以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記述内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
(実施の形態1)
本発明は、目的物を精製するための装置及び精製管に関するものである。以下、図1、図2、図3を用いて具体的な説明を行う。
図1、2、3は、本発明の精製装置を模式的に示した断面図である。
本発明の精製装置100は、試料を気化し、目的物質を精製、回収するための精製部110と、試料を気化し、精製するための温度調節手段120と、真空排気手段130と、を有する。なお、本明細書で試料とは、目的物質、不純物、及び溶媒等が混在している物質のことを示す。
図1に示すように、温度調節手段120は、精製部110に近接して設けられており、精製部110は温度調節手段120により温度勾配を付けられる。具体的には、試料が全て気化する温度領域、目的物質が析出又は凝縮する温度領域等、少なくとも目的物質を単離、精製、回収できるように、精製部110は温度勾配を付けられる。温度勾配は、一方向に温度が低くなるようにしてもよいし、精製部110の中央を高温領域となるようにし、両方向に温度が低くなるようにしてもよい。
精製部110で気化した試料は、蒸気圧の低い方へ拡散していく。蒸気圧は一般に温度の上昇とともに増大する。したがって、気化した試料は温度勾配に従って、温度の低い方へ拡散していく。すなわち、気化した試料は精製管内の圧力及び温度勾配に従って、液体または固体に状態変化する温度で、液体として凝縮するか、または固体として析出する。なお、試料が気化する温度領域が、精製部110の最も高温の領域となる。
温度調節手段120としては、ヒーター、ホットプレート等を用いればよく、精製部11
0に近接して(例えば、試料を気化する精製管の近傍等)設ければよい。なお、図1では温度調節手段120を精製部110に近接して1つのみ設けた場合を示したが、本発明はこれに限らず、複数個設けても構わない。温度調節手段120の設置場所や個数は、適宜変更可能である。また、精製部110にかけた温度勾配の状態を維持できるように、保温手段や、精製部110を囲う保護カバー等を設けるのが好ましい。
なお、精製部110の温度調節をする際に、試料が気化する温度、目的物質が析出又は凝縮する温度等の温度領域を最適な温度に設定する必要がある。これは、目的物質の分解点、昇華点、又は沸点等を調べ、設定すればよい。
本発明の精製装置100の別の形態としては、図2に示すように、試料を気化し、目的物質を精製、回収するための精製部110と、試料を気化し、精製するための温度調節手段120と、真空排気手段130と、精製部110を格納した真空容器140とを有する。
精製部110を格納した真空容器140は、真空排気手段による減圧時に形を変えないことと、精製時の高温に耐えられる耐熱性が求められる。その素材としては、耐熱性の樹脂や、ガラス、金属や合金などを用いることができる。真空排気手段130としては、真空ポンプを用いることができ、その中でもロータリーポンプ、油拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプなどを用いることができる。
図3に示すように、本発明の精製装置100の別の形態としては、試料を気化し、目的物質を精製、回収するための精製部110と、試料を気化し、精製するための温度調節手段120と、真空排気手段130と、精製部110を格納した真空容器140と、気体供給手段150とを有する。気体供給手段から供給する気体としては、アルゴン、窒素等の不活性ガスを用いればよい。
次に、本発明の精製部110について、図4と図5を用いて詳しく説明する。図4は精製部110が有する2つの精製管210と220と、これら2つの精製管を連結する連結部材310の斜視図を示したものである。図4における連結部材310内部における、2つの精製管の連結状態を示すため、図5においては、連結部材310内部の模式図を示している。
精製部110は、少なくとも2つ以上の精製管を連ねて構成する。精製部110に配置する精製管の個数は、適宜変更可能である。具体的には、試料を配置するための第1の精製管210と、精製されて析出又は凝縮した目的物質を回収するための第2の精製管220を含む、少なくとも2つ以上の精製管を有していればよい。
精製部110には、図4に示す実線の両方向矢印のような温度勾配が付けられる。図4に示す実線は、紙面に対して右から左へと一方向に温度が低下していることを示している。第1の精製管210内の試料を配置する場所には、精製部110において最も高い温度がかけられる。
本実施の形態では第1の精製管210に隣接して、目的物質を回収するための第2の精製管220を配置する。なお、本発明はこの限りでなく、第1の精製管210と第2の精製管220以外に、例えば、第3の精製管を第2の精製管に連結されるように配置しても構わない。目的物質を回収するための精製管を配置した領域が、予め調べた目的物質が析出又は凝縮する温度になればよい。
第1の精製管210、及び第2の精製管220の基本構造は、円筒形の中空管である。さらに、第1の精製管210、及び第2の精製管220は、気化した試料(目的物質及び不純物を含む)が通過できるように、少なくとも隣接する精製管と連結部材によって連結される端部には開口が設けられている。精製管としては、樹脂、ガラス、石英、金属、合金等からなる中空管を用いるのが好ましい。また、本発明はこれに限らず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であればよい。本実施の形態では、第1の精製管210の右側は開口されていないが、精製管210の左側及び第2の精製管220の両端部に開口が設けられている。
そして、本発明の精製装置において、その効果を得るためには、2つの精製管210と220とが、これら2つの精製管を連結する連結部材310によってねじ方式によって連結されていることが必要である。
本明細書において、ねじ方式は次のように定義する。すなわち、雄ねじと雌ねじを組み合わせて固定する連結の方式であり、雄ねじは円筒や円錐の面に沿って螺旋状の突起が設けられており、雌ねじは雄ねじに対応するように円筒や円錐の面に沿って螺旋状の溝が設けられたものであり、雄ねじを雌ねじに挿入することで固定される。
