fによって、定着ローラ31に接触及び離隔する方向に移動される。移動機構33fは、上述の移動機構23fと同様に構成され、第2の定着装置30の非定着時において、適宜のタイミングで、リフレッシュローラ33を定着ローラ31に接触させ、接触時に定着ローラ31に対して押し付ける。これにより、リフレッシュローラ33と定着ローラ31との間には、所定幅の摺擦ニップが形成される。一方、移動機構33fは、これ以外の時は、リフレッシュローラ33を定着ローラ31から離隔させる。リフレッシュローラ33が定着ローラ31の離型層31dを摺擦し、定着ローラ31の表面粗さを変更する摺擦動作については、後述する。
[制御部]
図19は、各定着装置20、30がそれぞれリフレッシュローラ23、33を備える場合において、画像形成装置100に設けられる制御部を示すブロック図である。図19に示すように、CPU400は、第1の定着装置20と、第2の定着装置30と、リフレッシュローラ23のモータ23e及び移動機構23fと、リフレッシュローラ33のモータ33e及び移動機構33fと、のそれぞれに電気的に接続されている。CPU400によって制御されることにより、モータ23e、33eは、それぞれリフレッシュローラ23、33を第1、第2の摺擦周速度で回転駆動することができる。また、CPU400によって制御されることにより、移動機構23f、33fは、それぞれリフレッシュローラ23、33を定着ローラ21、31に対して接触及び離隔する方向に移動することができる。
[リフレッシュローラによる摺擦動作]
本実施例において、画像形成装置100は、上述のようにシートPの通過により各定着ローラ21、31の表面粗さが変更されることによる画像上の傷やグロスムラなどを、リフレッシュローラ23、33を用いて解消する。なお、本実施例のリフレッシュローラ23、33は、粗し処理(摺擦動作)をする場合定着ローラ21、31に対してそれぞれ同様の動作を行う。しかしながら、加圧部としての移動機構23f、33fがリフレッシュローラ23、33を定着ローラ21、31に押し付ける力(リフレッシュ圧力)など、粗し処理中の摺擦条件については異なせてある。まず、リフレッシュローラ23の摺擦動作について説明する。
リフレッシュローラ23は、定着ローラ21の表面に接触し、第1の周速度で回転し、定着ローラ21の表面を摺擦することにより、定着ローラ21上の長手方向全域(通過部、非通過部及びコバ部)に細かい摺擦傷を付ける。ここで、リフレッシュローラ23によって付けられる細かい多数の摺擦傷は、第1の定着装置20においてシートPに形成される画像上において視認不可能な細かい摺擦傷である。リフレッシュローラ23によって細かい摺擦傷が付けられることにより、定着ローラ21は、長手方向において、表面に生じた凹凸の差が無くなる。このようなリフレッシュローラ23の摺擦動作によって、画像形成装置100は、定着ローラ21の表面粗さを所望の表面粗さに変更、つまり良化することができる。リフレッシュローラ23により定着ローラ21の表面が所望の表面粗さに変更されるため、第1の定着装置20を通過したシートPの画像上のコバ部213に対応する位置の低光沢の筋や、通過部211と非通過部212とのグロス段差を解消することができる。
上述した通り、表層にフッ素樹脂等の離型層21dを備えた定着ローラ21においては、製品出荷時の初期表面粗さがRz0.1μm〜0.3μm程度である。また、定着ローラ21の表面粗さは、シートPのバリのアタックなどによって、Rz0.5μm〜2.0μm程度に変化する。これに対して、本実施例において、リフレッシュローラ23は、定着ローラ21の表面粗さが0.5μm以上1.5μm以下となるような摺擦傷を、定着ローラ21の回転方向に沿って付ける。ここで、リフレッシュローラ23は、長手方向幅が10μm以下とされる摺擦傷を、定着ローラ21の長手方向100μmあたりに10本以上形成されるように摺擦傷を付ける。これにより、定着ローラ21の表面は、所望の表面粗さに修復される。
