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JP6543483B2 - 眼科装置 - Google Patents

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Description

本発明は、眼底の検査を行う眼科装置に関する。
眼底の検査を行なう装置として、走査型レーザ検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)が知られている。また、眼球構造の個人差に起因する眼底反射光の波面の乱れを補償する補償光学系を備えた走査型レーザ検眼鏡も知られている。この補償光学系を備えた走査型レーザ検眼鏡は、補償光学走査型レーザ検眼鏡(AO-SLO:Adaptive Optics Scanning Laser Ophthalmoscope)と呼ばれている。通常、SLOは、第1のスキャナと第2のスキャナを用いて測定光(照射光)を2次元的にスキャンさせる方法が採用されている。特許文献1には、更に第3のスキャナを用いモンタージュ画像を得、観察視野角を広げる方法が記載されている。
US2011/0234978公報
観察視野の広角化を追求した場合、分解能と高速性が犠牲になる。一般に視野角、分解能、高速性はトリレンマの関係にあり、いずれかの要素を追及すると、他の要素が犠牲になる。
例えば、スキャナを広角で振ろうとすると、慣性モーメントの関係から、高速性を犠牲にせざるを得ない。また、視野角を大きくした場合、SLO光の集光スポットサイズが大きくなり、解像度が犠牲になる。また、スキャナの物理的な性能に限界があり、無闇に速いスキャンを行うことはできないという問題もある。
そのため、AO-SLOの広視野角画像は、被検眼の視線を誘導して装置光軸上に所望眼底位置を合致させた複数枚の画像を、後処理により繋ぎ合わせて得ることが一般的である。これは、何度も視線誘導を行うことになり被検者の負担を増す上に、広視野画像の取得に迅速性を欠く為、臨床に使用していく上で大きな制約となりかねない。
上述した第3のスキャナを用いる手法は、上記の問題に対するアプローチの一つである。すなわち、狭いスキャン領域であれば、現状で利用可能なスキャナを用いて分解能と高速性を追求できる。ここで、複数のスキャン領域を組み合わせることで、高速性を失わずに、AO-SLOの高分解能性を広角化することができる。ただし、広角に対応した光学系、つまり視野角相当の開口を持つ光学系を備えている必要がある。
しかしながら、AO-SLOで広観察視野角を得る場合、以下のような問題が生じる。第1の問題は、視野全域でピントが合っているとは限らないという問題である。この問題は、ある視野位置でピントが合っても、他の位置ではピントが合っていないという現象である。この問題は、実際の眼底の形状が多様かつ複雑であることに関係しており、眼球を含めた装置光学系が眼底位置付近に作る測定光の焦点面と眼底面が合致しない為に起こる。また、第2の問題として、視野中央での波面補償が視野全域で有効とは限らないという問題もある。これも実際の眼では、波面収差が視野位置により異なっていることに起因する。これらの問題により、AO-SLOで複数のスキャン領域を組合せて広域スキャンを行って広角画像を得る場合は、視野全域での均一な解像度が阻害される場合がある。
このような背景において、本発明は、AO-SLOにおいて視野内解像度が均一な広角観察を迅速に行う場合における技術の提供を目的とする。
請求項1に記載の発明は、眼底に測定光を照射する測定光照射部と、前記測定光を前記眼底に走査しつつ照射するスキャナ部と、複数に分割設定された複数の範囲毎に前記測定光を走査しつつ照射する制御を前記スキャナ部に対して行うスキャナ制御部と、前記測定光の前記眼底からの反射光を検出する反射光検出部と、前記反射光に基づき前記眼底の眼底画像を作成する眼底画像作成部と、前記複数の範囲毎に予め取得された前記反射光の波面の補正情報および前記測定光の焦点の調整情報を記憶した記憶部と、前記波面の補正情報に基づき前記反射光における波面の補正を行う波面補正部と、前記焦点の調整情報に基づき前記測定光の焦点を調整する焦点調整部とを備え、前記波面の補正および前記焦点の調整は、前記測定光を走査しつつ照射する前記複数の範囲毎に行われ、前記スキャナ部は、第1の方向における前記測定光の相対的に高速な走査を行う第1のスキャナと、前記第1の方向と直交する方向における前記測定光の相対的に低速な走査を行い、前記第1のスキャナによる走査範囲を前記第1の方向と直交する方向に移動させることが可能な第2のスキャナと、前記第1のスキャナによる走査範囲を前記第1の方向に移動させることが可能な第3のスキャナとを備え、前記スキャナ制御部は、第1の眼底画像を得るために、前記第1のスキャナと前記第2のスキャナにより、前記眼底の第1の領域に対して前記測定光を走査しつつ照射する第1の制御と、前記第1の眼底画像と少なくとも一部が異なる第2の眼底画像を得るために、第3のスキャナにより、前記第1の制御における前記第1のスキャナの走査中心の位置を変更する第2の制御と、前記第2の制御の後、前記第2の眼底画像を得るために、前記第1のスキャナと前記第2のスキャナにより、前記眼底の第2の領域に対して前記測定光を走査しつつ照射する第3の制御とを行い、前記第1の制御において、予め取得された前記第1の領域に対応した前記波面の補正情報および前記焦点の調整情報に基づき、前記波面の補正および焦点の調整が行われ、前記第3の制御において、予め取得された前記第2の領域に対応した前記波面の補正情報および前記焦点の調整情報に基づき、前記波面の補正および焦点の調整が行われ、前記第2のスキャナのスキャン中心の位置と、前記第3のスキャナのスキャン中心の位置とを指定することで、前記複数の範囲の中の一つが指定されることを特徴とする眼科装置である。
