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JP6479248B1 - 締付装置 - Google Patents

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JP6479248B1
JP6479248B1 JP2018231251A JP2018231251A JP6479248B1 JP 6479248 B1 JP6479248 B1 JP 6479248B1 JP 2018231251 A JP2018231251 A JP 2018231251A JP 2018231251 A JP2018231251 A JP 2018231251A JP 6479248 B1 JP6479248 B1 JP 6479248B1
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Abstract

【課題】本発明の目的は、目標締め付け力で締結体を精度よく締結でき、かつ自動化が容易なナットランナーを提供することである。
【解決手段】締付装置は、筒状であり、下端側の開口部で前記ナットを保持するドライブソケットと、有底の筒状であり、前記ドライブソケットの内側に配置され、底部に前記ボルトが通されるとともに、前記ドライブソケットが保持するナットの前記ネジ部の先端側への移動を前記底部によって規制するナットホルダーと、前記ナットホルダーの内側に配置され、下端面に、前記ネジ部における前記ナットよりも先端側が螺合するネジ穴があるテンションロッドと、前記引張力を検出するためのセンサと、前記テンションロッドを上下方向に延びる軸周りに回転させるための第1モータと、前記ドライブソケットを上下方向に延びる軸周りに回転させるための第2モータと、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、締付装置に関する。
自動車をはじめとした多くの機械構造物の組み立てや固定にボルト・ナット締結体(以下、締結体と記載)が用いられる。締結体の締め付け力が目標締め付け力より低いと、締結体に緩みが生じやすくなり、締結体の疲労強度が低下する。そのため、締結体を目標締め付け力で精度よく締結することが安全上重要である。
締結体の締め付けは、一般的にトルク法や回転角法で行われる。これらの方法は、締め付け力がばらつきやすく、目標締め付け力からのずれも+−20%〜50%と大きくなりやすい。そのため、安全を考慮し、締結体は、大きな締め付け力を得やすい大きなサイズのもの、換言すると必要なサイズよりも大きなサイズのものが利用されやすい。このことが、被締結体における締結体の設置スペースの増大、ひいては被締結体の大型化や重量の増大につながっている。
そこで、本出願人は、締結体を目標締め付け力で精度よく締結できる特許文献1の締付装置を開発した。
特許第4363661号公報
特許文献1の装置は、ボルトのネジ部においてナットよりも先端側に雌ネジ部材を嵌め、ナットをナット押付け部材で上方から抑えながら、雌ネジ部材を締め付け方向に回転させる。該装置は、ネジ部にかかる引張力が目標締め付け力となるまで雌ネジ部材を回転させる。
続いて装置は、雌ネジ部材およびナットを同時に締め付け方向に回転させることで、引張力を維持しながらナットを締める。装置は、センサで検出されるネジ部の引張力に基づき、ボルトおよびナットによる締結体の締め付け力が目標締め付け力に到達したと判定すると、雌ネジ部材およびナットの回転を停止させる。これにより、装置は、締結体を目標締め付け力で精度よく締結できる。
上記装置では、モータの駆動力を遊星歯車機構およびクラッチを介して雌ネジ部材のみ、または雌ネジ部材およびナットに伝達する。しかし、装置では、駆動力の出力先の切り替えに、複数部材の着脱操作が必要である。部材の着脱操作を自動で行うためには複雑な機構が必要となるため、上記装置は、自動化の観点で改良の余地がある。
本発明の目的は、自動化が容易な締付装置を提供することである。