なお、リフレッシュローラ23による摺擦動作は、定着ローラ21の表面に細かい摺擦傷をつけることが目的であり、定着ローラ21の表面を削り取って新しい面を出すことが目的ではない。すなわち、リフレッシュローラ23による摺擦動作は、定着ローラ21を研磨するようなものではなく、定着ローラ21の表面に、いわゆる型押し程度の凹凸状態を付けることで、所望の表面粗さに変更するものである。したがって、リフレッシュローラ23による定着ローラ21の離型層21dは、多少は削られているものの、その削れ量については、定着ローラ21の寿命に渡っても測定不可能か、測定誤差程度でしかない。
画像形成装置100は、上述した通り、第1の定着装置20の非定着時の適宜のタイミングにリフレッシュローラ23による摺擦動作を実行する。なお、リフレッシュローラ23による摺擦動作を実行するタイミングは、非定着時に都度実行する必要はない。リフレッシュローラ23による摺擦動作を実行するタイミングは、例えば処理カウンタ24(図19参照)により第1の定着装置20を通過するシートPを計数し、処理枚数が所定の値となった場合に、非定着時に自動で摺擦動作を行うように構成しても良い。また、画像形成装置100は、ユーザーが画像上のグロスムラが気になり、操作部401からユーザーによる摺擦動作を実行させる入力を受け付けた場合に、リフレッシュローラ23による摺擦動作を実行するように構成してもよい。
より具体的に一例を示せば、画像形成装置100のCPU400は、例えばA3より幅の小さいサイズのシートPが処理されるときに、処理枚数をカウントし、処理枚数の累積値が第1の値を超えたときに、リフレッシュローラ23による摺擦動作を実行する。ここで、第1の値としては、例えば100枚〜1000枚の範囲内で設定することが好ましく、本一例においては500枚に設定する。リフレッシュローラ23による摺擦動作において、CPU400は、画像形成動作を一旦停止した状態で、リフレッシュローラ23の移動機構23fを作動させ、リフレッシュローラ23を定着ローラ21に接触させる。ここで、加圧ローラ22を定着ローラ21から離隔させる機構が設けられている場合、CPU400は、リフレッシュローラ23が定着ローラ21に接触したと同時に、加圧ローラ22を定着ローラ21から離隔させる。加圧ローラ22を定着ローラ21から離隔させた後に、CPU400は、定着ローラ21を所定の周速度、例えば画像形成時の周速度と同じ周速度で回転動作させる。次に、CPU400は、リフレッシュローラ23を、モータ23eによって、定着ローラ21の周速度に対して第1の周速度差を有する第1の摺擦周速度で、予め設定された第1の摺擦時間が経過するまで回転駆動させる。第1の摺擦時間が経過した後に、CPU400は、リフレッシュローラ23による摺擦動作を終了し、リフレッシュローラ23を定着ローラ21から離隔させ、再び画像形成動作を実行する。
なお、上述した通り、コバ傷は、シートPを現在処理している用紙よりも大きい用紙に変更した場合に顕在化しやすいことから、用紙サイズの変更時のみにリフレッシュローラ23による摺擦動作を実行するように画像形成装置100を構成してもよい。このように構成することにより、画像形成装置100は、定着ローラ21と、リフレッシュローラ23と、の寿命をより延ばすことができる。
次に、リフレッシュローラ33の摺擦動作について説明する。第1の定着装置20で仮にコバ傷が画像面のグロスムラとして生じたとしても、その後に第2の定着装置30を通過する用紙ならば、再度表面が溶解されるために、グロスの差が軽微になる。そのため、二つ以上の加熱されたニップを通過する条件では、シート上の定着画像は、最下流の第2の定着装置30の定着ローラ31の影響をより受ける。本実施例の場合も、上述の実施例1と同様に、CPU400は、シートPの坪量が150g/m2以下である場合、第1の定着装置20をのみを通過させる。また、定着性を確保するためと、画像の光沢を坪量の大きい紙でも出すために、坪量の大きい用紙は定着装置の温調温度を上げている。このため、光沢の高い用紙で第2の定着装置30の温度が高いときが一番リフレッシュ頻度を高くし、そうでないときには頻度を下げている。
[摺擦動作の実行タイミング]
