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JP6581136B2 - 作業機械 - Google Patents

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Description

本発明はマシンコントロールが実行可能な作業機械に関する。
油圧ショベルには、オペレータの掘削操作を補助する制御システムが備えられることがある。具体的には、操作装置を介して掘削操作(例えば、アームクラウドの指示)が入力された場合、目標面と作業機の先端(例えばバケットの爪先)の位置関係を基に、作業機(フロント作業機とも言う)の先端の位置が目標面上及びその上方の領域内に保持されるように、作業機を駆動するブームシリンダ、アームシリンダ及びバケットシリンダのうち少なくともブームシリンダを強制的に動作させる制御(例えば、ブームシリンダを伸ばして強制的にブーム上げ動作を行う)を実行する制御システムがある。このような作業機先端の動き得る領域を制限する制御システムの利用により掘削面の仕上げ作業や法面の成形作業が容易になる。以下では、この種の制御を「領域制限制御」、「(オペレータ操作に対する)介入制御」または「マシンコントロール(MC:Machine Control)」と称することがある。
この種の技術に関連して、特許第3056254号公報では、バケット先端が目標面(侵入不可領域)に近づいた場合、バケット先端の移動方向に関わらずバケット先端の速度を遅くすると、目標面に沿った方向の掘削速度も遅くなり能率が低下することを指摘している。そして、これに対する解決策として、バケット先端の移動速度の内、目標面に垂直な成分のみを介入制御により制限し、目標面に平行な速度成分については、オペレータの操作信号をそのままフロント動作指令として与えて介入制御しない制御の方法が述べられている。
特許第3056254号公報
上記先行技術文献のようなマシンコントロール機能を搭載したショベル(以下「MC機」と称することがある)は、電子情報として与えられる設計面(目標面)に沿ってバケット爪先位置が動作するように機体を制御することで設計面の掘削・成形を行ういわゆる情報化施工の場面にも応用できる。この場合、自機に設定した座標系(ショベル座標系)上でのバケット爪先位置を作業機の姿勢センサの検出値から算出し、全地球衛生測位システム(GNSS)などを利用して地球に設定した座標系(世界座標系)上での自機の位置及び向きを算出し、両者(ショベル座標系における爪先位置と、世界座標系における自車の位置及び向き)を組み合わせることで世界座標系における爪先位置が算出できる。そして、世界座標系における爪先位置が目標面に沿って動作するように機体を制御すれば、目標面(設計面)の掘削・成形が可能となる。
このように目標面を掘削・成形する作業では、掘削面を目標面に沿って均すために、ブーム下げ動作を行いバケット背面で掘削面を略垂直に押圧する土羽打ちという締固め作業がなされる。土羽打ち作業では、土質に適した略一定の押圧力で土羽打ちを繰り返すことが求められるが、その操作には熟練が要求される。そこでオペレータの技量に関わらず、土羽打ちの押圧力の調整と保持が可能な作業機械が求められている。また、MC実行中には、土羽打ちを目的にブーム下げ操作をしても目標面を超えるフロント作業機の動作が抑制されるため、バケット背面で掘削面に圧力をかけられない。つまりMC実行中には土羽打ちができないので、先行技術文献のショベルでは土羽打ちの都度MCをOFFにする必要がある。さらに、通常、土羽打ち作業の完了後は、MCによりバケット爪先を目標面に沿って移動させる仕上げ作業が行われるため、土羽打ち作業で一旦OFFにしたMC機能をONにしなければならず、この一連の切り換え操作がオペレータの負担となる。
本発明は上記を鑑みて発明されたものであり、その目的は、マシンコントロール機能を有し、土羽打ち時の押圧力の調整・維持が可能な作業機械を提供することにある。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、複数の油圧アクチュエータにより駆動される作業機と、オペレータの操作に応じて前記作業機の動作を指示する操作装置と、前記操作装置の操作時に、予め定めた条件に従って前記作業機を動作させるマシンコントロールを実行するマシンコントロール部を有する制御装置とを備える作業機械において、オペレータに操作される介入強度入力装置を備え、前記制御装置は、前記介入強度入力装置の操作量に基づいて、前記操作装置の操作で指示される前記作業機の動作に前記マシンコントロールが介入する度合の大小を示す介入強度の補正量を算出する補正度合演算部をさらに備え、前記マシンコントロール部は、前記補正度合演算部で算出された前記補正量に基づいて補正された介入強度で、前記操作装置の操作で指示される前記作業機の動作に前記マシンコントロールを介入させることとする。
本発明によれば、マシンコントロール機能を有する作業機械において、土羽打ち時の押圧力の調整・維持が可能となる。
本発明の実施形態に係る油圧ショベルの構成図。 油圧ショベルの制御コントローラを油圧駆動装置と共に示す図。 油圧ショベルのフロント制御用油圧ユニットの詳細図。 油圧ショベルの制御コントローラのハードウェア構成図。 油圧ショベルにおける座標系および目標面を示す図。 油圧ショベルの制御コントローラの機能ブロック図。 図6中のマシンコントロール部の機能ブロック図。 介入強度入力装置を備えた操作レバーの上面図。 介入強度入力装置を備えた操作レバーの側面図。 介入強度入力装置を備えた操作レバーの前面図。 バケット爪先速度の垂直成分の制限値ayと距離Dの関係を示す図。 制限値ayと距離Dと介入強度の関係を示す図。 制御コントローラのモード判定部で実行されるモード判定処理のフローチャート。 制御コントローラの制御信号演算部で実行されるブーム下げ減速モードのフローチャート。 介入強度を変化させた場合のブームパイロット圧、距離D、ブーム速度及びブームロッド圧の比較図。 制御コントローラの制御信号演算部で実行されるブーム上げ・下げモードのフローチャート。 表示装置の表示内容例を示す図。 制限値ayと距離Dと介入強度の関係を示す図。 制限値ayと距離Dと介入強度の関係を示す図。 介入強度入力装置を備えた操作レバーの上面図。 介入強度入力装置を備えた操作レバーの側面図。 介入強度入力装置を備えた操作レバーの前面図。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下では、作業機の先端のアタッチメントとしてバケット10を備える油圧ショベルを例示するが、バケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルで本発明を適用しても構わない。さらに、複数の被駆動部材(アタッチメント、アーム、ブーム等)を連結して構成され、所定の動作平面上で動作する多関節型の作業機を有するものであれば油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
また、本稿では、或る形状を示す用語(例えば、目標面、制御対象面等)とともに用いられる「上」、「上方」又は「下方」という語の意味に関し、「上」は当該或る形状の「表面」を意味し、「上方」は当該或る形状の「表面より高い位置」を意味し、「下方」は当該或る形状の「表面より低い位置」を意味することとする。また、以下の説明では、同一の構成要素が複数存在する場合、符号(数字)の末尾にアルファベットを付すことがあるが、当該アルファベットを省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば、3つのポンプ300a、300b、300cが存在するとき、これらをまとめてポンプ300と表記することがある。
<基本構成>
図1は本発明の実施形態に係る油圧ショベルの構成図であり、図2は本発明の実施形態に係る油圧ショベルの制御コントローラを油圧駆動装置と共に示す図であり、図3は図2中のフロント制御用油圧ユニット160の詳細図である。
図1において、油圧ショベル1は、多関節型のフロント作業機1Aと車体1Bで構成されている。車体1Bは、左右の走行モータ3a,3bにより走行する下部走行体11と、下部走行体11の上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体12とからなる。フロント作業機1Aは、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8、アーム9及びバケット10)を連結して構成されており、フロント作業機1Aのブーム8の基端は上部旋回体12の前部に支持されている。