図5に示すように、第1の精製管210は、第1の端部211、中央部、第2の端部212の領域を有しており、第2の端部212の付近には、開口と雄ねじの突起形状215が設けられている。第2の精製管220は、第3の端部223、中央部、及び第4の端部224の領域を有しており、第3と第4の端部とには、それぞれ開口が設けられ、前記第3の端部付近には雄ねじ形状225が設けられている。また、連結部材310は、ねじ形状215および225に適合する雌ねじの溝315を有しており、端部212は端部223とねじ形状215、225、315によって、連結部材310に覆われながら連結されている。
本発明でねじ方式によって連結する利点について、図6を用いて説明する。図6(A)は、第1の精製管を500に示す矢印の向きに回すことによって外すことを模式的に示したものである。図6(B)は、図6(A)における第1の精製管210と連結部材310のねじによる連結部を拡大したものである。精製時に気化した試料は、精製管と連結部材の間の隙間に侵入できるため、300に示すように精製管と連結部材のねじとの間に析出し、両者を接着してしまう。特に、雄ねじと雌ねじの微小な空間に析出したときに接着効果が大きい。有機材料がこのような微小な空間に析出してしまうと、硬化した接着剤のようにふるまうため、2つの部材を引き離すのは一般に困難である。発明者らは、さまざまな連結方式を検討した結果、ねじ方式による連結が、従来の方式よりも飛躍的に良好な結果をもたらすことを見出した。すなわち、図6(B)に示すように、精製管を500の向きに回転させると、ねじは螺旋状に形成されているため、析出した材料を引き剥がす強い力がねじの突起形状と垂直の方向に働く(ブロック矢印400)。図6(C)は、精製管の雄ねじを、析出した材料とともに仮想的に直線状に引き伸ばした図である。図6(C)のDで示すように、析出した材料はねじの突起と平行の方向には厚いとみなせるので、平行方向には機械的に壊れにくい。一方、ねじの突起形状と垂直の方向には、図6(C)のdに示すように厚みが小さいため外力に耐えきれなくなり、機械的な亀裂が入って粘着力が失われる。蒸着工程用の低分子系有機EL用の有機材料は、ガラス状態か多結晶状態として析出するため、いずれも強い力をかければ脆く砕ける性質がある。また機械的な破壊で隙間ができれば糊のように再接着できないため、それ以降は取り外しを阻害することはない。以上をまとめると、脆い有機材料に対して厚みが薄い方向に強い力をかけられるねじ方式は、精製装置の簡便な取り外しの機構として優れている。有機材料に限らず、無機材料でもこのような性質の固体を形成する材料であれば、本発明を有効に適用することができる。
なお、図5では、精製管側が雄ねじ、連結部材側が雌ねじとなる組み合わせの例が記載されているが、精製管側が雌ねじ、連結部材側が雄ねじとなる組み合わせでも本発明の効果を得ることができる。
精製管は、2つの端部と中央部の肉厚は、精製管の強度を保つため、或いは温度が不均一になることを防ぐため、同一にするのが好ましい。
図7は、図4の連結部の断面図を示している。図7(A)は、連結部材310を中央部で紙面に垂直に切断したときの断面図である。図7(B)は、連結部材を中央部で紙面と水平方向に切断した時の断面図である。また図7(C)は、連結部材に精製管を挿入した状態で、連結部材を中央部で紙面と水平方向に切断した時の断面図である。
本発明によれば、精製工程の前に2つの精製管を連結部材によって簡便に連結でき、また、真空引きなどの気流によって精製管同士の位置関係がずれることがなく、設置が容易である。さらに、精製後に簡便に取り外すことができる。
また、本発明によれば、精製工程の前に2つの精製管をお互いの相対的な位置が変わらないように固定した後に、精製装置内に設置でき、常に一定の位置関係を保つことができる。このため、繰り返し、同じ精製を実施した際にも、再現性よく精製ができる。
また、本発明によれば、管同士を位置的に固定できるため、複数の管を連結したものをあたかも一つの管として扱えるようになるため、原料の配置や精製管同士の相対的な位置を確定したのちに、所望の位置に精製部を配置できる。これにより、真空容器内に配置してから位置の調整が必要であった遊嵌の方法よりも作業性が大幅に向上できる。
また、本発明によれば、第1の精製管210の第2の端部212と、第2の精製管220の第3の端部223との間の空間は、連結部材によって覆われているので、内部で気化した材料が精製管の外に漏れだす量を大幅に低減できる。これにより、材料ロスが少ないので高い収率で精製できる。
また、外部への漏れ量が少ないので、外管などの洗浄に要する手間を減らせる。したがって、装置の洗浄の手間が少ない精製装置を実現できる。
また本発明によれば、内部で気化した材料が精製管の外部に漏れだす量を低減でき、真空容器(外管)140の汚染が低減できるので、精製装置を何度も使う場合に、装置の洗浄などの手間を低減できる。
また、本発明によれば、汚染が低減でき、洗浄がより確実に行えるので、材料のコンタミネーションを防ぐことができるために高純度の精製が可能となる。
また、図8に示すように、本発明の精製管の端部212、223、224は精製管の中央部分の端部よりも細くしてあってもよい。このような構造にすることで、精製管から試料や目的物質の漏れを防ぐことができる。特に、精製中の加熱によって液体状態になる試料は、精製中に流動性を持ち、精製管の下側を自由に濡れ広がるが、図8のように端部を中央部分よりも細くしてあれば、精製管中央部の下側の空間が液貯めとなるために、端部をオーバーフローして隣の精製管の析出物と混合しにくい。なお、図5の構造で効果を得るためには第1の精製管210の第1の端部211は、試料の漏出を防ぐために塞いでおく(開口していない)必要がある。
また、図8では、第二の精製管220の端部223と224の両側に雄ねじがある。精製によって第二の精製管220の中に所望の純度の材料を得て、精製管220の2つの雄ねじに適合する雌ねじを有する2つの蓋を準備し、この2つの蓋によって、第二の精製管220の端部223と224を覆ってもよい。これによって、薬さじなどで材料を取り出す手間と材料ロスをなくすことができ、回収と保管が容易になる。さらに、精製後、取り外した精製管220を窒素置換されたグローブボックスなどに入れて、蓋をすることにより、保存安定性をさらに高めることができる。
