《本発明の第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る圧電ブロア100について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る圧電ブロア100の外観斜視図である。図2は、図1に示す圧電ブロア100の外観斜視図である。図3は、図1に示す圧電ブロア100のS−S線の断面図である。
圧電ブロア100は、上から順に、天板部17、振動体45、及び圧電素子42を備え、それらが順に積層された構造を有している。圧電ブロア100は、ポンプの一種である。振動体45は、振動板41及び補強板70を備え、それらが積層された構造を有している。振動体45は、第1主面40Aと第2主面40Bとを有する。
振動板41は、円板状であり、例えばステンレススチール(SUS)から構成されている。振動体45の第2主面40Bは、天板部17の先端に接合している。これにより、振動体45は、天板部17とともに振動板41の厚み方向から挟んで円柱形状のブロア室31を構成する。また、振動体45および天板部17は、ブロア室31が半径aとなるよう形成されている。例えば本実施形態においてブロア室31の半径aは11mmであり、振動板41の厚みは0.1mmである。
また、振動体45の第2主面40Bにおける天板部17との接合部分より内側の領域は、ブロア室31の底面を構成する。振動体45は、ブロア室31をブロア室31の外部と連通させる円柱状の通気孔124を有する。例えば本実施形態において通気孔124の直径は、1.4mmである。
また、振動体45は、振動体45及び天板部17の振動により形成されるブロア室31の圧力振動の節のうち、最も外側の圧力振動の節Fから、ブロア室31の外周までの範囲に接する外周領域145を有する。ここで、ブロア室31の圧力振動の節の詳細については、後述する。
なお、圧電素子42は、駆動体の一例に相当する。外周領域145は、本発明の第2外周領域の一例に相当する。ブロア室31の圧力振動の節の詳細については、後述する。
ブロア室31は、振動体45の外周領域145に接する外周空間131と、外周空間131より内側に位置する中央空間132と、によって構成される。
補強板70は、円板形状であり、例えばステンレススチールで構成されている。補強板70は、振動板41のブロア室31とは逆側の主面40Cに接合されている。補強板70は、圧電素子42の屈曲によって圧電素子42が破損することを防止する。
圧電素子42は、円板形状であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されている。圧電素子42の両主面には、電極が形成されている。圧電素子42は、補強板70のブロア室31とは逆側の第1主面40Aに接合されている。圧電素子42は、印加された交流電圧に応じて伸縮する。例えば本実施形態において圧電素子42の直径は、11mmであり、圧電素子42の厚みは、0.15mmある。
なお、圧電素子42、補強板70及び振動板41の接合体は、圧電アクチュエータ90を構成する。
天板部17は、下方が開口した断面コ字状に形成されている。天板部17の先端は、振動板41に接合している。天板部17は、振動板41の第2主面40Bに対向する円板状の天上部18と、天上部18に接続する円環状の側壁部19と、天上部18の振動板41とは逆側の主面に接合する円板状の薄天板28と、を有する。天上部18及び薄天板28の一部は、ブロア室31の天面を構成する。
天板部17は、ブロア室31の内部と外部を連通させる通気孔24を薄天板28に有する。例えば本実施形態において通気孔24の直径は、1.4mmである。天板部17は、例えば金属から構成されている。
また、天板部17は、振動体45及び天板部17の振動により形成されるブロア室31の圧力振動の節のうち、最も外側の圧力振動の節Fから、ブロア室31の外周までの範囲に接する外周領域175と、天板部17の屈曲振動により形成される振動の腹のうち、最も外側の腹B2より内側に位置する中央領域176と、を有する。ここで、外周領域175は、本発明の第1外周領域の一例に相当する。また、振動の腹の詳細に関しては後述する。
天板部17は、中央領域176内に補強板180を有する。補強板180は、中央領域176の振動を拘束する。補強板180は、円環形状であり、例えばステンレススチールで構成されている。例えば本実施形態において補強板180の外径は、12mmである。
また、天板部17の振動板41側には、ブロア室31の一部であり、通気孔24と連通するキャビティ25を構成する凹部26が形成されている。キャビティ25は、円柱形状である。例えば本実施形態においてキャビティ25の直径は、3.0mmであり、キャビティ25の厚みは、0.3mmである。
以下、圧電ブロア100が駆動している間における空気の流れについて説明する。
図4(A)(B)は、図1に示す圧電ブロア100を3次モードの共振周波数(基本波)で動作させた時における圧電ブロア100のS−S線の断面図である。図4(A)は、ブロア室31の容積が最も減少したときの図であり、図4(B)は、ブロア室31の容積が最も増大したときの図である。
また、図5は、図4(B)に示す瞬間の、中心軸Cから端Jまでの振動板41及び天板部17の各点の変位を示す図である。図6は、図4(B)に示す瞬間の、中心軸Cから端Jまでのブロア室31の各点の圧力変化を示す図である。
