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JP6480132B2 - 溶融Al系めっき鋼板 - Google Patents

溶融Al系めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、塗装後耐食性に優れた溶融Al系めっき鋼板に関するものである。
溶融Al系めっき鋼板は、通常の溶融Znめっき鋼板と比較して、耐食性及び耐熱性に優れる。
一般的に、溶融Al系めっき鋼板は、鋼スラブを熱間圧延若しくは冷間圧延した薄鋼板を下地鋼板として用い、該下地鋼板を連続式溶融めっきラインの焼鈍炉にて再結晶焼鈍及び溶融めっき処理を行うことによって製造される。この形成されたAl系めっき層は、下地鋼板との界面に存在する合金層と、その上に存在する上層とを備えている。さらに、上層は、主としてAlがめっき皮膜の膜厚方向に積層するようにデンドライト凝固した部分(α−Al相)と、残りのインターデンドライトの部分からなり、インターデンドライトの一部には、後述するFeやSiなどの金属間化合物や単体が存在する。この上層の特徴的な皮膜構造により、表面からの腐食進行経路が複雑になり腐食が容易に下地鋼板に到達しにくくなるため、溶融Al系めっき鋼板は、優れた耐食性を有することが可能である。
さらに、めっきの主成分であるAlは、本来熱力学的には活性な金属であるが、大気中などの有酸素雰囲気では表面に酸化膜を形成し、この酸化膜の安定性に起因して優れた耐食性を有する。
なお、めっき浴には、不可避的不純物、鋼板やめっき浴中の機器等から溶出するFeが含まれており、その他、過度の合金層成長を抑制するためのSiが通常添加される。このSiは合金層に金属間化合物の形、あるいは上層に金属間化合物、固溶体若しくは単体の形で存在している。そして、このSiの働きにより、溶融Al系めっき鋼板の界面の合金層成長が抑えられ、合金層厚さは約1〜5μm程度となっている。めっき層厚が同一ならば、合金層が薄いほど耐食性向上に効果のある上層が厚くなるので、合金層の成長を抑制することは耐食性の向上に寄与することになる。また、合金層は上層よりも固く、加工時にクラックの起点として作用することから、合金層の成長抑制はクラックの発生を減少させ、曲げ加工性を向上させる効果をもたらすことにもなる。そして、発生したクラック部は下地鋼板が露出しており耐食性に劣るので、合金層の成長を抑制し、クラックの発生を抑制することは曲げ加工部耐食性をも向上させることになる。
このように耐食性に優れる溶融Al系めっき鋼板は、長期間屋外に曝される屋根や壁などの建材分野を中心に需要が伸び、近年は、自動車分野においても、優れた耐熱性を活かしてマフラー、燃料タンクなどの特定部品で使用されている。特に、自動車分野においては、地球温暖化対策の一環で車体を軽量化して燃費を向上させCO2排出量を削減することが求められている。このため、現在、高強度鋼板の使用による軽量化と、鋼板の耐食性向上によるゲージダウンが強く望まれている。
しかしながら、溶融Al系めっき鋼板を自動車分野、特に外板パネルに用いようとした場合には、次の問題があった。
溶融Al系めっき鋼板を自動車外板パネルとして使用する場合、該めっき鋼板は連続式溶融めっき設備でめっきまで施した状態で自動車メーカー等に供される。そこでパネル部品形状に加工された後に化成処理、さらに電着塗装、中塗り塗装、上塗り塗装の自動車用3コート塗装が施されることが一般的である。ただし、溶融Al系めっき鋼板を用いた外板パネルは、塗膜に損傷が生じた際に傷部からの塗膜膨れが生じ易いという問題があった。
塗装後腐食の一つである塗膜膨れは、下地鋼板が露出する傷部がカソード、腐食先端部がアノード、腐食最先端部がカソードのような塗膜下で局部電池を形成するために起こる事象である。Al系めっき鋼板は、めっき層中のインターデンドライトに形成した針状のSiやAl−Fe−Si化合物がいずれもAlよりも貴な電位を示し、局部的にカソードサイトとして働くため、塗膜下で局部電池を形成する。これにより、傷部を起点にインターデンドライトの選択腐食が塗膜/めっき界面で発生する。これが進行して大きな塗膜膨れを起こす結果、十分な塗装後耐食性を確保できなくなる。
