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JP6489135B2 - 車両の運転支援装置 - Google Patents

車両の運転支援装置 Download PDF

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JP6489135B2 JP2017004427A JP2017004427A JP6489135B2 JP 6489135 B2 JP6489135 B2 JP 6489135B2 JP 2017004427 A JP2017004427 A JP 2017004427A JP 2017004427 A JP2017004427 A JP 2017004427A JP 6489135 B2 JP6489135 B2 JP 6489135B2
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Description

この発明は、車両の運転支援装置に関し、より詳細には、電動パワーステアリング装置を用いて車輪の舵角を制御する車両の運転支援装置に関する。
特許文献1には、車線維持支援制御を行うパワーステアリング(EPS)装置が開示されている。このEPS装置は、車両の運転者による操舵をアシストするために用いられる基本アシストトルクを算出する。また、EPS装置は、車線の所定位置を走行するための車線維持支援トルクを算出する。より詳細には、車線維持支援トルクは、走行経路に対する車両のオフセットと目標オフセットとの偏差、および、ヨー角と目標ヨー角との偏差に基づいてPID制御を実施することで算出される。また、EPS装置は、車線維持支援制御時の操舵フィーリングを改善するために、車線維持支援トルク(車線維持支援制御量)に応じて基本アシストトルク(基本アシスト制御量)を補償する補償トルク(補償制御量)が補正される。
特開2007−030612号公報 特開2015−033942号公報
特許文献1に記載の車線維持支援制御は、車輪の実舵角を目標舵角に近づけるための転舵トルクを生成するように電動パワーステアリング装置の電動モータを制御する「自動操舵制御」の一例に該当する。自動操舵制御の実行中には、運転者が介入して操舵を行った後に自動操舵制御に復帰して車輪の実舵角を目標舵角に近づける状況が想定される。特許文献1に記載の車線維持支援制御によれば、このような状況下において運転者の操舵に起因する目標舵角に対する車輪の実舵角のずれが大きくなると、上記PID制御の偏差が大きくなる。その結果、車線維持支援トルクの算出値が大きくなる。大きな車線維持支援トルクが与えられると、実舵角の変化速度(実舵角速度)が過大になってしまう可能性がある。その結果、運転者が唐突な自動操舵(およびこれに伴う車両の唐突な挙動)に違和感を覚える恐れがある。
以上のことから、自動操舵制御の実行中に運転者による操舵介入が行われた後に自動操舵制御に復帰した場合には、実舵角を目標舵角に近づける際の実舵角の変化速度に対して適切な配慮がなされることが望ましいといえる。
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、電動パワーステアリング装置を用いた自動操舵制御の実行中に運転者の介入による操舵が行われた後に当該自動操舵制御に復帰した場合に、電動パワーステアリング装置を用いて車輪の実舵角を目標舵角に近づける際の実舵角の変化速度を適切かつ穏やかに制御することのできる車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
本発明に係る車両の運転支援装置は、車輪の舵角を制御するために駆動される電動モータを有する電動パワーステアリング装置を備える車両の運転を支援する。前記運転支援装置によって前記電動パワーステアリング装置を用いて行われる前記車輪の操舵制御は、前記車輪の実舵角を目標舵角に近づけるための転舵トルクを生成するように前記電動モータを制御する自動操舵制御と、前記自動操舵制御の非実行中に運転者による転舵が終了したときに、前記車輪の実舵角を中立点に戻すための戻しトルクを生成するように前記電動モータを制御する舵角戻し制御と、を含む。前記運転支援装置は、前記自動操舵制御における前記車輪の実舵角と前記目標舵角との第1角度偏差と前記舵角戻し制御における前記車輪の実舵角と前記中立点との第2角度偏差とが等しい条件で比較した場合に、前記自動操舵制御の実行中に前記運転者による操舵介入が行われた後に前記自動操舵制御に復帰して前記車輪の実舵角を前記目標舵角に近づけるときには、前記舵角戻し制御の実行中に前記車輪の実舵角を前記中立点に戻すときと比べて低い変化速度で前記車輪の実舵角を変化させる。
前記運転支援装置は、前記自動操舵制御の実行中に、前記第1角度偏差をゼロに近づけるための基本転舵制御量と、前記第1角度偏差に基づく第1目標舵角速度と前記第1角度偏差の変化速度との偏差の絶対値を小さくする補正項とを算出し、算出した前記基本転舵制御量と前記補正項との和を最終的な転舵制御量として算出する自動操舵制御部と、前記舵角戻し制御の実行中に、前記第2角度偏差に基づく第2目標舵角速度と前記車輪の実舵角速度との偏差の絶対値を小さくする戻し制御量を算出する舵角戻し制御部と、を含んでいてもよい。前記第1角度偏差の絶対値が所定値よりも大きい第1角度偏差範囲では、前記第1目標舵角速度は、前記第1角度偏差が前記第2角度偏差と同じ条件で比較した場合に、前記第2目標舵角速度よりもくてもよい。前記第1角度偏差の絶対値が前記所定値以下の第2角度偏差範囲では、前記第1目標舵角速度は、前記第1角度偏差と前記第2角度偏差とが等しい条件で比較した場合に、前記第2目標舵角速度よりもくてもよい。前記第1角度偏差範囲は、前記自動操舵制御の実行中に前記運転者による操舵介入が行われたときに使用されてもよい。そして、前記第2角度偏差範囲は、前記自動操舵制御の実行中に前記運転者による操舵介入なしに前記車輪の実舵角を前記目標舵角に追従させているときに使用されてもよい。