上記課題を解決するために、本願発明は、(1)被締結体に通されたボルトのネジ部において、前記被締結体を前記ボルトの頭部と共に締結するナットよりも先端側に引張力をかけた状態で、前記被締結体に対する締め付け力の大きさが前記引張力の大きさと同様になるように前記ナットを締結する締付装置であって、筒状であり、下端側の開口部で前記ナットを保持するドライブソケットと、有底の筒状であり、前記ドライブソケットの内側に配置され、底部に前記ボルトが通されるとともに、前記ドライブソケットが保持するナットの前記ネジ部の先端側への移動を前記底部によって規制するナットホルダーと、前記ナットホルダーの内側に配置され、下端面に、前記ネジ部における前記ナットよりも先端側が螺合するネジ穴があるテンションロッドと、前記引張力を検出するためのセンサと、前記テンションロッドを上下方向に延びる軸周りに回転させるための第1モータと、前記ドライブソケットを上下方向に延びる軸周りに回転させるための第2モータと、を備えることを特徴とする締付装置。
(2)前記第1モータ、前記テンションロッド、前記ナットホルダー、前記ドライブソケットは同軸状に配置され、前記第2モータは、前記第1モータの側方にあり、前記ドライブソケットの外周部には、前記第2モータからの駆動力が伝達される歯車部があることを特徴とする上記(1)に記載の締付装置。
本発明によれば、自動化が容易な締付装置を提供することができる。
締付装置を示す断面図である。 (A)〜(C)は仮締め処理を示す図である。 (D)(E)は仮締め処理を示し、(F)は引張力の付加処理を示す図である。 (G)〜(J)は引張力Pを付加した状態でのナットの着座処理を示す図である。 (K)は、着座処理を示し、(L)は最終締め付け処理を示し、(M)(O)は締付装置の取り外し処理を示す図である。 ナットを着座した状態からドライブソケットと共にネジ込み方向に回転させた際の引張力とボルト・ナット締結体の締め付け力の関係を示す図である。 締め付け力が目標締め付け力となった状態からナットのみ締めた場合の引張力と締め付け力の関係を示す図である。
(締付装置10の構成)
図1は、締付装置10を示す断面図である。本明細書における上下左右は、図1の上下左右を指す。
締付装置10は、ボルト・ナット締結体1の締結を目標締め付け力で精度良く、かつ自動で行う。ボルト・ナット締結体1は、被締結体13の孔に通されるボルト11と、ボルト11のネジ部に螺合するナット12とを備える。ナット12は、被締結体13をボルト11の頭部と共に締結する。ボルト11は、スタッドボルトであってもよい。スタッドボルトの一方の端部には、被締結体13に当接する雌ネジ部材が螺合し、他方の端部にはナット12が螺合すればよい。以下、締付装置10の構成を説明した後、締付装置10によるボルト・ナット締結体1の締結処理について説明する。
締付装置10のケース4は、ボディ41と、ボディ41の下面に固定される凹状のベース42とを備える。ケース4の下面からは、ナット12を回転させるためのドライブソケット31が突出する。
ドライブソケット31は、円筒状で軸周りに回転可能に保持されるとともに、軸方向には固定される。ドライブソケット31の下端側の開口部は、ナット12を保持可能な六角や十二角の形状になっている。ドライブソケット31は、該開口部にナット12が嵌められて第2モータ32に駆動されることにより、ナット12を回転させる。
ドライブソケット31の上部は、ベース42内にあり、径方向に拡開する拡開部311となっている。拡開部311は、内側にベアリング312を収納する。拡開部311は、ベアリング313,314によって上下に挟まれる。これにより、ドライブソケット31が軸方向に固定される。該ベアリング313,314は、ドライブソケット31を軸周りに回転可能に保持する。上側のベアリング313は、止め輪315に抜け止めされる。拡開部311の外周には、第2モータ32から駆動力が伝達される歯車部316がある。
第2モータ32は、ボディ41の上部において、ドライブソケット31と径方向にずれた位置に取り付けられる。第2モータ32は、後述する第1モータ22の側方にある。
減速機33は、ボディ41において第2モータ32の直下に取り付けられる。減速機33は、第2モータ32から入力される回転を減速して出力軸331から出力する。減速機33は、例えば2段の遊星歯車機構であり、上下段の内歯車がボディ41内に固定される。第2モータ32の出力は、減速機33の上段の太陽歯車、上段の一対の遊星歯車、上段の遊星キャリア、上段の遊星キャリアの出力軸上にある下段の太陽歯車、下段の一対の遊星歯車を介して下段の遊星キャリアに伝達され、下段の遊星キャリアの出力軸331から出力される。第2モータ32の出力軸、上段の遊星キャリアの出力軸、下段の遊星キャリアの出力軸331は同軸状である。本明細書において、各要素が同軸状とは、各要素の中心軸が一致することを意味する。