上部旋回体12に搭載された原動機であるエンジン18は、油圧ポンプ2とパイロットポンプ48を駆動する。油圧ポンプ2はレギュレータ2aによって容量が制御される可変容量型ポンプであり、パイロットポンプ48は固定容量型ポンプである。本実施形態においては、パイロットライン144,145,146,147,148,149の途中にシャトルブロック162が設けられている。オペレータの操作に応じてフロント作業機1Aの動作を指示する操作装置45,46,47から出力された油圧信号が、このシャトルブロック162を介してレギュレータ2aにも入力される。シャトルブロック162の詳細構成は省略するが、油圧信号がシャトルブロック162を介してレギュレータ2aに入力されており、油圧ポンプ2の吐出流量が当該油圧信号に応じて制御される。
パイロットポンプ48の吐出配管であるポンプライン148aはロック弁39を通った後、複数に分岐して操作装置45,46,47及びフロント制御用油圧ユニット160内の各弁に接続している。ロック弁39は本例では電磁切換弁であり、その電磁駆動部は運転室(図1)に配置されたゲートロックレバー(不図示)の位置検出器と電気的に接続している。ゲートロックレバーのポジションは位置検出器で検出され、その位置検出器からロック弁39に対してゲートロックレバーのポジションに応じた信号が入力される。ゲートロックレバーのポジションがロック位置にあればロック弁39が閉じてポンプライン148aが遮断され、ロック解除位置にあればロック弁39が開いてポンプライン148aが開通する。つまり、ポンプライン148aが遮断された状態では操作装置45,46,47による操作が無効化され、旋回や掘削等の動作が禁止される。
ブーム8、アーム9、バケット10及び上部旋回体12はブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7及び旋回油圧モータ4(油圧アクチュエータ)によりそれぞれ駆動される被駆動部材を構成する。これら被駆動部材8,9,10,12への動作指示は、上部旋回体12上の運転室内に搭載された走行右レバー23a、走行左レバー23b、操作右レバー1aおよび操作左レバー1b(これらを操作レバー1、23と総称することがある)のオペレータによる操作に応じて出力される。
運転室内には、走行右レバー23aを有する操作装置47aと、走行左レバー23bを有する操作装置47bと、操作右レバー1aを共有する操作装置45a、46aと、操作左レバー1bを共有する操作装置45b、46bが設置されている。走行レバー23a,23bと操作レバー1a,1bはショベルの操作中にオペレータの手が置かれる把持部である。操作装置45,46,47は、油圧パイロット方式であり、パイロットポンプから吐出される圧油をもとに、それぞれオペレータにより操作される操作レバー1、23の操作量(例えば、レバーストローク)と操作方向に応じたパイロット圧(操作圧と称することがある)を発生する。このように発生したパイロット圧は、コントロールバルブユニット20内の対応する流量制御弁15a〜15f(図2参照)の油圧駆動部150a〜155bにパイロットライン144a〜149b(図2参照)を介して供給され、これら流量制御弁15a〜15fを駆動する制御信号として利用される。
油圧ポンプ2から吐出された圧油は、流量制御弁15a、15b、15c、15d、15e、15f(図2参照)を介して走行右油圧モータ3a、走行左油圧モータ3b、旋回油圧モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7に供給される。供給された圧油によってブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7が伸縮することで、ブーム8、アーム9、バケット10がそれぞれ回動し、バケット10の位置及び姿勢が変化する。また、供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転することで、下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回する。さらに、供給された圧油によって走行右油圧モータ3a、走行左油圧モータ3bが回転することで、下部走行体11が走行する。
一方、ブーム8、アーム9、バケット10の回動角度α、β、γ(図5参照)を測定可能なように、ブームピンにブーム角度センサ30、アームピンにアーム角度センサ31、バケットリンク13にバケット角度センサ32が取付けられ、上部旋回体12には基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体12(車体1B)の前後方向の傾斜角θ(図5参照)を検出する車体傾斜角センサ33が取付けられている。
本実施形態の油圧ショベルには、オペレータの掘削操作を補助する目的で、操作装置45a,45b,46cの操作時に、予め定めた条件に従って、操作装置の操作で指示された動作と異なる動作でフロント作業機1Aを動作させるマシンコントロールを実行する制御システムが備えられている。具体的には、操作装置45b,46aを介して掘削操作(具体的には、アームクラウド、バケットクラウド及びバケットダンプの少なくとも1つの指示)が入力された場合、目標面60(図5参照)と作業機1Aの先端(本実施形態ではバケット10の爪先とする)の位置関係を基に、作業機1Aの先端の位置が目標面60上及びその上方の領域内に保持されるように油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つを強制的に動作させる制御信号(例えば、ブームシリンダ5を伸ばして強制的にブーム上げ動作を行う)を該当する流量制御弁15a,15b,15cに出力する掘削制御システムが備えられている。本稿ではこの制御を「領域制限制御」または「マシンコントロール」と称することがある。この制御によりバケット10の爪先が目標面60の下方に侵入することが防止されるので、オペレータの技量の程度に関わらず目標面60に沿った掘削が可能となる。本実施形態では、領域制限制御に係る制御点を、油圧ショベルのバケット10の爪先(作業機1Aの先端)に設定している。制御点は作業機1Aの先端部分の点であればバケット爪先以外にも変更可能である。例えば、バケット10の底面や、バケットリンク13の最外部も選択可能である。
<スイッチ17、入力装置96、表示装置53>
領域制限制御(マシンコントロール)の実行が可能な掘削制御システムは、運転室内に設置され、目標面60と作業機1Aの位置関係が表示可能な表示装置(例えば液晶ディスプレイ)53と、操作レバー1aに設けられ、マシンコントロールの有効無効を択一的に切り替えるマシンコントロールON/OFFスイッチ17と、操作レバー1aに設けられ、操作装置45a,45b,46a(操作レバー1a,1b)を介したオペレータ操作に対するマシンコントロールの介入強度を調整する介入強度入力装置96(入力装置)と、マシンコントロールが実行可能なコンピュータである制御コントローラ(制御装置)40とを備えている。ここで「介入強度」とは、操作装置の操作で指示されるフロント作業機1Aの動作に対してマシンコントロールが介入する度合の大小を示すものとする。
図8A,B,Cは、マシンコントロールON/OFFスイッチ17と、介入強度入力装置96(入力装置)を備えた操作レバー1aの構成図である。図8Aは操作レバー1aの上面図、図8Bはその側面図、図8Cはその前面図である。
マシンコントロールON/OFFスイッチ17は、ジョイスティック形状の操作レバー1aにおける前面の上端部に設けられており、例えば操作レバー1aを握るオペレータの親指により押下される。マシンコントロールON/OFFスイッチ17は、モーメンタリスイッチであり、押下される度にマシンコントロールの有効と無効が切り替えられる。なお、スイッチ17の設置箇所は操作レバー1a(1b)に限らず、その他の場所に設けても良い。
介入強度入力装置96は、マシンコントロールON/OFFスイッチ17の隣りに設けられており、スイッチ17と同様に操作レバー1aを握るオペレータの親指により操作される。介入強度入力装置96は、操作レバー1aの表面に対して奥方向及び手前方向(図8B参照)に傾倒するスティック部を有するアナログスティックであり、当該スティック部の傾倒方向及び傾倒量を制御コントローラ40(マシンコントロール部43)に出力する。図8Bのスティック部の位置が初期位置であり、オペレータが手を離すとスティック部はレバー内部に設けられた付勢手段(図示せず)の付勢力により初期位置に戻る。スティック部を奥方向に傾倒すると初期位置からの傾倒量(操作量)に応じて介入強度が強くなり、手前方向に傾倒すると初期位置からの傾倒量(操作量)に応じて介入強度が弱くなる。
<フロント制御用油圧ユニット160>