前記補正項は、前記第1目標舵角速度と前記第1角度偏差の変化速度との前記偏差に第1ゲインを乗じて得られる値であってもよい。前記戻し制御量は、前記第2目標舵角速度と前記車輪の実舵角速度との前記偏差に第2ゲインを乗じて得られる値であってもよい。そして、前記第1ゲインは、前記第2ゲインよりも大きくてもよい。
本発明によれば、自動操舵制御の実行中に運転者による操舵介入が行われた後に自動操舵制御への復帰が行われて車輪の実舵角を目標舵角に近づけるときには、次のような態様で、車輪の実舵角の変化速度が制御される。すなわち、自動操舵制御への上記復帰時には、自動操舵制御における車輪の実舵角と目標舵角との第1角度偏差と舵角戻し制御における車輪の実舵角と中立点との第2角度偏差とが等しい条件で比較した場合に、舵角戻し制御の実行中に車輪の実舵角を中立点に戻すときと比べて低い変化速度で車輪の実舵角が変化させられる。
舵角戻し制御は、運転の主体である運転者が転舵の意思を有しないとき(換言すると、実舵角が中立点に戻ることを許容しているとき)に実行される。これに対し、自動操舵制御において運転者による操舵介入後に実舵角を目標舵角に戻す制御は、運転者の意思に基づくものではない(より詳細には、この制御によれば、運転者が必ずしも把握していない目標舵角に向けて転舵がなされることになる)。本発明によれば、このような自動操舵制御によって目標舵角に向けた転舵が行われる場合には、運転者が実舵角の変化をより想定できているといえる舵角戻し制御時と比べて、実舵角の変化を緩やかにすることが可能となる。したがって、本発明によれば、自動操舵に関する運転者の違和感を抑制しつつ、上記復帰時に実舵角の変化速度を適切かつ穏やかに制御できるようになる。
本発明の実施の形態1に係る運転支援装置が適用される車両の構成例を示す概略図である。 EPS装置を用いた操舵制御に関して、ECUの機能構成を示すブロック図である。 舵角戻し制御部によって実行される舵角戻し制御の概要を表したブロック図である。 自動操舵制御部によって実行される自動操舵制御の概要を表したブロック図である。 図4中に示す角度偏差範囲R2における舵角速度マップの設定例を拡大して示す図である。 本発明の実施の形態1に係る舵角戻し制御および自動操舵制御に関連する特徴的な処理のルーチンを示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
実施の形態1.
[運転支援装置を備える車両の構成例]
図1は、本発明の実施の形態1に係る運転支援装置が適用される車両10の構成例を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の車両10は、2つの前輪12と2つの後輪14とを備えている。
車両10は、ステアリング装置20を備えている。ステアリング装置20は、2つの前輪12を転舵する装置である。具体的には、ステアリング装置20は、ステアリングホイール22、操舵軸24、ピニオンギア26、ラックバー28、タイロッド30、および電動パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置40を備えている。なお、本実施形態の運転支援装置は、前輪12と後輪14の両方が操舵対象となる車両(いわゆる、4WS(4 Wheel Steering)車両)にも同様に適用することができる。
ステアリングホイール22は、運転者による操舵操作に用いられる。つまり、前輪12を転舵させたいとき、運転者はステアリングホイール22を回転させる。操舵軸24は、ステアリングホイール22に連結されている。操舵軸24の他端は、ピニオンギア26に連結されている。ピニオンギア26は、ラックバー28と噛み合っている。ラックバー28の両端は、タイロッド30を介して左右の前輪12に連結されている。ステアリングホイール22の回転は、操舵軸24を介して、ピニオンギア26に伝達される。ピニオンギア26の回転運動はラックバー28の直線運動に変換され、それにより、前輪12の舵角が変化する。
EPS装置40は、前輪12を転舵する力を生成する装置である。より詳細には、EPS装置40は、電動モータ42とEPSドライバ44とを備えている。一例として、電動モータ42は、変換機構46を介してラックバー28に連結されている。変換機構46は、例えばボールねじである。電動モータ42のロータが回転すると、変換機構46は、その回転運動をラックバー28の直線運動に変換する。これにより、前輪12の舵角が変化する。
EPSドライバ44は、電動モータ42を駆動するための装置であり、インバータを含んでいる。インバータは、図示しない直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を電動モータ42に供給し、電動モータ42を駆動する。EPSドライバ44が電動モータ42の回転を制御することによって、前輪12を転舵することができる。このEPSドライバ44の動作、すなわち、EPS装置40の動作は、後述のECU50によって制御される。ECU50によるEPS装置40の制御の詳細は、後述される。
車両10には、電子制御ユニット(ECU)50が搭載されている。ECU50には、車両10の様々な状態量を検出するための各種センサが電気的に接続されている。ここでいう各種センサは、一例として、操舵トルクセンサ60、舵角センサ62、および車速センサ64を含んでいる。
操舵トルクセンサ60は、操舵軸24に印加される操舵トルクTaを検出する。操舵トルクセンサ60は、操舵トルクTaに応じた操舵トルク信号をECU50に出力する。
舵角センサ62は、操舵軸24の回転角φaを検出する。この回転角φaは、ステアリングホイール22の操舵角と同じである。舵角センサ62は、回転角φaに応じた操舵角信号をECU50に出力する。ステアリングホイール22の操舵角と前輪12の舵角との間には相関がある。このため、両者の関係を定めておくことで、舵角センサ62により検出される回転角φaに応じた値として前輪12の実舵角θaを算出することができる。
車速センサ64は、車両10の速度である車速Vを検出し、車速Vに応じた車速信号をECU50に出力する。