なお、図8における端部212と223は、図8のように非連続的に細くなっていてもよいし、連続的に勾配を設けて細くしてあってもよい。
図5や図8における連結される端部212と223の開口の大きさは、異なっていてもよいが、連結部材のねじ形状の作りやすさやねじの隙間からの漏れを考えた場合、ほぼ同じであることが好ましい。
また、本発明において、第1の精製管の第2の端部212と第2の精製管の第3の端部223は、図5のように接していなくてもよいし、図9(A)のように接していてもよい。接触させる場合は、図5(B)のように端部212と223の両方とも曲率を持たせて、ポイント290で互いに接触させてもよい。前述のように、析出した材料による接着が強い箇所は、微小な空間に析出した箇所である。例えば、図5(C)の黒点部分に析出した場合は接触部付近の接着力が強いが、その面積が小さいため、ねじによる外力によって砕きやすく、2つの精製管を取り外しやすい効果が得られる。
また、本発明において、第1の精製管の第2の端部212と第2の精製管の第3の端部223は、ガスケットなどのシールを介して接していてもよい。本発明書において、シールとは精製部外部への液体や気体の漏れや精製部内部への液体や気体の侵入を防ぐ部材と定義し、ガスケットはボルトや外圧によって固定されるシールの一種、と定義する。ガスケットの形状としては、外観および断面が円形のOリングなどを好ましく用いることができる。また、ガスケットの断面が四角形でもよく、外管の形状に合わせて四角形など円形以外の外観のガスケットでもよい。ガスケットの材質としては、精製時の温度に耐えられればゴムや樹脂材料であってもよいが、精製温度が高温であれば、金属や膨張黒鉛、あるいはこれらの積層構造からなるガスケットを好ましく用いることができる。
例えば、図10(A)に示すように、第1の精製管の第2の端部212と第2の精製管の第3の端部223のシールとして、Oリング410を好ましく用いることができる。その接し方としては、図10(B)に示すように2つの平坦な端部がOリングと接するように接触させてもよい。図10(C)に示すように、2つの端部にOリングが入る溝を形成しておいて、そこにOリングが嵌め込まれるようにOリングと接触させてもよい。図10(B)の方式であると、Oリングと端部との接触面積が小さいため外しやすい利点がある。図10(c)の方式であると、Oリングが端からずれにくいのでOリングの設置が容易である利点がある。また、図10(D)のように片側にOリングが入る溝を形成しておいて、そこにOリングをはめこみ、もう一方は平坦な端部としてもよい。この場合は、設置性と精製後の外しやすさを両立できる利点がある。Oリングによって、密閉性が十分に保たれた場合は、図10(E)に示すように、気化した試料は精製管の外に出ることができないので、材料が付着するのは黒点で示した内側のみである。したがって、ねじ方式によって2つの精製管を容易に取り外しできるとともに、外管の汚れを完全に防ぐことができるために、洗浄の手間がなく、作業性が大幅に向上する。
また、前述の図1のように、本発明においては、精製管を連結した構造のみで、精製管の外側に真空容器を必要としない構成にできる。特に図10のようにOリングなどのガスケットを用いて密閉性を向上させた場合、精製管内を高い真空度に保つことができるので、高温で分解しやすい材料であっても、高真空下では気化温度が下がるために、効率的に精製が行うことができる。この場合、複数の精製管のうち、最も真空装置に近い精製管を真空装置に連結する。
本発明では、前記連結部材の熱導電性が精製管の熱伝導性よりも高い構造にしてもよい。これによって、連結部材で覆われた部分における析出が抑制できる。また、一度析出しても再度気化しやすいため、連結部材あるいはそれに覆われた精製管の部分における試料の析出を抑制できる。したがって、連結部材の洗浄の手間が軽減できる。また、図8のように端部を細くした場合は、接続部において試料が析出して流路をふさいでしまい、それ以上の精製が困難になることがあるが、そのような状況になるのを防ぐことができる。
本発明では、連結部材が外部電源から通電することにより加熱できる機構を有していてもよい。これによって、精製後に2つの精製管を連結部材から取り外す際に、ねじ部位に材料が析出して固着し、無理に力をかけると連結部材あるいは精製管を破損するおそれが生じた場合においても、通電加熱によって析出した材料を溶融あるいは昇華させることができるために、より簡便に2つの精製管を取り外すことができる。これによって、連結部材あるいは精製管が破損することを防ぐことができる。より具体的には、図11のように、電熱ヒーター部320を内部に有する連結部材310を好適に用いることができる。
第1の精製管210の中央部、及び第2の精製管220の中央部については、一様の管内径、及び管外径を持つ円柱状の中空管とすればよい。なお、本発明はこれに限定されず、中央部が多様な管内径の領域を有してもよい。
本発明は、隣接する精製管同士は同一形状でなくともよい。また、本発明は、一つの精製管が隣接する他の精製管に連結部材とねじ方式で連結されればよく、第1の端部、中央部、及び第2の端部の気化した試料の流路と垂直方向の断面は、同心円でなくともよい。なお、第1の端部、中央部、及び第2の端部の気化した試料の流路と垂直方向の断面が同心円である方が、配置する際に簡便になる。
以上に述べたように、本発明の構成にすることで、1.目的物質を高い純度で精製でき、2.高い収率で精製でき、3.再現性が高く精製でき、4.精製管の設置が容易であり、5.精製物の回収と保管が容易であり、6.装置の洗浄の手間が少ない精製装置を提供できる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、精製部と真空を保持するための外管と真空排気手段を設けた構成について、図12を用いて説明する。
本実施の形態の精製装置6000は、精製部6010と、温度調節手段6020と、
真空排気手段6030を有する。
精製部6010は、試料を配置するための第1の精製管6011、及び目的物質を回収するための第2の精製管6012と第3の精製管6013を有する。本実施の形態では、真空を保持し、内部に精製部6010を格納する真空容器6040としてガラス、石英などの材質の外管を用いることができる。なお、外管の材料は、ガラス、石英に限定されず、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であればよい。また、減圧しても強度を保てる材料であればよい。また、形状としては、円筒形を好ましく用いることができる。精製後に精製管を連結部材から外すときに力がかけやすいように、精製管の外側に突起などを設けてもよい。
