以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
[通信システムの概要]
図1は、本実施の形態に係る通信システムの基本構成を示す。図1に示すように通信システムは、複数の端末100(図1では端末1,2)と、少なくとも1つの基地局200(図1では基地局1)とを有する。
図1に示すように、基地局間通信時には、各端末1,2は、基地局1との間において制御情報(点線)及びユーザデータ(実線)のやりとりを行う。端末1,2は、基地局を介して通信を行う基地局間通信、及び、他の端末とデータの通信を直接行う端末間通信の双方の通信方式を使用可能な端末である。
図1に示すように、端末間通信時には、端末1,2は、基地局1を介さずに、端末間においてユーザデータのやりとりを直接行う。
端末間通信は、基地局間通信と比較して、通信距離が短いため、低遅延化及び低送信電力化を図ることが可能となる。
なお、以下の説明では、図1に示すように、制御情報を点線により表し、ユーザデータを実線により表すことがある。
図2は、基地局間通信及び端末間通信におけるプロトコルスタックを示す。図2A及び図2Bは、基地局間通信時の制御情報及びユーザデータの送受信処理をそれぞれ表し、図2C及び図2Dは、端末間通信時の制御情報及びユーザデータの送受信処理をそれぞれ表す。
図2A及び図2Bに示すように、基地局間通信時には、制御情報及びユーザデータの双方とも、基地局1を経由して端末1又は端末2へ送信される。一方、端末間通信時には、図2Cに示すように、制御情報は基地局1を経由して端末1又は端末2へ送信されるのに対して、図2Dに示すように、ユーザデータは基地局1を経由せずに端末1と端末2との間において直接送受信される。すなわち、端末間通信では、端末1,2は、原則として、ユーザデータを直接送受信するのに対して、基地局1を介して制御情報を送受信する。
次に、図3は、本実施の形態に係る通信システムにおけるエリア構成の一例を示す。図3では通信システムは、基地局1及び基地局2を有する。
図3において、「CA1」は、基地局1による基地局間通信が可能なエリアを示し、「CA2」は、基地局2による基地局間通信が可能なエリアを示す。
また、図3において、「PA1」は、CA1内の端末間通信エリアを示し、「PA2」は、CA1及びCA2が重複するエリア内の端末間通信エリアを示し、「PA3」は、CA2内の端末間通信エリアを示す。図3に示すように、端末間通信は、原則として、基地局間通信が可能なエリア(CA1又はCA2)内にて運用される。
図4は、本実施の形態に係る通信システムの全体構成例を示す。図4では、端末1〜端末3が基地局1に接続し、端末4が基地局2に接続する。また、図4では、端末1,2が図3に示すPA1内に位置し、端末3,4が図3に示すPA2内に位置する。図4に示すように、PA1内に位置する端末1及び端末2は端末間通信を行うことができ、PA2内に位置する端末3及び端末4は端末間通信を行うことができる。
図4では、基地局間通信において、基地局1は、端末1〜端末3に対して制御情報及びユーザデータの送受信を行う。また、基地局2は、端末4に対して制御情報及びユーザデータの送受信を行う。また、基地局1及び基地局2は、各々の基地局に接続されている端末間の制御情報及びユーザデータを送受信する。
一方、端末間通信において、端末1〜端末4は、通信相手である端末に対してユーザデータを送受信する。基地局1は、端末1,2に対して制御情報の送受信を行う。また、基地局1,2は、各々の基地局に接続されている端末3,4間の制御情報を送受信する。
[端末100の構成]
図5は、本実施の形態に係る端末100の構成を示すブロック図である。図5において、端末100は、通信状態検出部101、通信制御設定部102、ユーザデータ処理部103、ベースバンド信号処理部104、変調部105、無線送信部106、無線受信部107、復調部108、分離部109、アンテナ部110を有する。
通信状態検出部101は、端末100における通信状態を検出し、検出した通信状態を示す情報をベースバンド信号処理部104へ出力する。通信状態検出部101において検出(測定)される端末100の通信状態には、例えば、端末100と、端末100が接続する基地局200との間の通信品質(以下、「基地局間通信品質」と呼ぶ)、端末100と、他の端末との間の通信品質(以下、「端末間通信品質」と呼ぶ)、端末100の現在位置、端末100が通信する信号の内容(以下、「通信内容」と呼ぶ)、又は、端末100が通信する信号の緊急度などが含まれる。
図6は、通信状態検出部101の内部構成の一例を示すブロック図である。
図6において、基地局間通信品質検出部151は、例えば、端末100が接続する基地局200から送信される信号(下り回線信号。図示せず)を用いて、端末100と当該基地局200との間の基地局間通信品質を測定する。基地局間通信品質は、例えば、下り回線の受信品質、下り回線の受信レベル、下り回線のパスロス、下り回線の干渉量、又は、上り回線の送信パワーによって表される。
端末間通信品質検出部152は、例えば、端末100と直接通信可能な他の端末から送信される信号(図示せず)を用いて、端末100と当該他の端末との間の端末間通信品質を測定する。端末間通信品質は、例えば、端末間通信における、受信品質、受信レベル、パスロス、干渉量、又は、送信パワーによって表される。
端末位置検出部153は、端末100の現在位置を検出する。現在位置は、例えば、端末100の現在位置を示す、緯度、経度、高度、又は、階数などによって表される。
通信内容検出部154は、端末100が通信するデータの通信内容を検出する。通信内容は、例えば、通信先の情報(アドレス、URL、アプリケーション、プロトコル、ポートなど)、通信データの情報(種別、サイズ、名称など)、又は、スループットなどによって表される。
緊急度検出部155は、端末100が通信する信号の緊急度を検出する。例えば、緊急度検出部155は、信号の用途に基づいて緊急度を検出する。例えば、災害用の信号の緊急度を「最高」とし、公共用の信号の緊急度を「高」とし、一般用の信号の緊急度を「標準」とし、バッチ処理用の信号の緊急度を「低」としてもよい。
以上、通信状態検出部101の内部構成の一例について説明した。
図5に戻り、通信制御設定部102は、ベースバンド信号処理部104から受け取る制御情報を、端末100の通信設定に反映させる。制御情報には、例えば、基地局間通信及び端末間通信の各々の優先度を示す優先度情報、端末100が使用する無線リソースを示す無線リソース情報、又は、端末100が使用する通信方式を示す通信方式情報などが含まれる。通信制御設定部102は、制御情報に従って設定した通信設定を、ベースバンド信号処理部104、変調部105、無線送信部106、無線受信部107、及び、復調部108にそれぞれ出力する。
図7は、通信制御設定部102の内部構成の一例を示すブロック図である。
図7において、通信方式設定部161は、通信方式情報に従って、端末100が使用する通信方式を設定する。例えば、通信方式設定部161は、通信方式情報に従って、基地局間通信を行うか、端末間通信を行うかを決定する。
無線リソース設定部162は、無線リソース情報に従って、端末100が使用する無線リソースを設定する。無線リソース情報には、例えば、リソース(周波数、時間、空間など)、変調方式、送信電力、最大送信電力、又は、送信タイミングなどが含まれる。
優先度設定部163は、優先度情報に従って、端末100が通信を行う通信方式の優先度を設定する。例えば、優先度設定部163は、優先度情報に従って、基地局間通信の優先度、及び、端末間通信の優先度をそれぞれ設定する。例えば、各通信の優先度は、‘最高’、‘高’’、‘標準’、‘低’のようにクラス分けがなされている。例えば、通信回線が混雑しており、発信規制が行われている場合、端末100は、優先度がより高い通信ほど、信号を発信しやすくなる。例えば、端末100は、基地局200から指示される特定のクラスの優先度(例えば‘最高’クラス)の通信においてのみ、信号を発信することができる。又は、通信量(累積通信量)などに基づく通信規制が行われている場合、端末100は、優先度の低い通信ほど、通信速度がより遅く規制されることもできる。
以上、通信制御設定部102の内部構成の一例について説明した。なお、端末100に設定される通信方式は、基地局間通信及び端末間通信に限定されず、例えば、GSM(Global System for Mobile communication)(登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)などの他の通信方式であってもよい。端末100には、通信方式毎に、無線リソース情報及び優先度情報が通知される。
図5に戻り、ユーザデータ処理部103は、ベースバンド信号処理部104から受け取ったユーザデータを、対応するアプリケーション処理部(図示せず)に出力する。また、ユーザデータ処理部103は、アプリケーション処理部から受け取るユーザデータをベースバンド信号処理部104に出力する。