また、車両10には、運転環境検出装置70が搭載されている。運転環境検出装置70は、後述する車両10の自動運転制御において、車両10が走行する走行車線の検出に用いられる「運転環境情報」を取得する。運転環境情報としては、まず、車両10の周辺の物標に関する周辺物標情報が挙げられる。周辺物標は、移動物標と静止物標とを含む。移動物標としては、周辺車両や歩行者が例示される。移動物標に関する情報は、移動物標の位置および速度を含む。静止物標としては、路側物や白線が例示される。静止物標に関する情報は、静止物標の位置を含む。
運転環境検出装置70は、周辺物標情報を検出するために、一例として、車両10の周辺の状況を撮像するステレオカメラを備えている。ステレオカメラによって撮像された画像は、随時ECU50に画像データとして送信される。送信された画像データは、ECU50によって画像処理される。その結果として、ECU50は、画像データに含まれる白線を基に車両10の走行車線を検出することができる。なお、周辺物標情報の検出のために、ステレオカメラに代え、あるいはそれとともに、例えば、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)およびミリ波レーダーの少なくとも一方が用いられてもよい。ライダーは、光を利用して車両10の周辺の物標を検出する。ミリ波レーダーは、電波を利用して車両10の周辺の物標を検出する。
また、車両10の走行車線の検出のために、運転環境情報として、周辺物標情報に代え、あるいはそれとともに、車両10の位置姿勢情報が用いられてもよい。位置姿勢情報は、例えば、GPS(Global Positioning System)装置を用いて取得することができる。GPS装置は、複数のGPS衛星から送信される信号を受信し、受信信号に基づいて車両10の位置および姿勢(方位)を算出する。GPS装置は、算出した位置姿勢情報をECU50に送る。
自動運転制御のための運転環境情報としては、さらに、レーン情報およびインフラ提供情報などが挙げられる。運転環境検出装置70は、車線変更を自動的に行うために、レーン情報の取得のために地図データベースを含んでもよく、また、インフラ提供情報の取得のために通信装置を含んでもよい。地図データベースには、地図上の各レーンの配置を示すレーン情報が記録されている。地図データベースと車両10の位置とに基づいて、車両10の周辺のレーン情報を取得することができる。通信装置は、情報提供システムからインフラ提供情報を取得する。インフラ提供情報としては、渋滞情報、工事区間情報などが挙げられる。通信装置を備えている場合には、このようなインフラ提供情報がECU50に送られる。後述の目標舵角θ1tは、このようなレーン情報およびインフラ提供情報の少なくとも1つを考慮して算出されてもよい。
さらに、車両10には、運転者が自動運転制御のオン/オフを選択するための選択スイッチ72が設置されている。
ECU50は、プロセッサ、メモリ、および入出力インターフェースを備えている。入出力インターフェースは、上述の各種センサからセンサ信号を受け取るとともに、運転環境検出装置70から運転環境情報を受け取る。また、入出力インターフェースは、選択スイッチ72から自動運転制御の実施に関する運転者の要求を受け取る。
ECU50は、車両10の運転に関する各種の運転制御を実行する。ECU50の運転制御の1つとして、EPS装置40を用いて行われる前輪12の操舵制御がある。また、ECU50の運転制御には、車両10の自動運転を制御する自動運転制御が含まれる。
図2は、EPS装置40を用いた操舵制御に関して、ECU50の機能構成を示すブロック図である。ECU50は、EPS装置40を用いた操舵制御に関連する機能ブロックとして、操舵トルクアシスト制御を行うトルクアシスト制御部52と、舵角戻し制御を行う舵角戻し制御部54と、自動操舵制御を行う自動操舵制御部56とを備えている。自動運転制御には、自動操舵制御だけでなく、車両10の加減速に関する自動加減速制御も含まれる。ECU50は、自動操舵制御だけでなく自動加減速制御を含めて自動運転制御を全体的に管理している。自動操舵制御部56は、ECU50による自動運転制御の中で自動操舵制御に着目した機能ブロックに相当する。
操舵トルクアシスト制御は、自動操舵制御の非実行中に運転者による操舵をアシストするために行われる。トルクアシスト制御部52は、操舵トルクアシスト制御を行うために、EPS装置40のEPSドライバ44の動作を制御して電動モータ42を制御する。
舵角戻し制御は、自動操舵制御の非実行中に運転者による転舵が終了したときに、前輪12の舵角を中立点(すなわち、車両10の直進状態が得られる舵角)に戻すための戻しトルクを生成するために実行される。舵角戻し制御部54は、舵角戻し制御を行うために、EPSドライバ44の動作を制御して電動モータ42を制御する。
自動操舵制御部56は、前輪12の舵角(実舵角θa)を目標舵角θ1tに近づけるための転舵トルクを生成するように、EPS装置40のEPSドライバ44の動作を制御することで電動モータ42を制御する。これにより、自動操舵機能が実現される。なお、本実施形態では、自動加減速制御は、公知の手法に従い、任意の要領にて実行されればよい。
図2に示す機能ブロックは、上述の各種センサの検出情報と運転環境検出装置70の運転環境情報と選択スイッチ72の操作情報とに基づいて、ECU50のプロセッサがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより実現される。なお、トルクアシスト制御部52、舵角戻し制御部54および自動操舵制御部56などの各種の機能ブロックを備えるECUは、必ずしもECU50のように単一のECUによって構成されていなくてもよい。例えば、ECUは、機能毎に別個に備えられていてもよい。なお、操舵トルクセンサ60および舵角センサ62等の各種センサ、ならびに運転環境検出装置70および選択スイッチ72から入力される情報に基づいてEPS装置40を制御する舵角戻し制御部54および自動操舵制御部56が、本実施形態の運転支援装置に相当する。
[実施の形態1の操舵制御]
本実施形態においてEPS装置40を用いて行われる操舵制御は、操舵トルクアシスト制御、舵角戻し制御、および自動操舵制御である。これらの制御のうち、操舵トルクアシスト制御と舵角戻し制御とは、非自動運転時に実行される。
