JP6489892B2 - 金属触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
遷移金属を活性金属成分とする金属触媒の形態には、活性金属成分をシリカ、アルミナ等の金属酸化物上に担持した金属担持型触媒、主に活性金属成分のみから構成されるバルク型触媒(例えば、ラネー型触媒)があり、反応条件等を考慮して利用しやすい形態が選定される。
金属触媒は、一般的に活性金属成分の金属表面積が高いほど、その触媒活性も高くなる傾向を示す。したがって、いずれの形態の金属触媒においても、その金属表面積を高く保持することが非常に重要となる。例えば、非特許文献1において、含浸法、析出沈殿法などでニッケルをシリカ上に担持したニッケル担持シリカ触媒が開示されている。
また、展開処理後の触媒は、反応に応じて適した保存液を選択しなければ保存時間の経過とともに活性が低下するという問題がある。さらには、展開処理の度にアルカリ廃液が発生するという問題もある。
[1]金属成分含有率が60〜95質量%である金属触媒の製造方法であって、原料にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を実質的に含まず、以下(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする製造方法。
(1)1種以上の金属塩からBET比表面積が50m2/g以上の金属酸化物を得る工程(2)水性溶媒中に金属酸化物を添加する工程
(3)水性溶媒中に構造安定剤を添加する工程
(4)構造安定剤が添加された金属酸化物を水性溶媒と分離し、水洗、乾燥する工程
(5)水性溶媒と分離し、水洗、乾燥して得られた構造安定剤が添加された金属酸化物を還元処理して該金属酸化物を金属化する工程
[2]前記金属塩が、コバルト、銅、鉄、ニッケルの少なくとも1種の金属成分を含むものである上記[1]に記載の製造方法。
[3]前記構造安定剤が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアの少なくとも1種である上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記構造安定剤が、ケイ素、アルミ、チタン、ジルコニウムの少なくとも1種のアルコキシドの加水分解により水性溶媒中で生成されるものである上記[3]に記載の製造方法。
[5] 前記金属触媒中の金属成分の結晶子径が50nm未満である上記[1]〜[4]に記載の製造方法。
(1)1種以上の金属塩からBET比表面積が50m2/g以上の金属酸化物を得る工程
(2)水性溶媒中に金属酸化物を添加する工程
(3)水性溶媒中に構造安定剤を添加する工程
(4)構造安定剤が添加された金属酸化物を水性溶媒と分離し、水洗、乾燥する工程
(5)水性溶媒と分離し、水洗、乾燥して得られた構造安定剤が添加された金属酸化物を還元処理して該金属酸化物を金属化する工程
ここで、前記金属成分含有率とは、金属触媒に対する活性金属成分の質量割合のことであり、本発明においては、高い金属表面積を発現させる目的から当該範囲は60〜95質量%の範囲であり、好ましくは、65〜90質量%の範囲である。金属成分含有率が、95質量%を超えると、還元処理による金属酸化物を金属化する工程での金属成分の凝集が進行する。一方、金属成分含有率が60質量%未満であると、金属成分含有量が低下して金属表面積が低下するとともに、構造安定剤との相互作用も増加するため、得られる金属触媒の活性が低下する。
(1)1種以上の金属塩からBET比表面積が50m2/g以上の金属酸化物を得る工程
当該工程において、1種以上の金属塩からBET比表面積が50m2/g以上の金属酸化物が得られる方法である限り特に限定はなく、例えば、金属塩を乾燥あるいは焼成など加熱処理する方法を挙げることができる。加熱処理により金属酸化物を得る際の雰囲気、加熱温度や加熱時間などの条件は、得られる金属酸化物のBET比表面積が50m2/g以上となるよう設定すればよいが、例えば、200℃以上で1時間程度加熱すればよい。
また、その加熱装置については特に限定はなく、加熱装置の特性によって適宜選択すればよく、例えば、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、箱型焼成炉、管型焼成炉、トンネル型焼成炉等を用いることができる。
前記金属塩としては、触媒活性の観点から、コバルト、銅、鉄、ニッケルの少なくとも1種の金属成分を含むものが好ましいが、なかでも、コバルト、銅、ニッケルの少なくとも1種の金属成分を含むものが好ましい。
当該工程においては、水性溶媒中に金属酸化物を添加すればよく、例えば、所定量をまとめて添加してもよいし、少量ずつ添加してもよく、その方法は特に限定されない。また、添加した金属酸化物が水性溶媒中に分散するように攪拌装置を用いたり、超音波により分散させることが好ましい。金属酸化物を水性溶媒中に分散させておくことで、構造安定剤を金属酸化物表面に均一に添加することができ、還元処理による金属酸化物の金属化工程において、生成金属粒子同士の合一による粒子凝集を抑制することができる。