また、外管6040は、ガラス管以外にも真空チャンバー等、気密状態を保つことができ、且つ精製部6010をその内部に格納できればよい。
精製部6010は、第1の精製管6011が隣接する第2の精製管6012と連結部材6031によってねじ方式によって連結されており、さらに第2の精製管6012が第3の精製管6013と連結部材6032によってねじ方式によって連結されている。本実施の形態では、精製部6010は3つの精製管で構成したが、本発明はこれに限らず、4つ以上の精製管で構成されていてもよい。
精製管6011と6012を連結部材6031によって連結する方法としては、図12に示される連結部材6031の右側から、ねじ方向に回転させながら精製管6011をねじ込んでいく。次に、図12に示される連結部材6031の左側から精製管6012をねじ込んでいき、精製管6011につきあたるまで進めていく。精製管6011と精製管6012を連結部材6031にねじ込む順番は、精製管6012、精製管6011の順番でもよい。精製管6012と6013を連結部材6032によって連結する方法も同様である。
連結部材6031の材質としては、精製時の設定温度に耐えられ、内部で発生する気体に対する耐久性がある金属やセラミックス、ガラス、樹脂などを用いることができる。特に、金属は耐熱性が高く、成型加工が容易であることと、熱伝導性が高い点で好ましく用いることができる。熱伝導性が高いことで、連結部材付近における、材料の析出を抑制することができるので、連結部材と精製管の間に材料が大量に析出して固着することで連結部材と精製管が外れなくなることを防ぐことができる。また、大量に析出することで、材料の流路をふさいでしまうことも防ぐことができる。
温度調節手段6020は、精製部6010に近接して設ける。温度調節手段6020としては、少なくとも試料を気化する温度に加熱できるよう、ヒーター、ホットプレート等の加熱器を設ければよい。また、試料が配置される第1の精製管6011に、精製部6010のうち最も高い温度がかけられる。
また、精製部6010に温度勾配をかけた後、温度勾配の状態を保つため、精製部6010全体に保温機能のついた温度調節手段6020を設けてもよい。また、精製部6010、或いは外管6040を囲むように金属カバー、ガラスウール、セラミック等の保護カバーを設け、温度勾配の状態を保ってもよい。
また、本実施例では、真空排気手段6030と外管6040は配管6060によって連結されている。排気経路の途中に、低温に保持できる排気トラップを設けておけば、気化した試料の一部が精製部6010で冷やしきれずに排出されてきた場合に捕捉できるため、真空排気手段6030へ吸い込まれて、設備が腐食などの劣化を受けることを防止できる。
また、本実施例では、真空排気手段6030側と逆側の外管6040の端部は塞がれており、外管内部を真空にでき、したがって精製部6010の精製管の内部を真空保持できる構成としている。このような構成の場合、温度勾配による圧力分布と、試料の気化時に生成する局所的な圧力によって、気化した材料は真空排気手段6030側に運ばれていく。
真空排気手段6030によって精製部6010内を真空状態とし、減圧することが可能となる。その結果、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、真空排気手段6030を用いて精製部6010を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。
本実施の形態のように、精製装置6000に真空排気手段6030を配置することで、目的物質を効率よく精製することができる。また、精製速度を速くすることが可能となり、作業効率を向上することができる。さらに、大気中では気化しない試料に関しても精製することが可能となり、簡易に目的物質を得ることができる。
さらに本実施の形態では、精製管6012と6013は、管の両側にねじ口を備えているので、これらのねじ口に適合するねじ蓋によって密封することによって、精製された材料を別の容器に移すことなく保管できる。これによって、薬さじなどで材料を取り出す手間と材料ロスをなくすことができる。さらに、精製後、取り外した精製管6012と6013を窒素置換されたグローブボックスなどに入れて、両端の雄ねじに適合する蓋をすることにより、保存安定性をさらに高めることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、精製部を直接に真空排気手段と連結した構成について、図13を用いて説明する。その他の構成については、実施の形態2と同じであるので、説明は省略する。
本実施の形態の精製装置6000は、精製部6010と、温度調節手段6020と、真空排気手段6030を有する。
精製部6010は、試料を配置するための第1の精製管6011、及び目的物質を回収するための第2の精製管6012と第3の精製管6013を有する。本実施の形態では、実施の形態1のように精製部6010を格納し真空を維持する外管6040がないため、精製管6011〜6013はそれ自体が、真空を維持できなければならない。精製管の材料は、ガラス、石英などのほか、試料や目的物質及び不純物と反応しない材料で、且つ目的物質の回収時に目的物質中に混入せず、実施温度に耐えうる材料であり、また、減圧しても強度を保てる材料であればよい。真空に耐えやすいよう、図13では、精製管の形状に丸みを帯びさせていているが、真空に対する強度があれば、実施の形態2のように角がある形状でもよい。
精製部6010は、第1の精製管6011が隣接する第2の精製管6012に連結部材6031によってねじ方式によって連結されており、第2の精製管6012が隣接する第3の精製管6013に連結部材6032によってねじ方式によって連結されている。真空を保つために、精製管同士のつなぎ目には、外気との通気を遮断するためのシールが必要であり、Oリングなどの形状のガスケットを好適に用いることができる。図13の中には、6051、6052で示してある。また、図13の例では、精製管同士のみでなく、精製管6013と連結管6060も、連結部材6033とOリングなどのガスケット6053を用い、ねじ方式により連結されている。