出力軸331において、ベース42内に配置される部位にピニオンギヤ34が設けられる。ベース42内において、ピニオンギヤ34とドライブソケット31の歯車部316の間には、アイドルギヤ35が回転可能に設けられる。第2モータ32の出力は、減速機33、減速機33のピニオンギヤ34、アイドルギヤ35を経て、ドライブソケット31の歯車部316に伝達され、ドライブソケット31を回転させる。出力軸331においてピニオンギヤ34の上側および下側の部位は、ベアリング341,342に保持される。上側のベアリング342は止め輪343に抜け止めされる。
ナットホルダー23は、有底の円筒状である。ナットホルダー23は、ドライブソケット31の内側に嵌められ、ドライブソケット31に軸周りに回転可能に保持される。ナットホルダー23の上部はベアリング312に保持される。ナットホルダー23の上端の拡開するフランジ231は、拡開部311に支持されるとともに、上面がスラストベアリング232を介してセンサ24に抑えられる。
ナットホルダー23は、軸方向において、底部233がドライブソケット31の下端から離れる設定位置に設けられる。底部233の中央には、ボルト11が通る円孔234がある。ナットホルダー23は、ボルト11のネジ部に引張力をかける引張処理の際に、底部233によってナット12の上方(ボルト11のネジ部の先端側)への移動を規制する。
テンションロッド21は、長手状で外形が円柱状である。テンションロッド21は、ナットホルダー23の内側に嵌められ軸周りに回転可能である。テンションロッド21は、第1モータ22の出力が入力される減速機25の出力軸であり、軸方向において固定される。
テンションロッド21、ナットホルダー23、ドライブソケット31は同軸状に設けられる。テンションロッド21の下端面の中心には、ネジ穴211がある。ネジ穴211には、ボルト11のネジ部が嵌められる。テンションロッド21は、ボルト11のネジ部において、ナット12よりも先端側に嵌められる。
第1モータ22は、ボディ41の上部においてテンションロッド21と同軸状に取り付けられる。
減速機25は、ボディ41の直下に取り付けられる。減速機25は、第1モータ22から入力される回転を減速してテンションロッド21から出力する。減速機25は、例えば減速機33と同様の2段の遊星歯車機構である。第1モータ22の出力軸およびテンションロッド21は同一軸状となる。
テンションロッド21を、ボルト11に嵌められた状態で一方向に回転させると、ボルト11に上方向の力(軸方向先端側に向かう力)がかかる。本明細書では、該一方向をネジ込み方向と呼び、ネジ込み方向と反対方向を緩み方向と呼ぶことがある。引張処理の際には、ナットホルダー23によってナット12を抑えながらテンションロッド21をネジ込み方向に回転させる。これにより、ボルト11に上方向の力がかかり、ボルト11のネジ部に引張力をかけることができる。
センサ24は、ボルト11のネジ部にかかる引張力を検出するためのものである。センサ24は、起歪体242と歪ゲージ243とを備える。起歪体242は、例えば金属製であり、中間部の肉厚が細くなった円筒状である。起歪体242は、テンションロッド21の径方向外側、かつ減速機25とナットホルダー23との間に配置される。起歪体242の上部は、スラストベアリング241を介して減速機25に抑えられる。起歪体242の下部は、スラストベアリング232を介してナットホルダー23に支持される。歪ゲージ243は、起歪体242の中間部に取り付けられる。
引張処理の際に、起歪体242は、引張力と同等の上方向の力をナットホルダー23から受け、弾性変形域内で圧縮方向に歪む。歪ゲージ243は、起歪体242の歪に応じて抵抗値を変化させ、コントローラ9への出力電圧を変化させる。コントローラ9は、歪ゲージ243の出力電圧の変化量に基づいて、ボルト11のネジ部の引張力を算出する。なお、センサ24の上下に設けられたスラストベアリング241,232は、センサ24に、ナットホルダー23からの上方向の力以外の不要な外乱が伝達されることを抑制する。センサ24は、ボルト11のネジ部の引張力の検出に利用できれば、適宜のものを利用できる。
コントローラ9は、第1モータ22および第2モータ32をそれぞれ独立して制御し、後述するボルト・ナット締結体1の締結処理等を行う。コントローラ9は、例えばCPU(central processing unit)がメモリ内のプログラムを読み込んで実行することにより締結処理を行う。コントローラ9は、第1モータ22および第2モータ32の回転位置、および第2モータ32の出力トルクである帰還トルクを検出する。
