A.第1実施形態:
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、胚培養装置(インキュベータとも呼ぶ)10の平面図、図2は、胚培養装置10の一部を示す斜視図、である。この胚培養装置10は、体外授精の処置がなされた卵子(以下、処置卵という)を一定期間、所定の培養環境、即ち恒温・恒湿度で培養するためのものである。処置卵は、必ずしも受精卵とは限らないため、胚培養装置10において所定の期間培養される。なお、体外受精の処置は顕微鏡下で行なわれる顕微授精の場合もあれば、卵子と精子を所定の容器内で一緒にして行なわれる通常の体外受精の場合も有り得る。培養する処置卵の受精の手法は問わない。
この胚培養装置10は、図1に示したように、12個の培養ユニット11〜22を備える。各培養ユニット11〜22の構成と働きについては、後述する。この培養ユニット11〜22は、フラットなケース本体9に前後2列、幅方向に6つずつ設けられている。各培養ユニット11〜22には、それぞれに対応して、スイッチSW11〜SW22が設けられている。これらのスイッチSW11〜22を操作することで、対応する培養ユニット11〜22のタイムラプス部50が、図示しない駆動機構によって開閉される。もとより、培養ユニット11〜22はも、手動で開け閉めする構造であっても差し支えない。
図2は、培養ユニット12において、タイムラプス部50が開かれた状態を示している。タイムラプス部50は、カメラモジュール51とディスプレイモジュール52とからなる。カメラモジュール51とディスプレイモジュール52とは、同寸で、一体に形成されている。カメラモジュール51には、4つのカメラユニットCA1〜CA4が設けられている。これらの構造と働きについては後述する。各培養ユニット11〜22には、それぞれ培養室R11〜R22(図3参照)が用意されており、各培養室R11〜22それぞれのタイムラプス部50は、対応する培養室R11〜R22に対して、蓋としても働く。タイムラプス部50のカメラモジュール51側外周には、シリコンゴムのシール部が設けられており、タイムラプス部50が閉まると、培養室R11〜R22内は、このシール部により、所定以上の気密状態に保たれる。
胚培養装置10には、外部のガスボンベから二酸化炭素ガス(CO2 )と窒素ガス(N2 )とが供給される。これらのガスが供給されガスポート31,32が、胚培養装置10の背面に設けられている。また、胚培養装置10の背面にはフィルタ34が取り付けられるフィルタポート35,36も設けられている。このフィルタ34は、図示しない内蔵ポンプにより取り込む外気中の塵などの異物を取り除くためのものである。胚培養装置10内では、ガスポート31、32から入力した二酸化炭素ガスCO2 、窒素ガスN2 、およびフィルタ34を介して入力した空気を、所定の割合に混合して混合気を生成する。混合気における各ガスの割合は、図示しないセンサにより測定され、常時おなじ割合に保たれる。
図3は、培養室R11〜R22の一つを示す平面図である。図示する様に、培養室R11〜R22は、処置卵を収めたトレイ(ディッシュとも呼ぶ)を載置する凹部40が設けられている。トレイ91の形状は図5に示した。凹部40は、トレイ91の形状に合わせた形状とされている。本実施形態では、凹部40は、長方形状の凹みの1箇所が外方に拡張された形状(拡張部42)をしており、トレイ91も同様に、1箇所が外方に突き出た形状(突出部92)をしている。このため、凹部40は、前後および左右のいずれをとっても中心線に対して線対称ではない形状とされている。従って、凹部40にトレイ91を載置する際、載置する方向を誤ることがない。もとより、誤載置の防止は、他の方法、例えば電気的な検出などによっても良く、凹部40やトレイ91の形状は、左右および/または前後に線対称としても差し支えない。またトレイ91にマーカーを設け、載置方向などによらず、撮像した画像から、トレイ91の配置(向きなど)、あるいは直接処置卵を特定するようにしてもよい。
培養室R11〜22の底面には、供給口43と排気口44とが設けられている。供給口43は、混合気を培養室R11〜R22に供給するための開口である。また排気口44は、混合気を還流するための開口である。既述したように、培養室R11〜R22は、タイムラプス部50が閉じられるとほぼ気密にされるので、内部のガス環境は一定に保たれるが、培養室R11〜R22内の温度分布を一様なものにするために、混合気は供給口43から供給され、排気口44から排気される。なお、混合気の一部は、タイムラプス部50とのシール部からも僅かに漏れる。そうすることで、タイムラプス部50とのシール部から外気が侵入することを防いでいる。