ここで、図4中の矢印は、空気の流れを示している。また、ブロア室31の共振周波数とは、ブロア室31の中心部で発生した圧力振動と、その圧力振動が外周部側に伝搬して反射し、再びブロア室31の中心部に到達する圧力振動とが、共振する周波数のことである。
また、図5において振動板41の各点の変位は、ブロア室31の中心軸C上にある振動板41の中心の変位で規格化された値で示されている。また、図5において天板部17の各点の変位は、ブロア室31の中心軸C上にある天板部17の中心の変位で規格化された値で示されている。
また、図6において、ブロア室31の各点の圧力変化は、ブロア室31の中心軸C上の圧力変化で規格化された値で示されている。図6に示す、ブロア室31の各点の圧力変化分布u(r)は、ブロア室31の中心軸Cからの距離をrとしたとき、u(r)=J0(k0r/a)の式で表される。
図3に示す状態において、3次モードの共振周波数fの交流駆動電圧(例えば60Vpp)が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動体45を3次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。同時に、天板部17は、振動体45の振動が伝わり、振動体45の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)3次モードで同心円状に屈曲振動する。
これにより、図4(A)(B)に示すように、振動体45及び天板部17が屈曲変形してブロア室31の体積が周期的に変化する。
図4(A)に示すように、振動体45が圧電素子42側へ屈曲すると、天板部17も圧電素子42とは逆側へ屈曲する。これに伴い、圧電ブロア100の外部の空気が通気孔24を介してブロア室31内に吸引される。
図4(B)に示すように、振動体45がブロア室31側へ屈曲すると、天板部17もブロア室31側へ屈曲する。これに伴い、圧電ブロア100の外部の空気が通気孔124を介してブロア室31内に吸引され、ブロア室31内の空気が通気孔24から吐出される。
以上のように、圧電ブロア100では、振動体45の屈曲振動に伴い天板部17が屈曲振動する。そのため、圧電ブロア100は、実質的に振動振幅を増すことができる。これにより、本実施形態の圧電ブロア100は、吐出圧力と吐出流量を増加させることができる。
なお、ブロア室31の半径aとアクチュエータ90の共振周波数fとは、ブロア室31を通過する空気の音速をcとし、第1種ベッセル関数を微分したJ0´(k0)=0の関係を満たす値をk0としたとき、af=(k0c)/(2π)の関係を満たす。第1種ベッセル関数J0(x)は、以下の数式で示される。
本実施形態において、ブロア室31の半径aは、ブロア室31の中心軸Cから、振動板41における天板部17との接合部分より内側にある領域の端Jまでの最短距離である。例えば本実施形態において共振周波数fは、38.05kHzである。空気の音速cは、約340m/sである。k0は、7.02である。
ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する振動板41の各点は、図5の点線に示すように、振動によって変位する。また、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する天板部17の各点は、図5の実線に示すように、振動によって変位する。
そして、図6に示すように、ブロア室31の中心軸Cから端Jにかけて、ブロア室31の各点の圧力は、振動板41及び天板部17の振動によって変化する。
ここで、振動板41の振動の腹B1の位置は、圧電素子42及び補強板70の存在によって外側にズレると考えられる。そして、圧電ブロア100が駆動している間、天板部17の中央領域176の振動が補強板180によって阻害される。これにより、天板部17の振動の腹B2の位置が、図5に示すように補強板180の存在によって外側にズレる。
よって、圧電ブロア100では、振動板41の振動の腹B1の位置と天板部17の振動の腹B2の位置とが近づく。振動板41の振動の腹B1の位置と天板部17の振動の腹B2の位置とが近い状況では、振動の効率に優れ、電力が有効に消費される。したがって、圧電ブロア100は、消費電力あたりの吐出圧力を向上できる。
また、圧電ブロア100は、ブロア室31の通気孔24近くにキャビティ25を有する。そのため、圧電ブロア100では、ブロア室31の通気孔24近くで発生する渦がキャビティ25で低下する。これにより、ブロア室31の圧力振動が渦によって乱されることを防ぐことができる。よって、圧電ブロア100は、ブロア室31の通気孔24近くで発生する渦を弱め、吐出圧力が低下することを防ぐことができる。
また、圧電ブロア100は、駆動時に発生する音や振動が小さい圧電体を駆動源として用いているため、静音化を実現できる。
以下、本発明の第1実施形態に係る圧電ブロア100と本発明の第1実施形態の比較例に係る圧電ブロア150とを比較する。まず、圧電ブロア150の構成および動作について説明する。
図7は、本発明の第1実施形態の比較例に係る圧電ブロア150の断面図である。圧電ブロア150が圧電ブロア100と相違する点は、補強板180を中央領域176内に備えない点である。その他の点に関しては同じであるため、説明を省略する。