第1モータ22および第2モータ32は、それぞれ例えば直流のDC(Direct Current)サーボモータである。エンコーダにより第1モータ22および第2モータ32の回転位置および速度が検出され、コントローラ9に出力される。第1モータ22および第2モータ32に入力される電流値は、それぞれ電流センサに検出され、電流センサからコントローラ9に出力される。第1モータ22および第2モータ32に入力される各電流値は、第1モータ22および第2モータ32の各出力トルクと比例関係にあるので、以降、帰還トルクと記載する。第2モータ32の帰還トルクは、後述の締結処理にて制御パラメータとして利用される。なお、第1モータ22および第2モータ32は、AC(Alternating Current)モータであってもよい。第1モータ22および第2モータ32の駆動制御に利用するパラメータを取得するためのセンサや回路は、適宜のものを利用できる。
コントローラ9は、不図示のディスプレイにて、ボルト・ナット締結体1の締結に係る各種の設定値等を表示する。コントローラ9は、ボタンやキー、タッチパネルである不図示の入力装置を介して、ユーザから設定値等の入力を受け付ける。コントローラ9は、外部の電源(コンセント)から電力が供給され、第1モータ22や第2モータ32等に電力を供給する。締付装置10が、コントローラ9が組み込まれたコードレス式の場合には、締付装置10にバッテリが設けられていてもよい。
(締結処理の説明)
以下、締付装置10によるボルト・ナット締結体1の締結処理を説明する。
まず、図2(A)に示すように、ドライブソケット31に嵌められたナット12がユーザ等によりボルト11の先端に被せられた状態とされる。この状態で、コントローラ9は、不図示の入力装置にてユーザから締結処理の実行指示を受け付ける。
(仮締め処理)
コントローラ9は、最初に、ナット12の仮締め処理を行う。コントローラ9は、図2(A)、図2(B)に示すように、第1モータ22および第2モータ32を同時に駆動する。これにより、コントローラ9は、ドライブソケット31およびテンションロッド21をネジ込み方向に同回転数、回転させ、同期制御する。ナット12とテンションロッド21の雌ネジ部分のピッチは等しいので、ドライブソケット31およびテンションロッド21を同期制御することで、ドライブソケット31およびナット12を同時に同量、ボルト11に螺合することができる。
図2(C)に示すようにナット12が着座すると、第2モータ32が受ける該第2モータ32を回転させようとする力が急激に増大し、帰還トルクが急激に増大する。コントローラ9は、第2モータ32の帰還トルクからナット12の着座を判定すると、第1モータ22および第2モータ32の駆動を停止する。
ナット12の着座により発生するボルト11の引張方向の軸力を解除するため、コントローラ9は、図3(D)に示すように、第2モータ32のみを駆動する。コントローラ9は、第2モータ32を逆方向に駆動し、ドライブソケット31を緩み方向に回転させる。これにより、ナット12は、上方に移動し、図3(E)に示すように、被締結体13から離れ、ナットホルダー23の底部233に当接する。第2モータ32の駆動量は、設定量とする。
(引張力Pの付加処理)
続いて、コントローラ9は、ボルト11のネジ部への引張力Pの付加処理(第1ステップ)を行う。コントローラ9は、図3(F)に示すように、ナット12が被締結体13から浮いた状態で、第1モータ22のみを駆動し、テンションロッド21をネジ込み方向に回転させる。これにより、ボルト11に上向きの力が作用する。ここで、ナットホルダー23によってナット12の上方への移動が規制され、ひいてはナット12によりボルト11の上方への移動が規制される。
図3(F)の拡大図に示すように、ボルト11は、ネジ山がナット12のネジ山に抑えられ、上方への移動が規制される。そのため、ボルト11のネジ部に作用する上向きの力は、該ボルト11のネジ部に引張力Pとして作用する。また、ボルト11のネジ山の上方への移動を規制するナット12のネジ山は、ボルト11のネジ山間において下側に位置付けられる。そのため、ナット12のネジ山の上面とボルト11のネジ山の下面との間にバックラッシュが生じる。
コントローラ9は、引張力Pをセンサ24で監視しながら引張力Pが目標締め付け力Fcと等しい大きさになったと判定するまで第1モータ22を駆動する。コントローラ9は、引張力Pが目標締め付け力Fcと等しい大きさになったと判定すると第1モータ22を停止する。この際、実際は、第1モータ22のオーバーシュートにより、引張力Pは目標締め付け力Fcより大きい過大目標締め付け力Fc‘になる。例えば目標締め付け力Fcが10kNの場合、第1モータ22は、引張力Pが過大目標締め付け力Fc‘である11kNとなる時点で停止する。
