以下、図面を用いて本実施の形態に係る減速機付モータ10について説明する。減速機付モータ10は、自動車等の車両に搭載されたワイパ装置(図示省略)の駆動源として用いられている。図1に示されるように、減速機付モータ10は、モータ本体12と、モータ本体12の回転を減速するための「歯車機構」としてのウォームギヤ機構(減速機構)22と、モータ本体12を駆動制御するための回路基板80(図2〜図4参照)と、を含んで構成されている。また、減速機付モータ10は、ウォームギヤ機構22及び回路基板80を収容したハウジング30と、ハウジング30内に収容されたインナカバー90(図3〜図5参照)と、有している。以下、具体的に説明する。
図1に示されるように、モータ本体12は、所謂ブラシ付直流モータとして構成されている。モータ本体12は、略有底円筒状のモータヨーク14を備えている。このモータヨーク14の内周面には、複数の永久磁石(図示省略)が固定されており、永久磁石はモータヨーク14の周方向に沿って交互に磁極が異なるように配置されている。
モータヨーク14内には、永久磁石の内側において、アーマチャ16が回転自在に収容されている。アーマチャ16は回転軸18を含んで構成されており、回転軸18は、略丸棒状に形成されて、モータヨーク14と同軸上に配置されている。そして、回転軸18の軸方向一方側(図1の矢印A方向側)の端部が、軸受(図示省略)を介してモータヨーク14の底部に回転自在に支持されている。一方、回転軸18の軸方向他方側(図1の矢印B方向側)の端部は、後述するギヤハウジング32内に配置されて、ギヤハウジング32に回転自在に支持されている。また、回転軸18の軸方向他端側の部分には、ウォームギヤ機構22を構成するウォーム24が一体に形成されており、ウォーム24の外周にウォームギヤ24Aが形成されている。
また、モータ本体12はブラシホルダ装置20を備えている。ブラシホルダ装置20は、略環状に形成されて、回転軸18の軸方向中間部において、回転軸18の径方向外側に配置されている。さらに、ブラシホルダ装置20は複数のブラシ(図示省略)を備えており、ブラシはアーマチャ16の整流子(図示省略)に摺接可能に当接されている。
ハウジング30は、略箱形状に形成されると共に、モータヨーク14に対して回転軸18の軸方向他方側(モータヨーク14の開口部側)に配置されている。図3に示されるように、ハウジング30は、ウォーム24(回転軸18)の軸方向に対して直交する方向(以下、この方向を「上下方向」という)に分割されるように構成されている。すなわち、ハウジング30は、ハウジング30の下方側(図3の矢印D方向側)の部分を構成するギヤハウジング32と、ハウジング30の上方側(図3の矢印C方向側)の部分を構成する「ハウジングカバー」としてのプレートカバー70と、を有している。
図4に示されるように、ギヤハウジング32は、アルミニウム合金等の金属材によって構成され、ダイカスト成形等の手法によって製作されると共に、全体として上方側(図5及び図4の矢印C方向側)へ開口された略箱形状に形成されている。ギヤハウジング32には、前述したモータ本体12のブラシホルダ装置20(図4では不図示)を収容支持するためのホルダ収容部34が一体に形成されている。ホルダ収容部34は、前述したモータヨーク14の開口部と対向する位置に配置されると共に、回転軸18の軸方向一方側(図4の矢印A方向側)へ開放された略有底円筒状に形成されている。そして、ホルダ収容部34がモータヨーク14の開口部に固定されて、モータヨーク14の開口部が閉塞されている。さらに、ホルダ収容部34の底壁には、挿通孔34Aが回転軸18の軸方向に貫通形成されており、ウォーム24(回転軸18)が挿通孔34A内にホルダ収容部34側(モータヨーク14側)から挿通されている。
また、図3にも示されるように、ギヤハウジング32には、ウォームギヤ機構22を収容するための歯車収容室35が形成されている。この歯車収容室35は、ウォーム24を収容するためのウォーム収容部36を備えている。ウォーム収容部36は、ホルダ収容部34に対して回転軸18の軸方向他方側(図4の矢印B方向側)に配置されると共に、ウォーム24(回転軸18)の軸方向に沿って形成されている。そして、ウォーム収容部36内とホルダ収容部34内とが挿通孔34Aによって連通されている。これにより、回転軸18をウォーム収容部36内へ収容させる際には、回転軸18の軸方向一方側から回転軸18を挿通孔34A内に挿通させつつウォーム収容部36内へ収容させるようになっている。
