(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
図1は、本発明者らが検討している無線電力伝送システムの一例を模式的に示す図である。図1は、無線電力伝送システムを、工場などで使用されるロボットアームに適用した例を示している。この無線電力伝送システムは、送電装置100と、受電装置300と、複数の中継装置200と、複数の負荷駆動装置400と、送電および負荷の駆動を制御する電力コントロール装置500(電力コントローラ)とを備える。この例における受電装置300は、ロボットアームの先端に接続されたハンドである。
送電装置100と受電装置300との間には複数の中継装置200が設けられている。複数の中継装置200および受電装置300のそれぞれには、負荷駆動装置400が接続されている。各負荷駆動装置400は、モータなどの負荷と、負荷を駆動するインバータ回路などを含む。各負荷駆動装置400は、アームの可動部(例えば関節)に設けられており、モータを駆動することによって可動部を動かすことができる。
図2Aは、図1に示す状態から姿勢を変化させたロボットアームの例を示している。図2Bは、図2Aに示す状態からさらに姿勢を変化させ、アームの先端部のハンドによって物品を把持している状況を示している。これらの図に示されるように、ロボットアームは、複数の負荷駆動装置400によってそれぞれの関節を動かし、物品の運搬などの作業を行うことができる。
送電装置100、複数の中継装置200、および受電装置300の間では、送電アンテナおよび受電アンテナを介した無線電力伝送が行われる。送電装置100は、送電コイルを含む送電アンテナを有する。受電装置300は、受電コイルを含む受電アンテナを有する。各中継装置200は、受電アンテナおよび送電アンテナの両方を有する。送電装置100から、直列に連結された複数の中継装置200および受電装置300に順次電力が無線で伝送される。複数の中継装置200および受電装置300の各々は、無線で伝送された電力を、各々に接続された負荷駆動装置400に供給する。これにより、各負荷駆動装置400におけるモータ等の負荷が駆動される。
この例のようにロボットアームに無線電力伝送システムを適用することにより、送電装置100、複数の中継装置200、および受電装置300の間で電力を伝送するケーブルを排除することができる。従来のケーブルを用いたロボットアームでは、ケーブルの引っ掛かりによる事故が発生するおそれがあり、ケーブルによってアームおよびハンドの可動域が制限されるという課題があった。さらに、部品の交換時にケーブルが邪魔になり、作業効率を損ねるという懸念があった。図1に示す例のように無線電力伝送を適用することにより、ケーブルの引っ掛かりによる事故を防ぎ、アームおよびハンドの可動域を広くし、部品交換時の作業性を向上させることができる。
図3は、無線電力伝送システムの本開示の実施形態に対する比較例の概略構成の一例を示す図である。ここでは、簡単のため、中継装置200を有しない無線電力伝送システムの例を説明する。
送電装置100は、送電コイルを有する送電アンテナ140と、送電回路基板とを備えている。送電回路基板は、電力コントロール装置500が有する直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換して送電アンテナ140に供給するインバータ回路等を含む。
受電装置300は、受電コイルを有する受電アンテナ310と、受電回路基板とを備えている。受電アンテナ310は、送電アンテナ140と電磁的に結合して電力を非接触で受け取る。受電回路基板は、受電アンテナ310が受け取った交流電力を直流電力に整流して負荷駆動装置400に与える整流回路(整流器)等を含む。
負荷駆動装置400は、モータ等の負荷410と、負荷410の動作を制御するインバータ回路基板とを備えている。インバータ回路基板は、負荷410を駆動するインバータ回路および制御回路等を含む。
送電アンテナ140と受電アンテナ310とが対向した状態で、送電アンテナ140から受電アンテナ310に、非接触で電力が伝送される。負荷駆動装置400は、受電装置300から電力を受け取り、モータなどの負荷410を駆動する。これにより、被回転物(例えば関節部)を回転させることができる。
電力コントロール装置500は、送電装置100に直流電力を供給するとともに、負荷駆動装置400における負荷410の動作を制御する。電力コントロール装置500は、例えばユーザからの指示または既定のプログラムに従って、負荷410に動作開始指令を出し、動作状態(例えばモータの回転速度等)を変化させる指令を出す。図3には1つの負荷410しか示されていないが、複数の負荷が存在する場合には、それらの負荷の各々の動作状態を電力コントロール装置500が制御する。
負荷410の動作状態を変化させる際、電力コントロール装置500は、負荷410を駆動するための負荷指令値(例えばモータの回転速度等)を決定し、決定した負荷指令値を示す信号を負荷駆動装置400に送信する。電力コントロール装置500は、ユーザからの指示または既定のプログラムに従って負荷指令値を更新したときは、その都度、更新後の負荷指令値を負荷駆動装置400に送信する。負荷指令値は、例えばモータの回転速度、または位置、周波数、電圧値、もしくは電流値などの、負荷の動作状態を決定する任意のパラメータである。
負荷駆動装置400は、電力コントロール装置500から更新された負荷指令値が送られると、その値に基づいて負荷410の動作状態を変化させる。例えば、負荷410が三相交流で駆動されるモータである場合、当該モータを駆動する三相インバータ回路に供給する制御信号(パルス信号)の供給タイミング等を変更して所望の動作状態にする。負荷駆動装置400は、動作状態を変更した後、負荷410に流れる電流等を検出し、その情報を応答信号に含めて電力コントロール装置500に送信する。
図4は、上記の比較例の構成をより詳細に示すブロック図である。送電装置100は、送電アンテナ140と、送電側インバータ回路130と、パルス出力回路160と、送電制御回路150と、送電側受信器190とを備えている。送電側インバータ回路130は、電力コントロール装置500における直流電源510から出力される第1の直流(DC)電力を受けて第1の交流(AC)電力に変換して送電アンテナ140に供給する。パルス出力回路160は、インバータ回路130における複数のスイッチング素子に供給するパルス信号を出力する。送電制御回路150は、パルス出力回路160から出力されるパルス信号の出力タイミングを制御することにより、送電側インバータ回路130から出力される第1の交流電力の電圧の振幅等を制御する。
受電装置300は、受電アンテナ310と、受電アンテナ310に接続された整流器320と、電圧検出器330と、受電側送信器380とを備える。整流器320は、受電アンテナが受け取った第1の交流電力を第2の直流電力に変換して負荷駆動装置400に出力する。電圧検出器330は、整流器320から出力された第2の直流電力の電圧値を検出する。受電側送信器380は、電圧検出器330によって検出された電圧値を示す信号を送電側受信器190に送信する。この信号は、負荷駆動装置400に供給される第2の直流電力の電圧値(以下、「負荷電圧」と称することがある。)を一定に維持するフィードバック制御に用いられる。負荷電圧の検出および送信は、例えば数ミリ秒(msec)の間隔で定期的に行われる。
