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JP6578743B2 - 電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電極の製造方法、複合粒子、電極及び電池に関する。
これまでに、本発明者らは、活物質粒子とLi3BO3とを混合し、Li3BO3を融解後固化させて電極を作製することを提案している(特許文献1、非特許文献1参照)。こうした電極を用いることで、電池出力が増加する。
国際公開第2012/176808号パンフレット
Journal of Power Sources 238(2013)53-56
しかしながら、特許文献1や非特許文献1の電極を用いると、電池出力が増加するが、活物質の利用率が低いことがあり、活物質の利用率をより高めることが望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、活物質の利用率をより高めることを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、活物質粒子表面にLi3BO3等のリチウムイオン伝導性の酸化物が粒子状に複合化した複合粒子を予め作製し、この複合粒子を用いて電極を作製することに想到した。そして、得られた電極を電池に用いると、活物質の利用率をより高められることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の電極の製造方法は、
活物質粒子表面に前記活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物が粒子状及び層状の少なくとも一方で複合化した複合粒子の成形体を、前記リチウムホウ素含有酸化物の融解温度以上の温度で加熱して電極を作製する電極作製工程、を含む。
本発明の複合粒子は、活物質粒子表面に前記活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物が粒子状及び層状の少なくとも一方で複合化したものである。
本発明の電極は、上述した複合粒子を成形した成形体を、前記リチウムホウ素含有酸化物の融解温度以上の温度で加熱して得られたものである。
本発明の電池は、上述した電極を備えたものである。
この電極の製造方法、複合粒子、電極及び電池では、活物質の利用率をより高めることができる。こうした効果が得られる理由は、以下のように推察される。例えば、全固体型リチウム二次電池の電極内では、リチウムイオンが活物質粒子からリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物に放出され、移動することなどによって電流が流れる。活物質粒子にリチウムホウ素含有酸化物が接していないと活物質粒子同士の点接触になりリチウムイオンの移動抵抗が大きくなってしまうため、できるだけ多くの活物質粒子にリチウムホウ素含有酸化物が接触していることが望ましい。本発明では、あらかじめ活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を複合化した複合粒子を用いることで、融解の際にもより多くの活物質粒子の周りにリチウムホウ素含有酸化物を存在させることができ、より多くの活物質粒子を利用できる。よって電極中の活物質利用率が向上すると推察される。
複合粒子30の構造の一例を示す説明図である。 複合粒子40の構造の一例を示す説明図である。 電池20の構造の一例を示す説明図である。 電池20の構造の一例を示す説明図である。 実施例1の複合粒子のSEM写真である。 電流密度と活物質の利用率との関係を示すグラフである。
(電極の製造方法)
本発明の電極の製造方法は、活物質粒子表面に活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物が粒子状及び層状の少なくとも一方で複合化した複合粒子の成形体を、リチウムホウ素含有酸化物の融解温度以上の温度で加熱して電極を作製する電極作製工程を含む。本発明の電極の製造方法は、全固体型電池の電極を製造するのに適しており、全固体型電池を構成する固体電解質を基材として用い、基材上に電極を作製するものとしてもよい。本発明の電極の製造方法は、活物質粒子として正極活物質を用い、正極を製造する方法としてもよいし、活物質粒子として負極活物質を用い、負極を製造する方法としてもよい。この製造方法において、電極は、アルカリ二次電池の電極とすることが好ましい。アルカリ二次電池のアルカリとしては、例えば、リチウム,ナトリウム,カリウムとしてもよく、このうちリチウムがより好ましい。以下では、主として、全固体型リチウム二次電池の正極を、固体電解質を基材として用いて製造する方法について説明する。
本発明の電極の製造方法は、例えば、(a)複合粒子作製工程、(b)成形体作製工程、(c)電極作製工程、を含むものとしてもよい。
(a)複合粒子作製工程