図20は、本実施例におけるリフレッシュローラ23、33による各摺擦動作が実行されるタイミングについての詳細を示すフローチャートである。
ここで、画像形成装置100のCPU400は、処理カウンタ24、34(図19)から情報を取得する。処理カウンタ24は、第1の定着装置20をシートPが通過した場合に、通過した枚数分処理カウンタC1nを加算する。処理カウンタ34は、第2の定着装置30をシートPが通過した場合に、通過した枚数分処理カウンタC2nを加算する。また、処理カウンタ24、34は、紙長さが長いもの、例えば搬送方向長さが221mm以上のシートPが通過した場合には、2枚分処理したものとしてカウントする。なお、各カウンタに付してある「n」は、紙幅を表しており、C1n、C2nは、シートPの紙幅分だけ複数の値を持つ。例えば坪量157g/m2の普通紙A3サイズ297mmの幅の用紙は、C1(297)及びC2(297)の値を2ポイント換算する。また、例えば坪量64g/m2の普通紙LTRサイズ279mm幅の用紙で第2定着部を通過しない設定の場合はC1(279)のみを1ポイント加算することになる。
これらのC1n、C2nの値のいずれかがC1max、C2maxの値以上になると、リフレッシュ動作が実行されることにする。ここで、C1maxは、本実施例における第1の値を構成する。また、C2maxは、本実施例における第2の値である。
画像形成動作としてのプリントが開始されると、まず、CPU400は、通紙メディアの種類と坪量を取得する(ステップS1)。次に、ステップS1の処理において取得した情報と、図21に示す摺擦動作閾値テーブルに保存されている情報と、を参照し、CPU400は、C1max、C2maxを決定する(ステップS2)。図21は、画像形成装置におけるシートの種類と各摺擦動作の閾値との関係を示すテーブルである。
次に、CPU400は、処理カウンタC1nのすべてがC1max未満か否かを判定する(ステップS3)。ステップS3の処理において、少なくとも1つの処理カウンタC1nがC1max以上であると判定した場合には(NO)、CPU400は、リフレッシュローラ23による摺擦動作を実行する(ステップS4)。次に、CPU400は、処理カウンタC1nのすべてを0にする(ステップS5)。
ステップS5の処理を実行した後又はステップS3の処理において、処理カウンタC1nのすべてがC1max未満であると判定した場合には(YES)、CPU400は、処理カウンタC2nのすべてがC2max未満か否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の処理において、少なくとも1つの処理カウンタC2nがC2max以上であると判定した場合には(NO)、CPU400は、リフレッシュローラ33による摺擦動作を実行する(ステップS7)。次に、CPU400は、処理カウンタC2nのすべてを0にする(ステップS8)。
ステップS8の処理を実行した後又はステップS6の処理において、処理カウンタC2nのすべてがC2max未満であると判定した場合には(YES)、CPU400は、プリントを実行する(ステップS9)。次に、CPU400は、ステップS1の処理において取得した情報を参照し、第1、第2の定着装置20、30をシートPが通過するごとにシートPに対応する各処理カウンタC1n、C2nを加算する(ステップS10)。この処理において、CPU400は、処理カウンタ24、34を用いて、第1、第2の定着装置20、30を通過したシートPの数を計数する。次に、CPU400は、プリントが終了したか否かを判定する(ステップS11)。この処理において、プリントが終了していないと判定した場合には(NO)、CPU400は、ステップS1に処理を戻す。また、この処理において、プリントが終了したと判定した場合には(YES)、CPU400は、プリント処理を終了する。このように、CPU400は、本実施例における摺擦処理部を構成する。
[各リフレッシュローラの摺擦条件]
図22は、各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作を実行する際に、画像形成装置100のCPU400が設定する各摺擦条件と、摺擦動作によって変化した各定着ローラ21、31の表面粗さと、を示す図である。
