本発明の積層体は、支持体(A)の上にプライマー層(B)、導電層(C)及び金属めっき層(D)が順次形成された構成であって、前記プライマー層(B)の表面自由エネルギーが20〜45mJ/m2の範囲であり、前記プライマー層(B)が下記一般式(I)で表される構造を有する樹脂を含有するものである。
(一般式(I)中、R
1
及びR
2
は、それぞれ独立してアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立して1〜20の整数を表す。)
前記支持体(A)は、本発明の積層体の基材となるものである。前記支持体(A)の材質としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂をグラフト共重合化した塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、サファイア、セラミックス、ガラス、ガラスエポキシ樹脂、ガラスポリイミド、紙フェノール、ダイアモンドライクカーボン、アルミナ、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維等の合成繊維、カーボンファイバー等の無機繊維、セルロースナノファイバー等の天然繊維等が挙げられる。これらの支持体は、絶縁性のものが好ましく、多孔質のものを用いることができる。
前記支持体(A)としては、本発明の積層体が、折り曲げ可能な柔軟性を求められる用途に用いられる場合、柔軟でフレキシブルな支持体を用いることが好ましい。具体的には、フィルム又はシート状の支持体を用いることが好ましい。
前記フィルム又はシート状の支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
前記支持体(A)の形状がフィルム状又はシート状の場合、フィルム状又はシート状の支持体の厚さは、通常、1〜5,000μmであることが好ましく、1〜300μmの厚さであることがより好ましい。また、本発明の積層体をフレキシブルプリント基板等の屈曲性を求められるものに用いる場合には、支持体として、1〜200μm程度の厚さのフィルム状のものを用いることが好ましい。
また、前記支持体(A)の上に後述するプライマー層を設ける場合には、前記支持体(A)と前記プライマー層との密着性を向上できることから、前記支持体(A)の表面に、微細な凹凸の形成、前記支持体(A)表面に付着した汚れの洗浄、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基の導入のための表面処理等が施されていてもよい。具体的にはコロナ放電処理等のプラズマ放電処理、紫外線処理等の乾式処理、水、酸・アルカリ等の水溶液又は有機溶剤等を用いる湿式処理等が施されていてもよい。
前記プライマー層(B)は、塗膜表面の表面自由エネルギーが20〜45mJ/m2の範囲であることを特徴とする。表面自由エネルギーが20mJ/m2よりも低い場合は、前記支持体(A)と前記プライマー層(B)の密着性が低くなるため、配線が剥がれてしまい、電子回路として使用できない。一方、表面自由エネルギーが45mJ/m2を超える場合は前記プライマー層表面の親水性が強くなり、高温、高湿度下で、水や水蒸気がプライマー層(B)の表面に吸着し、エレクトロケミカルマイグレーションを生じる原因となる。
前記プライマー層(B)の表面自由エネルギーは、前記プライマー層(B)の表面に、表面自由エネルギーが既知の溶媒として、イオン交換水、エチレングリコール及びジヨードメタンの液滴を滴下した際の接触角を、例えば、接触角計(協和界面科学株式会社製「Drop Master700」)を用いて測定する。各々の溶媒の表面自由エネルギーは、表1に示した値を用いる。各々の溶媒での接触角を測定し、下式(1)に代入して連立方程式を解くことで基材の各表面自由エネルギーγLW、γ+、γ―を算出し、さらに下式(2)に、算出したγLW、γ+、γ―を代入することで表面自由エネルギーγtotを算出することができる。
前記プライマー層(B)に用いる樹脂としては、プライマー層(B)の表面自由エネルギーを20〜45mJ/m2の範囲になり、上記一般式(I)で表される構造を有する樹脂を含有するものであれば、特に制限なく用いることができるが、具体的には下記のものが挙げられる。
前記プライマー層(B)に用いる樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン−アクリル複合樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールをブロック化剤として用いたポリイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、フッ素原子を有する樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。これらの樹脂の中でも、エレクトロケミカルマイグレーションをより一層抑制できることから、上記一般式(I)で表される構造を有するウレタン樹脂(b1)が好ましい。
上記一般式(I)中のR1及びR2は、それぞれ独立してアルキル基であるが、原料の入手が容易であることから、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数5〜10のアルキル基がより好ましい。なお、前記アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
また、上記一般式(I)中のm及びnは、それぞれ独立して1〜20の整数であるが、5〜10の整数が好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有するウレタン樹脂(b1)としては、前記プライマー層(B)の表面を十分に疎水化でき、エレクトロケミカルマイグレーションを抑制できることから、ウレタン樹脂全体に対して、前記一般式(I)で表される構造を5〜50質量%有するものが好ましく、10〜40質量%有するものがより好ましい。なお、前記一般式(I)で表される構造の質量比率は、前記ウレタン樹脂を製造する際に用いる原料のうち、前記一般式(I)で表される構造の導入に寄与する原料、すなわち前記一般式(I)で表される構造を有する原料の質量の合計を、前記ウレタン樹脂(b1)の全質量で除して求めた値である。
前記ウレタン樹脂(b1)を前記支持体(A)へ塗工する際は、溶媒に希釈又は分散させて用いることが好ましい。溶媒に水性媒体を用いる場合には、前記ウレタン樹脂(b1)に親水性基を導入することが好ましい。前記親水性基としては、例えば、一部又は全部が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基、スルホネート基等のアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基が挙げられ、アニオン性基が好ましい。