この工程では、活物質粒子表面に活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物を粒子状及び層状の少なくとも一方で複合化して複合粒子を作製してもよい。活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を複合化するとは、その後の工程等でリチウムホウ素含有酸化物が活物質粒子から離脱しない程度に、活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を固定化することをいう。このとき、活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を粒子状に分散して固定化してもよいし、活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を層状に固定化してもよいし、その両方でもよい。また、活物質粒子表面の全体にリチウムホウ素含有酸化物を固定化してもよいし、一部にリチウムホウ素含有酸化物を固定化してもよい。図1,2に、複合粒子の構造の一例を示す。図1に示す複合粒子30は、活物質粒子32表面全体にリチウムホウ素含有酸化物粒子34を分散して固定化したものである。図2に示す複合粒子40は、活物質粒子42表面全体にリチウムホウ素含有酸化物44を層状に固定化したものである。
活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を複合化するには、両者を機械的に複合化してもよいし、活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を化学的に生成させて複合化してもよいが、機械的に複合化するのが好ましい。機械的に複合化するとは、原料に対して圧縮やせん断、衝撃などの機械的作用を加えることで原料同士を結合するものとしてもよく、圧縮、せん断及び衝撃の力を作用させて原料同士を結合するのがより好ましい。機械的に複合化するにあたり、メカノケミカル反応を利用してもよい。機械的に複合化するには、ボールミルなどの粉砕機を用いてもよい。また、粒子複合化装置、例えば、ホソカワミクロン社製「ノビルタ」「メカノフュージョン」「ナノクリエータ」、奈良機械製作所社製の「ハイブリダイゼーションシステム」「ミラーロ」、などを用いてもよい。複合化は、乾式で行ってもよいし、湿式で行ってもよい。
活物質としては、正極活物質を用いることができる。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、Li(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)、Li(1-x)Mn24などのリチウムマンガン複合酸化物、Li(1-x)CoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li(1-x)NiO2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物、V25などの遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうちで、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などがより好ましい。なお、例示する化学式には、化学量論組成のものに限定する意図はなく、一部が欠損していてもよいし、過剰でもよいし、元素の一部が他の元素に置換されていてもよい(以下同じ)。
活物質としては、酸化物系の活物質を用いることが好ましい。酸化物系の活物質は、塑性変形が生じにくく、活物質同士の密着性や固体電解質等との密着性を外圧によって高めることが困難な場合が多い。このため、活物質として酸化物系のものを用いた場合に、本発明の適用の意義が高い。
リチウムホウ素含有酸化物は、活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するものである。リチウムホウ素含有酸化物としては、Li3BO3を用いてもよく、リチウムやホウ素のほかに、例えば、C,Al,Si,Ga,Ge,In,Snのうち少なくとも1種以上の元素を含むものを用いてもよい。こうした元素は、リチウムの一部を置換していてもよいし、ホウ素の一部を置換していてもよいし、両方を置換していてもよい。両方を置換する場合、同種の元素で置換してもよいし、異種の元素で置換してもよい。
リチウムを置換する元素は4配位をとる元素(C,Al,Si,Ga,Ge,In,Snなど)であることが好ましい。Li3BO3では、リチウムは4配位をとるため、4配位をとる元素はリチウムを置換しやすいからである。また、リチウムを置換する元素は4配位のときのイオン半径がLi+(4配位)のイオン半径と近いことが好ましい。イオン半径が近ければ、元素の置換が容易と考えられるからである。リチウムを置換する元素はリチウムよりも価数が大きくなるものが好ましい。リチウムよりも価数が大きくなる元素でリチウムを置換した場合、組成の電荷を補償するため、リチウムに欠陥が導入され、リチウムイオンの伝導経路が増加するからである。