(引張力Pを付加した状態でのナット12の着座処理)
続いて、コントローラ9は、引張力Pを付加した状態でのナット12の着座処理(第2ステップ)を行う。まず、コントローラ9は、ボルト11のネジ部の引張力Pを目標締め付け力Fcとするために、図4(G)に示すように、先に第2モータ32を駆動し、ドライブソケット31のみをネジ込み方向に回転させる。これにより、ナット12が下方に移動し、引張力Pが過大目標締め付け力Fc‘から低下する。
コントローラ9は、引張力Pが目標締め付け力Fcまで低下すると、図4(H)に示すように、第1モータ22も駆動し、ドライブソケット31およびテンションロッド21を同期制御する。同期制御により、テンションロッド21およびナット12は、互いの距離を保ったまま被締結体13に近づいていく。そのため、この間、引張力Pは低下しない。
図6は、ナット12を着座した状態からドライブソケット31と共にネジ込み方向に回転させた際の引張力Pと、ボルト・ナット締結体1の締め付け力Fの関係を示す図である。なお、コントローラ9は、引張力Pのみを検出し、締め付け力Fは検出しない。
ナット12の着座(図4(I))により締め付け力Fが生じ、ナット12の締め付け方向への回転とともに締め付け力Fが増大する。ナット12に対して下向きに作用する引張力P(ナットホルダー31からの反力)に対し、ナット12に対して上向きに作用する締め付け力F(被締結体13からの反力)がある程度の大きさとなると、ナット12がボルト11に対して上方に移動しはじめる。すなわち、図4(J)に示すように、ナット12のネジ山が上方に移動し始める。すると、テンションロッド21およびナット12の距離が短くなるため、引張力Pが急激に上昇し始める(図6参照)。
コントローラ9は、該引張力Pの急激な上昇を検出し、検出される引張力から締め付け力Fが目標締め付け力Fcと同様のナット12の着座状態になったと判定すると、図5(K)に示すように、第1モータ22および第2モータ32の駆動を停止する。この際、ナット12のネジ山は、該ネジ山を上下に挟むボルト11の各ネジ山から離れた位置に位置付けられる。また、本実施形態のように最終締付け処理を行う場合には、本判定は、締め付け力Fが目標締め付け力Fcよりも僅かに小さくなる点で行われる。コントローラ9は、引張力Pの急激な上昇を、dP/dθが一定範囲に継続して収まることで検出してもよいし、dP/dθが設定値よりも大きくなることで検出してもよい。
以上のように、本処理では、引張力Pを目標締め付け力Fcとした後、ナット12を締め付け、締め付け力Fが目標締め付け力Fc(引張力P)と同様になった時に締め付けを終了する。これにより、本実施形態では、ボルト・ナット締結体1を目標締め付け力Fcで精度よく締結できる。
しかし、本処理終了後の状態でテンションロッド21をボルト11から外すと、ナット12に下向きに作用する引張力P(ナットホルダー31からの反力)が無くなり、ナット12には上向きの締め付け力F(被締結体13からの反力)が作用する。ナット12のネジ山と、該ネジ山の上側にあるボルト11のネジ山との間には隙間があるため、締め付け力Fにより、該隙間分、ナット12が上方に移動してしまう。そして、ナット12が上方に移動することにより、締め付け力Fが目標締め付け力Fcと同様の状態から低下してしまう。
(最終締め付け処理)
そこで、コントローラ9は、ナット12のネジ山と、該ネジ山の上側にあるボルト11のネジ山との隙間を無くす最終締め付け処理を行う。コントローラ9は、図5(L)に示すように、第2モータ32のみを駆動し、ドライブソケット31のみをネジ込み方向に回転させ、ナット12を締める。
図7は、締め付け力Fが目標締め付け力Fcとなった状態からナット12のみ締めた場合の引張力Pと締め付け力Fの関係を示す図である。
ナット12のみを締めると、締め付け力Fが増大し、これによりナット12のネジ山がボルト11のネジ山に対して上方に移動する。ナット12のネジ山が上方に移動し、ボルト11のネジ山との隙間を埋めていく間は、引張力Pおよび締め付け力Fは、ほぼ一定に推移する。詳細には、ナット12が僅かではあるが締結されるために、締め付け力Fは僅かに増大する。また、ボルト11におけるテンションロッド21とナット12との距離が僅かではあるが伸びるために引張力Pは低下する。