図22の実施例1に示すように、本実施例に係る画像形成装置100は、第1の定着装置20のリフレッシュローラ23による摺擦動作の摺擦条件として、移動機構23fがリフレッシュローラ23のリフレッシュ圧力を8kgfに設定している。また、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23による摺擦動作の摺擦条件として、リフレッシュローラ23の摺擦層23cを構成する砥粒を、砥粒の粗さが中心粒径約7μmの#2000番手の砥粒に設定している。これらの摺擦条件でリフレッシュローラ23による摺擦動作を実行すると、定着ローラ21の表面の摺擦キズの深さの平均値(表面粗さRz)は1.5μmであった。
また、画像形成装置100は、第2の定着装置30のリフレッシュローラ33による摺擦動作の摺擦条件として、移動機構33fのリフレッシュ圧力を8kgfに設定している。また、画像形成装置100は、リフレッシュローラ33の摺擦動作を実行する頻度を、リフレッシュローラ23の摺擦動作を実行する頻度と同一、つまり各シートにおけるC1maxとC2maxの値をそれぞれ同じ値(例えば1000)にしている。また、画像形成装置100は、リフレッシュローラ33による摺擦動作の摺擦条件として、リフレッシュローラ33の摺擦層33cを構成する砥粒を、砥粒の粗さが中心粒径約4μmの#3000番手の砥粒に設定している。この場合、定着ローラ31の表面の摺擦キズの深さの平均値は、1.0μmであった。
すなわち、実施例1では、摺擦条件として各リフレッシュローラ23、33の表面粗さを変更することで、リフレッシュローラ33による摺擦動作が変更する定着ローラ31の表面粗さの大きさを、第1の定着装置20の場合よりも小さくした。
図22に示す比較例2は、第2の定着装置30のリフレッシュローラ33による摺擦動作の摺擦条件として、上述したリフレッシュローラ23による摺擦動作の摺擦条件と同様の条件を用いた場合である。この場合、定着ローラ31の表面の摺擦キズの深さの平均値は、1.5μmであった。
前述の図15に、このような条件で行った効果の検証結果を示す。比較例2では、高光沢の用紙でトナー像の濃度が高い部分に擦摺動作によって生じた傷がわずかに見られた。一方、本実施例の条件を満たす実施例1では、高光沢の用紙に画像を形成した場合に、擦摺動作によって生じた傷が転写されることが無く、コバ傷も解消したまま定着ローラ31の表面粗さを維持できた。
なお、図15、図22中の比較例1は、前述したように、リフレッシュ動作を行わなかった場合の状態であり、当然だが2000枚程度の処理でコバ傷が発生してしまった。また、図15中の比較例3とは、第1定着部、第2定着部共に、リフレッシュローラの定着ローラに対しての当接圧を4kgfとしたものである。この場合、第1定着部に対して処理が何度も繰り返されると、徐々にコバ部の荒れが進行し、5000枚程度の処理の後、普通紙でコバ傷が発生し、コート紙の厚紙の画像面にもわずかにコバ傷が残っていた。
[摺擦動作による定着ローラの表面の変化]
図23は、各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作を定期的に実行した場合の、各定着ローラ21、31の表面粗さを示す図である。ここでは、摺擦条件として摺擦層23c、33cを構成する砥粒番手をリフレッシュローラ23、33でそれぞれ異ならせている。
本実施例において、画像形成装置100は、坪量216g/m2でレターサイズの普通紙のシートPに画像を形成する。そして、画像形成装置100は、第1、第2の定着装置20、30がそれぞれ1000枚のシートPを挟持搬送する都度各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作を実行した。このときの普通紙のバリの高さは、約15μmと大きいものを選別して使用した。