ホウ素を置換する元素は3配位をとる元素(C,Al,Si,Ga,Ge,In,Snなど)であることが好ましい。Li3BO3では、ホウ素は3配位をとるため、3配位をとる元素はホウ素を置換しやすいからである。また、ホウ素を置換する元素は3配位のときのイオン半径がB3+(3配位)のイオン半径と近いことが好ましい。イオン半径が近ければ、元素の置換が可能と考えられるからである。ホウ素を置換する元素はホウ素よりも価数が大きくなるものが好ましい。ホウ素よりも価数が大きくなる元素でホウ素を置換した場合、組成の電荷を補償するため、欠陥が導入される。なお、この場合、ホウ素よりも蒸気圧の高いリチウムが欠損することで欠陥が導入されることにより、リチウムイオンの伝導経路が増加する。
リチウムホウ素含有酸化物としては、例えば、Li+ s(B1-t,Atu+2- wで表されるものを用いてもよい。式中、AはC,Al,Si,Ga,Ge,In,Snのうち少なくとも1種以上の元素であり、tは0≦t<1を満たし、uは(B1-t,At)の平均価数であり、s,u,vはs+u=v/2の関係式を満たす。リチウムホウ素含有酸化物としては、例えば、Li2+xx1-x3(式中、xは0<x≦1を満たす)で表されるものを用いてもよい。このようにホウ素を炭素で置換したものは、リチウムイオン導電率が増加するため、好適である。xは0.1≦x≦0.6を満たすことが好ましく、0.2≦x≦0.4を満たすことがより好ましい。リチウムイオン導電率がより大きくなるからである。
リチウムホウ素含有酸化物は、複合粒子において、1体積%以上50体積%以下となるような割合で用いることが好ましく、5体積%以上40体積%以下がより好ましく、10体積%以上30体積%以下がより好ましい。リチウムホウ素含有酸化物は、活物質粒子よりもリチウムイオン伝導性が高いことが好ましい。リチウムホウ素含有酸化物は、活物質粒子や固体電解質の融解温度を下げ、融解しやすくする機能を有するものでもよい。このようなものであれば、リチウムホウ素含有酸化物の融解及び固化に際し、活物質粒子や固体電解質をも融解及び固化させることによって、活物質粒子と固体電解質とが直接に接する界面をより増加させることができるからである。また、リチウムホウ素含有酸化物は、焼結助剤としての機能を有するものでもよい。このようなものであれば、活物質粒子同士や活物質粒子と固体電解質との焼結性を高めることによって、リチウムイオンの伝導性をより高めることができるからである。
複合粒子の原料としては、活物質粒子の粒子径をX、リチウムホウ素含有酸化物の粒子径をY、とすると、Y/Xの値が、1/1以下となるものを用いることが好ましく、1/2以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましく、1/10以下が一層好ましい。Y/Xの値が1/1以下となるものを用いれば、活物質粒子の表面にリチウムホウ素含有酸化物の粒子をより均一に存在させることができる。下限は特に限定されないが、例えば、1/100以上や1/50以上としてもよい。活物質の粒子径Xは、例えば、0.1μm以上10μm以下としてもよく、0.5μm以上5μm以下としてもよく、1μm以上3μm以下としてもよい。0.1μm以上であれば、比較的容易に製造できる。10μm以下であれば、活物質の内部まで十分に充放電に利用でき、活物質の利用率のより高い電極を製造できる。リチウムホウ素含有酸化物の粒子径Yは、例えば、0.01μm以上5μm以下としてもよく、0.03μm以上3μm以下としてもよく、0.05μm以上1μm以下としてもよい。0.01μm以上であれば、比較的容易に製造できる。5μm以下であれば、活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物の粒子をより均一に分散できる。なお、粒子径X,Yは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い測定した、メディアン径D50を示すものとする。
複合粒子作製工程で得られた複合粒子において、活物質粒子の粒子径をx、リチウムホウ素含有酸化物の粒子径をyとすると、y/xの値は、1/1以下であることが好ましく、1/2以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましく、1/10以下が一層好ましい。y/xの値が1/1以下であれば、活物質粒子の表面にリチウムホウ素含有酸化物の粒子をより均一に存在させることができる。下限は特に限定されないが、例えば、1/100以上や1/50以上としてもよい。活物質粒子の粒子径xは、例えば、0.1μm以上10μm以下としてもよく、0.5μm以上5μm以下としてもよく、1μm以上3μm以下としてもよい。0.1μm以上であれば、比較的容易に製造できる。10μm以下であれば、活物質の内部まで十分に充放電に利用でき、活物質の利用率を高めることができる。リチウムホウ素含有酸化物の粒子径yは、例えば、0.01μm以上5μm以下としてもよく、0.03μm以上3μm以下としてもよく、0.05μm以上1μm以下としてもよい。0.01μm以上であれば、比較的容易に製造できる。5μm以下であれば、活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物の粒子をより均一に分散できる。なお、活物質粒子を10個以上確認できる大きさの視野をSEMで観察し、その視野における、活物質粒子の粒子径の平均値を粒子径xとし、リチウムホウ素含有酸化物の粒子径の平均値を粒子径yとする。各粒子の粒子径は、内接円直径と外接円直径の平均値とする。
