以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
なお、本明細書中において、「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。
[第1実施形態]
本実施形態に係る樹脂組成物は以下に示されるものである。
絶縁部と放熱部とを備える複合層、樹脂層および金属層がこの順で積層された回路基板の、前記絶縁部を構成する樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を以下の条件により成形して試験片を得、16.5重量%の第二塩化銅、25重量%の塩化水素、25重量%の過酸化水素を含むエッチング液に1時間浸漬させた際に、前記試験片の重量変化率の絶対値が0.02%以下となる、樹脂組成物が提供される。
(試験片作製条件)
幅50mm、厚さ3mm、長さ80mmのキャビティを備える金型を用い、金型温度170℃、成形圧力10MPa、硬化時間180秒の条件下で前記樹脂組成物を成形して試験片を得る。
まず、本実施形態の樹脂組成物を説明するのに先立って、本実施形態に係る発熱体搭載基板について説明する。
なお、以下では、本実施形態の発熱体搭載基板を、発熱体として半導体素子を備える半導体装置の搭載に適用した場合を一例に説明する。
<発熱体搭載基板>
図1は、本実施形態の発熱体搭載基板を半導体装置の搭載に適用した第1実施形態を示す縦断面図、図2は、図1中の矢印A方向から見た図(平面図)である。なお、以下では、説明の便宜上、図1中の上側、図2中の紙面手前側を「上」、図1中の下側、図2中の紙面奥側を「下」とも言う。また、各図では、発熱体搭載基板およびその各部を誇張して模式的に図示しており、発熱体搭載基板およびその各部の大きさおよびその比率は実際とは異なることもある。
図1、2に示す発熱体搭載基板50は、駆動により熱を発する発熱体である半導体装置1と、この半導体装置1を搭載する回路基板10とを有している。なお、通常、回路基板10には、半導体装置1以外に、例えば、抵抗、トランジスタ等の他の電子部品(部材)が搭載されるが、説明の便宜上、図1、2では、その記載を省略している。
半導体装置1は、半導体素子(図示せず)を備える半導体パッケージであり、この半導体素子(半導体チップ)を封止するモールド部(封止部)11と、半導体素子(半導体チップ)と電気的に接続された接続端子12とを有している。
半導体素子は、本実施形態では、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いたもので構成され、この半導体素子が、その駆動により発熱する。
また、モールド部11は、通常、各種樹脂材料の硬化物で構成され、半導体素子を取り囲むことで封止している。
さらに、接続端子12は、例えば、Cu、Fe、Niやこれらの合金等の各種金属材料で構成され、半導体素子が備える端子と、回路基板10が有する金属層4とは電気的に接続されている。
回路基板10(配線基板)は、半導体装置1を電気的に接続する金属層4と、この金属層4の下面(半導体装置1と反対側の面;一方の面)に設けられた、金属層4を支持する平板状(シート状)をなす基材(基部)8とを備えている。
金属層4は、所定のパターンで形成されており、このパターンの形成により設けられた端子(図示せず)が、半導体装置1が備える接続端子(端子)12に電気的に接続され、これにより、半導体素子が備える端子と金属層4が備える端子とが電気的に接続される。
この金属層4は、回路基板10上に搭載された半導体装置1を含む電子部品に接続されている。また、半導体装置1で発生した熱を基材8の下面側に伝達して逃がす受熱板としての機能を備えており、後述する金属箔張基板10Aが備える金属箔4Aをパターニングすることで形成される。
金属層4の構成材料としては、例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金等の各種金属材料が挙げられる。
また、金属層4の厚さ方向に対する熱伝導率は、3W/m・K以上、500W/m・K以下であることが好ましく、10W/m・K以上、400W/m・K以下であることがより好ましい。このような金属層4は、優れた熱伝導率を有していると言うことができ、半導体装置1が備える半導体素子の駆動により生じた熱を、金属層4を介して基材8側に効率よく伝達することができる。
基材8は、平板状(シート状)をなす樹脂層5と、この樹脂層5の下面(一方の面)に設けられ、基材8の平面視で、半導体装置1が搭載される領域を包含する第1の領域15(図2参照)に対応して配置された放熱部7と、この第1の領域15を除く第2の領域16(図2参照)に対応して樹脂層5を覆う絶縁部6とを備えている。
樹脂層(接合層)5は、金属層4の下面に設けられ、すなわち、金属層4と、この金属層4の下側に位置する絶縁部6および放熱部7との間に設けられ、この樹脂層5を介して、金属層4と絶縁部6および放熱部7とを接合する。
また、この樹脂層5は、絶縁性を有している。これにより、仮に放熱部7が金属材料により構成される場合であっても、金属層4と、放熱部7との絶縁状態が確保される。
さらに、樹脂層5は、優れた熱伝導性を発揮するように構成されている。これにより、樹脂層5は、半導体装置1(金属層4)側の熱を放熱部7に伝達することができる。
このような樹脂層5の熱伝導率は、高いものが好適に用いられ、具体的には、1W/m・K以上、15W/m・K以下であることが好ましく、5W/m・K以上、10W/m・K以下であることがより好ましい。これにより、半導体装置1側の熱が樹脂層5により放熱部7に効率よく伝達される。そのため、半導体装置1の半導体素子における駆動により生じた熱を、金属層4および樹脂層5を介して放熱部7に効率よく伝達することができることから、半導体装置1で生じた熱の放熱効率の向上が図られる。
樹脂層5の厚さ(平均厚さ)t5は、特に限定されないが、図1に示すように、放熱部7の厚さt7より薄く、具体的には、50μm〜250μm程度であるのが好ましく、80μm〜200μm程度であるのがより好ましい。これにより、樹脂層5の絶縁性を確保しつつ、樹脂層5の熱伝導性を向上させることができる。
また、樹脂層5は、そのガラス転移温度が好ましくは100℃以上200℃以下である。これにより、樹脂層5は、剛性が高まり、樹脂層5の反りを低減できることから、回路基板10における反りの発生を抑制することができる。
なお、樹脂層5のガラス転移温度は、JIS C 6481に基づいて、以下のようにして計測できる。
動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製DMA/983)を用いて窒素雰囲気(200ml/分)のもと引っ張り荷重をかけて、周波数1Hz、−50℃から300℃の温度範囲を昇温速度5℃/分の条件で測定し、tanδのピーク位置よりガラス転移温度Tgを得る。
また、樹脂層5の25℃の弾性率(貯蔵弾性率)E'は、10GPa以上70GPa以下であることが好ましい。これにより、樹脂層5の剛性が高まることから、樹脂層5に生じる反りを低減させることができる。その結果、回路基板10における反りの発生を抑制することができる。
なお、上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置で測定することができ、具体的には、貯蔵弾性率E'は、樹脂層5に引張り荷重をかけて、周波数1Hz、昇温速度5〜10℃/分で−50℃から300℃で測定した際の、25℃における貯蔵弾性率の値として測定される。
かかる機能を有する樹脂層5は、たとえば、樹脂材料を主材料として構成された層内にフィラーが分散された構成をなしている。
樹脂材料は、フィラーを樹脂層5内に保持させるバインダーとしての機能を発揮し、フィラーは、樹脂材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有している。樹脂層5を、かかる構成を有するものとすることにより、樹脂層5の熱伝導率を高めることができる。
このような樹脂層5は、主として樹脂材料およびフィラーを含有する、樹脂層形成用樹脂組成物を固化または硬化させることにより形成される固化物または硬化物で構成される。すなわち、樹脂層5は、樹脂層形成用樹脂組成物を層状に成形した硬化物または固化物で構成されている。
放熱部7は、基材8(樹脂層5)の平面視で、樹脂層5の下面(一方の面)に半導体装置1が搭載される領域を包含する第1の領域15に対応して形成されている。
このような放熱部7は、半導体装置1が備える半導体素子の駆動に生じた熱を、金属層4および樹脂層5を介して、放熱部7(回路基板10)の下面側から放熱する部材(放熱板)として機能する。