1.非自動運転時の操舵制御
1−1.操舵トルクアシスト制御
選択スイッチ72がオフされた時(すなわち、非自動運転時)には、運転者が車両10の運転の主体となり、運転者がステアリングホイール22を操作する。このため、前輪12の舵角は、運転者の操作によって決まる。
1−1−1.操舵トルクアシスト制御の基本的な処理
トルクアシスト制御部52は、EPS装置40を用いて「操舵トルクアシスト制御」を行う。具体的には、トルクアシスト制御部52は、操舵トルクセンサ60から、操舵トルク信号を受け取る。トルクアシスト制御部52は、操舵トルクTaに基づいてアシストトルクを算出し、アシストトルクが得られるようにEPSドライバ44を制御する。
例えば、トルクアシスト制御部52は、入力パラメータとアシストトルクとの関係を示すトルクマップを保持している。入力パラメータは、操舵トルクセンサ60によって検出される操舵トルクTaを含む。入力パラメータは、さらに、車速センサ64により検出される車速Vを含んでいてもよい。トルクマップは、所望のアシスト特性を考慮して予め決定されている。運転者によるステアリングホイール22の操作に応答して、トルクアシスト制御部52は、トルクマップを参照し、入力パラメータに応じたアシストトルクを算出する。
そして、トルクアシスト制御部52は、アシストトルクに応じた目標電流指令値を算出し、目標電流指令値をEPSドライバ44に出力する。EPSドライバ44は、目標電流指令値に従って電動モータ42を駆動する。電動モータ42の回転トルク(アシストトルク)は、変換機構46を介してラックバー28に伝達される。その結果、前輪12の転舵がアシストされ、運転者の操舵負担が軽減される。
1−2.舵角戻し制御
図3は、舵角戻し制御部54によって実行される舵角戻し制御の概要を表したブロック図である。
1−2−1.舵角戻し制御に用いられる舵角速度マップ
舵角戻し制御部54は、目標舵角速度[deg/s]と角度偏差Δθ2[deg]との関係を定めた舵角速度マップ80を記憶している。図3には、舵角速度マップ80の設定例が表されている。なお、角度偏差Δθ2は、本発明における「第2角度偏差」に相当し、舵角戻し制御に用いられる目標舵角速度は、本発明における「第2目標舵角速度」に相当する。
図3に示す角度偏差Δθ2は、前輪12の実舵角θaと目標舵角θ2tとの差である。より詳細には、図3に示す例では、角度偏差Δθ2は、実舵角θaから目標舵角θ2tを引いて得られる差である。舵角戻し制御は、上述のように前輪12の実舵角θaを中立点に戻すために行われる。このため、舵角戻し制御における目標舵角θ2tは、中立点である。したがって、図3に示される舵角速度マップ80の横軸の原点は、中立点(すなわち、角度偏差ゼロ)である。また、ここでは、中立点に対してステアリングホイール22が右方向に回されたときに得られる前輪12の舵角(ステアリングホイール22の操舵角)が正の値であるとする。したがって、舵角戻し制御では、角度偏差Δθ2は、ステアリングホイール22が右方向に回されたときに正となる。
舵角速度[deg/s]は前輪12の舵角の変化速度のことであり、目標舵角速度はその目標値である。図3に示される舵角速度マップ80の縦軸に関して、目標舵角速度は、原点においてゼロとなり、ステアリングホイール22が右方向に回されている時に正の値をとるものとする。
ここで、中立点に対してステアリングホイール22が右方向に回されている時を、単に「右舵角時」と称し、逆に、中立点に対してステアリングホイール22が左方向に回されている時を、同様に「左舵角時」と称する。以下、右舵角時を例に挙げて、舵角速度マップ80の関係について説明する。右舵角時には、上述の角度偏差Δθ2は正の値を示す。正の角度偏差Δθ2に対応する目標舵角速度は、図3に示すように、負の値となる。右舵角時に舵角戻し制御によって戻されるときのステアリングホイール22の回転方向は、左方向である。また、上述の正負の定義によれば、目標舵角速度が負の値を示す時には、ステアリングホイール22は左方向に回転していることになる。したがって、舵角速度マップ80によれば、中立点に向けて舵角を戻すための目標舵角速度を、角度偏差Δθ2に基づいて決定することができる。
そして、舵角速度マップ80によれば、右舵角時の角度偏差Δθ2が大きいほど、目標舵角速度が負側で大きな値とされる。このような設定によれば、中立点に向けて舵角を戻すときに、角度偏差Δθ2が大きいほど高い変化速度で舵角を戻すことができる。また、舵角速度マップ80によれば、このような角度偏差Δθ2に応じた目標舵角速度の設定は、左舵角時にも同様に得られる。
1−2−2.戻し制御量M2の算出
舵角戻し制御部54は、舵角センサ62の出力に基づいて算出される前輪12の実舵角θaと目標舵角(中立点)θ2tとの差である角度偏差Δθ2を算出する。また、舵角戻し制御部54は、角度偏差Δθ2を入力パラメータとして舵角速度マップ80を参照することで、角度偏差Δθ2に応じた目標舵角速度を算出する。
舵角戻し制御部54は、微分器82において、実舵角θaを時間で微分することによって実舵角速度を算出する。そして、舵角戻し制御部54は、目標舵角速度と実舵角速度との差(より詳細には、目標舵角速度から実舵角速度を引いて得られる差)である舵角速度偏差を算出する。
舵角戻し制御部54は、上記の舵角速度偏差に所定の比例ゲインK2を乗じることによって、戻し制御量M2を算出する。より詳細には、戻し制御量M2は、上述の戻しトルクと相関を有している。舵角戻し制御部54は、戻し制御量M2に応じた目標電流指令値を算出し、目標電流指令値をEPSドライバ44に出力して電動モータ42を駆動する。その結果、電動モータ42は戻しトルクを生成する。なお、比例ゲインK2は、本発明における「第2ゲイン」に相当する。