(b)成形体作製工程
この工程では、複合粒子作製工程で得られた複合粒子を成形して成形体を作製する。複合粒子の成形にあたり、固体電解質上に複合粒子を成形するのが好ましい。複合粒子は、バインダーや溶媒等を添加してペースト状にして(以下、原料ペーストとも称する)形成してもよい。バインダーとしては、エチルセルロースやメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース系のものや、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂などの各種バインダーを用いることができる。溶媒としては、ターピオネールやアセトン、トルエンなどの有機溶剤などを用いることができる。原料ペーストは、複合粒子、バインダー、溶媒などをトリロールミル、ポットミル等を用いる通常のペーストの製造方法を用いて混合することにより得ることができる。固体電解質上に原料ペーストを形成する方法としては、例えば、ディスペンサー、ディピング、スプレーなどの公知の液状体供給手法のほか、ドクターブレード法や、スクリーン印刷、メタルマスク印刷などの印刷手法を用いることができる。このうち、スクリーン印刷であれば厚みやパターンを高精度に制御できるため、好ましい。また、メタルマスク印刷によれば、厚みを持って原料ペーストを形成しやすく、このため、形状制御が容易になる。
(c)電極作製工程
この工程では、成形体作製工程で得られた成形体を、リチウムホウ素含有酸化物の融解温度以上の温度で加熱して、電極を作製する。リチウムホウ素含有酸化物を一旦融解させることで、活物質粒子とリチウムホウ素含有酸化物との密着性や固体電解質とリチウムホウ素含有酸化物との密着性を高めることができる。加熱温度は、活物質粒子とリチウムホウ素含有酸化物とが化合物を生成する温度及び固体電解質とリチウムホウ素含有酸化物とが化合物を生成する温度のうちの低い温度以下の温度が好ましい。こうした温度で加熱することで、リチウムイオン伝導性を低下させるような第三相の生成を抑制できる。加熱温度は、活物質粒子や固体電解質の変質が生じない温度であることが好ましい。こうした温度で加熱することで、リチウムイオン伝導性を低下させるような第三相や変質層の生成をより抑制できる。なお、活物質粒子や固体電解質の変質が生じない温度は、活物質粒子や固体電解質の合成時の処理温度に基づいて定めてもよい。合成時の処理温度よりも低温であれば変質が生じにくいと考えられるからである。加熱温度は、600℃を超え900℃以下が好ましく、650℃以上800℃以下がより好ましく、670℃以上780℃以下がさらに好ましい。600℃を超える温度であれば、リチウムホウ素含有酸化物が十分に融解する。900℃以下であれば、リチウムイオン伝導性を低下させるような第三層や変質層の生成をより抑制できる。加熱時間は、例えば1分以上24時間以下としてもよいし、10分以上12時間以下としてもよいし、30分以上6時間以下としてもよい。加熱時の雰囲気は特に限定されないが、大気雰囲気や酸化性雰囲気であることが好ましい。このような雰囲気では、Li3BO3の構造から酸素の脱離を抑制できるし、活物質粒子や固体電解質が酸化物である場合に、これらからの酸素の脱離を抑制できる。このため、リチウムホウ素含有酸化物や活物質粒子、固体電解質の変質が生じにくく、また、反応生成物が生じにくいからである。電極作製工程では、成形体を加熱後冷却してもよい。
この電極の製造方法で得られた電極は、活物質粒子がリチウムホウ素含有酸化物母材(リチウムホウ素含有酸化物が融解後固化した融成物)に分散した電極であるものとしてもよい。こうしたものでは、活物質粒子同士の間や活物質粒子と固体電解質との間にリチウムイオンの伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物母材が存在することで、活物質粒子同士の間や、活物質粒子と固体電解質との間のリチウムイオンの伝導経路をより確保しやすい。
この電極の製造方法で得られた電極は、活物質粒子とリチウムホウ素含有酸化物とが均一に存在していることが好ましい。こうしたものでは、活物質の利用率をより高めることができる。均一に存在しているか否かは、例えば、活物質粒子を10個以上確認できる大きさの視野をSEMで複数観察し、リチウムホウ素含有酸化物の占める割合が最も多い視野におけるリチウムホウ素含有酸化物の割合Mに対する、リチウムホウ素含有酸化物の占める割合が最も少ない視野におけるリチウムホウ素含有酸化物の割合mの比(m/M)の値に基づいて判断してもよい。m/Mの値は、0.7以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましい。