培養室R11〜R22の各々には、その側壁および底面にパネルヒータH11〜H22が設けられている。ヒーターH11〜H22は、側壁のみあるいは底面のみに設けても良い。あるいは独立のヒーターを培養室R11〜R22に設けても良い。更に、蓋側にも設けても良い。パネルヒータH11〜H22により、培養室R11〜R22内を一定の温度に保たれる。なお、説明は省略するが、培養室R11〜R22には、図示しない温度センサやガス濃度センサ、更には湿度センサなどが設けられており、培養室R11〜R22内の温度、ガス濃度、湿度を検出することができる。これらのセンサからの信号をフィードバックすることにより、結果的に、培養室R11〜R22内は、恒温・恒湿度に保たれ、かつそのガス濃度も一定に保たれる。なお、培養室R11〜R22内の温度等を検出する代わりに、供給口43から供給される混合気の温度、湿度、ガス濃度などを一定に保つことで、培養室R11〜R22内の環境を一定に保つものとしても良い。
次に、タイムラプス部50について説明する。図4は、タイムラプス部50を含む胚培養装置10の電気的な構成を示す説明図である。図示する様に、胚培養装置10には、制御部60が設けられている。制御部60は、周知のCPU61、ROM62、RAM63の他、メモリカード65とのデータのやり取りを行なうためのメモリインタフェース64、外部の機器との信号をやり取りする汎用I/Oインタフェース66、培養室R11〜R22内の環境を制御するための信号をやり取りする培養室インタフェース67、タイムラプス部50との間でシリアル通信を行なうSIO68等を備える。メモリカード65には、各培養室R11〜R22の温度など、環境に関する情報が記録される。
汎用I/Oインタフェース66は、胚培養装置10に設けられたスイッチSW11〜SW22や、タイムラプス部50の開閉を行なう駆動装置71、警告音を発生する警告装置72、混合気を調整する混合気調整装置73等に接続されている。混合気調整装置73は、ガスポート31,32に供給される二酸化炭素ガスや窒素ガスなどの圧力を調整する圧力調整弁や、フィルタ34を介して大気を取り込むためのポンプや、培養室R11〜R22に混合気を送り込むポンプなどを含む。培養室インタフェース67には、各培養室R11〜R22にに設けられたパネルヒータH11〜H22や、混合気の供給量を制御する制御弁V11〜V22などが接続されている。制御弁V11〜V22は、混合気を供給する混合気供給配管84から培養室R11〜R22に至る配管に設けられている。
タイムラプス部50のカメラモジュール51には、4つのカメラユニットCA1〜CA4が設けられていることは既に説明した。これらのカメラユニットCA1〜CA4は、図5,図6に示すように、トレイ91の設けられたウエル95を撮像する。トレイ91においてウエル95は、図示するように、4つずつ、4箇所にまとめられた形態で配置されている。カメラユニットCA1〜CA4は、それぞれのまとまりに対応して設けられている。図5に示したエリアU1〜U4は、カメラユニットCA1〜CA4それぞれの撮像エリアを示している。即ち、各カメラユニットCA1〜CA4は、一度に4つのウエル95を含む領域を撮像可能である。カメラユニットCA1〜CA4のレンズの周りは、図示しないLEDからの光を導く光ガイドが設けられている。カメラユニットCA1〜CA4は、撮像時に、光ガイドからの光をトレイ91に向けて照射する。
撮像の様子を図6に模式的に示した。ウエル95は、トレイ91の底部に設けられており、一つのウエル95には、基本的に一つの処置卵25が置かれ、ミネラルオイル93により覆われている。各カメラユニットCA1〜CA4は、トレイ91の上方から4つのウエル95を含む領域U1〜U4を撮像する。撮像した画像内には、処置卵25の画像が含まれる。カメラユニットCA1〜CA4は、撮像する際の焦点位置を数十μmの精度で調整可能である。カメラユニットCA1〜CA4による処置卵25の撮像の様子については、後で説明する。
次に、タイムラプス部50の内部構成について説明する。図7は、タイムラプス部50の内部構成を示す説明図である。図示するように、タイムラプス部50は、既述したカメラモジュール51およびディスプレイモジュール52の他に、周知のCPU53、ROM54、RAM55,デジタルシグナルプロセッサ(DSP)56、SIO57,メモリインタフェース58、カメラインタフェース81,表示インタフェース82などを備える。尚、図においては、「インタフェース」は「I/F」と略記した。
メモリインタフェース58には、メモリカード59が装着可能である。このメモリカード59には、後述するように、カメラモジュール51により撮像された画像が記録される。カメラインタフェース81は、カメラモジュール51と接続され、カメラモジュール51の各カメラユニットCA1〜CA4の焦点位置を制御する信号のやり取りや、各カメラユニットCA1〜CA4が撮像した画像の信号を受け取るといった処理を行なう。表示インタフェース82は、ディスプレイモジュール52と接続され、ディスプレイモジュール52に表示する画像信号の出力や、ディスプレイモジュール52に設けられたタッチパネルからの信号の入力などを行なう。
以上説明した第1実施形態のハードウェア構成を前提として、胚培養装置10は、以下の処理を行なう。本実施形態では、胚培養装置10の制御部60が全体の制御を司り、タイムラプス部50のCPU53が処置卵25の撮像や表示を司る。まず、全体の処理について、図8に拠って説明する。図8は、培養ユニット制御ルーチンを示すフローチャートである。この処理は、制御部60により実行される。