前記塩基性化合物としては、アンモニア;トリエチルアミン、エタノールアミン等のアミン化合物;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物などが挙げられる。
また、前記ウレタン樹脂(b1)は、カルボキシル基、水酸基等の官能基を末端に有していてもよい。カルボキシル基、水酸基等の官能基は、架橋剤を用いた場合に、架橋反応させる官能基として活用することができる。
水性媒体に溶解又は分散して用いる前記ウレタン樹脂(b1)は、例えば、前記一般式(I)で表される構造を有するポリオール(b1−1)と、親水性基及び活性水素原子を有する化合物(b1−2)と、ポリイソシアネート(b1−3)とを反応させることによって製造することができる。なお、前記ウレタン樹脂(b1)を有機溶剤に溶解して用いる場合は、前記化合物(b1−2)の親水性基は必須ではない。
前記ポリオール(b1−1)としては、例えば、水素添加ダイマージオール(b1−1−1)、水素添加ダイマージオール(b1−1−1)とポリカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール(b1−1−2)、及び、水素添加ダイマー酸とポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオール(b1−1−3)等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記水素添加ダイマージオール(b1−1−1)は、主として不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸を高圧接触水素還元することによって得られる水酸基を有する化合物である。前記不飽和脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
また、前記水素添加ダイマージオール(b1−1−1)は、天然の植物油脂肪酸から製造できるものであり、通常、その市販品には、前記水素添加ダイマージオール(b1−1−1)の他に、前記不飽和脂肪酸の三量体や、それを還元して得られる水酸基を有する化合物等の副生成物が混在しているのが一般である。
前記ポリエステルポリオール(b1−1−2)は、前記水素添加ダイマージオール(b1−1−1)とポリカルボン酸とを公知の方法で反応させて得られるエステル化物である。
前記ポリエステルポリオール(b1−1−2)を製造する際に用いる前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸;これらの酸無水物又はエステル化物などが挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記ポリエステルポリオール(b1−1−3)は、水素添加ダイマー酸とポリオールとを公知の方法で反応させて得られるエステル化物である。前記水素添加ダイマー酸は、前記不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸が有する不飽和二重結合に、水素原子が付加した化合物である。水素添加ダイマー酸は、天然の植物油脂肪酸から製造できるものであり、通常、その市販品には、前記水素添加ダイマー酸の他に、前記不飽和脂肪酸の三量体や、それを還元して得られる水酸基含有化合物等の副生成物が混在しているのが一般である。
また、前記ポリエステルポリオール(b1−1−3)を製造する際に用いるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリストール、ソルビトール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールA又は水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の60〜200の範囲の数平均分子量を有するものが好ましい。
さらに、前記ポリエステルポリオール(b1−1−3)を製造する際に用いるポリオールとしては、上記のもの以外に、例えば、数平均分子量300〜6,000の範囲のポリエチレングリコール、数平均分子量300〜6,000の範囲のポリプロピレングリコール、数平均分子量300〜6,000の範囲のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等が挙げられる。
また、前記化合物(b1−2)としては、例えば、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸基を有する化合物;2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボキシル基を有する化合物;これらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
また、前記ポリイソシアネート(b1−3)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネート;これらの三量体などが挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記ポリイソシアネート(b1−3)の中でも、比較的安価なこと、原料を入手しやすいことから、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましい。
また、前記ウレタン樹脂(b1)を製造する際には、前記一般式(I)で表される構造を有するポリオール(b1−1)、前記親水性基及び活性水素原子を有する化合物(b1−2)及び前記ポリイソシアネート(b1−3)の他に、必要に応じてその他の原料を併用することができる。
前記その他の原料としては、例えば、前記一般式(I)で表される構造単位を有するポリオール(b1−1)以外のその他のポリオールが挙げられ、例えば、前記ポリエステルポリオール(b1−1−2)及び前記ポリエステルポリオール(b1−1−3)以外のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリチオエーテルポリオール、及びポリブタジエングリコール等が挙げられる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール及びポリカルボン酸をエステル化反応させて得られるものが挙げられる。前記ポリオールとしては、前記ポリエステルポリオール(b1−1−3)を製造する際に用いるものとして例示したポリオールと同様のものが挙げられる。
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合して得られるものが挙げられる。