この電極の製造方法で得られた電極は、固体電解質に密着していることが好ましい。すなわち、電極と固体電解質とが密着していることが好ましい。ここで「密着」とは、点接触ではなく、二次元的、又は、三次元的に接触(接合)していることをいう。「密着」しているか否かは、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で断面を観察したときに、点接触をしているか否かにより確認することができる。
この電極の製造方法で得られた電極や電極が形成された固体電解質では、活物質や固体電解質が、変質したり、反応生成物を生じてないことが好ましい。例えば、活物質や固体電解質を、CuKα線を用いてXRD測定した場合、活物質とリチウムホウ素含有酸化物との反応生成物のピークや、固体電解質とリチウムホウ素含有酸化物との反応生成物のピークが確認されないことが好ましい。また、活物質と固体電解質との反応生成物のピークも確認されないことが好ましい。このようなものであれば、リチウムイオンの伝導度を低減させるような変質層や第三相の生成が抑制されていると考えられる。
(複合粒子)
本発明の複合粒子は、活物質粒子表面に活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物が粒子状及び層状の少なくとも一方で複合化したものである。この複合粒子は、例えば、上述した複合粒子作製工程で得られたものとすることができる。活物質粒子や、リチウムホウ素含有酸化物、活物質粒子とリチウムホウ素含有酸化物とを複合化する方法などは、複合粒子作製工程で説明したのと同様であるから、その説明を省略する。
(電極)
本発明の電極は、上述した複合粒子を成形した成形体を、リチウムホウ素含有酸化物の融解温度以上の温度で加熱して得られたものである。この電極は、例えば、上述した電極の製造方法で得られたものとすることができる。電極の厚みは、例えば、1μm以上100μm以下としてもよいし、5μm以上70μm以下としてもよい。
(電池)
本発明の電池は、上述した電極を備えている。この電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に介在する固体電解質とを備えた全固体型リチウム電池としてもよく、正極として、上述した電極を備えていてもよい。
負極は、負極活物質を有している。負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマーなどが挙げられる。このうち、リチウム合金が、固体電解質との界面抵抗を低減でき、好ましい。リチウム合金としては、Mg,Al,Si,In,Ag及びSnのうち少なくとも1以上の添加元素を含むリチウム合金がより好ましく、Alを含むものやInを含むものなどがより好ましい。特に、Inを含むものでは、添加されている原子数がより少なくても、固体電解質と負極との界面抵抗をより低減することができ、好ましい。
正極及び負極は集電体を有していてもよい。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
固体電解質は、リチウムイオン伝導性の酸化物であることが好ましい。なかでも、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物が好ましい。ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、例えば、Lix3212(式中、A,Bは、1種類以上の元素、xは全体の電荷バランスを保障する数)などで表すことができる。このうち、ガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物は、Li5+xLa3Zrx2-x12(式中、Aは、Sc,Ti,V,Y,Nb,Hf,Ta,Al,Si,GaおよびGeからなる群より選ばれた1種類以上の元素,xは1.4≦x<2)で表されるものであることがより好ましい。なお、Li5+xLa3Zrx2-x12で表されるガーネット型リチウムイオン伝導性酸化物の詳細は、例えば、特開2010−202499号公報などに記載されているため、ここでは記載を省略する。
固体電解質としては、上述したもの以外にも、種々の無機固体電解質や有機固体電解質などを用いることができる。無機固体電解質としては、例えば、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、xLi3PO4−(1−x)Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリホスファゼン、ポリエチレンスルフィド、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。なお、酸化物系の無機固体電解質は、塑性変形が生じにくく、活物質粒子との密着性を外圧によって高めることがより困難な場合が多い。このため、固体電解質として酸化物系の無機固体電解質を用いた全固体型電池において、本発明の適用の意義が高い。