図3に示すように、フロント制御用油圧ユニット160は、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144a、144bに設けられ、操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出する圧力センサ70a、70b(図3参照)と、一次ポート側がポンプライン148aを介してパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54a(図3参照)と、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144aと電磁比例弁54aの二次ポート側に接続され、パイロットライン144a内のパイロット圧と電磁比例弁54aから出力される制御圧(第2制御信号)の高圧側を選択し、流量制御弁15aの油圧駆動部150aに導くシャトル弁82a(図3参照)と、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144bに設置され、制御コントローラ40からの制御信号を基にパイロットライン144b内のパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁54b(図3参照)と、一次ポート側がパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54c(図3参照)と、パイロットライン144b内のパイロット圧と電磁比例弁54cから出力される制御圧の高圧側を選択し、流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導くシャトル弁82b(図3参照)を備えている。
また、フロント制御用油圧ユニット160は、アーム9用のパイロットライン145a、145bに設置され、操作レバー1bの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出して制御コントローラ40に出力する圧力センサ71a、71b(図3参照)と、パイロットライン145bに設置され、制御コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧(第1制御信号)を低減して流量制御弁15bの油圧駆動部151bに出力する電磁比例弁55b(図3参照)と、パイロットライン145aに設置され、制御コントローラ40からの制御信号を基にパイロットライン145a内のパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁55a(図3参照)と、一次ポート側がパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁55c(図3参照)と、電磁比例弁55aと電磁比例弁55cから出力される制御圧の高圧側を選択し、流量制御弁15bの油圧駆動部151aに導くシャトル弁84a(図3参照)が設けられている。
また、フロント制御用油圧ユニット160は、バケット10用のパイロットライン146a、146bには、操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出して制御コントローラ40に出力する圧力センサ72a、72b(図3参照)と、制御コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁56a、56b(図3参照)と、一次ポート側がパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁56c,56d(図3参照)と、電磁比例弁56a,56bと電磁比例弁56c,56dから出力される制御圧の高圧側を選択し、流量制御弁15cの油圧駆動部152a,152bに導くシャトル弁83a,83b(図3参照)とがそれぞれ設けられている。なお、図3では、圧力センサ70、71、72と制御コントローラ40との接続線は紙面の都合上省略している。
電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bは、非通電時には開度が最大で、制御コントローラ40からの制御信号である電流を増大させるほど開度は小さくなる。一方、電磁比例弁54a,54c,55c,56c,56dは、非通電時には開度をゼロ、通電時に開度を有し、制御コントローラ40からの電流(制御信号)を増大させるほど開度は大きくなる。このように各電磁比例弁の開度54,55,56は制御コントローラ40からの制御信号に応じたものとなる。
上記のように構成されるフロント制御用油圧ユニット160において、制御コントローラ40から制御信号を出力して電磁比例弁54a,54c,55c,56c,56dを駆動すると、操作装置45a,46aのオペレータ操作が無い場合にもパイロット圧(第2制御信号)を発生できるので、ブーム上げ動作、ブーム下げ動作、アームクラウド動作、バケットクラウド動作又はバケットダンプ動作を強制的に発生できる。また、これと同様に制御コントローラ40により電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bを駆動すると、操作装置45a,45b,46aのオペレータ操作により発生したパイロット圧(第1制御信号)を減じたパイロット圧(第2制御信号)を発生することができ、ブーム下げ動作、アームクラウド/ダンプ動作、バケットクラウド/ダンプ動作の速度をオペレータ操作よりも強制的に低減できる。
本稿では、流量制御弁15a〜15cに対する制御信号のうち、操作装置45a,45b,46aの操作によって発生したパイロット圧を「第1制御信号」と称する。そして、流量制御弁15a〜15cに対する制御信号のうち、制御コントローラ40で電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bを駆動して第1制御信号を補正(低減)して生成したパイロット圧と、制御コントローラ40で電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bを駆動して第1制御信号とは別に新たに生成したパイロット圧を「第2制御信号」と称する。
詳細は後述するが、第2制御信号は、第1制御信号によって発生される作業機1Aの先端の速度ベクトルが所定の制限に反するときに生成され、当該所定の制限に反しない作業機1Aの先端の速度ベクトルを発生させる制御信号として生成される。なお、同一の流量制御弁15a〜15cにおける一方の油圧駆動部に対して第1制御信号が、他方の油圧駆動部に対して第2制御信号が生成される場合は、第2制御信号を優先的に油圧駆動部に作用させるものとし、第1制御信号を電磁比例弁で遮断し、第2制御信号を当該他方の油圧駆動部に入力する。したがって、流量制御弁15a〜15cのうち第2制御信号が演算されたものについては第2制御信号を基に制御され、第2制御信号が演算されなかったものについては第1制御信号を基に制御され、第1及び第2制御信号の双方が発生しなかったものについては制御(駆動)されないことになる。上記のように第1制御信号と第2制御信号を定義すると、上記の「領域制限制御」または「マシンコントロール」は、第2制御信号に基づく流量制御弁15a〜15cの制御ということもできる。
<制御コントローラ40>
図4に、制御コントローラ40のハードウェア構成を示す。制御コントローラ40は、入力部91と、プロセッサである中央処理装置(CPU)92と、記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)93及びランダムアクセスメモリ(RAM)94と、出力部95とを有している。入力部91は、作業機姿勢検出装置50である角度センサ30〜32及び傾斜角センサ33からの信号と、任意の目標面60を設定するための装置である目標面設定装置51からの信号と、マシンコントロールON/OFFスイッチ17からの信号と、操作装置45a,45b,46aからの操作量を検出する圧力センサ(圧力センサ70,71,72を含む)であるオペレータ操作検出装置52aからの信号と、介入強度入力装置96からの信号を入力し、CPU92が演算可能なように変換する。ROM93は、後述するフローチャートに係る処理を含め領域制限制御を実行するための制御プログラムと、当該フローチャートの実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり、CPU92は、ROM93に記憶された制御プログラムに従って入力部91及びメモリ93、94から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力部95は、CPU92での演算結果に応じた出力用の信号を作成し、その信号を電磁比例弁54〜56または表示装置53に出力することで、油圧アクチュエータ5〜7を駆動・制御したり、車体1B、バケット10及び目標面60等の画像を表示装置53であるモニタの表示画面上に表示させたりする。