また、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を少なくとも2つ有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等の化合物の1種以上を付加重合することによって得られるものが挙げられる。
前記活性水素原子を少なくとも2つ有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール;アクニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロ安息香酸、ヒドロキシフタル酸、1,2,3−プロパントリチオール等が挙げられる。
また、前記ポリカーボネートポリオールは、炭酸と、脂肪族ポリオール又は脂環式構造を有するポリオールとをエステル化反応させることによって得られるものである。このポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオールと、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート又はエチレンカーボネート等の環式カーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
前記その他のポリオールとしては、数平均分子量200〜10,000の範囲を有するものが好ましく、数平均分子量300〜5,000の範囲のものがより好ましい。
水性媒体に溶解又は分散した前記ウレタン樹脂(b1)を製造する方法としては、下記の方法1〜5が挙げられる。
〔方法1〕
前記ポリオール(b1−1)を含むポリオールと、前記化合物(b1−2)と、前記ポリイソシアネート(b1−3)とを、一括又は分割して仕込み、それらを溶剤中又は無溶剤下で反応させることによってウレタン樹脂を製造し、該ウレタン樹脂の有する親水性基の一部又は全てを中和剤で中和した後、水性媒体を投入して分散又は溶解する方法。
〔方法2〕
前記ポリオール(b1−1)を含むポリオールと、前記化合物(b1−2)と、前記ポリイソシアネート(b1−3)とを、一括又は分割して仕込み、それらを溶剤中又は無溶剤下で反応させることによって末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造した後、ポリアミン等の活性水素原子を有する化合物を用いて鎖伸長することによってウレタン樹脂を製造し、次いで該ウレタン樹脂の有する親水性基の一部又は全てを中和剤で中和した後、水性媒体を投入して分散又は溶解する方法。
〔方法3〕
前記ポリオール(b1−1)を含むポリオールと、前記化合物(b1−2)と、前記ポリイソシアネート(b1−3)とを、一括又は分割して仕込み、それらを溶剤中又は無溶剤下で反応させることによって末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、得られたウレタンプレポリマーの有する親水性基の一部又は全てを中和剤で中和した後、水性媒体を投入することによってウレタンプレポリマーを水分散又は水に溶解し、その後に活性水素原子を有する化合物を用いて鎖伸長する方法。
〔方法4〕
前記ポリオール(b1−1)を含むポリオールと、前記化合物(b1−2)と、前記ポリイソシアネート(b1−3)とを、一括又は分割して仕込み、それらを溶剤中又は無溶剤下で反応させることによって末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、得られたウレタンプレポリマーの親水性基の一部又は全てを中和剤で中和した後、ホモジナイザー等の機械を用いて該ウレタンプレポリマーを水性媒体中に強制的に乳化させて分散し、その後に活性水素原子を有する化合物を用いて鎖伸長する方法。
〔方法5〕
前記ポリオール(b1−1)を含むポリオールと、前記化合物(b1−2)と、前記ポリイソシアネート(b1−3)と、活性水素原子を有する化合物とを、一括して仕込み、それらを溶剤中又は無溶剤下で反応させることによってウレタン樹脂を製造し、該ウレタン樹脂の親水性基の一部又は全てを中和剤で中和した後、水性媒体を投入することによってウレタン樹脂を水分散又は水に溶解する方法。
前記ウレタン樹脂(b1)を製造する際に使用可能な活性水素原子を有する化合物としては、例えば、ポリアミン等が挙げられる。
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン化合物;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン等の1つの1級アミンと1つの2級アミンを有するジアミン化合物;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン化合物;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン化合物;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド化合物などが挙げられる。
また、前記ポリアミン以外の、その他の活性水素原子を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、及びソルビトール等の低分子量ポリオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール化合物;水などが挙げられる。
上記のウレタン樹脂(b1)を製造する方法1〜5において、必要に応じてウレタン化触媒を用いてもよい。前記触媒としては、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、及びジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、及びトリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、3級アミン類、及び4級アンモニウム塩等を用いることができる。
また、前記プライマー層に用いる樹脂として、例えば、フッ素原子を有するアクリル樹脂(b2)が挙げられる。
前記フッ素原子を有するアクリル樹脂(b2)は、フッ素原子を有するアクリル単量体を重合したものである。
前記フッ素原子を有するアクリル単量体としては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタペンチルフルオロアクリレート、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、プライマー層として用いた場合に表面自由エネルギーを調整しやすいことから、1H,1H,5H−オクタペンチルフルオロアクリレートが好ましい。
前記フッ素原子を有するアクリル樹脂(b2)は、この塗膜の表面自由エネルギーを調整するため、フッ素原子を有するアクリル単量体以外のその他の単量体を共重合しても良い。