電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、こうした電池を複数直列に接続して電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。
電池の構造は、特に限定されないが、例えば図3や図4に示す構造が挙げられる。図3の電池20は、固体電解質10と、この固体電解質10の片面に形成された正極12と、この固体電解質10のもう片面に形成された負極14とを有する。正極12は、固体電解質10とは反対側に集電体13を備えている。負極14は固体電解質10とは反対側に集電体15を備えている。一方、図4の電池20は、固体電解質10と、この固体電解質10の片面に形成された正極12と、この固体電解質10のもう片面にポリマー電解質層16を介して形成された負極14とを有する。正極12は、活物質粒子表面に活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物が粒子状及び層状の少なくとも一方で複合化した複合粒子の成形体を、リチウムホウ素含有酸化物の融解温度以上の温度で加熱して、得られたものである。
以上説明した電極の製造方法、複合粒子、電極及び電池では、活物質の利用率をより高めることができる。こうした効果が得られる理由は以下のように推察される。例えば、全固体型リチウム二次電池の電極内では、活物質粒子からリチウムイオンがリチウムホウ素含有酸化物に放出され、それが固体電解質まで移動することによって電流が流れる。活物質粒子にリチウムホウ素含有酸化物が接していないと活物質粒子同士の点接触になりリチウムイオンの移動抵抗が大きくなってしまう。そのため、できるだけ多く(可能であれば全て)の活物質粒子にリチウムホウ素含有酸化物が接触していることが望ましい。あらかじめ活物質粒子上にリチウムホウ素含有酸化物をコーティングしておけば、リチウムホウ素含有酸化物の融解の際に活物質粒子の周りにリチウムホウ素含有酸化物が存在するため、多くの活物質粒子を利用できる。よって電極中の活物質利用率が向上すると推察される。
また、活物質粒子表面にリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物を複合化した複合粒子を用いるため、活物質とリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物との接触状態がより良好であり、両者の間でのリチウムイオンの移動がより円滑に行われるためと推察される。
また、活物質粒子表面にリチウムホウ素含有酸化物を複合化した複合粒子を用いるため、成形体作製工程や電極作製工程における、リチウムホウ素含有酸化物の偏在の発生を抑制でき、活物質の利用率をより高めることができる。なお、活物質粒子とリチウムホウ素含有酸化物粒子とを混合した混合粒子を用いた場合には、成形体作製工程や電極作製工程において、重力の影響等によってリチウムホウ素含有酸化物が偏在し、活物質の利用率が低下することがある。例えば、固体電解質の上に混合粒子を成形した場合、成形体作製工程では粒子径が活物質粒子よりも小さいリチウムホウ素含有酸化物が、電極作製工程では融解したリチウムホウ素含有酸化物が、重力により下方(固体電解質側)に集まりやすい。これにより、固体電解質から遠い部分のリチウムホウ素含有酸化物が少なくなり、固体電解質から遠い部分の活物質粒子と固体電解質との間のイオン伝導経路が確保できず、固体電解質から遠い部分の活物質粒子の有する容量を利用できないことがある。特に、高エネルギー密度を目的として電極中の活物質の割合を増加させた場合には、リチウムホウ素含有酸化物の割合が少なくなるため、固体電解質から遠い部分でのリチウムホウ素含有酸化物の不足の影響が顕著になる。また、電極の膜厚が厚い場合にも、固体電解質から遠い部分でのリチウムホウ素含有酸化物の不足の影響が大きくなりやすい。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、複合粒子を構成する活物質が正極活物質である場合について主に説明したが、負極活物質としてもよい。負極活物質としては、リチウムイオンと遷移金属元素とを含む酸化物、シリコン、シリコン合金、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマーなどが挙げられる。リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物としては、Li4Ti512のようなリチウムチタン複合酸化物などが挙げられる。この場合、電池の正極としては、上述した正極活物質を含む正極を用いればよい。