図7に示す状態において、3次モードの駆動周波数fの交流駆動電圧(例えば60Vpp)が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動体45を3次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。同時に、天板部157は、振動体45の振動が伝わり、振動体45の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)3次モードで同心円状に屈曲振動する。
これにより、図4(A)(B)に示す圧電ブロア100と同様に、圧電ブロア150の振動体45及び天板部157も屈曲変形してブロア室31の体積が周期的に変化する。
図8は、図7に示す振動板41及び天板部157の各点の変位を示す図である。ここで、図8において振動板41の各点の変位は、図5と同様に、ブロア室31の中心軸C上にある振動板41の中心の変位で規格化された値で示されている。また、図8において天板部157の各点の変位は、図5と同様に、ブロア室31の中心軸C上にある天板部157の中心の変位で規格化された値で示されている。
ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する振動板41の各点は、図8の点線に示すように、振動によって変位する。同様に、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する天板部157の各点は、図8の実線に示すように、振動によって変位する。
次に、圧電ブロア150と圧電ブロア100とに対して駆動周波数37.0kHzの正弦波交流電圧60Vppを印加した条件で、圧電ブロア150の通気孔24から流出する空気の圧力(kPa)と、圧電ブロア100の通気孔24から流出する空気の圧力(kPa)と、を測定した結果を以下に示す。
実験により、圧電ブロア150では空気の圧力が10.2(kPa)であるのに対し、圧電ブロア100では空気の圧力が14.0(kPa)であることが明らかとなった。
以上の結果になった理由は、圧電ブロア100では、図5、図8に示すように、振動板41の振動の腹B1の位置と天板部17の振動の腹B2の位置とが補強板180の存在によって近づき、振動の効率が高まったためであると考えられる。
以上より、圧電ブロア100は圧電ブロア150に比べて、消費電力あたりの吐出圧力を向上できる。
以下、本発明の第2実施形態に係る圧電ブロア200について説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る圧電ブロア200の断面図である。図10は、図9に示す圧電ブロア200の断面図である。圧電ブロア200が圧電ブロア100と相違する点は、補強板60を外周領域145内に備える点である。その他の点に関しては同じであるため、説明を省略する。
振動体245は、振動板41、補強板70、及び補強板60を備え、それらが積層された構造を有している。振動板41の主面40Cには、外周領域145の振動を拘束する補強板60が接合されている。補強板60は、円環形状であり、例えばステンレススチールで構成されている。補強板60の内径は、18mmである。
なお、圧電素子42、補強板70、補強板60及び振動板41の接合体は、圧電アクチュエータ290を構成する。
補強板60は、振動板41の主面40Cに接合されている。補強板60は、外周領域145の振動を拘束する。補強板60は、円環形状であり、例えばステンレススチールで構成されている。補強板60の内径は、18mmである。
図10に示す状態において、3次モードの駆動周波数fの交流駆動電圧(例えば60Vpp)が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動体245を3次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。同時に、天板部17は、振動体245の振動が伝わり、振動体245の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)3次モードで同心円状に屈曲振動する。
これにより、図4(A)(B)に示す圧電ブロア100と同様に、圧電ブロア200の振動体245及び天板部17も屈曲変形してブロア室31の体積が周期的に変化する。
図11は、図10に示す振動板41及び天板部17の各点の変位を示す図である。ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する振動板41の各点は、図11の点線に示すように、振動によって変位する。同様に、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する天板部17の各点は、図11の実線に示すように、振動によって変位する。
そして、図6に示すように、ブロア室31の中心軸Cから端Jにかけて、ブロア室31の各点の圧力は、振動板41及び天板部17の振動によって変化する。
ここで、振動板41の振動の腹B1の位置は、圧電素子42及び補強板70の存在によって外側にズレると考えられる。そして、圧電ブロア200が駆動している間、天板部17の中央領域176の振動が補強板180によって阻害される。これにより、天板部17の振動の腹B2の位置が、図11に示すように補強板180の存在によって外側にズレる。