前記その他の単量体として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルビニルエーテル、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩等が挙げられる。
また、前記アクリル樹脂(b2)を前記支持体(A)へ塗工する際は、溶媒に希釈又は分散させて用いることが好ましい。溶媒に水性媒体を用いる場合には、前記アクリル樹脂(b2)に親水性基を導入することが好ましい。前記親水性基としては、例えば、一部又は全部が塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基、スルホネート基等のアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基が挙げられ、アニオン性基が好ましい。
前記アクリル樹脂(b2)に親水性基として、例えば、カルボキシレート基を導入する場合は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和二重結合及びカルボキシル基を有する単量体を原料として用いて、前記アクリル樹脂(b2)を製造し、その後前記カルボキシル基の一部又は全部を塩基性化合物で中和してカルボキシレート基とする。
前記フッ素原子を有するアクリル樹脂(b2)の製造方法としては、公知の方法で製造することができ、例えば、有機溶剤中で重合を行う溶液重合法、水性媒体中で重合を行う乳化重合法等が挙げられる。
また、前記フッ素原子を有するアクリル樹脂(b2)の製造の際に用いる重合開始剤としては、例えば、アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアミジン、アゾイミダゾリン等のアゾ系開始剤;パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物などが挙げられる。
前記プライマー層(B)を形成するのに用いる樹脂溶液又は樹脂分散液は、塗工性が良好になることから、その液中の樹脂分は、1〜50質量%の範囲が好ましく、前記プライマー層(B)が薄膜で塗工でき、支持体(A)と導電層(C)との間の密着性を向上できることから、1〜5質量%の範囲がより好ましい。
また、前記プライマー層(B)を形成するのに用いる樹脂溶液又は樹脂分散液に用いる溶媒としては、各種有機溶剤、水性媒体が挙げられる。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられ、前記水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。
前記の水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール溶剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール溶剤;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム溶剤などが挙げられる。
前記プライマーを前記支持体(A)の表面に塗工した後、その塗工層に含まれる溶媒を除去する方法としては、例えば乾燥機を用いて乾燥させ、前記溶媒を揮発させる方法が挙げられる。乾燥温度としては、前記溶媒を揮発させることが可能で、かつ支持体(A)に悪影響を与えない範囲の温度にすることが好ましい。
前記プライマー層(B)の厚さは、本発明の積層体を用いる用途によって異なるが、前記支持体(A)と後述する導電層(C)との密着性をより向上できることから、10nm〜30μmの範囲が好ましく、10nm〜1μmの範囲がより好ましく、10nm〜500nmの範囲がさらに好ましい。
前記プライマー層(B)の表面は、前記導電層(C)との密着性をより向上するため、例えば、コロナ放電処理法等のプラズマ放電処理法、紫外線処理法等の乾式処理法、水、酸性又はアルカリ性薬液、有機溶剤等を用いた湿式処理法によって、表面処理されていてもよい。但し、表面処理を行うことでプライマー層表面が酸化され、親水性になることで表面自由エネルギーが大きくなると、エレクトロケミカルマイグレーションが発生しやすくなる。そのため、プライマー層(B)の表面処理は、表面自由エネルギーが20〜45mJ/m2の範囲になるよう行うことが好ましい。
また、プライマー層(B)の表面自由エネルギーを調整する方法として、プライマー層(B)表面に、有機化合物の化学吸着による単分子膜(Self−Assembled Monolayer;以下、「SAM」と略記する。)を形成しても良い。前記SAMとは、自己集積化や自己組織化によって形成される単分子膜であり、プライマー層(B)表面に有機化合物一分子分が化学吸着させる改質方法である。
前記SAMで用いる有機化合物としては、アルキルチオール、アルキルジスルフィド、アルキルチオイソシアニド等の有機硫黄化合物;アルキルセレノレート、ジアルキルジセレニドなどの有機セレン化合物;アルキルテルロレート等の有機テルル化合物;アルキルイソシアニド等のニトリル化合物;脂肪酸等のカルボン酸;アルキルホスホン酸、アルキルリン酸エステル等の有機リン化合物;アルキルシラン、フッ化アルキルシラン、フェニルシラン、アミノシラン等の有機シラン化合物;アルキン、アルケンなどの不飽和炭化水素;臭化アルキル、ヨウ化アルキル等の有機ハロゲン化合物;ジアゾ化合物;アルコール;アルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、簡便に表面自由エネルギーを調整できることから、有機シラン化合物を用いることが好ましい。
前記SAMを形成する方法としては、例えば、気相プロセスが挙げられる。前記気相プロセスでは通常、排気ポンプと減圧チャンバーとを有する真空装置を用いる。また、有機シラン化合物を用いる場合にはより簡便な方法として、支持体(A)と前記有機シラン化合物をポリテトラフルオロエチレン製密閉容器中に大気圧で封入し、密封した容器を加熱した電気炉内に設置する。次いで、気化した有機シラン化合物がプライマー層(B)表面の官能基と反応し、表面処理が完了する。
前記SAMによる表面処理は、エレクトロケミカルマイグレーションを抑制するため、表面自由エネルギーが20〜45mJ/m2の範囲になるよう行うことが好ましい。
また、後述する導電層(C)を形成するために用いるナノサイズの金属粉及び分散剤を含有する流動体を後述する印刷方法で塗工する場合、非画線部(配線間)に流動体に含まれる分散剤や溶剤が移行することで、非画線部(配線間)のプライマー層(B)を表面処理することができる。印刷後、非画線部(配線間)のプライマー層(B)表面の表面自由エネルギーは、エレクトロケミカルマイグレーションを抑制するため、表面自由エネルギーが20〜45mJ/m2の範囲になることが好ましい。