一方、溶融Al系めっき鋼板を建屋の屋根材や壁材として建材分野で用いた場合もまた、塗装後耐食性が問題となっている。屋根材や壁材として使用される場合は、溶融めっき鋼板は一般的に下塗り塗装、上塗り塗装を施した状態で建築会社等に供され、必要なサイズに剪断してから使用される。このため、必然的に塗装がされていない鋼板端面が露出する。ここを起点にエッジクリープと呼ばれる塗膜膨れが発生することがある。溶融Al系めっき鋼板を建材分野で用いた場合、自動車外板パネルの場合と同様に、鋼板端面部を起点に塗膜/めっき界面におけるインターデンドライトの選択腐食が起こる。この結果、溶融Znめっきに比べて著しく大きなエッジクリープを生じて塗装後耐食性が劣ることがあった。
上記問題を解決すべく、例えば特許文献1には、めっき組成にMg、又はさらにSn等を添加し、めっき層中にMg2Si、MgZn2 、Mg2Sn等のMg化合物を形成させることで、鋼板端面からの赤錆発生を改善した溶融Al系めっき鋼板が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示される溶融Al系めっき鋼板に塗装を施した場合、塗装後の塗膜に損傷が生じたときの耐食性(塗装後耐食性)は、依然として解消できていなかった。
また、溶融Al系めっき鋼板は、建材や家電分野に塗装を施さず使用される場合もある。なかでも、壁材や家電製品の背面板等に使用される場合には、めっき鋼板の表面が人目に曝されることになるので、高い外観品位が求められる。外観品位とは、主に、異物付着や不めっき、傷等の欠陥有無の他に、模様や色調のムラのないことをいう。後者の模様や色調については、溶融Al系めっき鋼板が無塗装で使用される場合により強く求められる品位である。そのため、塗装鋼板として使用する溶融Al系めっき鋼板の全てが、無塗装で用いられる用途(壁材、家電製品の背面板等)に適用できるわけではなく、外観品位のさらなる向上についても望まれていた。
さらに、溶融Al系めっき鋼板の場合、めっきの成分組成によって、めっき後の表面が徐々に黒色に変化(黒変)することがあった。例えば、特許文献1に示されたSnを添加した溶融Al系めっき鋼板でも、黒変が発生する場合がある。このように、無塗装で使用する用途に全ての溶融Al系めっき鋼板を適用することができないという問題があった。
特開2002−12959号公報
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、優れた塗装後耐食性を有する溶融Al系めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、Al系めっき層中に、特定量のSnを含有させることにより、従来にない優れた塗装後耐食性が得られることを見出した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]下地鋼板(ただし、ステンレス鋼板を除く)上に、Snを0.01〜1質量%、Siを0.1〜10質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるめっき層を有することを特徴とする溶融Al系めっき鋼板。

[2]前記めっき層が、さらにMg及び/又はCaを、合計で0.01〜10質量%含有することを特徴とする上記[1]に記載の溶融Al系めっき鋼板。
[3]前記めっき層のSi含有量が、3質量%以下であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の溶融Al系めっき鋼板。
[4]前記めっき層のSi含有量が、2質量%以下であることを特徴とする上記[3]に記載の溶融Al系めっき鋼板。
[5]前記めっき層のAl含有量が、90質量%を超えることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の溶融Al系めっき鋼板。
本発明によれば、耐食性、特に塗装後耐食性に優れた溶融Al系めっき鋼板が得られる。そして、本発明の溶融Al系めっき鋼板を高強度鋼板とすることによって、自動車分野において、軽量化と優れた耐食性の両立が可能となる。また、建材分野で屋根材や壁材として使用することにより、建屋寿命の延命が可能となる。
塗装後耐食性の評価用サンプルを示した図である。 腐食促進試験のサイクルを示した図である。
以下、本発明について具体的に説明する。尚、以下の説明において、めっき層、及びめっき浴の組成を示す各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
先ず始めに、本発明で最も重要である、溶融Al系めっき鋼板による塗装後耐食性の改善方法について説明する。