そのため、半導体装置1が備える半導体素子が、本実施形態のように、たとえSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を用いたもので構成され、この半導体素子が、その駆動により、従来のSiパワー半導体装置よりも高い温度の熱を発熱したとしても、この熱を、放熱部7を介してその下面側から放熱することができる。したがって、半導体素子自体に対して、さらには、回路基板10上に搭載される他の電子部品に対して、悪影響を及ぼすのを的確に抑制または防止することができる。
また、図2に示すように、本実施形態では、基材8の平面視で、放熱部7の大きさ(面積S7)は、半導体装置1の大きさ(面積S1)よりも大きいものである。すなわち、放熱部7が位置する第1の領域15は、半導体装置1が搭載される領域を包含している。さらに、平面視で、半導体装置1が搭載される領域と放熱部7が位置する第1の領域15とは、それぞれ、長方形をなし、中心部同士が重なって、すなわち、同心的に配置されている。
これにより、半導体装置1の放熱部7に対する配置位置を決定する際に、例えば金属層4が備える端子の位置を設定する際の設計の自由度が向上する。また、半導体装置1からの熱を放熱部7で拡散して放熱させることができるため、放熱部7による放熱の放熱効率の向上を図ることができる。
また、図1に示すように、放熱部7の厚さ(平均厚さ)t7と金属層4の厚さ(平均厚さ)t4とは、互いに異なっている、すなわち、放熱部7の厚さt7は、金属層4の厚さt4よりも厚い。これにより、放熱部7による放熱の放熱効率の向上を確実に図ることができる。
厚さt4としては、特に限定されないが、例えば、3μm以上、120μm以下が好ましく、5μm以上、70μm以下がより好ましい。金属層4の厚さをこのような数値範囲に設定することにより、金属層4として機能する導電性を確保しつつ、受熱板としての機能の向上が図られる。
また、厚さt7としては、特に限定されないが、例えば、1mm以上、3mm以下が好ましく、1.5mm以上、2.5mm以下がより好ましい。放熱部7の厚さをこのような数値範囲に設定することにより、放熱板としての機能の向上が図られる。
以上のような厚さの大小関係や平面視での包含関係(位置関係)が相まって、半導体装置1で発した熱は、放熱部7で迅速に放熱される。すなわち、放熱効率が向上する。
放熱部7の構成材料としては、高い放熱特性を有しているものであれば、有機材料、無機材料とも用いることができる。この中でも、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金等の各種金属材料が好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム系合金であることがさらに好ましい。このような金属材料は、熱伝導率が比較的高いものであり、半導体装置1で発した熱の放熱効率の向上が図られる。
また、放熱部7をアルミニウムまたはアルミニウム系合金で構成し、金属層4を銅または銅合金で構成した場合、金属層4は、放熱部7よりも熱伝導率が高くなる。これにより、半導体装置1で発した熱は、金属層4に伝わると、金属層4で広範囲に拡散することなく、迅速に樹脂層5を介して、放熱部7に到達し、この放熱部7に到達した熱が、放熱部7において拡散しつつ放熱部7の外部に放出されるため、さらなる放熱効率の向上が図られる。
なお、放熱部7の熱伝導率は、15W/m・K以上、500W/m・K以下であることが好ましく、200W/m・K(アルミニウム)以上、400W/m・K以下(銅)であることがより好ましい。
絶縁部6は、樹脂層5の下面に設けられ、基材8の平面視で、第1の領域15を除く第2の領域16に対応して形成されている。すなわち、樹脂層5の下面の放熱部7が位置しない第2の領域16を覆うように、放熱部7を取り囲んで形成されている。
これにより、基材8の下面の放熱部7が位置しない第2の領域16における、絶縁性が確保される。また、基材8全体としての強度が確保される。
また、絶縁部6は、断熱効果を奏する。従って、放熱部7で放熱させる熱を、絶縁部6において遮ることが可能となる。そのため、第2の領域16に位置する金属層4(回路基板10)に搭載された他の電子部品に、この熱が伝達するのに起因して、悪影響が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
なお、図1に示すように、放熱部7の厚さ(平均厚さ)t7と絶縁部6の厚さ(平均厚さ)は、同一となっており、これにより、放熱部7の下面と、絶縁部6の下面とにより平坦面が構成されている。
この回路基板10の絶縁部6は、本実施形態では、後述する、特定の条件を満たす絶縁部形成用樹脂組成物の硬化物で構成される。
このような硬化物で絶縁部6を構成することで、樹脂層5と絶縁部6との間での熱線膨張係数の差を小さく設定することができる。これにより、半導体装置1の半導体素子の駆動時には、半導体装置1自体が発熱し、樹脂層5および絶縁部6が加熱されることとなるが、樹脂層5と絶縁部6との間で反りが生じ、これに起因して、これら同士の間で剥離が生じてしまうのを的確に抑制または防止することができる。
以上のような、発熱体として半導体装置1を搭載する図1に示す発熱体搭載基板50は、回路基板10に半導体装置1を搭載することにより得ることができ、さらに、回路基板10は、上述した金属層4に代えて、平板状(シート状)をなす金属箔4Aを、基材8の上面(他方の面)に備える金属箔張基板10Aを用いて得ることができる。
以下、この回路基板10の製造方法について説明する。
(回路基板の製造方法)
図3、4は、図1の発熱体搭載基板の製造に用いられる回路基板(金属箔張基板)の製造方法を説明するための図である。なお、以下では、説明の便宜上、図3、4中の上側を「上」、下側を「下」とも言う。また、金属箔張基板およびその各部を誇張して模式的に図示しており、金属箔張基板およびその各部の大きさおよびその比率は実際とは大きく異なる。
すなわち、本実施形態に係る回路基板の製造方法は以下に示されるものである。
絶縁部と放熱部とを備える複合層、樹脂層および金属層がこの順で積層された回路基板の製造方法であって、
当該製造方法は、
前記金属層と前記樹脂層との積層体を準備する工程と、
前記積層体の前記樹脂層側の表面の一部に前記放熱部を配置する工程と、
前記積層体の前記樹脂層側の表面の前記放熱部の配置されていない領域に、樹脂組成物により前記絶縁部を形成する工程と、
を含み、
前記樹脂組成物を以下の条件により成形して試験片を得、16.5重量%の第二塩化銅、25重量%の塩化水素、25重量%の過酸化水素を含むエッチング液に1時間浸漬させた際に、前記試験片の重量変化率の絶対値が0.02%以下となる、回路基板の製造方法。
(試験片作製条件)
幅50mm、厚さ3mm、長さ80mmのキャビティを備える金型を用い、金型温度170℃、成形圧力10MPa、硬化時間180秒の条件下で前記樹脂組成物を成形して試験片を得る。
[1]
まず、上記製造方法においては、金属層と樹脂層との積層体を準備する。
具体的には、平板状をなす金属箔4Aを用意し、その後、図3(a)に示すように、金属箔4A上に樹脂層形成用層5Aを形成する。
この樹脂層形成用層5Aは、後述するワニス状をなす樹脂層形成用樹脂組成物を金属箔4A上に供給して層状とした後、乾燥させることにより得られたものである。そして、この樹脂層形成用層5Aは、後述する工程[2]および工程[3]を経ることで、硬化または固化することにより樹脂層5となるものである。
樹脂層形成用樹脂組成物の金属箔4Aへの供給は、例えば、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いて行うことができる。
この樹脂層形成用樹脂組成物は以下のような粘度挙動を有することが好ましい。
すなわち、動的粘弾性測定装置を用いて、この樹脂層形成用樹脂組成物を60℃から昇温速度3℃/min、周波数1Hzで溶融状態まで昇温したときに、初期は溶融粘度が減少し、最低溶融粘度に到達した後、さらに上昇するような特性を有し、かつ、最低溶融粘度が1×103Pa・s以上1×105Pa・s以下の範囲内であることが好ましい。
最低溶融粘度が上記下限値以上であると、樹脂材料とフィラーとが分離し、樹脂材料のみが流動してしまうことを抑制でき、工程[2]および工程[3]を経ることにより、より均質な樹脂層5を得ることができる。また、最低溶融粘度が上記上限値以下であると、樹脂層形成用樹脂組成物の金属箔4Aへの濡れ性を向上でき、樹脂層5と金属箔4Aとの密着性をより一層向上できる。
これらの相乗効果により、金属箔張基板10A(回路基板10)の放熱性および絶縁破壊電圧をより一層向上できる。
また、樹脂層形成用樹脂組成物は、最低溶融粘度に到達する温度が60℃以上、100℃以下の範囲内であることが好ましく、75℃以上、90℃以下の範囲内であることがより好ましい。
さらに、樹脂層形成用樹脂組成物は、フロー率が15%以上、60%未満であることが好ましく、25%以上、50%未満であることがより好ましい。