前記導電層(C)を構成する金属としては、遷移金属又はその化合物が挙げられ、中でもイオン性の遷移金属が好ましい。このイオン性の遷移金属としては、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト等が挙げられる。これらのイオン性の遷移金属の中でも、銅、銀、金は、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンが得られることから好ましい。
また、前記金属めっき層(D)を構成する金属としては、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等が挙げられる。これらの中でも、電気抵抗が低く、腐食に強い導電性パターンが得られることから銅が好ましい。
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、支持体(A)の上に、プライマー層(B)を塗工・乾燥後、ナノサイズの金属粉及び分散剤を含有する流動体を塗工し焼成して導電層(C’)を形成した後、前記導電層(C’)中に存在する分散剤を含む有機化合物を除去して空隙を形成して多孔質状の導電層(C)とした後、電解又は無電解めっきにより前記金属めっき層(D)を形成する方法が挙げられる。
前記導電層(C)の形成に用いるナノサイズの金属粉の形状は、導電層が多孔質状になるものであればよいが、粒子状又繊維状のものが好ましい。また、前記金属粉の大きさはナノサイズのものを用いるが、具体的には、金属粉の形状が粒子状の場合は、微細な導電性パターンを形成でき、焼成後の抵抗値をより低減できるため、平均粒子径が1〜100nmの範囲が好ましく、1〜50nmの範囲がより好ましい。なお、前記「平均粒子径」は、前記導電性物質を分散良溶媒にて希釈し、動的光散乱法により測定した体積平均値である。この測定にはマイクロトラック社製「ナノトラックUPA−150」を用いることができる。
一方、金属粉の形状が繊維状の場合は、微細な導電性パターンを形成でき、焼成後の抵抗値をより低減できるため、繊維の直径が5〜100nmの範囲が好ましく、5〜50nmの範囲がより好ましい。また、繊維の長さは、0.1〜100μmの範囲が好ましく、0.1〜30μmの範囲がより好ましい。
前記流動体中の前記ナノサイズの金属粉の含有比率は、5〜90質量%の範囲が好ましく、10〜60質量%の範囲がより好ましい。
前記流動体に配合される成分としては、ナノサイズの金属粉を溶媒中に分散させるための分散剤や溶媒、また必要に応じて、界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤などの有機化合物が含まれる。
前記ナノサイズの金属粉を溶媒中に分散させるため、低分子量又は高分子量の分散剤が用いられる。前記分散剤としては、例えば、ドデカンチオール、1−オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、ドデシルアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン;ミリスチン酸、オクタン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;コール酸、グリシルジン酸、アビンチン酸等のカルボキシル基を有する多環式炭化水素化合物などが挙げられる。エレクトロケミカルマイグレーションを抑制するためには高分子分散剤が好ましく、この高分子分散剤としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン、前記ポリアルキレンイミンにポリオキシアルキレンが付加した化合物等が好ましい。
前記ナノサイズの金属粉を分散させるために必要な前記分散剤の使用量は、前記ナノサイズの金属粉100質量部に対し、0.01〜50質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。
前記流動体に用いる溶媒としては、水性媒体や有機溶剤を用いることができる。前記水性媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられる。また、前記有機溶剤としては、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ステアリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、テルピネオール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
また、前記流動体には、上記の金属粉、溶媒の他に、必要に応じてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、イソプレングリコール等を用いることができる。
前記界面活性剤としては、一般的な界面活性剤を用いることができ、例えば、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ヘキサメタリン酸塩等が挙げられる。
前記レベリング剤としては、一般的なレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン系化合物、アセチレンジオール系化合物、フッ素系化合物などが挙げられる。
前記流動体の粘度(25℃でB型粘度計を用いて測定した値)は、0.1〜500,000mPa・sの範囲が好ましく、0.5〜10,000mPa・sの範囲がより好ましい。また、前記流動体を、後述するインクジェット印刷法、凸版反転印刷等の方法によって塗工(印刷)する場合には、その粘度は5〜20mPa・sの範囲が好ましい。
前記支持体(A)の上に前記流動体を塗工する方法としては、例えば、インクジェット印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等が挙げられる。
これらの塗工方法の中でも、電子回路等の高密度化を実現する際に求められる0.01〜100μm程度の細線状でパターン化された前記導電層(C)を形成する場合には、インクジェット印刷法、反転印刷法を用いることが好ましい。
前記インクジェット印刷法としては、一般にインクジェットプリンターといわれるものを用いることができる。具体的には、コニカミノルタEB100、XY100(コニカミノルタ株式会社製)、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−3000、ダイマティックス・マテリアルプリンターDMP−2831(富士フィルム株式会社製)等が挙げられる。
また、反転印刷法としては、凸版反転印刷法、凹版反転印刷法が知られており、例えば、各種ブランケットの表面に前記流動体を塗工し、非画線部が突出した版と接触させ、前記非画線部に対応する流動体を前記版の表面に選択的に転写させることによって、前記ブランケット等の表面に前記パターンを形成し、次いで、前記パターンを、前記支持体層(A)の上(表面)に転写させる方法が挙げられる。
