本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。最初に本願発明の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機の外観構成を示す説明図である。空気調和機Aは、例えばヒートポンプ技術等を用い、冷房等室内の空気調和を行う装置である。空気調和機Aは、大別して、室内の壁や天井、床等に設置される室内機100と、屋外等に設置される室外機200と、赤外線や電波、通信線等により室内機100と通信してユーザが空気調和機Aを操作するためのリモコン40(リモートコントローラ、空調制御端末)と、室温や外気温等の空気調和機の制御や表示に用いる情報を入手するための各種のセンサ部50(図5参照)とからなる。また、室内機100と室外機200とは、冷媒配管と通信ケーブル(図示せず)で接続されている。さらに、室内機100は、センサ部50のひとつのセンサとして、室内を撮影する撮像部110を有している。
室内の温度を検出する温度検知部130を撮像部110の一方に配置している。このような配置により、撮像部110と温度検知部130の検出対象までの距離や角度の検出誤差を減らすことができる。近赤外線光源120を撮像部110の他方に配置している。このような配置により、撮像部110の検出範囲や角度と近赤外線光源120の照射範囲や角度の差を減らすことができる。すなわち、撮像部110を挟んで両側に温度検知部130と近赤外線光源120を配置することが望ましい。
さらに、本実施形態では撮像部110または温度検知部130の横に足元モニター140を配置している。そして、後述するように、撮像部110または温度検知部130によって足元を検出した時、または、足元を推定した時に足元モニター140を点灯し、足元を検出できたことをユーザが確認することができる。なお、この足元モニター140は室内機100だけではなく、リモコン40に配置するようにしてもよい。
図2は、本実施形態に係る空気調和機の室内機の構成を示す説明図である。室内機100は、熱交換器102、送風ファン103、左右風向板104(風向部)、上下風向板105(風向部)、前面パネル106、筐体ベース101、各種のセンサ部50(図5参照)等を有している。センサ部50のうち、撮像部110、近赤外線光源120、温度検知部130および足元モニター140を吹出し風路上面109cの上方であって、ドレンパン99の下方の空間に配置している。これらのセンサ等は居住空間に向くよう斜め下方に傾けて設置する必要があり、本実施形態では、基板自体を斜め下方に向けて設置して、これらのセンサ等を基板に直接接続している。なお、必ずしも撮像部110、近赤外線光源120、温度検知部130および足元モニター140の全てを室内機100に搭載する必要はなく、実施形態に合わせて適宜室内機100に搭載するセンサ等を選択すればよい。また、センサの前面には光透過部材150を配置するとよい。
熱交換器102は、複数本の伝熱管102aを有し、送風ファン103により室内機100内に取り込まれた室内の空気を、伝熱管102aを通流する冷媒と熱交換させ、当該空気を冷却または加熱等するように構成されている。なお、伝熱管102aは、前記した冷媒配管に通じていて、公知の冷媒サイクルの一部を構成している。送風ファン103は、風速を調節可能である。左右風向板104は、その基端側が室内機下部に設けた回転軸を支点にして左右風向板用モータにより正逆回転される。そして、左右風向板104の先端側が室内側を向いていて、これにより左右風向板104の先端側は水平方向に振れるように動作可能である。上下風向板105は、室内機100の長手方向両端部に設けられた回転軸を支点にして上下風向板用モータにより正逆回転される。これにより、上下風向板105の先端側は、上下方向に振れるように動作可能である。前面パネル106は、室内機の前面を覆うように設置されており、下端部の回転軸を支点として前面パネル用モータにより正逆回転可能である。ちなみに、前面パネル106は、回転動作を行うことなく、室内機100の下端に固定されたものとしてもよい。
室内機100は、送風ファン103が回転することによって、空気吸込み口107およびフィルタ108を介して室内の空気を室内機100内に取り込み、この空気を熱交換器102で熱交換する。これにより、当該熱交換後の空気は、熱交換器102で冷却され、あるいは、加熱される。この熱交換後の空気は吹出し風路109aに導かれる。さらに、吹出し風路109aに導かれた空気は、空気吹出し口109bから室内機外部に送り出されて室内を空気調和する。そして、この熱交換後の空気吹出し口109bから室内に吹き出す際には、その水平方向の風向きは左右風向板104により調節され、その上下方向の風向きは上下風向板105により調節される。
図3は、本実施形態に係る空気調和機の室外機の構成を示す説明図である。空気調和機Aの室外機200には、冷媒を圧縮する圧縮機202、高圧の冷媒を減圧する膨張弁、冷媒の流路を切り替える四方弁、外気と冷媒とを熱交換する熱交換器206等の装置を備えている。室外機200は、仕切り板211と電装品箱210とリード線支持部品209とにより、熱交換器室204と機械室205とを区分(分割)している。熱交換器室204には、冷媒配管を循環する冷媒の外気との熱交換を促進するプロペラファン207とその駆動用のモータ、プロペラファン207を回転自在に支持するファン支柱、および外気と循環する冷媒の熱交換を行う熱交換器206が配設されている。機械室205には、循環する冷媒を高温高圧のガス冷媒にする圧縮機202、常温・高圧の液状冷媒を低温・低圧の液状冷媒にする電動膨張弁、電気部品のリアクタ、および、冷媒が流れる冷媒配管の伝熱管が配設されている。電装品箱210には、室外機200を制御する電装品が収納されており、その上部には電装品蓋が被せられている。
図4は、本実施形態に係る空気調和機のリモコンの外観を示す説明図である。リモコン40はユーザによって操作され、室内機のリモコン受信部Q(図1参照)に対して赤外線信号を送信する。当該信号の内容は、運転要求、設定温度の変更、タイマ、運転モードの変更、停止要求等の様々な指令である。空気調和機Aは、これらの信号に基づいて、少なくとも室内の冷房、暖房、除湿等を行うことができる。また、空気清浄等、その他の空気調和の機能を備えていてもよい。空気調和機Aは、室内の空気を様々に調整することができる。
リモコン40の表示画面41には、図17などで説明する足元気流が実行中であるか否かを示す旨42が表示されている。具体的には、表示内容には、足元気流のほか、障害物上気流等がある。
自動運転ボタン43を押すことで、センサ部50の検知結果に基づいて、自動で冷房、暖房、除湿等を選択し、設定温度等も調整する自動運転を開始する。また、自動運転ボタン43を押すことで、後述する人検出部62で検出した室内の人の位置に風向が向くよう風当て運転(第1の運転)を実行する。なお、人検出部62で検出した人の位置に気流を送風する風当て運転とスイング運転とを繰り返す運転(第2の運転)を実行してもよい。さらに、本実施形態では、自動運転ボタン43を押すことで、障害物検出部64および通り抜け可否検出部65の実行を開始し、風向制御に反映するようにしている。そのため、ユーザは1回の操作で運転を開始でき、別途、障害物検出部64および通り抜け可否検出部65の実行を操作する必要がない。
また、本実施形態では、リモコン40内部のボタン(図示せず)によって自動運転ボタン43を押しても障害物検出部64および通り抜け可否検出部65を実行させないよう、または、これらの検知結果に基づく風向制御を実行させないよう操作できるようにしている。
さらに、本実施形態では、自動運転ボタン43に加えて、足元気流ボタン44を専用に設けている。本実施形態では、足元気流ボタン44をリモコン40の表面に設けており、暖房運転ボタン等で運転を開始するユーザに対しても、簡単に足元気流運転を開始できるようにしている。つまり、本実施形態では、少なくとも足元気流ボタン44で、人検出部62、壁検出部63、障害物検出部64および通り抜け可否検出部65の検出結果に基づく風向制御を開始できるようにしている。なお、足元気流ボタン44はリモコン40の内部に配置するようにしてもよい。
本実施形態では、停止ボタンの下に、使用頻度が高い機能についての専用ボタンとして、足元気流ボタン44と間取り気流ボタン45を配置している。ちなみに、間取り気流ボタン45は撮像部110によって室内の間取りを検知し、間取りに合わせたスイング運転を開始するボタンである。