よって、圧電ブロア200では、振動板41の振動の腹B1の位置と天板部17の振動の腹B2の位置とが近づく。振動板41の振動の腹B1の位置と天板部17の振動の腹B2の位置とが近い状況では、振動の効率に優れ、電力が有効に消費される。
したがって、圧電ブロア200は、前述の圧電ブロア100と同様に、消費電力あたりの吐出圧力を向上できる。
また、圧電ブロア200ではブロア室31の半径aとアクチュエータ290の共振周波数fとがaf=(k0c)/(2π)を満たす。そのため、圧電ブロア200では、天板部17の振動の節の内、最も外側の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じている。また、圧電ブロア200では、振動板41の振動の節の内、最も外側の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じている。
ここで、圧電ブロア200が駆動している間、ブロア室31の外周空間131において空気の圧力が大気圧より高くなった時、振動体245の外周領域145は、補強板60によって拘束され、殆ど振動しない。つまり、補強板60は、振動体245の外周領域145が圧電素子42側へ変位することを防止する。
反対に、圧電ブロア200が駆動している間、ブロア室31の外周空間131において空気の圧力が大気圧より低くなった時、振動体245の外周領域145は、補強板60によって拘束され、殆ど振動しない。つまり、補強板60は、振動体245の外周領域145がブロア室31側へ変位することを防止する。
すなわち、圧電ブロア200は、振動体245の外周領域145が悪影響をブロア室31の圧力に及ぼすことを防止する。そのため、圧電ブロア200は、ブロア室31の空気の圧力共振を低下させない。
したがって、圧電ブロア200は、振動体245の外周領域145の振動によって吐出圧力や吐出流量が低下することを防ぐことができる。そのため、圧電ブロア200は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
以下、本発明の第2実施形態に係る圧電ブロア200と本発明の第2実施形態の比較例に係る圧電ブロア250とを比較する。まず、圧電ブロア250の構成および動作について説明する。
図12は、本発明の第2実施形態の比較例に係る圧電ブロア250の断面図である。圧電ブロア250が圧電ブロア200と相違する点は、補強板180を中央領域176内に備えない点である。その他の点に関しては同じであるため、説明を省略する。
図12に示す状態において、3次モードの駆動周波数fの交流駆動電圧(例えば60Vpp)が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動体245を3次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。同時に、天板部157は、振動体245の振動が伝わり、振動体245の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)3次モードで同心円状に屈曲振動する。
これにより、図4(A)(B)に示す圧電ブロア200と同様に、圧電ブロア250の振動体245及び天板部157も屈曲変形してブロア室31の体積が周期的に変化する。
図13は、図12に示す振動板41及び天板部157の各点の変位を示す図である。ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する振動板41の各点は、図13の点線に示すように、振動によって変位する。同様に、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する天板部157の各点は、図13の実線に示すように、振動によって変位する。
次に、圧電ブロア250と圧電ブロア200とに対して駆動周波数37.0kHzの正弦波交流電圧60Vppを印加した条件で、圧電ブロア250の通気孔24から流出する空気の圧力(kPa)と、圧電ブロア200の通気孔24から流出する空気の圧力(kPa)と、を測定した結果を以下に示す。
実験により、圧電ブロア250では空気の圧力が13.2(kPa)であるのに対し、圧電ブロア200では空気の圧力が17.8(kPa)であることが明らかとなった。
以上の結果になった理由は、圧電ブロア200では、図11、図13に示すように、振動板41の振動の腹B1の位置と天板部17の振動の腹B2の位置とが補強板180の存在によって近づき、振動の効率が高まったためであると考えられる。
以上より、圧電ブロア200は圧電ブロア250に比べて、消費電力あたりの吐出圧力を向上できる。
以下、本発明の第3実施形態に係る圧電ブロア300について説明する。
図14は、本発明の第3実施形態に係る圧電ブロア300の断面図である。図15は、図14に示す圧電ブロア300のT−T線の断面図である。圧電ブロア300が圧電ブロア100と相違する点は、補強板60及び補強板160を備える点である。圧電ブロア300が圧電ブロア200と相違する点は、補強板160を外周領域175内に備える点である。その他の点に関しては同じであるため、説明を省略する。
天板部317が前述の天板部17と相違する点は、補強板160を外周領域175に備える点である。補強板160は、円環形状であり、例えばステンレススチールで構成されている。補強板160の内径は、18mmである。補強板160は、外周領域175の振動を拘束する。
