JP6421634B2 - 溶鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、第6工程に時間を要するため生産性が低下すること、およびスラグ中(FeO)濃度が低下するとスラグの融点が上昇するため、次チャージの第2工程でのスラグの溶解速度が低下して、第2工程での脱りん率が低下してしまうことという問題がある。
2FeO+[Si]=SiO2+2[Fe] ・・・・・(iii)
本発明の目的は、高炉溶銑を転炉を用いて精錬して溶鋼を製造するに際し、前記した特許文献1に記載された発明を実施する際の生産性の低下や、脱りん率の低下等の問題を解決する方法を提供することである。
第一工程として、上記した屑鉄および溶銑を転炉へ装入し、スラグの装入塩基度が1.0〜2.0となるように、前チャージで残留させ固化させた脱炭スラグや、添加したスラグ固化剤および造塊スラグも考慮に入れて、副原料を装入する。適度に流動性のあるフォーミングスラグを形成して脱りん反応を促進させるためである。この副原料の炉内への装入時期は、溶銑を装入する前でも後でも良いが、その滓化に要する時間を考えて吹錬用酸素の供給を始めてから1分経過するより前に行うことが望ましい。この副原料には、一般的な生石灰のほか、石灰石や軽焼ドロマイト等を適宜用いれば良い。また温度調整用に酸化鉄を添加し、処理温度が一般的な1350℃以下で脱りん吹錬を行う。供給ガス流量は、上吹き酸素:40000Nm3/h、底吹き酸素:3000Nm3/h、底吹きLPG:200Nm3/h程度である。
第二工程として、第一工程で生成したスラグを約80%排出する。
第三工程として、脱炭スラグの塩基度(CaO質量/SiO2質量)3.5〜5であって、その組成が質量%で、CaO=30〜50%、Al2O3=1〜5%、T.Fe=10〜30%、SiO2=8〜15%、MgO=6〜12%となるように生石灰、軽焼ドロマイト(組成:CaO≒60%、MgO≒34%)を添加し、また温度調整用に酸化鉄を添加して、[C]≒0.10%まで脱炭吹錬(同時に脱りんも進行)を行う。この脱炭スラグの組成は、脱炭吹錬後に製品レベルまで脱りんが可能で且つ転炉耐火物の溶損を極力抑制可能なものである。供給ガス流量は、上吹き酸素:80000Nm3/h、底吹き酸素:3000Nm3/h、底吹きLPG:200Nm3/h程度である。
第四工程として、第三工程で生成した脱炭スラグを炉内に残したまま出鋼する。
第五工程として、炉体を傾動して炉口から脱炭スラグの一部を排出して炉内に所定量残した脱炭スラグへ生石灰、石灰石、軽焼ドロマイト、生ドロマイトおよび冷却固化した脱炭スラグから選ばれた1種または2種以上の固化剤と共に、組成が質量%で、CaO=30〜50%、Al2O3=10〜30%、T.Fe=5〜15%、SiO2=8〜20%、である造塊スラグを添加して、炉内残留スラグとともに固化させる。その後、再び第一工程へ戻って、次チャージの屑鉄50tおよび溶銑290tと副原料とを前記第五工程を終えた転炉へ装入して脱りん処理を行う。
以降は、順次第五工程まで実施し、その後また第一工程から第五工程までを順次繰り返す。
この固化剤および造塊スラグの粒径は、後述する理由により、固化剤は50mm以下であって10〜50mmの比率が20質量%以上のものとし、造塊スラグは10〜50mmのものとする必要がある。この粒径は、10mm四方の網目を通過しなかったスラグの粒径を10mm以上とし、50mm四方の網目を通過したスラグの粒径を50mm以下とする。
なお、固化剤の添加時期は第四工程における出鋼の完了後、10分以内であることが好ましい。
炉内に残した脱炭スラグの質量は、転炉を傾動して炉口からスラグを排出する際の「炉体傾動角」から推定することができる。炉体傾動角と炉内残留スラグ量との相関関係は、生成スラグ量をマスバランス計算から推定し、炉体傾動角毎の排出スラグ量を測定して予め求めておく。脱炭スラグは比較的流動性が高いので、炉体傾動角と炉内残留スラグ量には良い相関がある。
したがって、本発明を実施するに際しては、炉体傾動角と炉内残留スラグ量との関係を予め調べておき、炉体傾動角から炉内残留スラグ量を把握して固化剤等の添加条件を調整することが好ましい。但し、繰り返し操業を行うことを通じて、経験的に炉内残留スラグ量を把握して固化剤等の条件を定めることにしても、本発明の諸要件を満足させて本発明の効果を享受することができる。
固化剤を添加する条件下で造塊スラグを添加しなかった場合(比較例1)、炉底に固着した脱炭スラグが次チャージの第一工程の早期に剥離・浮上し難かったため、第一工程での脱りん率が低下し、出鋼後鍋中[P]濃度が0.021%と高値になった。