送電制御回路150は、送電側受信器190を介して負荷電圧の情報を取得すると、負荷電圧の変動を抑えるようにインバータ回路130を制御する。具体的には、送電制御回路150は、負荷電圧の変化を検出すると、インバータ回路130の各スイッチング素子に供給するパルス信号の周波数またはデューティ比などの制御パラメータを変更して、インバータ回路130から出力される第1の交流電力の電圧変動を抑制する。この動作を、例えば数ミリ秒ごとに複数回実行することにより、負荷駆動装置400にほぼ一定の電圧を供給する。
電力コントロール装置500は、直流電源510と、主制御回路550と、通信器580とを備えている。主制御回路550は、負荷駆動装置400による動作負荷を変更する毎に負荷駆動装置400の負荷指令値を更新する。通信器580は、更新された負荷指令値を示す信号を負荷駆動装置400に送信する。
負荷駆動装置400は、負荷側インバータ回路430と、パルス出力回路460と、負荷制御回路450と、負荷検出器470と、負荷側受信器490とを備えている。負荷側インバータ回路430は、整流器320から出力された第2の直流電力を第2の交流電力に変換して負荷410に供給する。パルス出力回路460は、負荷側インバータ回路430における複数のスイッチング素子に供給するパルス信号を出力する。負荷制御回路450は、パルス出力回路460から出力されるパルス信号を調整することにより、インバータ回路430を制御する。負荷検出器470は、負荷410に含まれるモータの回転速度または負荷410に流れる電流等を検出する。負荷側受信器490は、電力コントロール装置500における通信器580から負荷指令値を受信し、応答信号を送信する。
負荷制御回路450は、電力コントロール装置500から送られてきた負荷指令値、および負荷検出器470によって検出された現在の負荷指令値に基づいて、パルス出力回路460から出力されるパルス信号のタイミングを調整する。これにより、負荷指令値に基づく所望の動作状態を実現する。
本発明者らは、上記の比較例の構成では、負荷410の動作状態(例えば、モータの回転速度等)を急に変化させようとした場合に、所望の動作状態に達するまでに長い時間を要することを見出した。以下、この課題を説明する。
図5は、上記の比較例において、負荷指令値が変更されたときの第2のDC電力の電圧(負荷電圧)の時間変化の一例を示す図である。ここでは、一例として、負荷指令値であるモータの回転速度が800rpmから1000rpmに変更される場合の例を説明する。負荷指令値の変更前には、負荷電圧が12Vであり、変更後もこの電圧値12Vを維持する必要があるとする。回転速度を増加させるためには、モータのトルクを増加させる必要がある。そのためには、負荷への電流を増加させる必要がある。負荷に流れる電流が急に増加すると、負荷電圧が急に低下する。しかし、従来のフィードバック制御では、この電圧の急な変化に追従することができない。前述のように、フィードバック制御は、例えば数ミリ秒の間隔で行われる。これに対し、負荷電圧は、この間隔よりも短い時間で急に変化する。さらに、フィードバック制御による電圧の補正は一度には行われず、わずかな補正を多数回繰り返すことによって所望の電圧値に補正される。したがって、更新後の負荷指令値が示す所望の動作状態に達するまでには長い時間を要する。
このように、本発明者らは、従来のフィードバック制御を適用しただけでは、負荷の動作状態の急な変化に対応できないことを発見した。本発明者らは、フィードバック制御に加えて、新規な制御を導入することにより、この課題を解決できることを見出した。具体的には、負荷指令値を変更する際に、送電側インバータ回路130の制御パラメータを、変更後の負荷指令値に応じた適切な値に調整することで、上記課題を解決できることを見出した。
以上の考察により、本発明者らは、以下に開示する各態様を想到するに至った。
本開示の一態様に係る無線電力伝送システムは、
送電装置と、受電装置と、負荷駆動装置と、直流電源の電力を前記送電装置及び前記受電装置を介して前記負荷駆動装置に供給し、前記負荷駆動装置の負荷指令値を前記送電装置及び前記受電装置を介さずに前記負荷駆動装置に出力する電力コントロール装置と、を含む無線電力伝送システムであって、
前記電力コントロール装置は、
前記直流電源と、
前記負荷駆動装置による動作負荷が変化する毎に前記負荷駆動装置の負荷指令値を更新する主制御回路と、
更新された前記負荷指令値を前記負荷駆動装置に出力する通信器と、を有し、
前記送電装置は、
前記直流電源から供給される第1の直流電力を第1の交流電力に変換する送電側インバータ回路と、
前記変換された前記第1の交流電力を無線で送電する送電アンテナと、を有し、
前記受電装置は、
前記送電アンテナと電磁気的に結合し、送電された前記第1の交流電力を受電する受電アンテナと、
受電された前記第1の交流電力を第2の直流電力に変換する整流器と、を有し、
前記負荷駆動装置は、
負荷と、
前記第2の直流電力を第2の交流電力に変換する負荷側インバータ回路と、
前記電力コントロール装置から前記負荷指令値を受信する負荷側受信器と、
前記負荷指令値に基づき前記第2の交流電力の電流値を決定し、前記負荷を駆動する負荷制御回路と、を有し、
前記電力コントロール装置における前記主制御回路は、更に、
前記負荷駆動装置による動作負荷が変化するとき、前記送電装置が前記第1の直流電力を前記第1の交流電力に変換する際に用いる、前記第1の交流電力の電圧を調整するための制御パラメータを更新し、
前記電力コントロール装置における前記通信器は、更に、
更新された前記制御パラメータを前記送電装置に出力し、更新された前記負荷指令値を前記負荷駆動装置に出力し、
前記送電装置は、更に、
前記電力コントロール装置からの更新された前記制御パラメータに基づき、前記第1の交流電力の電圧を決定し、前記インバータ回路を制御する送電制御回路を有する。
上記態様によれば、
前記電力コントロール装置における前記主制御回路は、
前記負荷駆動装置による動作負荷が変化するとき、前記送電装置が前記第1の直流電力を前記第1の交流電力に変換する際に用いる、前記第1の交流電力の電圧を調整するための制御パラメータを更新し、
前記電力コントロール装置における前記通信器は、
更新された前記制御パラメータを前記送電装置に出力し、更新された前記負荷指令値を前記負荷駆動装置に出力し、
前記送電装置は、
前記電力コントロール装置からの更新された前記制御パラメータに基づき、前記第1の交流電力の電圧を決定し、前記インバータ回路を制御する送電制御回路を有する。
これにより、負荷駆動装置による動作負荷が変化するとき、送電制御回路は、主制御回路から取得した更新された制御パラメータを用いて送電側インバータ回路を制御できる。更新された制御パラメータは、更新された負荷指令値に適合した値であるため、動作負荷が急に変化した場合でも、第2の直流電力の電圧の変化を抑えることができる。