図23に示すように、定着ローラ21(第1定着部)の表面粗さは、リフレッシュローラ23による摺擦動作が実行されることで、通過部211の表面粗さがRz1.0μm〜1.4μmの間で変化した。また、リフレッシュローラ23による摺擦動作が実行された定着ローラ21の表面粗さは、コバ部213の表面粗さがRz1.4μm〜1.5μmの間で変化した。また、定着ローラ31(第2定着部)の表面粗さは、リフレッシュローラ33による摺擦動作が実行されることにより、通過部211の表面粗さがRz0.7μm〜1.0μmの間で変化し、コバ部213の表面粗さがRz1.0μm〜1.5μmの間で変化した。
このように、各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作が各定着ローラ21、31の表面に実行されることにより、画像形成装置100は、各定着ローラ21、31の通過部211と、コバ部213と、の表面粗さに差が大きくなることを低減できる。このため、画像形成装置100は、各定着ローラ21、31の長手方向の表面粗さを略均一に保つことができ、シートPに形成される画像にグロスムラが発生することを防ぐことができる。
以上のように、本実施例において、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23の表面粗さがリフレッシュローラ33の表面粗さよりも大きい表面粗さを有している。このため、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23が摺擦動作によって変更する定着ローラ21の表面粗さの方が、リフレッシュローラ33が摺擦動作によって変更する定着ローラ31の表面粗さよりも大きくなっている。これにより、画像形成装置100は、各リフレッシュローラ23、33の摺擦動作により定着ローラ21の表面粗さを定着ローラ31の表面粗さよりも大きい状態に維持し、各定着ローラ21、31に求められる所望の表面粗さを安定的に維持することができる。また、画像形成装置100は、定着ローラ21の長手方向の各領域でシートPのアタックによって表面粗さに差が生じることを、リフレッシュローラ23による摺擦動作によって防ぐことができる。このため、第1の定着装置20の寿命が向上し、ひいては画像形成装置100の寿命を向上できる。また、画像形成装置100は、定着ローラ31の表面粗さを定着ローラ21の表面粗さよりも小さい状態に維持する。これにより、画像形成装置100は、第1の定着装置20によって定着したトナー像を定着ローラ31の表面粗さが小さい第2の定着装置30によって再溶融しシートPに定着することで、光沢性に優れた高画質の画像をシートPに形成することができる。
なお、本実施例において、画像形成装置100は、各定着ローラ21、31の初期表面粗さが異なる構成となっているが、これに限定されない。画像形成装置100は、例えば各定着ローラ21、31の初期表面粗さを同一にし、各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作によって定着ローラ21の表面粗さと、定着ローラ31の表面粗さと、に差が生じる構成であってもよい。
<実施例2>
実施例2について、図1乃至図23を参照しつつ、図24を用いて説明する。図24は、実施例2の画像形成装置におけるシートの種類と各シートに対応する定着温度及び摺擦動作閾値との関係を示すテーブルである。
上述の実施例1では、第1の定着装置20のリフレッシュローラ23の表面粗さを、第2の定着装置30のリフレッシュローラ33の表面粗さよりも大きく構成している。このように構成することで、画像形成装置100は、第1の定着装置20の定着ローラ21の表面粗さを、第2の定着装置30の定着ローラ31の表面粗さよりも大きい状態で維持することができる。しかしながら、このように構成した場合、それぞれ表面粗さが異なるリフレッシュローラ23、33を用意しなければならず、製作コストが増加してしまう。
したがって、本実施例では、各リフレッシュローラ23、33の摺擦条件として、同一の表面粗さで、かつ摺擦動作を実行する頻度を異ならせる構成とすることで、各定着ローラ21、31の表面粗さに差を持たせた状態を維持する。また、図22の実施例2に示すように、各リフレッシュローラ23、33の摺擦動作を実行する頻度以外の摺擦条件、例えばリフレッシュ圧力及び摺擦層の砥粒番手は、同一に構成されている。