ベースバンド信号処理部104は、通信状態検出部101から受け取る制御情報、及び、ユーザデータ処理部103から受け取るユーザデータに対して、ベースバンド処理(結合、符号化など)を施し、得られたベースバンド信号を変調部105へ出力する。また、ベースバンド信号処理部104は、復調部108から受け取る信号に対してベースバンド処理(分離、復号など)を施し、得られた制御情報を通信制御設定部102へ出力し、得られたユーザデータをユーザデータ処理部103へ出力する。
変調部105は、通信制御設定部102から受け取る無線リソース情報(変調方式)に従って、ベースバンド信号処理部104から受け取るベースバンド信号を変調して、無線信号を生成する。変調部105は、生成した無線信号を無線送信部106へ出力する。
無線送信部106は、通信制御設定部102から受け取る無線リソース情報(周波数リソース、送信電力、送信タイミングなど)に従って、変調部105から受け取る無線信号に対して、無線送信処理(増幅など)を行い、無線送信処理後の信号を分離部109に出力する。
無線受信部107は、通信制御設定部102から受け取る無線リソース情報(周波数リソース、送信電力、送信タイミングなど)に従って、分離部109から受け取る無線信号に対して、無線受信処理(増幅など)を行い、無線受信処理後の信号を復調部108に出力する。
復調部108は、通信制御設定部102から受け取る無線リソース情報(変調方式)に従って、無線受信部107から受け取る無線信号を復調して、ベースバンド信号を生成する。復調部108は、生成したベースバンド信号をベースバンド信号処理部104へ出力する。
分離部109は、異なるリソースを用いて同時に通信される送信データと受信データとを分離して、各データを対応する処理部へ出力する。具体的には、分離部109は、無線送信部106から受け取る無線信号(送信信号)をアンテナ部110へ出力する。また、分離部109は、アンテナ部110から受け取る無線信号(受信信号)から、端末100宛ての信号を抽出して、抽出した無線信号を無線受信部107へ出力する。
アンテナ部110は、分離部109から受け取る無線信号を送信する。また、アンテナ部110は、他の装置から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号を分離部109へ出力する。
[基地局200の構成]
図8は、本実施の形態に係る基地局200の構成を示すブロック図である。図8において、基地局200は、アンテナ部201、分離部202、無線受信部203、復調部204、変調部205、無線送信部206、ベースバンド信号処理部207、ユーザデータ処理部208、通信状態管理部209、基地局状態判定部210、通信制御部211を有する。
アンテナ部201は、分離部202から受け取る無線信号を送信する。また、アンテナ部201は、他の装置から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号を分離部202へ出力する。アンテナ部201から送信される信号には、後述する通信制御部211において設定された、端末100が使用する通信方式などを示す制御情報が含まれる。また、アンテナ部201が受信する信号には、端末100が検出した端末100の通信状態を示す制御情報が含まれる。
分離部202は、異なるリソースを用いて同時に通信される送信データと受信データとを分離して、各データを対応する処理部へ出力する。具体的には、分離部202は、無線送信部206から受け取る無線信号(送信信号)をアンテナ部201へ出力する。また、分離部202は、アンテナ部201から受け取る無線信号(受信信号)を、送信元の装置毎の信号に分離して、分離した無線信号を無線受信部203へ出力する。例えば、複数の端末100の各々から送信される信号には、各端末100の通信状態を示す制御情報が含まれる。
無線受信部203は、分離部202から受け取る無線信号に対して、無線受信処理を行い、無線受信処理後の信号を復調部204に出力する。
復調部204は、無線受信部203から受け取る無線信号を復調して、ベースバンド信号を生成する。復調部204は、生成したベースバンド信号をベースバンド信号処理部207へ出力する。
変調部205は、ベースバンド信号処理部207から受け取るベースバンド信号を変調して、無線信号を生成する。変調部205は、生成した無線信号を無線送信部206へ出力する。
無線送信部206は、変調部205から受け取る無線信号に対して、無線送信処理を行い、無線送信処理後の信号を分離部202に出力する。
ベースバンド信号処理部207は、通信制御部211から受け取る制御情報、及び、ユーザデータ処理部208から受け取るユーザデータに対して、ベースバンド処理(結合、符号化など)を施し、得られたベースバンド信号を変調部205へ出力する。また、ベースバンド信号処理部207は、復調部204から受け取る信号に対してベースバンド処理(分離、復号など)を施し、得られた制御情報を通信状態管理部209へ出力し、得られたユーザデータをユーザデータ処理部208へ出力する。
ユーザデータ処理部208は、ベースバンド信号処理部207から受け取ったユーザデータを、対応するアプリケーション処理部(図示せず)に出力する。また、ユーザデータ処理部208は、アプリケーション処理部から受け取るユーザデータをベースバンド信号処理部207に出力する。
通信状態管理部209は、ベースバンド信号処理部207から受け取る制御情報を用いて、複数の端末100毎の通信状態を判定する。通信状態管理部209は、例えば、複数の端末100において検出された通信状態を管理したテーブルを保持し、各端末100から制御情報を受け取る度に、管理テーブルの対応する端末100の通信状態を更新してもよい。つまり、通信状態管理部209は、端末100から受信した情報(端末100の通信状態)を管理する。また、通信状態管理部209は、複数の端末100から受け取る制御情報を用いて、複数の端末100毎に上記通信状態を管理する。通信状態管理部209は、判定した各端末100の通信状態(管理テーブルの内容)を通信制御部211へ出力する。なお、端末100の通信状態には、上述したように、基地局間通信品質、端末間通信品質、端末100の位置、通信内容、又は、緊急度などが挙げられる。
図9は、通信状態管理部209の内部構成の一例を示すブロック図である。
図9において、基地局間通信品質管理部251は、制御情報に含まれる、端末100と基地局200との間の基地局間通信品質を判定し、管理している当該端末100の基地局間通信品質を更新する。
端末間通信品質管理部252は、制御情報に含まれる、端末100と他の端末との間の端末間通信品質を判定し、管理している当該端末100の端末間通信品質を更新する。
端末位置管理部253は、制御情報に含まれる端末100の現在位置を判定し、管理している当該端末100の現在位置を更新する。
通信内容管理部254は、制御情報に含まれる、端末100が送受信する信号の通信内容を判定し、管理している当該端末100の通信内容を更新する。
緊急度管理部255は、制御情報に含まれる、端末100が送受信する信号の緊急度を判定し、管理している当該端末100の緊急度を更新する。
以上、通信状態管理部209の内部構成の一例について説明した。このようにして、通信状態管理部209は、基地局間通信及び端末間通信の双方の通信方式を使用可能な端末100の通信状態を一元的に管理する。
図8に戻り、基地局状態判定部210は、基地局200の通信状態を判定する。基地局200の通信状態には、例えば、基地局200と、基地局200と接続される端末100との間の通信品質(基地局間通信品質)、又は、基地局200の位置などが挙げられる。基地局状態判定部210が検出する基地局間通信品質は、例えば、上り回線の受信品質、上り回線の受信レベル、上り回線のパスロス、上り回線の干渉量、又は、下り回線の送信パワーによって表される。また、基地局200の位置は、例えば、基地局200の位置を示す、緯度、経度、高度、又は、階数などによって表される。すなわち、基地局状態判定部210は、基地局200の通信状態を管理する。基地局状態判定部210は、基地局200の通信状態を管理したテーブルを保持し、基地局200の通信状態を検出する度に、管理テーブルの対応する基地局200の通信状態を更新してもよい。
通信制御部211は、通信状態管理部209から受け取る各端末100の通信状態、及び、基地局状態判定部210から受け取る基地局200の通信状態に基づいて、各端末100に対する通信設定を制御する。通信制御部211は、制御結果である通信設定を示す制御情報をベースバンド信号処理部207へ出力する。
各端末100に対して設定する通信設定には、例えば、通信(基地局間通信及び端末間通信)の優先度を示す優先度情報、端末100の無線リソース情報、又は、端末100の通信方式情報などが含まれる。