走行中の車両10には、操舵輪である前輪12が路面から受けるセルフアライニングトルクにより、前輪12の実舵角θaを中立点に近づけようとする復元力が作用している。しかしながら、このようなセルフアライニングトルクだけでは、運転者が転舵を終了したときに実舵角θaを確実に中立点に戻すことが難しい場合がある。実舵角θaが中立点にスムーズに戻らずに運転者によるステアリングホイール22の大きな修正操作が必要になると、快適な操舵性が得られない。これに対し、舵角戻し制御によれば、EPS装置40を利用して前輪12の実舵角θaをより確実かつスムーズに中立点に戻せるようになる。このため、運転者の操舵負担を軽減しつつ、操舵性を向上させることができる。
2.自動操舵制御(自動運転時の操舵制御)
選択スイッチ72がオンされた時(すなわち、自動運転時)には、操舵を含む運転の主体は、運転者から自動運転システムに移る。付け加えると、自動操舵制御は、運転者による操舵への介入を許容しているが、基本的には運転者による操舵を必要とせずに行われる。
自動操舵制御部56は、EPS装置40を用いて前輪12の舵角を自動的に制御する。すなわち、非自動運転時には「操舵トルクアシスト制御」または「舵角戻し制御」に用いられていたEPS装置40が、自動運転時には「自動操舵制御」に用いられる。
図4は、自動操舵制御部56によって実行される自動操舵制御の概要を表したブロック図である。
2−1.目標舵角θ1tの算出
自動操舵制御では、目標ラインに沿って車両10が走行するように車両10の実舵角θaが制御される。目標ラインは、運転環境検出装置70のステレオカメラからの画像データを基に検出した走行車線の中央付近に位置する走行ラインとして特定することができる。自動操舵制御部56は、自動操舵制御に要求される前輪12の目標舵角θ1tを算出する。目標舵角θ1tは、一例として次のように算出することができる。すなわち、自動操舵制御部56は、検出した走行車線に基づいて、走行車線の曲率半径、走行車線に対する車両10のオフセット量(より詳細には、走行車線の中心線に対する車両10の前後方向の中心線のずれ量)、およびヨー角を算出する。
自動操舵制御部56は、算出した曲率半径、オフセット量およびヨー角に基づいて、目標舵角θ1tを算出する。より具体的には、目標舵角θ1tの算出は、例えば以下のように行われる。自動操舵制御部56は、検出した走行車線の曲率半径に基づいて、車両10を目標ラインに沿って走行させるために必要な横加速度を算出する。また、自動操舵制御部56は、算出したオフセット量と事前に設定された目標オフセット量との偏差に基づいて、オフセット量を目標オフセット量に収束させるために必要な横加速度をフィードバック制御により算出する。さらに、自動操舵制御部56は、算出したヨー角と事前に設定された目標ヨー角との偏差に基づいて、ヨー角を目標ヨー角に収束させるために必要な横加速度をフィードバック制御により算出する。そのうえで、自動操舵制御部56は、これらの3つの横加速度を加算して目標横加速度を算出する。自動操舵制御部56は、目標横加速度および車速Vなどの入力パラメータと目標舵角θ1tとの関係を定めたマップ(図示省略)を記憶している。目標舵角θ1tは、そのようなマップを参照して、目標横加速度を車両10に発生させるために必要な値として算出される。
2−2.自動操舵制御の基本的な処理(PI制御量算出部90)
自動操舵制御部56は、車両10の実際の走行ラインを目標ラインに追従させるための基本的な転舵制御の一例として、PI制御を実行する。より詳細には、自動操舵制御部56は、図4に示すように、このPI制御による転舵制御量を算出するPI制御量算出部90を含んでいる。なお、PI制御量算出部90により算出されるこの転舵制御量(より具体的には、後述の比例項および積分項)は、本発明における「基本転舵制御量」に相当する。
自動操舵制御部56は、実舵角θaと目標舵角θ1tとの差(より詳細には、一例として、実舵角θaから目標舵角θ1tを引いて得られる差)である角度偏差Δθ1を算出する。PI制御量算出部90は、角度偏差Δθ1に所定の比例ゲインKpを乗じることによって、転舵制御量の比例項を算出する。算出された比例項は、上下限ガード部90aに出力される。上下限ガード部90aは、算出された比例項が所定範囲内から外れる場合には、当該所定範囲内に収まるように比例項の算出値を制限する。なお、角度偏差Δθ1は、本発明における「第1角度偏差」に相当する。
また、PI制御量算出部90は、積分器90bにおいて、角度偏差Δθ1を時間で積分することによってその積算値を算出する。そして、PI制御量算出部90は、角度偏差Δθ1の積算値に所定の積分ゲインKiを乗じることによって、転舵制御量の積分項を算出する。積分項の算出値も、比例項の算出値と同様に、上下限ガード部90cにおいて、値の大きさによっては所定範囲内に収まるように制限される。
2−3.舵角速度に応じた補正項M1を算出する補正項算出部92
上述のPI制御量算出部90により算出される転舵制御量の比例項および積分項(基本転舵制御量)が用いられることで、車両10の実際の走行ラインの目標ラインへの基本的な追従性を確保することができる。そのうえで、自動操舵制御部56は、実際の走行ラインの目標ラインへのより速やかな追従の実現のために、図4に示すように、転舵制御量に関して舵角速度に応じた補正項M1を算出する補正項算出部92を含んでいる。なお、補正項M1は、本発明における「補正項」に相当する。
2−3−1.自動操舵制御に用いられる舵角速度マップの設定
補正項算出部92は、目標舵角速度と角度偏差Δθ1との関係を定めた舵角速度マップ92aを記憶している。図4には、舵角速度マップ92aの設定例が表されている。より詳細には、図4では、舵角速度マップ92aにおける目標舵角速度と角度偏差Δθ1との関係は実線によって表されている。図4中に破線で表されている関係は、舵角速度マップ92aの設定との比較のために参照されるものであり、上述の舵角戻し制御に用いられる舵角速度マップ80における目標舵角速度と角度偏差Δθ2との関係(図3参照)である。なお、自動操舵制御に用いられる目標舵角速度は、本発明における「第1目標舵角速度」に相当する。
図4に示す舵角速度マップ92aに入力される角度偏差Δθ1の算出のために実舵角θaとともに用いられる目標舵角θ1tは、舵角戻し制御における目標舵角θ2tである中立点とは異なり、自動操舵制御に要求される目標舵角である。したがって、角度偏差Δθ1の原点は、中立点ではなく、自動操舵制御に要求される目標舵角θ1tと実舵角θaとが一致した時に得られる。