請求項1に記載の発明によれば、分割設定されたスキャン範囲毎に波面補正情報と焦点の調整情報(ピントを合わせるのに必要な情報)を予め取得しておき、各スキャン範囲に対して測定光のスキャンを行う際に、先の予め用意しておいた波面補正情報と焦点の調整情報を利用して、波面の補正と焦点の調整を行う。こうすることで、各観察場所での最適な波面補償とピント合わせが可能となり、広角画像であっても細部の解像度に優れた眼底画像を得ることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数の範囲全てにおける波面の補正情報を予め取得する事前測定が行われることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記波面の補正情報および前記焦点の調整情報は、波面収差が特定の範囲内と見なせる領域毎に取得されていることを特徴とする。
本発明によれば、AO-SLOにおいて視野内解像度の均一な広角観察を迅速に行うことができる。
実施形態の概念図である。 スキャンの状態を示す概念図である。 実施形態のブロック図(A)と演算部のブロック図である。 処理の手順の一例を示すフローチャートである。 処理の手順の一例を示すフローチャートである。 広角視野と分割視野との関係を示す概念図である。
(構成)
図1には、実施形態の眼科装置100が示されている。眼科装置100は、補償光学走査型レーザ検眼鏡(AO-SLO)である。眼科装置100は、光源101を備えている。光源101は、例えば、波長500nm〜1500nmの範囲から選ばれる指向性の高い光、すなわち拡がり角の小さい光を発するものが用いられる。光源101としては、固体レーザ、ガスレーザ、レーザダイオード(LD)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、レーザドリブンライトソース(LDLS)等が挙げられる。
光源101には、光を導く光ファイバ102が接続されている。光ファイバ102としては、単一モード光ファイバが採用されている。光ファイバ102の先には、光ファイバ102から出射したレーザ光を平行光にするためのレンズ(コリメータレンズ)103が配置されている。光源101からの光は、レンズ103によって平行光とされ、ハーフミラー104に入射する。ハーフミラー104は、投光系と波面検出系とを分岐する光量分割ミラーである。ここで、投光系とは、被検眼300へ光を照射する光学系のことであり、光源101、光ファイバ102およびレンズ103の構成で得る平行光を、リレーレンズ115、116、118、119、121、122、124、128で中継し、対物レンズ131から被検眼300の視度にあった光束を出射する光学系全体を指している。波面検出系とは、被検眼300の眼底301からの反射光(検出光)から波面の情報を検出するための光学系のことであり、波面検出部105および光学系109により構成されている。
ハーフミラー104は、光源101からのレーザ光(投光)の一部を後述するハーフミラー110の側に透過すると共に、ハーフミラー110の側から入射する検出光の一部を波面検出部105の側に反射する。なお、ハーフミラー104の分岐比(分割される光量の比)は、1:1に限定されず、必要に応じて任意に設定可能である。なお、ハーフミラー104の代わりに偏光ビームスプリッターを用いることも可能である。
波面検出部105は、撮像装置であるCCD107と、その手前のレンズアレイ106を有している。レンズアレイ106は、ハルトマン板であり、波面検出部105は、シャックハルトマンセンサーとして機能する。レンズアレイ106は、小さなレンズを格子状に配列したもので、入射光を多数の光束に分割しそれぞれ集光する。レンズアレイ106によって集光された光はCCD107により撮像され、各レンズの焦点位置を解析することで、レンズアレイ106に入射した光の波面収差を知ることができる。そして得られた波面収差をZernike 多項式に展開し、そこからDefocus成分を抽出することで、測定光の焦点と実際の眼底面との光軸方向のズレ量を知ることが出来る。
CCD107が撮像した画像は、後述する演算部203に送られる。演算部203では、CCD107が撮像した画像に基づいて被検眼300の波面の乱れが解析され、更にこの解析の結果に基づく波面補正デバイスの制御が行われる。また、演算部203では、CCD107が撮像した画像に基づいて眼底301における測定光の焦点のズレ、およびこのズレの解消に必要な補正値が算出される。この焦点のズレの解消に必要な補正値に基づいて視度補正機構の制御が行われる。
ハーフミラー104と波面検出部105との間には、一対のレンズと、その間のピンホール(光学絞り)を有した光学系109が配置されている。光学系109により、波面検出部105で検出される眼底301からの反射光束の深さ方向の位置を制限することができる。また、光学系109により、光学系及び被検眼300からの反射ノイズが軽減される。
ハーフミラー104の被検眼300の側には、別のハーフミラー110が配置されている。ハーフミラー110は、投光系と網膜撮像系(眼底撮像系)とを分岐する光量分割ミラーである。網膜撮像系は、眼底301からの反射光(検出光)から、眼底301にある網膜の画像情報を検出する。
網膜撮像系は、レンズ111、ピンホール(光学絞り)112および眼底反射光検出器113を備えている。眼底反射光検出器113は、眼底301からの微弱な反射光を検出する光検出素子であり、例えばAPD(アバランシュフォトダイオード)や光電子増倍管により構成されている。眼底反射光検出器113からの検出信号は、後述するADC(A/Dコンバータ)202を介して、演算部203に送られる。スキャンしながら眼底301に光源101からの光を照射することで、眼底反射光検出器113からは、反射光のスキャンデータが得られる。