また、各端末100に対して設定する端末間通信に関する通信設定として、端末間通信が行われるエリアを特定するためのID(端末間通信エリアID)、端末間通信を行う端末を特定するためのID(端末間通信端末ID)などが挙げられる。端末間通信エリアIDは、例えば、端末100が端末間通信を行うエリアを示す自局エリアID、又は、端末100が端末通信を行うエリアの周辺エリアを示す周辺エリアIDなどによって表される。また、端末間通信端末IDは、例えば、端末100のIDである自局端末ID、端末100の周辺に位置する端末のIDを示す周辺端末ID、又は、端末100の接続先の端末のIDを示す接続先端末ID、などによって表される。
また、通信制御部211は、各端末100の通信設定を管理したテーブルを保持し、各端末100の通信設定を更新する度に、管理テーブルの対応する端末100の通信設定を更新してもよい。なお、通信制御部211は、上述した、通信状態管理部209が判定した各端末100の通信状態、基地局状態判定部210が判定した基地局200の通信状態、及び、通信制御部211が設定した各端末100の通信設定、を含む管理テーブルを保持してもよい。
図10は、通信制御部211の内部構成の一例を示すブロック図である。
図10において、優先度制御部261は、端末100の通信状態及び基地局200の通信状態を用いて、端末100が実施可能な通信方式の優先度(例えば、‘最高’、‘高’、‘標準’、‘低’)をそれぞれ設定する。例えば、優先度設定部261は、端末100に対して、基地局間通信の優先度、及び、端末間通信の優先度をそれぞれ設定する。
無線リソース制御部262は、端末100の通信状態又は基地局200の通信状態に基づいて、端末100が使用する無線リソースを制御する。無線リソース制御部262は、例えば、端末100の基地局間通信品質又は端末間通信品質に基づいて、基地局間通信において端末100に使用させる無線リソース、及び、端末間通信において端末100に使用させる無線リソースを決定する。
通信方式制御部263は、端末100の通信状態又は基地局200の通信状態に基づいて、基地局間通信及び端末間通信の何れかを、端末100が使用する通信方式として設定する。また、通信方式制御部263は、優先度制御部261が設定した優先度がより高い通信方式を、端末100の通信方式として決定してもよい。
以上、通信制御部211の内部構成の一例について説明した。
[端末100及び基地局200の動作]
以上の構成を有する端末100及び基地局200の動作について説明する。
<無線リソース制御>
図11Aは、端末100(端末1,2)及び基地局200(基地局1)における基地局間通信時の無線リソースの割当動作を示し、図11Bは、端末100(端末1,2)及び基地局200(基地局2)における端末間通信時の無線リソースの割当動作を示す。
まず、図11Aに示すように、基地局間通信では、端末1及び端末2は、基地局1に対して無線リソースの割当を要求する(ステップ(以下、「ST」と表す)1、ST2)。基地局1は、無線リソース要求を受け取ると、各端末に対する無線リソース(基地局間通信無線リソース)を決定し、決定した無線リソースを通知する(ST3,ST4)。端末1及び端末2は、通知された基地局間通信無線リソースを用いて、基地局1との間においてユーザデータを送受信することにより、端末1と端末2との間の通信を行う(ST5,ST6)。
次に、図11Bに示すように、端末間通信でも、端末1及び端末2は、基地局1に対して無線リソースの割当を要求する(ST1、ST2)。基地局1は、無線リソース要求を受け取ると、各端末に対する無線リソース(端末間通信無線リソース)を決定し、決定した無線リソースを通知する(ST7,ST8)。
ただし、端末間通信では、基地局1及び端末1、2は、端末間通信を行うための制御情報(端末間通信制御情報)を送受信する(ST9,ST10)。端末間通信制御情報には、例えば、端末間通信を行うエリア及び端末間通信を行う端末を特定するための情報などが含まれる。
そして、端末1及び端末2は、基地局1を介さずに、ユーザデータを直接送受信する(ST11)。
このように、端末間通信でも、基地局200は、各端末100の無線リソースの割当を行い、端末100は、ユーザデータのみ直接通信する。
以下、上述した無線リソース制御のより詳細な動作について説明する。
<端末間通信の位置登録処理>
図12は、端末100と基地局200との間における、端末間通信に関する位置登録処理を示すシーケンス図である。
ST51では、端末100は、基地局200に対して、端末間通信位置登録依頼を送信する。端末100は、例えば、端末100の電源ON時、端末100が他のエリアに移動した時、又は、所定の時間経過した時、などに端末間位置登録依頼を送信する。端末間通信位置登録依頼には、例えば、基地局間通信が行われるエリア(基地局間通信エリア)、及び、端末100の位置(絶対位置)などが含まれる。
ST52では、基地局200は、ST51において端末間通信位置登録依頼を送信した端末100に対して、端末間通信位置登録応答を送信する。端末間通信位置登録応答には、端末間通信を行う端末(自局端末及び接続先端末)のID、端末間通信が行われるエリア(端末間通信エリア)、及び、端末間通信を行う端末の周辺に位置する端末の情報(周辺端末情報)などが含まれる。また、基地局200(通信制御部211)は、ST51及びST52において得る情報を、端末100毎に管理(更新)する。
<端末間通信時の接続処理>
次に、図13は、端末間通信を開始するための接続処理を示すシーケンス図である。
なお、図13では、一例として、図4に示す端末3と端末4とが端末間通信を開始する際の接続処理について説明する。
ST101では、端末3は、端末4との端末間接続要求を基地局1へ送信する。この際、端末3は、端末間接続要求とともに、端末3の通信状態を表す制御情報(基地局間通信品質、端末間通信品質、端末位置、通信内容、又は緊急度など)を基地局1へ送信する。基地局1は、管理している端末3の通信状態を更新する。
ST102では、基地局1は、端末3に対する無線リソースを設定する。例えば、基地局1は、ST101において受け取った端末3の通信状態、図12に示すST51において受け取った端末間通信位置登録依頼に含まれる情報、又は、基地局1(基地局状態判定部210)が判定した基地局1の通信状態に基づいて、端末3の無線リソース(通信方式及び優先度を含む)を決定する。なお、ST102における基地局1(基地局200)の無線リソース設定処理の詳細については後述する。
ST103では、基地局1は、ST102において設定した無線リソース(端末3用)を端末3へ通知する。
ST104では、基地局1は、ST101において受け取った、端末3から端末4への端末間接続要求を基地局2へ送信する。
ST105では、基地局2は、ST102の処理と同様にして、端末4に対する無線リソースを設定する。すなわち、基地局2は、基地局2が管理している端末4の通信状態、又は、基地局2(基地局状態判定部210)が判定した基地局2の通信状態に基づいて、端末4の無線リソース(通信方式及び優先度を含む)を決定する。ST105における基地局2(基地局200)の無線リソース設定処理の詳細については後述する。
ST106では、基地局2は、ST105において設定した無線リソース(端末4用)を端末4へ通知する。
ST107では、基地局2は、ST104において受け取った端末3からの端末間接続要求を端末4へ送信する。
ST108では、端末4は、ST107において受け取った端末間接続要求に対する応答である端末3への端末間接続応答を基地局2へ送信する。端末間接続応答は、基地局2から基地局1へ送信され(ST109)、基地局1から端末3へ送信される(ST110)。
端末3が端末4からの端末間接続応答を受け取ることにより、端末3から端末4に対する端末間接続処理が完了する(ST111)。端末間接続処理が完了すると、端末3及び端末4は、各々が接続している基地局1,2を介さず、ユーザデータの送受信を行う(ST112)。
<無線リソース設定処理>
次に、基地局200における端末100に対する無線リソース設定処理(図13に示すST102及びST105の処理)について説明する。
図14は、基地局200が保持する端末100に対する通信状態を示す制御情報の一例である。例えば、基地局200は、図示しないメモリ部において、端末100毎に図14に示す制御情報を端末管理テーブルとして保持する。
図14に示す端末管理テーブルには、端末100から受信する情報として、基地局間通信品質、端末間通信品質、端末位置、通信内容及び緊急度が含まれる。これらの制御情報は、上述したように、端末100の通信状態検出部101(図5)において検出され、基地局200の通信状態管理部209又は通信制御部211(図8)において管理される。
また、図14に示す端末管理テーブルには、基地局200が生成する情報として、基地局間通信品質及び基地局位置が含まれる。これらの制御情報は、上述したように、基地局200の基地局状態判定部210(図8)において生成され、基地局状態判定部210又は通信制御部211において管理される。
また、図14に示す端末管理テーブルには、端末100に送信する情報として、端末間通信エリアID、端末間通信端末ID、通信方式種別、基地局間通信用無線リソース、端末間通信用無線リソース、基地局間通信優先度及び端末間通信優先度が含まれる。これらの制御情報は、基地局200の通信制御部211(図8)において生成され、管理される。