図8に示した培養ユニット制御ルーチンは、胚培養装置10に電源が投入されると、所定のインターバルで、繰り返し実行される。この処理ルーチンを開始すると、まずどの培養ユニットについての処理を行なうかを決定する(ステップS200)。実際には、処理対象とする培養ユニット11〜22を特定する変数nを、数値11〜22の間で順次インクリメントすることで、処理対象とする培養ユニットを特定する。なお、変数nは、順次インクリメントされ、値22に至ると、次のインクリメントで値11に設定される。つまり、各培養ユニット11〜22は、12回に1回ずつの割合で処理の対象となる。ステップS200で処理の対象となる培養ユニットの番号nを決定すると、次に、その培養ユニットnに関するフラグFnが値1であるか否かの判断を行なう(ステップS205)。フラグFnは、胚培養装置10の電源が投入されたときに、値0にリセットされている。
従って、各培養ユニット11〜22の使用が開始される前は、フラグFnの値は値1ではないと判断され、次に使用前表示を行なう(ステップS210)。使用前表示とは、処理対象となっている培養ユニットnのタイムラプス部50にSIO68を介して信号を送り、その培養ユニットnが使用前であることを表示させる処理である。表示の一例を図9の(A)に示した。従って、使用前の培養ユニットのタイムラプス部50のディスプレイモジュール52には、全て「使用を開始する場合は、『開始』をタップして下さい」という説明文が表示され、タッチスクリーンには、「開始」ボタン76が表示されていることになる。
次に、画面の「開始」ボタン76がタップされたかを判断し(ステップS225)、「開始」ボタン76がタップされていれば、次に、蓋が開閉されたかの判断を行なう(ステップS230)。蓋、つまりタイムラプス部50の開閉は、使用しようとしている各培養ユニットnに対応するスイッチSWnが操作された時に行なわれる。スイッチSWnを操作して、使用しようとしている培養ユニットnのタイムラプス部50を開き、処置卵25をウエル95を収めたトレイ91を培養室Rnに配置し、再度スイッチSWnを操作して、タイムラプス部50を閉める。これで、蓋の開閉が行なわれたと判断される。
蓋の開閉が行なわれた場合には、培養室Rnにトレイ91が配置されたと判断し、開始処理(ステップS240)を実行した上で、フラグFnを値1に設定した後(ステップS255)、「NEXT」に抜けて本処理ルーチンを一旦終了する。ここで、開始処理(ステップS240)とは、培養室Rn内の温度やガス濃度などを所望の状態にした上で、タイムラプス処理の開始をタイムラプス部50に指示する処理を意味する。また、フラグFnが値1であるとは、培養室Rnが使用中であること示す。開始処理が実行されると、ディスプレイモジュール52に対し、培養室内の情報を表示させる。この一例を図9の欄(B)に示した。この例では、「培養とタイムラプス処理を開始します」と表示し、かつその下に現在の培養室Rnの情報を表示する。具体的には、撮像の開始時間や経過時間、撮像の間隔などの撮像に関する情報、培養室内の環境、つまり温度や湿度の情報、更にはガス濃度などの情報を表示する。温度やガス濃度は、図示しないセンサにより検出している。こうした情報に加えて処置卵の患者を特定する情報、例えばカルテ番号等を表示してもよい。
こうして、培養が開始され、フラグFnが値1に設定されると、次に本処理ルーチンが起動され、ステップS200によって培養室Rnが特定されたタイミングでは、ステップS205での判断は「YES」となり、ステップS260に処理は移行する。ステップS260では、タイムラプス処理の継続をタイムラプス部50に指示する。タイムラプス部50が実行するタイムラプス処理については、図10を用いて後で詳しく説明するが、簡単に言えば、培養室内のトレイ91の各ウエル95を撮像し、ウエル95内の処置卵25の受精の可能性を判断し、必要な画像をディスプレイモジュール52に表示する処理である。
こうしたタイムラプス処理の継続をタイムラプス部50に指示した後、使用終了の指示を受け付けたか否かの判断を行なう(ステップS265)。使用終了の指示は、ディスプレイモジュール52のタッチパネルを胚培養士が操作することにより得られる。使用終了の指示がなければ、そのまま「NEXT」に抜けて本処理ルーチンを一旦終了する。使用終了の指示があれば、蓋の開閉がなされたかを判断し(ステップS270)、開閉がなされたことを確認した後、終了処理(ステップS280)を実行する。終了処理は、培養室Rn内の温度制御などを終了する処理である。その後、フラグFnを値0に設定し(ステップS295)、本処理ルーチンを一旦終了する。
次に、タイムラプス処理について、図10に拠って、説明する。図10は、タイムラプス制御処理ルーチンを示すフローチャートである。この処理は、図8のステップS240で開始処理がなされたタイムラプス部50において、ステップS280での終了処理がなされるまで、所定のインターバルで、繰り返し実行される。