本明細書において「制御パラメータ」とは、送電側インバータ回路から出力される電圧のレベルを決定するパラメータを意味する。制御パラメータは、例えば、送電側インバータ回路が有する複数のスイッチング素子に供給されるパルス信号の周波数、同時にオンにされる2つのスイッチング素子に供給される2つのパルス信号の位相差(「位相シフト量」または「位相ずれ量」ともいう)、または複数のスイッチング素子の各々に供給するパルス信号のデューティ比であり得る。これらの制御パラメータを変化させることにより、送電側インバータ回路から出力される交流電圧のレベルを変化させ、受電装置が受け取る交流電力の振幅を変化させることができる。本明細書では、制御パラメータを示す信号または情報を、単に「制御パラメータ」と称することがある。
本明細書において「負荷指令値」とは、負荷駆動装置が有する負荷(例えばモータ)の動作状態を決定するパラメータを意味する。負荷指令値は、例えばモータの回転速度、負荷に供給される電流量または電圧値、負荷に接続されたインバータ回路の制御パラメータ等であり得る。本明細書では、負荷指令値を示す信号または情報を、単に「負荷指令値」と称することがある。
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
本明細書では、わかり易さのため、送電装置に関する用語については「送電側〜」、受電装置に関する用語については「受電側〜」、中継装置に関する用語については「中継側〜」、負荷駆動装置400に関する用語については「負荷側〜」といった表現を用いる。「送電側」、「受電側」、「中継側」、「負荷側」などの用語は、簡潔化のために省略することがある。
(実施形態1)
図6は、本開示の実施形態1における無線電力伝送システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の無線電力伝送システムの物理構成は、図4に示す比較例の物理構成と同様であるが、電力コントロール装置500における主制御回路550の動作が異なっている。本実施形態では、主制御回路550が、負荷駆動装置400に負荷指令値を送信する際に、送電側インバータ回路130の制御パラメータを負荷指令値に応じた適切な値に設定して送電装置100に送信する。送電装置100は、負荷指令値に適合した制御パラメータを用いて送電側インバータ回路130を駆動する。これにより、所望の動作状態に短時間で到達することができる。以下、比較例と異なる点を中心に、本実施形態の構成および動作を説明する。
本実施形態における無線電力伝送システムは、送電装置100と、受電装置300と、負荷駆動装置400と、電力コントロール装置500とを備えている。電力コントロール装置500は、直流電源510と、負荷駆動装置400による動作負荷が変化する毎に負荷駆動装置400の負荷指令値を更新する主制御回路550と、更新された負荷指令値を負荷駆動装置400に出力する通信器(通信回路)580とを有する。電力コントロール装置500は、直流電源510から出力された電力を、送電装置100及び受電装置300を介して負荷駆動装置400に供給する。一方、電力コントロール装置500は、負荷駆動装置400の負荷指令値を、送電装置100及び受電装置300を介さずに負荷駆動装置400に出力する。
送電装置100は、直流電源510から供給された第1の直流電力を第1の交流電力に変換して出力する送電側インバータ回路130と、変換された第1の交流電力を無線で送電する送電アンテナ140と、送電側インバータ回路130を制御する送電制御回路150およびパルス出力回路160と、送電側受信器190とを有する。送電アンテナ140は、例えば送電コイルとコンデンサとを含む共振回路である。
受電装置300は、送電アンテナ140と電磁気的に結合し、送電された第1の交流電力を受電する受電アンテナ310と、受電された第1の交流電力を第2の直流電力に変換する整流器(整流回路)320とを有する。受電アンテナ310は、例えば受電コイルとコンデンサとを含む共振回路である。受電装置300は、第2の直流電力の電圧値を検出する電圧検出器330と、検出された第2の直流電力の電圧値を送電装置100に出力する受電側送信器380とをさらに有する。この電圧値の情報は、送電制御回路150によるフィードバック制御に用いられる。
負荷駆動装置400は、負荷410(例えばモータ、照明、カメラなど)と、第2の直流電力を第2の交流電力に変換する負荷側インバータ回路430と、電力コントロール装置500から負荷指令値を受信する負荷側受信器490と、負荷指令値に基づき、第2の交流電力の電流値を決定し、負荷を駆動する負荷制御回路450とを有する。負荷側インバータ回路430によって出力される第2の交流電力は、単相交流電力でも三相交流電力でもよい。負荷410が永久磁石同期モータまたは誘導モータなどの三相交流で駆動されるモータである場合には、三相交流電力を出力するインバータ回路が負荷側インバータ回路430として用いられる。
本実施形態における受電装置300は、ロボットアームの先端に接続されるハンドであるが、他の装置であってもよい。例えば、監視カメラの回転部等であってもよい。本実施形態における負荷410は、ロボットアームの先端のハンドに搭載されたアクチュエータなどのモータを含む機器である。負荷410は、例えば監視カメラの回転部に搭載されたCCDなどのイメージセンサを有するカメラまたは照明装置等であってもよい。
送電アンテナ140および受電アンテナ310の各々は、例えばコイルおよびコンデンサを含む共振回路によって実現され得る。図7は、直列共振回路の構成を有する送電アンテナ140および受電アンテナ310の等価回路の一例を示している。図示される例に限らず、各アンテナは並列共振回路の構成を有していてもよい。本明細書において、送電アンテナ140におけるコイルを「送電コイル」と呼び、受電アンテナ310におけるコイルを「受電コイル」と呼ぶ。送電コイルと受電コイルとの間の誘導結合(即ち磁界結合)によって電力が無線で伝送される。各アンテナは、磁界結合の代わりに電界結合を利用して電力を無線で伝送する構成を備えていてもよい。その場合には、各アンテナは、送電または受電のための2つの電極と、インダクタおよびキャパシタを含む共振回路とを備え得る。電界結合を利用した送電アンテナおよび受電アンテナは、例えば工場内の搬送ロボットのような移動する機器に電力を無線で伝送する場合に好適に利用され得る。
主制御回路550、送電制御回路150、および負荷制御回路450は、例えばマイクロコントーラ(マイコン)等の、プロセッサとメモリとを含む集積回路であり得る。メモリには後述する動作を実現するための制御プログラム(ソフトウェア)および各種のテーブルが格納され得る。プロセッサが制御プログラムを実行することにより、後述する機能が実現される。主制御回路550、送電制御回路150、および負荷制御回路450は、ソフトウェアによらず、ハードウェアのみによって実現されていてもよい。
送電側受信器190と受電側送信器380との間、通信器580と送電側受信器190との間、および通信器580と負荷側受信器490との間の通信の方式は特定の方式に限定されず、任意の方式でよい。例えば、振幅変調方式、周波数変調方式、無線LAN、またはZigbee(登録商標)等の無線通信方式を用いることができる。
電力コントロール装置500における主制御回路550は、負荷駆動装置400による動作負荷が変化するとき、送電装置100が第1の直流電力を第1の交流電力に変換する際に用いる、第1の交流電力の電圧を調整するための制御パラメータを更新する。このために、電力コントロール装置500は、負荷指令値と制御パラメータとの対応関係を規定するテーブルを格納したメモリ570を有する。電力コントロール装置500における通信器580は、更新された制御パラメータを送電装置100に出力し、更新された負荷指令値を負荷駆動装置400に出力する。