図15に示す状態において、3次モードの駆動周波数fの交流駆動電圧(例えば60Vpp)が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動体245を3次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。同時に、天板部317は、振動体245の振動が伝わり、振動体245の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)3次モードで同心円状に屈曲振動する。
これにより、図4(A)(B)に示す圧電ブロア100と同様に、圧電ブロア300の振動体245及び天板部317も屈曲変形してブロア室31の体積が周期的に変化する。
図16は、図15に示す振動板41及び天板部317の各点の変位を示す図である。ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する振動板41の各点は、図16の点線に示すように、振動によって変位する。同様に、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する天板部317の各点は、図16の実線に示すように、振動によって変位する。
そして、図6に示すように、ブロア室31の中心軸Cから端Jにかけて、ブロア室31の各点の圧力は、振動板41及び天板部317の振動によって変化する。
ここで、振動板41の振動の腹B1の位置は、圧電素子42及び補強板70の存在によって外側にズレると考えられる。そして、圧電ブロア300が駆動している間、天板部317の中央領域176の振動が補強板180によって阻害される。これにより、天板部317の振動の腹B2の位置が、図11に示すように補強板180の存在によって外側にズレる。
よって、圧電ブロア300では、振動板41の振動の腹B1の位置と天板部317の振動の腹B2の位置とが近づく。振動板41の振動の腹B1の位置と天板部317の振動の腹B2の位置とが近い状況では、振動の効率に優れ、電力が有効に消費される。
したがって、圧電ブロア300は、前述の圧電ブロア100と同様に、消費電力あたりの吐出圧力を向上できる。
また、圧電ブロア300ではブロア室31の半径aとアクチュエータ290の共振周波数fとがaf=(k0c)/(2π)を満たす。そのため、圧電ブロア300では、天板部317の振動の節の内、最も外側の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じている。また、圧電ブロア300では、振動板41の振動の節の内、最も外側の節Fが、ブロア室31の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じている。
ここで、圧電ブロア300が駆動している間、ブロア室31の外周空間131において空気の圧力が大気圧より高くなった時、天板部317の外周領域175(約8mmから端Jまでの領域)は、補強板160によって拘束され、殆ど振動しない。つまり、補強板160は、振動体245の外周領域145がブロア室31とは逆側へ変位することを防止する。
同様に、圧電ブロア300が駆動している間、ブロア室31の外周空間131において空気の圧力が大気圧より高くなった時、振動体245の外周領域145(約8mmから端Jまでの領域)は、補強板60によって拘束され、殆ど振動しない。つまり、補強板60は、振動体245の外周領域145がブロア室31とは逆側へ変位することを防止する。
反対に、圧電ブロア300が駆動している間、ブロア室31の外周空間131において空気の圧力が大気圧より低くなった時も、天板部317の外周領域175は、補強板160によって拘束され、殆ど振動しない。つまり、補強板160は、振動体245の外周領域145がブロア室31側へ変位することを防止する。
同様に、ブロア室31の外周空間131において空気の圧力が大気圧より低くなった時も、振動体245の外周領域145は、補強板60によって拘束され、殆ど振動しない。つまり、補強板60は、振動体245の外周領域145がブロア室31側へ変位することを防止する。
すなわち、圧電ブロア300では、振動体245の外周領域145が、悪影響をブロア室31の圧力に及ぼさず、ブロア室31の空気の圧力共振を低下させない。さらに、天板部317の外周領域175が、悪影響をブロア室31の圧力に及ぼさず、ブロア室31の空気の圧力共振を低下させない。
したがって、圧電ブロア300は、天板部317の外周領域175の振動によって吐出圧力や吐出流量が低下することを防ぐことができる。さらに、圧電ブロア300は、振動体245の外周領域145の振動によって吐出圧力や吐出流量が低下することを防ぐことができる。そのため、圧電ブロア300は、高い吐出圧力および高い吐出流量を実現できる。
以下、本発明の第3実施形態に係る圧電ブロア300と本発明の第3実施形態の比較例に係る圧電ブロア350とを比較する。まず、圧電ブロア350の構成および動作について説明する。
図17は、本発明の第3実施形態の比較例に係る圧電ブロア350の断面図である。圧電ブロア350が圧電ブロア300と相違する点は、補強板180を中央領域176内に備えない点である。その他の点に関しては同じであるため、説明を省略する。