前記導電層(C)を形成するために、金属粉を含有する流動体を塗工した後に行う焼成工程は、前記流動体中に含まれる金属粉同士を密着し接合することで導電性を有する導電層(C)を形成するために行う。前記焼成は、80〜300℃の温度範囲で、2〜200分程度行うことが好ましい。前記焼成は大気中で行っても良いが、金属粉のすべてが酸化することを防止するため、焼成工程の一部又は全部を還元雰囲気下で行ってもよい。この焼成工程を経ることで、前記導電層(C)の形成に用いる粒子状又は繊維状の金属粉同士が密着し接合することで、前記導電層(C)は多孔質状のものとなる。
また、前記焼成工程は、例えば、オーブン、熱風式乾燥炉、赤外線乾燥炉、レーザー照射、マイクロウェーブ、光照射(フラッシュ照射装置)等を用いて行うことができる。
上記の焼成工程により得られた導電層(C’)の厚さは、後述する金属めっき層(D)との密着性を考慮すると、10nm〜10μmの範囲が好ましく、10nm〜3μmの範囲がより好ましい。
上記の焼成工程後、前記導電層(C’)中に存在する分散剤を含む有機化合物を除去し空隙を形成することで、多孔質状の前記導電層(C)とすることができる。この有機化合物を除去する方法としては、前記導電層(C’)に対し、プラズマ放電処理法、電磁波照射処理法、レーザー照射処理法、水や有機溶剤で分散剤を含む有機化合物を再分散して溶解する溶解処理法等の処理を施す方法がある。これらの処理方法は、単独又は2つ以上を組合せて用いることができ、2つ以上を組み合わせることで、より効率よく前記有機化合物が除去できるため好ましい。なお、ここでいう有機化合物とは、前記流動体に配合される成分であり、分散剤、溶媒、界面活性剤、レベリング剤、粘度調整剤、成膜助剤、消泡剤、防腐剤等の有機化合物をいう。
次に、上記のようにして、前記支持体(A)の上に、プライマー層(B)を塗工し、前記導電層(C’)中の前記有機化合物を除去することにより空隙を有する多孔質状の導電層(C)を形成した後、前記導電層(C)上に金属めっき層(D)を形成することで、本発明の積層体を得ることができる。
また、金属めっき層(D)は、導電層(C)のエレクトロケミカルマイグレーションを抑制する役割も有する。例えば、導電層(C)が銀ナノ粒子からなる導電層、金属めっき層(D)が銅めっき層である場合、銀は銅に比べエレクトロケミカルマイグレーションを生じやすいが、銀ナノ粒子が、銅めっきで覆われているため、エレクトロケミカルマイグレーションが抑制できる。
本発明の積層体を構成する金属めっき層(D)は、例えば、前記積層体を導電性パターン等に用いる場合に、長期間にわたり断線等を生じることなく、良好な通電性を維持可能な信頼性の高い配線パターンを形成することを目的として設けられる層である。
前記金属めっき層(D)は、前記導電層(C)の上に形成される層であるが、その形成方法としては、めっき処理によって形成する方法が好ましい。このめっき処理としては、例えば、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法、スパッタリング法、真空蒸着法等の乾式めっき法などが挙げられる。また、これらのめっき法を2つ以上組み合わせて、前記金属めっき層(D)を形成しても構わない。
上記のめっき処理の中でも、多孔質状の導電層(C)が有する空隙に金属めっき層(D)を構成する金属が充填されやすく、前記導電層(C)と前記金属めっき層(D)との密着性がより向上し、また、導電性に優れた導電性パターンが得られることから、電解めっき法、無電解めっき法等の湿式めっき法が好ましく、電解めっき法がより好ましい。
上記の無電解めっき法は、例えば、前記導電層(C)を構成する金属に、無電解めっき液を接触させることで、無電解めっき液中に含まれる銅等の金属を析出させ金属皮膜からなる無電解めっき層(皮膜)を形成する方法である。
前記無電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属と、還元剤と、水性媒体、有機溶剤等の溶媒とを含有するものが挙げられる。
前記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノボラン、次亜燐酸、次亜燐酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、フェノール等が挙げられる。
また、前記無電解めっき液としては、必要に応じて、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸化合物;リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物;グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸化合物;イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンジ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸化合物などの有機酸、又はこれらの有機酸の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物等の錯化剤を含有するものを用いることができる。
前記無電解めっき液は、20〜98℃の範囲で用いることが好ましい。
前記電解めっき法は、例えば、前記導電層(C)を構成する金属、又は、前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(被膜)の表面に、電解めっき液を接触した状態で通電することにより、前記電解めっき液中に含まれる銅等の金属を、カソードに設置した前記導電層(C)を構成する導電性物質又は前記無電解処理によって形成された無電解めっき層(被膜)の表面に析出させ、電解めっき層(金属被膜)を形成する方法である。
前記電解めっき液としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、コバルト、スズ等の金属の硫化物と、硫酸と、水性媒体とを含有するもの等が挙げられる。具体的には、硫酸銅と硫酸と水性媒体とを含有するものが挙げられる。
前記電解めっき液は、20〜98℃の範囲で用いることが好ましい。
上記電解めっき処理法では、毒性の高い物質を用いることなく、作業性がよいため、電解めっき法を用いた銅からなる金属めっき層(D)を形成することが好ましい。
また、前記乾式めっき処理工程としては、スパッタリング法、真空蒸着法等を用いることができる。前記スパッタリング法は、真空中で不活性ガス(主にアルゴン)を導入し、金属めっき層(D)を形成材料に対してマイナスイオンを印加してグロー放電を発生させ、次いで、前記不活性ガス原子をイオン化し、高速で前記金属めっき層(D)の形成材料の表面にガスイオンを激しく叩きつけ、金属めっき層(D)の形成材料を構成する原子及び分子を弾き出し勢いよく前記導電層(C)の表面に付着させることにより金属めっき層(D)を形成する方法である。