さらに、上記の歯車収容室35は、ウォームホイール収容部38を備えている。ウォームホイール収容部38は、ウォーム収容部36の側方(ウォーム24の軸方向から見て上下方向に対する直交方向の一方側(図3及び図4の矢印E方向側))に隣接して配置されている。また、ウォームホイール収容部38は、上方側へ開放された断面略円形の凹状に形成されており、ウォームホイール収容部38内とウォーム収容部36内とが連通されている。
ウォームホイール収容部38内には、ウォーム24と共にウォームギヤ機構22を構成する「歯車」としての略円盤状のウォームホイール26が収容されている。ウォームホイール26はウォームホイール収容部38と同軸上に配置されており、ウォームホイール26の軸方向が上下方向と一致している。また、図3に示されるように、ウォームホイール26の軸心部には、略円柱状の出力軸28が設けられており、出力軸28はウォームホイール26から下方側へ突出されている。この出力軸28は、ギヤハウジング32の底壁32Aに形成された略円筒形状の筒部32B内に同軸上に配置されて、回転自在に支持されている。そして、出力軸28は、車両のワイパ装置を構成するピボット軸(図示省略)にリンク機構などを介して駆動連結されている。さらに、ウォームホイール26の外周部が回転軸18のウォーム24と噛合されている。これにより、回転軸18が回転すると、当該回転がウォームギヤ機構22によって減速されて出力軸28に伝達され、出力軸28が回転するようになっている。
また、図3及び図4に示されるように、ギヤハウジング32には、略ブロック状の放熱ブロック40が一体に形成されている。放熱ブロック40は、ウォーム24の軸方向から見て、ウォーム収容部36(ウォーム24)に対してウォームホイール収容部38(ウォームホイール26)とは反対側(図3及び図4の矢印F方向側)に隣接して配置されている。また、図4及び図5に示されるように、放熱ブロック40は、ギヤハウジング32の開口側から見て、ウォーム24の軸方向を長手方向とする略逆L字形状に形成されている。具体的には、放熱ブロック40は、ウォーム24の軸方向を長手方向とする略矩形状に形成されたブロック本体部42と、ブロック本体部42における一端部からウォームホイール26側へ延出されたブロック延出部46と、を含んで構成されている。このブロック延出部46には、図示しない軸受が設けられており、該軸受によって回転軸18の軸方向他端部が回転自在に支持されている。
さらに、図6に示されるように、ブロック本体部42は張出部44を有している。この張出部44は、ウォーム24の上方側を覆うようにウォーム収容部36側へ張出される(せり出される)と共に、ウォーム24の軸方向に亘って延在されている。換言すると、張出部44が、ウォーム24の上方側において、ブロック本体部42におけるウォーム24の側方に配置された側面42Aからウォーム24側へ張出されている(せり出されている)。これにより、張出部44の側面44A及び下面44Bが、ブロック本体部42の側面42Aと共に、ウォーム収容部36の内周面の一部を構成している。なお、上記の側面44Aは、放熱ブロック40の外周面(側面)40Aのうち歯車収容室35の内周面を構成する側面である。また、ギヤハウジング32の開口側から見てウォーム24と張出部44とがラップして配置されている。なお、ウォームホイール26をウォームホイール収容部38内に収容する際に、ウォームホイール26が張出部44に干渉しないように、張出部44の突出量(張出し量)が設定されている。
また、図4及び図7に示されるように、放熱ブロック40の上部には、受熱部52が形成されている。この受熱部52におけるブロック本体部42を構成する部分の長手方向中間部は、上方側から見て、ウォーム24側へ開放された略U字形状に抉り部54が凹設されている。これにより、放熱ブロック40(ブロック本体部42)の外周部には、抉り部54が形成される。さらに、受熱部52の上面は受熱面52Aとされている。この受熱面52Aは、連続した平面として形成されており、上方側から見て、後述する回路基板80に搭載されるFETなどの複数のパワー系素子82とラップする位置に配置されている。
図6に示されるように、張出部44の側面44Aには、「段差部」としてのハウジング側段差部56が形成されている。このハウジング側段差部56は、ウォーム24の軸方向から見て、上方側且つウォームホイール26側へ開放された段差状に形成されて、ウォーム24の軸方向に沿って延在されている。そして、ハウジング側段差部56において上下方向(ギヤハウジング32の開口方向)と直交する方向に沿って形成された面が段差面56Aとされており、段差面56Aは、上述した抉り部54の底面よりも下方側(ウォーム24側)に配置されている。