図17に示す状態において、3次モードの駆動周波数fの交流駆動電圧(例えば60Vpp)が圧電素子42の両主面の電極に印加されると、圧電素子42は、伸縮し、振動体245を3次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。同時に、天板部357は、振動体245の振動が伝わり、振動体245の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)3次モードで同心円状に屈曲振動する。
これにより、図4(A)(B)に示す圧電ブロア300と同様に、圧電ブロア350の振動体245及び天板部357も屈曲変形してブロア室31の体積が周期的に変化する。
図18は、図17に示す振動板41及び天板部357の各点の変位を示す図である。ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する振動板41の各点は、図18の点線に示すように、振動によって変位する。同様に、ブロア室31の中心軸Cからブロア室31の端Jまでを構成する天板部357の各点は、図18の実線に示すように、振動によって変位する。
次に、圧電ブロア350と圧電ブロア300とに対して駆動周波数37.0kHzの正弦波交流電圧60Vppを印加した条件で、圧電ブロア350の通気孔24から流出する空気の圧力(kPa)と、圧電ブロア300の通気孔24から流出する空気の圧力(kPa)と、を測定した結果を以下に示す。
実験により、圧電ブロア350では空気の圧力が20.0(kPa)であるのに対し、圧電ブロア300では空気の圧力が31.8(kPa)であることが明らかとなった。
以上の結果になった理由は、圧電ブロア300では、図16、図18に示すように、振動板41の振動の腹B1の位置と天板部317の振動の腹B2の位置とが補強板180の存在によって近づき、振動の効率が高まったためであると考えられる。
以上より、圧電ブロア300は圧電ブロア350に比べて、消費電力あたりの吐出圧力を向上できる。
《その他の実施形態》
前記実施形態では流体として空気を用いているが、これに限るものではない。当該流体が、空気以外の気体であっても適用できる。
また、前記実施形態では、振動板41、補強板60、補強板70、補強板160、補強板180、天上部18及び薄天板28はSUSから構成されているが、これに限るものではない。例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、銅などの他の材料から構成してもよい。
また、前記実施形態ではブロアの駆動源として圧電素子42を設けたが、これに限るものではない。例えば、電磁駆動でポンピングを行うブロアとして構成されていても構わない。
また、前記実施形態では、圧電素子42はチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されているが、これに限るものではない。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム系及びアルカリニオブ酸系セラミックス等の非鉛系圧電体セラミックスの圧電材料などから構成してもよい。
また、前記実施形態では、圧電素子42は、補強板70のブロア室31とは逆側の第1主面40Aに接合されているが、これに限るものではない。実施の際は、例えば、圧電素子42が振動板41の第2主面40Bに接合されていてもよいし、2枚の圧電素子42が、補強板70の第1主面40A及び振動板41の第2主面40Bに接合されていてもよい。
この場合、天板部17は、少なくとも1枚の圧電素子42、補強板70、及び振動板41から構成される圧電アクチュエータとともに、振動板41の厚み方向から挟んでブロア室を構成する。
また、前記実施形態では円板状の圧電素子42、円板状の振動板41、円板状の補強板70、円環状の補強板60、160、180、円板状の天上部18及び円板状の薄天板28等を用いたが、これに限るものではない。例えば、これらの形状が矩形や多角形であってもよい。
また、前記実施形態では、k0が7.02の条件を用いたが、これに限るものではない。2.40、3.83、5.52、8.65、10.17、11.79、13.32、14.93など、k0は、J0´(k0)=0の関係を満たす値であれば良い。
また、前記実施形態では、3次モードの周波数で圧電ブロアの振動体を振動させたが、これに限るものではない。実施の際は、複数の振動の腹を形成する、3次モード以上の奇数次の振動モードで振動板を振動させても良い。
また、前記実施形態では、補強板180が中央領域176の一部に設けられているが、これに限るものではない。実施の際は、補強板180より大きな補強板が中央領域176の全てに設けられていてもよい。
また、前記実施形態では、補強板60が外周領域145の全体に設けられているが、これに限るものではない。実施の際は、補強板60より小さい補強板が外周領域145の一部に設けられていてもよい。
同様に、前記実施形態では、補強板160が外周領域175の全体に設けられているが、これに限るものではない。実施の際は、補強板160より小さい補強板が外周領域175の一部に設けられていてもよい。
また、前記実施形態では、ブロア室31の形状が円柱形状であるが、これに限るものではない。実施の際は、ブロア室の形状が正角柱形状であっても良い。この場合、ブロア室の半径aの代わりに、振動板の中心軸からブロア室の外周までの最短距離aを使用する。
最後に、前記実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。