送電装置100における送電制御回路150は、電力コントロール装置500から送られた更新された制御パラメータに基づいて、第1の交流電力の電圧を決定し、当該制御パラメータを用いてインバータ回路130を制御する。送電制御回路150は、パルス出力回路160(例えばゲートドライバ)に制御信号を出力することによってインバータ回路130を制御する。送電制御回路150は、さらに、送電側インバータ回路130を用いて、(i)更新される前の制御パラメータに基づく第1の交流電力に対応する第2の直流電力の電圧値と、(ii)更新された制御パラメータに基づく第1の交流電力に対応する第2の直流電力の電圧値との差分を無くす制御(フィードバック制御)を行う。
「制御パラメータ」は、前述のように、インバータ回路130から出力される電圧のレベルを決定するパラメータである。制御パラメータは、例えば、インバータ回路130が有する複数のスイッチング素子に供給されるパルス信号の周波数、同時にオンにされる2つのスイッチング素子に供給される2つのパルス信号の位相シフト量、または複数のスイッチング素子の各々に供給されるPWMパルス信号のデューティ比であり得る。なお、図6には示されていないが、インバータ回路130の前段にDC−DCコンバータを設け、インバータ回路130に入力される第1の直流電力の電圧の大きさを送電制御回路150が変化させる形態でもよい。そのような形態では、DC−DCコンバータの出力電圧の値を制御パラメータとしてもよい。送電制御回路150は、DC−DCコンバータ内のスイッチング素子のスイッチングの周波数を変化させることにより、DC−DCコンバータから出力される電圧の大きさを調整することができる。以上のような制御パラメータを変化させることにより、インバータ回路130から出力される交流電力の電圧のレベルを変化させ、受電装置300が受け取る交流電力の振幅を変化させることができる。
図8Aから図8Dは、それぞれ、周波数、位相シフト量、デューティ比、およびインバータ回路130への供給電圧に対する送電アンテナ140のコイルの両端の電圧の振幅の依存性の一例を模式的に示している。図8Aに示すように、周波数を大きくすると、コイルの両端の電圧の振幅は減少する傾向がある。ただし、低い周波数の領域では、逆に、周波数を小さくするほど電圧の振幅が減少する傾向がある。図8Bに示すように、位相シフト量を0°から180°の範囲内で大きくすると、コイルの両端の電圧の振幅の時間平均は減少する。図8Cに示すように、デューティ比を0%から50%の範囲内で大きくすると、コイルの両端の電圧の振幅の時間平均は増加する。図8Dに示すように、インバータ回路130に供給する電圧を増加させると、コイルの両端の電圧の振幅は増加する。したがって、送電制御回路150は、周波数、位相シフト量、デューティ比、および供給電圧の少なくとも1つを制御パラメータとして、送電アンテナ140のコイルの両端電圧の振幅またはその時間平均値を制御できる。
図9は、インバータ回路130の構成例を示す図である。インバータ回路130は、パルス出力回路160から供給されたパルス信号に応じて導通および非導通の状態を切り替える複数のスイッチング素子S1〜S4を有する。各スイッチング素子の導通および非導通の状態を変化させることにより、入力された直流電力を交流電力に変換することができる。図9に示す例では、4つのスイッチング素子S1〜S4を含むフルブリッジ型のインバータ回路が用いられている。この例では、各スイッチング素子はIGBT(Insulated−gate bipolar transistor)であるが、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field−Effect Transistor)などの他の種類のスイッチング素子を用いてもよい。
図9に示す例では、4つのスイッチング素子S1〜S4のうち、スイッチング素子S1およびS4(第1スイッチング素子対)は、供給された直流電圧と同じ極性の電圧を導通時に出力する。一方、スイッチング素子S2およびS3(第2スイッチング素子対)は、供給された直流電圧と逆の極性の電圧を導通時に出力する。パルス出力回路160は、送電制御回路150からの指示に従い、4つのスイッチング素子S1〜S4のゲートにパルス信号を供給する。この際、第1スイッチング素子対(S1およびS4)に供給する2つのパルス信号の位相差、および第2スイッチング素子対(S2およびS3)に供給する2つのパルス信号の位相差を調整することにより、振幅制御を行うことができる。
図10Aおよび図10Bは、パルス信号の位相差に基づく振幅制御を説明するための図である。図10Aは、スイッチング素子S1およびS4に供給される2つのパルス信号の位相シフト量φ、およびスイッチング素子S2およびS3に供給される2つのパルス信号の位相シフト量φが0度の場合の4つのパルス信号およびインバータ回路130から出力される電圧Vの時間変化を模式的に示している。図10Bは、位相シフト量φが90度の場合の各パルス信号および電圧Vの時間変化を模式的に示している。スイッチング素子S1、S2に入力されるパルス信号の立上がりおよび立下りのタイミングに対して、スイッチング素子S3、S4に入力されるパルス信号の立下がりおよび立上がりのタイミングを時間的にシフトさせることにより、位相シフト量φが調整される。位相シフト量φを変化させると、電圧Vの出力時間比(即ち、1周期のうち、ゼロではない値をとる期間の割合)が変化する。位相シフト量φが0度に近いほど電圧Vの出力時間比が大きくなり、位相シフト量φが180度に近いほど電圧Vの出力時間比が小さくなる。インバータ回路130から出力される電圧Vは、不図示の平滑回路を用いて正弦波電圧に変換されて送電アンテナ110に供給され得る。その正弦波電圧の振幅は、出力時間比に応じて変化する。よって、位相シフト量φを変化させることにより、送電アンテナ110に入力される交流電圧の振幅の時間平均値を変化させることができる。
図11は、インバータ回路130の他の構成例を示す図である。この例におけるインバータ回路130は、ハーフブリッジ型のインバータ回路である。ハーフブリッジ型のインバータ回路を用いる場合には、前述の位相制御は適用できない。この場合には、各スイッチング素子に入力されるパルス信号のデューティ比を制御することによって電圧の振幅の時間平均値を制御できる。
図11に示すインバータ回路130は、2つのスイッチング素子S1、S2と2つのキャパシタとを含むハーフブリッジ型のインバータ回路である。2つのスイッチング素子S1、S2と、2つのキャパシタC1、C2とは、並列に接続されている。送電アンテナ110の一端は2つのスイッチング素子S1、S2の間の点に接続され、他端は2つのキャパシタC1、C2の間の点に接続されている。
送電制御回路150およびパルス出力回路160は、スイッチング素子S1、S2を交互にオンにするように、パルス信号を各スイッチング素子に供給する。これにより、直流電力が交流電力に変換される。