さらに、図2に示されるように、ギヤハウジング32の外面部分には、放熱ブロック40に対応する位置において、複数の凹設部60が形成されている。この凹設部60は、ギヤハウジング32の外側面から放熱ブロック40内へ向けて深く堀込まれるように凹設されて、ウォームホイール26の下方側へ開放されている。また、この凹設部60に隣接して凹設部60を挟むように複数の放熱フィン62がギヤハウジング32の外側面から立設形成されている。
一方、図3に示されるように、ギヤハウジング32と共にハウジング30を構成するプレートカバー70は、絶縁性を有する樹脂材料で製作されており、ギヤハウジング32の開口側(上方側)に配置されている。このプレートカバー70は、下方側へ開口された略直方体箱状に形成されている。図3及び図8に示されるように、プレートカバー70の開口側の端部には、プレートカバー70の開口とは反対側(プレートカバー70の外側)へ突出したフランジ部70Aが、上記開口側端部の全周にわたって形成されている。このフランジ部70Aは、ギヤハウジング32の開口部と対向して配置されている。ギヤハウジング32の開口部には、プレートカバー70側(上方側)へ向けて突出した突出壁32Cが全周にわたって形成されている。
また、上記のフランジ部70Aの下面と突出壁32Cの上端面との間には、例えばブチルゴムからなるシール部材72が介在している。このシール部材72は、例えば環状に形成されると共に、断面円形状に形成されており、フランジ部70Aの下面に形成された断面半円形状の凹部に嵌め込まれている。そして、このシール部材72を間に挟んでフランジ部70Aと突出壁32Cとが突き合わされ(突き当てられ)ており、当該突き合わせ状態でプレートカバー70がビス止め等の手段によりギヤハウジング32に固定(結合)されている。このプレートカバー70によってギヤハウジング32の開口部が閉塞されており、プレートカバー70のフランジ部70Aとギヤハウジング32の突出壁32Cとの合わせ目(継ぎ目)74が、シール部材72によってシールされている。この合わせ目74の一部であるブロック隣接部74Aは、放熱ブロック40に隣接(近接)して配置されている。このブロック隣接部74Aは、合わせ目74のうち、放熱ブロック40に対してウォームギヤ機構22と反対側に位置する部位と、放熱ブロック40に対してホルダ収容部34とは反対側に位置する部位とによって構成されている。
上記のハウジング30内には回路基板80が収容されている。回路基板80は、略矩形板状に形成されており、ウォームギヤ機構22に対して板厚方向に対向して配置されている。この回路基板80は、板厚方向を上下方向(ウォームホイール26の軸方向)にして放熱ブロック40の上方側に配置されている。具体的には、回路基板80の下面80A(他側面)の一部が、放熱ブロック40の受熱面52Aと上下方向に対向して配置されており、回路基板80が、上方側からウォームホイール26及びウォーム24を覆うように、放熱ブロック40の受熱面52Aの上方側に固定的に組付けられている。これにより、放熱ブロック40に形成された段差面56Aと回路基板80の下面80Aとが上下方向に対向して配置されている(図6参照)。
また、図4に示されるように、回路基板80には、モータ本体12を駆動制御するためのFET等の複数(本実施の形態では4つ)のパワー系素子82と、回転軸18(出力軸28)の回転を制御するための制御系素子84とが実装されている。制御系素子84には、CPU、メモリ、コンデンサ、及び回転センサとしての磁気センサ85(図3及び図9参照)が含まれている。そして、これらパワー系素子82及び制御系素子84の一部の素子は、回路基板80の上面80B(一側面)に配置されており、制御系素子84のうちCPUやメモリ、磁気センサ85等の素子が、回路基板80の下面80A(他側面:片方の面)における放熱ブロック40(より詳しくは受熱面52A)と対向しない位置に配置されている(図3参照)。
上記の磁気センサ85は、ウォームホイール26の上端面(軸方向一端面:回路基板80側の面)に出力軸28の軸線と同軸状態で取り付けられたセンサマグネット87(図4、図5及び図9参照)と共に回転検出部を構成している。このセンサマグネット87は、ここでは円盤状に形成されている。また、図4に示されるように、ウォームホイール26の上端面の中央部には、円柱状のボス部26Aが同軸的に突出形成されている。そして、このボス部26Aにおける回路基板80側の面に、センサマグネット87が同軸的に取り付けられている。具体的には、ボス部26Aにおける回路基板80側の面には、センサマグネット87をウォームホイール26に保持するための一対の保持部33が設けられている。これらの保持部33は、ウォームホイール26と同心の円弧状に形成されており、ウォームホイール26の軸線(即ち、出力軸28の軸線)を介して互いに反対側に位置している。これらの保持部33がセンサマグネット87の外周に接触することにより、センサマグネット87がウォームホイール26に対する半径方向の変位を規制されている。