スパッタリング法による前記金属めっき層(D)の形成材料としては、例えば、クロム、銅、チタン、銀、白金、金、ニッケル−クロム合金、ステンレス、銅−亜鉛合金、インジウムチンオキサイド(ITO)、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化亜鉛等が挙げられる。
前記スパッタリング法によりめっき処理する際には、例えば、マグネトロンスパッタ装置等を用いることができる。
前記金属めっき層(D)の厚さは、1〜50μmの範囲が好ましい。前記金属めっき層(D)の厚さは、前記金属めっき層(D)の形成する際のめっき処理工程における処理時間、電流密度、めっき用添加剤の使用量等を制御することによって調整することができる。
上記の方法により得られた本発明の積層体は、導電性パターンとして用いることが可能である。本発明の積層体を導電性パターンに用いる場合、形成しようとする所望のパターン形状に対応した位置に、前記導電層(C)を形成するため、前記金属粉を含有する流動体を塗工、又は印刷して焼成することによって、所望のパターンを有する導電性パターンを製造することができる。
また、前記導電性パターンは、例えば、金属ベタ膜から導電層(C)や金属めっき層(D)をエッチングして導電性パターンを作製するサブトラクティブ法、セミアディティブ法等のフォトリソ−エッチング法、又は導電層(C)の印刷パターン上にめっきする方法によって製造することができる。
前記サブトラクティブ法は、予め製造した本発明の積層体を構成する前記金属めっき層(D)の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、前記レジストの除去された部分の前記金属めっき層(D)及び導電層(C)を薬液で溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。前記薬液としては、塩化銅、塩化鉄等を含有する薬液を用いることができる。
前記セミアディティブ法は、前記支持体(A)の上にプライマー層(B)を形成した後、前記導電層(C’)を形成し、必要に応じてプラズマ放電処理等により前記導電層(C’)中に存在する分散剤を含む有機化合物を除去した後、得られた前記導電層(C)の表面に、所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次いで、電解めっき法、無電解めっき法によって金属めっき層(D)を形成した後、前記めっきレジスト層とそれに接触した前記導電層(C)とを薬液等に溶解し除去することによって、所望のパターンを形成する方法である。
また、導電層(C)の印刷パターン上にめっきする方法は、前記支持体(A)に、プライマー層(B)を形成した後、インクジェット法、反転印刷法等で前記導電層(C’)のパターンを印刷し、必要に応じてプラズマ放電処理等により前記導電層(C’)中に存在する分散剤を含む有機化合物を除去した後、得られた前記導電層(C)の表面に、電解めっき法、無電解めっき法によって前記金属めっき層(D)を形成することによって、所望のパターンを形成する方法である。
上記の方法で得られた導電性パターンは、高温高湿度下、電圧を印加した状態で、導電性パターンの配線間のエレクトロケミカルマイグレーションが発生しにくいため、銀インク等を用いた電子回路、集積回路等に使用される回路形成用基板の形成、有機太陽電池、電子端末、有機ELデバイス、有機トランジスタ、フレキシブルプリント基板、RFID等を構成する周辺配線の形成、電磁波シールド材に用いることができる。特に、高い耐久性の求められる用途には好適に用いることができ、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)、テープ自動ボンディング(TAB)、チップオンフィルム(COF)、プリント配線板(PWB)等の一般に銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminate)といわれる用途に用いることが可能である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
[合成例1:プライマー層用樹脂(1)の製造]
温度計、撹拌装置、還流冷却管、及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、水素添加ダイマージオール(クローダジャパン株式会社製「プリポール2033」、水酸基当量271g/当量)59.4質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸36.7質量部及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)128.9質量部を加え、それらを十分に攪拌混合した。次に、イソホロンジイソシアネート97.2質量部及びオクチル酸第一錫0.1質量部を加え、75℃で15時間反応させることによって、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのMEK溶液を得た。次いで、ジエチレントリアミンの10質量%MEK溶液29.5質量部を加えて、40℃で1時間反応させた。冷却後、不揮発分が2質量%になるようにMEKを加え、200メッシュ金網で濾過することで、プライマー層樹脂(1)の2質量%MEK溶液を得た。
[合成例2:プライマー層用樹脂(2)の製造]
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に、酢酸エチル180質量部を加え、窒素を吹き込みながら80℃まで昇温した。次に、攪拌しながら、
メタクリル酸メチル80質量部、メタクリル酸n−ブチル10質量部及び1H,1H,5H−オクタペンチルフルオロアクリレート10重量部の単量体混合物と、アゾイソブチロニトリル1質量部を酢酸エチル20質量部に溶解した重合開始剤溶液とを、それぞれ別の滴下漏斗から反応容器内温度を80±1℃に保ちながら240分間かけて滴下し重合した。滴下終了後、同温度で120分間攪拌した後、前記反応容器内の温度を30℃に冷却した。次いで、不揮発分が2質量%になるように酢酸エチルを加え、200メッシュ金網で濾過することによって、プライマー層樹脂(2)の2質量%酢酸エチル溶液を得た。
[調製例1:流動体(1)の調製]
エチレングリコール45質量部及びイオン交換水55質量部の混合溶媒に、分散剤としてポリエチレンイミンにポリオキシエチレンが付加した化合物を用いて平均粒径30nmの銀粒子を分散させることによって、ナノサイズの金属粉及び分散剤を含有する流動体を調製した。次いで、得られた流動体に、イオン交換水及び界面活性剤を加えて粘度を10mPa・sに調整することによって、インクジェット印刷用導電性インクである流動体(1)を調製した。