この例では、パルス信号のデューティ比(即ち、1周期のうち、オンにする期間の割合)を調整することにより、出力電圧Vの出力時間比を調整できる。これにより、送電アンテナ140に入力される交流電力を調整することができる。
図12Aおよび図12Bは、デューティ制御を説明するための図である。図12Aは、各パルス信号のデューティ比が0.5(50%)の場合の、スイッチング素子S1〜S4に入力されるパルス信号および出力電圧Vの波形の例を示している。図12Bは、各パルス信号のデューティ比が0.25(25%)の場合の、スイッチング素子S1〜S4に入力されるパルス信号および出力電圧Vの波形の例を示している。図示されるように、デューティ比を変化させることにより、電圧Vの出力時間比(即ち、1周期のうち、ゼロではない値をとる期間の割合)を変化させることができる。これにより、受電アンテナ310によって受電される交流電力の電圧の振幅を変化させることができる。このようなデューティ比の異なるパルス信号は、例えばPWM制御回路を含むパルス出力回路160によって生成される。デューティ比は、0%から50%の範囲で調整される。デューティ比が50%のとき、送電電圧の振幅が最も大きくなり、デューティ比が0%のとき、送電電圧の振幅が最も小さくなる。このようなデューティ制御は、図9に示すようなフルブリッジ型のインバータ回路を用いた場合も同様に適用できる。
以上のような方法により、送電制御回路150は、送電側インバータ回路130から出力される交流電力の電圧のレベルを調整することができる。本実施形態では、電力コントロール装置500が負荷指令値を変更するとき、併せて送電装置100の制御パラメータを更新して送電装置100に送る。送電装置100は、更新された制御パラメータに基づき、送電側インバータ回路130の出力電圧を変更する。これにより、負荷410の動作状態を急に変化させるときでも、所望の動作状態にすぐに到達することができる。
図13Aから図13Cは、本実施形態における負荷指令値の送信および制御パラメータの送信のタイミングのパターンを示す図である。ここでは一例として、負荷指令値がモータの回転速度(例えば1000rpm)であり、制御パラメータがパルス信号の位相差(例えば50度)であるものとする。
図13Aに示す例では、電力コントロール装置500は、更新した制御パラメータを送電装置100にまず送信し、その後、更新した負荷指令値を負荷駆動装置400に送信する。送電制御回路150は、更新された負荷指令値に基づいて負荷410が駆動される前に、制御パラメータに基づいて第1の交流電力の電圧を決定し、送電側インバータ回路130を駆動する。これにより、負荷410は所望の動作状態に素早く到達することができる。
図13Bに示す例では、電力コントロール装置500は、更新した制御パラメータを送電装置100に出力すると同時に、更新した負荷指令値を負荷駆動装置400に出力する。この場合、更新された制御パラメータに基づく送電と、更新された負荷指令値に基づく負荷410の駆動とが、ほぼ同時に開始される。この場合も、負荷410は所望の動作状態に素早く到達することができる。
図13Cに示す例では、電力コントロール装置500は、更新した負荷指令値を負荷駆動装置400にまず送信し、その後、更新した制御パラメータを送電装置100に送信する。送電制御回路150は、更新された負荷指令値に基づいて負荷410が駆動された後に、送信された制御パラメータに基づいて第1の交流電力の電圧を決定する。すなわち、負荷410の駆動状態が変更された後に、送電状態の変更が行われる。この場合には、負荷410の駆動状態の変更からインバータ回路130の制御の変更までの時間が、従来のフィードバック制御の時間間隔(例えば数ミリ秒)よりも短い時間(例えばマイクロ秒オーダー)に設定される。これにより、従来のフィードバック制御のみを行う場合に要する時間よりも短い時間で、所望の動作状態に到達することができる。
次に、負荷指令値および制御パラメータを更新する際の具体的な動作の例を説明する。
主制御回路550は、負荷駆動装置400による動作負荷が変化するとき、負荷指令値と制御パラメータとを関連づけて記憶したテーブルを参照して、制御パラメータを更新する。当該テーブルは、電力コントロール装置500におけるメモリ570に格納されている。
図14Aは、負荷駆動装置400の機種(A、B、C)または回転速度によって制御パラメータ(この例では位相差)と出力電圧との関係が異なることを示す図である。電力コントロール装置500は、ユーザからの指示または既定のプログラムに従って、駆動させる負荷駆動装置400(機種A、B、C)を切替えたり、負荷410(この例ではモータ)の回転速度を変えたりしながら所望の動作を行う。機種または回転速度が異なると、所望の出力電圧を得るための制御パラメータの値も異なる。そこで、本実施形態における主制御回路550は、負荷駆動装置400の機種に応じて異なるテーブルを参照して、負荷指令値(例えば回転速度)に対応する制御パラメータを決定する。
図14Bは、メモリ570に格納されたテーブルのイメージを示す図である。図示されるテーブルは、負荷駆動装置Aにおけるモータの回転速度(負荷指令値)と、送電側インバータ回路130に供給される2種類のパルス信号の位相差(制御パラメータ)との対応関係を規定している。図14Bは、負荷駆動装置Aのモータが12Vで動作する場合の例を示している。主制御回路550は、モータの回転速度を例えば1000rpmに変更するとき、このテーブルを参照し、制御パラメータの値を、1000rpmに対応する位相差である50度に更新する。更新後の制御パラメータの値は、送電装置100に送信され、送電制御回路150は、送電側インバータ回路130を駆動するパルス信号の位相差を50度に設定する。メモリ570には、図14Bに示されるようなテーブルが、負荷駆動装置400の機種ごとに格納され得る。
図15は、電力コントロール装置500が負荷指令値を変更する際の動作の流れを模式的に示す図である。ここでは、図16、図17A及び図17Bを用いて、電力コントロール装置500が、制御パラメータの送信と負荷指令値の送信とをほぼ同時に行う場合の例を説明する。
電力コントロール装置500における主制御回路550は、所定のプログラムに従って負荷指令値を更新し、更新後の負荷指令値に適合する制御パラメータを、テーブルを参照して決定する。
図16は、当該プログラムが規定する動作手順の一例を示す図である。図16において、番号とは、当該プログラムを実行する順番を示す番号のことである。このプログラムは、モータが停止している状態(#0000、0rpm)から開始して、(#0100、100rpm)で1分保持、(#0200、200rpm)で2分保持、・・・、(#0500、800rpm)で1分保持、(#0600、1000rpm)で2分保持、といった動作の流れを規定している。主制御回路550は、このプログラムに従い、モータの回転速度を変更するタイミングで、負荷指令値を更新して負荷駆動装置400に送信する。負荷指令値を更新する際、送電側インバータ回路130の制御パラメータも併せて更新する。このようなプログラムによらず、ユーザが手動で入力ボタンまたは操縦器などを操作して負荷指令値を変更してもよい。ここでは、主制御回路550が、負荷指令値としてモータの回転速度ω1=1000rpmを負荷駆動装置400に指示する場合を考える。