図24に示すように、本実施例において、CPU400は、いずれのシートPを各定着装置で処理する場合においても、第2の値としてのC2maxの値が、第1の値としてのC1maxよりも高い値になるように、摺擦動作閾値テーブルに設定している。つまり、第1の定着装置20は所定数のシートが通過した場合に粗し処理が行われ、第2の定着装置30は所定数のシートよりも多いシートが通過した場合に粗し処理が行われる。C1maxの値がC2maxの値よりも低い値に設定されることで、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23の摺擦動作を、リフレッシュローラ33の摺擦動作よりも頻繁に実行するように構成される。
C1maxの値がC2maxの値の半分に設定されているため、CPU400は、上述した図20に示す各処理を実行し、リフレッシュローラ23による摺擦動作を、リフレッシュローラ33による摺擦動作のほぼ倍程度の頻度で実行する。上述した通り、本実施例におけるリフレッシュローラ23、33のリフレッシュ圧力及び表面粗さは、それぞれ4kgf及び#2000と同一であることから、単位時間当たりの定着ローラ21、31の表層を荒らす能力は同等である。そのため、リフレッシュローラ23による摺擦動作が実行される頻度の高い定着ローラ21の方が、定着ローラ31よりも表層がより荒らされることになる。なお、上述した通り、定着ローラ31は、仮に定着ローラ21と同等の従来の頻度でリフレッシュローラ33による摺擦動作が実行されると、前述のようにリフレッシュローラ33による摺擦キズの発生が問題となる。しかしながら、本実施例においては、リフレッシュローラ33による摺擦動作の頻度を、リフレッシュローラ23による摺擦動作の頻度よりも低くしている。このため、リフレッシュローラ33による摺擦動作が実行され、再度実行されるまでの間に、多くの用紙が処理され、かつ定着ローラ31が加圧ローラ32とより多く摺擦されることで、リフレッシュローラ33の摺擦動作により発生する摺擦スジの深さが鈍る。したがって、摺擦スジが重なって画像に認識できるレベルに成長することがなく、定着ローラ31の表面粗さを所望の状態を保つことができる。
各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作の頻度に差を持たせてシートPへ画像の形成を実施した場合の結果を、前述した図15の実施例2に示す。図15に示すように、本実施例の試行においても、実施例1(実施例1)と同様に、画質を満足しつつ、コバ傷や摺擦キズを解消することができる。
以上のように、本実施例において、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23による摺擦動作の実行頻度が、リフレッシュローラ33による摺擦動作の実行頻度よりも高く構成されている。このため、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23が摺擦動作によって変更する定着ローラ21の表面粗さの方が、リフレッシュローラ33が摺擦動作によって変更する定着ローラ31の表面粗さよりも大きくなっている。これにより、画像形成装置100は、各リフレッシュローラ23、33の摺擦動作により定着ローラ21の表面粗さを定着ローラ31の表面粗さよりも大きい状態に維持し、各定着ローラ21、31に求められる所望の表面粗さを安定的に維持することができる。また、画像形成装置100は、定着ローラ21の長手方向の各領域でシートPのアタックによって表面粗さに差が生じることを、リフレッシュローラ23による摺擦動作によって防ぐことができる。このため、第1の定着装置20の寿命が向上し、ひいては画像形成装置100の寿命を向上できる。また、画像形成装置100は、定着ローラ31の表面粗さを定着ローラ21の表面粗さよりも小さい状態に維持する。これにより、画像形成装置100は、第1の定着装置20によって定着したトナー像を定着ローラ31の表面粗さが小さい第2の定着装置30によって再溶融しシートPに定着することで、光沢性に優れた高画質の画像をシートPに形成することができる。また、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23、33の表面粗さを同一にすることで、リフレッシュローラ23、33を共通化することができ、製作コストを低減させることができる。しかしながら、複雑な制御を要しない点において実施例1の構成が好ましい。