なお、このフロー率は、以下の手順で測定することができる。すなわち、まず、本実施形態の樹脂層形成用樹脂組成物により形成された樹脂層を有する金属箔を所定のサイズ(50mm×50mm)に裁断後5〜7枚積層し、その重量を測定する。次に、内部温度を175℃に保持した熱盤間で5分間プレスした後冷却し、流れ出た樹脂を丁寧に落として再び重量を測定する。フロー率は次式(I)により求めることができる。
フロー率(%)=100×(測定前重量−測定後重量)/(測定前重量−金属箔重量) (I)
このような粘度挙動を有すると、樹脂層形成用樹脂組成物を加熱硬化して樹脂層5を形成する際に、樹脂層形成用樹脂組成物中に空気が侵入するのをより抑制できるとともに、樹脂層形成用樹脂組成物中に溶けている気体をより十分に外部に排出できる。その結果、樹脂層5に気泡が生じてしまうことを抑制でき、金属箔4Aから樹脂層5へ確実に熱を伝えることができる。また、気泡の発生が抑制されることにより、金属箔張基板10A(回路基板10)の絶縁信頼性を高めることができる。また、樹脂層5と金属箔4Aとの密着性を向上できる。
これらの相乗効果により、金属箔張基板10A(回路基板10)の放熱性をより一層向上でき、その結果、金属箔張基板10Aのヒートサイクル特性をより一層向上させることができる。
このような粘度挙動を有する樹脂層形成用樹脂組成物は、例えば、樹脂材料の種類や量、フィラーの種類や量、また、樹脂材料にフェノキシ樹脂が含まれる場合には、その種類や量を適宜調整することにより得ることできる。特に、エポキシ樹脂として、ナフタレン型エポキシ樹脂等の流動性の良いものを用いることにより、上記のような粘度特性が得られ易くなる。
[2]
続いて、前述した積層体の樹脂層側の表面の一部に放熱部を配置する。
具体的には、放熱部7を用意し、その後、図3(b)に示すように、金属箔4Aと放熱部7とが、樹脂層形成用層5Aを介して互いに接近するように加圧するとともに加熱する。
これにより、第1の領域15に対応して、樹脂層形成用層5Aに放熱部7が貼り合わされる(図3(c)参照。)。
この際、樹脂層形成用層5Aは、樹脂層形成用層5Aが熱硬化性を示す場合には、好ましくは未硬化または半硬化する条件、より好ましくは半硬化する条件で加熱および加圧される。また、樹脂層形成用層5Aが熱可塑性を示す場合には、加熱および加熱により溶融した後、冷却により固化する条件で、加熱および加圧される。
この加熱および加圧の条件は、例えば、樹脂層形成用層5Aに含まれる樹脂層形成用樹脂組成物の種類によっても若干異なるが、以下のように設定される。
すなわち、加熱温度は、好ましくは80〜200℃程度、より好ましくは170〜190℃程度に設定される。
また、加圧する圧力は、好ましくは0.1〜3MPa程度、より好ましくは0.5〜2MPa程度に設定される。
さらに、加熱および加圧する時間は、10〜90分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
これにより、放熱部7の下面が樹脂層形成用層5Aに接合し、その結果、樹脂層形成用層5Aに放熱部7が貼り合わされる。
なお、樹脂層形成用層5Aが熱硬化性を示す場合、樹脂層形成用層5Aを未硬化または半硬化とするかの選択は、例えば、本工程[2]における、樹脂層形成用層5Aに対する放熱部7の貼り合わせを優先する際には、樹脂層形成用層5Aを半硬化の状態とし、次工程[3]における、樹脂層5と絶縁部6との界面における密着性を向上させることを優先する際には、樹脂層形成用層5Aを未硬化の状態とするようにすれば良い。
[3]
さらに、前述した積層体の樹脂層側の表面の放熱部の配置されていない領域に、樹脂組成物により絶縁部を形成する。
すなわち、樹脂層形成用層5Aの平面視で、放熱部7を、取り囲むように樹脂層形成用層5A上に絶縁部6を形成する。換言すれば、樹脂層形成用層5Aの上面の放熱金属板7が位置しない第2の領域16を覆うように絶縁部6を形成する。
さらに、この際、樹脂層形成用層5Aが熱硬化性を示す場合には、樹脂層形成用層5Aが硬化することにより樹脂層5が形成され、また、樹脂層形成用層5Aが熱可塑性を示す場合には、溶融後、再度、固化することにより樹脂層5が形成される(図3(d)参照。)。
絶縁部6を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、絶縁部形成用樹脂組成物を溶融させた状態で、樹脂層形成用層5Aの上面の放熱部7が位置しない第2の領域16を覆うように樹脂層形成用層5Aの上面側に供給した後、この溶融状態の絶縁部形成用樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。かかる方法によれば、樹脂層形成用層5Aの上面の第2の領域16に対して、優れた精度で位置選択的に絶縁部6を形成することができる。
以下、かかる方法により、絶縁部6を形成する場合について図4を参照しながら詳述する。
なお、絶縁部形成用樹脂組成物としては、顆粒状(ペレット状)、シート状、短冊状、または、タブレット状をなすものの何れであっても良いが、以下ではタブレット状をなすものを用いる場合を一例に説明する。
[3−1]まず、成形金型100が備える上型110と下型120とを重ね合わせることにより形成されるキャビティ(収納空間)121に、樹脂層形成用層5A上に接合された放熱部7を、放熱部7が上側になるようにして収納した後、上型110と下型120との型締めを行う。なお、この際、放熱部7の厚さ方向で、供給路113の下側開口と放熱部7とが重ならず、かつ、上型110の下面と放熱部7の上面とが互いに接するようにして、樹脂層形成用層5A上に接合された放熱部7を、キャビティ121内に収納する。これにより、後工程において形成される絶縁部6を、絶縁部6の厚さが放熱部7の厚さと同一となっているものとして形成することができる。すなわち、絶縁部6を、放熱部7の上面に形成されることなく、絶縁部6の上面と放熱部7の上面とで平坦面が構成されるものとして、樹脂層形成用層5Aの上面の第2の領域16に選択的に設けることができる。
そして、タブレット状をなす絶縁部形成用樹脂組成物130を、上型110が備えるポット111内に収納する。
[3−2]次に、成形金型100を加熱してポット111内の絶縁部形成用樹脂組成物130を加熱溶融しつつ、プランジャー112をポット111内に挿入することで、絶縁部形成用樹脂組成物130に加圧する。
これにより、溶融状態とされた絶縁部形成用樹脂組成物130が供給路113を介して、キャビティ121内に移送される。
[3−3]次に、プランジャー112をポット111内に挿入することにより、キャビティ121内に収納された金属箔4Aを加熱および加圧された状態で、溶融した絶縁部形成用樹脂組成物130が第2の領域16に位置する樹脂層形成用層5A上を覆うようにキャビティ121内に充填される。
そして、溶融した絶縁部形成用樹脂組成物130を硬化させることにより絶縁部6を形成することで、樹脂層形成用層5Aの平面視で、放熱部7を取り囲むようにして絶縁部6が形成される。
また、この加熱および加圧により、樹脂層形成用層5Aが熱硬化性を示す場合には、このものが硬化することにより樹脂層5が形成され、樹脂層形成用層5Aが熱可塑性を示す場合には、このものが溶融した後、冷却して再度固化することにより樹脂層5が形成される。
かかる工程における加熱および加圧の条件は、特に限定されないが、例えば、以下のように設定される。
すなわち、加熱温度は、好ましくは80〜200℃程度、より好ましくは170〜190℃程度に設定される。
また、加圧する圧力は、好ましくは2〜10MPa程度、より好ましくは3〜7MPa程度に設定される。
さらに、加熱および加圧する時間は、1〜60分程度であるのが好ましく、3〜15分程度であるのがより好ましい。
樹脂層5を形成する樹脂組成物にフィラーが含まれる系を想定した場合、かかる条件に設定することにより、樹脂層5と絶縁部6との界面において、樹脂層5に含まれるフィラーが絶縁部6側に分散して樹脂層5と絶縁部6とが混在した状態で、樹脂層5と絶縁部6とが形成されるため、樹脂層5と絶縁部6との密着性を向上させることができる。
また、絶縁部形成用樹脂組成物130の溶融粘度は、175℃において、10〜3000Pa・s程度であるのが好ましく、30〜2000Pa・s程度であるのがより好ましい。これにより、樹脂層5の平面視で、放熱部7を取り囲むようにして絶縁部6をより確実に形成することができる。
なお、175℃における溶融粘度は、例えば、島津製作所社製の熱流動評価装置(フローテスタ)により測定することができる。