主制御回路550は、例えば図17Aに示すようなテーブル(テーブル1と称する。)を参照して、回転速度1000rpmに対応する制御パラメータの値を決定する。図17Aに示す例では、制御パラメータはパルス信号間の位相差であり、1000rpmに対応する値は50度である。よって、主制御回路550は、制御パラメータである位相差を50度に更新する。その後、通信器580は、制御パラメータ(位相差=50度)を送電側受信器190に送信し、負荷指令値(ω1=1000rpm)を負荷側受信器490に送信する。
送電制御回路150は、送電側受信器190が受信した制御パラメータの値に基づき、パルス出力回路160を介して送電側インバータ回路130を駆動する。この例では、位相差を50度に設定することにより、目標電圧12Vが実現される。送電制御回路150は、不図示のテーブルを参照して、位相差50度に対応する目標電圧12Vを決定する。そして、制御パラメータを初期値(位相差=50度)に設定して送電を開始した後、受電側送信器380から送信される受電側の電圧値に基づいて、電圧12Vが維持されるようにフィードバック制御を行う。このフィードバック制御は、前述のように、数ミリ秒の間隔で行われる。これにより、送信された制御パラメータを用いて出力電圧を大きく補正し、その後、フィードバック制御によって出力電圧をより正確な値に補正することができる。
負荷制御回路450は、負荷側受信器490が受信した負荷指令値に基づき、パルス出力回路460を介して負荷側インバータ回路430を制御する。この際、負荷制御回路450は、負荷指令値が示す回転速度ω1と、負荷検出器470によって検出されたその時点での回転速度ωとの差分Δω=ω−ω1を計算し、その値に応じて負荷410に供給する電流値を決定する。例えば、図15に示すように、Δω=−20rpmである場合、図17Bに示すようなテーブルを参照して、設定すべき電流値が5Aであると決定する。負荷制御回路450は、決定した電流値を実現する制御パラメータで負荷側インバータ回路430を制御する。
ここで、上記態様では、負荷制御回路450は負荷指令値に基づいて、負荷に与える電流値を決定したが、負荷指令値に基づいて、負荷に与える電力(第2の交流電力)を決定してもよい。また、負荷指令値に基づいて、負荷に与える電圧値を決定してもよい。また、負荷指令値に基づいて、負荷に与える電流値及び電圧値の両方を決定してもよい。
従って、負荷駆動装置は、負荷と、第2の直流電力を第2の交流電力に変換する負荷側インバータ回路と、電力コントロール装置から負荷指令値を受信する負荷側受信器と、負荷指令値に基づき第2の交流電力を決定し、負荷を駆動する負荷制御回路と、を有していてもよい。
また、負荷駆動装置は、負荷と、第2の直流電力を第2の交流電力に変換する負荷側インバータ回路と、電力コントロール装置から負荷指令値を受信する負荷側受信器と、負荷指令値に基づき第2の交流電力の電圧値及び電流値の両方を決定し、負荷を駆動する負荷制御回路と、を有していてもよい。
図18は、テーブルのより具体的な例を示す図である。電力コントロール装置500のメモリ570には、図18に示すようなテーブルが予め保存されていてもよい。このテーブルは、負荷410の動作を時系列に規定している。このテーブルは、ある一連の動作における開始時間と、終了時間と、モータの回転速度と、回転速度の直前の値からの変化量と、制御パラメータ(この例では位相差θ)とを規定している。IDは、動作パターンごとに付与された識別子である。
このようなテーブルを参照することにより、主制御回路550は、負荷指令値(回転速度)および制御パラメータ(位相ずれ量)を、負荷駆動装置400の動作パターンに合わせて適切に変更することができる。
なお、図18に示されている全ての情報が1つのテーブルにまとまっている必要はなく、複数のテーブルに分散していてもよい。また、開始時間と終了時間と回転速度(動作負荷)との関係が、テーブルではなくプログラムに規定されていてもよい。その場合、テーブルには、動作負荷と制御パラメータとの対応関係だけが規定されていてもよい。テーブルに格納される情報は、負荷駆動装置400の種類または機種によって異なり得る。
図19Aおよび図19Bは、本実施形態の動作の例および効果を示す図である。図19Aは、モータの回転速度の時間変化の一例を示している。図19Bは、負荷電圧の時間変化の一例を示している。電力コントロール装置500における主制御回路550は、図18に示すようなテーブルを参照しながら、モータの回転速度(動作負荷)を変化させるタイミングで、その変化量に応じた最適な制御パラメータ(例えば位相差θ)を決定する。そして、決定し、更新された上記制御パラメータを送電装置100に出力し、更新された負荷指令値を負荷駆動装置400に出力する。
その結果、図19Aおよび図19Bに示すように、回転速度が急に変化する場合でも、負荷電圧の急な変化を抑えることができる。
図20は、本実施形態の無線電力伝送システムの動作の一例を示すシーケンス図である。図20は、電力コントロール装置500が、負荷駆動装置400よりも先に送電装置100に指令を送る場合の例を示している。
まず、電力コントロール装置500から送電装置100および受電装置300を介して負荷駆動装置400に電力(電力1とする)が送られる。ここでは、一例として、位相差が160度に設定され、回転速度が500rpmに設定されるものとする。
電力1が伝送されている間、送電装置100と受電装置300との間でフィードバック制御が行われる。受電装置300は、送電装置100に、受電した電力の電圧値の情報を送信する。送電装置100は、要求電力の電圧値と、受電電力の電圧値との差分を小さくするように、制御パラメータを調整する。このフィードバック制御は、前述の比較例と同様、例えば数ミリ秒間隔で繰り返し行われる。
電力コントロール装置500は、図18に示すテーブルに基づき、送電に用いられる制御パラメータを更新する。例えば、位相差を160度から50度に更新する。電力コントロール装置500は、更新後の制御パラメータを、送電装置100に送信する。電力コントロール装置500は、更新後の制御パラメータを決定した後、所定の時間(所定時間1)が経過した後、負荷指令値(モータの回転速度1000rpm)を、負荷駆動装置400に送信する。これにより、負荷駆動装置400は、受信した負荷指令値が示す回転速度1000rpmを実現するようにインバータ回路430の制御パラメータを変更する。
送電装置100は、電力コントロール装置500から制御パラメータを受信すると、所定の時間(所定時間2)が経過するまで待機する。その間も、前述のフィードバック制御は継続される。所定時間2が経過すると、送電装置100は、更新された制御パラメータでインバータ回路130を駆動する。この例では、パルス信号間の位相差を160度から50度に変更する。これにより、電力1とは電圧レベルの異なる電力2の送電が開始される。以後、位相差50度で送電され、回転速度1000rpmで負荷が駆動される。以降もフィードバック制御は数ミリ秒間隔で継続的に行われる。
この例において、電力コントロール装置500が制御パラメータを決定してから、送電装置100が実際に制御パラメータをインバータ回路130に設定するまでの期間は、変化した動作負荷に対応するための送電制御の準備期間であるといえる。この準備期間は、従来のフィードバック制御のみを行った場合に所望の負荷状態に達するまでに要する時間よりも大幅に短くすることができる。