前記水性溶媒としては、水溶液である限り特に限定はなく、例えば、水、アルコール水溶液などを用いることができる。
当該工程においては、水性溶媒中に構造安定剤を添加すればよく、例えば、所定量をまとめて添加してもよいし、少量ずつ添加してもよく、その方法は特に限定されない。また、添加した構造安定剤が水性溶媒中に分散するように攪拌装置を用いたり、超音波により分散させることが好ましい。前記構造安定剤を添加した後は、前記した金属酸化物表面に構造安定剤がある程度均一に付着あるいは析出するまで十分に攪拌・混合することが好ましく、例えば、1〜24時間程度攪拌・混合すればよい。
なお、前記(2)の工程と(3)の工程においては、その順序はどちらが先であってもよい。すなわち、金属酸化物を添加した水性溶媒中に構造安定剤を添加してもよいし、構造安定剤を添加した水性溶媒中に金属酸化物を分散させてもよい。
当該工程においては、まず、構造安定剤が添加された金属酸化物を水性溶媒から分離する。分離する方法としては、液体と固体とを分離できる操作であれば特に限定はないが、簡便性の面から、ろ過法により分離するのが好ましい。なお、ここで「構造安定剤が添加された金属酸化物」とは、前記した(2)、(3)の工程を経て表面に前記構造安定剤が付着あるいは析出した金属酸化物のことをいう。
次いで、水性溶媒から分離された構造安定剤が添加された金属酸化物を水洗する。水洗する方法は特に限定されず、通常、純水あるいはイオン交換水等で3〜5回程度水洗すればよい。
当該工程においては、水性溶媒と分離し、水洗、乾燥して得られた構造安定剤が添加された金属酸化物を還元処理する。還元処理の方法としては、特に限定されず、例えば、水素気流下、200〜600℃、好ましくは250〜400℃で1〜24時間還元処理すればよい。還元に必要となる温度は金属種により異なるため、予め昇温還元測定(TPR)等により金属化に要する還元温度域を確認することが好ましい。使用できる装置としては、特に限定はなく、例えば、箱型還元炉、管型還元炉、トンネル型還元炉等を用いることができる。
また、当該工程においては、還元後に不動態化処理を行っても良い。例えば、還元後の金属触媒を1%程度の酸素を含む窒素ガスと室温下で1〜20時間接触させることで、不動態化することができる。
[実施例]
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
株式会社マウンテック社製の全自動BET比表面積測定装置 Macsorb1210を用いて、以下の測定条件にてBET1点法で測定した。
前処理温度:200℃
前処理時間:1時間
測定手法:流動法
吸着ガス:窒素(30vol%N2/He)
測定温度:−195.8℃
マイクロトラックベル株式会社製 触媒分析装置 BELCATを用いて、以下の測定条件にて測定した。
前処理還元温度:300〜400℃
測定手法:流動法
吸着ガス:CO(10vol%CO/He)
測定温度:50℃
スペクトリス株式会社製 全自動多目的X線回折装置 XPert Proを用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
X線源:CuKα(0.154nm)
X線出力設定:45kV、40mA
ステップサイズ:0.017°
スキャンステップ時間:50.2秒
測定範囲:10〜90°
測定温度:25℃
塩基性炭酸ニッケル(キシダ化学株式会社製)を空気流通下、5℃/分で300℃まで昇温し、1時間保持して酸化ニッケルとした。得られた酸化ニッケル粉末のBET比表面積を測定したところ、330m2/gであった。この酸化ニッケル粉末5gを、50質量%エタノール水溶液40g中に加え、超音波により十分に分散させた。次いで、酸化ニッケル分散エタノール水溶液をマグネティックスターラーで攪拌しながら、ケイ酸テトラエチル0.87gを加え、1時間攪拌を継続した。次いで、25質量%アンモニア水1.42gを加えて12時間攪拌を行った後、ろ過、水洗により粉末を回収し、120℃で乾燥させた。次に、100体積%の水素気流下、350℃で1時間還元処理した後、窒素気流に切り替えて室温まで降温し、1体積%の酸素を含有させた窒素にて不動態化して、金属触媒1を得た。このようにして得られた金属触媒1の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Ni 94.0質量%、SiO2 6.0質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、これらの含有率は蛍光X線分析装置での分析において検出下限未満であった。この金属触媒1のBET比表面積は、97m2/gであった。X線回折測定では金属Niに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いNi[111]による回折線より算出された結晶子径は、9.5nmであった。また、COパルス吸着法により測定したNi金属表面積は、22m2/gであった。結果を表1に示す。