なお、図4の制御コントローラ40は、記憶装置としてROM93及びRAM94という半導体メモリを備えているが、記憶装置であれば特に半導体メモリに限定することなく代替可能であり、例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えても良い。
図6は、本発明の実施形態に係る制御コントローラ40の機能ブロック図である。制御コントローラ40は、マシンコントロール部43と、電磁比例弁制御部44と、表示制御部374を備えている。
作業機姿勢検出装置50は、ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32、車体傾斜角センサ33、から構成される。
目標面設定装置51は、目標面60に関する情報(各目標面の位置情報や傾斜角度情報を含む)を入力可能なインターフェースである。目標面設定装置51を介した目標面の入力は、オペレータが手動で行っても、ネットワーク等を介して外部から取り込んでも良い。また、目標面設定装置51にはGNSS受信機等の衛星通信アンテナ(図示せず)が接続されている。グローバル座標系(絶対座標系)上に規定された目標面の3次元データを格納した外部端末とショベルがデータ通信可能な場合には、当該衛星通信アンテナにより特定したショベルのグローバル座標を基にショベル位置に対応する目標面を当該外部端末の3次元データ内で探索して取り込むことができる。
オペレータ操作検出装置52aは、オペレータによる操作レバー1a、1b(操作装置45a,45b,46a)の操作によってパイロットライン144,145,146に生じる操作圧(第1制御信号)を取得する圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72bから構成される。すなわち、作業機1Aに係る油圧シリンダ5,6,7に対する操作を検出している。
<表示装置>
表示制御部374は、マシンコントロール部43から出力される作業機姿勢、目標面、マシンコントロールのON/OFF状態、オペレータ操作に対するマシンコントロールの介入強度の情報を基に表示装置53を制御する部分である。表示制御部374には、アイコンを含む表示関連データが多数格納されている表示ROMが備えられており、表示制御部374が、入力情報に含まれるフラグに基づいて所定のプログラムを読み出すとともに、表示装置53における表示制御をする。
具体的には、表示制御部374は、図15に示すように、介入強度入力装置96のスティック部の傾倒方向と傾倒量を基に介入強度(介入強度入力装置96による制限値ayの変化の度合)を表示部395に表示する。図12の例では、スティック部の傾倒量(操作量)に比例して表示部395における介入強度の数値を変化させており、介入強度が強くなる奥方向にスティック部が傾倒された場合の介入強度は正(+)と表示され、介入強度が弱くなる手前方向に傾倒された場合の介入強度は負(−)と表示される。表示部395に表示する介入強度は、図15に例示した数値だけでなく、その程度を示すメータ表示などを利用しても良い。
また、マシンコントロールのON/OFF状態がONであることを示す情報がマシンコントロール部43から入力された場合、表示制御部374は、表示画面391上にマシンコントロールのON/OFF状態がONであることを示すアイコン393を表示する。一方、マシンコントロールのON/OFF状態がOFFであることを示す情報が入力された場合、表示制御部374は表示画面391上でアイコン394を非表示にする。図15の表示画面391には、目標面60とバケット10の位置関係をオペレータに通知するための、目標面60の縦断面図(バケット10の側面図)と、バケット10の爪先位置における目標面60の横断面図が作業機姿勢及び目標面の情報を基に表示されている。
<マシンコントロール部43、電磁比例弁制御部44>
図7は図6中のマシンコントロール部43の機能ブロック図である。マシンコントロール部43は、操作装置45a,45b,46cの操作時に,予め定めた条件に従ってフロント作業機1Aを動作させるマシンコントロールを実行する。マシンコントロール部43は、操作量演算部43aと、姿勢演算部43bと、目標面演算部43cと、シリンダ速度演算部43dと、バケット先端速度演算部43eと、目標バケット先端速度演算部43fと、目標シリンダ速度演算部43gと、目標パイロット圧演算部43hと、補正度合演算部43mと、モード判定部43nを備えている。このうち、シリンダ速度演算部43d、バケット先端速度演算部43e、目標バケット先端速度演算部43f、目標シリンダ速度演算部43gおよび目標パイロット圧演算部43hを「制御信号演算部43X」と総称することがある。
操作量演算部43aは、オペレータ操作検出装置52aからの入力を基に操作装置45a,45b,46a(操作レバー1a,1b)の操作量を算出する。圧力センサ70,71,72の検出値から操作装置45a,45b,46aの操作量が算出できる。
なお、圧力センサ70,71,72による操作量の算出は一例に過ぎず、例えば各操作装置45a,45b,46aの操作レバーの回転変位を検出する位置センサ(例えば、ロータリーエンコーダ)で当該操作レバーの操作量を検出しても良い。
姿勢演算部43bは作業機姿勢検出装置50からの情報に基づき、作業機1Aの姿勢およびバケット10の爪先の位置を演算する。作業機1Aの姿勢は図5のショベル座標系上に定義できる。図5のショベル座標系は、上部旋回体12に設定された座標系であり、上部旋回体12に回動可能に支持されているブーム8の基底部を原点とし、上部旋回体12における垂直方向にZ軸、水平方向にX軸を設定した。X軸に対するブーム8の傾斜角をブーム角α、ブーム8に対するアーム9の傾斜角をアーム角β、アームに対するバケット爪先の傾斜角をバケット角γとした。水平面(基準面)に対する車体1B(上部旋回体12)の傾斜角を傾斜角θとした。ブーム角αはブーム角度センサ30により、アーム角βはアーム角度センサ31により、バケット角γはバケット角度センサ32により、傾斜角θは車体傾斜角センサ33により検出される。図5中に規定したようにブーム8、アーム9、バケット10の長さをそれぞれL1,L2,L3とすると、ショベル座標系におけるバケット爪先位置の座標および作業機1Aの姿勢はL1,L2,L3,α,β,γで表現できる。
目標面演算部43cは、目標面設定装置51からの情報に基づき目標面60の位置情報を演算し、これをROM93内に記憶する。本実施形態では、図5に示すように、3次元の目標面と作業機1Aが移動する平面(作業機の動作平面)が交差する交線を目標面60(作業機1Aが移動する2次元平面上の目標線)として利用する。
モード判定部43nは、姿勢演算部43bと目標面演算部43cの演算結果から求められるバケット爪先と目標面60の位置関係と、操作量演算部43aから入力される操作装置45b,46aの操作内容を基に、制御信号演算部43Xで行われる制御信号演算処理のモードを判定する。制御信号演算モードには、オペレータによるブーム下げ操作をマシンコントロールにより減速する「ブーム下げ減速モード」と、マシンコントロールより目標面60上又はその上方にバケット10が位置するようにブーム8を動作させる「ブーム上げ・下げモード」がある。モード判定部43nによるモード判定処理の具体的内容については図11を用いて後述し、当該2つのモードにおける制御信号演算処理(パイロット圧演算処理)の具体的内容についても図12,14を用いて後述する。なお、図7中のモード判定部43nには、制御線が接続されていないが、操作量演算部43a、姿勢演算部43b、目標面演算部43c及び制御信号演算部43Xと接続されているものとする。
補正度合演算部43mは、介入強度入力装置96から入力されるスティック部の傾倒方向及び傾倒量(操作方向及び操作量)に関する情報に基づき、オペレータ操作に対するマシンコントロールの介入強度の補正量を算出する。補正度合演算部43mは、スティック部の傾倒量(操作量)に比例して介入強度の補正量の数値を算出している。介入強度の補正量の符号は、介入強度が強くなる奥方向にスティック部が傾倒された場合、正(+)とし、介入強度が弱くなる手前方向に傾倒された場合、負(−)とする。本実施の形態における介入強度の補正量は、正と負ごとに10段階とするが、これは一例に過ぎず段階数を任意に増減しても良い。また、介入強度の補正量の符号を正負の一方に限定しても良い。その際、入力装置96のスティック部の傾倒方向を制限しても良い。