<プライマー層の表面自由エネルギーの測定方法>
プライマー層の表面自由エネルギーは、以下の方法で、測定、算出して求めた。プライマー層の表面に、イオン交換水、エチレングリコール及びジヨードメタンの液滴を滴下した際の接触角を、接触角計(協和界面科学株式会社製「Drop Master700」)を用いて測定した。なお、イオン交換水、エチレングリコール及びジヨードメタンの表面自由エネルギーは、上記の表1に示した値を用いた。各々の溶媒の接触角を、上記の式(1)に代入して連立方程式を解くことで基材の各表面自由エネルギーγLW、γ+、γ−を算出し、さらに上記の下式(2)に、算出したγLW、γ+、γ−を代入することで表面自由エネルギーγtotを算出した。
[実施例1:積層体(1)の作製]
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「Kapton150EN−C」、厚さ50μm)からなる支持体の表面に、合成例1で得られたプライマー層用樹脂(1)の2質量%MEK溶液を、スピンコーターを用いて、その乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。次いで、熱風乾燥機を用いて120℃で5分間乾燥することによって、ポリイミドフィルムの表面にプライマー層を形成した。このプライマー層の表面自由エネルギーは28mJ/m2であった。
次に、前記プライマー層の表面に、調製例1で得られた流動体(1)をインクジェットプリンター(コニカミノルタ株式会社製「インクジェット試験機EB100」、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pL)を用い、図1のようなくし歯電極を作製した。線幅が90μmと線間幅110μmであり、配線としては、片側10本、両側合計で20本を交互に配置した。重ね代は10mm、くし歯配線の先端からもう一方のくし歯までの距離(d)を5mmとした。次いで、250℃で30分間焼成することによって、前記導電層(C)に相当する銀層(厚さ約0.2μm)形成した。
次に、上記で得られた導電層(C)をカソードとし、含リン銅をアノードとして、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で15分間電解めっきを行って、前記銀層の表面に、厚さ10μmの銅めっき層を積層した。厚さ方向と横方向へ等方的に成長するため、めっき後にくし歯電極の線幅が100μm、線間幅が100μmであることを確認し、積層体(1)を得た。前記電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(奥野製薬工業株式会社製「トップルチナSF−M」)5ml/Lを用いた。
[参考例1:積層体(2)の作製]
実施例1で用いたプライマー層樹脂(1)の2質量%MEK溶液に代えて、合成例2で得られたプライマー層樹脂(2)の2質量%酢酸エチル溶液を用いた以外は実施例1と同様に行い、積層体(2)を得た。このプライマー層の表面自由エネルギーは20mJ/m2であった。
[実施例2]
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製「Kapton150EN−C」、厚さ38μm)からなる支持体の表面に、合成例1で得られたプライマー層樹脂(1)の2質量%MEK溶液を、スピンコーターを用いて、その乾燥後の厚さが0.1μmとなるように塗工した。次いで、熱風乾燥機を用いて120℃で5分間乾燥することによって、ポリイミドフィルムの表面にプライマー層を形成した。さらに、このプライマー層の表面をコロナ表面改質評価装置(春日電機株式会社製「TEC−4AX」)でコロナ処理した。コロナ処理後のプライマー層は、親水化されており、その表面自由エネルギーは45mJ/m2であった。
次に、前記プライマー層の表面に、調製例1で得られた流動体(1)をインクジェットプリンター(コニカミノルタ株式会社製「インクジェット試験機EB100」、評価用プリンタヘッドKM512L、吐出量42pL)を用い、図1のようなくし歯電極を作製した。線幅が90μmと線間幅110μmであり、配線としては、片側10本、両側合計で20本を交互に配置した。重ね代は10mm、くし歯配線の先端からもう一方のくし歯までの距離(d)を5mmとした。次いで、250℃で30分間焼成することによって、前記導電層(C)に相当する銀層(厚さ約0.2μm)形成した。
次に、上記で得られた導電層(C)をカソードとし、含リン銅をアノードとして、硫酸銅を含有する電解めっき液を用いて電流密度2A/dm2で15分間電解めっきを行って、前記銀層の表面に、厚さ10μmの銅めっき層を積層した。厚さ方向と横方向へ等方的に成長するため、めっき後にくし歯電極の線幅が100μm、線間幅が100μmであることを確認し、積層体3を得た。前記電解めっき液としては、硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、添加剤(奥野製薬工業株式会社製「トップルチナSF−M」)5ml/Lを用いた。
[比較例1]
実施例1で用いたプライマー層樹脂(1)を用いずに、ポリイミドフィルム上に、直接導電層(C)を設けた以外は実施例1と同様に行い、積層体(R1)を得た。なお、ポリイミドフィルムの表面自由エネルギーは48mJ/m2であった。
[比較例2]
実施例1で用いたプライマー層樹脂(1)に代えて、ポリテトラフルオロエチレンの樹脂溶液(三井デュポンフロロケミカル社製「AF2400S」)を不揮発2質量%に調整したものを用いてプライマー層を形成した以外は実施例1と同様に行い、積層体(R2)を得た。なお、ポリテトラフルオロエチレンのプライマー層の表面自由エネルギーは10mJ/m2であった。
<エレクトロケミカルマイグレーションの評価方法>
試験装置として、エスペック株式会社製「SH−641」で温度や湿度を調整し、エスペック株式会社製「AMI」で抵抗値を測定した。室温から85℃に昇温した後、湿度85%に調整した。電圧印加は直流電圧50Vで行い、1000時間まで試験を行った。なお、抵抗値が1×106Ω以下になった時点で短絡したと判定した。
本発明の積層体である実施例1及び2で得られた積層体(1)及び(2)は、高温高湿度下の環境下でも、長時間短絡しない信頼性を有することが確認できた。
一方、比較例1の積層体(R1)は、プライマー層を設けなかった例であるが、1時間という短時間で短絡を生じ、信頼性に乏しいことが確認できた。また、比較例2の積層体(R2)は、本発明で規定したプライマー層(B)の表面自由エネルギーの下限である20mJ/m2未満である10mJ/m2のテトラフルオロエチレンのプライマー層を用いた例であるが、高温高湿度の環境下で、ごく短時間のうちに容易に配線が剥離を生じる問題があることが確認できた。