また、プランジャー112をポット111内に挿入することにより生じる圧力により、金属箔4Aは、下型120が備えるキャビティ121の底面に押し付けられるのが好ましい。これにより、溶融した絶縁部形成用樹脂組成物130の金属箔4Aの下面に対する回り込みが防止される。その結果、金属箔4Aの下面における絶縁部6の形成が的確に防止される。よって、金属箔4Aをパターニングすることにより得られる配線4が絶縁部6により覆われ、半導体装置1を含む電子部品との電気的な接続が阻害されるのを防止することができる。
以上のような工程を経て、金属箔張基板10Aが製造される。
また、この金属箔張基板10Aが備える金属箔4Aをパターニングして、基材8上に金属層4が形成された回路基板10が製造される。なお、金属箔4Aをパターニングする方法としては、特に限定されないが、例えば、形成すべき金属層4のパターン(形状)に対応するレジスト層を金属箔4A上に形成した後、このレジスト層をマスクとして用いて、ウエットエッチング法またはドライエッチング法により、レジスト層の開口部から露出する金属箔4Aをエッチングする方法等が挙げられる。
なお、本実施形態では、前記工程[3−1]〜[3−3]を経ることにより、1つの金属箔張基板10Aを得る場合について説明したが、かかる場合に限定されず、例えば、前記工程[3−1]において、複数の放熱部7が樹脂層形成用層5A上に接合されたものをキャビティ121に収納し、その後、前記工程[3−2]、[3−3]を経て得られたものを、その厚さ方向に裁断(切断)することで、金属箔張基板10Aを多数個取りするようにしてもよい。なお、この裁断は、(I)前記工程[3−3]の後、(II)金属箔4Aをパターニングして複数の金属層4を基材8上に形成した後、さらには、(III)複数の金属層4にそれぞれ対応して複数の半導体装置1を搭載した後の何れであっても良いが、前記(III)の後であることが好ましい。これにより、複数の発熱体搭載基板50を一括して製造することができる。
また、本実施形態では、工程[2]と、工程[3]とを別工程で行うこととしたが、これに限定されず、例えば、ポット111内への絶縁部形成用樹脂組成物130の装填を省略した状態で、プランジャー112をポット111内に挿入することで、放熱部7の金属箔4Aに対する押圧を実施することが可能であれば、工程[2]と工程[3]とを、キャビティ121内で一括して実施するようにしてもよい。
かかる構成の発熱体搭載基板50は、各種電子機器が備える基板(一部品)として搭載される。
以下、上述した回路基板10を構成する樹脂組成物について説明をする。より詳細には、係る回路基板5を作製するにあたっては、樹脂層5を形成する樹脂組成物と絶縁部6を形成する樹脂組成物が用いられるが、これら樹脂組成物について以下説明を行う。
(樹脂層形成用樹脂組成物)
まず、樹脂層形成用樹脂組成物について説明する。
樹脂層形成用樹脂組成物は、たとえば、樹脂材料およびフィラーを含んで構成されている。
樹脂材料としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の各種樹脂材料を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
これらのなかでも、樹脂層形成用樹脂組成物に用いる樹脂材料としては、熱硬化性樹脂を用いるのが好ましく、さらに、エポキシ樹脂を用いるのがより好ましい。これにより、得られる樹脂層5の耐熱性を優れたものとすることができる。また、樹脂層5により金属層4を基材8に強固に接合することができる。そのため、得られる発熱体搭載基板50の放熱性および耐久性を優れたものとすることができる。
また、エポキシ樹脂は、芳香環構造および脂環構造(脂環式の炭素環構造)の少なくともいずれか一方を有するエポキシ樹脂(A)を含むことが好ましい。このようなエポキシ樹脂(A)を使用することで、ガラス転移温度を高くするとともに、樹脂層5の熱伝導性をより向上させることができる。また、金属層4、絶縁部6および放熱部7に対する密着性を向上させることができる。
さらに、芳香環あるいは脂環構造を有するエポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、このエポキシ樹脂(A)としては、ナフタレン型エポキシ樹脂であることが好ましい。これにより、ガラス転移温度をより一層高くでき、樹脂層5のボイドの発生を抑制し、熱伝導性をより一層向上でき、かつ絶縁破壊電圧を向上させることができる。
なお、ナフタレン型エポキシ樹脂とは、ナフタレン環骨格を有し、かつ、グリシジル基を2つ以上有するものを呼ぶ。
このようにナフタレン型エポキシ樹脂を含ませる場合、エポキシ樹脂中におけるナフタレン型エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量%に対し、好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば、以下の式(5)〜(8)のうちのいずれかのものが挙げられる。
[式中、m、nはナフタレン環上の置換基の個数を示し、それぞれ独立して1〜7の整数を示す。]
なお、式(6)の化合物としては、以下のいずれか1種以上を使用することが好ましい。
[式中、Meはメチル基を示し、l、m、nは1以上の整数を示す。]
[式中、nは1以上20以下の整数であり、lは1以上2以下の整数であり、R
1はそれぞれ独立に水素原子、ベンジル基、アルキル基または下記式(9)で表される構造であり、R
2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である。]
[式中、Arはそれぞれ独立にフェニレン基またはナフチレン基であり、R
2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、mは1または2の整数である。]
式(8)のナフタレン型エポキシ樹脂は、いわゆるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂に分類されるが、この式(8)で表される化合物は、下記式(10)で表されるものが一例として挙げられる。
[上記式(10)において、nは1以上20以下の整数であり、好ましくは1以上10以下の整数であり、より好ましくは1以上3以下の整数である。Rはそれぞれ独立に水素原子または下記式(11)で表される構造であり、好ましくは水素原子である。]
[上記式(11)において、mは1または2の整数である。]
さらに、上記式(10)で表されるナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、具体的には、例えば、下記式(12)〜(16)で表されるものが挙げられる。
また、前記樹脂材料の含有量は、樹脂層形成用樹脂組成物の固形分全体(溶剤を除く)100質量部に対して、20質量部以上であるのが好ましく、30質量部以上であるのがより好ましい。また、前記樹脂材料の含有量は、樹脂層形成用樹脂組成物の固形分全体(溶剤を除く)100質量部に対して、80質量部以下であるのが好ましく、70質量部以下であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量をこの下限値以上とすることにより、金属層4、絶縁部6および放熱部7に対する密着性を向上させることができる。また、樹脂材料の含有量をこの上限値以下とすることにより、得られる樹脂層5の機械的強度および熱伝導性を優れたものとすることができる。
また、樹脂材料がエポキシ樹脂を含む場合、樹脂層形成用樹脂組成物にはフェノキシ樹脂が含まれていることが好ましい。これにより、樹脂層5の耐屈曲性を向上できるため、フィラーを高充填することによる樹脂層5のハンドリング性の低下を抑制することができる。
また、フェノキシ樹脂を含むと、粘度上昇により、プレス時の流動性が低減し、樹脂層5厚みの確保と厚み均一性およびボイド抑制に効果があるため、絶縁信頼性および熱伝導性をより一層高めることができる。また、樹脂層5と金属層4、放熱部7および絶縁部6との密着性が向上する。これらの相乗効果により、発熱体搭載基板50の絶縁信頼性および熱伝導性をより一層高めることができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型のフェノキシ樹脂を用いるのが好ましい。ビスフェノールA骨格とビスフェノールF骨格を両方有するフェノキシ樹脂を用いても良い。
フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、とくに限定されないが、4.0×104以上8.0×104以下が好ましい。
なお、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
フェノキシ樹脂の含有量は、例えば、樹脂層形成用樹脂組成物の固形分全体100質量部に対し、好ましくは1質量部以上50質量部以下、より好ましくは2質量部以上40質量部以下である。