また、上記各保持部33の湾曲方向中央部には、それぞれ円柱状の回止部33Aが形成されている。各回止部33Aは、ウォームホイール26の軸方向を軸方向としており、各保持部33の湾曲方向両端側よりもウォームホイール26の軸心側に突出している。これらの回止部33Aに対応してセンサマグネット87の外周部には、ウォームホイール26の軸方向から見て半円形状をなす一対の切欠部(図示省略)が形成されており、これらの切欠部に各回止部33Aが嵌り込んでいる。即ち、センサマグネット87の1組のN極とS極の境界位置に対応した外周部に一対の切欠部が180度の間隔で形成されており、これに対応して各回止部33Aが嵌り込むように配置されている。これにより、センサマグネット87がウォームホイール26に対する相対回転を規制されている。
さらに、各回止部33Aの先端部は、センサマグネット87よりも回路基板80側へ突出しており、当該突出部分には、各回止部33Aの基端側よりも直径を拡大された拡径部33A1が設けられている。各拡径部33A1は、各回止部33Aの先端部を超音波やが熱により軟化させた後で固化したものであり、これらの拡径部33A1がセンサマグネット87における回路基板80側の面に引っ掛かっている。これにより、センサマグネット87がウォームホイール26に対する軸方向の変位を規制されている。
このセンサマグネット87には、例えば1組のN極とS極が径方向に隣接して其々180度の角度範囲に亘って着磁されている。そして、上記の磁気センサ85が、センサマグネット87の磁気(磁極及び磁束変化の少なくとも一方)を検出することにより、回路基板80のCPUが、ウォームホイール26すなわち出力軸28の回転位置を検知する。この回路基板80は、モータ本体12のブラシホルダ装置20を介してアーマチャ16と電気的に接続されており、この回路基板80のCPUは、上記のように検知した出力軸28の回転位置に基づいてモータ本体12の駆動を制御するように構成されている。
また、上記の回路基板80に実装された複数のパワー系素子82は、放熱ブロック40の受熱面52Aに対応する位置に配置されている。具体的には、複数のパワー系素子82が、上方側から見て、放熱ブロック40の受熱面52Aとラップした位置(換言すると対向した位置)に配置されている。さらに、回路基板80の上面80Bには、ウォーム24の軸方向に並んだパワー系素子82の間において、電子部品86が配置されている。そして、電子部品86のターミナルが、回路基板80から下方側へ突出されている。この電子部品86は、抉り部54の上方に配置されている。
さらに、図6に示されるように、回路基板80の下面80Aと受熱面52Aとの間(詳しくは、上述した回路基板80と受熱面52Aとの間の隙間)には、「熱伝導材」としての熱伝導性合成樹脂88が介在されている。この熱伝導性合成樹脂88は、粘性、熱伝導性、及び電気絶縁性を有した粘土状の合成樹脂からなり、受熱面52Aに塗布されたものである。この熱伝導性合成樹脂88は、回路基板80の下面80Aと放熱ブロック40の受熱面52Aとの間に挟まれており、この熱伝導性合成樹脂88を介して受熱面52A(放熱ブロック40)と回路基板80の下面80Aとが密着接触されている。これにより、回路基板80のパワー系素子82によって発生する熱を受熱面52Aが受けて、当該熱がギヤハウジング32に伝達されると共に、ギヤハウジング32の放熱フィン62等から外側へ放熱される構成になっている。
一方、図3〜図5に示されるように、インナカバー90は、絶縁性を有する樹脂材料で製作されており、ハウジング30内に収容されている。このインナカバー90は、ハウジング30内を、回路基板80が収容された基板収容室37と、ウォームギヤ機構22が収容された歯車収容室35とに仕切っている。このインナカバー90は、回路基板80とウォームギヤ機構22との間に配置されたカバー本体91と、カバー本体91から前述した合わせ目74のブロック隣接部74A側へ延出された「介在部」としての枠部92と、カバー本体91及び枠部92からホルダ収容部34側へ延出されたホルダカバー部93とを一体に備えており、全体として略矩形板状に形成されている。
ホルダカバー部93は、カバー本体91及び枠部92よりも上方側へ膨出しており、ホルダ収容部34と基板収容室37とを仕切っている。但し、このホルダカバー部93の中央部には、ブラシホルダ装置20のターミナル20Aを露出させるための開口部94が形成されている。