図10に示したタイムラプス制御処理が開始されると、まず処置卵の画像の撮像が前回行なわれてから、所定時間経過したかを判断する(ステップS300)。ここで所定時間とは、図9の欄(B)に示された撮像間隔に相当する。もとより、図9の欄(B)に例示した10分ではなく、もっと短い時間でも長い時間でも差し支えない。前回撮像を行なってから、所定時間が経過していれば(ステップS300:「YES」)、撮像処理を行なう(ステップS310)。撮像した画像は、撮像時刻のデータと共に、メモリカード59に保存される。
撮像処理(ステップS310)では、一つのタイムラプス部50のカメラモジュール51に存在する4つのカメラユニットCA1〜CA4を同時に、または順次駆動することにより行なわれる。図5に示したように、各カメラユニットCA1〜CA4を動作させることにより、トレイ91の16個のウエル95に収容された処置卵25の状態が撮像される。この様子を図11に示した。カメラユニットCA1〜CA4のそれぞれは、領域U1〜U4を撮像するが、その中には4つのウエル95が含まれている。
各カメラユニットCA1〜CA4による撮像は、トレイ91の上方から行なわれる。このとき、カメラユニットCA1〜CA4は、焦点位置を移動させながら、一つのウエル95辺り5枚の画像を撮像する。この様子を図12に示した。図12では、模式的にレンズL1,L2をカメラユニットCA1の外に描いたが、実際には、レンズL1,L2は、カメラユニットCA1に内蔵されている。レンズL1,L2の少なくともいずれか一方を光軸に沿って前後に移動することにより、カメラユニットCA1の焦点位置は、中央位置GL0に対して、カメラユニットCA1から遠い側である位置GL+1,更に遠い位置GL+2、カメラユニットCA1に近い側である位置GL−1,更に近い位置GL−2に変化し得る。処置卵25の大きさは、人の卵子であれば、100〜150μm程度なので、各位置間の相違は、おおよそ20〜25μmに設定されている。こうした一つのカメラユニットCA1〜CA4当り、5枚の画像を撮像する。焦点位置の異なる画像を複数枚撮像するのは、処置卵25において、受精の判断をする際に手がかりとなる前核等の存在位置が、略球体である処置卵25のいずれの位置に存在するかは分からないからである。
撮像した一つの画像には、4つのウエル95、つまり4つの処置卵25が写っているが、そのまま画像をメモリカード59に保存しても良いし、4つに分割し、処置卵25毎に保存しても良い。なお、本実施形態では、撮像した画像は、メモリカード59に記録したが、メモリカード59に替えて、通信回線を介して、いわゆるクラウドに保存するものとしても良い。この場合は、予め設定されたネットワーク上の記憶装置(ハードディスク等)に、記憶されることになる。
撮像する際には、カメラユニットCA1〜CA4のレンズの周囲に設けられたLED(図示省略)を点灯してもよい。この場合、LEDの波長は、処置卵25に影響を与えにくい波長を選択することが望ましい。また処置卵25が生体であることに鑑み、LEDなどによる照光を行なわず、赤外光を用いた撮像を行なっても良い。LEDで照光する場合、カメラユニットCA1〜CA4の側から照光する構成に限らず、側方から、または下方から照光するものとしても良い。光源は別の場所に設け、光ファイバーなどの光ガイドにより、処置卵25を照光する位置まで導くものとしてもよい。側方から照光する場合、LEDの指向性が高いことを利用し、標準位置GL0、GL±1、GL±2の5つの位置で、処置卵25を丁度スライスするような光を処置卵25に順次投映するようにしても良い。この場合、カメラユニットCA1〜CA4側は、焦点位置を変更する機構を組み込まず、単焦点レンズにより撮像を行なえば良い。LEDにより照光された位置の画像を撮像できるからである。
以上の撮像処理(ステップS310)を終えた後、受精の判断が可能なタイミングか否かについて判断する(ステップS320)。受精の判断とは、授精の処置がなされた処置卵25において、受精が生じたか否かを判断することを意味する。受精は、通常授精の処置の後、早くて8時間程度、平均的には22時間程度、遅い間場合でも、36時間経過までには成立する。授精の処置を施した処置卵25は、処置後速やかにトレイ91のウエル95に収容され、培養ユニット11〜22に入れられるから、タイムラプス部50による撮像が開始されてから、6時間程度が経過すると、ステップS320での判断は、「YES」、つまり受精判断可能となる。もとよりこの時間は、もっと短くし、トレイ91が培養室R11〜R22に収容された直後から、受精判断可能としてもよい。その場合には、ステップS320の判断は不要である。