本発明の溶融Al系めっき鋼板は、めっき層中に、Alに加えて、Sn:0.01〜10%を含有することを特徴とする。めっき層中にSnを含有することで、本発明で課題とする塗装後耐食性の改善が可能となる。
めっき層中に特定量のSnを含まない、従来の溶融Al系めっき鋼板のめっき層が大気に触れると、α−Al相の周囲に緻密、且つ安定なAl23の酸化膜が直ぐに形成される。この酸化膜による保護作用によってα−Al相の溶解性は低くなる。一方、インターデンドライトに形成した針状のSiやAl−Fe−Si化合物は、いずれもα−Al相よりも貴な電位を示し、局部的にカソードサイトとして働くため、塗膜下で局部電池を形成することになる。これにより、傷部を起点としたインターデンドライトの選択腐食が、塗膜/めっき界面で発生する。これが進行して大きな塗膜膨れを起こすことで、塗装後耐食性が低下することとなる。
ここで、塗装鋼板の下地として、Snを含有した溶融Al系めっき鋼板を用いた場合には、Snが、上述したα−Al相の周囲に形成するAl酸化膜を破壊し、α−Al相の溶解性を上げる。これによって、α−Al相の均一腐食が可能となり、従来のAl系めっき鋼板を下地に用いた場合に問題となるインターデンドライトの選択腐食を抑制できる。その結果、本発明の溶融Al系めっき鋼板は、優れた塗装後耐食性を示す。
次に、本発明の対象とする溶融Al系めっき鋼板のめっき層の組成について説明する。
前記めっき層中のSn含有量を、0.01〜10%としたのは次の理由からである。それぞれ、Snが0.01%未満の場合は、上記に示したインターデンドライトの選択腐食を抑制可能とするAl酸化膜の破壊が起こらないため、塗装後耐食性の向上は望めない。逆に、Snが10%を超える場合には、Al酸化膜の破壊が激しく起こり、めっき層全体の溶解性が過度に上昇する。その結果、めっき層を均一腐食させても、その溶解速度が大きくなる。このため、大きな膨れ幅を生じ、塗装後耐食性が劣化する。よって、優れた塗装後耐食性を安定的に得るためには、Snの含有量を0.01〜10%の範囲とする必要がある。
また、前記めっき層中のSn含有量は、0.1%以下とすることで、めっき表面が黒色化することがなく、外観品位に優れる。さらに、1%以下であれば塗装を施さず使用する場合でも表面外観が問題となることがない。そのため、塗装後耐食性と優れためっき外観とを両立する観点からは、前記めっき層中のSn含有量を、0.01〜1%と、0.01%〜0.1%とすること好ましい。
さらに、前記めっき層は、Mg及び/又はCaを、合計で0.01〜10%含有することが好ましい。Mg及びCaは、腐食により生成した腐食生成物中に取り込まれることで、腐食生成物の安定化を図り、鋼板の腐食進行を早期に抑えることができる。Mg及び/又はCaの合計含有量を0.01%以上としたのは、前記腐食生成物に取り込まれるMgやCaの量を十分に確保でき、腐食生成物の安定化を望めるためである。また、前記含有量を10%以下としたのは、腐食生成物の安定化効果を確保しつつ、製造コストの上昇を抑えることができるからである。
また、前記めっき層中の、Mg及び/又はCaの合計含有量は、めっき浴中の成分管理によって調整される。なお、めっき浴中のMg及び/又はCaの含有量が3%を超えるとドロスの生成量が多くなり、成分管理が難しくなるといった問題が生じる。よって、めっき浴の組成管理の観点からは、前記含有量を0.01〜5%の範囲とすることが好ましく、0.01〜3%の範囲とすることがより好ましい。
なお、前記めっき層中にMgとCaを複合で含有する場合も、単独で含有する場合と同じ効果が得られるが、実際の操業の点から、めっき浴組成を安定かつ容易に管理するべく、含有させる元素数を少なくすること、具体的には、Mg又はCaを単独で含有させることが好ましい。
さらに、本発明の溶融Al系めっき鋼板は、前記めっき層中にSiを0.1〜10%含有するSiは、下地鋼板との界面に形成する界面合金層の成長を抑制し、耐食性や加工性の向上を目的にめっき浴中に添加され、めっき層に含有される。具体的には、溶融Al系めっき鋼板の場合、Siを含有させためっき浴中に鋼板を浸漬すると、鋼板表面のFeと浴中のAlやSiが合金化反応し、Fe-Al系及び/又はFe−Al−Si系の化合物を形成する。このFe-Al系及び/又はFe−Al−Si系界面合金層の形成により、界面合金層の成長が抑制される。そして、めっき浴中のSi含有量は、0.1%以上とすることで界面合金層の十分な成長抑制が可能となる。