カバー本体91は、回路基板80とウォームギヤ機構22との対向方向(上下方向:ウォームホイール26の軸方向)を板厚方向とする板状に形成されており、回路基板80の下面80Aに沿って延在されている。このカバー本体91は、ウォーム24及びウォームホイール26に塗布されたグリスや、ウォームホイール26の摩耗物等が、歯車収容室35から基板収容室37に侵入することを防止する異物侵入防止カバーとしての機能を有している。
このカバー本体91の下面(ギヤハウジング32側の面)は、ギヤハウジング32の上端部の外周側における突出壁32Cの内側に形成されたカバー接触面31に面接触している。これにより、カバー本体91がギヤハウジング32に支持されている。また、カバー本体91の外周部には、一対のネジ孔95が形成されている。これらのネジ孔95は、ウォームホイール26の軸線に対して互いに反対側に位置している。これらのネジ孔95に挿通されたネジが、ギヤハウジングに形成された雌ねじ部39に螺合することにより、インナカバー90がギヤハウジング32に固定されている。
カバー本体91の中央側には、カバー本体91を板厚方向に貫通した円形の連通孔97が形成されている。この連通孔97は、ウォームホイール26と同心状に位置するように形成されており、センサマグネット87に対してウォームホイール26の軸方向にラップ(対向)している。また、この連通孔97は、ウォームホイール26のボス部26Aよりも大径に形成されると共に、図9に示されるように、回路基板80側からウォームホイール26側へ向かうほど内径が拡大(漸増)するように円錐台状に形成されている。この連通孔97の内側には、ボス部26Aの先端側が挿入状態で配置されており、センサマグネット87の少なくとも一部(ここでは全部)が連通孔97の内側に位置している。
また、上記のカバー本体91は、回路基板80側の面(上面)から板厚方向に突出したリブ99を備えている。このリブ99は、同心円状に配置された複数(ここでは3つ)の環状リブ99Aを備えている。複数の環状リブ99Aは、連通孔97と同心状に形成されている。複数の環状リブ99Aのうち最も内側に位置する環状リブ99Aは、「孔縁リブ」であり、連通孔97の孔縁部に形成されている。また、最も外側に位置する環状リブ99Aは、カバー本体91の外周側に形成されている。さらに、上記のリブ99は、最も内側に位置する環状リブ99Aから最も外側に位置する環状リブ99Aへ向けて放射状に延びる複数(ここでは8つ)の放射状リブ99Bを備えている。これらの放射状リブ99Bは、環状リブ99Aの周方向に等角度間隔に並んで配置されている。これらの放射状リブ99B及び環状リブ99Aからなるリブ99は、全体として略蜘蛛の巣状に形成されており、当該リブ99によってカバー本体91の面剛性が向上している。なお、以下の説明では、上記の「最も内側に位置する環状リブ99A」を、環状リブ99A1と称する場合がある。
また、上記のカバー本体91は、環状リブ99A1の内周面から連通孔97の中心側へ向けて突出したフィルタ取付部106を有している。このフィルタ取付部106は、連通孔97と同心のリング状に形成されている。このフィルタ取付部106における回路基板80側の面には、通気フィルタとしてのメンブレンフィルタ108が取り付けられている。このメンブレンフィルタ108は、回路基板80とウォームギヤ機構22との対向方向を厚さ方向とする薄膜状(薄いシート状)に形成されると共に、当該対向方向から見て円形状に形成されており、環状リブ99A1の内側に同心状に配置されている。このメンブレンフィルタ108の外周部は、フィルタ取付部106の上面(回路基板80側の面)に重ね合わされており、熱溶着や接着剤等の手段によってフィルタ取付部106に固定(接合)されている。このメンブレンフィルタ108は、多数の孔が形成された多孔性の膜であり、通気性を有している。このメンブレンフィルタ108としては、孔径が0.5μm〜0.6μm程度のものが好ましい。
一方、枠部92は、カバー本体91における放熱ブロック40側の端部から一体に延出されており、上方側から見て略矩形枠状に形成されている。この枠部92は、放熱ブロック40の周囲を囲むようにカバー本体91とは反対側まで延びており、前述した合わせ目74のブロック隣接部74Aと、放熱ブロック40との間に介在されている。
具体的には、枠部92の中央部には、放熱ブロック40が内側に嵌合した開口部110が形成されている。この開口部110は、上方側から見て、放熱ブロック40の形状に倣って全体としてウォーム24の軸方向を長手方向とする略逆L字形状に形成されている。この開口部110の縁部は、上下方向に延びる周壁112によって構成されている。この周壁112は、放熱ブロック40の周囲を囲むように開口部110の縁部の全周にわたって形成されており、放熱ブロック40の外周面40Aに接触している(図3、図6、図8参照)。