図5は、図4中に示す角度偏差範囲R2における舵角速度マップ92aの設定例を拡大して示す図である。ここでは、角度偏差Δθ1、Δθ2の正負の両側において角度偏差範囲R2の外側に位置する角度偏差範囲をR1と称する。なお、角度偏差範囲R1は、本発明における「第1角度偏差範囲」に相当し、角度偏差範囲R2は、本発明における「第2角度偏差範囲」に相当する。
角度偏差範囲R2は、自動操舵制御の実行中に実舵角θaを目標舵角θ1tに追従させているとき(すなわち、実際の走行ラインを目標ラインに追従させているとき)に使用される範囲(換言すると、このときに角度偏差が収まる範囲)である。このため、角度偏差範囲R2と角度偏差範囲R1との境界での角度偏差の値(すなわち、角度偏差範囲R2内の角度偏差の絶対値の最大値)は、目標舵角θ1tへの実舵角θaの追従性を確保可能な上限値としての意義を有するといえる。また、角度偏差範囲R2は、運転者が自己の意思に基づいて車両10の方向転換のために操舵を行う場合には使用されないような小角度偏差範囲といえる。なお、角度偏差範囲R2内の角度偏差の絶対値の最大値は、本発明における「所定値」に相当する。
一方、角度偏差範囲R1は、運転者による操舵中に使用される。付け加えると、上述の追従性の確保の観点から、角度偏差範囲R1は、自動操舵制御において実舵角θaを目標舵角θ1tに追従させているときには使用が予定されていない範囲である。ただし、自動操舵制御の実行中であっても、角度偏差範囲R1が使用されることがある。その例は、運転者による操舵介入が行われた場合である。
図4、5に示すように、自動操舵制御に用いられる目標舵角速度の絶対値は、角度偏差Δθ1の絶対値が大きいほど大きくなるように設定されている。また、図4、5において角度偏差Δθ1、Δθ2に対する目標舵角速度特性を実線と破線とで比較すると分かるように、自動操舵制御における目標舵角速度特性と舵角戻し制御における目標舵角速度特性とは、角度偏差範囲R2とR1とで目標操舵速度(の絶対値)の大小関係が逆転している。より詳細には、相対的に大きな角度偏差範囲R1では、図4に示すように、自動操舵制御における目標舵角速度(の絶対値)は、同一角度偏差の下で、舵角戻し制御におけるそれよりも低くなっている。一方、相対的に小さな角度偏差範囲R2では、図5に示すように、自動操舵制御における目標舵角速度(の絶対値)は、同一角度偏差の下で、舵角戻し制御におけるそれよりも高くなっている。
2−3−2.補正項M1の算出
補正項算出部92は、角度偏差Δθ1を入力パラメータとして舵角速度マップ92aを参照することで、角度偏差Δθ1に応じた目標舵角速度を算出する。また、補正項算出部92は、微分器92bにおいて角度偏差Δθ1を時間で微分することによって角度偏差Δθ1の変化速度[deg/s]を算出する。そして、補正項算出部92は、目標舵角速度と角度偏差Δθ1の変化速度との差(より詳細には、目標舵角速度から角度偏差Δθ1の変化速度を引いて得られる差)である速度偏差を算出する。
補正項算出部92は、上記の速度偏差に所定の比例ゲインK1を乗じることによって、転舵制御量に関する舵角速度に応じた補正項M1を算出する。なお、比例ゲインK1は、本発明における「第1ゲイン」に相当する。
2−3−3.比例ゲインK1の設定
本実施形態では、補正項M1の算出に用いられる比例ゲインK1は、舵角戻し制御において戻しアシスト制御量の算出に用いられる比例ゲインK2よりも大きな値となるように事前に決定されている。
2−4.最終的な転舵制御量の算出
自動操舵制御部56は、PI制御量算出部90によって算出された転舵制御量の比例項および積分項(基本転舵制御量)と、補正項算出部92によって算出された補正項M1とを足し合わせることにより、最終的な転舵制御量を算出する。そのうえで、自動操舵制御部56は、最終的な転舵制御量に応じた目標電流指令値を算出し、目標電流指令値をEPSドライバ44に出力してEPS装置40の電動モータ42を駆動する。その結果、EPS装置40による自動操舵機能によって、前輪12の実舵角θaが目標舵角θ1tとなるように制御される。より詳細には、前輪12の実舵角θaを目標舵角θ1tに収束させるフィードバック制御が行われる。
3.舵角戻し制御および自動操舵制御に関連する処理
図6は、本発明の実施の形態1に係る舵角戻し制御および自動操舵制御に関連する特徴的な処理のルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、車両10の運転中に実行され得る舵角戻し制御と自動操舵制御とに関する処理に着目したものである。本ルーチンの処理は、車両10の運転中に所定の制御周期で繰り返し実行される。
ECU50は、まず、入力信号処理を実行する(ステップS100)。具体的には、ECU50は、各種センサ信号、運転環境検出装置70からの運転環境情報、および、選択スイッチ72からの信号を取得する。各種センサ信号には、ECU50に接続された操舵トルクセンサ60等の各種センサから入力された操舵トルク信号、操舵角信号および車速信号等が該当する。
次に、ECU50は、自動運転制御の実行中であるか否かを判定する(ステップS102)。ECU50は、運転者によって選択スイッチ72がオンとされた場合には、所定の実行条件の成立を条件として、自動操舵制御を含む自動運転制御を実行する。ECU50は、自動運転制御の実行中には、自動運転制御の実行中であることを示すフラグをオンとし、自動運転制御の非実行中には、当該フラグをオフとしている。本ステップS102では、そのようなフラグの状態に基づいて自動運転制御の実行中であるか否かが判定される。
ステップS102において自動運転制御の実行中ではないと判定した場合には、ECU50は、舵角戻し制御に関する所定の実行条件が成立するか否かを判定する(ステップS104)。舵角戻し制御の実行条件は、運転者による転舵が終了したときに成立する。運転者による転舵が終了すると、運転者による操舵トルクTaが急激に減衰する。このため、運転者による操舵が終了したか否か(すなわち、舵角戻し制御の実行条件が成立したか否か)は、例えば、操舵トルクTaが所定の閾値を下回るか否かを判断することによって判定することができる。