また、かかる樹脂層形成用樹脂組成物には、前述した樹脂材料の種類(例えば、エポキシ樹脂である場合)等によっては、必要に応じて、硬化剤が含まれる。
硬化剤としては、特に限定されず、例えば、ジシアンジアミド、脂肪族ポリアミド等のアミド系硬化剤や、ジアミノジフェニルメタン、メタンフェニレンジアミン、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン系硬化剤や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、p−キシレン−ノボラック樹脂などのフェノール系硬化剤や、酸無水物類等を挙げることができる。
また、樹脂層形成用樹脂組成物は、さらに硬化触媒(硬化促進剤)を含んでいてもよい。これにより、樹脂層形成用樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。
硬化触媒としては、例えば、イミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等アミン系触媒、トリフェニルホスフィン等リン系触媒等が挙げられる。これらの中でもイミダゾール類が好ましい。これにより、特に、樹脂層形成用樹脂組成物の速硬化性および保存性を両立することができる。
イミダゾール類としては、例えば1−ベンジル−2メチルイミダゾール、1−ベンジル−2フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。これらの中でも2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールまたは2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これにより、樹脂層形成用樹脂組成物の保存性を特に向上させることができる。
また、硬化触媒の含有量は、特に限定されないが、樹脂材料100質量部に対して0.01〜30質量部程度であるのが好ましく、特に0.5〜10質量部程度であるのがより好ましい。
硬化触媒の含有量を上記の範囲とすることにより、樹脂層形成用樹脂組成物について良好な硬化性をもたらし、また同時に、組成物について適度な保存性をもたらすことができる。
また、樹脂層形成用樹脂組成物は、さらにカップリング剤を含むことが好ましい。これにより、フィラー、絶縁部6、放熱部7および金属層4に対する樹脂材料の密着性をより向上させることができる。
かかるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらの中でもシラン系カップリング剤が好ましい。これにより、樹脂層形成用樹脂組成物の耐熱性および熱伝導性をより向上させることができる。
このうち、シラン系カップリング剤としては、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンなどが挙げられる。
カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂材料100質量部に対して0.01〜10質量部程度であるのが好ましく、特に0.5〜10質量部程度であるのがより好ましい。
シランカップリング剤の含有量を上記の範囲とすることにより、樹脂層形成用樹脂組成物について良好な耐熱性や熱伝導性をもたらし、また同時に、樹脂成分から発生するボイド等を抑制することができる。
また、樹脂層形成用樹脂組成物中のフィラーは、無機材料で構成される。これにより、フィラーは、樹脂材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率を発揮する。したがって、このフィラーが樹脂層形成用樹脂組成物中に分散していることにより、樹脂層5の熱伝導率を高めることができる。
このようなフィラーは、無機材料で構成されるものの中でも、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)、シリカ、窒化ホウ素および窒化アルミニウムのうちの少なくとも1種で構成される粒状体であるのが好ましく、特に、主として酸化アルミニウムで構成された粒状体であるのが好ましい。これにより、熱伝導性(放熱性)および絶縁性に優れた樹脂組成物とすることができる。また、酸化アルミニウムは、汎用性に優れ、安価に入手できる点から、特に好ましく用いられる。
したがって、以下では、フィラーが、主として酸化アルミニウムで構成された粒状体である場合を一例に説明する。
フィラーの含有量は、樹脂層形成用樹脂組成物の固形分全体(溶剤を除く)100質量部に対し、20質量部以上80質量部以下であるのが好ましく、30質量部以上70質量部以下であるのがより好ましい。かかる範囲のように樹脂層形成用樹脂組成物におけるフィラーの含有率を高くすることにより、樹脂層5の熱伝導性をより優れたものとすることができる。
なお、樹脂層形成用樹脂組成物におけるフィラーの含有率を、上記の範囲のように高く設定したとしても、樹脂層形成用樹脂組成物として、温度25℃、せん断速度1.0rpmの条件での粘度をA[Pa・s]とし、温度25℃、せん断速度10.0rpmの条件での粘度をB[Pa・s]としたとき、A/B(チキソ比)が1.2以上、3.0以下となる関係を満足するものを用いることにより、回路基板10(金属箔張基板10A)の製造時に、樹脂層形成用樹脂組成物(ワニス)の粘度およびフロー性を適度なものとすることができる。
また、このフィラーは洗浄して用いることができる。このようにフィラーを洗浄する場合、十分に乾燥を行うことが好ましい。ここで、この乾燥後のフィラーの含水量は、0.10質量%以上0.30質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上0.25質量%以下であるのがより好ましく、0.12質量%以上0.20質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、フィラーの含有量を多くしても、より適度な粘度およびフロー性を有するものとなる。そのため、得られる樹脂層5中にボイドが発生するのを防止しつつ、熱伝導性に優れた樹脂層5を形成することができる。すなわち、優れた熱伝導性および絶縁性を有する樹脂層5を形成することができる。
また、酸化アルミニウムは、通常、水酸化アルミニウムを焼成することにより得られる。得られる酸化アルミニウムの粒状体は、複数の一次粒子で構成されるが、その一次粒子の平均粒径は、その焼成の条件に応じて設定することができる。
また、その焼成後に何ら処理されていない酸化アルミニウムは、一次粒子同士が固着により凝集した凝集体(二次粒子)で構成されている。
そのため、その一次粒子同士の凝集を粉砕により必要に応じて解くことにより、最終的なフィラーが得られる。最終的なフィラーの平均粒径は、その粉砕の条件(例えば時間)に応じて設定することができる。
その粉砕の際、酸化アルミニウムは極めて高い硬度を有するため、一次粒子同士の固着が解かれていくだけで、一次粒子自体は殆ど破壊されず、一次粒子の平均粒径は粉砕後においてもほぼ維持されることとなる。
したがって、粉砕時間が長くなるに従い、フィラーの平均粒径は、一次粒子の平均粒径に近づくことになる。そして、粉砕時間が所定時間以上となると、フィラーの平均粒径は、一次粒子の平均粒径に等しくなる。すなわち、フィラーは、粉砕時間を短くすると主として二次粒子で構成され、粉砕時間を長くするにしたがって一次粒子の含有量が多くなり、最終的に所定時間以上とすると、主として一次粒子で構成されることとなる。
また、例えば、前述したように水酸化アルミニウムを焼成することにより得られた酸化アルミニウムの一次粒子は、球形ではなく、鱗片状のような平坦面を有する形状をなしている。そのため、フィラー同士の接触面積を大きくすることができる。その結果、得られる樹脂層5の熱伝導性を高めることができる。
樹脂層形成用樹脂組成物に含まれるフィラーは、平均粒子径が1.0μm以上50μm以下、好ましくは1.5μm以上30μm以下の範囲にあることが好ましい。これにより、適度な樹脂層5としての適度な放熱性をもたらすことができる。
なお、フィラーの粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000を用いて、水中にフィラーを1分間超音波処理することにより分散させ、測定することができる。
これらの相乗効果により、発熱体搭載基板50の絶縁信頼性および放熱信頼性をより一層高めることができる。
なお、樹脂層形成用樹脂組成物は、上述した成分に加え、レベリング剤、消泡剤等の添加剤が含まれていてもよい。
また、樹脂層形成用樹脂組成物は、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド等の溶剤を含む。これにより、樹脂層形成用樹脂組成物は、樹脂材料等が溶剤に溶解することにより、ワニスの状態となる。