眼底反射光検出器113の前には、光学絞りとして機能するピンホール112が配置され、ピンホール112の前には、ピンホール112の光学絞り孔の部分に眼底共役位置がくるように光束を絞るレンズ111が配置されている。
ハーフミラー110の被検眼300の側には、波面補正デバイスであるデフォーマブルミラー114が配置されている。デフォーマブルミラー114は、波面補正を行うための可変形鏡である。デフォーマブルミラー114は、複数のアクチュエータによって表面の形状を変形させることが可能なミラーである。デフォーマブルミラー114は、演算部206により制御され、その反射面を変形させることで、反射する光の波面の補正を行う。波面補正デバイスとしては、空間位相変調器やバイモルフミラー等を用いることもできる。
デフォーマブルミラー114の被検眼300の側には、走査系(スキャナ部)を構成する第1スキャナ117、第2スキャナ120および第3スキャナ123が配置されている。各スキャナは、瞳共役位置に配置されている。第1スキャナ117は、縦方向(上下方向)のスキャンを行う。このスキャンは、第2スキャナおよび第3スキャナよりも高速で行われる。第1スキャナ117は、レゾナントスキャナにより構成されている。レゾナントスキャナ(共振型スキャナ)は、ミラーを共振運動により往復回転させ、反射光の走査を行う光学素子である。レゾナントスキャナは、スキャン中心を動かすことができないが、走査を高速に行える優位性がある。
第2スキャナ120は、横方向(左右方向)のスキャンを行うためのものであるが、第1スキャナ117のスキャン中心を横方向に移動するためにも用いる。第2スキャナ120は、ガルバノスキャナにより構成されている。ガルバノスキャナは、回転軸に取り付けたミラーをモータで駆動する構造を有している。ガルバノスキャナは、レゾナントスキャナに比較して高速動作は行えないが、スキャン中心を希望する位置に設定できる。
第3スキャナ123は、第1スキャナ117のスキャン中心を縦方向に移動させるために用いられる。第3スキャナ123は、第1スキャナ117よりも低速のスキャンを行う。第3スキャナ123は、第1スキャナ117のような高速スキャンの必要はないが、スキャン位置の制御が必要であるので、ガルバノスキャナが用いられる。符号115,116,118,119,121,122,124は、光路を形成するリレーレンズである。なお、各スキャナの動作については後述する。
リレーレンズ124の被検眼300の側には、視度補正機構125が設けられている。視度補正機構125は、眼底301の被観察点(SLO測定項の照射点)が光学系の焦点となるように調整を行う。すなわち、視度補正機構125は、レーザ光を眼底301上に略点像として照射するように調整を行う。視度補正機構125は、くの字形状の視度補正ミラー126,127を備えている。
視度補正ミラー126を視度補正ミラー127に対して相対的に遠近させることで、眼底301に焦点がくるように調整が行われる。視度には、個人差や個体差があるが、この視度に違いがあっても、視度補正ミラー126の位置を動かすことで、眼底301に焦点がくるように、つまり眼底301上に照射光が略点像として集光して照射されるように調整が行われる。また、視度補正機構125により、観察対象となる特定の層への集光位置の微調整が行われる。また、被検眼によって異なる眼底の形状は、眼球を含む装置光学系の焦点面と同じであるとは限らない。異なる場合には、観察視野内のある場所ではピントが合っていても、他の場所ではピントが合っていないということになる。本実施形態では、観察領域を複数の領域に分割し、分割領域毎にピント合わせに必要な情報(眼球を含む装置光学系の焦点と眼底位置の光軸方向のズレ)を予め取得し、その情報をもとに観察場所毎に集光位置を微調整してピントを合わせ、この問題に対応している。
デフォーマブルミラーを用いてDefocus成分の補正、すなわちピントの調整を行なうこともできる。デフォーマブルミラーを用いたピントの調整には、1つのデフォーマブルミラーで波面補償と共に行う方法、あるいは2以上のデフォーマブルミラーを用いて行う方法がある。例えば、デフォーマブルミラーを2つ用い、第1のデフォーマブルミラーでDefocus成分を含む低次の補正を行い、第2のデフォーマブルミラーで波面収差に関係する高次の成分の補正を行う方法が挙げられる。これらの構成では、各デフォーマブルミラーのそれぞれは瞳共役位置に配置される。
視度補正機構125の被検眼300の側には、レンズ系128を介して、ダイクロイックミラー129,130が配置されている。ダイクロイックミラー129は、光源101からの光を反射し、図示しない近赤外光源から照明され前眼部から反射される近赤外光を透過する。例えば、ダイクロイックミラー129は、光源101からの波長840nmの光を反射し、図示しない近赤外光源により照明され前眼部から反射される波長950nm光を透過する。
ダイクロイックミラー130は、光源101および図示しない光源から前眼部に照射され前眼部で反射された近赤外光を反射し、後述する固視標132からの光を透過する。例えば、ダイクロイックミラー130は、光源101からの波長840nmの光および前眼部で反射された波長950nmの光を反射し、後述する固視標132からの波長550nmの光を透過する。
被検眼300の前には、対物レンズ131が配置されている。対物レンズ131は、収差を抑えるために複数のレンズを組み合わせた構造を有している(勿論、1枚のレンズで構成されていてもよい)。対物レンズ131により、被検眼300の瞳位置に光学系の瞳が合致するように設定される。
被検眼300は、ダイクロイックミラー130を介して固視標132を視認する。固視標132は、被検眼300の向き(視線)を固定させるための視認目標である。固視標132は、被検眼300が視認できる波長の光(400nm〜600nm程度)を発光するフィルムや有機EL素子により構成され、光軸に垂直な方向に移動可能とされている。固視標132を移動させることで、被検眼300の視線の方向を観察者が意図する方向に誘導することができる。