図5は、本実施形態に係る空気調和機のセンサ部の構成を示す図である。センサ部50は、室内機100と室外機200に備えられている。センサ部50は、室温センサ、人、物体および室内の表面温度を検知する温度検知部130(図1参照)、外気温センサ、湿度センサ、冷媒配管温度センサ、圧縮機温度センサ、撮像部110(図1参照)、時計等により構成される。撮像部110は、前面パネル106の左右方向中央の下部に設置されている。
温度検知部130がサーモパイルである場合、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成され、前面パネル106の左右方向中央の下部に設置されている。これ以外にも、赤外線センサ、近赤外線センサ、サーモグラフィーを使用してもよい。温度検知部130で検出するのは、室内の平均的な表面温度に限られず、検出範囲の内、人を除いた領域の室内の表面温度、人の着衣の表面温度、人の皮膚の温度、床の表面温度でもよい。
図6は、本実施形態に係る可視光カットフィルタを有する撮像部の構成を示す説明図である。図6は撮像部110を上方からみた図である。撮像部110は、可視光および近赤外線を撮像できるものを用いている。従来、人を検出する場合等の撮像部では、撮像部内部に、赤外線カットフィルタを取り付けているが、本実施形態では、近赤外線をカットしないようにするために取り付けていない。可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の回りに配置し、可視光カットフィルタ112を回転させて撮像部本体111の前に移動させる構造としている。
具体的には、撮像部110は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである撮像部本体111の周囲に、開口部113を有する円環状の可視光カットフィルタ112を配置している。可視光カットフィルタ112を、フィルタ用モータ114でフィルタ用ギア115(フィルタ可動機構)を介して、撮像部本体111の周囲を回転できる。これにより、通常の撮像をするときは、可視光カットフィルタ112を通さずに撮影することができる。一方、後記する物体を検出する場合には、可視光カットフィルタ112を回転させて、可視光カットフィルタ112を介して、撮像部本体111と連動して駆動できる。また、必要に応じて、近赤外線光源120(図1参照)を撮影前に点灯し、近赤外線を照射することにより、さらに鮮明に近赤外線の反射光を撮像することができる。
図7は、可視光カットのフィルタを介して撮像した場合の波長域の一例を示す説明図である。紫外線および可視光がカットされ、近赤外線近傍(例えば、850nm)の波長域を利用して撮像することができる。近赤外線は、物体の色彩や模様が反映されず、物体の形状だけが反映される特徴がある。これにより物体の形状を鮮明にとらえることができる。また、色彩情報を使用しないので、必要とされる画像上の情報量が減り、物体を検出する際の精度向上につながる。
図8は、本実施形態に係る空気調和機の制御部の構成を示す説明図である。制御部60は、電装品に備えられている。制御部60は、送受信部47を介するリモコン40からの情報と、センサ部50からの情報に基づき、室内機100の送風ファン103、左右風向板104、上下風向板105を駆動し、室外機200の圧縮機202、プロペラファン207を駆動する。
制御部60は、後記する第1の撮影モードおよび第2の撮影モードで撮像部110を制御する撮像制御部61と、撮像部110で撮影された画像に基づいて、室内の人の位置を検出する人検出部62(図26、図27参照)と、撮像部110で撮影された画像に基づいて、室内の壁位置を検出する壁検出部63(図28〜図33参照)と、可視光カットフィルタ112を介して撮像部110で撮影された近赤外線画像に基づいて、気流が通る経路において障害物となる物体を検出する障害物検出部64(図10、図11参照)と、障害物検出部64で検出された障害物が気流を通り抜ける形状であるか否かを検出する通り抜け可否検出部65(図12〜図14参照)と、気流が通り抜け可能である領域に気流を送風する気流制御部66(図15〜図25参照)と、記憶部67とを有する。
撮像制御部61は、可視光カットフィルタ112と、室内を撮影する撮像部本体111とを有する撮像部110を制御する際に、可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の前面に位置させた状態で撮像部本体111によって室内を撮影する第1の撮影モードと、可視光カットフィルタ112を撮像部本体111の前面に位置させない状態で撮像部本体111によって室内を撮影する第2の撮影モードとを有する。
人検出部62は、可視光カットフィルタ112(図6参照)を介さない撮像部110で撮影(第2の撮影モードにより撮影)された画像に基づいて、室内の人の位置を検出する。撮像部110以外にも、赤外線センサ、近赤外線センサ、サーモグラフィー、焦電型センサ、超音波センサ、騒音センサを使用してもよい。人検出部62で検出するのは、人の有無に限られず、位置、活動量、生活シーン等を検出してもよい。
人の位置は、撮像部110で撮像された画像から人の頭部等の位置を検出し、頭部の位置を人の位置としている。さらに、本実施形態では、人の位置に加え、人の足元の位置も検出している。人の足元の位置は、撮像部110で撮像された画像に基づいて、直接人の足元の位置を検出するようにしてもよいし、人の頭部等の位置を検出し、人の頭部等の位置から人の足元の位置を推定するようにしてもよい。
壁検出部63は、可視光カットフィルタ112を介さない撮像部110で撮影(第2の撮影モードにより撮影)された画像に基づいて、画像内のエッジの抽出し、太く長いエッジを抽出し、直線を延長し、交点を作成し、交点の重心点を消失点とすることにより、室内のコーナ373を検出し、検出したコーナ373を壁と壁あるいは壁と天井あるいは壁と床の接線とし、室内の壁や天井や床の面の位置を検出している。
なお、人検出部62で検出した人の位置を累積し、人の位置の累積値に基づいて、コーナ373の検出結果を補完してもよい。すなわち、人の位置の累積値よりも外側に室内の壁が存在し、人の位置の累積値よりも内側に室内の壁が存在することはないため、室内の壁が人の位置の累積値よりも内側の位置で検出された場合は、当該検出結果を除外するようにしてもよい。詳細については、図32および図33を参照して後記する。
障害物検出部64は、可視光カットフィルタ112を介して撮像部110で撮影(第1の撮影モードにより撮影)された画像から、気流が通る経路の障害物となる物体を検出する。具体的には、室内にある、テーブル、こたつ、椅子、ソファ、本棚、食器棚、箪笥等の家具や、壁、床、天井、戸、窓、小梁、欄間の建具等を検出する。詳細については図11を参照して後記する。
通り抜け可否検出部65は、障害物検出部64が検出した物体の下方等の輝度を検出し、輝度が高ければ近赤外線を反射する物体があると推定し、輝度が低ければ、例えば、物体の足元は通り抜け可能であると推定することができる。
本実施形態の通り抜け可否検出部65が、画像内の所定の範囲内に占める物体の面積の割合が所定値以下である場合に、物体の足元は通り抜け可能であると推定することで、物体の方向に送風した場合に通り抜けられない程度を推定することが可能となる。通り抜けられない物体に対して単位時間当たりの供給熱量を下げることが可能となる。また、通り抜けられる方向に対して単位時間あたりに供給する熱量を上げることが可能となり、快適性を向上させることが可能となる。
図15は、物体が障害物であるか否かの判定処理を示す説明図であり、(a)および(b)は異なる大きさの物体を示すものである。物体が障害物であるか否かは、例えば、物体の幅、高さ、または、面積で判定するとよい。例えば、物体の幅で判定する場合は、所定値未満の場合、気流が通る経路の障害物でないと判定し、物体の高さが所定値以下である場合、気流が通る経路の障害物でないと判定する。
物体の大きさと室内機100から物体までの距離に基づいて障害物を判断するとよい。具体的には、物体の画面の面積および物体までの距離から物体の面積、横幅または縦幅の絶対値を算出し、物体の面積、横幅または縦幅が所定値以上であるか否かに基づいて、物体が障害物であるか否か判定するとよい。
面積で判定する場合について、図15を参照して説明する。撮像部110で撮影した左画面、中画面、右画面をひとつにまとめた室内の画像の全幅をXとし、全高さYとする。その画像中にある物体の横幅をx、縦幅をyとする。物体が障害物であるか否かは、全画面の面積に対する物体の面積が所定値(例えば、8%)未満の場合、気流が通る経路の障害物でないと判定し、全画面の面積に対する物体の面積が所定値以上の場合、気流が通る経路の障害物として判定するとよい。