上述した実施形態では、電極の製造方法は、固体電解質を基材として用い、基材上に電極を作製するものとしたが、基材を用いなくてもよいし、固体電解質以外の基材を用いてもよい。基材を用いない場合、電極の製造方法の成形体作製工程において、複合粒子は、ペースト状にする代わりに、バインダーや溶媒等を添加して・土状にして形成してもよい。なお、電極と固体電解質との密着性をより高める観点からは、固体電解質を基材として用いることが好ましい。
上述した実施形態では、電極の製造方法は、複合粒子作製工程、成形体作製工程及び電極作製工程を含むものとしたが、複合粒子作製工程を省略して別途用意した複合粒子を成形体作製工程で用いてもよいし、成形体作製工程を省略して別途用意した成形体を電極作製工程で用いてもよい。
上述した実施形態では、電池は、全固体型リチウム二次電池としたが、こうしたものに限定されない。例えば、電池は、液体を含んでいてもよい。また、一次電池としてもよい。
以下には、本発明の複合粒子、電極及び電池を具体的に作製した例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
[実施例1]
活物質粒子としてのLiCoO2粒子(以下LCO粒子と記す。粒径1.7μm)とリチウムホウ素含有酸化物としてのLi2.20.20.83粒子(以下LBCO粒子と記す。粒径0.07μm)とを混合し、ホソカワミクロン製ノビルタ(ノビルタは登録商標)により処理した。処理条件は3000rpm、25分とした。処理後の複合粒子のSEM像を図5に示す。大きい粒子がLCO粒子、小さい粒子がLBCOである。複合粒子中のLBCOの体積分率は25体積%であった。この複合粒子にバインダを加え、混練することによりペーストを作製した。このペーストをスクリーン印刷機によりLi6.75La3Zr1.75Nb0.2512で表されるガーネット型の固体電解質上に印刷して、760℃、1時間の焼き付けを行うことにより正極を形成した。正極の厚さは約10μmであった。裏面に負極としてLiを蒸着することにより、全固体電池を作製した。
[比較例1]
LCO粒子(粒径1.7μm)とLBCO粒子(粒径0.07μm)を乳鉢混合した。混合粒子中のLBCO粒子の体積分率は25体積%であった。この混合粒子にバインダを加え、混練することによりペーストを作製した。それ以外は、実施例1と同様の方法で全固体電池を作製した。
[充放電試験]
実験例1及び比較例1の電池を用いて、充放電試験を行った。具体的には、高い電流密度から順に放電させていき、最小電流まで放電した時の放電容量を測定した。そして、測定した放電容量の、正極活物質の放電容量の理論値に対する割合を、活物質の利用率として算出した。
[実験結果]
実施例1及び比較例1の電池の放電容量の電流密度依存を図6に示す。活物質粒子とLBCOとの混合物を用いた比較例1では、利用率が57%と小さかったのに対し、活物質粒子にLBCOを複合化させた複合粒子を用いた実施例1では、利用率が76%と向上した。
本発明は、電池産業の分野に利用可能である。
10 固体電解質、12 正極、13 集電体、14 負極、15 集電体、16 ポリマー電解質層、20 電池、30 複合粒子、32 活物質粒子、34 リチウムホウ素含有酸化物粒子、40 複合粒子、42 活物質粒子、44 リチウムホウ素含有酸化物。

Claims (6)

  1. 活物質粒子表面に前記活物質粒子よりも融解温度が低くリチウムイオン伝導性を有するリチウムホウ素含有酸化物が粒子状及び層状の少なくとも一方で複合化した複合粒子の成形体を、前記リチウムホウ素含有酸化物の融解温度以上の温度で加熱して電極を作製する電極作製工程、を含む、電極の製造方法。
  2. 請求項1に記載の電極の製造方法であって、
    前記電極作製工程の前に、前記活物質粒子及び前記リチウムホウ素含有酸化物の粒子に圧縮、せん断及び衝撃の力を作用させることで、前記活物質粒子の表面に前記リチウムホウ素含有酸化物を複合化して前記複合粒子を作製する複合粒子作製工程を含む、電極の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の電極の製造方法であって、
    前記電極作製工程の前に、固体電解質上に前記成形体を成形する成形体作製工程を含む、電極の製造方法。
  4. 前記電極作製工程では、前記活物質粒子の表面に前記リチウムホウ素含有酸化物の粒子を分散して固定化した前記複合粒子を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
  5. 前記電極作製工程では、Li2+xx1-x3(式中、xは0<x≦1を満たす)で表される前記リチウムホウ素含有酸化物を用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
  6. 前記電極作製工程では、リチウムコバルト複合酸化物である前記活物質粒子を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
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