図21は、上記の例における電力コントロール装置500の動作を示すフローチャートである。主制御回路550は、次の処理の負荷の回転速度が現在の処理の回転速度と同じであるかを判断する(ステップS101)。両者が異なる場合、主制御回路550は、テーブルを参照して、次の回転速度に対応する制御パラメータの値を決定する(ステップS102)。次に、主制御回路550は、タイマーをセットし(ステップS103)、送電装置100に更新した制御パラメータを送信する(ステップS104)。主制御回路550は、タイマーをセットしてから所定時間(所定時間1)が経過したかを判断する(ステップS105)。所定時間1が経過すると、主制御回路550は、負荷駆動装置400に負荷指令値を送信する(ステップS106)。
図22は、上記の例における送電装置100の動作を示すフローチャートである。送電装置100における送電制御回路150は、受電装置300から受電電力の電圧値を受信したかを常時モニターする(ステップS201)。送電制御回路150は、要求電力の電圧値と受電電力の電圧値との差分に基づいて、差分を小さくするようにインバータ回路130を制御する(ステップS202)。この動作は、前述のフィードバック制御である。送電制御回路150は、電力コントロール装置500から制御パラメータを受信したかを判断する(ステップS203)。受信していない場合、再びステップS201に戻る。制御パラメータを受信した場合、送電制御回路150は、タイマーをセットする(ステップS204)。その後、所定時間(所定時間2)が経過したかを判断する(ステップS205)。所定時間2が経過すると、送電制御回路150は、更新された制御パラメータを用いてインバータ回路130を制御する(ステップS206)。
以上の動作により、前述の比較例と比べて、負荷410の動作状態を変化させる際に、所望の動作状態に到達するまでの時間を短縮することができる。なお、上記の動作は一例であり、各ステップの順序などは適宜変更してもよい。
次に、本実施形態の変形例を説明する。
図23は、テーブルの変形例を示す図である。電力コントロール装置500のテーブルは、目標受電電圧の情報を含んでいてもよい。主制御回路550は、制御パラメータとともに、目標受電電圧の値を送電装置100に送る。この例では、送電装置100が目標受電電圧を決定する必要がない。
図24は、本実施形態の他の変形例の構成を示す図である。この変形例では、送電装置100が、入力検出回路170をさらに備えている。入力検出回路170は、送電側インバータ回路130に入力される電流を検出し、送電制御回路150にその情報を送る。送電制御回路150は、電流量に応じて、送電側インバータ回路130のデッドタイムを調整する。デッドタイムとは、同時にオンにされない2つのスイッチング素子の両方をオフにする時間である。入力される電流量が増加するほどデッドタイムを短くすることにより、高効率な動作が可能である。デッドタイムが変化すると、送電側インバータ回路から出力される第1の交流電圧の振幅が変化する。このため、送電制御回路150は、デッドタイムに応じて制御パラメータを調整する。
(実施形態2)
次に、本開示の実施形態2における無線電力伝送システムを説明する。本実施形態の無線電力伝送システムは、送電装置100と受電装置300との間に、1つ以上の中継装置200を備える点で、実施形態1とは異なっている。
図25は、実施形態2の無線電力伝送システムの概略的な構成を示す図である。図25は、送電装置100と受電装置300との間にN個(Nは2以上の整数)の中継装置200が配置された構成の例を示している。図1に示すロボットアームのように多数の可動部を有する機器に本開示の無線電力伝送システムを適用する場合、図25に示すような構成が有効である。なお、中継装置200の数は複数に限らず、1つであってもよい。
各中継装置200は、受電装置300と同様、負荷駆動装置400(例えばモータを含む)に接続されている。N個の中継装置200は、送電装置100から無線で伝送された交流電力を順次中継しながら受電装置300まで伝送する。
図25に示す例において、電力コントロール装置500は、送電装置100および複数の中継装置200の各々に制御パラメータを送信し、複数の負荷駆動装置400の各々に負荷指令値を送信する。これにより、実施形態1と同様の制御が、各負荷駆動装置400の負荷指令値の変更時に実行される。
なお、負荷指令値は、負荷駆動装置400に接続された中継装置200または受電装置300における受信器に送信されてもよい。その場合、負荷指令値は、電力コントロール装置500から、中継装置200または受電装置300を介して、負荷側受信器490に送信される。この場合も、電力コントロール装置500の送信器(通信器580)から負荷側受信器490に負荷指令値が送信されるものと解釈する。
図26は、本実施形態の無線電力伝送システムの構成をより詳細に示すブロック図である。ここでは簡単のため、中継装置200の数が1つの場合の例を説明する。図示されるように、この無線電力伝送システムでは、送電装置100と受電装置300との間に、中継装置200が配置されている。中継装置200には、負荷駆動装置400Aが接続され、受電装置300には、負荷駆動装置400Bが接続されている。電力コントロール装置500、送電装置100、受電装置300、および負荷駆動装置400A、400Bは、実施形態1における対応する構成要素と同様の構成を有する。
中継装置200は、送電装置100と同様、送電アンテナ240と、中継側インバータ回路230と、中継側制御回路250と、パルス出力回路260と、中継側受信器290とを備える。中継装置200はまた、受電装置300と同様、受電アンテナ210と、整流器220と、電圧検出器230と、中継側送信器280とを備える。中継装置200におけるこれらの構成要素は、送電装置100または受電装置300における対応する構成要素と同様の機能を有する。
受電アンテナ210は、前段の送電装置100から送電された送電側交流電力を受け取る。整流器220は、中継側受電アンテナ210が受け取った送電側交流電力を中継側直流電力に変換して出力する。中継側インバータ回路230は、整流器220から出力された中継側直流電力を中継側交流電力に変換して出力する。送電アンテナ240は、中継側インバータ回路230から出力された中継側交流電力を送電する。中継側制御回路250およびパルス出力回路260は、中継側インバータ回路230を制御する。中継側受信器290は、受電側送信器380から送られてくる電圧値の情報を受信する。この電圧値の情報は、中継側制御回路250による受電側直流電力の電圧を一定にするフィードバック制御に用いられる。電圧検出器230は、整流器220から出力された中継側直流電力の電圧値を検出する。中継側送信器280は、電圧検出器230と、検出された電圧値を送電側受信器190に送信する。この電圧値の情報は、送電制御回路150による中継側直流電力の電圧を一定にするフィードバック制御に用いられる。フィードバック制御の方法は、実施形態1で説明したとおりである。
整流器220は、負荷駆動装置400Aにおける負荷側インバータ回路430に接続されている。負荷側インバータ回路430は、中継側直流電力を負荷側交流電力に変換して負荷410に供給する。これにより、負荷410が駆動される。