図15(a)の場合、x/Xが20%であり、y/Yが15%とすると、全画面の面積に対する物体の面積は3%であり、気流が通る経路の障害物でないと判定される。一方、図15(b)の場合、全画面の面積に対する物体の面積は10%であり、気流が通る経路の障害物として判定される。
気流の通り抜けに影響を与えない程度の大きさの物体を障害物と判定し、当該物体を回避する気流の経路を選択すると、最適な気流の経路ではなくなる。その為、本実施形態では、気流の通り抜けに影響を与えない程度の大きさの物体を避けないようにしている。すなわち、室内の障害物の位置を検出する障害物検出部64と、障害物検出部64で検出した障害物の位置を避けて気流を送風する気流制御部66とを備え、気流制御部66は、障害物の幅、高さ又は大きさが所定値以下の場合、障害物の位置を避けないで気流を送風する。
全ての物体について、風が通り抜けできるか判断しようとすると、マイコンの処理時間が長くなるため、本実施形態では、風の通り抜けに影響を与える程度の大きさの物体について判断するようにしている。物体を検出したときに物体の縦方向の長さ、横方向の長さまたはその両方が所定値以上であるか否か判断し、小さなゴミ箱等の所定値以下の物体を検出対象から除外する。すなわち、障害物検出部64は、幅、高さ又は面積が所定値以下の物体を障害物から除外する。このようにすることで、マイコンの処理スピードを向上させることができる。
次に処理内容について説明する。図9は、制御部の処理の全体概要を示すフローチャートである。制御部60は、運転を開始すると、人を検出し(処理S91)、人の足を検出する(処理S92)ことにより、人の位置を把握する。計測から1時間経過していない場合(処理S93,No)、処理S91に戻る。計測から1時間経過した場合(処理S93,Yes)、制御部60は、通り抜け検出処理を含む物体検出を行う(処理S94)。そして、物体検出処理後、再度人を検出し(処理S95)、室内のコーナ検出をし(処理S96)、人の検出をし(処理S97)、最後に間仕切りの開閉を検出し(処理S98)、一連の処理を終了する。処理S95〜処理S98の処理により、人の位置およびコーナ検出に基づいて、室内の大きさを判定している。なお、本実施形態では、撮像部110で撮影された画像に基づいて人の位置を把握しているが、撮像部110の代わりに、温度検知部130または焦電型赤外線センサを用いて人の位置を把握するようにしてもよい。
図10は、撮像制御部、障害物検出部および通り抜け可否検出部の処理を示すフローチャートである。図10は、図9の処理S94の詳細な処理である。図10の処理は、制御部60の処理であるが、撮像制御部61、障害物検出部64および通り抜け可否検出部65の主体を明瞭にして説明する。
障害物検出部64は、室内に太陽光が照射されているか否か(太陽光有無)を判定する(処理901)。障害物検出部64の判定は、光源を検出して、太陽光が室内に入らない状態のとき、または、室内に入り込む太陽光の量が所定値以下であるときに実行するとよい。太陽光には近赤外線も含まれているため、窓から太陽光が入り込む場合、太陽光が照射された場所に物体があると誤検出するおそれがあるからである。そこで、本実施形態では、光源を検出して、太陽光が室内に入らない状態のときに、または、室内に入り込む太陽光の量が所定値以下であるときに実行する。他の太陽光有無の判定方法として、光源そのものの識別をしなくても、時間帯によって太陽が出ていない時間帯に物体検出モードを実行してもよい。なお、ユーザが間違った時間帯を設定した場合、物体検出することができなくなるおそれがあるため、また、白熱灯によっても物体検出の誤検出をするおそれがあるため、光源識別を実行できることが望ましい。
撮像制御部61は、開口部113(図6参照)に可視光カットフィルタ112をかけるように移動する(処理S902)。そして、撮像制御部61は、初期の撮像位置(例えば、左画面の撮影位置)に移動し(処理S903)、近赤外線光源120(図1参照)を点灯し、近赤外線を照射する(近赤外線照射ON)(処理S904)。撮像制御部61は、室内の撮像(撮影)をし(処理S905)、近赤外線光源120を消灯し、近赤外線の照射を停止する(近赤外線照射OFF)(処理S906)。
障害物検出部64は、物体の有無判定を行う(図11参照)(処理S907)。そして通り抜け可否検出部は、障害物検出部64で検出された物体について、足元通り抜け推定を行う(図12参照、図13参照)(処理S908)。
次に、撮像制御部61は、左画面、中画面、右画面の3方向の撮影が終了したか否かを判定し(処理S909)、3方向の撮影が終了していない場合(処理S909,No)、処理S903に戻る。一方、3方向の撮影が終了している場合(処理S909,Yes)、撮像制御部61は、可視光カットフィルタ112を元の位置に移動する(処理S910)。
図9および図10の制御フロー、特に、物体検出処理(障害物検出処理)および通り抜け可否検出は、リモコン40の自動ボタンを押下すると、自動運転を実行するが、一定時間おきに物体検出モードを実行する。本実施形態の場合は、1時間おきに実行している。なお、物体検出モードを自動ボタンとは別のボタンによって実行してもよい。
障害物検出部64で実行する物体検出モードでは、可視光カットフィルタ112を有する撮像部110を用いる。また、物体検出精度を高めるため必要とする場合、近赤外線光源120(例えば、近赤外線LED(Light Emitting Diode))も用いる。撮像部110は、前記したように通常の撮像と同じように左右方向に駆動し、室内を撮像する。近赤外線光源120は、撮像部110による撮像の直前から室内を照射し、撮像部110による撮像が終了すると、照射を終了する。撮像部110による撮像するタイミングだけ近赤外線光源120を照射するようにすることで、物体検出モード実行中に、近赤外線光源120を照射し続ける場合に比べて、近赤外線光源120の寿命を延ばすことができる。
本実施形態では、撮像部110を左方向、中方向、右方向の3回撮像を行うため、近赤外線光源120も撮像部110による撮像のタイミングに合わせて3回照射をする。そして、障害物検出部64で撮像された画像の処理を行い、家具等の物体の形状を検出する。
ここで、通常、物体の形状を抽出する場合において、物体の色彩や模様により正確な物体の形状を抽出することができないおそれがある。そこで、本実施形態では、物体検出モード時に可視光カットフィルタ112を移動させて撮像部110の前面に位置させ、かつ、近赤外線光源120を照射させている。近赤外線は、物体の色彩や模様が反映されず、物体の形状だけが反映される特徴がある。この近赤外線の特徴を活かすことで、物体の色彩や模様による誤検出を防ぎ、物体の形状をより正確に検出することができる。このように検出精度を高めることで、物体が、脚付きのテーブルやイス等の風が通り抜けできる形状であるのか、ソファ等の風が通り抜けできない形状であるのかを判別することができる。
本実施形態の物体検出モードの際、撮像制御部61は、約850nm付近に波長のピークを持つ近赤外線光源120を照射するとよい。撮像した画像は、近赤外線を撮像部110の方向に反射するほど白く、撮像部110の方向に反射しないほど黒く写る。一般に、居住空間に存在する、木、布、金属、紙等は、表面が粗く、近赤外線はその表面で拡散反射する。拡散反射により撮像部110の方向に反射した近赤外線を撮像することで、反射する物体が反射した方向に存在することを検出することができる。このため、近赤外線光源120を照射することにより、一般に室内に多く存在する家具の材質を網羅することが可能となり、高い検出精度を得ることが可能となる。
なお、近赤外線光源120は、約850nm付近にピークを持つ近赤外線は可視光も含むため、近赤外線光源120を点灯しているときは、赤く点灯して見える。このため、点灯中であるか否かを表示する表示部が不要となり、コストを低減することが可能となる。
図11は、障害物検出部の物体の有無の判定処理を示す説明図である。障害物検出部64は、撮像制御部61で撮影した画像をマトリクスに分割し、各分割した領域をセルとして管理している。例えば、マトリクス1101は、空気調和機Aの室内機100側からみた画像のマトリクスであり、縦5セル×横10セルとして説明する。各セルの位置は、左右風向および上下風向を制御する場合の位置に対応する。
障害物検出部64は、画像の輝度値からそこに物体が存在するか否かを判別する。各セル内の数値は、各セル内に占める物体の占有面積に割合を、1〜5で示している。具体的には、0〜20%未満の占有面積の場合は「1」であり、20〜40%未満の占有面積の場合は「2」である。