固視標132の手前には、ディオプター調整レンズ134が配置されている。ディオプター調整レンズ134は、被検眼300の屈折度数に対応して光軸上を移動する。ディオプター調整レンズ134は、主に被検眼300の網膜(眼底301)と固視標132とが共役な位置になるように光軸上で移動する。
被検眼300の前眼部は、図示しない光源から近赤外光(例えば、波長950nm)が照射される。この照射光の被検眼300からの反射光は、ダイクロイックミラー130、129を介して、前眼部観察系の撮像素子133に結像される。撮像素子133によって被検眼の前眼部(瞳)の近赤外光による撮像が行われる。撮像素子133は、CCDやCMOSイメージセンサーにより構成されている。
(基本動作)
まず、基本的な動作について説明する。光源101からのSLO測定光は、ハーフミラー110→デフォーマブルミラー114→第1スキャナ117→第2スキャナ120→第3スキャナ123→視度補正機構125→対物レンズ131を経て、被検眼300の眼底301に集光した状態で照射される。眼底301に照射されたSLO測定光は、眼底301の集光点で反射される。この反射光は、SLO検出光として、上記と逆の経路をたどり、ハーフミラー110を透過して眼底反射光検出器113で検出される。
この例では、後述するように、第1の分割視野をスキャンし第1の眼底画像を得、第2の分割視野をスキャンし第2の眼底画像を得、・・・といったように観察したい広角視野を複数に分割して順次眼底画像を得ていく。その間被検眼の視線は固定したままである。そしてそれを貼り合わせて(Stitchingして)最終的に広角視野の眼底画像とする。
ここで、上記の広角視野眼底画像の撮影に先立ち、各分割領域(上述した第1の分割視野や第2の分割視野)それぞれにおける波面の乱れおよび焦点のズレ(ピントのズレ)を予め取得しておく。そして各分割領域のそれら値から、その領域での波面補正情報、焦点の調整情報を算出し、分割領域と関連づけてデータテーブルとしてメモリに記録しておく。
そして、第1の分割視野の撮影を行う際には、データテーブルの第1の分割視野に関する波面の補正情報および焦点の調整情報を用いて、波面の補正および焦点の調整を行う。つまり、予め取得しておいた当該分割視野に関する波面の補正情報および焦点の調整情報を用いて、当該視野における波面の乱れが抑えられるように波面の補正を行い、更に焦点が合うように焦点位置の調整が行われる。こうして、複数ある分割視野毎に波面の補正とピントの調整を行いながら広角眼底撮影を行う。
次に、スキャナによるスキャン動作について説明する。まず基本動作として、相対的に高速に行われる第1スキャナ117の縦スキャンと、相対的に低速で行われる第2スキャナ120の横スキャンの組み合わせにより、2次元領域のスキャンが行われる。このスキャンにより分割視野毎に測定光のスキャンが行われ、各分割視野の眼底画像が得られる。
図2(A)には、第1スキャナ117と第2スキャナ120による測定光のスキャンの様子が概念的に示されている。この例では、全体の視野の中の1/4の面積である左上の領域をスキャンした場合が示されている。
ここで、第1スキャナ117は、レゾナントスキャナであるのでスキャン中心(走査が行われる範囲の中心)は変更できないが、第3スキャナ123を動かすと、第1スキャナ117のスキャン範囲が全体として縦方向に平行移動する。すなわち、第3スキャナ123を動かすことで、第1スキャナ117のスキャン中心の位置が縦方向に移動する。この第3スキャナ123を用いて図2(A)のスキャン範囲を縦方向に移動させ、その状態で第1スキャナ117の縦スキャンと、第2スキャナ120の横スキャンの組み合わせにより、2次元領域のスキャンを行った場合の例が図2(B)に示されている。図2(B)には、図2(A)におけるスキャン範囲を下方向にずらし、全体の視野の中の1/4の面積である左下の領域をスキャンした場合が示されている。
ところで、第2スキャナ120は、ガルバノスキャナであるのでそのスキャン中心は、希望する位置に移動可能である。よって、第2スキャナ120と第3スキャナ123を用いることで、第1スキャナ117と第2スキャナ120とによる2次元スキャンの中心を上下左右に変更することが可能となる。この場合の一例が図2(C)および図2(D)に示されている。
図2(C)のスキャンは、図2(B)のスキャンにおける第2スキャナ120のスキャン中心を図の右方向にスライドさせた場合の例である。図2(D)のスキャンは、図2(A)のスキャン範囲を第2スキャナ120のスキャン中心を図の右方向にスライドさせた場合である。なお、図2(C)の状態から、第3スキャナ123を用いて第1スキャナ117のスキャン中心を図の上方向に移動させると図2(D)のスキャンパターンが得られる。
ここで、図2(A)〜(D)のスキャンによって、4つのスキャン画像が得られる。この4つのスキャン画像をStitchingすることで、4つの分割視野から構成された広角スキャン画像を得ることができる。本明細書では、図2に示すようなスキャン範囲を変更して得た複数のスキャン画像を繋ぎ合わせて広角なスキャン画像を得ることをStitchingと称する。
図2(E)には、図2(A)における第2スキャナ120のスキャン範囲を2倍に拡大した場合の例が示されている。そして、図2(E)の状態から、第3スキャナ123を用いて第1スキャナ117のスキャン中心を図の下方向に移動させたものが図2(F)のスキャンである。この場合、図2(E)および(F)のスキャンによって、2つのスキャン画像が得られる。この2つのスキャン画像をStitchingすることで、2つの分割視野から構成された広角スキャン画像を得ることができる。