ナット12のネジ山が上方に移動してボルト11のネジ山との隙間がなくなり、ボルト11のネジ山に密接すると、ナット12とボルト11のネジ山は弾性変形し始める。この弾性変形が開始する時点で締め付け力Fが目標締め付け力Fcとなる。このようになるように、前段のナット12の着座処理におけるテンションロッド21およびナット12の駆動停止の判定ポイントが設定されている。弾性変形が始まると、ナット12とテンションロッド21との距離が伸び始めることにより、引張力Pが急激に低下する。また、締め付け力Fが急激に上昇する。コントローラ9は、該引張力Pの急激な低下を検出し、第2モータ32の駆動を停止する。本処理により、締め付け力Fを大略目標締め付け力Fcに維持した状態で、ナット12のネジ山を、上側にあるボルト11のネジ山で抑えた状態にできる。
(締付装置10の取り外し処理)
最後に、コントローラ9は、締付装置10の取り外し処理を行う。図5(M)に示すように、コントローラ9は、第1モータ22のみを駆動する。コントローラ9は、第1モータ22を逆方向に駆動し、テンションロッド21を、ボルト11から外れるまで緩み方向に回転させる。これにより、ボルト11のネジ部にかかる引張力Pが解除される。
引張力Pの解除により、ナット12には、上向きの締め付け力F(被締結体13からの反力)がかかる。しかし、ナット12のネジ山がボルト11のネジ山によって上側から抑えられた状態なので、ナット12は上方に移動することがなく、締め付け力Fは、弾性変形により増大した分が無くなり、目標締め付け力Fcに戻った状態で維持される。
従って、以上の締結処理により、締付装置10は、自動でボルト・ナット締結体1を目標締め付け力Fcで締結できる。その後、ユーザにより、図5(O)に示すように、締付装置10がボルト11から外される。
(効果)
本発明では、ナットホルダー23でナット12を抑えながらテンションロッド21およびナット12の回転制御を行うことで、ボルト・ナット締結体1を目標締め付け力で精度よく締結できる。本発明では、センサ24にて検出される引張力Pを監視しながら、テンションロッド21およびナット12を回転させるための第1、第2モータ22,32を駆動制御することで、ボルト・ナット締結体1の締結処理を実行できる。従って、本発明は自動化が容易である。
本発明では、第1モータ22、テンションロッド21、ナットホルダー23、およびドライブソケット31が同軸状に配置されるので、締付装置10をコンパクトにできる。
本発明では、コントローラ1は、ボルト・ナット締結体1の締結処理として、ボルト11のネジ部への引張力Pの付加処理(第1ステップ)を行う。該処理では、コントローラ1は、ナット12が被締結体13から浮いた状態で、引張力Pが目標締め付け力Fcと等しい大きさになったと判定するまで、テンションロッド21を、ボルト11に対する締め付け方向に回転させる。また、コントローラ1は、締結処理として、ナット12の着座処理(第2ステップ)を行う。該処理では、コントローラ1は、ボルト11のネジ部に引張力Fcをかけた状態で、検出される引張力Pから締め付け力Fが目標締め付け力Fcと同様のナット12の着座状態になったと判定するまで、テンションロッド21およびナット12を締め付け方向に回転させる。これにより、本発明では、ボルト・ナット締結体1を目標締め付け力Fcと同様の大きさの締め付け力Fで締結することを、自動で行うことができる。
本発明では、コントローラ1は、引張力Pの付加処理(第1ステップ)において、引張力Pが目標締め付け力Fcに達すると第1モータ22の駆動を停止する。この際、第1モータ22のオーバーシュートにより、引張力Pは、目標締め付け力Fcより大きい過大目標締め付け力Fc‘となる。そこで、コントローラ1は、ナット12の着座処理(第2ステップ)では、始めに、ナット12のみを回転させ、引張力Pが目標締め付け力Fcまで低下したと判定した時にテンションロッド21も回転させ始める。これにより、本発明では、引張力Pの目標締め付け力Fcへの補正、およびナット12の着座・締結を連続して行うことができ、処理時間を短縮できる。
(変形例)
ナットホルダー23の底部233は、ナット12を上側から抑えることができ、かつボルト11を通すことができればどのような形態でもよい。底部233は、例えばナットホルダー23の下端の開口部の縁から中心軸近辺に向かって延びる複数の突起部を備えていてもよい。
(締付装置100の他の使用例)