ステップS104において舵角戻し制御の実行条件が不成立となる場合には、ECU50は、今回のルーチン起動時の処理を速やかに終了する。なお、この場合には、操舵トルクアシスト制御が実行されることになる。
一方、ステップS104において舵角戻し制御の実行条件が成立した場合には、ECU50は、舵角戻し制御用の目標舵角速度特性を選択する(ステップS106)。具体的には、ECU50(舵角戻し制御部54)は、図3に示す舵角速度マップ80を参照して、現在の角度偏差Δθ2に応じた目標舵角速度を算出する。また、本ステップS106では、ECU50は、比例ゲインK2(図3参照)を選択する。
次に、ECU50は、中立点(すなわち、目標舵角θ2t)を基準として、戻し制御量M2を算出する(S108)。具体的には、舵角戻し制御時の目標舵角速度は、S106の処理によって、中立点である目標舵角θ2tを基準として算出されている。本ステップS108では、図3を参照して既述したように、当該目標舵角速度と比例ゲインK2(図3参照)とに基づいて、戻し制御量M2を算出する。処理がステップS108に進んだ場合には、ECU50(舵角戻し制御部54)は、戻し制御量M2に応じた戻しトルクが電動モータ42によって生成されるようにEPS装置40を作動させる。
一方、ステップS102において自動運転制御の実行中であると判定した場合には、ECU50は、自動操舵制御用の目標舵角速度特性を選択する(ステップS110)。具体的には、ECU50(補正項算出部92)は、図4に示す舵角速度マップ92aを参照して、現在の角度偏差Δθ1に応じた目標舵角速度を算出する。また、本ステップS110では、ECU50は、比例ゲインK1(図4参照)を選択する。
次に、ECU50(PI制御量算出部90)は、転舵制御量の比例項および積分項(基本転舵制御量)を算出する(ステップS112)。
次に、ECU50(補正項算出部92)は、自動操舵制御の目標舵角θ1tを基準として、舵角速度に応じた補正項M1を算出する(ステップS114)。具体的には、自動操舵制御時の目標舵角速度は、S110の処理によって、自動操舵制御に要求される目標舵角θ1tを基準として算出されている。本ステップS114では、図4、5を参照して既述したように、当該目標舵角速度と比例ゲインK1(図4参照)とに基づいて、補正項M1を算出する。
次に、ECU50(自動操舵制御部56)は、最終的な転舵制御量を算出する(ステップS116)。具体的には、ECU50は、ステップS112において算出された転舵制御量の比例項および積分項と、ステップS114において算出された補正項M1とを足し合わせることによって最終的な転舵制御量を算出する。処理がステップS114に進んだ場合には、ECU50(自動操舵制御部56)は、最終的な転舵制御量に応じた戻しトルクが電動モータ42によって生成されるようにEPS装置40を作動させる。
[実施の形態1の効果]
以上説明した本実施形態によれば、自動操舵制御の実行中に運転者による操舵介入が行われた後に当該自動操舵制御に復帰して前輪12の実舵角θaを目標舵角θ1tに近づけるときには、前輪12の舵角速度が図4、5に示す舵角速度マップ92a(実線)の関係に従って制御される。
具体的には、自動操舵制御の実行中に運転者による操舵介入なしに前輪12の実舵角θaを目標舵角θ1tに追従させているときには、角度偏差範囲R2(図4参照)が使用されている。このようなときに運転者による操舵介入がなされると、ECU50はその操舵をトリガ操作と認識し、操舵制御の主体が運転者に戻される。その結果、角度偏差範囲がR2からR1に移行する。なお、当該操舵介入の後に自動操舵制御に復帰した場合には、実舵角θaが目標舵角θ1tに近づく過程で角度偏差範囲がR1から再びR2に移行する。
図4に示す目標舵角速度特性によれば、自動操舵制御の実行中に角度偏差範囲R1が使用されたときには、角度偏差Δθ1、Δθ2が等しい条件で比較した場合に、舵角戻し制御の実行中の目標舵角速度(破線)と比べて(絶対値として)低い目標舵角速度(実線)が選択される。このため、運転者による操舵介入後の自動操舵制御への復帰後に実舵角θaが目標舵角θ1tに収束する過程(以下の説明では、単に「収束過程」と略する)では、そのような低い目標舵角速度が選択されることになる。図4に示す自動操舵制御部56の制御構成によれば、運転者による操舵介入によって生じた角度偏差Δθ1(すなわち、自動操舵制御によって実舵角θaの追従性が確保されているときよりも大きな角度偏差)を速やかに収束させるために、補正項M1が他の転舵制御量(比例項および積分項)と比べて大きな役割を果たす。つまり、補正項M1は、上記収束過程における実舵角θaの変化速度(実舵角速度)に他の転舵制御量と比べて大きく影響する。
以上のように、上記収束過程における舵角速度に着目しつつ行われる本実施形態の操舵制御によれば、当該収束過程における実舵角速度が補正項M1を用いて制御される。その結果、角度偏差Δθ1、Δθ2が等しい条件で比較した場合に、上記収束過程では、舵角戻し制御の実行中に前輪12の実舵角θaを中立点(目標舵角θ2t)に戻すときと比べて低い変化速度で実舵角θaを変化させることができる。
舵角戻し制御(すなわち、運転者による転舵が終了して実舵角θaを中立点に戻す制御)は、運転の主体である運転者が転舵の意思を有しないとき(換言すると、実舵角θaが中立点に戻ることを許容しているとき)に実行される。これに対し、自動操舵制御において運転者による操舵介入後に実舵角θaを目標舵角θ1tに戻す制御は、運転者の意思に基づくものではない(より詳細には、この制御によれば、運転者が必ずしも把握していない目標舵角θ1tに向けて転舵がなされることになる)。上述した本実施形態の制御によれば、このような自動操舵制御によって目標舵角θ1tに向けた転舵が行われる場合には、運転者が実舵角θaの変化をより想定できているといえる舵角戻し制御時と比べて、実舵角θaの変化を緩やかにすることが可能となる。したがって、本実施形態の制御によれば、自動操舵に関する運転者の違和感を抑制しつつ、上記収束過程における実舵角速度を適切かつ穏やかに制御できるようになる。