(制御系)
以下、図1に示す眼科装置の制御系の一例を説明する。図3(A)には、図1の眼科装置の制御系のブロック図が示されている。図3(A)において、入力部220には、図示しない入力装置からの入力操作情報が入力される。入力装置は、キーボード装置、GUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)を用いたもの、タッチパネルディスプレイを用いたもの等が利用可能である。また近年、GUIを利用可能な各種の携帯型情報処理端末が利用されているが、これら携帯型情報処理端末を利用して各種の操作を行い、その操作内容を入力部220で受け付ける構成も可能である。例えば、入力部220は、眼底画像の一部を拡大するユーザ(眼科装置の操作者)からの指定を受け付ける。
演算部203は、CPUおよびその他のハードウェアを備え、各種の演算機能およびインターフェース機能を有したマイコンにより構成されている。図3(B)には、演算部203を機能ブロックとして把握した場合の構成が示されている。図3(B)に示す各機能部は、CPUの演算により所定の機能を発揮するようにソフトウェア的に構成されていてもよいし、少なくとも一部が専用のハードウェアにより構成されていてもよい。
図3(B)において、スキャナ制御部311は、眼底201への照射光(測定光)のスキャンを行うための処理を行う。スキャナ制御部311は、第1スキャナ117、第2スキャナ120および第3スキャナ123をどのように協働させて動作させるかに係り、各スキャナの動作タイミング等を決める処理を行う。例えば、図2に示すスキャンを行うため処理がスキャナ制御部311において行われる。スキャナ制御部311の出力は、第1スキャナ駆動部207、第2スキャナ駆動部208および第3スキャナ駆動部209に送られる。そして、これら駆動部により駆動され、スキャナ制御部311で決められた内容の動作が第1スキャナ117、第2スキャナ120および第3スキャナ123において行われる。
第1スキャナ117の反射鏡の可変角度範囲と眼底画像中におけるスキャン範囲との関係、第2スキャナ120のスキャナ中心と眼底画像の座標との関係、第2スキャナ120の可変角度範囲と眼底画像中におけるスキャン範囲との関係、第3スキャナ123のスキャナ中心と眼底画像の座標との関係、第3スキャナ123の可変角度範囲と眼底画像中におけるスキャン範囲との関係は予め調べられており、その内容は、メモリ205に記憶されている。
画像処理部315は、眼底画像に係る処理を行う。画像処理部315は、分割眼底画像作成部316を備えている。分割眼底画像作成部316は、分割視野において眼底反射光検出器113が検出した反射光のスキャンデータに基づき、網膜の分割画像を作成する。例えば、図2(A)の分割視野におけるスキャンが行われ、図2(A)の分割視野に対応する分割画像(この場合は、全体の視野の左上1/4の面積の分割された画像)が得られる。この網膜の分割画像は、メモリ205に記憶される。勿論、分割画像を図示しないディスプレイに表示することもできる。
分割眼底画像の作成は、以下のようにして行われる。まず、眼底反射光検出器113の出力は、ADC(A/Dコンバータ)202でデジタル信号に変換され、演算部203に送られる。眼底201(図1参照)へは、光源101からの光が走査されつつ照射されるが、この際の照射点は、スキャナ制御部311において決められており、ある瞬間における照射点の位置は、演算部203の側で判明している。そこで、ADC202の出力をスキャン位置に対応させて割り当て、画像の濃淡に変換することで、眼底の画像を得ることができる。この処理が分割眼底画像作成部316において行われる。なお、同様の処理を行い分割しない眼底画像を得ることも当然可能である。
画像処理部315は、眼底画像Stitching部317を備えている。眼底画像Stitching部317では、分割眼底画像作成部316が作成した複数の分割眼底画像をStitchingし、より広角の眼底画像を作成する。例えば、図2(A)〜(D)に示すように観察視野が4分割されている場合、図2(A)〜(D)に示す4つのパターンのスキャンによって得た4つの分割眼底画像をStitchingした眼底画像を得る処理が眼底画像Stitching部317において行われる。これらの処理は、被検眼の視線を固定したまま順次画像を取得し、連続した動作で行われる。例えば1つの分割画像を30fpsで取得するならば、視野分割数が4つの場合Stitching画像を7.5fpsで取得する。
波面収差検出部318は、波面検出部105のCCD107が撮像したレンズアレイ106の点像群(ハルトマン像)の解析(ゼルニケ近似多項式による波面解析)を行い、眼底301からの反射光の波面収差の状態を検出する。波面補正情報取得部319は、波面収差検出部318が得た波面の収差を抑えるようにデフォーマブルミラー111を変形させる制御情報を取得する。例えば、ここで対象となる波面の乱れを抑えるために、デフォーマブルミラー111の各点に与える制御電圧の値を取得する。
焦点情報検出部320は、波面収差検出部318が検出した収差状態から、焦点ズレに関する情報を抽出する。視度補正ミラー位置取得部321、焦点情報検出部320が抽出した焦点ズレを抑えるのに必要な視度補正ミラー126の位置を取得する。
すなわち、波面検出部105のCCD107が撮像したレンズアレイ106の点像群(ハルトマン像)の解析を行い、検出光の波面収差をゼルニケ多項式分解したとき、各項(次数)の係数は独立した波面の形に対応する。ゼルニケ係数のうちDefocus項に着目し、それが最小(理想的にはゼロ)となる視度補正ミラー126の位置を求め、それを焦点の調整情報として採用する。この処理が視度補正ミラー位置取得部321において行われる。