なお、界面合金層に取り込まれない余剰のSiはめっき上層のインターデンドライトに単体又はAl-Fe-Siなどの化合物として析出する。これらは前述のとおり、いずれもα−Al相よりも貴な電位を示し、局部的にカソードサイトとして働くため、インターデンドライトの選択腐食を引き起こす。この選択腐食を抑制するためには、可能な限り余剰のSi量を減らすことが必要であり、めっき浴中のSi含有量を3%以下にすることが好ましく、2%以下にすることがより好ましい。よって、めっき浴中のSi含有量の好適範囲は、0.1〜10%であり、より好ましい範囲は0.1〜3%、されに好ましい範囲は0.1〜2%である。Al系めっき鋼板の場合、めっき層の組成がめっき浴組成とほぼ同等となるため、めっき層中のSi含有量の好適範囲はめっき浴中のSi含有量の好適範囲と同等の0.1〜10%であり、より好ましい範囲は0.1〜3%、さらに好ましい範囲は0.1〜2%である。
本発明の溶融Al系めっき鋼板のめっき層は、Alを主成分としており、より優れた耐食性及び耐熱性を確保する観点から、好ましくは90%超え、より好ましくは95%超えの含有量で含有する。なお、めっき層中には、鋼板やめっき浴中の機器等から溶出するFeや、Al合金原料中に含有した不可避的不純物が含まれる。不可避的不純物の種類としては、例えば、Cr、Cu、Mo、Ni、Ti、Zr等が挙げられる。前記、Fe及び不可避的不純物の総含有量は特に限定はしないが、めっき層の耐食性と均一な溶解性を維持するという観点から、1%以下であることが好ましい。
なお、前記めっき層は、溶融Al系のめっきであり、Znについては、不可避的不純物である場合を除いて含有しない。
本発明の溶融Al系めっき鋼板に用いられる下地鋼板の種類については、特に限定はされない。例えば、酸洗脱スケールした熱延鋼板若しくは鋼帯、又は、それらを冷間圧延して得られた冷延鋼板若しくは鋼帯を用いることができる。
なお、めっき層の成分組成は、例えば、めっき層を塩酸等の水溶液に浸漬して溶解させ、その溶液をICP発光分光分析や原子吸光分析を行うことで確認することができる。この方法はあくまでも一例であり、めっき層の成分組成を正確に定量できる方法であればどのような方法でも良く、特に限定するものではない。
なお、本発明の溶融Al系めっき鋼板のめっき層の付着量は片面あたり35〜150g/m2であることが好ましい。35g/m2以上であれば優れた耐食性が得られ、150g/m2以下であれば優れた加工性が得られるからである。また、より優れた耐食性及び加工性を得る点からは、前記付着量を、40〜110g/m2とすることが好ましく、40〜80g/m2とすることがより好ましい。
次に、本発明の溶融Al系めっき鋼板の製造方法について説明する。
本発明の溶融Al系めっき鋼板は、連続式溶融めっき設備で製造され、めっき浴の組成管理以外は、全て常用の方法で行うことができる。
めっき浴中に、Alに加え、Snを0.01〜10%含有させる。このような組成のめっき浴を用いることにより、上述しためっき層の構成を具える溶融Al系めっき鋼板を製造できる。その際、前述の通り、界面合金層の成長を抑制するために、めっき浴中にSiを0.1〜10%含有させることが好ましい。また、腐食生成物の安定化効果を確保する点からは、Mg及び/又はCaを、合計で0.01〜10質量%含有させることが好ましい。さらに、製造される溶融Al系めっき鋼板が安定的に優れた耐食性を得るために、Al含有量を90%超えとすることが好ましい。
上記のように、めっき浴の組成管理を行うことで、塗装後耐食性に優れる溶融Al系めっき鋼板を、連続的な溶融めっき設備で効率的に製造することができる。
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
(サンプル1〜27)
サンプルとなる全ての溶融Al系めっき鋼板について、常法で製造した板厚0.8mmの冷延鋼板を下地鋼板として用い、連続式溶融めっき設備によって、めっき浴の浴温を600℃、めっき付着量を片面あたり50g/m2、すなわち両面で100g/m2の条件で製造した。
(1)めっき層の組成
サンプルとなる溶融Al系めっき鋼板を、それぞれ100mmΦに打ち抜き、35%の塩酸水溶液に浸漬してめっき層を溶解させた後、溶解液の組成をICP発光分光分析で定量化することで確認した。各サンプルの組成を表1に示す。
(2)塗装後耐食性の評価
サンプルとなる溶融Al系めっき鋼板をそれぞれ90mm×70mmのサイズに剪断後、自動車外板用塗装処理と同様に、化成処理としてリン酸亜鉛処理を行った後、電着塗装、中塗り、及び上塗り塗装を施した。ここで、リン酸亜鉛処理、電着塗装、中塗り塗装及び上塗り塗装は以下に示す条件で行った。