<他の実施例>
上述の実施例1において、画像形成装置100は、摺擦条件として、リフレッシュローラ23の表面粗さをリフレッシュローラ33の表面粗さよりも大きくしている。また、上述の実施例2において、画像形成装置100は、摺擦条件として、リフレッシュローラ23による摺擦動作の頻度をリフレッシュローラ33による摺擦動作の頻度よりも高くしている。これらの構成により、第1、実施例2においては、各リフレッシュローラ23、33が変更する各定着ローラ21、31の表面粗さを異ならせている。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。画像形成装置100は、リフレッシュローラ23が摺擦動作によって変更する定着ローラ21の表面粗さと、リフレッシュローラ33が摺擦動作によって変更する定着ローラ31の表面粗さと、が異なるように摺擦条件が設定されていればよい。
例えば図22の実施例3に示すように、リフレッシュローラを定着ローラに対して押し付ける力(リフレッシュ圧力、総圧力)を異ならせても良い。すなわち、リフレッシュローラ23のリフレッシュ圧力を、リフレッシュローラ33のリフレッシュ圧力よりも大きくする。具体的には、リフレッシュローラ23による摺擦動作の摺擦条件として、リフレッシュローラ23のリフレッシュ圧力を8kgfに設定し、リフレッシュローラ33のリフレッシュ圧力を4kgfに設定する。また、実施例3では、リフレッシュローラ23、33の摺擦層23c、33cを構成する砥粒を、ともに#2000番手の砥粒に設定している。また、リフレッシュローラ23と定着ローラ21の接触面積は、リフレッシュローラ33と定着ローラ31の接触面積は同様である。したがって、リフレッシュローラ23と定着ローラ21の間で生じる単位面積当たりの力(接触圧、圧力)は、リフレッシュローラ33と定着ローラ31の間で生じる単位面積当たりの力(接触圧、圧力)よりも大きい。実施例3の摺擦条件でリフレッシュローラ23による摺擦動作を実行すると、定着ローラ21の表面の摺擦キズの深さの平均値は、1.5μmであった。なお、実施例3の画像形成装置100は、定着ローラ21の表面をリフレッシュローラ23が50m以上走行すると定着ローラ21の表面粗さが1.5μmに収束する構成となっている。このとき、リフレッシュローラ23は、定着ローラ21の表面を表面粗さ1.5μmに粗すための粗し部材として機能する。
また、実施例3の摺擦条件でリフレッシュローラ33による摺擦動作を実行すると、定着ローラ31の表面の摺擦キズの深さの平均値は、1.0μmであった。なお、実施例3の画像形成装置100は、定着ローラ31の表面をリフレッシュローラ33が50m以上走行すると定着ローラ31の表面粗さが1.0μmに収束する構成となっている。このとき、リフレッシュローラ33は、定着ローラ31の表面を表面粗さ1.0μmに粗すための粗し部材として機能する。
このように設定することにより、実施例1、実施例2と同様に、リフレッシュローラ33による摺擦動作が変更する定着ローラ31の表面粗さの大きさを小さくできる。図15の実施例3に示すように、実施例3の構成でも擦摺キズの発生は無く、コバ傷も解消したままで、定着ローラ表面の状態を維持することができた。
実施例3は、複雑な制御を要しない点において実施例2よりも好ましい。
実施例3は、リフレッシュロー23と33に共通のものを利用できる点において実施例1よりも好ましい。