データテーブル作成部322は、分割視野毎に予め取得された後述する補償光学制御部318で用いられる制御パラメータおよび後述する視度補正ミラー制御部321で用いられる制御パラメータをまとめた後述の表1のようなデータテーブルを作成する。このデータテーブルは、メモリ205に記憶される。
補償光学制御部323は、波面補正情報取得部319で取得された波面の収差を抑えるためのデフォーマブルミラー111の制御情報に基づき、デフォーマブルミラー111の制御を行う。補償光学制御部323で用いられる制御パラメータは、複数の分割眼底画像に対応した分割視野毎に予め取得され、メモリ205に記憶される。そして、各分割眼底画像の撮像時に当該分割視野に対応した制御パラメータがメモリ205から読み出され、補償光学制御部323によるデフォーマブルミラー111の制御が行なわれ、当該視野における波面の補正が行なわれる
視度補正ミラー制御部324は、視度補正ミラー位置取得部321が取得したデータに基づき、視度補正ミラー126の位置を調整する処理を行う。視度補正ミラー制御部324で用いられる制御パラメータは、複数の分割眼底画像に対応した分割視野毎に予め取得され、メモリ205に記憶される。そして、各分割眼底画像の撮像時に当該分割視野に対応した制御パラメータがメモリ205から読み出され、視度補正ミラー制御部324による視度補正ミラー126の制御が行なわれ、当該視野における焦点の調整が行なわれる。その他、演算部203では、光源101のON/OFF制御のための処理等が行われる。
表示部204は、図1の眼科装置を操作するにあたって必要な各種の表示、および演算部203で得られた眼底画像の表示を行う。なお、表示部204として外部機器の表示機能を用いてもよい。この場合、図示しない表示制御部で表示させたい画像データに係る処理が行われ、それが当該外部機器に送信される。
メモリ205は、演算部203で行う演算に必要な各種の情報および演算部203で行う演算の手順を決めるプログラムが記憶されている。例えば、メモリ205には、上述した分割視野毎に予め取得された補償光学制御部323で用いられる制御パラメータおよび視度補正ミラー制御部324で用いられる制御パラメータをまとめた表1に例示するデータテーブルが記憶される。また、メモリ205には、各種の演算結果、その他得られた眼底画像の画像データ等が記憶される。
制御部206は、演算部203における処理の結果に基づき、スキャン動作の制御、光源101の制御、デフォーマブルミラー111の制御、視度補正ミラー126の位置制御等を行うための制御信号を生成する。
第1スキャナ駆動部207は、第1スキャナ117を動かすためのモータとその駆動回路を備えている。第2スキャナ駆動部208は、第2スキャナ120を動かすためのモータとその駆動回路を備えている。第3スキャナ駆動部209は、第3スキャナ123を動かすためのモータとその駆動回路を備えている。視度補正ミラー駆動部210は、視度補正ミラー126の光軸上における位置を決めるモータとその駆動回路を備えている。
(動作例)
図4は、図3の制御系で行われる動作の一例を示すフローチャートである。動作が開始されると、駆動部の原点への移動が行われる(ステップS101)。この処理では、各動作部を予め定めた原点に移動させる。次に、眼のアライメント処理と呼ばれる被検眼300(図1参照)と装置の光軸の位置合わせが行われる(ステップS102)。次に、被検眼300の網膜(眼底301)と固視標132とが共役な位置になるようにディオプター調整レンズ134の位置を光軸上で調整し、固視標132を用いて被検眼300の視線を固定する(ステップS103)。
次に、波面の補正情報と焦点の調整情報の事前測定を行う(ステップS104)。この処理では、広角視野内において複数設定された分割視野における波面の補正情報と焦点の調整情報を事前に取得する。
図5に図4のステップS104の処理の詳細な手順の一例を示す。まず、この例における視野の設定について説明する。図6には、A°×A°の視野をもつ広角視野(相対的に広角な視野)と該広角視野を7×7のマトリクス状に分解した数字1〜49で示される分割視野が示されている。ここで、各分割視野は、a°×a°の視野であり、a°は、2°以下の値が選択されている。
この例では、人間の眼を対象としているので、波面収差が一定と見なせる視野角すなわちアイソプラナティックパッチとしての2°を分割視野として選択している。勿論、aの値を2°より小さくすることも可能であるが、その場合、広角視野内の波面補償性能やピントの均一性が高くなるメリットが得られるが、他方で視野の分割数が増えるので、広角眼底画像を得るために必要な時間や処理量が増大する。また、aの値を2°より大きくすることも可能であるが、その場合は、処理の手間が減るメリットがあるが、広角視野内の波面補償性能やピントの均一性が低くなる。
ステップS104の事前測定が開始されると、まず設定された複数の分割視野の中の特定の一つが選択される(ステップS121)。例えば、図6の例であれば、最初に位置1の分割視野が選択される。特定の分割視野が選択されたら、当該視野内における測定光の走査しながらの眼底301への照射が行なわれる(ステップS122)。この処理では、光源101からのレーザ光の照射を眼底にスキャンしつつ行い、その反射光が眼底反射光検出器113で検出される。この際、図2(A)に示すようにレーザ光を眼底の当該分割視野に対応する一部の領域に対する測定光のスキャンが行われる。
このスキャン光の眼底からの反射光は、波面検出部105で検出され、演算部203で解析される。まず、演算部203の波面収差検出部318において、上記の反射光に係り波面検出部105のCCD107が撮像したレンズアレイ106の点像群(ハルトマン像)の解析(ゼルニケ近似多項式による波面解析)が行なわれ、波面の収差の状態が測定される(ステップS123)。