受精判断が可能と判断すると、次に受精判断処理を行なう(ステップS330)。この処理は、メモリカード59に保存した処置卵25の画像を読み出し、画像に二つの前核が明確に写っているかによって判断することができる。もとより、この判断は、それまでにメモリカード59に保存した多数の画像を読み出し、経時的な変化、特に前核と認識できた部位の数の変化に基づいて行なっても良い。更に、受精した処置卵の画像と、受精しなかった処置卵の画像とを多数用意し、予めこれを機械学習させておき、メモリカード59から読み出した画像をこの機械学習済の判定機に入力することで、受精の可否を判断するものとしても良い。こうした処理は、図7に示したDSP56の高速演算機能を利用することにより、リアルタイムで実現可能である。なお、撮像した画像をディスプレイモジュール52に表示して、胚培養士に受精の可否を判定させても差し支えない。
受精判断処理(ステップS330)を実行したのち、処置卵25が、受精が確認できる受精卵であるか否かの判断を行なう(ステップS340)。受精卵であると判断できれば、受精卵番号表示(ステップS350)を行なう。この表示の一例を図9の欄(C)に示した。この例では、受精を確認した画像と、その受精卵が何番目のウエル95に入っているかの番号表示と、更に受精を確認した旨のメッセージ77,および培養の終了を指示する「終了」ボタン78とをディスプレイモジュール52に表示している。その後、「NEXT」に抜けて本処理ルーチンを終了する。
図10に示した処理では、説明の便を図って、所定インターバルで行なう撮像処理と受精の判断処理とを一つのフローチャートで示したが、両者は別々の処理ルーチンにより、非同期に行なっても差し支えない。
撮像と受精の判断とを一連の処理として行なう場合の表示時間について検討する。1つの培養室Rn内に載置されたトレイ91には、2×2×4個(計16個)のウエル95が設けられおり、最大16個の処置卵を収容することができる。1つのタイムラプス部50は、4台のカメラユニットCA1〜CA4を用いて、これら16個のウエル95を同時撮像可能である。そこで、この16個のウエル95に収容された処置卵を順次ディスプレイモジュール52に表示しながら、上記の受精判断とその結果の表示を行なう場合を考える。受精されたと判断した場合の表示の一例は、既に図9の欄(C)して示したが、受精されたと判断できない場合には、処置卵の画像のうち、その時点で最新の画像を表示してもよいし、表示しないものとしてもよい。撮像間隔が10分であるとすると、1つのウエル95あたり、約50秒の表示を行なうことができる。従って、胚培養士は、この表示を見て、受精できた処置卵の収容されているウエル95の番号を知ることができる。また、培養の終了を判断することも可能である。
授精処置が同時になされることは希なので、本実施形態の胚培養装置10に12個の培養ユニット11〜22が存在するとしても、胚培養装置10全体として、同時に12の培養ユニットにおいて受精卵が表示される訳ではない。従って、受精されたと判断した受精卵のみをディスプレイモジュール52に表示するものとすれば、12台の培養ユニット11〜22が存在しても、胚培養士は、順次表示されるこの画像を見て、受精の確認、トレイ91の取り出し、その後の処置など、対応可能である。
以上説明した第1実施形態の胚培養装置は、12の培養室R11〜R22毎にタイムラプス部50が設けられ、トレイ91に収容された処置卵25を断続的に撮像することができる。このため、処置卵25を撮像するために、トレイ91や撮像装置(カメラ等)を移動する必要がない。従って、胚培養装置10を小型が出るばかりでなく、可動部を有しないことから、胚培養装置10の信頼性を高めることができる。また、振動や騒音なども生じない。更に、処置卵25を撮像するインターバルを短くすることができる。トレイ91を移動して撮像するシステムでは、例えばトレイの移動と撮像にm分かかっていれば、12個のトレイ91を全て移動・撮像するには12×m分、必要となる。つまりインターバルはこの時間12・m分より短くすることができない。あるいは複数のトレイを回転する円盤状の載置台に搭載して、これを回しながら撮像するシステムも考えられるが、この場合でも、載置台の回転と撮像には有意の時間がかかるから、一つのトレイの撮像のインターバルは、載置台が1回転するのに要する時間以下にはできない。これに対して、本実施形態の胚培養装置10では、撮像のインターバルは、カメラユニットCA1〜CA4の撮像間隔までいくらでも短くすることができる。もとより、連続的に撮像することも可能である。
更に、本実施形態によれば、一つの培養室R11〜R22に収容された一つのトレイ91に対して一つのタイムラプス部50が用意され、このタイムラプス部50には、ディスプレイモジュール52が設けられており、ここにその培養室R11〜R22に収容されたトレイ91の処置卵25の画像が表示される。従って、ディスプレイモジュール52に表示されている画像と、スイッチSWnを操作してタイムラプス部50を開いたところのトレイ91とが一対一の関係になっており、画像と処置卵との関係が極めて明確であるという利点も有する。