障害物検出部64は、室内に常時設置されている家具等の物体であるか否か、たまたま一時的に置かれている物体であるか判別するため、複数回の検出を実施する。具体的には、1時間に1回撮影し、所定回数(例えば、10回)の検出結果のうち、多数決で物体の形状を特定する。例えば、10回のうち6回の検出結果で物体であると判別された場合は、常時設置されている物体と認識しその形状を特定する。
図11に示す例においては、マトリクス1101、…、マトリクス1110の10回の検出結果に基づき、多数決結果であるマトリクス1120が示されている。この場合、左から2列目から4列目に物体が検出されており、同様に、右から2列目および3列目に物体が検出されている。
図12は、通り抜け可否検出部の物体の重心を用いた判定処理を示す説明図であり、(a)は、物体の重心位置の例であり、(b)は物体の重心を用いた判定例を示す図である。図12(a)中には、物体の重心位置が示されており、通り抜け可否検出部65は、物体の底辺からの物体の高さHと重心位置Lとに基づき、物体の足元が、気流が通り抜けられるか形状であるか否かを判定する。
具体的には、通り抜け可否検出部65は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、70%)以上である場合に脚長家具と判定し、気流が通り抜けできると推定する。また、通り抜け可否検出部65は、物体の重心位置の高さLの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合に脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。すなわち、物体の重心位置Lと物体の高さHを比較し、物体の重心位置Lが物体の高さHに対して所定の高さ以上である場合に、気流(風)が通り抜けできる形状であると判断する。
図12(b)には、図11で検出されたセル(占有面積の記号が2から5)に対して、判定結果を、通り抜け可能である場合「1」、通り抜け不可の場合「2」が記載されている。マトリクス1201、…、マトリクス1210の10回の判定結果に基づき、多数決の結果であるマトリクス1220が示されている。この場合、左から2列目から4列目に検出された物体に対し、通り抜け不可として判定されている。一方、右から2列目および3列目に検出された物体に対し、通り抜け可能として判定されている。
図13は、通り抜け可否検出部の物体の積算面積を用いた判定処理を示す説明図であり、(a)は下端からの高さと積算面積の関係を示す図であり、(b)は物体の積算面積を用いた判定例を示す図である。図13(a)の左側の物体の場合、下端からの高さと積算面積とがほぼ線形の関係があるのに対し、図13(b)の右側の物体の場合、下端からの高さと積算面積とが線形の関係にないのが特徴である。
具体的には、通り抜け可否検出部65は、物体の下端からの積算面積の物体の全面積に対する割合が所定値(例えば、30%)における、物体の下端からの高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値(例えば、50%)以上である場合、脚長家具であると判定し、気流が通り抜けることができると推定する。また、通り抜け可否検出部65は、物体の全面積に対する積算面積が所定値における、物体の下端からの高さMの物体の高さHに対する割合が、所定値未満である場合、脚短家具と判定し、気流が通り抜けできないと推定する。
図13(b)には、図11で検出されたセル(占有面積の記号が2から5)に対して、判定結果を、通り抜け可能である場合「1」、通り抜け不可の場合「2」が記載されている。マトリクス1301、…、マトリクス1310の10回の判定結果に基づき、多数決の結果であるマトリクス1320が示されている。この場合、左から2列目から4列目に検出された物体に対し、通り抜け不可として判定されている。一方、右から2列目および3列目に検出された物体に対し、通り抜け可能として判定されている。
図14は、各種家具の下端からの高さによる積算面積の割合を示す説明図である。横軸は下端から上端までの距離の割合を示し、縦軸は下端からの積算面積の全面積に対する割合を示す。図14に示す結果から、(1)、(3)、(5)の家具の場合、下端から上端までの距離の割合と、積算面積との割合は単調に比例していることがわかる。これに対し、(2)、(4)、(6)の家具は、下に凸の放物線状の関係がある。
(1)の家具は、脚短家具であり、同様に(5)の家具も脚短の家具(ソファ)である。(3)の家具(チェア)は、足元に車輪部分の領域があり、気流の流れを阻害することがわかる。図14の結果によれば、積算面線の割合が30%であって、下端から上端までの距離の割合が50%以上であるか否かで、足元に気流が通り抜ける形状であるか否かを判別できることがわかる。この結果は、図13の判定で示したものと同様である。
図35は、室内の人、障害物の位置および形状の検出を示す概要図であり、(a)は室内機から室内をみた画像上の人、障害物の位置および形状を示す図であり、(b)は室内機が設置されている壁からの人、障害物の距離を示す図である。室内は、壁検出部63で検出された壁335,336,334で構成されている。壁331は、室内機100が設置されている壁であり、壁336,335は壁331の側壁であり、壁334は、壁331の対向面である壁である。人検出部62により、室内機100が設置されている壁331から2mおよび4.5mのところに人が検出できている。また、障害物検出部64により、テーブル、椅子の障害物が検出できている。後記する気流制御部66は、室内の人、障害物の位置および形状を立体的にみることにより気流が通る経路に、適切に気流の送風制御(図16参照)をする。
図16は、気流制御部の気流モード選択処理を示すフローチャートである。図17は、障害物が気流を通り抜ける形状である場合の気流制御を示す説明図であり、(a)〜(d)は、人と障害物との距離による気流を示す図である。図18は、室内の側面図と上面図の気流制御を示す説明図であり、(a)および(b)は障害物の下気流モードを示す図であり、(c)および(d)は障害物の上気流モードを示す図である。図19は、障害物が気流を通り抜けできない形状である場合の気流制御を示す説明図であり、(a)および(c)は障害物の上端気流モードを示す図であり、(b)は障害物の上気流モードを示す図である。図20は、人が室内機に近い場合の気流制御を示す説明図であり、(a)は人に対する風当てモードかつ障害物の下気流モードを示す図であり、(b)は人に対する風当てモードを示す図である。図21は、障害物と判定されない場合の気流制御を示す説明図である。最初に図17〜図21を参照して、各種気流モードを説明する。
図17は、障害物が気流を通り抜ける形状である場合の気流制御を示す説明図であり、(a)〜(d)は、人と障害物との距離による気流を示す図である。気流制御部66は、検出された障害物F1が気流を通り抜ける形状である場合、検出された人M(例えば、人M1,M2)と検出された障害物F(例えば、障害物F1,F2)との距離LMF(例えば、距離LMF1,LMF2,LMF3)に基づいて、障害物F1の上方に気流を送風する上気流モードか、障害物F1の下方に気流を送風する下気流モードかを選択する。距離Lが所定値Lc以上であれば上気流モードが選択され、距離Lが所定値Lc未満であれば、下気流モードが選択される。
図17(a)の場合は、距離LMF1が所定値Lc未満のため、下気流モードが選択された場合である。気流171は、障害物F1の下方に送風され、人M1の足元に送風されている。これに対し、比較例として、図17(a)中の気流175は、人M1の足元に向けて送風した場合である。気流175の場合、障害物F1があるため、人M1の足元に気流が届かないことになる。図17(b)の場合は、距離LMF2が所定値Lc以上のため、上気流モードが選択された場合である。気流172は、障害物F1の上方に送風され、人M1の足元に送風されている。図17(c)の場合は、図17(b)と比較して、人M1の位置および障害物F1の位置が、壁331に近い場合である。図17(d)の場合、距離LMF3が所定値Lc以上のため、上気流モードが選択された場合である。気流174は、障害物F1の上方に送風され、人M1の足元に送風されている。
本実施形態では、障害物が気流を通り抜ける形状であった場合に、人Mと障害物Fとの距離LMFに基づいて、下気流モードと上気流モードを選択していることが特徴となっている。室内機100は、空調する部屋の広さを基準に対応する能力帯に分けられている。例えば、室内機100の能力3.6kWの場合は、冷房運転時における空調広さの畳目安は10〜15畳となる。10〜15畳の広さ(面積)は、16〜25m2である。この場合、縦横比率により異なるが、壁331の対向面である壁334までの距離が、最大約7mになる。この場合、壁331に近いところに障害物F1があったとしても、人M1が障害物F1から離れている(図17(b)参照)とすると、障害物F1の下気流モードが選択されたとしても、床面送風が長くなるため、人M1に対し快適に送風できないことがある。このため、人M1と障害物F1が離れている場合には、障害物F1が気流を通り抜ける形状であったとしても、人M1に対し直接に送付した方が、快適であることがわかった。このため、人に対し快適な送風をするため、人M1と障害物F1との距離に基づいて、下気流モードと上気流モードを選択できるようにしている。