波面収差の情報を得たら、この波面の収差を抑えるための波面補正情報を取得する(ステップS124)。この例では、波面補正情報として、波面の収差を抑えるようにデフォーマブルミラー111を変形させるのに必要なデフォーマブルミラー111の各点に与える制御電圧の値を取得する。この処理は、波面補正情報取得部319において行われる。例えば、デフォーマブルミラー111がマトリクス状に配置された8×8のアクチュエータを備えた可変形鏡である場合、検出された波面の収差を解消するのに必要な64個のアクチュエータに与える制御電圧の組み合わせが波面補正情報となる。
波面補正情報を取得する方法としては、予め複数の収差のパターンに対応した、当該収差を抑えるためのデフォーマブルミラー111の形状を調べておき、検出した収差の状態に応じて、先の予め調べておいたデフォーマブルミラー111の形状を得るためのアクチュエータの制御電圧の組み合わせを取得する方法が挙げられる。
勿論、(1)デフォーマブルミラー111を実際に変形させ、(2)その結果得られる波面収差の変化を検出し、といった動作を繰り返し、収差が抑えられる状態を検出しつつ、収差を抑えるためのアクチュエータの制御電圧の最適な組み合わせに漸次迫る方法も可能である。また、予め用意した形状から更にデフォーマブルミラー111を変形させ、波面収差の抑制効果を更に追求する処理も可能である。
ステップS124の後、ステップS125に進む。ステップS125では、ステップS123で行われたゼルニケ近似多項式による波面解析で得られたDefocus成分に対応する項に着目し、Defocus成分の検出が行なわれる(ステップS125)。この処理は、焦点情報検出部320において行われる。Defocus成分を検出したら、このDefocus成分を最小にするのに必要な視度補正ミラー126の位置のデータを取得する(ステップS126)。この処理は、視度補正ミラー位置取得部321において行われる。
視度補正ミラー126の位置を取得する方法としては、予めDefocus成分とそれを抑えるのに必要な視度補正ミラー126の位置との関係を調べておき、検出したDefocus成分に対応した視度補正ミラー126の位置のデータを得る方法が挙げられる。勿論、(1)視度補正ミラー126を実際に動かし、(2)その結果得られるDefocus成分の変化を検出し、といった動作を繰り返し、視度補正ミラー126に位置を決める処理も可能である。
ステップS126の後、更に次の分割視野があるか否か、が判定され、次の分割視野があれば、ステップS121以下の処理が再度実行される。例えば、最初に図6の符号1の分割視野が選択された場合、次に符号2の分割視野が選択され、といった順番で次々と設定された分割視野についてステップS121〜S126の処理が実行される。
ステップS126の後、次の分割視野がない場合、図4のステップS104で示される事前測定の処理を終了し、図4のステップS105に進む。
図4のステップS105では、ステップS104の事前測定で得た各分割視野における波面の補正情報と焦点の調整情報のデータテーブルを作成する。この処理は、図2のデータテーブル作成部322において行われる。下記表1にステップS105で作成したデータテーブルの一例を示す。ここでは、一例として分割視野の数が7×7=49個であり、デフォーマブルミラー111のアクチュエータの数が8×8=64個の場合が示されている。勿論、分割視野の数やデフォーマブルミラー111のアクチュエータの数は、ここに例示する数に限定されない。
Figure 0006543483
表1において、H1・・・H49は、各分割視野における第2スキャナ120のスキャン中心を指定する角度データ(電圧値)である。V1・・・V49は、各分割視野における第3スキャナ123のスキャン中心を指定する角度データ(電圧値)である。Z1・・・Z49は、各分割視野における視度補正ミラー126の光軸上における位置の基準値からの位置である。D は、n番目の分割視野におけるデフォーマブルミラー111のm番目のアクチュエータの制御電圧である。
データテーブルを作成した状態で、眼科装置100を操作する操作者(観察者)による撮影範囲の指定を受け付ける(ステップS106)。例えば、ステップS106では、操作者(観察者)により、図6の16,17,18,23,24,25,30,31,32が撮影対象の分割視野として選択される。撮影の範囲が指定されたら、その中の一つが選択され(ステップS107)、この選択された分割視野でのスキャンを行うために表1に従って第2スキャナ120と第3スキャナ123のスキャン中心を移動させ、第1スキャナ117と第2スキャナ120を用いて選択された分割視野におけるSLO測定光のスキャンを行う(ステップS108)。
この際、表1のデータテーブルに従って、視度補正ミラー126の位置およびデフォーマブルミラー111の形状の制御が行なわれた状態でSLO測定光のスキャンが行われる。例えば、分割視野位置16が選択されているのであれば、視度補正ミラー126の位置をZ16とし、デフォーマブルミラー111の形状制御電圧を「D16 1、D16 2、D16 3、・・・・D16 64」として上でSLO測定光のスキャンが行われる。
そして、SLO測定光のスキャンを行った際に得られる反射光に基づき、当該分割視野に対応する眼底画像(分割眼底画像)を作成する(ステップS109)。この処理は、図2の分割眼底画像作成部316において行われる。分割眼底画像を得たら、次の分割視野があるか否か、が判定され(ステップS110)、次の分割視野がある場合、次の分割視野を対象に、ステップS107以下の処理を行う。次の分割視野がない場合、この段階で得られている複数の分割眼底画像をStitchingし、広角視野の眼底画像を作成する処理を行う(ステップS111)。この処理は、図2の眼底画像Stitching部317において行われる。