更に、本実施形態では、タイムラプス制御処理は、タイムラプス部50毎に実施されるから、培養ユニット11〜22のタイムラプス部50毎に、タイムラプスの処理、例えば撮像するインターバルや、表示する画像の形態などを、個別に設定することができる。例えば、受精処置後の経過が特に気になる処置卵があれば、撮像のインターバルを短くしたり、受精の可否を判断する際に、胚培養士の判断を求めたり、といった対応を執ることも容易である。
また、本実施形態のタイムラプス部50は、それぞれにメモリカード59を備え、所定のインターバルで撮像した画像を記録している。従って、その培養室Rnで培養されている処置卵が受精する等した画像を、他の処置卵の画像と誤ることがない。必要があれば、撮像した画像をメモリカード毎に管理、保管、廃棄などすることができ、扱いが簡便である。
B.第2実施形態:
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の胚培養装置10Aは、外観形状は、第1実施形態と同じである。第2実施形態の胚培養装置10は、図13に示すように、その制御部60Aの構成が異なり、制御部60Aとタイムラプス部50との接続関係が異なる。相違点を簡単に説明すると、第1実施形態では、タイムラプス制御処理は、タイムラプス部50が単独で実行していたのに対して、第2実施形態では、タイムラプス制御処理も含めて全体の処理を、制御部60Aにより実施する。
図13は、第2実施形態における胚培養装置10Aの回路構成を示す説明図である。図示するように、この胚培養装置10Aは、制御部60Aに、培養室インタフェース67とSIO68とに替えて、カメラインタフェース68Aとディスプレイインタフェース68Bとを備える点以外は、第1実施形態の胚培養装置10と同一の構成を備える。図13では、図示を省略したが、培養室R11〜R22に、パネルヒータH11〜H22や制御弁V11〜V22が設けられ、培養室R11〜R22内の温度やガス濃度のコントロールが行なわれている点も同一である。
第2実施形態では、タイムラプス部50のカメラモジュール51は、各カメラユニットCA1〜CA4毎に、全て、カメラインタフェース68Aに接続されている。従って、制御部60AのCPU61は、カメラインタフェース68Aを介して、各タイムラプス部50のカメラユニットCA1〜CA4を個別に制御して、撮像を行なわせることができる。また、タイムラプス部50のディスプレイモジュール52は、それぞれディスプレイインタフェース68Bに接続されている。従って、制御部60AのCPU61は、ディスプレイインタフェース68Bを介して、各培養ユニット11〜22に設けられたタイムラプス部50のディスプレイモジュール52に、個別に表示を行なうことができる。
上記構成において、制御部60Aは、図14に示した処理を実行する。この処理は、胚培養装置10Aに電源を投入した直後から、所定のインターバルで繰り返し実行される。この処理ルーチンが開始されると、まず培養ユニットnを指定する処理を行なう(ステップS400)。培養ユニットnの指定は、通常、培養ユニット11から培養ユニット22へと、サイクリックに行なわれる。故障中の培養ユニットがあれば、その番号を記憶しておき、ステップS400の処理において、故障中の培養ユニットの指定は回避される。
次に、その培養ユニットnは、使用を開始するか、使用中か、使用を終了するか、の判断を行なう(ステップS405)。また使用されていない培養ユニットについては、制御部60Aは、ディスプレイインタフェース68Bを介して、図9の欄(A)に示したように、使用開始を指定できる表示を行なっている。胚培養士が、ディスプレイモジュール52のタッチパネルを操作して、「開始」ボタンをタップすると、ステップS405での判断は「開始」となり、続いて、使用を開始する培養ユニットの番号nを記憶する処理を行なう(ステップS410)。使用を開始する培養ユニットの番号nは、RAM63に記憶しても良いし、メモリカード59に記憶しても良い。
続いて、指定された培養ユニットnに関し、温度やガス濃度の制御を行なう(ステップS420)。この処理は第1実施形態で説明した処理(図8、ステップS240)と同様である。温度、湿度やガス濃度の制御を開始した後、培養室Rnの環境が安定したかを判断する(ステップS425)。この判断は、温度、湿度、ガス濃度などを図示しないセンサにより検出することによって行なう。検出した温度、湿度、ガス濃度が、いずれも目標値の±5%以内となれば、安定と判断する。
培養室Rnの環境が安定したと判断したら、制御部60Aは、ディスプレイインタフェース68Bを介して、培養室Rnに対応するタイムラプス部50のディスプレイモジュール52に信号を送り、「使用可」の表示を指示する(ステップS430)。「使用可」の表示とは、第1実施形態で説明した図9の欄(A)と同様の表示である。使用者である胚培養士は、処置卵25をウエル95に収容したトレイ91を用意すると、ディスプレイモジュール52に表示された「開始」ボタンをタップする。「開始」ボタン76をタップすると、タイムラプス部50が開く。これは、タイムラプス部50が培養室Rnにとっての蓋として機能しているからである。