なお、このようなワニス状をなす樹脂層形成用樹脂組成物は、例えば、必要に応じて樹脂材料と溶剤とを混合してワニス状にした後、さらに、フィラーを混合することで得ることができる。
また、混合に用いる混合機としては、特に限定されないが、例えば、ディスパーザー、複合羽根型撹拌機、ビーズミルおよびホモジナイザー等が挙げられる。
なお、樹脂材料が高い熱伝導率を有している場合には、樹脂層形成用樹脂組成物へのフィラーの添加を省略するようにしてもよい。すなわち、樹脂層5をフィラーの添加が省略された、主として樹脂材料で構成されたものとしてもよい。
一方、絶縁部6と樹脂層5との界面において、樹脂層5に含まれるフィラーが、絶縁部6側に分散していることが好ましい態様として挙げられる。これにより、樹脂層5と絶縁部6との界面において、樹脂層5と絶縁部6とが混在した状態が形成されていると言え、樹脂層5と絶縁部6との密着性の向上が図られる。そのため、発熱体搭載基板50の耐久性を優れたものとすることができる。
(絶縁部形成用樹脂組成物)
続いて、絶縁部形成用樹脂組成物について説明する。
本実施形態において、絶縁部を形成する樹脂組成物は、特定の組成のエッチング液に浸漬した際における重量変化率の絶対値が低く設定される。
このような樹脂組成物は、たとえば熱硬化性樹脂を含む。
熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂のようなトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド(BMI)樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂および不飽和ポリエステル樹脂は、適度な流動性を有し、かつ、樹脂層5および放熱部7に対する密着性が高いことから好ましい。
また、フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アリールアルキレン型ノボラック樹脂のようなノボラック型フェノール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂、メチロール型レゾール樹脂等の未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂のようなレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
また、ノボラック型フェノール樹脂を用いる場合、絶縁部形成用樹脂組成物には硬化剤が含まれるが、通常、この硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミンが使用される。さらに、ヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、その含有量は、特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下含有することが好ましく、さらに15質量部以上20質量部以下含有することが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの含有量を上記範囲とすることで、絶縁部形成用樹脂組成物の硬化物すなわち絶縁部6の機械的強度および成形収縮量を良好なものとすることができる。
このようなフェノール樹脂の中でも、レゾール型フェノール樹脂を用いるのが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂を主成分として用いた場合、上記の通り、硬化剤として通常ヘキサメチレンテトラミンが使用され、ノボラック型フェノール樹脂の硬化時にアンモニアガス等の腐食性ガスが発生する。そのため、これに起因して、放熱部7が腐食するおそれがあることから、ノボラック型フェノール樹脂に比較して、レゾール型フェノール樹脂が好ましく用いられる。
また、レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂とを併用するようにすることもできる。これにより、絶縁部6の強度を高めることができるとともに、靭性をも高めることができる。
また、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型のようなビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のようなノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型、臭素化フェノールノボラック型のような臭素化型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、比較的分子量の低いビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、絶縁部6の形成時における作業性や成形性をさらに良好なものにすることができる。また、絶縁部6の耐熱性の面からフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂が好ましく、特に、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂が好ましい。
トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂を用いる場合、その数平均分子量は、特に限定されないが、500〜2000であることが好ましく、700〜1400であることがさらに好ましい。
また、エポキシ樹脂を用いる場合、絶縁部形成用樹脂組成物中には、硬化剤が含まれることが好ましい。硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジシアミンジアミドのようなアミン化合物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物などの酸無水物、ノボラック型フェノール樹脂のようなポリフェノール化合物や、イミダゾール化合物等が挙げられる。中でも、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これにより、絶縁部形成用樹脂組成物の取り扱い、作業性が向上するとともに、絶縁部形成用樹脂組成物を環境面に優れたものとすることができる。
特に、エポキシ樹脂としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂を用いる場合には、硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂を用いることが好ましい。これにより、絶縁部形成用樹脂組成物から得られる硬化物の耐熱性を向上させることができる。なお、硬化剤の添加量は特に限定されないが、エポキシ樹脂に対する理論当量比1.0からの許容幅を±10重量%以内にして配合することが好ましい。
また、絶縁部形成用樹脂組成物は、上記硬化剤とともに必要に応じて硬化促進剤を含有するものであってもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール化合物、三級アミン化合物、有機リン化合物等が挙げられる。硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、3〜8質量部であることがより好ましい。
本実施形態において、絶縁部形成用樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、絶縁部形成用樹脂組成物の固形分全体(溶剤を除く)100質量部に対し、10質量部以上であるのが好ましく、15質量部以上であるのがより好ましい。また、絶縁部形成用樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、絶縁部形成用樹脂組成物の固形分全体(溶剤を除く)100質量部に対し、60質量部以下であるのが好ましく、50質量部以下であるのがより好ましい。
熱硬化性樹脂の含有量を下限値以上とすることにより、絶縁部6の成形性をより良好なものとすることができる。また、熱硬化性樹脂の含有量を上限値以下とすることにより、絶縁部6の絶縁性をより優れたものとすることができる。
また、絶縁部形成用樹脂組成物は、充填材として機能する繊維強化材を含むことが好ましい。これにより、絶縁部6自体の機械的強度と剛性を優れたものとすることができる。