基地局200の通信制御部211は、図14に示す「端末から受信する情報」又は「基地局の情報」に基づいて、「端末に送信する情報」を生成する。
例えば、通信制御部211は、図12に示すように、端末間通信位置登録依頼を受け取ると、端末100及び他の端末の位置するエリア、絶対位置、端末間通信品質又は基地局間通信品質を用いて、端末間通信を行う端末の設定(端末間通信エリアID、端末間通信端末ID)を決定する。例えば、通信制御部211は、端末間通信を行う端末として、端末間の距離が所定の閾値(距離閾値)以内であり、かつ、端末間通信品質が所定の閾値(品質閾値)以上である端末を選択してもよい。
また、通信制御部211は、端末100から受け取る基地局間通信品質、端末間通信品質、又は、基地局200が測定する基地局間通信品質に基づいて、基地局間通信用無線リソース、及び、端末間通信用無線リソースを決定する。例えば、通信制御部211は、端末100との通信品質が良好なリソースを端末100に対して割り当てる。
また、通信制御部211は、例えば、端末100から受け取る基地局間通信品質、端末間通信品質、端末位置、通信内容又は緊急度に基づいて、基地局間通信の優先度、及び、端末間通信の優先度を決定する。
また、通信制御部211は、図14に示す「端末から受信する情報」、「基地局の情報」、又は、基地局間通信/端末間通信の優先度に基づいて、端末100に使用させる通信方式を決定する。
図15は、基地局間通信の優先度、及び、端末間通信の優先度を決定する際の判定基準及び判定結果を示す。なお、図15に示す端末間距離は、例えば、端末100の端末位置と、端末100の通信相手となる他の端末の端末位置との間の距離を表す。また、図15に示す端末間距離は、例えば、閾値によって、“近”、“遠”などの複数のクラスに分けられているものとする。また、図15に示す基地局間通信品質及び端末間通信品質は、例えば、複数の閾値によって、“良”、“標準”、“悪”などの複数のクラスに分けられているものとする。
以下、端末100の通信状態を表すパラメータ毎に着目した優先度設定の判定基準について説明する。
例えば、通信制御部211は、端末100が通信する信号の緊急度がより高いほど、通信の優先度をより高く設定する。また、通信制御部211は、端末100が通信する信号の緊急度がより高いほど、より低遅延である端末間通信に設定する優先度を、基地局通信に設定する優先度よりも高く設定してもよい。
また、通信制御部211は、端末間距離が近いほど、無線リソースの抑制が可能である端末間通信を優先させてもよい。端末間通信では、基地局間通信と比較して無線リソースの抑制が可能であるのは、通信距離が近いので送信電力を低く抑えることができるためである。
また、通信制御部211は、基地局間通信品質がより高いほど、基地局間通信の優先度を高く設定し、端末間通信品質がより高いほど、端末間通信の優先度を高く設定してもよい。また、通信制御部211は、基地局間通信品質及び端末間通信品質のうち、通信品質がより良好である通信の優先度をより高く設定してもよい。通信品質がより良好である通信方式の優先度を高くするのは、通信品質が良好であるほど、所望の受信品質を満たすために必要となる送信電力をより低く抑えることができるためである。
また、通信制御部211は、端末100が通信する信号の通信内容に示されるファイルサイズがより大きいほど、端末間通信の優先度をより高く設定してもよい。ファイルサイズがより大きい信号の通信は、周波数リソース等のリソースをより多く要し、システム全体に与える影響が大きい。このため、ファイルファイズがより大きいほど、基地局間通信と比較して通信範囲が狭い端末間通信を優先させる方が、システム全体への影響を抑制することができる。また、判定基準に用いる通信内容はファイルサイズに限定されず、例えば、アプリケーションの種別又はプロトコルが低遅延通信を要求する場合には、通信制御部211は、端末間通信の優先度をより高く設定してもよい。
通信制御部211は、以上のような端末100の通信状態を用いた判定基準に従って、基地局間通信優先度及び端末間通信優先度を設定する。
例えば、図15では、通信制御部211は、緊急度が“最高”である通信に対して、他のパラメータに依らず、基地局間通信及び端末間通信の双方の優先度を“最高”に設定する。また、図15では、通信制御部211は、緊急度が“高”であり、基地局間通信品質が“標準”であり、端末間通信品質が“良”である場合、基地局間通信優先度を“標準”に設定し、端末間通信優先度を“高”に設定する。つまり、端末間通信優先度が基地局間通信優先度よりも高くなる。同様に、図15では、通信制御部211は、緊急度が“標準”であり、端末間距離が“近”であり、基地局間通信品質が“標準”であり、端末間通信品質が“良”である場合、基地局間通信優先度を“標準”に設定し、端末間通信優先度を“高”に設定する。つまり、端末間通信優先度が基地局間通信優先度よりも高くなる。
図15に示す他の判定基準(パラメータの組み合わせ)についても同様にして、通信制御部211は、基地局間通信優先度及び端末間通信優先度を設定する。なお、上述したように、通信制御部211は、端末100の通信状態を表すパラメータの何れかを基準として、優先度を設定してもよく。図15に示すように複数のパラメータの組み合わせを基準として、優先度を設定してもよい。
また、図15に示す判定基準における各パラメータの組み合わせは、全組み合わせのうちの一部のみを示したものであって、これらに限定されるものではない。例えば、通信制御部211は、緊急度が“標準”であり、端末間距離が“遠”であり、基地局間通信品質が“良”であり、端末間通信品質が“標準”である場合、基地局間通信優先度を“高”に設定し、端末間通信優先度を“標準”に設定してもよい。この場合、基地局間通信優先度が端末間通信優先度よりも高くなる。
また、優先度判定基準に用いるパラメータは、図15に示すパラメータに限定されず、他のパラメータを用いてもよい。
また、通信制御部211は、例えば、図15に示す基地局間通信の優先度と端末間通信の優先度とを比較して、端末100が使用する通信方式を設定してもよい。例えば、基地局間通信優先度が“標準”であり、端末間通信優先度が“高”である場合、通信制御部211は、優先度の高い端末間通信を端末100の通信方式として設定してもよい。
また、基地局間通信優先度と端末間通信優先度とが同一である場合(図15では“最高”の場合)、通信制御部211は、端末100に対して何れか一方の通信方式を設定する。例えば、通信制御部211は、端末間通信を行う端末間の距離が閾値(距離閾値)以内であれば、端末間通信を端末100の通信方式として設定し、端末間の距離が距離閾値を超える場合、基地局間通信を端末100の通信方式として設定してもよい。
また、通信制御部211は、上述した優先度の判定基準と同様の基準に従って、端末100の通信方式を決定してもよい。すなわち、通信制御部211は、基地局間通信品質よりも端末間通信品質の方が良好である場合、端末100の通信方式として端末間通信を設定してもよい。
また、通信制御部211は、端末100と他の端末との端末間距離が所定の閾値(距離閾値)以下であり、かつ、端末間通信品質が所定の閾値(品質閾値)以上である場合、端末100の通信方式として端末間通信を設定してもよい。
または、通信制御部211は、端末100が通信する信号の内容に示される信号のサイズが所定の閾値(ファイルサイズ)以上である場合、端末100の通信方式として端末間通信を設定してもよい。
また、通信制御部211は、端末100が通信する信号の緊急度が所定の閾値(緊急度閾値)以上のレベルである場合、端末100の通信方式として端末間通信を設定してもよい。
以上のようにして、通信制御部211は、図14に示す「端末に送信する情報」を生成する。基地局200は、生成された「端末に送信する情報」を端末100へ通知する。
端末100は、図14に示す「端末に送信する情報」を基地局100から受け取ると、当該情報に基づいて通信設定を行い、通信設定を各処理部に反映させる。
このようにして、本実施の形態では、基地局200は、端末100から報告される制御情報を受信すると、複数の通信方式(ここでは、基地局間通信及び端末間通信)に渡って、端末100の通信状態を一元的に管理する。これにより、基地局200は、端末100での各通信方式における通信状態を予め把握することができる。そして、基地局200は、一元管理している端末100の通信状態に基づいて、端末100に対して最適な通信方式を選択する。
ここで、端末100から基地局200へ報告される制御情報(通信状態)は、各通信方式を用いて動作している端末100が必要に応じて都度送信している情報である。よって、上記制御情報は、端末100が端末間通信を開始するために送信する信号ではない。すなわち、基地局200は、各通信方式に関する制御情報を、通信方式毎のパラメータとして区別することなく、端末100毎のパラメータとして一元的に管理する。なお、本実施の形態では、基地局200に設けられたメモリ部(図示しない)に管理テーブルを保持し、この管理テーブルによって端末情報を一元管理した。しかし、基地局200とは別の装置(eNBの上位装置であるEPC(Evolved Packet Core)等)に設けられたメモリ部等において管理テーブルを保持し、端末情報を管理/更新することとしても良い。