上述の実施形態では、ボルト・ナット締結体1を新規に締め付ける際に締付装置10を使用したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、軸力検出工程において軸力不足と判別された既存のボルト・ナット締結体1の再締め付けを行うときに用いることもできる。実施形態と同様、締付装置10は、締結済みのボルト11に目標締め付け力Fcと同様の引張力をかけ、テンションロッド21およびナット12を締め付け方向に回転させて締め付け力Fを略目標締め付け力Fcとした後、最終締め付け処理を行えばよい。例えば、フランジ形状の多軸ワーク(被締結体)に対して、順番にボルト締めを行うと、初期に締結したボルトの軸力が低下することがある。この場合、締付装置10でボルト締めした後、ボルトを引っ張ることでボルトの軸力を検出することができる。なお、軸力検出の理論は、特許第4028254号公報に記載されているから、詳細な説明を省略する。軸力検出の結果、軸力不足と判別された場合には、締付装置10による再締め付けを行うことにより、さらに信頼性の高い軸力管理が可能となる。また、本実施形態の締付装置10を複数配列して(例えば、マトリクス状に配列して)、複数のボルト・ナット締結体1の締め付け作業を同時に行うこともできる。例えば、エンジンのシリンダーヘッドボルトのような多軸ワークの場合でも、締付装置10による同時締付けが可能となり、製品全体の軸力が安定して、製品の品質が向上する。
前記実施形態および変形例は単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。前記実施形態および変形例の構造および方法は、追加でき、また代替の構成を得るために様々な方法で組み合わせることができる。本明細書に例示されたボルト・ナット締結体1の締結処理は、複数処理を含むところ、本明細書に開示されたものよりも多い、または少ない処理を含み得る。例えば、ある一処理の前に、同時にまたは後に特定の一処理を実行することは、本明細書の開示範囲内である。
本明細書に例示されたボルト・ナット締結体1の締結処理にて、ユーザが行う工程部分を機械に置き換えたものも本明細書の開示範囲内である。
前記実施形態では、ボルト・ナット締結体1の締結処理にて、ボルト11に対してナット12を略目標締付け力Fcで締結した後、テンションロッド21を外す。この際に締め付け力Fの目標締付け力Fcへの調整および目標締付け力Fcの維持のために、ナット12のみを締める最終締め付け処理を行う。しかし、締付装置10が、ボルト11にテンションロッド21を残したままとする構成の場合には、最終締め付け処理は不要にできる。この場合、テンションロッド21は、雌ネジによりボルト11に引張力を付加できる引張部材であればよく、キャップ状であってもよい。この場合、ナット12の着座処理にて、締め付け力Fを目標締付け力Fcにする。このような態様も、本明細書の開示範囲内である。
9 コントローラ
10 締付装置
11 ボルト
12 ナット
13 被締結体
21 テンションロッド
22 第1モータ
23 ナットホルダー
31 ドライブソケット
32 第2モータ
234 ネジ穴
316 歯車部

Claims (2)

  1. 被締結体に通されたボルトのネジ部において、前記被締結体を前記ボルトの頭部と共に締結するナットよりも先端側に引張力をかけた状態で、前記被締結体に対する締め付け力の大きさが前記引張力の大きさと同様になるように前記ナットを締結する締付装置であって、
    筒状であり、下端側の開口部で前記ナットを保持するドライブソケットと、
    有底の筒状であり、前記ドライブソケットの内側に配置され、底部に前記ボルトが通されるとともに、前記ドライブソケットが保持するナットの前記ネジ部の先端側への移動を前記底部によって規制するナットホルダーと、
    前記ナットホルダーの内側に配置され、下端面に、前記ネジ部における前記ナットよりも先端側が螺合するネジ穴があるテンションロッドと、
    前記引張力を検出するためのセンサと、
    前記テンションロッドを上下方向に延びる軸周りに回転させるための第1モータと、
    前記ドライブソケットを上下方向に延びる軸周りに回転させるための第2モータと、
    を備えることを特徴とする締付装置。
  2. 前記第1モータ、前記テンションロッド、前記ナットホルダー、前記ドライブソケットは同軸状に配置され、
    前記第2モータは、前記第1モータの側方にあり、
    前記ドライブソケットの外周部には、前記第2モータからの駆動力が伝達される歯車部があることを特徴とする請求項1に記載の締付装置。

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