繊維強化材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維(芳香族ポリアミド)、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレン(PE)繊維、ポリイミド繊維のようなプラスチック繊維、バサルト繊維のような無機繊維およびステンレス繊維のような金属繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、これらの繊維強化材には、熱硬化性樹脂との接着性を向上させることを目的に、シランカップリング剤による表面処理が施されていてもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの繊維強化材のうち、ガラス繊維、カーボン繊維またはアラミド繊維を用いることが好ましい。これにより、絶縁部6の機械強度をさらに向上させることができる。特に、カーボン繊維を用いることにより、高負荷における耐摩耗性をさらに向上させることができる。なお、絶縁部6のさらなる軽量化を図るという観点からは、アラミド繊維等のプラスチック繊維であることが好ましい。さらに、絶縁部6の機械強度を向上させる観点からは、繊維強化材として、ガラス繊維やカーボン繊維等の繊維基材を用いることが好ましい。
絶縁部形成用樹脂組成物中における繊維強化材の含有量は、絶縁部形成用樹脂組成物の固形分全体(溶剤を除く)100質量部に対し、30質量部以上であるのが好ましく、35質量部以上であるのがより好ましい。また、絶縁部形成用樹脂組成物中における繊維強化材の含有量は、絶縁部形成用樹脂組成物の固形分全体(溶剤を除く)100質量部に対し、80質量部以下であるのが好ましく、60質量部以下であるのがより好ましい。
繊維強化材の含有量を下限値以上とすることにより、機械強さをより確実に向上させることができる。また、繊維強化材の含有量を上限値以下とすることにより、絶縁部6の成形性をより良好なものとすることができる。
さらに、絶縁部形成用樹脂組成物は、充填材として、繊維強化材以外のものを含んでいてもよく、かかる充填材としては、無機充填材および有機充填材のいずれであってもよい。
無機充填材としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、シリカ、炭酸カルシウム、炭化ホウ素、クレー、マイカ、タルク、ワラストナイト、ガラスビーズ、ミルドカーボン、グラファイト等から選択される1種以上が用いられる。なお、無機充填材としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、シリカのような金属酸化物が含まれていることが好ましい。これにより、金属酸化物が備える酸化皮膜が不動態化膜としての機能を発揮し、硬化物全体としての耐酸性を向上させることができる。
また、有機充填材としては、ポリビニールブチラール、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、パルプ、木粉等から選択される1種以上が用いられる。なお、アクリロニトリルブタジエンゴムとしては、部分架橋またはカルボキシ変性タイプの何れであっても良い。これらのうち、硬化物の靭性を向上させる効果がさらに高まるという観点からは、アクリロニトリルブタジエンゴムが好ましい。
なお、絶縁部形成用樹脂組成物には、以上に説明した成分の他にも、離型剤、硬化助剤、顔料等の添加剤が添加されていてもよい。
ここで本実施形態に係る絶縁部を構成する樹脂組成物の備える特徴について説明する。
本実施形態に係る絶縁部形成用樹脂組成物は、以下の条件により成形して試験片を得、16.5重量%の第二塩化銅、25重量%の塩化水素、25重量%の過酸化水素を含むエッチング液に1時間浸漬させた際に、前記試験片の重量変化率の絶対値が0.02%以下となる、という特徴を有する。
(試験片作製条件)
幅50mm、厚さ3mm、長さ80mmのキャビティを備える金型を用い、金型温度170℃、成形圧力10MPa、硬化時間180秒の条件下で前記樹脂組成物を成形して試験片を得る。
前述した回路基板10を作製し、この回路基板10をリフロー工程に供した際においては、絶縁部6と放熱部7とがかい離する可能性があることが懸念される。
ここで、本発明者らは、上述したような特性を満たすことにより、このかい離を効率的に抑制し、結果として、回路基板としての高い耐リフロー性を発揮することができることを見出した。
ここで、本実施形態において、試験片の重量変化率の絶対値は好ましくは0.018%以下であり、より好ましくは0.015%以下であり、さらに好ましくは0.012%以下である。
このように試験片の重量変化率の絶対値を設定することで、上記のように設定することで、絶縁部6中のボイドや脆弱な領域の割合を制御したこととなり、回路基板10としての耐リフロー性を向上させることができる。
なお、この試験片の重量変化率の絶対値の下限値は特に限定されるものではないが、たとえば、0.001%以上である。
また、前述の方法で得られた試験片について、エッチング液に浸漬させる前後の光沢度の変化率の絶対値が10%以下であることが好ましい。
このように光沢度の変化の度合いを制御した場合においては、絶縁部6がたとえば、薬液条件や高温条件等の外部環境からの影響を受けた際における影響を十分に緩和できていることの指標となる。
そのため、光沢度の変化率の絶対値を制御することにより、一段と回路基板10の耐リフロー性を向上させることができる。
なお、本実施形態における光沢度は、ASTM−D523に準拠して測定した測定角度60°の値を示す。光沢度は、例えば、デジタル光沢度計(20°、60°)(GM−26型、村上色彩技術研究所社製)を用いて測定することができる。
また、試験片の光沢度の変化率の絶対値は8%以下であることが好ましく、また、6%以下であることがさらに好ましい。
試験片の光沢度の変化率の下限値は特に限定されるものではないが、たとえば0.1%以上である。
なお、絶縁部形成用樹脂組成物として、上記特性を満たすためには、用いる樹脂成分(より具体的には熱硬化性樹脂成分)を適切に選択することが好ましく、さらに、その含有量を適切に調整することが好ましい態様であるといえる。
[第2実施形態]
次に、発熱体搭載基板を半導体装置の搭載に適用した第2実施形態について説明する。
図5は、発熱体搭載基板を半導体装置の搭載に適用した第2実施形態を示す縦断面図、図6は、図5中の矢印A方向から見た図(平面図)である。
以下、第2実施形態の発熱体搭載基板51について、前記第1実施形態の発熱体搭載基板50との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図5に示す発熱体搭載基板51は、回路基板10と構成が異なる回路基板10'の上面および下面の双方に、それぞれ、半導体装置1が搭載されていること以外は、図1、2に示す発熱体搭載基板50と同様である。
すなわち、第2実施形態の発熱体搭載基板51において、回路基板10'は、樹脂層5と、樹脂層5の平面視で第1の領域15に対応して樹脂層5を覆う放熱部7と、第2の領域16に対応して樹脂層5を覆う絶縁部6と、これら放熱部7および絶縁部6をその下面で覆う樹脂層5とを備える基材8'と、この基材8'の上面および下面にそれぞれ設けられた金属層4とを備えている。そして、2つの半導体装置1は、それぞれ、接続端子12において電気的に接続された状態で、基材8'が有する金属層4に搭載されている。
また、基材8'において、放熱部7は、樹脂層5の平面視で第1の領域15に対応して樹脂層5を覆い、絶縁部6は、樹脂層5の平面視で第2の領域16に対応して樹脂層5を覆うが、本実施形態では、図6に示すように、放熱部7は、基材8'(回路基板10')の1つの側面において露出しており、この露出する放熱部7の露出面から、2つの半導体装置1において生じた熱が放熱される。
このような第2実施形態の発熱体搭載基板51によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、かかる構成の発熱体搭載基板51は、基材8'の上面および下面の双方にそれぞれ金属箔4Aが設けられた金属箔張基板を用意し、これら双方の金属箔4Aをパターニングして金属層4とした後、金属層4に半導体装置1を搭載することで得られる。
[第3実施形態]
次に、発熱体搭載基板を半導体装置の搭載に適用した第3実施形態について説明する。
図7は、本発明の発熱体搭載基板を半導体装置の搭載に適用した第3実施形態を示す縦断面図である。
以下、第3実施形態の発熱体搭載基板52について、前記第1実施形態の発熱体搭載基板50との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図7に示す発熱体搭載基板52は、回路基板10と構成が異なる回路基板10"の上面に、半導体装置1と構成が異なる半導体装置1'が搭載されていること以外は、図1、2に示す発熱体搭載基板50と同様である。