これにより、基地局200は、一元管理した端末100の通信状態に基づいて、端末間通信を開始する際に必要となる通信設定を決定し、通知することができる。このように、基地局200が端末100の通信設定を制御することにより、各端末100は、従来技術のように端末間通信を開始するための検出信号を送信する必要が無くなる。よって、本実施の形態では、端末間通信可能な端末100が送信する信号に起因して信号の衝突が頻発することを回避することができる。つまり、端末間通信可能な端末100が送信する信号に起因する周波数利用効率の劣化を回避することができる。
よって、本実施の形態によれば、周波数利用効率を劣化させることなく、端末間通信を開始することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態に係る端末及び基地局は、実施の形態1に係る端末100及び基地局200と基本構成が共通するので、図5及び図8を援用して説明する。
実施の形態1では、基地局200が端末100の通信状態に基づいて、端末100が使用する通信方式(基地局間通信又は端末間通信)を決定する場合について説明した。これに対して、本実施の形態に係る基地局200は、更に、端末100の通信状態に応じて、既に何れかの通信方式によって通信を行っている端末100の通信方式を切り替える場合について説明する。
具体的には、本実施の形態に係る基地局200の通信制御部211は、通信状態管理部209から受け取る端末100の通信状態(図14に示す「端末から受信する情報」)に基づいて、現在通信中である端末100の通信方式の切替を判断する。例えば、通信制御部211は、端末100を含む端末間通信を行う端末間の距離、端末間通信におけるパスロス(端末間通信ロス、図14に示す端末間通信品質の下りパスロスに対応)、及び、端末間における干渉量(端末間干渉量。図示せず)に基づいて、端末100に適した通信方式を決定する。なお、通信制御部211における通信方式の設定方法の詳細については後述する。
また、通信制御部211は、実施の形態1と同様、端末100に設定する通信方式における無線リソースを設定する。設定された通信方式及び無線リソースは、端末100へ通知される。
そして、本実施の形態に係る基地局100の通信制御設定部102は、基地局200から通知される制御情報に従って、通信方式及び無線リソースを設定し、設定した各種のパラメータを各処理部へ反映させる。
図16は、端末100の通信状態の遷移を示す。
図16に示すように、端末100は、待受状態において、基地局200からの通知に従って通信接続を行うことにより、基地局間通信状態又は端末間通信状態へ遷移する。また、端末100は、通信を切断することにより、待受状態に戻る。
本実施の形態では、図16に示すように、端末100は、基地局間通信状態及び端末間通信状態の何れか一方に遷移した状態において、基地局200から通信方式の切替を通知されることにより、他方の通信状態へ遷移する。すなわち、端末100は、一方の通信状態から他方の通信状態へ遷移する際、待受状態に一旦遷移することなく、他方の通信状態へ直接遷移する。
次に、図17は、端末100の通信方式の切替処理を示すシーケンス図である。
図17では、一例として、図4に示す端末1と端末2との間の通信における通信方式の切替処理について説明する。
ST201及びST202では、基地局1は、端末1及び端末2に対して、端末状態(通信状態)の報告を要求する。ここで、基地局1は、待受状態の端末に対しては報知情報(System Information Block)、通信状態の端末に対しては呼制御情報(Measurement Control)等を用いて、任意のタイミングで端末に報告要求することが可能である。なお、基地局1は端末の状態に基づき、端末状態の報告周期を変更しても良い。例えば、基地局1は、端末の位置情報から端末の移動速度を予測し、移動速度が速い端末に対しては報告周期を短くし、移動速度が遅い端末に対しては報告周期を長くすることにより、基地局間通信の頻度を抑制すると共に、適切な端末情報を取得することが可能となる。
ST203及びST204では、端末1及び端末2は、ST201及びST202において要求された端末状態(例えば、端末間距離(又は各端末の現在位置)、端末間通信ロス、又は、端末間干渉量を含む)を基地局1へ報告する。
ST205では、基地局1は、ST203及びST204において受け取った端末1及び端末2の端末状態に基づいて、端末1及び端末2の無線リソースを設定する。ST205における無線リソースの設定処理は、実施の形態1と同様である(図13に示すST105の処理)。ST206及びST207では、基地局1は、ST205において設定した無線リソースを端末1及び端末2へ通知する。
ST208では、基地局1は、ST203及びST204において受け取った端末1及び端末2の端末状態に基づいて、端末1及び端末2の通信方式を設定する。ST209及びST210では、基地局1は、ST208において設定した通信方式を端末1及び端末2へ通知する。
端末1及び端末2がST209及びST210において受け取った通信方式を設定することにより、通信方式設定処理が完了する(ST211)。
次に、基地局200(通信制御部211)における通信方式の設定方法の詳細について説明する。
図18は、通信方式を決定する際の判定基準及び判定結果を示す。なお、図18に示す端末間距離は、例えば、端末100の端末位置と、端末100の通信相手となる他の端末の端末位置との間の距離を表す。また、図18に示す端末間距離は、例えば、閾値によって、‘近’、‘遠’などの複数のクラスに分けられているものとする。
図18に示す端末間通信ロス及び端末間干渉量は、例えば、複数の閾値によって、‘増’、‘一定’、‘減’などの複数のクラスに分けられているものとする。すなわち、端末間通信ロス又は端末間干渉量が‘増’の場合は端末間通信の品質が劣悪であり、端末間通信ロス又は端末間干渉が‘減’の場合は端末間通信の品質が良好であることを表す。
例えば、図18に示すように、通信制御部211は、端末間距離が‘遠’の場合、端末間通信ロス及び端末間干渉量に依らず、基地局間通信を選択する。これは、例えば、図4に示すように、近距離の端末同士(狭いエリア内の端末同士)により端末間通信が行われることが適切であって、端末間距離が遠い場合には、端末100が端末間通信を行うことが不可能、又は、適切ではないためである。
また、図18に示すように、通信制御部211は、端末間距離が‘近’の場合又は不明である場合、端末間通信ロス又は端末間干渉量の少なくとも一方が‘増’であれば、基地局間通信を選択する。これは、たとえ端末間距離が近くても、端末間の通信品質が劣悪な場合には、端末100が端末間通信を行っても良好な通信性能を得ることができないためである。
すなわち、図18に示すように、通信制御部211は、端末間距離が‘近’の場合又は不明である場合、端末間通信ロス及び端末間干渉量の双方が‘減’又は‘一定’であれば、端末間通信を選択する。
つまり、通信制御部211は、端末100の通信状態において、端末間距離が所定の閾値(距離閾値)未満であって(つまり、‘近’であって)、端末間通信ロスが所定の閾値(通信ロス閾値)未満であって(つまり、‘一定’又は‘減’であって)、端末間干渉量が所定の閾値(干渉量閾値)未満である(つまり、‘一定’又は‘減’である)場合、基地局間通信を用いて通信している端末100の通信方式を、端末間通信に切り替える。一方、通信制御部211は、端末100の通信状態において、端末間距離が距離閾値以上である場合(つまり、‘遠’の場合)、端末間通信ロスが通信ロス閾値以上である場合(つまり、‘増’の場合)、又は、端末間干渉量が干渉量閾値以上である場合(つまり、‘増’の場合)、端末間通信を用いて通信している端末100の通信方式を、基地局間通信に切り替える。
なお、通信方式の判定基準に用いられる端末100の通信状態としては、図18に示すパラメータに限定されるものではない。
このようにして、本実施の形態では、基地局200は、端末100の通信状態に基づいて、基地局間通信及び端末間通信の何れか一方の通信方式を用いて通信している端末100の通信方式を、他方の通信方式に切り替える。
例えば、非特許文献1(特に、section 5.5.2 "Overall call flow for EPC-level ProSe discovery"を参照)には、位置情報を利用した端末間通信について開示されており、端末間距離が遠い場合など、端末間通信が困難と思われる環境では端末間通信が切断(呼切断)されて、待受状態へ戻る。また、従来、端末が通信状態を判断して、通信方式の変更(切替)をネットワーク側に要求する処理が行われていた。すなわち、従来では、図16において、一方の通信状態から他方の通信状態へ遷移するには、端末は、一方の通信を切断して待受状態に戻り、他方の通信接続を要求する必要があった。これに対して、本実施の形態では、基地局200は、実施の形態1において説明したように複数の通信方式における端末100の通信状態を一元的に管理しているため、端末100に対して最適な通信方式を特定することができる。よって、端末100は、一方の通信状態から他方の通信状態へ遷移する際、待受状態に戻ることなく、基地局200からの通知に従って即座に他方の通信接続を行うことができる。