実験例1において、ケイ酸テトラエチル0.87g、25質量%アンモニア水1.42gをケイ酸テトラエチル2.04g、25質量%アンモニア水3.33gに変更した以外は、実験例1と同様にして金属触媒2を調製した。得られた金属触媒2の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Ni 87.0質量%、SiO2 13.0質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、これらの含有率は蛍光X線分析装置での分析において検出下限未満であった。この金属触媒2のBET比表面積は、187m2/gであった。X線回折測定では金属Niに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いNi[111]による回折線より算出された結晶子径は、5.0nmであった。また、COパルス吸着法により測定したNi金属表面積は、38m2/gであった。結果を表1に示す。
実験例1において、ケイ酸テトラエチル0.87g、25質量%アンモニア水1.42gをケイ酸テトラエチル3.84g、25質量%アンモニア水6.28gに変更した以外は、実験例1と同様にして金属触媒3を調製した。得られた金属触媒3の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Ni 78.0質量%、SiO2 22.0質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、これらの含有率は蛍光X線分析装置での分析において検出下限未満であった。この金属触媒3のBET比表面積は、249m2/gであった。X線回折測定では金属Niに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いNi[111]による回折線より算出された結晶子径は、5.0nmであった。また、COパルス吸着法により測定したNi金属表面積は、38m2/gであった。結果を表1に示す。
実験例1において、ケイ酸テトラエチル0.87g、25質量%アンモニア水1.42gをケイ酸テトラエチル12.1g、25質量%アンモニア水19.7gに変更した以外は、実験例1と同様にして金属触媒4を調製した。得られた金属触媒4の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Ni 53.0質量%、SiO2 47.0質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、これらの含有率は蛍光X線分析装置での分析において検出下限未満であった。この金属触媒4のBET比表面積は、138m2/gであった。X線回折測定では金属Niに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いNi[111]による回折線より算出された結晶子径は、8.2nmであった。また、COパルス吸着法により測定したNi金属表面積は、20m2/gであった。結果を表1に示す。
実験例1において、ケイ酸テトラエチル0.87g、25質量%アンモニア水1.42gをともに使用しなかった以外は、実験例1と同様にして金属触媒5を調製した。得られた金属触媒5の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Ni 100質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、これらの含有率は蛍光X線分析装置での分析において検出下限未満であった。この金属触媒5のBET比表面積は、2.0m2/gであった。X線回折測定では金属Niに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いNi[111]による回折線より算出された結晶子径は、50nmであった。また、COパルス吸着法により測定したNi金属表面積は、0.5m2/gであった。結果を表1に示す。