図18は、室内の側面図と上面図の気流制御を示す説明図であり、(a)は障害物の下気流モードを示す室内の側面図であり、(b)は(a)の室内の上面図であり、(c)は障害物の上気流モードを示す室内の側面図であり、(d)は(c)の室内の上面図である。図18(a)は、図17(a)の気流制御に対応し、図18(c)は、図17(b)の気流制御に対応する。
本実施形態では、図18(a)および(b)に示すように、気流制御部66が障害物F1の下気流モードを選択した場合、気流制御部66は、人検出部62で検出した人M1の位置と室内機100との間に障害物F1があったとしても、左右風向板104の方向および上下風向板105を制御して気流が通り抜けられる障害物F1の下方に向けてスイング制御する。例えば、暖房運転時、テーブルの奥の位置で人が検出された場合、気流制御部66は、テーブルの下を通り抜け、温風が人の足元に届くように左右風向板104の方向および上下風向板105の方向を制御する。また、人M1の壁331からの距離に応じて送風ファン103の回転速度を制御してもよい。
一方、図8(c)および(d)に示すように、気流制御部66が障害物F1の上気流モードを選択した場合、気流制御部66は、人検出部62で検出した人M1の位置と室内機100との間に障害物F1があり、気流が通り抜けられる障害物F1であったとしても、左右風向板104の方向および上下風向板105を制御して気流が通り抜けられる障害物F1の上方に向けてスイング制御する。例えば、暖房運転時、テーブルから離れた位置で人が検出された場合、気流制御部66は、温風が人の足元に届くように左右風向板104の方向および上下風向板105の方向を制御する。また、人M1の壁331からの距離に位置に応じて送風ファン103の回転速度を上げて送風してもよい。
図19は、障害物が気流を通り抜けできない形状である場合の気流制御を示す説明図であり、(a)および(c)は障害物の上端気流モードを示す図であり、(b)は障害物の上気流モードを示す図である。気流制御部66は、検出された障害物F2が気流を通り抜けできない形状である場合、検出された人M1と検出された障害物F2との距離LMF1,LMF4,LMF2に基づいて、障害物F2(または障害物F2A)の上端または側面に沿って気流を送風する障害物の上端気流モードか、障害物F2の上方に気流を送風する上気流モードかを選択する。距離LMF1,LMF4が所定値Lc未満であれば障害物の上端気流モードが選択され、距離LMF2が所定値Lc以上であれば、上気流モードが選択される。
図19(a)の場合は、距離LMF1が所定値Lc未満のため、障害物の上端気流モードが選択された場合である。障害物F2が気流を通り抜けできない形状である場合、気流193は、障害物F2の下方に送風しても人M1に届かない。このため、気流制御部66は、障害物F2の上端に送風される障害物F2の上端気流モードを選択する。気流191は、障害物F2の上端に沿って送風され、人M1に送風されている。また、図19(c)の場合は、距離LMF4が所定値Lc未満のため、障害物の上端気流モードが選択された場合である。気流194は、障害物F2Aの上端に沿って送風され、人M1に送風されている。すなわち、気流制御部66は、室内機100から人M1までの気流経路上に障害物(例えば、障害物F2またはF2A)が存在する場合、人M1の位置にかかわらず、障害物の上端気流モードを選択するとよい。図19(b)の場合は、距離LMF2が所定値Lc以上のため、上気流モードで、かつ、人に風当てモードが選択された場合である。気流192は、障害物F2の上方に送風され、人M1に風を当てるように送風される。
図20は、人が室内機に近い場合の気流制御を示す説明図であり、(a)は人に風当てモードかつ障害物の下気流モードが選択された場合であり、(b)は人に風当てモードが選択された場合である。図20(a)に示すように、気流制御部66は、人M1が室内機100に近い場合、かつ、検出された障害物F1が気流を通り抜けできる形状である場合、人に風当てする人風当てモードを選択するとともに、障害物の下気流モードを選択する。気流201は、人M1の足元を通り障害物F1の下方に送風されている。図20(b)に示すように、気流制御部66は、人M1が室内機100に近い場合、かつ、検出された障害物F1が気流を通り抜けできない形状である場合、人に風当てする風当てモードを選択する。気流202は、人M1に風を当てるように送風される。
図21は、障害物と判定されない場合の気流制御を示す説明図である。図21は、人M2より障害物F3が室内機100の手前にあっても、障害物と判定されない場合の気流21Aを示す。障害物の判定は、図15における障害物の判定条件による。障害物F3は、例えば、コート掛けハンガーのような場合、棒の幅が小さいため、障害物と判定されない。このため、気流制御部66は、人に風当てする風当てモードを選択する。すなわち、本実施形態では、室内の人の位置を検出する人検出部62と、人検出部62で検出した人の位置に気流を送風する第1の運転(風当てモード)、又は、第1の運転(風当てモード)とスイング運転とを繰り返す第2の運転とを備え、第1の運転(風当てモード)時、人検出部62で検出した人の位置よりも空気調和機側に障害物が位置する場合、気流制御部66は、障害物を避けて気流を送風し、障害物F3の幅、高さ又は大きさが所定値以下の場合、障害物F3を避けないで気流を送風する。
以上説明したように気流モードの選択(図17〜図21)の組み合わせは各種の方法があるが、その一例として図16を参照して、室内で人と障害物とが検出された際に、気流制御部66の気流モード選択処理を説明する。気流制御部66は、障害物検出部64が検出した物体が障害物であるか否かを判定し(処理S601)、物体が障害物である場合(処理S601、Yes)、処理S602に進み、物体が障害物でない場合(処理S601,No)、処理S631に進む。処理S631において、気流制御部66は、人に対する風当てモード(図21参照)を選択し、気流モード選択処理を終了する。
処理S602において、気流制御部66は、障害物が人より室内機100に近いか否かを判定し、障害物が人より近い場合(処理S602,Yes)、処理S603に進み、障害物が人より遠い場合(処理S602,No)、処理S611に進む。
処理S603において、気流制御部66は、障害物が気流を通り抜け可能か否かを判定し、障害物が気流を通り抜け可能である場合(処理S603,Yes)、処理S604に進み、障害物が気流を通り抜け可能でない場合(処理S603,No)、処理S621に進む。
処理S604において、気流制御部66は、人Mと障害物Fの距離LMFが所定値以上か否かを判定し、人Mと障害物Fとの距離LMFが所定値以上である場合(処理S604,Yes)、障害物の上気流モード(図17(b)〜(d)参照)を選択し(処理S605)、人Mと障害物Fとの距離LMFが所定値未満である場合(処理S604,No)、障害物の下気流モード(図17(a)参照)を選択し(処理S606)、気流モード選択処理を終了する。
処理S621において、気流制御部66は、人Mと障害物Fの距離LMFが所定値以上か否かを判定し、人Mと障害物Fとの距離LMFが所定値以上である場合(処理S621,Yes)、人に対する風当てモード(図19(b)参照)を選択し(処理S622)、人Mと障害物Fとの距離LMFが所定値未満である場合(処理S621,No)、障害物の上端気流モード(図19(a),(c)参照)を選択し(処理S623)、気流モード選択処理を終了する。
処理S611において、気流制御部66は、障害物が気流を通り抜け可能か否かを判定し、障害物が気流を通り抜け可能である場合(処理S611,Yes)、人に対する風当てモード、かつ、障害物の下気流モード(図20(a)参照)を選択し(処理612)、障害物が気流を通り抜け可能でない場合(処理S611,No)、人に対する風当てモード(図20(b)参照)を選択し(処理S621)、気流モード選択処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態の気流制御部66の気流制御モードによれば、室内の人、障害物の位置および形状を立体的にみることにより気流が通る経路をみつけ、適切に風向を制御できる。以下、他の気流モードの選択方法について説明する。