具体的には、この周壁112は、図5に示されるように、放熱ブロック40に対してウォームギヤ機構22側から接触した第1壁部112Aと、放熱ブロック40に対してホルダ収容部34側から接触した第2壁部112Bと、放熱ブロック40に対してウォームギヤ機構22とは反対側から接触した第3壁部112Cと、放熱ブロック40に対してホルダ収容部34とは反対側から接触した第4壁部112Dと、を有している。第1壁部112Aの長手方向中間部には、上方側から見て長円形状のターミナル収容部114が形成されている。このターミナル収容部114は、上方側へ開口した有底箱状に形成されており、下部側が抉り部54の内側に嵌合している。このターミナル収容部114の内側には、前述した電子部品86のターミナルが配置されている。なお、本実施の形態では、インナカバー90において、第1壁部112Aよりもウォームギヤ機構22側(図5等に示される矢印E方向側)の部位が、カバー本体91とされている。
上述の周壁112は、放熱ブロック40よりも回路基板80側へ延びており(突出しており)、上端部が回路基板80の下面80Aに対して当接又は近接して対向している。これにより、熱伝導性合成樹脂88が、周壁112と放熱ブロック40と回路基板80とによって取り囲まれている。換言すれば、熱伝導性合成樹脂88は、周壁112と放熱ブロック40と回路基板80とによって密閉又は略密閉された空間内に区画されて配置(収容)されている。
また、枠部92は、周壁112の第3壁部112Cの下端部からウォームギヤ機構22とは反対側へ延びる外側延出壁116を有している。この外側延出壁116は、図8に示されるように、放熱ブロック40の下端部とギヤハウジング32の突出壁32Cとの間に延在しており、下面80Aがギヤハウジング32のカバー接触面31に接触している。この外側延出壁116の先端部(図8の矢印F方向側の端部)からは、上方側へ向けて外周突出壁118が延出されている。この外周突出壁118は、図5に示されるように、インナカバー90の外周部の略全域にわたって形成されており、突出壁32Cの内周面に接触している。この外周突出壁118の上端面は、突出壁32Cの上端面と同一面を形成するように配置されており、プレートカバー70のフランジ部70Aに対してシール部材72を介して接触している。これにより、外側延出壁116の先端部を含むインナカバー90の外周部の略全域が、プレートカバー70によってギヤハウジング32のカバー接触面31に押し付けられている。なお、上記の外側延出壁116は、周壁112の第4壁部112Dの下端部からホルダ収容部34とは反対側へ延びる部位を有しているが、当該部位の先端部には外周突出壁118が形成されておらず、当該部位がカバー本体91に一体に連続している。
また、放熱ブロック40におけるウォーム収容部36側では、図6に示されるように、周壁112の第1壁部112Aの下端部から突出部96が一体に突出形成されている。突出部96は、第1壁部112Aから放熱ブロック40側へ突出されると共に、ウォーム24の軸方向から見た断面視で略矩形状に形成されて、ウォーム24の軸方向に延在されている。この突出部96は、カバー本体91の下面に対して上方側に配置されている。この突出部96の下方側でインナカバー90には、下方側(ウォーム24側)及び放熱ブロック40側へ開放された段差状のカバー側段差部98が形成されている。そして、放熱ブロック40のハウジング側段差部56にカバー側段差部98が嵌め合わされて、ハウジング側段差部56における段差面56Aに対して上方側に突出部96が隣接配置されるようになっている。これにより、カバー側段差部98(突出部96)及びハウジング側段差部56によってラビリンス構造100が形成されており、カバー側段差部98(突出部96)及びハウジング側段差部56が、上方側から見てウォーム24とラップして配置されている。
また、放熱ブロック40のハウジング側段差部56にカバー側段差部98が嵌め合わされた状態では、カバー本体91が、ギヤハウジング32のウォームホイール収容部38の側壁の上面に隣接配置されている。さらに、この状態では、インナカバー90の周壁112の上面が、放熱ブロック40の受熱面52Aに対して若干上側に配置されて、回路基板80の下面80Aに当接されるようになっている。そして、突出部96は第1壁部112Aの下端部から放熱ブロック40側へ突出されているため、突出部96の上方側には、周壁112、突出部96、及び放熱ブロック40(張出部44)の側面44Aによって構成された凹部102が形成されており、凹部102は上方側へ開放されている。
上記構成の減速機付モータ10が製造される際には、図10に示されるように、インナカバー90がギヤハウジング32に組み付けられる一方、回路基板80がプレートカバー70に組み付けられる。そして、放熱ブロック40の受熱面52Aに熱伝導性合成樹脂88が塗布された状態で、プレートカバー70がギヤハウジング32に組み付けられる構成になっている。