すなわち、第3実施形態の発熱体搭載基板52において、回路基板10"は、基材8'と、半導体装置1'を搭載する位置に対応する開口部を備える金属層4'とを備えている。そして、半導体装置1'は、半導体素子17と、半導体素子17と金属層4'とを電気的に接続するボンディングワイヤー18と、半導体素子17およびボンディングワイヤー18を封止するモールド部19とを有しており、半導体素子17が金属層4'の開口部において樹脂層5上に接合され、さらに、半導体素子17が備える端子と金属層4'が備える端子とがボンディングワイヤー18を介して電気的に接続された状態で、これらが金属層4'の開口部を包含するように、金属層4'の上面側でモールド部19により封止されている。
このような発熱体搭載基板52では、半導体装置1'が備える半導体素子17が、基材8'が備える樹脂層5に接合されており、半導体素子17において生じた熱が、半導体素子17に接合された樹脂層5さらには放熱部7を介して放熱されることから、この熱の放熱効率の向上が図られる。
このような第3実施形態の発熱体搭載基板52によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、図7では、金属層4'の開口部において放熱部7に樹脂層5が設けられており、半導体素子17において生じた熱は、樹脂層5を介して放熱部7に伝達されるが、これに限定されず、金属層4'の開口部における樹脂層5の形成が省略され、半導体素子17は、放熱部7上に接合されており、これにより、半導体素子17において生じた熱を、樹脂層5を介することなく、放熱部7に直接伝達させるようにしてもよい。かかる構成とすることで、半導体素子17において生じた熱のさらなる放熱効率の向上が図られる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、金属箔張基板、回路基板および発熱体搭載基板を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明では、前記第1〜第3実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
さらに、発熱体搭載基板は、前述した実施形態のものに限定されるもの、すなわち、発熱体として半導体装置を搭載するものに限定されないことはいうまでもなく、発熱体としてのサーミスタのような抵抗、コンデンサー、ダイオードパワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)のようなパワートランジスタ、リアクトル、LED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)、有機EL素子のような発光素子およびモータ等を搭載するものに適用できる。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
1. 回路基板の製造
以下のようにして回路基板を製造した。
(実施例1)
1.1 樹脂層形成用樹脂組成物(ワニス)の調製
[1]まず、ビスフェノールF/ビスフェノールAフェノキシ樹脂(三菱化学製、4275、重量平均分子量6.0×104、ビスフェノールF骨格とビスフェノールA骨格の比率=75:25)40.0質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、850S、エポキシ当量190)55.0質量部、2−フェニルイミダゾール(四国化成製2PZ)3.0質量部、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製KBM−403)2.0質量部を秤量し、これらをシクロヘキサノン400質量部に溶解・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌することで、樹脂材料を含むワニスを得た。
[2]次に、前記工程[1]で予め用意した樹脂材料を含むワニスに、アルミナ(日本軽金属株式会社製、平均粒径A3.2μm、一次粒径B3.6μm、平均粒径A/一次粒径B=0.9の市販品(Lot No. Z401))(505.0質量部)を、ディスパーザー(プライミクス株式会社製、「R94077」)を用いて、回転数1000rpm×攪拌時間120分間の条件で混合することにより、アルミナの樹脂固形分比83.5重量%(60.0体積%)の樹脂層形成用樹脂組成物を得た。
1.2 金属箔上への樹脂層形成用層の成膜
幅260mm、厚さ35μmのロール状銅箔(日本電解株式会社製、YGP−35)を用い、その銅箔の粗化面に、上記1.1で得られた樹脂層形成用樹脂組成物をコンマコーターにて塗布し、100℃で3分、150℃で3分加熱乾燥することで、金属箔上に厚さ100μmの樹脂層形成用層を形成した。
なお、かかる条件で樹脂層形成用樹脂組成物を乾燥させることにより、樹脂層形成用層は、半硬化の状態となっている。これを縦65mm×横100mmにカットして金属箔とした。
1.3 絶縁部形成用樹脂組成物の調製
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名「EOCN−104S」)18質量%、ガラス繊維(日東紡績株式会社製、商品名「CS3E479」)35質量%、シリカ(デンカ株式会社製、商品名「FB−105」)35質量%、硬化剤であるノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、商品名「PR−51305」)10質量%、硬化促進剤であるトリフェニルフォスフィン0.5質量%、潤滑材等のその他の成分1.5質量%を配合し、加熱ロールにより混練し、冷却後粉砕して得られた粉砕物をタブレット化することにより、タブレット状をなす絶縁部形成用樹脂組成物を得た。
1.4 樹脂層上への絶縁部の形成
図4に示される構造の成形金型100を準備し、上記で得られた金属箔と半硬化状態の樹脂層形成用層の積層体について、樹脂層形成用層を上面にして、この樹脂層形成用層の表面の一部の領域に厚さ2mmのアルミニウム板を配置した。
次に、ポット111内の絶縁部形成用樹脂組成物を加熱溶融しつつ、プランジャー112をポット111内に挿入する。これにより、加熱および加圧された状態で、溶融した絶縁部形成用樹脂組成物が樹脂層形成用層を覆うようにキャビティ内に充填させる。
そして、溶融した絶縁部形成用樹脂組成物と、樹脂層形成用層とを硬化させることにより、回路基板を得た。
なお、絶縁部形成用樹脂組成物および樹脂層形成用層を硬化させる際の条件は、以下のように設定した。
・加熱温度 : 175℃
・加圧時の圧力 : 5.0MPa
・加熱/加圧時間: 3分
2.試験片の製造
1.3項で得られた絶縁部形成用樹脂組成物について、幅50mm、厚さ3mm、長さ80mmのキャビティを備える金型を用い、金型温度170℃、成形圧力10MPa、硬化時間180秒の条件下で成形して試験片を得た。
(実施例2)
前記1.3における絶縁部形成用樹脂組成物について、フェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製、商品名「XL−225MB」)30質量%、ヘキサメチレンテトラミン4質量%、ガラス繊維(日東紡績株式会社製、商品名「CS3E479」)64質量%、潤滑材等のその他の成分を2質量%配合することで、当該樹脂組成物を得た以外は、前記実施例1と同様にして、回路基板および試験片を得た。
前述の試験片および回路基板について以下に従い評価を行っている。
(エッチング液浸漬試験)
16.5重量%の第二塩化銅、25重量%の塩化水素、25重量%の過酸化水素を含むエッチング液を準備し、2.項で得られた試験片を振とうさせながら1時間浸漬させた。
この浸漬試験の前後における試験片の重量、また、この重量から導かれる重量変化率を表1に示した。
(光沢度)
先のエッチング液浸漬試験の前後における試験片の表面について、デジタル光沢度計(20°、60°)(GM−26型、村上色彩技術研究所社製)を用い、ASTM−D523に準拠して、測定角度60°の光沢度を測定した。
浸漬試験の前後における試験片の光沢度、また、この光沢度の変化率を表1に示した。
(耐リフロー性)
実施例1、2および比較例1で得られた回路基板について、以下に示す条件で耐リフロー性試験を行った。
まず基板を5cm×8cmにカットした。本基板を、最高温度が260℃かつ5秒以上250℃以上となる条件でリフロー装置に1回通した後、外観を確認した。
なお、この試験の評価は以下の基準に基づき行った。
◎:目視で確認できる膨れが無い
○:目視で確認できる膨れが1〜5箇所ある
×:目視で確認できる膨れが6箇所以上ある
表1に示されるように実施例においては、高い耐リフロー性を発揮する回路基板を導くことができた。なお、実施例1で用いた絶縁部形成用樹脂組成物として、シリカの代わりに、比較的吸湿性の高いケイ酸カルシウムのフィラーを用いた場合においては、エッチング液浸漬試験前後での重量変化が大きくなり、耐リフロー性の試験において、他の実施例より劣るとの結果を与えた。