また、本実施形態によれば、図5に示すように、自動操舵制御の実行中に運転者による操舵介入なしに前輪12の実舵角θaを目標舵角θ1tに追従させているときに使用される角度偏差範囲R2では、角度偏差Δθ1、Δθ2が等しい条件で比較した場合に、舵角戻し制御の実行中の目標舵角速度(破線)と比べて(絶対値として)高い目標舵角速度(実線)が選択される。このように選択される目標舵角速度によれば、自動操舵制御における目標舵角θ1tへの実舵角θaの追従性を高く確保できるようになる。
また、本実施形態によれば、上述の補正項M1は、「角度偏差Δθ1の変化速度」を当該角度偏差Δθ1に応じた目標舵角速度に近づけられるように算出される。このように、実舵角速度そのものではなく角度偏差Δθ1の変化速度を、目標舵角速度に追従させる構成としたことで、角度偏差Δθ1(すなわち、目標舵角θ1tを基準とした相対的な実舵角θaの偏差)の変化速度を目標舵角速度に追従させられるようになる。これにより、実舵角速度そのものを目標舵角速度に追従させる場合と比べて、目標舵角θ1tへの実舵角θaの追従性を高く確保しつつ、実舵角速度を目標舵角速度に近づけられるようになる。
また、本実施形態によれば、自動操舵制御において補正項M1の算出に用いられる比例ゲインK1は、舵角戻し制御において戻し制御量M2の算出に用いられる比例ゲインK2よりも大きい。このような比例ゲインK1、K2の設定は、上述の目標舵角速度の設定に対して必ずしも組み合わされていなくてもよく、したがって、例えば、比例ゲインK1とK2は、同じ値であってもよい。そのうえで、上述のように比例ゲインK1が比例ゲインK2よりも大きい設定を上述の目標舵角速度の設定に伴わせることで、次のような効果が得られる。すなわち、上記収束過程に関しては、比例ゲインK1を比例ゲインK2と同じ値とした場合と比べて、角度偏差Δθ1の変化速度の目標舵角速度への追従性をより高めることができる。これにより、上記収束過程における実舵角速度をより適切かつより穏やかに制御できるようになる。また、角度偏差範囲R2が使用されて運転者による操舵介入なしに前輪12の実舵角θaを目標舵角θ1tに追従させている場合に関しては、上記比例ゲインK1、K2の設定によれば、比例ゲインK1を比例ゲインK2と同じ値とした場合と比べて、目標舵角θ1tへの実舵角θaのより高い追従性を確保できるようになる。
10 車両
12 前輪
14 後輪
20 ステアリング装置
22 ステアリングホイール
24 操舵軸
40 電動パワーステアリング(EPS)装置
42 電動モータ
44 EPSドライバ
50 電子制御ユニット(ECU)
52 トルクアシスト制御部
54 舵角戻し制御部
56 自動操舵制御部
60 操舵トルクセンサ
62 舵角センサ
64 車速センサ
70 運転環境検出装置
72 選択スイッチ
80、92a 舵角速度マップ
90 PI制御量算出部
92 補正項算出部

Claims (3)

  1. 車輪の舵角を制御するために駆動される電動モータを有する電動パワーステアリング装置を備える車両の運転支援装置であって、
    前記運転支援装置によって前記電動パワーステアリング装置を用いて行われる前記車輪の操舵制御は、
    前記車輪の実舵角を目標舵角に近づけるための転舵トルクを生成するように前記電動モータを制御する自動操舵制御と、
    前記自動操舵制御の非実行中に運転者による転舵が終了したときに、前記車輪の実舵角を中立点に戻すための戻しトルクを生成するように前記電動モータを制御する舵角戻し制御と、
    を含み、
    前記運転支援装置は、前記自動操舵制御における前記車輪の実舵角と前記目標舵角との第1角度偏差と前記舵角戻し制御における前記車輪の実舵角と前記中立点との第2角度偏差とが等しい条件で比較した場合に、前記自動操舵制御の実行中に前記運転者による操舵介入が行われた後に前記自動操舵制御に復帰して前記車輪の実舵角を前記目標舵角に近づけるときには、前記舵角戻し制御の実行中に前記車輪の実舵角を前記中立点に戻すときと比べて低い変化速度で前記車輪の実舵角を変化させる
    ことを特徴とする車両の運転支援装置。
  2. 前記運転支援装置は、
    前記自動操舵制御の実行中に、前記第1角度偏差をゼロに近づけるための基本転舵制御量と、前記第1角度偏差に基づく第1目標舵角速度と前記第1角度偏差の変化速度との偏差の絶対値を小さくする補正項とを算出し、算出した前記基本転舵制御量と前記補正項との和を最終的な転舵制御量として算出する自動操舵制御部と、
    前記舵角戻し制御の実行中に、前記第2角度偏差に基づく第2目標舵角速度と前記車輪の実舵角速度との偏差の絶対値を小さくする戻し制御量を算出する舵角戻し制御部と、
    を含み、
    前記第1角度偏差の絶対値が所定値よりも大きい第1角度偏差範囲では、前記第1目標舵角速度は、前記第1角度偏差が前記第2角度偏差と同じ条件で比較した場合に、前記第2目標舵角速度よりもく、
    前記第1角度偏差の絶対値が前記所定値以下の第2角度偏差範囲では、前記第1目標舵角速度は、前記第1角度偏差と前記第2角度偏差とが等しい条件で比較した場合に、前記第2目標舵角速度よりもく、
    前記第1角度偏差範囲は、前記自動操舵制御の実行中に前記運転者による操舵介入が行われたときに使用され、
    前記第2角度偏差範囲は、前記自動操舵制御の実行中に前記運転者による操舵介入なしに前記車輪の実舵角を前記目標舵角に追従させているときに使用される
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の運転支援装置。
  3. 前記補正項は、前記第1目標舵角速度と前記第1角度偏差の変化速度との前記偏差に第1ゲインを乗じて得られる値であって、
    前記戻し制御量は、前記第2目標舵角速度と前記車輪の実舵角速度との前記偏差に第2ゲインを乗じて得られる値であって、
    前記第1ゲインは、前記第2ゲインよりも大きい
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両の運転支援装置。
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