図14は、図13の精製管の連結部の断面図を示している。図14(A)は、連結部材6031を中央部で紙面に垂直に切断したときの断面図である。図14(B)は、連結部材6031を中央部で紙面と水平方向に切断した時の断面図である。また図14(C)は、連結部材6031に精製管を挿入した状態で、連結部材を中央部で紙面と水平方向に切断した時の断面図である。
なお、実施の形態2では、2つの精製管の間に1つのOリングなどのガスケットが挟まれる構造となっているが、図15の断面図ように、連結部材と2つの精製管の間に2つのOリングなどのガスケットが挟まれる構造であってもよい。
Oリングなどのガスケットの材質としては、精製温度において真空が保てるものであればよい。精製温度が100℃以下であれば、ゴムを用いることができる。この場合は、精製中や洗浄時の腐食に強いPTFEゴムなどの材質を好ましく用いることができる。精製温度が100℃〜200℃の場合は、この温度領域に耐えられる耐熱性の樹脂材料を用いればよい。精製温度が200℃以上の高温であれば、金属Oリングなどを好適に用いることができる。金属Oリングの例としては金属製の中空Oリングなどがあり、外圧によってその形状をかえることで気密性を保つことができる。
本実施の形態では、精製部6010は3つの精製管で構成したが、本発明はこれに限らず、4つ以上の精製管で構成されていてもよい。
温度調節手段6020は、精製部6010に近接して設ける。温度調節手段6020としては、少なくとも試料を気化する温度に加熱できるよう、ヒーター、ホットプレート等の加熱器を設ければよい。また、試料が配置される第1の精製管6011に、精製部6010のうち、最も高い温度がかけられる。
また、精製部6010に温度勾配をかけた後、温度勾配の状態を保つため、精製部6010全体に保温機能のついた温度調節手段6020を設けてもよい。また、精製部6010を囲むように金属カバー、ガラスウール、セラミック等の保護カバーを設け、温度勾配の状態を保ってもよい。
また、本実施例では、真空排気手段6030と精製部6010は配管6060によって連結されている。真空経路の途中に低温に保持できる排気トラップを設けておけば、気化した試料の一部が精製部6010で冷やしきれずに排出されてきた場合に捕捉できるため、真空排気手段6030へ吸い込まれて、設備が腐食などのダメージを受けるのを防止できる。
また、本実施例では、真空排気手段6030側と逆側の精製管6011の右側の端部は塞がれており、内部の真空を保持できる構成としている。このような構成の場合、温度勾配による圧力分布と、試料の気化時に生成する局所的な圧力によって、気化した材料は真空排気手段6030側に運ばれていく。
真空排気手段6030によって精製部6010内を真空状態とし、減圧することが可能となる。その結果、試料が気化する温度を下げることができる。すなわち、真空排気手段6030を用いて精製部6010を減圧すると、試料の昇華又は蒸発温度が低下し、大気圧下では気化しない試料も気化させることが可能となる。
本実施の形態のように、精製装置6000に真空排気手段6030を配置することで、目的物質を効率よく精製することができる。また、精製速度を速くすることが可能となり、作業効率を向上することができる。さらに、大気中では気化しない試料に関しても精製することが可能となり、簡易に目的物質を得ることができる。
さらに本実施の形態では、精製管6012と6013は、管の両側にねじ口を備えているので、これらのねじ口に適合するねじ蓋によって密封することによって、精製された材料を別の容器に移すことなく保管できる。これによって、薬さじなどで材料を取り出す手間と材料ロスをなくすことができる。さらに、精製後、取り外した精製管6012と6013を窒素置換されたグローブボックスなどに入れて、両端の雄ねじに適合する蓋をすることにより、保存安定性をさらに高めることができる。
本発明の精製装置を用いた精製方法及び精製物について、図16を用いて説明する。
図16に示すように、本発明の精製装置9000は、精製部9010、温度調節手段9020、外管9040、真空排気手段9030を有する。真空排気手段9030は、配管9060を介して精製部9010を含む外管9040と連結されている。本実施例では、外管9040の真空排気手段と逆側の端部は閉じられた構造であり、気体供給手段を有していない。
精製部9010は、第1の精製管9011と、第2の精製管9012と、第3の精製管9013とを有する。第1の精製管9011の真空排気手段9030側の端部は、中央部よりも細口であり、雄ねじ形状を有する端部となっている。また、第1の精製管9011の真空排気手段9030と逆側の端部は閉じられた構造である。第2の精製管9012と第3の精製管9013は、両側の端部が中央部よりも細口であり、雄ねじ形状を有する端部となっているものを用いた。
真空排気手段9030は、真空計と、コールドトラップ部と、真空ポンプとを有する構成とした。真空ポンプは油拡散ポンプをメインポンプとし、補助ポンプとしてロータリーポンプを有する構成を用いた。
まず、第1の精製管9011に試料9111(1.3g)を入れた。試料9111は、構造式(1)で表されるAlqと、不純物と、溶媒との混合物であった。
次いで、連結部材9031の雌ねじに対して、第1の精製管9011の雄ねじをねじこみ、次いで、第1の精製管9011と逆側から、連結部材9031の雌ねじに対して第2の精製管9012の雄ねじを第1の精製管9011の端部に接触する箇所までねじこむことによって、連結部材9031と第1の精製管9011と第2の精製管9012とを連結した。同様に、連結部材9032の雌ねじに対して、第2の精製管9012の雄ねじをねじこみ、次いで、第2の精製管9012と逆側から、連結部材9032の雌ねじに対して第3の精製管9013の雄ねじを第2の精製管9012の端部に接触する箇所までねじこむことによって、連結部材9032と第2の精製管9012と第3の精製管9013とを連結した。この連結した精製管9010を外管9040に挿入した。精製管はお互いに連結、固定されているため、挿入する工程は容易であった。