これにより、基地局200は、端末100の移動による端末間距離の変化、端末間通信品質(パスロス又は干渉量)の変化、又は、端末100の周辺環境の変化に応じて、端末100の通信方式を適切に設定することができる。例えば、都市部又はイベント会場など、端末密集時又はトラヒック混雑時などの端末間通信が困難となる通信環境に端末100が位置する場合であっても、基地局200が端末100の通信環境を把握することにより、端末100の通信接続を切断することなく、端末100の通信方式を基地局間通信へ切り替えることができる。これにより、端末100では、通信の途絶が発生せずに、確実に通信を行うことができる。
更に、本実施の形態によれば、基地局200は、基地局間通信を行っている端末100の通信状態が端末間通信を実施可能な状態になった場合には、端末100の通信方式を端末間通信へ即座に切り替えることができる。こうすることで、端末100は、基地局間通信と比較して低遅延を実現する端末間通信を行うことができる。
更に、本実施の形態によれば、基地局200は、端末100の通信状態に応じて、端末100に対して最適な通信方式に切り替えることにより、端末100は、最適な通信環境において通信を行うことができる。これにより、端末100が行う通信における再送回数を低減させることができる。
また、非特許文献1(特に、section 5.3.3 "Discovery Request"を参照)には、端末間通信におけるリソース割当が開示されているが、その際、端末間通信と基地局間通信(既存のセルラ通信)との間においてリソースを共用すると、干渉が発生する可能性がある。一方、例えば、基地局間通信(セルラ通信)に用いるリソースと、端末間通信(D2D通信)に用いるリソースとを予め別に設定することにより互いの通信間における干渉を抑制することも想定される。しかし、この場合、一方の通信に割当可能なリソース量が制限されてしまい、全体として、周波数利用効率が劣化してしまう。
これに対して、本実施の形態によれば、基地局200が各端末100の通信状態に基づいて、端末100の通信方式及び無線リソースを設定する。すなわち、基地局200は、基地局間通信及び端末間通信において使用するリソースを、一元管理している複数の通信方式を考慮して決定することができる。これにより、基地局間通信及び端末間通信において使用するリソースを干渉させることなく共用可能となる。よって、本実施の形態によれば、上述したように、基地局間通信及び端末間通信において使用するリソースを予め別に設定する必要がなく、かつ、互いの通信間における干渉を発生させることなく、周波数利用効率の劣化を回避することができる。
(実施の形態3)
図19は、本実施の形態において着目する通信システムの構成例を示す。図19では、端末5〜端末7が基地局2に接続する。また、図19では、端末5〜端末7が図3に示すPA3内に位置する。また、図19では、端末5〜端末7において、基地局2又は端末5〜端末7の何れかから送信される同一内容の信号(報知情報など)を同時通信することができる。
本実施の形態では、同時通信の際、端末5〜端末7のうち、何れか1つの端末が基地局2から送信されるユーザデータを受信し、当該1つの端末は、受信したユーザデータを他の2つの端末へ送信する。なお、各端末は、実施の形態1と同様、制御情報を基地局との間においてやりとりする。
以下の説明では、同時通信を行う際にユーザデータを他の複数の端末へ送信する端末を「親ノード」と呼び、親ノードからユーザデータを受信する端末を「子ノード」と呼ぶ。すなわち、本実施の形態では、端末間通信において、親ノードと複数の子ノードによる「1対多」のネットワークが構成される。一方で、基地局との間のユーザデータの通信には、基地局と親ノードとの「1対1」のネットワークが構成される。
なお、本実施の形態に係る端末及び基地局は、実施の形態1又は実施の形態2に係る端末100及び基地局200と基本構成が共通するので、図5及び図8を援用して説明する。ただし、本実施の形態では、基地局200の通信制御部211及び端末100の通信制御設定部102の動作が異なる。
図20は、本実施の形態に係る基地局200の通信制御部211の内部構成を示すブロック図である。なお、図20において、実施の形態1(図10)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
図20に示す通信制御部211において、ノード制御部361は、通信状態管理部209(図8)から受け取る端末100の通信状態、又は、基地局状態判定部210(図8)から受け取る基地局200の通信状態に基づいて、端末100が同時通信を行う際に親ノードとするか、子ノードとするかを決定する。なお、ノード制御部361におけるノード設定処理の詳細については後述する。
ノード制御部361が決定した端末100のノード設定は、例えば、図21に示すように、「ノード種別」として端末100へ通知される。すなわち、本実施の形態では、「端末に送信する情報」として、ノード種別が含まれる点が実施の形態1(図14)と異なる。
同時通信制御部362は、端末100の通信状態、基地局200の通信状態、又は、ノード制御部361において設定された端末100のノード設定に基づいて、端末100の同時通信時の処理を制御する。例えば、同時通信制御部362は、同時通信が行われる端末間のユーザデータ及び制御情報の送受信を制御する。この際、同時通信制御部362は、同時通信を行う複数の端末100のうち、親ノードに設定された端末100に対してのみユーザデータを送信する。なお、端末間のみでユーザデータを通信する場合は、基地局200から親ノードに設定された端末100に対するユーザデータの送信は不要であり、基地局200は制御データのみ送信すれば良い。
図22は、本実施の形態に係る端末100の通信制御設定部102の内部構成を示すブロック図である。なお、図22において、実施の形態1(図7)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
図22に示す通信制御設定部102において、ノード設定部461は、基地局200から通知される制御情報に従って、端末100が同時通信を行う際のノード(親ノード又は子ノード)を設定する。
同時通信設定部462は、基地局200から通知される制御情報に従って、端末100の同時通信時の処理を設定する。例えば、同時通信設定部462は、端末100が親ノードである場合、基地局200から同時通信時のユーザデータを受信するように、対応する処理部(例えば、無線受信部107、復調部108など)に対するパラメータを設定し、受信したユーザデータを子ノードとして設定された他の端末へ送信するように、対応する処理部(例えば、変調部105、無線送信部106)に対するパラメータを設定する。また、同時通信設定部462は、端末100が子ノードである場合、親ノードである他の端末から同時通信時のユーザデータを受信するように、対応する処理部(例えば、無線受信部107、復調部108など)に対するパラメータを設定する。
次に、図23は、端末100のノード設定処理及び同時通信処理を示すシーケンス図である。
図23では、一例として、図19に示す基地局2が端末5〜端末7に対して同時通信を行う場合について説明する。
ST301〜ST303では、基地局2は、端末5〜端末7に対して、端末状態(通信状態)の報告を要求する。
ST304〜ST306では、端末5〜端末7は、ST301〜ST303において要求された端末状態を基地局2へ報告する。
ST307では、基地局2は、ST304〜ST306において受け取った端末5〜端末7の端末状態に基づいて、端末5〜端末7の無線リソースを設定する。ST307における無線リソースの設定処理は、実施の形態1と同様である(図13に示すST105の処理)。ST308〜ST310では、基地局2は、ST307において設定した無線リソースを端末5〜端末7へ通知する。
ST311では、基地局2は、ST304〜ST306において受け取った端末5〜端末7の端末状態に基づいて、端末5〜端末7の同時通信時のノードを設定する。すなわち、基地局2は、端末5〜端末7のうち何れか1つの端末を親ノードに設定し、残りの2つの端末を子ノードに設定する。ST312〜ST314では、基地局2は、ST311において設定したノードを端末5〜端末7へ通知する。
端末5〜端末7がST312〜ST314において受け取ったノードに対応する設定を行うことにより、ノード設定処理が完了する(ST315)。また、ST316では、基地局2と、端末5〜端末7との間の同時通信処理の管理が開始される。
次に、基地局200(通信制御部211)におけるノードの設定方法の詳細について説明する。