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の減速機付モータ10では、モータ本体12の回転軸18の回転を減速して出力軸28に伝達するウォームギヤ機構22と、ウォームギヤ機構22に対向して配置され、モータ本体12の駆動を制御する回路基板80とが、ハウジング30内に収容されている。このハウジング30内は、インナカバー90によって、ウォームギヤ機構22が収容された歯車収容室35と、回路基板80が収容された基板収容室37とに仕切られている。
上記のインナカバー90には、歯車収容室35と基板収容室37とを相互に連通させた連通孔97が形成されているが、当該連通孔97は、インナカバー90に取り付けられたメンブレンフィルタ108によって塞がれている。これにより、歯車収容室35から基板収容室37に異物が侵入することを防止又は抑制できる。しかも、上記のメンブレンフィルタ108は、通気性を有しているため、上記各収容室35、37間での気体の流通を許容することができる。特に、複数のパワー系素子82からの発熱により基板収容室37の空気が膨張して室内圧が高まるが、連通孔97のメンブレンフィルタ108を介して気体が流通し各収容室35、37の室内圧が均衡化される。これにより、異物が侵入を防止すべくインナカバー90による気密性もしくは密閉性の高い仕切が行われても、上記各収容室35、37の室内圧に不均衡が生じることを防止又は抑制できる。その結果、上記の不均衡に起因するインナカバー90の変形や、インナカバー90とウォームホイール26等との干渉を防止又は抑制できる。
また、上記のインナカバー90は、連通孔97が形成されたカバー本体91が、ウォームギヤ機構22と回路基板80との対向方向を板厚方向とする板状に形成されている。そして、連通孔97を塞ぐ状態でカバー本体91に取り付けられたメンブレンフィルタ108が、上記対向方向を厚さ方向とする薄膜状に形成されている。これにより、上記対向方向に沿ったカバー本体91及びメンブレンフィルタ108の配設スペースを小さく設定することができるので、ウォームギヤ機構22と回路基板80とを上記対向方向に近接して配置させることができる。その結果、例えば、ウォームギヤ機構22と回路基板80とを収容するハウジング30の小型化に寄与する。
また、この減速機付モータ10では、ウォームギヤ機構22が有するウォームホイール26に取り付けられたセンサマグネット87と、回路基板80の下面80A(片方の面)に実装された磁気センサ85とがウォームホイール26の軸方向に対向している。そして、センサマグネット87と磁気センサ85との間に、薄膜状に形成されたメンブレンフィルタ108が配置されている。これにより、センサマグネット87と磁気センサ85との間に、インナカバー90の一部が配置される場合と比較して、磁気センサ85がセンサマグネット87の磁気を検出し易くなるので、インナカバー90による磁気センサ85の磁気検出レベルの低下を最小限に抑制することができる。
また、この減速機付モータ10では、メンブレンフィルタ108がインナカバー90における回路基板80側に取り付けられているため、可動するウォームギヤ機構22とメンブレンフィルタ108との干渉を防止又は抑制する観点で好適である。また、メンブレンフィルタ108がインナカバー90におけるウォームギヤ機構22側に取り付けられた構成では、仮にメンブレンフィルタ108がウォームホイール26等の可動物と不用意に接触した場合に、メンブレンフィルタ108が捲り上げられてしまう虞があるが、本実施形態ではこれを防止することができる。
さらに、この減速機付モータ10では、ウォームホイール26に取り付けられたセンサマグネット87の少なくとも一部(ここでは全部)が、インナカバー90に形成された連通孔97内に配置されている。これにより、インナカバー90を介してウォームギヤ機構22とは反対側に位置する回路基板80に実装された磁気センサ85と、センサマグネット87とを近接して対向配置させることができる。その結果、磁気センサ85による磁気検出レベルが向上するので、出力軸28の回転位置の検出精度を向上させることが可能になると共に、ウォームギヤ機構22と回路基板80との近接配置にも寄与する。
また、この減速機付モータ10では、インナカバー90のカバー本体91には、その板厚方向に突出したリブ99が形成されている。これにより、カバー本体91が板厚方向に変形することを上記のリブ99によって抑制しつつ、インナカバー90の軽量化を図ることができる。また、カバー本体91の板厚方向の変形が抑制されることにより、カバー本体91とウォームホイール26との不用意な干渉が防止又は抑制されるので、カバー本体91をウォームホイール26に近接して配置させることが可能になる。したがって、これによってもウォームギヤ機構22と回路基板80との近接配置にも寄与する。