その後、培養室Rn内にトレイ91を収容して、蓋であるタイムラプス部50を閉める。制御部60Aはこれを検出するまで待ち(ステップS435)、蓋としてのタイムラプス部50が開閉されたのを確認すると(ステップS435:「YES」)、次にタイムラプス処理を実行する(ステップS440)。このタイムラプス処理は、第1実施例で説明したタイムラプス処理(図8、ステップS290)と同様の処理である。この間、タイムラプス部50のディスプレイモジュール52には、図9の欄(B)の表示が行なわれる。タイムラプス処理(ステップS440)を実行した後は、「NEXT」抜けて、本処理ルーチンを一旦終了する。
図14に示したルーチンが繰り返し実行される場合、ステップS405で、その培養ユニットが「使用中」であると判断されると、処理は、ステップS440に移行し、タイムラプス処理が実行される。こうして使用開始後、継続してタイムラプス処理(ステップS440)が実行されるうちに、処置卵25が受精したと判断すると、図9の欄(C)の表示がなされる。
図14に示したメイン処理ルーチンが繰り返し実行される中で、処置卵の受精が判定され、胚培養士が、ディスプレイモジュール52に表示された「終了」ボタン78をタップした場合には、その培養ユニットについての処理は「終了」の処理であると判断され(ステップS405)、処理はステップS455に移行する。ステップS455では、蓋として機能するタイムラプス部50が開閉されたかの判断を行なう。培養室Rnにとっての蓋として機能するタイムラプス部50が開閉されたと判断すると、培養室Rnからトレイ91が取り出されたと判断し、その培養室Rnの使用は終了したとして、メモリに記憶された使用中の培養室のリストから、当該培養室Rnの番号「n」を削除する。
続けて、培養室Rnについての温度やガス濃度等の制御を終了する(ステップS470)。もとより、ステップ470の処理は継続しても良い、その後、培養室Rnに対応するタイムラプス部50のディスプレイモジュール52に、「使用終了」の表示を指示し、「NEXT」に抜けて、当該培養室Rnについての本処理ルーチンを終了する。
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用・効果を奏する上、更に処理を、制御部60Aにより一括して行なうことができるという利点を有する。第1実施形態では各タイムラプス部50は独立に動作していたが、第2実施形態では、タイムラプス部50は、例えば受精の判断など、全ての判断や動作を制御部60Aにより行なうからである。このため、タイムラプス部50の構成を簡略化することができる。
C.その他の実施形態:
以上説明した第1,第2実施形態の他、本発明は以下の実施形態としても実施可能である。上記実施形態では、処置卵25が受精したかの判断を行なったが、こうした判断を行なうことなく、あるいは判断をした上で、継続して処置卵25を培養し、その様子を撮像部であるカメラユニットCA1〜CA4で撮像するものとしても良い。あるいは、処置卵25をトレイ91のウエル95に収容するところから、受精した受精卵を次の処置に送り出すところまで全自動で行なう装置として構成してもよい。
上記実施形態では、1つのタイムラプス部50毎に4つのカメラユニットCA1〜CA4を用意したが、タイムラプス部50あたりのカメラユニットの台数は、任意である。カメラユニットが撮像するウエル95の数、つまりは一度に撮像する処置卵の数は、1以上任意の個数とすることができる。また、トレイ91におけるウエルの配置も任意である。例えばp×q個のようにアレイ状に配列しても良いし(p,qは1以上の整数)、環状に配列しても良い。必要な解像度が得られれば、一度に何個の処置卵を撮像するものとして差し支えない。また、1つのカメラユニットを、タイムラプス部50内で移動して、全ウエルの画像を撮像するものとしてもよい。
上記実施形態では、1つの培養室Rnに1つのトレイ91を配置したが、1つの培養室Rnに2以上のトレイを配置するものとしてもよい。その場合、複数のトレイに対して1つのタイムラプス部50を対応づけても良いし、1つのトレイに1つのタイムラプス部50を対応づけてもよい。
上記実施形態では、タイムラプス部50およびカメラモジュール51は、培養室Rnの上部に、蓋を兼ねて配置したが、培養室Rnの蓋はカメラモジュール51とは別に設けてもよい。またカメラモジュール51は、培養室Rnの底面や側面に配置することも可能である。底面に配置する場合は、培養室Rnの底面を透明なガラスなどの材質で形成し、底面の下にカメラユニットCA1等を配置し、トレイ91のウエル95内の処置卵を撮像するようにすればよい。一般に、処置卵はウエル95の中で最も下部に沈んでいるので、床面の下から撮像すれば、カメラユニットの焦点を処置卵に合せるのは容易である。この場合、ディスプレイモジュール52だけ、蓋として培養室Rnの上部に配置してもよいし、ディスプレイモジュール52は、別の場所に設けるものとしてもよい。