例えば、図6の16,17,18,23,24,25,30,31,32が撮影対象の分割視野として選択された場合、これら分割視野に対応した9個の分割画像が得られ、更にこの9個の分割画像をStitchingした広角画像が得られる。ここで、9個の分割視野のそれぞれにおいて、表1のデータに基づき、個別に波面収差の補正およびピントの調整が行なわれる。
(優位性)
第3のスキャナを用いることで、広角化、高分解能、高速化を追求したAO-SLOが得られる。また、広角化した場合に問題となる場所によるピントのずれや場所による収差の違いに対応でき、広角でありながら視野全域で細部の分解能を失わないAO-SLO眼底画像を得ることができる。
例えば、図6の場合において、撮影対象として選択された複数の分割視野のそれぞれにおいて、ステップS107〜S109の処理が行なわれ、各分割視野に対応した分割眼底画像を得る。この際、各分割視野において、予め取得した波面補正の情報と焦点位置を調整する情報とに基づいて、波面補正と焦点の位置の調整(ピントの調整)が行なわれる。このため、広角であってもAO-SLO特有の高分解能な鮮明な画質を視野全域で得ることができる。
(その他)
第2スキャナと第3スキャナがユニット化されたものを用いることもできる。この場合、第1の軸を中心とした往復回転が可能で、且つ、第1の軸に直交する第2の軸を中心にミラーを回転できる構造のガルバノスキャナが用いられる。
第1のスキャンと第3のスキャナをユニット化されたものを用いることもできる。この場合、レゾナントスキャナとガルバノスキャナとを同軸構造とし、ミラーをレゾナントスキャナによる駆動とガルバノスキャナによる駆動のいずれか一方で動かすことができる。
分割視野は、隣接する分割視野と一部が重なっていてもよい。勿論、重なる部分がなくてもよい。これは分割眼底画像についても同様である。また分割視野の分割数は、図6の例に限定されず、3×3分割や5×5分割、あるいは5×3分割といった分割が可能である。
本発明は、眼科装置に利用することができる。
100…眼科装置、101…光源、102…光ファイバ、103…レンズ(コリメータレンズ)、104…ハーフミラー、105…波面検出部、106…レンズアレイ、107…CCD、109…光学系、110…ハーフミラー、111…レンズ、112…ピンホール、113…眼底反射光検出器、114…第1スキャナ、115…リレーレンズ、116…リレーレンズ、117…デフォーマブルミラー、118…リレーレンズ、119…リレーレンズ、120…第2スキャナ、121…リレーレンズ、122…リレーレンズ、123…第3スキャナ、124…リレーレンズ、125…視度補正機構、126…視度補正ミラー、127…視度補正ミラー、128…レンズ系、129…ダイクロイックミラー、130…ダイクロイックミラー、131…対物レンズ、132…固視標、133…撮像素子、134…ディオプター調整レンズ、300…被検眼、301…眼底。

Claims (3)

  1. 眼底に測定光を照射する測定光照射部と、
    前記測定光を前記眼底に走査しつつ照射するスキャナ部と、
    複数に分割設定された複数の範囲毎に前記測定光を走査しつつ照射する制御を前記スキャナ部に対して行うスキャナ制御部と、
    前記測定光の前記眼底からの反射光を検出する反射光検出部と、
    前記反射光に基づき前記眼底の眼底画像を作成する眼底画像作成部と、
    前記複数の範囲毎に予め取得された前記反射光の波面の補正情報および前記測定光の焦点の調整情報を記憶した記憶部と、
    前記波面の補正情報に基づき前記反射光における波面の補正を行う波面補正部と、
    前記焦点の調整情報に基づき前記測定光の焦点を調整する焦点調整部と
    を備え、
    前記波面の補正および前記焦点の調整は、前記測定光を走査しつつ照射する前記複数の範囲毎に行われ、
    前記スキャナ部は、
    第1の方向における前記測定光の相対的に高速な走査を行う第1のスキャナと、
    前記第1の方向と直交する方向における前記測定光の相対的に低速な走査を行い、前記第1のスキャナによる走査範囲を前記第1の方向と直交する方向に移動させることが可能な第2のスキャナと、
    前記第1のスキャナによる走査範囲を前記第1の方向に移動させることが可能な第3のスキャナと
    を備え、
    前記スキャナ制御部は、
    第1の眼底画像を得るために、前記第1のスキャナと前記第2のスキャナにより、前記眼底の第1の領域に対して前記測定光を走査しつつ照射する第1の制御と、
    前記第1の眼底画像と少なくとも一部が異なる第2の眼底画像を得るために、第3のスキャナにより、前記第1の制御における前記第1のスキャナの走査中心の位置を変更する第2の制御と、
    前記第2の制御の後、前記第2の眼底画像を得るために、前記第1のスキャナと前記第2のスキャナにより、前記眼底の第2の領域に対して前記測定光を走査しつつ照射する第3の制御と
    を行い、
    前記第1の制御において、予め取得された前記第1の領域に対応した前記波面の補正情報および前記焦点の調整情報に基づき、前記波面の補正および焦点の調整が行われ、
    前記第3の制御において、予め取得された前記第2の領域に対応した前記波面の補正情報および前記焦点の調整情報に基づき、前記波面の補正および焦点の調整が行われ、
    前記第2のスキャナのスキャン中心の位置と、前記第3のスキャナのスキャン中心の位置とを指定することで、前記複数の範囲の中の一つが指定されることを特徴とする眼科装置。
  2. 前記複数の範囲全てにおける波面の補正情報を予め取得する事前測定が行われる請求項1に記載の眼科装置。
  3. 前記波面の補正情報および前記焦点の調整情報は、波面収差が特定の範囲内と見なせる領域毎に取得されていることを特徴とする請求項1または2に記載の眼科装置。
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