図15の比較例4は、♯800番手(中心粒径約14μm)のリフレッシュローラを作成し、定着ローラに対して従動させてコバ傷を解消したものである。この場合、コバ傷が目視できない程度の時間をかけても、定着ローラ表層が必要以上に荒れてしまい、画像上の光沢が大きく低下してしまった。また、リフレッシュ時間が長くかかり、ダウンタイムが多くなってしまった。
また、画像形成装置100は、摺擦条件として、各リフレッシュ時における摺擦時間を異ならせても良い。例えば第2の摺擦時間を第1の摺擦時間よりも短い時間にCPU400に設定させてもよい。この構成により、画像形成装置100は、リフレッシュローラ23の1回の摺擦動作において変更される定着ローラ21の表面粗さが、リフレッシュローラ33の1回の摺擦動作において変更される定着ローラ31の表面粗さよりも大きくなる。ここで、CPU400は、時間設定部として機能する。
また、画像形成装置100は、摺擦条件として、例えば各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作の実行時における各定着ローラ21、31の温度を異ならせてもよい。上述した通り、各定着ローラ21、31の離型層21d、31dは、温度上昇によって軟化するフッ素樹脂から構成されている。そこで、CPU400は、各リフレッシュローラ23、33の摺擦動作時において、温度センサ31eが検出する第2の温度よりも、温度センサ21eが検出する第1の温度の方が高くなるように、各加熱源21a、31aを制御する。このように構成すると、画像形成装置100は、他の摺擦条件が同一であったとしても、定着ローラ21の表面の硬さと、定着ローラ31の表面の硬さと、に差が生じる。したがって、画像形成装置100は、他の摺擦条件が同一の各リフレッシュローラ23、33による摺擦動作によって変更される各定着ローラ21、31の表面粗さに差が生じる。
また、画像形成装置100は、上述した各摺擦条件を複数組み合わせて、各リフレッシュローラ23、33が変更する各定着ローラ21、31の表面粗さを変更してもよい。
また、実施例1において、各リフレッシュローラ23、33は、それぞれ専用のモータ23e、33eによって駆動されるようにしたが、これに限定されない。各リフレッシュローラ23、33は、例えば各定着ローラ21、31を回転させるモータ21f、31fの駆動軸にギアによって連結されることで、モータ21f、31fの動力によって回転駆動するように構成されていてもよい。この場合、各リフレッシュローラ23、33は、例えば各定着ローラ21、31と各リフレッシュローラ23、33と、をギア比1対2で連結されることで、各定着ローラ21、31の周速度の2倍の周速度で回転駆動される。
また、上述した実施例では、各リフレッシュローラ23、33は、それぞれ摺擦回転体によって構成されているが、これに限らず、例えば各定着ローラ21、31に摺擦材が塗布された固定面で接触するように構成されていてもよい。
また、上述した実施例では、各リフレッシュローラ23、33を接離する接離部としての移動機構23f、33fが記載されているが。画像形成装置100は、必ずしも移動機構23f、33fを有さなくてもよい。例えば、定着ローラ21の表面を所定の粗さに維持するように、定着ローラ21に対してリフレッシュローラ23を当接させ続けてもよい。定着ローラ31の表面を所定の粗さに維持するように、定着ローラ31に対してリフレッシュローラ33を当接させ続けてもよい。しかしながら、定着ローラ21、31の摩耗を抑制し、定着ローラ21、31を高寿命化できる点において、実施例1の構成がのぞましい。
また、上述した実施例では、加熱回転体及び加圧回転体として定着ローラ及び加圧ローラを例に挙げたが、加熱回転体及び加熱回転体は、複数のローラにベルトが懸架されたベルトユニットであってもよい。
以上の例より、第1定着部と第2定着部とで摺擦条件(リフレッシュ条件)を異ならせることで、良好な定着ローラ表面を維持できることが確認できた。これらの諸条件は、定着部材とその表面性状を変更する部材(摺擦部材)があれば適用可能である。摺擦部材は、画像性との両立のために、仕様の微調が必要だが、その荒らしの能力は第1定着部>第2定着部となる関係が好ましい。