図24は、ノードを決定する際の判定基準及び判定結果を示す。なお、基地局200は、図21に示す端末100の通信状態を、複数の端末毎に一元的に管理している。
図24に示す通信品質は、例えば、図21に示す端末から受信する情報である基地局間通信品質又は端末間通信品質、及び、図21に示す基地局の情報である基地局間通信品質に基づく値である。例えば、通信品質は、‘良’、‘標準’、‘悪’のようにクラス分けされている。
また、図24に示すデータ情報は、図21に示す通信内容に示される情報である。例えば、データ情報には、端末100が送信する信号を参照する他の端末の数(例えば‘多’、‘標準’、‘少’にクラス分け)、端末100が通信する信号が一斉送信される信号であるか否か、又は、信号の送信元(放送元)が端末100であるか否か、等が示される。
また、図24に示す端末位置は、図21に示す端末位置に基づいて特定される端末100の位置を示す情報である。例えば、図24に示す端末位置は、複数の端末が位置するエリアのどの位置(‘中心’、‘端’など)に端末100が位置しているか、又は、端末100がどの高さ(‘高’、‘低’など)に位置しているかを示す。
図24に示すように、通信制御部211は、通信品質が‘良’であり、参照する他の端末の数が‘多’(又は最多)である端末100を親ノードに設定する。こうすることで、多くの端末に参照される信号の送信元である端末100と、送信先である他の端末とのネットワーク構成を最小限に抑え、必要となる無線リソースの極小化を図ることができる。
また、図24に示すように、通信制御部211は、通信品質が‘良’であり、一斉送信される信号を送信する端末100を親ノードに設定する。こうすることで、一斉送信信号の送信元である端末100と、送信先である他の端末とのネットワーク構成を最小限に抑え、必要となる無線リソースの極小化を図ることができる。
このように、同時通信時の信号の送信元(放送元)となる端末100が親ノードに設定されることにより、同時通信時の端末間通信に要する無線リソースを最小限に抑えることができる。
また、図24に示すように、通信制御部211は、通信品質が‘良’であり、端末位置がエリアの中心(又は最も中心)である端末100を親ノードに設定する。エリアの中心に位置する端末100を親ノードとすることにより、エリアの中心に位置する基地局200から親ノードへの通信、及び、親ノードからエリアの中心から離れた子ノードへの通信を含む全てのノードへの通信において低遅延化を図ることができる。
そして、通信制御部211は、例えば、親ノードに設定された端末100と同時通信を行う他の端末を子ノードに設定する。また、図24から分かるように、通信制御部211は、通信品質が‘悪’である端末100には、子ノードを設定しやすくしてもよい(図示せず)。通信品質が‘悪’である端末100が親ノードに設定されてしまうと、当該端末100と基地局間、又は、当該端末100と他の端末間での通信環境が劣化し、周波数利用効率が劣化してしまうためである。
以上のようにして、通信制御部211は、複数の端末100が端末間通信を同時に行う場合、複数の端末100の通信状態に基づいて、複数の端末100のうち、基地局200との間でユーザデータの通信を行う親ノード、及び、親ノードとの間のみでユーザデータの通信を行う子ノードを設定する。なお、端末間のみでユーザデータを通信する場合は、基地局200から親ノードに設定された端末100に対するユーザデータの送信は不要であり、基地局200は制御データのみ送信すれば良い。
なお、図24に示す判定基準に限定されるものではなく、通信制御部211は、全体のリソースが削減されるような、又は、通信全体において低遅延化されるような親ノードを設定するという判定基準に基づいて、各端末100のノード設定を制御すればよい。
また、本実施の形態では、端末間通信の品質を中心にノード設定方法を記載したが、端末間通信以外の通信品質に基づき、ノードを設定することも可能である。また、本実施の形態では、親ノードが一つ、子ノードが複数のスター型のネットワークトポロジを中心にノードの設定方法を記載したが、階層的に複数の親ノードを設定するツリー型のネットワークトポロジ、又は、ネットワーク内に複数の親ノードを設定するメッシュ型のネットワークトポロジとして、親ノード,子ノードを設定することも可能である。
次に、同時通信の一例として、車間衝突検出について説明する。図25A〜図25Eは、車両又は信号などに設置された端末1〜端末3が交差点付近に位置する場合におけるノード設定の一例を示す。図25A〜図25Eでは、端末1が親ノードであり、端末2,3が子ノードである。すなわち、図25A〜図25Eでは、親ノードである端末1は、車間衝突を防止するための信号(衝突防止信号。例えば、交差点に接近する車両の情報)を、子ノードである端末2,3に同時送信する。
例えば、図25Aでは、交差点内の衝突防止を目的として、交差点の信号又は監視装置等に端末1が固定されている。すなわち、端末1は、交差点のほぼ中央(エリア中心)に設置され、交差点内にこれから進入してくる端末2,3などと比較して、交差点内の状況をより適切に判断できる位置に設置されている。よって、端末1が、交差点に進入してくる車両に設置された端末2、端末3に対して、衝突防止信号を同時送信することにより、低遅延かつ無線リソースの利用を抑えた同時通信が可能となる。
図25Bでは、右折時の衝突防止を目的として、交差点において右折レーンを走行中の車両に設置された端末1が親ノードに設定される。すなわち、図25Bでは、各車両の走行状態に応じて親ノードが可変となる。すなわち、端末1は、右折する車両の衝突が発生し得るエリアのほぼ中央(エリア中心)に位置し、右折する車両の衝突をより適切に判断できる位置に設置されている。よって、端末1が、右折する車両以外の車両(例えば、交差点付近に停止又は進入してくる車両)に設置された端末2、端末3に対して、自車両が右折することを通知する信号を同時送信することにより、低遅延かつ無線リソースの利用を抑えた同時通信が可能となる。
図25Cでは、緊急車両の走行情報の提供を目的として、交差点に進入してくる緊急車両に設置された端末1が親ノードに設定される。すなわち、端末1は、緊急車両の走行情報の送信元の車両に設置され、緊急車両が交差点に進入した際には交差点のほぼ中央(エリア中心)に位置する。よって、端末1が、緊急車両以外の車両(例えば、交差点付近の車両)に設置された端末2、端末3に対して、緊急車両が交差点に進入することを通知する信号を同時送信することにより、低遅延かつ無線リソースの利用を抑えた同時通信が可能となる。
図25Dでは、左折時の衝突防止を目的として、交差点において左折レーンを減速中の車両に設置された端末1が親ノードに設定される。すなわち、図25Dでは、各車両の走行状態に応じて親ノードが可変となる。すなわち、端末1は、左折する車両の衝突が発生し得るエリアのほぼ中央(エリア中心)に位置し、左折する車両の衝突をより適切に判断できる位置に設置されている。よって、端末1が、左折する車両以外の車両に設置された他の端末(例えば、端末1に後続して交差点に進入してくる車両に設置された端末2、又は、端末1の対向車線において交差点に進入してくる車両に設置された端末3)に対して、自車両が左折することを通知する信号を同時送信することにより、低遅延かつ無線リソースの利用を抑えた同時通信が可能となる。
図25Eでは、出会い頭の衝突防止を目的として、交差点(図25EではT字路)において交差点内で制止している車両に設置された端末1が親ノードに設定される。すなわち、図25Eでは、各車両の走行状態に応じて親ノードが可変となる。すなわち、端末1は、出会い頭の衝突が発生しうるエリアの略中央(エリア中心)に位置し、出会い頭の衝突をより適切に判断できる位置に設置されている。よって、端末1が、他の車線を走行中の車両に設置された端末2、端末3に対して、自車両が同じ車線に進入することを通知する信号を同時送信することにより、低遅延かつ無線リソースの利用を抑えた同時通信が可能となる。
以上、同時通信の一例として、車間衝突検出処理を行う場合について説明した。このように、同時通信を行う複数の端末において、エリア中心の端末、参照する端末数の多い信号の送信元に設置された端末が親ノードに設定される。すなわち、同時通信処理の中心となる端末が親ノードに設定されることにより、端末間通信全体における論理パスがより短くなるので、低遅延化及び無線リソースの極小化を図ることができる。
なお、本実施の形態では、車間衝突検出時の信号について説明したが、これに限定されず、例えば、緊急災害速報、公共無線、又は、ファイル交換における同時通信の信号に適用することもできる。
このようにして、本実施の形態によれば、基地局200は、端末100の通信状態に基づいて、同時通信を行う端末100のノード設定を行う。これにより、基地局200との間においてユーザデータを通信する端末100(親ノード)数を最小限にし、かつ、端末間通信において効率良い無線リソースの割当が可能となる。よって、本実施の形態によれば、通信システム全体での無線リソースの使用を抑圧することができ、同時通信に要する無線リソースの極小化、及び、同時通信の低遅延化を図ることができる。