○リン酸亜鉛処理:日本パーカライジング社製の脱脂剤:FC−E2001、表面調整剤:PL−X、及び化成処理剤:PB−AX35M(温度:35℃)を用いて、化成処理液のフリーフッ素濃度を200質量ppm、化成処理液の浸漬時間を120秒の条件で化成処理を施した。
○電着塗装:関西ペイント社製の電着塗料:GT−100を用いて、膜厚が15μmとなるように電着塗装を施した。
○中塗り塗装:関西ペイント社製の中塗り塗料:TP−65−Pを用いて、膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装を施した。
○上塗り塗装:関西ペイント社製の中塗り塗料:Neo6000を用いて、膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装を施した。
その後、図1に示すとおり、評価面の端部5mm、及び非評価面(背面)をテープでシール処理を行った後、評価面の中央にカッターナイフでめっき鋼板の地鉄に到達する深さまで、長さ60mm、中心角90°のクロスカット傷を加えたものを塗装後耐食性の評価用サンプルとした。
上記評価用サンプルを用いて図2に示すサイクルで腐食促進試験を実施した。腐食促進試験を湿潤からスタートし、60サイクル後まで行った後、傷部からの塗膜膨れが最大である部分の塗膜膨れ幅(最大塗膜膨れ幅:傷部を中央にした片側の最大塗膜膨れ幅)を測定し、塗装後耐食性を下記の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○:最大塗膜膨れ幅≦1.5mm
△:1.5mm<最大塗膜膨れ幅≦2.0mm
×:最大塗膜膨れ幅>2.0mm
(3)めっきの外観品位
サンプルとなる溶融Al系めっき鋼板について、めっき処理を施した後1時間以内に、雰囲気:大気、温度:20℃、相対湿度:50%に調節した恒温恒湿槽内に入れた。以後、90日間放置した後、サンプルを取り出しめっき表面の目視観察を行い、下記の基準で外観品位を評価した。評価結果を表1に示す。
○:黒変が認められない
△:黒変は認められるが、塗装を施さない用途で特に問題にならない
×:黒変が塗装を施さない用途で問題になる
Figure 0006480132
表1より、本発明例のサンプルでは、比較例のサンプルとは異なり、最大塗膜膨れ幅が2.0mm以下であったことから、塗装後耐食性に優れた溶融Al系めっき鋼板が得られたことがわかる。
また、本発明例のサンプルの中において、めっき層中のSn含有量をそれぞれ適切な範囲に制御することで、塗装後耐食性に加えて、優れた外観品位が得られることがわかる。
さらに、本発明例のサンプルの中において、めっき層中のMg含有量及び/又はCa含有量を適切な範囲に制御することで、より優れた塗装後耐食性が得られることがわかる。
本発明の溶融Al系めっき鋼板は、塗装後耐食性に優れ、自動車、家電、建材の分野等、広範な分野で適用できる。特に自動車分野において、高強度鋼板に適用すると、自動車の軽量化と高耐食性を達成する表面処理鋼板として使用できる。

Claims (5)

  1. 下地鋼板(ただし、ステンレス鋼板を除く)上に、Snを0.01〜1質量%、Siを0.1〜10質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるめっき層を有することを特徴とする溶融Al系めっき鋼板。
  2. 前記めっき層が、さらにMg及び/又はCaを、合計で0.01〜10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融Al系めっき鋼板。
  3. 前記めっき層のSi含有量が、3質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融Al系めっき鋼板。
  4. 前記めっき層のSi含有量が、2質量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の溶融Al系めっき鋼板。
  5. 前記めっき層のAl含有量が、90質量%を超えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶融Al系めっき鋼板。
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