第一工程での装入塩基度を1.0〜2.0とした場合(本発明2,3)、適度に流動性のあるフォーミングスラグが形成されて脱りん反応が進み、その後の第二工程で排滓率80%を確保できた。一方、装入塩基度が0.9と低い場合(比較例2)、スラグの脱りん能が低く、第一工程での脱りん率が低かった。そのため、第三工程へ持ち込まれる[P]量が増えて、出鋼後の鍋中[P]濃度が0.021質量%まで上昇してしまったと考えられる。そして、装入塩基度が2.2と高い場合(比較例3)、スラグの融点が高いため流動性が低く、あまりフォーミングもしなかったため、第二工程での排滓率が60%まで低下してしまった。そのため、第三工程へ持ち込まれる[P]量が増えて、出鋼後の鍋中[P]濃度が0.022質量%まで上昇してしまったと考えられる。
固化剤の粒径は、50mm以下であって10〜50mmの比率が固化剤全体の20質量%以上のものとした。粒径が大き過ぎると、次チャージの第一工程で滓化させにくくなるし、一方、粒径が細かいものばかりでは固化剤添加時に溶融スラグと混じりにくいからである。
造塊スラグの粒径を10mm未満とすると(比較例4)、炉内残留脱炭スラグへ細かく溶解してしまい、次チャージの第一工程で脱炭スラグが炉底から剥離・浮上する時期が顕著には早くならなかった。それは、上述した炉底に固着したスラグの凸凹が小さかったため、溶銑流動による固着スラグの剥離が遅くなったのだと考えられる。その結果、出鋼後鍋中[P]濃度は0.020質量%と目標0.019質量%以下を僅かに達成することができなかったと考えられる。
固化剤無添加で造塊スラグのみ添加したところ、次チャージの注銑時に突沸した。
この場合、鉄屑添加後も鉄屑と非接触な造塊スラグが溶融状態で存在していたため、注銑時に突沸してしまったと考えられる。
本発明に係る所定の要件を満たして脱炭吹錬を行った後、炉体を傾動して炉口から脱炭スラグ(組成:CaO=30〜50%、Al2O3=1〜5%、T.Fe=10〜30%、SiO2=8〜15%、MgO=6〜12%、塩基度:CaO質量/SiO2質量=3.5〜5.0)の一部を排出して炉内に約20kg/t残した脱炭スラグへ固化剤として石灰石(粒径50mm以下であって、粒径10〜50mmの比率が石灰石全体の20質量%以上としたもの)2kg/tと共に粒径10〜50mmの造塊スラグ(組成:CaO約45%、Al2O3約20%、T.Fe約10%、SiO2約10%、MgO約10%)1.0kg/tを添加(炉内残留スラグに対し固化剤は10質量%、造塊スラグは固化剤に対し50質量%)して脱炭スラグを固化した。
本発明に係る所定の要件を満たして脱炭吹錬を行った後、炉体を傾動して炉口から脱炭スラグ(組成:CaO=30〜50%、Al2O3=1〜5%、T.Fe=10〜30%、SiO2=8〜15%、MgO=6〜12%、塩基度:CaO質量/SiO2質量=3.5〜5.0)の一部を排出して炉内に約20kg/t残した脱炭スラグへ固化剤として石灰石(粒径50mm以下であって、粒径10〜50mmの比率が石灰石全体の20質量%以上としたもの)5kg/tを添加(炉内残留スラグに対し固化剤は10質量%)して脱炭スラグを固化した。
Claims (2)
- 高炉溶銑を精錬して溶鋼を製造する溶鋼の製造方法であって、
第一工程として屑鉄および溶銑を転炉へ装入し、装入する副原料の量を調整してスラグの装入塩基度(CaO質量/SiO2質量)を1.0〜2.0、処理温度を1350℃以下で吹酸して脱りん処理を行い、
第二工程として第一工程で生成したスラグを排出し、
第三工程としてフラックス添加と吹酸により、組成が質量%で、CaO=30〜50%、Al2O3=1〜5%、T.Fe=10〜30%、SiO2=8〜15%、MgO=6〜12%であって、塩基度:CaO質量/SiO2質量=3.5〜5.0である脱炭スラグを生成させて脱炭、脱りん処理を行い、
第四工程として第三工程で生成した脱炭スラグを残したまま出鋼し、
第五工程として炉内に残した脱炭スラグへ、粒径が50mm以下であって10〜50mmの比率が20質量%以上とした生石灰、石灰石、軽焼ドロマイト、生ドロマイトおよび冷却固化した脱炭スラグから選ばれた1種または2種以上の固化剤と共に、粒径が10〜50mmであるとともに組成が質量%で、CaO=30〜50%、Al2O3=10〜30%、T.Fe=5〜15%、SiO2=8〜20%、である造塊スラグを添加して該脱炭スラグを固化させ、
その後、再び第一工程へ戻って、次チャージの屑鉄および溶銑を前記第五工程を終えた転炉へ装入し、前記第一工程として規定した条件で脱りん処理を行って、以降の第五工程までを順次実施することを繰り返すことを特徴とする溶鋼の製造方法。 - 前記第五工程において、炉内に残した脱炭スラグに添加する固化剤の質量を当該脱炭スラグの質量の10〜30%とし、かつ、添加する造塊スラグの質量を該固化剤の質量の10〜100%とすることを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の製造方法。
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