カメラモジュール51は、培養室Rnの側面に設けてもよい。この場合、トレイのウエルは、一直線に配置される。カメラモジュール51を側面に設けた場合のトレイ91A,91Bと培養室Rnとの関係を図15に示した。図示するように、トレイ91A,91Bには、それぞれウエル95が8個直線上に配置されている。トレイ91Aに一列に配置された8個のウエル95内の処置卵25は、培養室Rnの左側面に設けられたカメラモジュール51Aの2つのカメラユニットCA1、CA23より、4個ずつ撮像される。培養室Rnの右側面には、カメラモジュール51Aの残り2つのカメラユニットCA2、CA4が設けられており、トレイ91Bの8個の処置卵が、4個ずつ撮像される。このトレイ91AをカメラユニットCA1の側から見た状態を、図16に模式的に示した。トレイ91Aの底面には、ウエル95が設けられており、処置卵25は、ここに収容される。従って、カメラユニットCA1〜CA4に対する処置卵25の位置関係は安定したものとなり、その画像を容易に撮像することができる。
この例では1つの培養室Rnに配置されるトレイ91A,91Bの幅を小さくできるので、1つの胚培養装置10に多数の培養室Rnおよびトレイ91A,91Bを配置することができる。幅を狭くすると、トレイ91A,91Bとカメラユニットとは近接配置することになるが、広角のレンズを用いれば、トレイ91A,91Bに近接させても、その画像を鮮明に撮像することができる。なお、カメラモジュール51は、左右の側面に代えて、あるいは左右の側面と共に、前後の側面にカメラユニットを設けてもよい。もとより、左右、前後の1つの側面に設けるものとしてもよい。あるいは上面や底面と共に設けて、複数の方角から処置卵を撮像するようにしてもよい。
上記実施形態では、1つの処置卵を撮像するとき、合焦の位置をずらして複数枚の画像を撮像したが、特に合焦の位置をずらさず、1つの処置卵について、所定のインターバルで1枚の画像のみを写すものとしてもよい。なお、撮像は、可視光に限らず、近赤外、遠赤外あるいは紫外光などの領域まで含めて行なっても良い。または、可視光内の所定の波長範囲のみを透過するフィルタを設け、フィルタを透過する光でのみ撮像するようにしてもよい。
上記実施形態では、ディスプレイモジュール52は、タイムラプス部50毎に設けたが、ディスプレイモジュール52はタイムラプス部50とは別に設けてもよい。またその場合、大きな液晶パネルなどの形態に統合しても差し支えない。あるいは、無線LANや有線LANを利用して、他のコンピュータなどのディスプレイに表示するものとしてもよい。更には、胚培養士が使っている携帯電話などの携帯機器にアプリケーションを入れて、ここに表示させてもよい。こうすれば、胚培養士は胚培養装置10の置かれた部屋にいなくても、リアルタイムで、処置卵の状況を確認することができる。あるいは処置卵を提供した不妊治療等を受けている患者自ら、処置卵の状況を確認することも可能である。更に、こうすれば複数の胚培養士、あるいは胚培養士と患者など、同時に二人以上が処置卵の状況を確認することができる。従って、受精のタイミングを見逃すことがない。
上記実施形態では、培養室Rn毎に設けられたタイムラプス部50毎に撮像のタイミング(開始時刻やインターバル)を設定できるものとしたが、撮像開始を毎正時など、所定のタイミングに限ってもよい。更にインターバルなども、複数のタイムラプス部50に共通としてもよい。また、撮像開始の指示などは、ディスプレイモジュール52に表示されたボタンをタップするものとしたが、他の指示共々音声認識などによって指示するものとしてもよい。もとより、専用の指示用ボードを用意し、指示用ボードに配置されたスイッチやハードウェアボタンなどを操作するものとしてもよい。
上記実施形態では、タイムラプス部50は、培養室Rnの蓋を兼ねており、図示しない蝶番で、培養室Rnの縁に取り付けられており、図2に示したように、回転して、培養室Rnを開閉し、トレイ91の着脱が可能となっている。もとよりタイムラプス部50は、回転移動する以外の手法で、培養室Rnに取り付けてもよい。例えば、単に培養室Rnの上面に、タイムラプス部50を載置するようにしても良い。あるいは上下に平行移動するようにしてもよい。左右または前後にスライドする構成とする事も可能である。
上記実施形態では、タイムラプス部50は、最初から胚培養装置10の一部として設計され、取り付けられているが、既に販売・設置された胚培養装置の培養室の蓋と交換するものとしてもよい。こうすれば既設の胚培養装置を容易にタイムラプスタイプの胚培養装置に作り替えることができる。
以上本発明の種々実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々な形態で実施できることは勿論である。例えば、培養室Rnとタイムラプス部50とをペアにした最小ユニットを作り、これを左右方向及び/または前後方向に連結可能とし、任意の数の培養室とタイムラプス部とを組み合わせて胚培養装置を構成するものとしてもよい。本発明の胚培養装置では、撮像部は、培養部に保持されたトレイの一つ一つに対応して設けられているので、こうした連結によって、培養部を増設することが容易である。