図22は、室内機の設置されている壁と障害物との距離に基づく気流制御を示す説明図である。図22(a)、(b)は室内機100の設置されている壁331と障害物F4との距離LAFが近い場合であり、(a)は側面図であり(b)は上面図である。図22(c)、(d)は室内機100の設置されている壁331と障害物F4との距離LAFが遠い場合であり、(c)は側面図であり(d)は上面図である。
前記説明した図16の処理623は、気流制御部66が物体を障害物と判定し、障害物Fが人Mより室内機100に近いと判定し、障害物Fが気流を通り抜けできないと判定し、人Mと障害物Fとの距離LMFが所定値Lc未満である場合、気流制御部66は障害物Fの上端気流モード(図19(a)参照)を選択するが、これに限定されるものではない。
図22(a)および(b)は、図19(a)と同様に、気流制御部66は、物体を障害物F4と判定し、障害物F4が人M4より室内機100に近いと判定し、障害物F4が気流を通り抜けできないと判定し、人M4と障害物F4との距離が所定値未満である場合である。気流制御部66は、図19(a)と同様に、障害物の上端気流モードを選択する。
これに対し、図22(c)および(d)は、図22(a)および(b)と同様の条件となるが、室内機100の設置されている壁331と障害物F4との距離LAF4が遠い場合である場合、気流制御部66は、障害物F4に対し風当てモードとして選択してもよい。気流制御部66は、人M4を中心にスイング制御で気流222を送風することにより、物体が障害物F4でないかのような気流を生じることができる。
次に暖房時と冷房時の運転モードを考慮した気流モードの選択方法について説明する。図23は、障害物が気流を通り抜け形状である場合の暖房時と冷房時との気流制御を示す説明図である。図23(a)は暖房時の気流を示す室内の側面図であり、(b)は(a)の室内の上面図である。図23(c)は、冷房時の気流を示す室内の側面図であり、(d)は(c)の室内の上面図である。図23(a)および(b)の暖房時においては、人M1の足元に送風した方が、人M1にとって快適に感じることが多いので、気流制御部66は、障害物F1の下気流モードを選択し、気流231にように障害物F1の下方に送風する。一方、図23(c)および(d)の冷房時には、人M1の足元よりも頭側を送風した方が、人M1にとって快適に感じることが多いので、気流制御部66は、障害物F1の上気流モードを選択し、気流232にように障害物F1の上方に送風する。
図24は、暖房時の障害物回避運転時の詳細な気流制御を示す説明図である。通常、暖房時の運転モードで、図16で示した室内の障害物に応じて気流モードを変更する障害物回避運転がされていない場合は、暖房時には、気流242に示すような送風を行うように設定されていることが多い。この場合、例えば、リモコン40により足元気流ボタン44が押下された場合(図4参照)について説明する。
気流制御部66は、通常運転指令時に上下風向板105を下向きに設定されている状態で、障害物を回避する運転制御指令を受けた場合、通常運転指令時よりも上下風向板105を上向きにするとともに、障害物(例えば、障害物F1)の下方を気流が通り抜けられる下気流モードとして制御するとよい。気流241は、気流242と比較して風速が弱められなく障害物F1の下方に送風されるので、人M5にとって快適な送風を感じとることができる。
次に、室内機100の風向機能が左右に複数区分に分割されており、独立して風向制御できる機種である場合について説明する。
図25は、複数区分に分割した風向板を利用した気流制御を示す説明図である。図25(a)は、ソフーに人が座っている場合の室内の側面図であり、(b)は(a)の室内の上面図である。図25(c)は、ダイニングテーブルの椅子に人が座っている場合の室内の側面図、(d)は(c)の室内の上面図である。室内機100の風向板の区分は、区分150a,150b,150cに分割されており、上下、左右に独立して風向制御できる。
図25(a)および(b)において、気流制御部66は、検出された障害物F6が気流を通り抜けできない形状である場合、分割された一部の風向板(例えば、区分150aに示す風向板)を障害物F6に向けて上方に気流251を送風するとともに、分割された他の風向板(例えば、区分150b,150cに示す風向板)を障害物F6が検出されていない方向で、かつ、下方向に向けて送風するとよい。これにより、人に対して送風できるとともに、室内の温度の温度差を小さくできる効果がある。
図25(c)および(d)において、気流制御部66は、検出された障害物F7が気流を通り抜けできる形状である場合、分割された一部の風向板(例えば、区分150aに示す風向板)を障害物F7に向けて下方に気流253を送風するとともに、区分150b,150cに示す分割された他の風向板(例えば、区分150b,150cに示す風向板)を障害物F7が検出されていない方向で、かつ、下方向に向けて送風するとよい。これにより、人に対して送風できるとともに、室内の温度の温度差を小さくできる効果がある。
次に、人検出部、壁検出部の詳細について説明する。図26は、人検出部の人位置判定処理を示すフローチャートである。図27は、人検出部の人位置判定処理を示す説明図であり、(a)〜(c)はそれぞれ具体的な計算について説明する説明図である。まず、人検出部62(図6参照)は、撮像処理で取得した左画像、中画像、右画像から人の位置を検出する(処理S31)。次に、人検出部62は、この検出した人の位置に関し、画面上の座標系から実空間の座標系に変換する(処理S32)。これにより、室内のどこに人が存在していたかを判定することができる。このようにして、人の実空間の座標を判定すると、人検出部62は、当該座標の情報を記憶部67に記憶する(処理S33)。
図27は、図26の室内の人の方向の判定処理について詳細に説明する説明図である。図26の処理S32においては、具体的には以下の処理により室内の人の実空間の座標を判定する。まず、頭部は、身長、性別に比較的依存しない大きさを有する人の体の部位である。そこで、処理S31で検出した人ごとに当該人の顔中心の位置を算出するとともに、その頭部の大きさ(縦方向の長さ)D0を算出する。
図27(a)は、撮像部110の光軸Pと垂直面Sとの関係を示す説明図である。図27(a)に示すように、撮像部110の光軸Pは、水平面に対して俯角εを有している。垂直面Sは、光軸Pに垂直であるとともに、人391の顔中心を通る仮想平面である。距離Lは、撮像部110が有するレンズ(図示せず)の焦点131aと、人391の顔中心との距離である。また、室内機100が設置される壁331とレンズの焦点131aとの距離はΔdである。
図27(b)は、画像面に撮像される画像と、実空間に存在する人391との関係を示す説明図である。図27(b)に示す画像面Rは、撮像部110が有する複数の受光素子(図示せず)を通る平面である。算出した前記の頭部の大きさD0に対応する縦方向の画角γyは、以下に示す式(1)で表される。ちなみに、式(1)で角度βy[deg/pixel]は、1ピクセル当たりの画角(y方向)の平均値であり、既知の値である。
そうすると、撮像部110が有するレンズ(図示せず)の焦点131aから顔中心までの距離L[m]は、一般的な人の顔の縦方向の長さの平均値をD1[m](既知の値)とすると、以下に示す式(2)で表される。前記したように、俯角εは、前記レンズの光軸が水平面となす角度である。
図27(c)は、前記レンズの焦点から顔中心までの距離Lと、画角δx,δyとの関係を示す説明図である。画像面Rの中心から画像上の顔中心までのx方向、y方向の画角をそれぞれδx,δyとすると、これらは以下に示す式(3)、式(4)で表される。ここで、xc,ycは、画像内の人391の人中心の位置(画像内でのx座標、y座標)である。また、Tx[pixel]は撮像画面の横サイズであり、Ty[pixel]は撮像画面の縦サイズであり、それぞれ既知の値である。
したがって、実空間における人中心の位置座標は、以下に示す式(5)〜式(7)によって表される。
すなわち、このx,y,zの各値は図27に図示のとおりであり、これらの値から室内機100の空気吹出し口109b側からみたX方向(図12の左右方向)、Y方向(図12の上下方向)、Z方向(図12に垂直な方向)の座標が求められる。以上の処理により、処理S32の処理を実現している。
図28は、壁検出部のコーナ方向判定処理を示すフローチャートである。図29は、壁検出部のコーナ方向判定処理で行う画像処理を示す図であり、(a)〜(e)はこの順に画像処理の手順を示している。このコーナ方向判定処理は、撮像処理が実行されるたびに行う。