第1の精製管9011として、肉厚2.5mm、全長78mm、中央部外径34mm、端部外径26mm、端部内径21mmの強化ガラスからなる管を用いた。なお、精製管9011の真空ポンプと逆側は閉じられている。第2および第3の精製管9012と9013として、いずれも肉厚2.5mm、全長75mm、中央部外径34mm、端部外径26mm、端部内径21mmの強化ガラスからなる管を用いた。第1〜3の精製管の雄ねじは、高さ1.1mm、ピッチ4.9mmのものを用いた。
連結部材9031と9032として、ねじの深さとピッチが精製管1〜3と適合する雌ねじを有する、外径36mmのナット形状のものを試作して用いた。その材質としては成型加工性と軽量性、熱伝導性に優れるアルミを用いた。熱伝導性が高いことによって、断面積が小さく、析出しやすくなっている連結部内部での材料の析出を抑制し、接続部が材料の析出によって閉塞されることを防ぐことができる。
図17(A)は、精製管9011、9012、9013と連結部材9031、9032の連結前の写真を、図17(B)は、連結部材9031、9032の雌ねじの斜視の写真、図17(C)は、精製管9011、9012、9013と連結部材9031、9032の連結後の写真の写真を示している。
図16では記載を省略しているが、外管9040の右側端部は、シリコーン栓によって密閉した。また、外管9040と真空接続管9060との連結部は次の様式とした。ゴム製のOリングを備えた金属フランジ部を有する金属管をシリコーン栓に通し、このシリコーン栓を外管の左側端部に、フランジ部が真空ポンプ側になるように設置した。次に、前記ゴム製のOリングを備えた金属フランジと真空接続管とを連結することで、密閉性が高い接続を得た。
次いで、真空ポンプ9030にて精製部9010を含む外管9040を真空排気し、1x10−2Paまで真空排気した。
続けて、温度調節手段9020を室温から310℃まで30分かけて昇温し、その後3時間加熱を続けた。この時、精製部9010の第2の精製管9012の内部に黄色の固体が凝縮した。
精製終了後、加熱を止め、この外管9040を室温まで冷ました後、前記精製部9010をゆっくりと大気暴露した。
続けて、外管9040から第1の精製管9011、第2の精製管9012、及び第3の精製管9013を取り出した。この際、外管9040を傾けることで、互いに連結されている第1の精製管9011、第2の精製管9012、及び第3の精製管9013を簡単に取り出すことが出来た。
図18は、連結された状態で取り出された精製管9011〜9013の写真である。中央の精製管9012に昇華された固体が主に析出しており、左側の精製管9013には若干の固体が析出しており、右側の精製管9011には埃状の残渣が残っていた。
次いで、精製管と連結部材を外す作業を行った。ねじ部に少量析出した固体は粉状で接着性は弱く、ねじによって連結部材と精製管は容易に外すことができた。
取り外した精製管9012を、内部に析出物9112がある状態で秤量したところ33.31gであった。精製前の精製管9012のみの質量32.06gを差し引いて、析出物は1.25gであった。同様に精製管9013の析出物9113を測定したところ、0.02gであり、精製管9011の残留物は0.01g以下であった。析出物9112の収率は、1.25g/1.30g=96%と高い収率であった。また、析出物9112と析出物9113を合わせた収率は、1.27g/1.30g=98%と高い収率であった。
精製管9012を窒素置換したグローブボックスに入れ、精製管9012の雄ねじにあうシール付きの蓋を精製管9012の両側から取り付け、その後グローブボックスから取り出してそのまま保管した。内部に付着した9112を薬さじなどで取り出す必要がなく、簡易で長期保存が可能である。
また、精製管9011の内部には、少量の茶色のおがくずのような固体が残っていた。これをテトラヒドロフラン溶液に溶かして発光スペクトルを測定したが、発光は全く観測されず、Alqではない固体であることが分かった。このことから、試料9111に含まれていた不揮発性の不純物が残っていたと結論付けられた。
また、精製管9012の内部に付着した固体をテトラヒドロフランに溶かして発光スペクトルを測定したところ、文献に記載の緑色の発光スペクトルが観測され、高純度のAlqが得られていることが分かった。
以上の結果から、本発明の精製装置を用いて精製を行うことで、高い純度の目的物質が高収率で得られることが確認出来た。
本実施例では、構造式(2)で表されるCBPを主成分として含む試料2.64gを精製管9011に入れ、精製温度300℃で精製を実施した以外は、実施例1と全く同じように精製を実施した。以下、図面と図面の番号は図16と同じものを用いて精製の結果を説明する。
精製終了後、加熱を止め、外管9040を室温まで冷ました後、前記精製部9010をゆっくりと大気暴露した。
続けて、外管9040から第1の精製管9011、第2の精製管9012、及び第3の精製管9013を取り出した。この際、外管9040を傾けることで、互いに連結されている第1の精製管9011、第2の精製管9012、及び第3の精製管9013を簡単に取り出すことが出来た。
図19は、連結された状態で取り出された精製管9011〜9013の写真である。中央の精製管9012に昇華された固体が主に析出しており、左側の精製管9013には若干の固体が析出しており、右側の精製管9011の下側には茶色のタール状の残渣が残っていた。このタール状の残渣は、300℃で昇華精製している間は液体状態であり、精製管9011を濡れ広がっていたが、精製管9011の精製管9012側の端部が細口となっているため、精製管9012内に昇華した固体と混ざり合うことはなく、細口の精製管を用いる利点が活かされた。
次いで、精製管と連結部材を外す作業を行った。ねじ部に少量析出した固体は粉状で接着性は強くなく、ねじによって連結部材と精製管は容易に外すことができた。
取り外した精製管9012を、内部に析出物9112がある状態で秤量したところ34.98gであった。精製前の精製管9012のみの質量32.41gを差し引いて、析出物は2.57gであった。同様に精製管9013の析出物9113を測定したところ、0.03gであり、精製管9011の残留物は0.02gであった。析出物9112の収率は、2.57g/2.64g=97%と高い収率であった。また、析出物9112と析出物9113を合わせた収率は、2.60g/2.64g=98%と高い収率であった。