シリンダ速度演算部43dは、操作量演算部43aで演算された操作量(第1制御信号)を基に各油圧シリンダ5,6,7の動作速度(シリンダ速度)を演算する。各油圧シリンダ5,6,7の動作速度は、操作量演算部43aで演算された操作量と、流量制御弁15a,15b,15cの特性と、各油圧シリンダ5,6,7の断面積と、油圧ポンプ2の容量(傾転角)と回転数を乗じて得られるポンプ流量(吐出量)等から算出できる。
バケット先端速度演算部43eは、シリンダ速度演算部43dで演算された各油圧シリンダ5,6,7の動作速度と、姿勢演算部43bで演算された作業機1Aの姿勢とを基に、オペレータ操作(第1制御信号)によるバケット先端(爪先)の速度ベクトルBを演算する。バケット先端の速度ベクトルBは、目標面演算部43cから入力される目標面60の情報を基に、目標面60に水平な成分bxと垂直な成分byに分解できる。
目標バケット先端速度演算部43fは、バケット先端(爪先)の目標速度ベクトルTを演算する。そのために、目標バケット先端速度演算部43fは、まず、バケット先端から制御対象の目標面60までの距離D(図5参照)と図9のグラフを基にバケット先端の速度ベクトルの目標面60に垂直な成分の下限制限値ayを算出する。以下、下限制限値ayの「下限」を省略して「制限値ay」と称する。制限値ayは、バケット先端の速度ベクトルにおける目標面60の上方から目標面60に向かう垂直方向成分の大きさの最大値とも換言できる。制限値ayの計算は、図9に示すような制限値ayと距離Dとの関係を定義した関数又はテーブル等の形式で制御コントローラ40のROM(記憶装置)93に記憶しておき、この関係を適宜読み出して行う。距離Dは、姿勢演算部43bで演算したバケット10の爪先の位置(座標)と、ROM93に記憶された目標面60を含む直線の距離から算出できる。図9のグラフでは、制限値ayは、距離Dごとに設定されており、かつ、距離Dがゼロに近づくほどその絶対値は小さくなるように設定されている。介入強度入力装置96のスティック部が初期位置にある場合には図9のグラフを基に制限値ayが決定される。なお、制限値ayと距離Dとの関係は、距離Dの増加とともに制限値ayが単調減少する特性を有することが好ましいが、図9に示したものに限らない。例えば、距離Dが正の所定値以上または負の所定値以下で制限値ayが個別の所定値に保持されるようにしても良いし、制限値ayと距離Dの関係を曲線で定義しても良い。
次に目標バケット先端速度演算部43fは、補正度合演算部43mから入力される介入強度の補正量を基に制限値ayと距離Dの関係を変化させ、これにより同じ距離Dにおける制限値ayを介入強度の補正量に応じて変化させる。具体的には、介入強度入力装置96のスティック部が奥方向(一の方向)に操作されると、目標バケット先端速度演算部43fは、距離Dごとの制限値ayを、それぞれ初期位置の値以上の値に変化させる(つまり初期位置の状態よりもマシンコントロールが介入する度合が大きくなる方向に変化する)。反対に、介入強度入力装置96が手前方向(他の方向)に操作されると、目標バケット先端速度演算部43fは、距離Dごとの制限値ayを、それぞれ初期位置の値以下の値に変化させる(つまり、初期位置の状態よりもマシンコントロールが介入する度合が小さくなる方向に変化する)。本実施の形態の制限値ayは、介入強度(入力装置96の傾倒方向及び傾倒量から算出される補正量で補正した介入強度)に応じて図10のグラフのように変化する。制限値ayは、介入強度が正の場合、介入強度の大きさの増加とともに大きくなるように補正され、介入強度が負の場合、介入強度の大きさの増加とともに小さくなるように補正される。図10の例では、正の介入強度での制限値ayの分布をV字型とし、負の介入強度での分布を逆V字型とした。なお、図10では介入強度の補正量が−10,−5,0,+5,+10の5段階のグラフを示しているが、言うまでも無く他の段階のグラフも記憶されている。また、図10の例では各介入強度の制限値ayを原点を通過する直線又は折線状に分布させたが、原点を通過する曲線状に分布させても良い。また、図9を経由することなく図10から制限値ayを直接算出しても良い。
さらに目標バケット先端速度演算部43fは、バケット先端の速度ベクトルBの目標面60に垂直な成分byを取得し、この垂直成分byと制限値ayの正負と絶対値の大小関係を基に、マシンコントロールによるブーム8の動作で発生すべきバケット先端の速度ベクトルCの目標面60に垂直な成分cyを算出するために必要な式を選択する(式の選択過程については図12,14等を用いて後述する)。そして、その選択した式から垂直成分cyを算出し、その垂直成分cyを発生する際にブームに許容される動作から水平成分cxを算出するとともに、速度ベクトルB,Cと制限値ayから目標速度ベクトルTを算出する。以下では、目標速度ベクトルTにおいて目標面60に垂直な成分をty、水平な成分をtxとし、目標ベクトルTの導出過程についても図12,14等を用いて後述する。
目標シリンダ速度演算部43gは、目標バケット先端速度演算部43fで算出された目標速度ベクトルT(tx,ty)を基に各油圧シリンダ5,6,7の目標速度を演算する。本実施形態では、目標速度ベクトルTを、オペレータ操作による速度ベクトルBと、マシンコントロールによる速度ベクトルCの和で定義しているので、ブームシリンダ5の目標速度は速度ベクトルCから演算できる。これにより、バケット先端の目標速度ベクトルTは、各油圧シリンダ5,6,7を目標速度で動作させたときにバケット先端に表れる速度ベクトルの合成値となる。
目標パイロット圧演算部43hは、目標シリンダ速度演算部43gで算出された各シリンダ5,6,7の目標速度を基に各油圧シリンダ5,6,7の流量制御弁15a,15b,15cへの目標パイロット圧を演算する。そして、演算した各油圧シリンダ5,6,7の目標パイロット圧を電磁比例弁制御部44に出力する。
電磁比例弁制御部44は、目標パイロット圧演算部43hで算出された各流量制御弁15a,15b,15cへの目標パイロット圧を基に、各電磁比例弁54〜56への指令を演算する。
なお、オペレータ操作に基づくパイロット圧(第1制御信号)と、目標パイロット圧演算部43hで算出された目標パイロット圧が一致する場合には、該当する電磁比例弁54〜56への電流値(指令値)はゼロとなり、該当する電磁比例弁54〜56の動作は行われない。
<マシンコントロールのフローチャート>
[モード判定処理]
図11は制御コントローラ40のモード判定部43nで実行されるモード判定処理のフローチャートである。このフローチャートは、油圧ショベル1の電源がONの間、所定の制御周期で繰り返される。図11のフローチャートが開始されると、モード判定部43nは、まずS110にて、操作量演算部43aからの入力を基にオペレータによるアームクラウド操作が無いか否かを判定する。ここでアームクラウド操作が無い場合にはS112に進む。一方、アームクラウド操作が有る場合にはS118に進んで、図14に示すブーム上げ・下げモードを制御信号演算部43Xで実行する。
S112では、モード判定部43nは、操作量演算部43aからの入力を基にオペレータによるブーム下げ操作が有るか否かを判定する。ここでブーム下げ操作が有る場合にはS114に進む。一方、ブーム下げ操作が無い場合にはS118に進んでブーム上げ・下げモードを制御信号演算部43Xで実行する。
S114では、モード判定部43nは、姿勢演算部43bから入力される作業機1Aの姿勢と、目標面演算部43cから入力される目標面60の位置情報を基に、バケット爪先が目標面60の上又は上方にあるか否かを判定する。ここで爪先が目標面60の上又は上方にある場合にはS116に進んで、図12に示すブーム下げ減速モードを制御信号演算部43Xで実行する。一方、爪先が目標面60の下方にある場合にはS118に進んでブーム上げ・下げモードを制御信号演算部43Xで実行する。
S116又はS118が終了して所定の制御周期が経過したら、S110に戻って同様の処理を繰り返す。
[ブーム下げ減速モード]
図12は制御コントローラ40の制御信号演算部43Xで実行されるブーム下げ減速モード(図11のS116)のフローチャートである。図11のフローチャートにおいてS116に到達したら、制御信号演算部43Xは図12のフローチャートを開始する。
S410では、シリンダ速度演算部43dは、操作量演算部43aで演算された操作量を基に各油圧シリンダ5,6,7の動作速度(シリンダ速度)を演算する。
S420では、バケット先端速度演算部43eは、シリンダ速度演算部43dで演算された各油圧シリンダ5,6,7の動作速度と、姿勢演算部43bで演算された作業機1Aの姿勢とを基に、オペレータ操作によるバケット先端(爪先)の速度ベクトルBを演算する。