塩基性炭酸コバルト(ナカライテスク株式会社製)を空気流通下、5℃/分で250℃まで昇温し、1時間保持して酸化コバルトとした。得られた酸化コバルトのBET比表面積を測定したところ、224m2/gであった。この酸化コバルト粉末5gを、50質量%エタノール水溶液40g中に加え、超音波により十分に分散させた。次いで、酸化コバルト分散エタノール水溶液をマグネティックスターラーで攪拌しながら、ケイ酸テトラエチル2.34gを加え、1時間攪拌を継続した。次いで、25質量%アンモニア水3.83gを加えて12時間攪拌を行った後、ろ過、水洗により粉末を回収し、120℃で乾燥させた。次に、100体積%の水素気流下、450℃で1時間還元後、窒素気流に切り替えて室温まで降温し、1体積%の酸素を含有させた窒素にて不動態化して金属触媒6を得た。このようにして得られた金属触媒6の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Co 84.5質量%、SiO2 15.5質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、これらの含有率は蛍光X線分析装置での分析においても検出下限未満であった。この金属触媒6のBET比表面積は、109m2/gであった。X線回折測定では金属Coに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いCo[111]による回折線より算出された結晶子径は、4.3nmであった。結果を表1に示す。
実験例6において、ケイ酸テトラエチル2.34g、25質量%アンモニア水3.83gをケイ酸テトラエチル6.29g、25質量%アンモニア水10.3gに変更した以外は、実験例6と同様にして金属触媒7を調製した。得られた金属触媒7の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Co 67.0質量%、SiO2 33.0質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、蛍光X線分析装置での分析において、これらの含有率は検出下限未満であった。この金属触媒7のBET比表面積は、77m2/gであった。X線回折測定では金属Coに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いCo[111]による回折線より算出された結晶子径は、5.1nmであった。結果を表1に示す。
塩基性炭酸ニッケル(キシダ化学株式会社製)を空気流通下、5℃/分で300℃まで昇温し、1時間保持して酸化ニッケルとした。得られた酸化ニッケルのBET比表面積を測定したところ、330m2/gであった。この酸化ニッケル粉末35gを、50質量%エタノール水溶液280g中に加え、超音波により十分に分散させた。次いで、酸化ニッケル分散エタノール水溶液をマグネティックスターラーで攪拌しながら、アルミニウム−s−ブトキシド 14.3gを加え、1時間攪拌を継続した。次いで、28質量%アンモニア水3.8gを加えて12時間攪拌を行った後、ろ過、水洗により粉末を回収し、120℃で乾燥させた。次に、100体積%の水素気流下、300℃で1時間還元後、窒素気流に切り替えて室温まで降温し、1体積%の酸素を含有させた窒素にて不動態化して金属触媒8を得た。このようにして得られた金属触媒8の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Ni 90.3質量%、Al2O3 9.7質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、蛍光X線分析装置での分析において、これらの含有率は検出下限未満であった。この金属触媒8のBET比表面積は、123m2/gであった。X線回折測定では金属Niに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いNi[111]による回折線より算出された結晶子径は、7.2nmであった。結果を表1に示す。
塩基性炭酸コバルト(ナカライテクス株式会社製)を空気流通下、5℃/分で250℃まで昇温し、1時間保持して酸化コバルトとした。得られた酸化コバルトのBET比表面積を測定したところ、224m2/gであった。この酸化コバルト粉末35gを、50質量%エタノール水溶液280g中に加え、超音波により十分に分散させた。次いで、酸化コバルト分散エタノール水溶液をマグネティックスターラーで攪拌しながら、アルミニウム−s−ブトキシド14.5gを加え、1時間攪拌を継続した。次いで、28質量%アンモニア水3.7gを加えて12時間攪拌を行った後、ろ過、水洗により粉末を回収し、120℃で乾燥させた。次に、100体積%の水素気流下、450℃で1時間還元後、窒素気流に切り替えて室温まで降温し、1体積%の酸素を含有させた窒素にて不動態化して金属触媒9を得た。このようにして得られた金属触媒9の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Co 90.3質量%、Al2O3 9.7質量%であった。また、調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、蛍光X線分析装置での分析において、これらの含有率は検出下限未満であった。この金属触媒9のBET比表面積は、59m2/gであった。X線回折測定では金属Coに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いCo[111]による回折線より算出された結晶子径は、13nmであった。結果を表1に示す。