また、上記のリブ99には、連通孔97の周囲に形成された環状リブ99A1が含まれており、当該環状リブ99A1の内側にメンブレンフィルタ108が配置されている。これにより、環状リブ99A1によってメンブレンフィルタ108を保護することができる。つまり、メンブレンフィルタ108とフィルタ取付部106との接合部を、環状リブ99A1によって保護することができるので、メンブレンフィルタ108が不用意に剥がれることを防止又は抑制できる。
なお、本実施の形態では、インナカバー90がギヤハウジング32に取り付けられる場合について説明したが、インナカバー90が回路基板80に取り付けられる構成にしてもよい(図11参照)。例えば、図12に示されるように、インナカバー90の外周部に複数の割りピン120及び係止爪122を形成し、回路基板80に形成した係止孔に割りピン120を嵌入係止すると共に、係止爪122を回路基板80の外周部に引掛けることにより、インナカバー90を回路基板80に取り付けることができる。この図12に示される例では、一対の割りピン120が前述した一対のネジ孔95と同様の位置に配置されている。そして、プレートカバー70に固定された回路基板80にインナカバー90が取付けられた状態のサブアッセンブリ構成がハウジング30に組み付けられる。
また、本実施の形態では、インナカバー90のカバー本体91に形成されたリブ99が、連通孔97の縁部に形成された環状リブ99A1(孔縁リブ)を含んだ構成にしたが、これに限らず、リブ99が環状リブ99A1を含まない構成にしてもよい。また、本実施の形態では、カバー本体91における回路基板80側にリブ99が形成された構成にしたが、これに限らず、カバー本体91におけるウォームギヤ機構22側にリブ99が形成された構成にしてもよい。さらに、カバー本体91にリブ99が形成されていない構成にしてもよい。
また、本実施の形態では、センサマグネット87の全部が連通孔97内に配置された構成にしたが、これに限らず、センサマグネット87の一部(上部側)が連通孔97内に配置された構成にしてもよいし、センサマグネット87の全部が連通孔97の外側に配置された構成にしてもよい。
さらに、本実施の形態では、メンブレンフィルタ108(通気フィルタ)が、カバー本体91における回路基板80側に取り付けられた構成にしたが、これに限らず、メンブレンフィルタ108がカバー本体91におけるウォームギヤ機構22側に取り付けられた構成にしてもよい。
また、本実施の形態では、カバー本体91においてセンサマグネット87及び磁気センサ85と対向する位置に連通孔97が形成され、メンブレンフィルタ108がセンサマグネット87と磁気センサ85との間に配置された好ましい構成にしたが、これに限るものではない。すなわち、カバー本体91においてセンサマグネット87及び磁気センサ85と対向しない位置に連通孔97が形成され、メンブレンフィルタ108がセンサマグネット87及び磁気センサ85との間に配置されない構成にしてもよい。また、インナカバー90における連通孔97の形成部位は、カバー本体91に限るものではない。
さらに、本実施の形態では、薄膜状のメンブレンフィルタ108が通気フィルタとされた場合について説明したが、これに限るものではない。例えばスポンジ状の通気フィルタなど、別の種類の通気フィルタを用いる構成にしてもよい。
また、本実施の形態では、インナカバー90が板状のカバー本体91を備えた構成にしたが、これに限らず、カバー本体91の形状は適宜変更可能である。また、本実施の形態では、インナカバー90が、カバー本体91と、枠部92と、ホルダカバー部93とを備えた構成にしたが、枠部92及びホルダカバー部93のうちの一方又は両方が省略された構成にしてもよい。
また、本実施の形態では、ウォームギヤ機構22が歯車機構とされた場合について説明したが、歯車機構はウォームギヤ機構22以外のもの(例えば平歯車機構)であってもよいし、歯車以外の部材(例えば、リンクやクラッチなどの動力伝達部材)を含んだものであってもよい。
また、本実施の形態では、モータ本体12が、所謂ブラシ付直流モータとして構成されているが、モータ本体12をブラシレスモータとして構成してもよい。
また、本実施の形態では、車両のワイパ装置に減速機付モータ10が適用されているが、減速機付モータ10を他の装置に適用してもよい。例えば、減速機付モータ10を車両(自動車)のパワーウィンド装置やサンルーフ装置やパワーシート装置等に適用してもよい。