S430では、バケット先端速度演算部43eは、姿勢演算部43bで演算したバケット10の爪先の位置(座標)と、ROM93に記憶された目標面60を含む直線の距離から、バケット先端から制御対象の目標面60までの距離D(図5参照)を算出する。そして、距離Dと図9のグラフを基にバケット先端の速度ベクトルの目標面60に垂直な成分の制限値ayを算出する。さらに、補正度合演算部43mから入力される介入強度の補正量と、図10のグラフと、距離Dを基に制限値ayを算出する。なお、図11のフローチャートでブーム下げ減速モードが選択された場合には距離Dは正(+)であり、その場合、図10から制限値ayは負(−)となる。
S440では、バケット先端速度演算部43eは、S420で算出したオペレータ操作によるバケット先端の速度ベクトルBにおいて、目標面60に垂直な成分byを取得する。
S470では、目標バケット先端速度演算部43fは、制限値ayと垂直成分byの絶対値を比較し、制限値ayの絶対値が垂直成分byの絶対値以上の場合にはS600に進む。一方、制限値ayの絶対値が垂直成分byの絶対値未満の場合にはS610に進む。
S600に進んだ場合、速度ベクトルBにおける垂直成分byの大きさは制限値ayの大きさ以下なので、マシンコントロールによって速度ベクトルBを減速する必要がない。つまり、S600に至った場合の目標速度ベクトルTは、オペレータ操作による速度ベクトルBと一致する。したがって、目標速度ベクトルTの目標面60に垂直な成分をty、水平な成分txとすると、それぞれ「ty=by、tx=bx」と表すことができる。
一方、S610に進んだ場合、速度ベクトルBにおける垂直成分byの大きさは制限値ayの大きさを越えるので、マシンコントロールによって速度ベクトルBの垂直成分を制限値ayまで減速しなければならない。そこで、目標バケット先端速度演算部43fは、目標速度ベクトルTの垂直成分tyをayとする(S610)。そして、マシンコントロールによるブーム下げの減速で制限値ayを出力可能な速度ベクトルAを算出し、その水平成分(ax)を目標速度ベクトルTの水平成分txとする(S620)。S610,620の結果から目標速度ベクトルTは結局「ty=ay、tx=ax」となる(S630)。
なお、上記S610〜S630は、マシンコントロールの結果のバケット先端の速度ベクトルの向きを、オペレータの操作による速度ベクトルの向きに合わせる場合の処理である。この他にマシンコントロールでは目標面に平行な向きの速度成分に介入しない方式も考えられる。この場合、S610及びS620は省略し、S630でty=ay,tx=bxとする。
S550では、目標シリンダ速度演算部43gは、S600またはS630で決定した目標速度ベクトルT(ty,tx)を基に各油圧シリンダ5,7の目標速度を演算する。目標速度ベクトルTの垂直成分tyがayで水平成分txがaxのとき(すなわちS630を通過したとき)、本実施の形態では、アーム及びバケットの動作(操作)に対してはマシンコントロールを介入させず、ブーム下げの動作に対してマシンコントロールを介入させて目標速度ベクトルTを実現するように設定されている。つまり、このとき、ブーム8の流量制御弁15aについては第2制御信号が演算されるが、アーム9及びバケット10の流量制御弁15b,15cについては第2制御信号は演算されない。
S560では、目標パイロット圧演算部43hは、S550で算出された各シリンダ5,7の目標速度を基に各油圧シリンダ5,7の流量制御弁15a,15cへの目標パイロット圧を演算する。
S590では、目標パイロット圧演算部43hは、各油圧シリンダ5,7の流量制御弁15a,15cへの目標パイロット圧を電磁比例弁制御部44に出力する。電磁比例弁制御部44は、各油圧シリンダ5,7の流量制御弁15a,15cに目標パイロット圧が作用するように電磁比例弁54,56を制御し、これにより土羽打ち作業を含むブーム下げ動作が行われる。特に、S630を経由した場合には目標速度ベクトルの垂直成分tyが制限値ayに制限され、マシンコントロールによるブーム下げの減速が発動される。
上記のように構成された油圧ショベル1を用いて土羽打ち作業(水平面の締め固め動作)を行った場合の動作を、図13を用いて説明する。図13(a)は介入強度が初期位置の動作であり、図13(b)は介入強度を小さくした場合(例えば−5)の動作である。いずれの場合も時刻T1でオペレータがブーム下げ操作を行っており、ブーム8が下がることによって、目標面60との距離Dが小さくなる。その後、時刻T2で距離がD1のときに速度ベクトルBの垂直成分byが制限値ayに達したとすると、時刻T2からマシンコントロールによりブーム下げ速度が制限され、時刻T3で目標面60との距離Dが0になるとブーム下げパイロット圧が0になる。
介入強度が初期位置の値(基準値)の場合、図13(a)に示すように、ブーム下げ速度が制限され始める距離D1が相対的に大きく、距離Dの変化率が相対的に小さい。この場合、3段目のグラフに示すように、ブーム下げ速度の指令の値と実際の値との乖離が小さく、バケット10は滑らかに目標面60に達する。そのため、時刻T3直後のブームロッド圧の上昇度が小さい。
一方で、介入強度を初期位置の値よりも小さくした場合、図13(b)に示すように、ブーム下げ速度が制限され始める距離D1が相対的に小さくなり、距離Dの変化率が相対的に大きくなる。この場合、ブーム下げ速度の指令の値と実際の値との乖離が大きく、目標面60に達する直前のブーム下げ速度が図13(a)の場合と比較して大きい。そのため、目標面60に衝突しながらバケット10が停止し、時刻T3直後のブームロッド圧の上昇度が図13(a)の場合と比較して大きくなる。
つまり、図12のフローチャートに従って制御されるショベルにおいては、介入強度入力装置96の手前方向の傾倒量を変化させることで距離Dごとの制限値ayを初期位置の値より小さくすると、マシンコントロールON/OFFスイッチ17がONの状態であってもブーム下げによりバケット10で目標面60を押圧できる(つまり、土羽打ちをすることができる)。さらに、その際の押圧力は介入強度入力装置96の手前方向の傾倒量を変化させることで調整できる。また、介入強度入力装置96を利用してマシンコントロールの介入強度をオペレータの技量や好みに合わせて調節すれば、工数や精神的負担の軽減効果を発揮できる。
[ブーム上げ・下げモード]
図14は制御コントローラ40の制御信号演算部43Xで実行されるブーム上げ・下げモード(図11のS118)のフローチャートである。図11のフローチャートにおいてS118に到達したら、制御信号演算部43Xは図14のフローチャートを開始する。以下では、図12と同じ処理については説明を省略し、S450の説明からはじめる。
S450では、目標バケット先端速度演算部43fは、S430で算出した制限値ayが0以上か否かを判定する。なお、図14の右上に示したようにxy座標を設定する。当該xy座標では、x軸は目標面60と平行で図中右方向を正とし、y軸は目標面60に垂直で図中上方向を正とする。図14中の凡例では垂直成分by及び制限値ayは負であり、水平成分bx及び水平成分cx及び垂直成分cyは正である。そして、図9,10から明らかであるが、制限値ayが0のときは距離Dが0、すなわち爪先が目標面60上に位置する場合であり、制限値ayが正のときは距離Dが負、すなわち爪先が目標面60より下方に位置する場合であり、制限値ayが負のときは距離Dが正、すなわち爪先が目標面60より上方に位置する場合である。S450で制限値ayが0以上と判定された場合(すなわち、爪先が目標面60上またはその下方に位置する場合)にはS460に進み、制限値ayが0未満の場合にはS480に進む。
S460では、目標バケット先端速度演算部43fは、オペレータ操作による爪先の速度ベクトルBの垂直成分byが0以上か否かを判定する。byが正の場合は速度ベクトルBの垂直成分byが上向きであることを示し、byが負の場合は速度ベクトルBの垂直成分byが下向きであることを示す。S460で垂直成分byが0以上と判定された場合(すなわち、垂直成分byが上向きの場合)にはS470に進み、垂直成分byが0未満の場合にはS500に進む。
S470では、目標バケット先端速度演算部43fは、制限値ayと垂直成分byの絶対値を比較し、制限値ayの絶対値が垂直成分byの絶対値以上の場合にはS500に進む。一方、制限値ayの絶対値が垂直成分byの絶対値未満の場合にはS530に進む。
S500では、目標バケット先端速度演算部43fは、マシンコントロールによるブーム8の動作で発生すべきバケット先端の速度ベクトルCの目標面60に垂直な成分cyを算出する式として「cy=ay−by」を選択し、その式とS430の制限値ayとS440の垂直成分byを基に垂直成分cyを算出する。そして、算出した垂直成分cyをブーム8の動作のみで出力可能なブーム8の速度ベクトルCをその時点のフロント作業機1Aの姿勢と垂直成分cyに基づいて算出し、その水平成分をcxとする(S510)。