実験例6において、ケイ酸テトラエチル2.34g、25質量%アンモニア水3.83gをともに使用しなかった以外は、実験例6と同様にして金属触媒10を調製した。得られた金属触媒10の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Co 100質量%であった。調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、これらの含有率は蛍光X線分析装置での分析において検出下限未満であった。この金属触媒10のBET比表面積は、1.2m2/gであった。X線回折測定では金属Coに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いCo[111]による回折線より算出された結晶子径は、139nmであった。結果を表1に示す。
塩基性炭酸銅(キシダ化学株式会社製)を空気流通下、5℃/分で300℃まで昇温し、1時間保持して酸化銅とした。得られた酸化銅のBET比表面積を測定したところ、69m2/gであった。この酸化銅粉末5gを、50質量%エタノール水溶液40g中に加え、超音波により十分に分散させた。次いで、酸化銅分散エタノール水溶液をマグネティックスターラーで攪拌しながら、ケイ酸テトラエチル 3.45gを加え、1時間攪拌を継続した。次いで、25質量%アンモニア水5.6gを加えて12時間攪拌を行った後、ろ過、水洗により粉末を回収し、120℃で乾燥させた。次に、100体積%の水素気流下、300℃で1時間還元後、窒素気流に切り替えて室温まで降温し、1体積%の酸素を含有させた窒素にて不動態化して金属触媒11を得た。このようにして得られた金属触媒11の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Cu 80質量%、SiO2 20質量%であった。調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、蛍光X線分析装置での分析において、これらの含有率は検出下限未満であった。この金属触媒11のBET比表面積は、79m2/gであった。X線回折測定では金属Cuに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いCu[111]による回折線より算出された結晶子径は、18nmであった。結果を表1に示す。
実験例11において、ケイ酸テトラエチル3.45g、25質量%アンモニア水5.6gをともに使用しなかった以外は、実験例11と同様にして金属触媒12を調製した。このようにして得られた金属触媒12の組成を蛍光X線分析装置で測定したところ、Cu 100質量%であった。調製過程でアルカリ金属、アルカリ土類金属の混入はなく、蛍光X線分析装置での分析において、これらの含有率は検出下限未満であった。この金属触媒12のBET比表面積は、1.5m2/gであった。X線回折測定では金属Cuに帰属される回折線が検出され、もっとも強度の強いCu[111]による回折線より算出された結晶子径は、124nmであった。結果を表1に示す。
Claims (5)
- 金属成分含有率が60〜95質量%である金属触媒の製造方法であって、
原料にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を実質的に含まず、
以下の(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする金属触媒の製造方法。
(1)1種以上の金属塩からBET比表面積が50m2/g以上の金属酸化物を得る工程
(2)水性溶媒中に金属酸化物を添加する工程
(3)水性溶媒中に構造安定剤を添加する工程
(4)構造安定剤が添加された金属酸化物を水性溶媒と分離し、水洗、乾燥する工程
(5)水性溶媒と分離し、水洗、乾燥して得られた構造安定剤が添加された金属酸化物を還元処理して該金属酸化物を金属化する工程 - 前記金属塩が、コバルト、銅、鉄、ニッケルの少なくとも1種の金属成分を含むものである請求項1に記載の製造方法。
- 前記構造安定剤が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアの少なくとも1種である請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記構造安定剤が、ケイ素、アルミ、チタン、ジルコニウムの少なくとも1種のアルコキシドの加水分解により水性溶媒中で生成されるものである請求項3記載の製造方法。
- 前記金属触媒中の金属成分の結晶子径が50nm未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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