すなわち、撮像処理で取得した左画像、中画像、右画像をそれぞれ対象として、次のような画像処理を行う。まず、壁検出部63(図8参照)は、撮像処理で取得した画像(図29(a)に、その例を示す)からエッジを検出する(処理S21)。次に、壁検出部63は、検出したエッジにフィルタリング処理を行い、所定値以上に太く、所定値以上に長く、かつ、所定値以上に明瞭なエッジのみを残す(処理S22)。図29(b)には、このようにして図29(a)の画像から得られたエッジ371を白い線図で示している。次に、壁検出部63は、各エッジ371を、その長さ方向に延長する(処理S23)。図29(c)には、このようにして延長した各エッジ371を示している。そして、壁検出部63は、このように延長した各エッジ371の交点(図29(d)に示す交点372)を求める(処理S24)。そして、各交点372の重心(図29(e)に示す重心373)を求める(処理S25)。この重心373の座標は、各交点372の画像上の基準位置からのX方向(横方向)、Y方向(縦方向)の距離の平均をそれぞれ求めることにより算出することができる。そして、この重心373の画像上の位置を部屋のコーナ(角部)の位置と推定することができる。これにより、室内のコーナ(重心373)の撮像部110からみた水平方向の方向がわかるので(前記の左画像、中画像、右画像のうちの何れの画像であるか、その画像中で重心373の位置は横方向の基準位置から何ピクセル目にあるかにより、当該方向がわかる)、当該コーナの方向を記憶部67に記憶(設定)する(処理S26)。この場合の記憶処理では、過去の所定回数分(例えば過去10回分)のみのコーナ(重心373)の方向を記憶部67に蓄積することとし、それより古い情報は削除する。そして、その過去の所定回数分の情報の平均値(移動平均の値)を、最終的なコーナ(重心373)の方向として確定し、記憶部67に記憶する。これは、室内における家具や器物の配置移動により、記憶部67に蓄積されている情報が示す室内の左右のコーナの方向は時間帯にばらつきを生じる場合があるからである。そのため、前記のとおり平均値を求めることで情報の中に含まれているノイズを除去して、最も確からしい方向を室内の左右のコーナ(重心373)の方向とすることができる。以下、重心373を適宜コーナ373という。処理S26により、後記の方向376,377が設定される。
なお、図29(e)の例では、室内機100が設置されている部屋の引き戸374が開いているため、その開口部の奥のエッジが検出されて、重心373の位置が同図に示す位置となっている。しかし、引き戸374が閉められた状態の画像が撮像された場合であれば、符号375またはその近傍の位置が重心373となる可能性が高い。
図1に示すように、撮像部110は、空気吹出し口109b(図2参照)の長手方向の中央部近傍に位置するので、前記のようにして特定した重心373は、空気吹出し口109b側からみた室内のコーナとみなすことができる。
また、壁検出部63は、処理S25で求めた部屋のコーナ373(室内機100に向かって左右のコーナ373a,373b。以下、コーナ373(コーナ373a,373b)というときは、撮像部110でみた空気吹出し口109b側からの画像上での重心(図29(e))を意味する)の方向376,377のそれぞれの室内機100の正面の方向311からみた角度が何度になるか判断する(処理S27)。そして、この角度の小さい方の壁は大きい方の壁より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する(処理S28)。すなわち、方向376と方向311とがなす角度が方向377と方向311とがなす角度より小さければ、壁336の方が壁335(図30参照)より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する。方向377と方向311とがなす角度が方向376と方向311とがなす角度より小さければ、壁335の方が壁336より空気吹出し口109b側からみて近いと判断する。このような、左右の壁336と壁335とのうち空気吹出し口109b側からみて近いのは、あるいは遠いのはどちらであるかの情報も記憶部67に記憶する(処理S29)。
図30は、壁検出部のコーナ方向判定処理での室内の平面を示す説明図である。図31を参照して、処理S27,処理S28の処理を具体的に説明する。まず、角度aを算出する。これは、撮像部110の例えば水平方向の画素数が例えば640[pixel]であり、角度aの範囲の(上下、左右方向の)画素数がβ[pixel]であったとすれば、“640[pixel]:β[pixel]=60°:a°”、“a°=60°×β[pixel]/640[pixel]”から求められる。そして、“A°=30°+a°”で角度Aが求められる(範囲312の角度が約60°で、30°はその半分)。同様の考え方で、角度bを求め、“B°=30°−b°”で角度Bが求められる。そして、この例では、“A°>B°”であるから、図18において、壁335の方が壁336より空気吹出し口109b側からみて遠いと判断できる。
図31は、壁検出部のコーナ方向判定処理を示す説明図であり、(a)は室内の平面図であり、(b)は画像中の重心の決定について説明する説明図である。図31(a)の平面図で示す室内のように、室内の形状が長方形、正方形ではなく、例えば、室内のコーナ部分378が室内側に角柱状に飛び出しているような形状の場合、撮影した画像379の例は図31(b)のようになる。このような場合には、図31(b)に示すように、コーナ(重心)373の候補(符号373c)が複数求められることがある。
このような場合には、複数の候補373cの画像上の基準位置からのX方向(横方向)、Y方向(縦方向)の距離の平均をそれぞれ求めることにより、当該平均後の座標をコーナ(重心)373として求めることができる。
以上の処理により、壁検出部63は、空気吹出し口109b側からみた部屋の左右のコーナ373a,373b(図30参照)の方向376,377を的確に判断することができる。また、壁検出部63は、空気吹出し口109b側からみて室内の左右の壁336,337のうちどちらが近く、どちらが遠いかも判断することができる。
図32は、壁検出部の拡がり範囲判定処理を示すフローチャートである。図33は、壁検出部の拡がり範囲判定処理での室内配置を示す平面図である。図32、図33を参照して、図26に示した人検出処理の結果を用いて室内の拡がりの範囲を判定する処理について説明する。まず、所定時間t1ごとに撮像処理が行われ、その度に図26の処理が実行され、その結果が記憶部67に記憶されている。そこで、壁検出部63は、前記処理S33(図26参照)により、新たに人の座標情報が記憶部67に記憶されると(処理S41,Yes)、当該人の座標情報から、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383の外側の領域381に人の座標が存在するか否かを判断する(処理S42)。領域381に人の座標が存在するときは(図33の符号382で当該人の例を示している)(処理S42,Yes)、当該人のX方向の座標(図33の左右方向)位置を室内機100に向かって右側の壁336(または左側の壁335)の位置と推定する(処理S43)。これは当該座標に人382が位置するということは、壁336(または左側の壁335)は少なくとも当該座標の位置あるいはさらにその外側にあることになるので、その人382の位置を現時点での壁336(または左側の壁335)の位置とするものである。
これにより、壁336(または壁335)の現時点における推定位置がわかるので、室内の各コーナおよび各壁の位置を推定する(処理S44)。すなわち、この壁336(または壁335)の位置のY方向を延長していき、コーナの方向376(またはコーナーの方向377)との交点が現実のコーナ422a(またはコーナ422b)であると推定できる。また、当該コーナ422a(またはコーナ422b)の位置をX方向に延長していき、他のコーナの方向377(またはコーナ376)の方向まで達するまでが正面の壁334の位置と推定できる。そして、そのコーナの方向377(またはコーナ376)の方向と交わった位置が他の現実のコーナ422b(またはコーナ422a)であると判定できる。さらに当該位置からY方向に延長していった位置が壁335及び壁336のうちの他方の壁の位置であると推定することができる。