S520では、目標速度ベクトルTを算出する。目標速度ベクトルTの目標面60に垂直な成分をty、水平な成分txとすると、それぞれ「ty=by+cy、tx=bx+cx」と表すことができる。これにS500の式(cy=ay−by)を代入すると目標速度ベクトルTは結局「ty=ay、tx=bx+cx」となる。つまり、S520に至った場合の目標速度ベクトルの垂直成分tyは制限値ayに制限され、マシンコントロールによる強制ブーム上げが発動される。
S480では、目標バケット先端速度演算部43fは、オペレータ操作による爪先の速度ベクトルBの垂直成分byが0以上か否かを判定する。S480で垂直成分byが0以上と判定された場合(すなわち、垂直成分byが上向きの場合)にはS530に進み、垂直成分byが0未満の場合にはS490に進む。
S490では、目標バケット先端速度演算部43fは、制限値ayと垂直成分byの絶対値を比較し、制限値ayの絶対値が垂直成分byの絶対値以上の場合にはS530に進む。一方、制限値ayの絶対値が垂直成分byの絶対値未満の場合にはS500に進む。
S530に至った場合、マシンコントロールでブーム8を動作させる必要が無いので、目標バケット先端速度演算部43fは、速度ベクトルCをゼロとする。この場合、目標速度ベクトルTは、S520で利用した式(ty=by+cy、tx=bx+cx)に基づくと「ty=by、tx=bx」となり、オペレータ操作による速度ベクトルBと一致する(S540)。
S550では、目標シリンダ速度演算部43gは、S520またはS540で決定した目標速度ベクトルT(ty,tx)を基に各油圧シリンダ5,6,7の目標速度を演算する。なお、上記説明から明らかであるが、図14の場合に目標速度ベクトルTが速度ベクトルBに一致しないときには、マシンコントロールによるブーム8の動作で発生する速度ベクトルCを速度ベクトルBに加えることで目標速度ベクトルTを実現する。
S560では、目標パイロット圧演算部43hは、S550で算出された各シリンダ5,6,7の目標速度を基に各油圧シリンダ5,6,7の流量制御弁15a,15b,15cへの目標パイロット圧を演算する。
S590では、目標パイロット圧演算部43hは、各油圧シリンダ5,6,7の流量制御弁15a,15b,15cへの目標パイロット圧を電磁比例弁制御部44に出力する。電磁比例弁制御部44は、各油圧シリンダ5,6,7の流量制御弁15a,15b,15cに目標パイロット圧が作用するように電磁比例弁54,55,56を制御し、これにより作業機1Aによる掘削が行われる。例えば、オペレータが操作装置45bを操作して、アームクラウド動作によって水平掘削を行う場合には、バケット10の先端が目標面60に侵入しないように電磁比例弁55cが制御され、ブーム8の上げ動作が自動的に行われる。
なお、ここでは説明を簡略化するために、S480でYESの場合にS530に進むように構成したが、S530に代えてS500に進むように構成を変更しても良い。このように構成すると、アーム9の姿勢が略垂直になる位置からさらにアームクラウド操作をするとマシンコントロールによる強制ブーム下げが発動し目標面60に沿った掘削が行われることになるので、目標面60に沿った掘削距離を長くできる。また、図14のフローチャートでは強制ブーム上げを行う場合の例を挙げたが、掘削精度向上のため、マシンコントロールにアーム9の速度を必要に応じて減速する制御を加えても良い。また、バケット10の目標面60に対する角度Bが一定値となり、均し作業が容易となるように、電磁比例弁56c,56dを制御してバケット10の角度が所望の角度に保持される制御を加えても良い。
図14のフローチャートに従って制御されるショベルにおいても、介入強度入力装置96を利用してマシンコントロールの介入強度をオペレータの技量や好みに合わせて調節すれば、工数や精神的負担の軽減効果を発揮できる。
<介入強度と制限値ayと距離Dの関係の変形例>
介入強度と制限値ayと距離Dの関係は、図10に示したものの他にも、例えば図16や図17に示したものが利用可能である。
図16の例は、速度ベクトルBの目標面60に垂直な成分byに制限がかかる距離Dの範囲が決まっているパターンであり、介入強度の変化に応じてその範囲も変化するように設定されている。このように設定すると、byに制限がかかる範囲を直接的に変更できる。また、表示装置53の表示部375にbyに制限がかかる距離を表示すれば、byに制限がかかる範囲をオペレータが直感的に理解し易いというメリットもある。
図17の例は、図16同様に速度ベクトルBの目標面60に垂直な成分byに制限がかかる距離Dの範囲が決まっているパターンであるが、介入強度の変化に応じてその範囲は変化しないが制限値が変化するように設定されている。このように設定すると、byに制限がかかり始める制限値を直接的に変更できる。
<介入強度入力装置96の変形例>
図18A,B,Cは、マシンコントロールON/OFFスイッチ17を備え、介入強度入力装置96(入力装置)としても機能する操作レバー1aの構成図である。図18Aは操作レバー1aの上面図、図18Bはその側面図、図18Cはその前面図である。
図18の操作レバー1aは、図18Aに示すようにレバー軸の周方向に左右に回転可能に構成されており、その回転方向及び回転量(操作方向及び操作量)を介入強度として制御コントローラ40(マシンコントロール部43)に出力している。このように操作レバー1aを構成すると、オペレータが自ら調整している介入強度は、目視ではなく、操作レバー1aを操作した手のひねり具体で把握できるので、所望の押圧力を維持しながら土羽打ち作業を行うことが容易である。また、作業中、操作レバー1aから手を離すことなく介入強度を調節できるので、作業効率の低下を防止できる。
なお、図8及び図18に例示した入力装置96は、直線操作型の可変抵抗器などで構成することができる。可変抵抗器にはデテントなどを設けて、連続的に自由な介入強度に設定できるとともに、一定の強度に容易に設定できるようにしても良い。
<効果>
上記の実施の形態の効果についてまとめる。
(1)上記の実施形態では、複数の油圧アクチュエータ5,6,7により駆動される作業機1Aと、オペレータの操作に応じてフロント作業機1Aの動作を指示する操作装置45a,45b,46cと、操作装置45a,45b,46cの操作時に、予め定めた条件に従ってフロント作業機1Aを動作させるマシンコントロールを実行するマシンコントロール部43を有する制御コントローラ40とを備える油圧ショベル1において、オペレータに操作される介入強度入力装置96を備え、制御コントローラ40は、介入強度入力装置96の操作量に基づいて、操作装置45a,45b,46cの操作で指示されるフロント作業機1Aの動作にマシンコントロールが介入する度合の大小を示す介入強度の補正量を算出する補正度合演算部43mをさらに備え、マシンコントロール部43は、補正度合演算部43mで算出された補正量に基づいて補正された介入強度で、操作装置45a,45b,46cの操作で指示されるフロント作業機1Aの動作にマシンコントロールを介入させることとした。
このようにオペレータ操作に対するマシンコントロールの介入強度(作業機1Aの先端の速度ベクトルBに関する制限値)を変更可能に構成した場合、介入強度入力装置96を利用して介入強度を初期位置の値よりも小さい範囲で調節することで、目標面60に衝突する際のブーム下げ速度を調節でき、これにより土羽打ち時の押圧力を調整することができる。また、オペレータが自ら調整している介入強度は、目視ではなく、介入強度入力装置96を操作した際の指の伸ばし具合等の体感で把握できるので、所望の押圧力を維持しながら土羽打ち作業を行うことが容易である。
また、従来のマシンコントロール機能(領域制限制御機能)を搭載したショベルでは、目標面を超える作業機の動きは抑制されるため、マシンコントロール実行中にバケット10で目標面を押圧することができない。このため、マシンコントロールをもちいながら、(A)或る1ストロークで中仕上げの掘削動作、(B)土羽打ちによる締め固め動作、(C)次の1ストロークで仕上げの掘削動作、(D)設計施工面に対するショベルの平行移動、という4種からなる一連の動作を繰り返すような場面においては、(B)の土羽打ちの都度マシンコントロールをOFFにする必要がある。さらに、その後、マシンコントロールによる(C)の仕上げ作業が行われるため、土羽打ち作業で一旦OFFにしたマシンコントロール機能をONにしなければならず、この一連の切り換え操作がオペレータの負担となる。
しかしながら、本実施形態のように操作レバー1aに介入強度入力装置96を設けると、介入強度入力装置96で介入強度を小さくすることで操作レバー1a,1bから手を離すことなくマシンコントロール機能を実質的にOFFにできる。これにより、上記のような一連の動作中に土羽打ちなどでマシンコントロールを一時的にOFFにすることが容易となり、オペレータの負担を軽減できるとともに作業効率を向上できる。