精製管9012を窒素置換したグローブボックスに入れ、精製管9012の雄ねじにあうシール付きの蓋を精製管9012の両側から取り付け、その後グローブボックスから取り出してそのまま保管した。内部に付着した9112を薬さじなどで取り出す必要がなく、簡易で長期保存が可能である。
また、本実施例の精製前の試料(第1の精製管9011に入れた固体9111に相当)と精製後の回収物(第2の精製管9012の内部に析出した固体9112)を核磁気共鳴法(1H−NMR(400MHz、トリメチルシラン入り重クロロホルム))によって測定した。
試料9111の1H−NMRチャートを図20に示す。また、図20(A)のチャートの6.8ppm乃至8.2ppmの範囲を拡大したものを図20(B)に示す。
また、精製後の回収物9112の1H−NMRチャートを図21に示す。図21から、精製後の物質である固体9112は、精製されたCBPであることがわかった。
精製前の試料を測定した図20と、精製後の回収物である固体9112を測定した図21を比較すると、図20(A)では2.1ppm乃至2.3ppm付近に検出された不純物由来のピーク(図の中に丸印と矢印で記載)が、図21ではほぼ消失していた。また、図20(B)では6.88ppm乃至7.03ppm付近に検出された不純物由来のピーク(図の中に丸印と矢印で記載)が、図21では見られなくなった。これらのピークは、主に試料9111に至る前に実施した精製に用いた溶媒に起因し、本実施例の精製によってきれいに除去されている。すなわち、CBPよりも揮発しにくい残渣として残るタール状の不純物の除去に加えて、CBPよりも揮発しやすい不純物も同時に除去できている。
なお、図20及び図21の両方で見られる、7.25ppmのピークはクロロホルムに由来し、1.54ppmのピークは水由来のピークであり、0.0ppmのピークは基準物質のトリメチルシラン由来のピークであり、これは1H−NMR用の溶媒由来のものであり、純度の評価とは関係ない。
以上の結果から、本発明の精製装置を用いて精製を行うことで、高い純度の目的物質が得られることが確認出来た。
本実施例では、構造式(3)で表されるNPDを主成分として含む試料1.30gを精製管9011に入れ、精製温度305℃で精製を実施した以外は、実施例1と同じように精製を実施した。
図22は実施例3を説明する図である。NPDは蒸留性で、一度溶融して液体になってから蒸発する性質があり、また、析出するときも液体として析出し、冷えて固体となる。この点において、実施例1の昇華性のAlqや実施例2のCBPを用いた場合と様相が異なる。実施例3の精製を温度305℃で実施中に、精製部9010の様子を観察すると、挿入した試料9111は溶融し、精製管9011の下側を濡れ広がっていた。また、精製管9012内では液体状に析出し、固化した凝集物9112が主に9012の下側に観察された。
精製終了後、加熱を止め、精製部9010を含む外管9040を室温まで冷ました後、精製部9010をゆっくりと大気暴露した。
続けて、外管9040から第1の精製管9011、第2の精製管9012、第3の精製管9013から構成される精製部9010を取り出した。この際、外管9040を傾けることで、精製部9010は、一体型のものとして簡単に取り出すことができた。この際、精製部9010を取り出した後の外管9040を観察したところ、隣接する精製管同士の連結部が位置した付近はほとんど汚れておらず、試料や精製物、不純物等の漏れが抑制されていることがわかった。つまり、外管側に漏れ出た量は微量であり、精製管と外管を固着するほどの量ではない。
また、取り出した第2の精製管9012を観察したところ、目的物質の固体が精製管内に析出し、溜まっていることがわかった。
図23は、連結された状態で取り出された精製管9011〜9013の写真である。中央の精製管9012に析出した固体が主に析出しており、左側の精製管9013には若干の固体が析出しており、右側の精製管9011には若干の残渣が残っていた。この残渣は、305℃で昇華精製している間は液体状態であり、精製管9011を濡れ広がっていたが、精製管9011の精製管9012側の端部が細口となっているため、精製管9012内に昇華した固体と混ざり合うことはなく、細口の精製管を用いる利点が活かされた。
次いで、精製管と連結部材を外す作業を行った。精製管9012と9013とは、これらを連結する連結部材9032部に析出物はほとんどないために、いずれも連結部材9032から簡単に外すことができた。精製管9011と9012とは、これらを連結する連結部材9031部にNPDの固体が析出して固着していたが、ねじを外す方向に弱い力をかけることによって、析出したNPDの固体が容易に砕けて、簡単にはずすことができた。ねじを外したのちに、連結部を観察したところ、砕けたNPDの固体が確認された。溶融したNPDは、そのガラス転移温度95℃以下でガラス状態となることが知られているが、このガラス状態はもろい。このことから、溶融し硬化した固体が精製管と接合材の隙間に析出していても、本発明のねじ方式は精製管を取り外すことができる優れた方式であることが確認された。
取り外した精製管9012を、内部に析出物9112がある状態で秤量したところ33.24gであった。精製前の精製管9012のみの質量32.06gを差し引いて、析出物は1.18gであった。同様に精製管9013の析出物9113を測定したところ、0.06gであり、精製管9011の残留物は0.01g以下であった。析出物9112の収率は、1.18g/1.30g=91%と高い収率であった。また、析出物9112と析出物9113を合わせた収率は1.24g/1.30g=95%と高い収率であった。
精製管9012を窒素置換したグローブボックスに入れ、ねじ口にあうシール付きの蓋を精製管9012の両側から取り付けて、グローブボックスから取り出してそのまま保管した。内部に付着した9112を薬さじなどで取り出す必要がなく、簡易で長期保存が可能である。
また、本実施例の精製前の試料(第1の精製管9011に入れた試料9111に相当)と精製後の回収物(第2の精製管9012の内部に析出した固体9112)を核磁気共鳴法(1H−NMR(400MHz、テトラヒドロフラン−d8))によって測定した。
試料9111の1H−NMRチャートを図24(A)に示す。また、図24(A)のチャートの6.7ppm乃至8.0ppmの範囲を拡大したものを図24(B)に示す。