一方、処理S44の後、または、領域381に人の座標が存在しなかった場合には(処理S42,No)、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383に人の座標が存在するときは(図33の符号384で当該人の例を示している)(処理S45,Yes)、当該人のY方向の座標位置を室内機100の正面の壁334の位置と推定する(処理S46)。これは当該座標に人384が位置するということは、壁334は少なくとも当該座標の位置あるいはさらにその外側にあることになるので、その人384の位置を現時点での壁334の位置とするものである。
これにより、正面の壁334の位置がわかるので、室内の各コーナおよび各壁の位置を判断する(処理S47)。すなわち、この正面の壁334をX方向に延長していき、コーナの方向376およびコーナの方向377との交点が、現実のコーナ421aおよびコーナ421bであると推定できる。そして、この現実の各コーナ421a及びコーナ421bをY方向に延長していくと、当該位置が壁336および壁335であると推定することができる。
処理S47の後、または、室内の左右のコーナの方向376と方向377との間の領域383に人の座標が存在しなかったときは(処理S45,No)、処理S44および処理S47で推定された現実の各コーナおよび各壁の位置のうち、室内機100側から最も遠いものを各コーナおよび各壁の位置の最終的な判定結果とする(処理S48)。
図33には、人384に基づいて推定される壁331,334,335,336の位置をそれぞれ331a,334a,335a,336aとして示している。同様に、人382に基づいて推定される壁331,334,335,336の位置をそれぞれ331b,334b,335b,336bとして示している。
この場合、処理S44または処理S47でしか判定結果が得られなかったときは、当該得られた判定結果(人を複数検出したときは、室内機100側から最も遠いものの判定結果)を各壁および各コーナの位置の判定結果とする。そして、この判定結果を記憶部67に記憶する(処理S49)。この情報の記憶は、この各壁及び各コーナの情報は所定時間t1ごとに取得するので、所定時間t1ごとに行われる。そして、この情報の記憶は、所定の基準時以後(例えば、直近の過去30回分)の各壁及び各コーナの情報のうち、壁の位置が室内機100側から最も遠いものの情報で更新するように行う。これにより、所定の基準時以後に取得した情報のうち、各壁及び各コーナの位置が室内機100側から最も遠いものの情報が処理S49で記憶される。
なお、このようにして特定した空気吹出し口109b側からの室内の左右における現実のコーナ421a,421b,422a,422b(と推定される位置)までのそれぞれの距離も、次のように求められる。すなわち、
“コーナ421aまでの距離=√((壁336aまでの距離)2+(壁334aまでの距離)2)”、
“コーナ421bまでの距離=√((壁335aまでの距離)2+(壁334aまでの距離)2)”である。コーナ422aまでの距離、コーナ422bまでの距離も同様に求められる。
以上説明したように、壁検出部63は、撮像部110で撮影された画像から、風向部の水平方向の向きにおいて、空気吹出し口109bの前方側の右のコーナの方向と、空気吹出し口109bの前方側の左のコーナの方向と、人検出部62で検知した人の位置とに基づいて室内の壁の位置を検知することができる。
図34は、障害物と判定されない場合の気流制御を示す説明図である。物体が障害物であるか否かは、例えば、壁からの距離で判定するとよい。例えば、壁から物体までの距離が所定の範囲未満の場合、気流が通る経路の障害物でないと判定する。具体的には、室内機100が設置されている壁331の対向面である壁334から物体の端部までの距離a、又は、壁331の側壁335,336から物体の端部までの距離bが所定の範囲以上であるか否かに基づいて、物体が障害物であるか否か判定するとよい。
図34(a)の場合、壁334から障害物F8の端部までの距離aは50cmであり、壁331の側壁335から障害物F8の端部までの距離bは150cmであり、所定の範囲が50cmであるとすると、壁334から障害物F8の端部までの距離aが所定の範囲以下である為、障害物F8は気流が通る経路の障害物ではないと判定される。この場合、冷房運転時に、コーナの方向に気流を送風する場合、気流255のように障害物F8に送風される。すなわち、本実施形態では、室内の障害物の位置を検出する障害物検出部64と、室内の壁面の位置を検出する壁検出部63と、障害物検出部64で検出した障害物の位置を避けて気流を送風する気流制御部66とを備え、障害物検出部64で検出した障害物F8が壁検出部63で検出した壁面から所定の範囲内にある場合、気流制御部66は障害物を避けないで気流を送風する。なお、所定値は部屋の形状や大きさによって変更できるようにしてもよい。又、距離aについての所定値と距離bについての所定値とは別の値にしてもよい。
本実施形態では、撮像部110の画像を用いた壁検出部63について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、近赤外線を室内に向けて照射し、赤外線透過フィルタ(IR透過フィルタ)を備えたCCDイメージセンサで撮像し、画像の上方の輝度の程度と、輝度と距離のデータベースとの比較から、側面の壁や正面の壁までの距離を推定してもよい。
また、近赤外線を複数本の平行線状に室内に向けて照射し、IR透過フィルタを備えたCCDイメージセンサで撮像し、平行線の間隔の違いから側面や正面の壁までの距離を推定してもよい。
さらに、撮像部110は、室内機100の前面に据え付けられているとして説明したが、同様の方法で天井に据え付けられる撮像部により、床を検出することで壁を検出してもよい。
人検出部62、障害物検出部64は、撮像部110の画像に基づいて検知しているがこれに限定されるものではない。例えば、赤外線センサ、サーモパイル、サーモグラフィー、焦電型センサ、超音波センサ、騒音センサを使用してもよい。人検出部62で検出するのは、人の位置に限られず、活動量、生活シーンなどを検出してもよい。温度検知センサとしてサーモパイルを用いる場合、例えば横×縦が1×1画素、4×4画素、1×8画素で構成されるサーモパイルとし、前面パネルの左右方向中央の下部に設置するとよい。温度検知センサで検出するのは、室内の平均的な表面温度に限られず、検出範囲の内の人を除いた領域の室内の表面温度、人の着衣の表面温度、人の皮膚の温度、床や壁や天井の各部の表面温度を検出することができる。
サーモパイルで検出した温度が他の領域に比べて高い、又は、低い領域に障害物が位置すると推定する処理を介さず、直接、当該領域に基づいて気流を制御してもよい。すなわち、室内の表面温度を検出する赤外線センサと、赤外線センサで検出した温度が他の領域に比べて高い、又は、低い第1の領域を避けて気流を送風する気流制御部66とを備え、気流制御部66は、第1の領域の幅又は大きさが所定値以下の場合、第1の領域を避けないで(第1の領域から除外して)気流を送風してもよい。
この場合、領域検出手段は、サーモパイルで検出できる全ての領域の温度の平均値を基準温度とし、基準温度に対して所定値以上温度が高い、又、低い領域を第1の領域とする。尚、基準温度は、サーモパイルで検出できる全ての領域から第1の領域を除いた領域の温度の平均値等を用いてもよい。又、温度センサの検出値に基づく値(検出補正値等)を基準温度とすることもできる。
又、室内の表面温度を検出する赤外線センサと、室内の壁面の位置を検出する壁検出部63と、赤外線センサで検出した温度が他の領域に比べて高い、又は、低い第1の領域を避けて気流を送風する気流制御部66とを備え、気流制御部66は、第1の領域が壁検出部63で検出した壁面から所定の範囲内にある場合、第1の領域を避けないで(第1の領域から除外して)気流を送風してもよい。
障害物検出部64に用いられる超音波センサは、超音波送信部と超音波受信部を有しており、超音波を送信し、超音波パルスが障害物等に当たり、この反射波を超音波受信部で受信する。この送信から受信までの時間t、音速Aから、超音波センサ(室内機100)から障害物までの距離TをT=At/2で計算することができる。
さらに、障害物検出部64に用いられる超音波センサは、回転式であり、超音波センサの向きを変えて距離検出を行う。そして、超音波センサが向いている角度αから障害物の方向を認識することができる。従って、超音波センサ(室内機100)から障害物までの距離T及び超音波センサが向いている角度αから、障害物の位置を検出する。すなわち、室内に超音波を送信し、室内から反射した反射波を受信する超音波センサを備え、障害物検出部64は、超音波センサに基づいて障害物の位置を検出する。
本実施形態の空気調和機によれば、室内の人、障害物の位置および形状を立体的にみることにより気流が通る経路をみつけ、図16に示した各種気流モードにより、適切に風向を制御できる。