また、オペレータ操作によりバケット10の爪先を目標面60上に常に正確に移動させることは難しいが、マシンコントロールで規定される動作よりも速く目標面60に近い位置までバケット10の爪先を移動させることが可能な技量の高いオペレータは現に存在する。この種のオペレータに対して、他のオペレータ同様の設定でマシンコントロールが介入すると、作業速度が低下して作業工数が増大する可能性がある。そして、オペレータにとっては、自分が意図した操作に対して余計な介入が入ることで精神的なイライラが生じてしまい、これが作業時の疲労を増大させる等の不都合を生じさせる場合がある。しかし、本実施形態のように介入強度入力装置96を設けると、オペレータの技量や好みに合わせて介入強度を調節できるので、工数増大や精神的負担を発生させることなく連続して作業を行うことができる。
(2)特に、上記の実施形態では、介入強度入力装置96は、初期位置を基準とした奥方向(一の方向)と手前方向(他の方向)に操作可能であり、入力装置96が奥方向に操作されると、制限値ayは、初期位置の状態よりもマシンコントロールが介入する度合が大きくなる方向に変化し、入力装置96が手前方向に操作されると、制限値ayは、初期位置の状態よりもマシンコントロールが介入する度合が小さくなる方向に変化することとした。これにより、介入強度の調整の幅が拡がるので、よりオペレータの技量や好みに合わせた介入強度の調節が可能である。
(3)また、上記の実施形態では、介入強度入力装置96は、作業中にオペレータの手が置かれる操作レバー1a,1bに設けられている。これにより、オペレータは、作業中、操作レバー1a,1bから手を離すことなく介入強度を調節できるので、作業効率の低下を防止できる。
(4)また、上記の実施形態では、介入強度入力装置96による制限値ayの変化の度合(介入強度の度合)が表示装置53の表示部395に表示されるようになっている。これにより、表示装置53の表示画面に目をやることでオペレータは現在の介入強度を容易に把握できる。
<付記>
上記では、マシンコントロールが従う予め定めた条件として、オペレータ操作(第1制御信号)によって発生される作業機1Aの先端の速度ベクトルBに関して、作業機1Aの先端の速度ベクトルの目標面60に対する垂直成分の大きさの制限値ayを設定し、これを介入強度入力装置96の操作で変更可能に構成したが、これ以外の制限値(条件)を速度ベクトルBの大きさや方向に設けて、同様に介入強度入力装置96の操作で当該制限値を変更可能に構成しても良い。この場合、オペレータ操作によって発生される作業機1Aの先端の速度ベクトルBが当該制限値を越えるとき、当該制限値を越えない作業機1Aの先端の速度ベクトルを発生させる第2制御信号を流量制御弁15a,15b,15cの少なくとも1つについて演算するものとする。
上記では、制限値ayを決定したが、距離Dがゼロに近づくほど小さくなる1以下の値にバケット先端の速度ベクトルの垂直成分を乗じた値を算出し、その算出値に基づいて油圧アクチュエータ5,6,7(流量制御弁15a,15b,15c)を制御するように構成しても良い。
図12のフローチャートでは、バケット先端の速度ベクトルBを基準にして制御を行ったが、バケット10の速度を考慮から除外するために、アーム9の先端の速度ベクトルを基準にして制御を行っても良い。
また、図12のブーム下げ減速モードと図14のブーム上げ/下げモードの2つのモードを実行可能に制御コントローラ40を構成したが、どちらか一方のモードを実行可能に制御コントローラ40を構成しても良い。この場合、モード判定部43n及びこれにより図11の一連の処理は不要となり得る。
上記では、介入強度入力装置96により制限値ayを変更して介入強度を変更可能に構成したが、制限値ayは図9のままとし、目標パイロット圧演算部43hから出力される第2制御信号に補正を加えることで介入強度を変更可能に構成しても良い。
上記の制御コントローラ40に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記の制御コントローラ40に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることで当該制御コントローラ40の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。
1A…フロント作業機、8…ブーム、9…アーム、10…バケット、17…マシンコントロールON/OFFスイッチ、30…ブーム角度センサ、31…アーム角度センサ、32…バケット角度センサ、40…制御コントローラ(制御装置)、43…マシンコントロール部、43a…操作量演算部、43b…姿勢演算部、43c…目標面演算部、43d…シリンダ速度演算部、43e…バケット先端速度演算部、43f…目標バケット先端速度演算部、43g…目標シリンダ速度演算部、43h…目標パイロット圧演算部、43n…モード判定部、43m…補正度合演算部、44…電磁比例弁制御部、45…操作装置(ブーム、アーム)、46…操作装置(バケット、旋回)、47…操作装置(走行)、50…作業機姿勢検出装置、51…目標面設定装置、52a,52b…オペレータ操作検出装置、53…表示装置、54,55,56…電磁比例弁、96…介入強度入力装置(入力装置)、374…表示制御部、395…介入強度表示部

Claims (6)

  1. 複数の油圧アクチュエータにより駆動される作業機と、
    オペレータの操作に応じて前記作業機の動作を指示する操作装置と、
    前記操作装置の操作時に、予め定めた条件に従って前記作業機を動作させるマシンコントロールを実行するマシンコントロール部を有する制御装置とを備える作業機械において、
    オペレータに操作される介入強度入力装置を備え、
    前記制御装置は、前記介入強度入力装置の操作量に基づいて、前記操作装置の操作で指示される前記作業機の動作に前記マシンコントロールが介入する度合の大小を示す介入強度の補正量を算出する補正度合演算部をさらに備え、
    前記マシンコントロール部は、前記補正度合演算部で算出された前記補正量に基づいて補正された介入強度で、前記操作装置の操作で指示される前記作業機の動作に前記マシンコントロールを介入させることを特徴とする作業機械。
  2. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記予め定めた条件には、前記作業機の先端から任意の目標面までの目標面距離が所定値以下のときに前記マシンコントロールが実行されることが規定されており、
    前記所定値は、前記介入強度に応じて変化することを特徴とする作業機械。
  3. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記予め定めた条件として、前記作業機の先端の速度ベクトルの任意の目標面に対する垂直成分の大きさの制限値が規定されており、
    前記制限値は、前記作業機の先端から前記目標面までの目標面距離ごとに設定されており、
    前記マシンコントロール部は、前記操作装置の操作によって発生される前記速度ベクトルの前記垂直成分の大きさが前記制限値を越えるとき、前記速度ベクトルの前記垂直成分の大きさが前記制限値に保持されるように前記マシンコントロールを実行し、
    前記目標面距離ごとの前記制限値は、前記介入強度に応じて変化することを特徴とする作業機械。
  4. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記介入強度入力装置は、初期位置を基準とした一の方向と他の方向のうち少なくとも一方に操作可能であり、
    前記介入強度入力装置が前記一の方向に操作されると、前記介入強度は、前記初期位置の状態よりも前記マシンコントロールが介入する度合が大きくなる方向に変化し、
    前記介入強度入力装置が前記他の方向に操作されると、前記介入強度は、前記初期位置の状態よりも前記マシンコントロールが介入する度合が小さくなる方向に変化することを特徴とする作業機械。
  5. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記操作装置は、オペレータの手が置かれる把持部を有し、
    前記介入強度入力装置は、前記把持部に設けられていることを特徴とする作業機械。
  6. 請求項1に記載の作業機械において、
    前記介入強度入力装置による前記介入強度の度合が表示される表示装置をさらに備えることを特徴とする作業機械。
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