また、精製後の回収物9112の1H−NMRチャートを図25(A)に示す。さらに、図25(A)のチャートの6.7ppm乃至8.0ppmの範囲を拡大したものを図25(B)に示す。図25から、精製後の物質である固体9112は、精製されたNPDであることがわかった。
精製前の試料を測定した図24(A)、(B)と、精製後の回収物である固体9112を測定した図25(A)、(B)を比較すると、図24(A)では2.1ppm乃至2.3ppm付近に検出された不純物由来のピークが、図25(A)ではほぼ消失していた。また、図24(B)では6.80ppmと6.91ppm付近に検出された不純物由来のピークが、図25(B)では見られなくなった。これらのピークは、主に試料9111に至る前に実施した精製に用いた溶媒に起因し、本実施例の精製によってきれいに除去されている。すなわち、NPDよりも揮発しにくい残渣として残る不純物の除去に加えて、NPDよりも揮発しやすい不純物も同時に除去できている。
なお、図24及び図25の両方で見られる、3.55ppm、2.46ppmのピークはテトラヒドロフランに由来し、1.67ppmのピークは水由来のピークであり、これは1H−NMR用の溶媒由来のものであり、純度の評価とは関係ない。
以上の結果から、本発明の精製装置を用いて精製を行うことで、高い純度の目的物質が得られることが確認出来た。
次に、比較例1について説明する。比較例1は、精製部9010に実施例3と異なる形状の精製管を用いた。その他の構成及び実験条件等は、実施例3と同じものとした。
図26は、比較例1を説明する図である。精製部9010は、第1の精製管9011と、第2の精製管9012と、第3の精製管9013とを有し、外管9040によって固定されている。比較例1において、第1の精製管9011、第2の精製管9012、及び第3の精製管9013の形状は中央部の管内径が一様な筒状の中空管とした。精製管9011〜9013の最大管内径、管の全長及び管の材質および厚みは実施例3と同じものとした。それぞれの精製管の端部の細口部も実施例3と同じ径とし、その厚みも実施例3の精製管と同じであるが、ねじ形状がないものを用いた。また、精製管9011の右側端部は閉じられているものを用いた。
第1の精製管9011に試料9111(1.3g)を挿入した。試料9111は、構造式(3)で表されるNPDと、不純物との混合物である。
次いで、試料9111を挿入した第1の精製管9011、第2の精製管9012、第3の精製管9013とから構成される精製部9010を、外管9040内に挿入した。このとき、第1の精製管9011、第2の精製管9012、第3の精製管9013は、相互に遊嵌されるように一列に配置した。この精製管を挿入し、精製管同士の位置を決める工程は、精製管同士が実施例1〜実施例3のように固定されていないため、位置がずれやすく、実施例よりも作業が困難であった。例えば、精製管9013、9012、9011の順番に入れ、9011を所望の位置よりも少しでも押し込みすぎた場合、位置を調整するために9013側から長い棒などによって押しても、遊嵌の状態がずれてしまう。このような場合には、すべての精製管を一度外管から出して、作業をやり直す必要があり、作業の容易性が失われ、手間がかかった。
次いで、精製部9010を含む外管9040を真空排気した後、1x10−2Paまで減圧した。この際、気体の移動に伴い、一般に外管9040内で気流が発生し、精製管9011〜9013はその位置を変える。精製管は互いに連結によって固定されていないため、相互の位置関係がずれてしまう。遊嵌が十分でない程度にずれてしまった場合は、すべての精製管を一度外管から出して、作業をやり直す必要があり、作業の容易性が失われ、手間がかかる。
続けて、精製部9010に付ける温度勾配における高温部が305℃、低温部が室温25℃程度となるように30分かけて加熱した後、そのままの状態で3時間加熱した。このとき、精製部9010の第2の精製管9012の内部に液体が凝縮した。
精製終了後、加熱を止め、精製部9010を含む外管9040を室温まで冷ました後、精製部9010をゆっくりと大気暴露した。このとき、第2の精製管9012内で加熱時
に液体として凝縮した物質が固体9112として析出した。
続けて、外管9040から、第1の精製管9011、第2の精製管9012、及び第3の精製管9013とで構成される精製部9010を取り出した。この際、外に漏れ出た析出物9112によって、精製部9010が外管9040に固着しており、外管9040を傾けても取り出しが困難であった。長い棒などで強く押すことによって、ようやく外管9040と精製部9010とを外すことができた。このような工程は、系の大型化や仕込む試料の量を増やした場合、漏れ出る9120の量が増えることから、より強い力をかける必要があり、精製管や外管の破損の原因となるため好ましくない。比較例1の遊嵌における精製管同士の隙間に対して、実施例1〜実施例3におけるねじの機構は、隙間が大幅に小さくできるため、外に漏れ出る量を飛躍的に減らすことができ、内管を外管から取り出す労力が少ない利点がある。
また、精製部9010を外管9040から取り外した後、外管9040を観察したところ、隣接する精製管同士の継ぎ目(隣接部)が位置した付近は、継ぎ目から漏れ出て析出した9120によって汚れており、外管の再生のために手間がかかる洗浄が必要 となった。また、取り出した精製管を観察したところ、精製管の外側にも固体が付着しており、付着量が多いため、再利用のための洗浄に手間がかかった。比較例1の遊嵌における精製管同士の隙間に対して、実施例1〜実施例3におけるねじの機構は、隙間が大幅に小さくできるため、外に漏れ出る量を飛躍的に減らすことができ、外管および内観を洗浄する労力が少ない利点がある。
次いで、薬さじ等を用い、第2の精製管9012から目的物質のNPDである固体9112を回収したところ、回収量は0.98gであった。析出物9112の収率は、0.98g/1.30g=75%であり、実施例2と比較して低い収率であった。
以上の結果から、本発明の精製装置は、従来の方法に比べて、精製管からの試料や目的物質の漏れを防ぐことができ、また高い収率で精製できることが分かった。また、精製管の設置が容易であり、繰り返し再現性に優れる。加えて、装置の洗浄の手間が少ないことも分かった。