(実施の形態4)
図26は、本実施の形態に係る通信システムにおけるエリア構成の一例を示す。図26では、実施の形態1(図3)と同一のエリアに加え、CA1及びCA2のエリア外であって、端末間通信が可能なエリア「PA4」が含まれる。本実施の形態では、PA4における端末間通信について説明する。
図27は、本実施の形態に係る通信システムの全体構成例を示す。図27では、端末8〜端末10が図26に示すPA4内に位置する。すなわち、端末8〜端末10は、何れも基地局1及び基地局2と接続されていない。
この場合、本実施の形態では、端末8〜端末10のうち何れか1つの端末(図27では端末10)が基地局として動作し、残りの端末(図27では端末8,9)が端末として動作する。
なお、本実施の形態に係る端末は、実施の形態1〜実施の形態3に係る端末100と基本構成が共通するので、図5を援用して説明する。ただし、本実施の形態では、端末100の通信制御設定部102の動作が異なる。
また、図28は、本実施の形態に係る基地局として動作する端末300(図27では端末10)の構成を示すブロック図である。なお、図28に示す各構成は、実施の形態1(図8)に示す基地局200の構成と基本的に同一であるので、構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。実施の形態1の基地局200と比較して、端末300の通信制御部211の動作が異なる。
すなわち、図27に示す端末8〜端末10は、端末100(図5)及び端末300(図28)の双方の処理部を具備し、各々の端末がどの無線局(基地局又は端末)として動作するかに応じて、端末100又は端末300の処理部が動作する。
図29は、本実施の形態に係る端末300の通信制御部211の内部構成を示すブロック図である。なお、図29において、実施の形態1(図10)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
図29に示す通信制御部211において、無線局制御部561は、通信状態管理部209(図8)から受け取る端末100の通信状態、又は、基地局状態判定部210(図8)から受け取る基地局200の通信状態に基づいて、端末100が基地局間通信を実施できない場合又は端末間通信用の信号を受信できない場合、当該端末100がどの種類の無線局(基地局又は端末)として動作するかを決定する。なお、無線局制御部561における無線局設定処理の詳細については後述する。
無線局制御部561が決定した端末100の無線局設定は、例えば、図30に示すように、「無線局種別」として端末100へ通知される。すなわち、本実施の形態では、「端末に送信する情報」として、無線局種別が含まれる点が実施の形態1(図14)と異なる。
図31は、本実施の形態に係る端末100の通信制御設定部102の内部構成を示すブロック図である。なお、図31において、実施の形態1(図7)と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
図31に示す通信制御設定部102において、無線局設定部661は、端末300から通知される制御情報に従って、端末100が動作する無線局の種別(端末)を設定する。
次に、図32は、端末300及び端末100における無線局設定処理を示すシーケンス図である。
なお、図32では、一例として、図27に示す端末8〜端末10の電源が何れもOFFの状態であるものとする。
ST401では、端末10の電源がONとなる。ST402では、端末10は、端末間通信用信号をサーチ(検出)する。端末間通信用信号は、端末間通信を行うための制御情報であって、例えば、端末間通信を行うエリア及び端末間通信を行う端末を特定するための情報などが含まれる。端末間通信用信号は、通常、基地局から端末へ送信されている。
ST403では、端末10は、ST402でのサーチの結果、端末間通信用信号が検出されないと判断する。つまり、ST401〜ST403では、端末10は、端末100(図5)として動作している。なお、端末間通信用信号が検出されないことは、端末10は基地局間通信を行うことができず、かつ、他の端末が基地局として動作していないことを意味する。
ST403において端末間通信信号が検出されないと判断すると、ST404では、端末10は、基地局(端末300)として自立的に動作する。また、端末10(無線局制御部561)は、同一エリアに位置する他の端末8、端末9に対して無線局の種別(端末局)を設定する。ST405及びST406では、端末10は、ST404において設定した無線局種別を含む端末間通信用信号を端末8及び端末9へ送信する。
一方、端末8及び端末9では、少なくとも、端末10での電源ON(ST401)よりも遅いタイミングにおいて電源がONとなる(ST407及びST409)。ST408及びST410では、端末8及び端末9は、端末間通信用信号をサーチし、ST405及びST406において端末10が送信した端末間通信用信号を受信する。
ST411及びST412では、端末8及び端末9は、ST405及びST406において端末10(基地局として動作)から受け取った端末間通信用信号を用いて、無線局(端末)の設定を行う。
ST411及びST412において端末8及び端末9が無線局(端末)の設定を行うことにより、端末8〜端末10での無線局設定が完了する(ST413)。このように、図27に示すPA4に位置する端末のうち、電源が最初にONされた端末がPA4における基地局として動作する。すなわち、図27に示すPA4に位置する端末8〜端末9による端末間通信において、端末10が基地局300として動作し、端末8、端末9が端末100として動作する。
ただし、電源ONの動作が複数の端末においてほぼ同時に発生し、これらの端末間での競合動作などによって無線リソースの割当などができない場合も想定される。この場合、例えば、以下の方法により回避することができる。(1)競合動作が発生してから一定時間経過後に端末として動作する端末100が自動的に電源をOFF/ONする。ここで、一定時間は、端末100毎にランダムとすることにより、競合動作を回避することができる。(2)競合動作が発生してから一定時間経過後に基地局として動作する端末300が自動的に電源をOFF/ONする。ここで、端末300は、電源ON時も再び基地局として動作し、他の基地局として動作する端末と共同して、端末100への無線リソースを割り当てる。
次に、端末300(通信制御部211)における無線局の設定方法の詳細について説明する。
図33は、無線局を決定する際の判定基準及び判定結果を示す。
なお、図24に示す基地局間通信品質及び端末間通信品質は、例えば、図30に示す端末から受信する情報である基地局間通信品質及び端末間通信品質である。図24に示す基地局間通信品質及び端末間通信品質は、例えば、信号を受信可能な通信品質(受信レベルなど)の最低値を閾値として、通信品質が閾値未満の場合には‘受信不可’と表され、通信品質が閾値以上の場合には‘受信可’と表される。
例えば、通信制御部211は、端末100の基地局間通信品質が‘受信不可’であり、端末間通信品質が‘受信可’である場合、当該端末100の無線局種別を「端末」に設定する。一方、通信制御部211は、端末100の基地局間通信品質が‘受信不可’であり、端末間通信品質が‘受信不可’である場合、当該端末100の無線局種別を「基地局」に設定する。
例えば、図32では、端末10が電源ONし、端末8及び端末9が電源OFFの状態である場合、端末10は、基地局間通信品質及び端末間通信品質の双方とも‘受信不可’となるので、端末10は、端末10が基地局として動作することを決定する。その後、端末8〜端末10が電源ONの状態である場合、端末8及び端末9は、端末10から端末間通信用信号が送信されているので、基地局間通信品質が‘受信不可’であるものの、端末間通信品質が‘受信可’となる。よって、端末10は、端末8及び端末9が端末として動作することを決定する。そして、端末10は、端末8及び端末9に対して、端末間通信においてどの無線局として動作するかを通知する。
また、図33から分かるように、端末100の基地局間通信品質が‘受信可’である場合(図示せず)には、当該端末100では基地局間通信を行えばよいので、無線局種別を設定する必要がない。
このようにして、本実施の形態によれば、端末300は、基地局間通信及び端末間通信の何れもできない通信状態である場合には、端末300自身が基地局として自立的に動作する。こうすることで、基地局間通信及び端末間通信の何れもできないエリアに存在する端末のみでも端末間通信を行うことが可能となる。
以上、本発明の各実施の形態について説明した。
なお、上記各実施の形態では、本発明をハードウェアで構成する場合を例にとって説明したが、本発明はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)又は、LSI内部の回路セルの接続若しくは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。