電力コントロール装置500の主制御回路550は、実施形態1と同様の方法により、中継装置200に接続された第1の負荷駆動装置400Aに送信する第1の負荷指令値に基づき、送電装置100に送信する第1の制御パラメータを決定する。同様に、主制御回路550は、受電装置300に接続された第2の負荷駆動装置400Bに送信する第2の負荷指令値に基づき、中継装置200に送信する第2の制御パラメータを決定する。これにより、負荷駆動装置400A、400Bの各々の動作状態を変化させるときに、短時間で所望の動作状態に到達できる。
次に、複数の中継装置200を備える無線電力伝送システムの例を説明する。
図27は、複数の中継装置200を備える無線電力伝送システムの構成例を示す図である。図27は、N個(Nは2以上の整数)の中継装置200のうちの、隣接する2つの中継装置200を例示している。各中継装置200は、図26に示す中継装置200と同じ構成を有する。各中継装置200には、負荷駆動装置400が接続されている。図27では省略されているが、図26と同様、1番目の中継装置200に近接して送電装置100が設けられ、N番目の中継装置200に近接して受電装置300が設けられている。
電力コントロール装置500の主制御回路550は、実施形態1と同様の方法により、i番目(i=2〜N)の中継装置に接続されたi番目の負荷駆動装置に送信するi番目の負荷指令値に基づき、i−1番目の中継装置に送信するi番目の制御パラメータを決定する。また、1番目の中継装置に接続された1番目の負荷駆動装置に送信する1番目の負荷指令値に基づき、送電装置に送信する1番目の制御パラメータを決定する。
以上の構成により、実施形態1と同様の効果を、複数の負荷駆動装置400の動作状態を変更する際にも得ることができる。
以上のように、本開示は、以下の項目に記載の無線電力伝送システムを含む。
[項目1]
送電装置と、受電装置と、負荷駆動装置と、直流電源からの電力を前記送電装置及び前記受電装置を介して前記負荷駆動装置に供給し、前記負荷駆動装置の負荷指令値を前記送電装置及び前記受電装置を介さずに前記負荷駆動装置に出力する電力コントロール装置と、を含む無線電力伝送システムであって、
前記電力コントロール装置は、
前記直流電源と、
前記負荷駆動装置による動作負荷が変化する毎に前記負荷駆動装置の負荷指令値を更新する主制御回路と、
更新された前記負荷指令値を前記負荷駆動装置に出力する通信器と、を有し、
前記送電装置は、
前記直流電源から供給される第1の直流電力を第1の交流電力に変換する送電側インバータ回路と、
変換された前記第1の交流電力を無線で送電する送電アンテナと、を有し、
前記受電装置は、
前記送電アンテナと電磁気的に結合し、送電された前記第1の交流電力を受電する受電アンテナと、
受電された前記第1の交流電力を第2の直流電力に変換する整流器と、を有し、
前記負荷駆動装置は、
負荷と、
前記第2の直流電力を第2の交流電力に変換する負荷側インバータ回路と、
前記電力コントロール装置から前記負荷指令値を受信する負荷側受信器と、
前記負荷指令値に基づき前記第2の交流電力の電流値を決定し、前記負荷を駆動する負荷制御回路と、を有し、
前記電力コントロール装置における前記主制御回路は、更に、
前記負荷駆動装置による動作負荷が変化するとき、前記送電装置が前記第1の直流電力を前記第1の交流電力に変換する際に用いる、前記第1の交流電力の電圧を調整するための制御パラメータを更新し、
前記電力コントロール装置における前記通信器は、更に、
更新された前記制御パラメータを前記送電装置に出力し、更新された前記負荷指令値を前記負荷駆動装置に出力し、
前記送電装置は、更に、
前記電力コントロール装置からの更新された前記制御パラメータに基づき前記第1の交流電力の電圧を決定し、前記インバータ回路を制御する送電制御回路を有する、
無線電力伝送システム。
[項目2]
前記送電制御回路は、
更新された前記負荷指令値に基づき前記負荷が駆動される前に、前記電力コントロール装置からの前記制御パラメータに基づき前記第1の交流電力の電圧を決定し、前記インバータ回路を制御する、
項目1に記載の無線電力伝送システム。
[項目3]
前記送電制御回路は、
更新された前記制御パラメータを前記送電装置に出力すると同時に、更新された前記負荷指令値を前記負荷駆動装置に出力する、
項目1に記載の無線電力伝送システム。
[項目4]
前記主制御回路は、
前記負荷駆動装置による動作負荷が変化するとき、前記負荷指令値と前記制御パラメータとを関連づけて記憶したテーブルを用いて、前記制御パラメータを更新する、
項目1に記載の無線電力伝送システム。
[項目5]
前記負荷は、モータである、
項目1に記載の無線電力伝送システム。
[項目6]
前記第2の交流電力は、三相交流電力を含む、
項目1に記載の無線電力伝送システム。
[項目7]
前記受電装置は、さらに、
前記第2の直流電力の電圧値を検出する電圧検出器と、
検出された前記第2の直流電力の前記電圧値を前記送電装置に出力する受電側送信器と、を有し、
前記送電制御回路は、
前記送電側インバータ回路を用いて、i)更新される前の前記制御パラメータに基づく前記第1の交流電力に対応する前記第2の直流電力の電圧値と、ii)更新された前記制御パラメータに基づく前記第1の交流電力に対応する前記第2の直流電力の電圧値との差分を無くす制御を行う、
項目1〜6のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
[項目8]
前記送電側インバータ回路は、4つのスイッチング素子を有し、
前記4つのスイッチング素子は、前記電源から供給された前記第1の直流電力の電圧と同じ極性の電圧を導通時に出力する第1スイッチング素子対と、前記第1の直流電力の電圧と逆の極性の電圧を導通時に出力する第2スイッチング素子対とを含み、
前記送電制御回路は、
前記4つのスイッチング素子の各々に、導通および非導通の状態を切り替えるパルス信号を供給し、
前記第1スイッチング素子対に供給される2つのパルス信号の位相差、および前記第2スイッチング素子対に供給される2つのパルス信号の位相差を調整することにより、前記送電側インバータ回路から出力される前記第1の交流電力の電圧を調整し、
前記制御パラメータは、前記位相差を表す値である、
項目1〜7のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
[項目9]
前記送電制御回路は、前記送電側インバータ回路から出力される前記第1の交流電力の周波数を変化させることにより、前記インバータ回路から出力される前記第1の交流電力の電圧を調整し、前記制御パラメータは、前記周波数を表す値である、
項目1〜7のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。
[項目10]
前記送電側インバータ回路は、複数のスイッチング素子を有し、
前記送電制御回路は、前記複数のスイッチング素子の各々に、導通および非導通の状態を切り替えるパルス信号を供給し、
前記パルス信号のデューティ比を調整することにより、前記送電側インバータ回路から出力される前記第1の交流電力の電圧を調整する、
項目1〜7のいずれか1項に記載の無線電力伝送システム。