<はじめに>
実施の形態の説明に先立って、ソナーセンサーを用いて障害物の位置を特定する方法について図1〜図3を用いて説明する。図1のように車両VCに搭載された複数のソナーセンサーSS1〜SS4を用いて障害物OBに対して超音波SWを送信すると、送信したセンサー自身が超音波を検出する場合と、送信したセンサーとは別のセンサーで超音波を検出する場合がある。前者を直接受信、後者を間接受信と言う。直接受信の場合、例えばソナーセンサーSS3から送信された超音波SWは、障害物OBにより反射されてソナーセンサーSS3自身で受信する。直接受信の場合、超音波の送信から受信までの時間を音速で除算して得た距離を、往路と復路を考慮して半分にすることでソナーセンサーSS3と障害物OBとの距離を求めることができる。
一方、ソナーセンサーSS3から送信された超音波SWは、障害物OBにより反射されて、例えばソナーセンサーSS2でも受信する。このような間接受信の場合、送信したセンサーと受信したセンサーが異なるため、単純に音速で除算して半分にするだけでは障害物OBまでの距離を求めることはできず、音速で除算後、直線受信で求めた距離を減算することで障害物OBまでの距離を求めることとなる。
間接受信はソナーセンサーSS2で受信される以外に、ソナーセンサーSS1およびSS4でも同様に受信することができ、1回の送信に対して障害物OBまでの複数の距離を測定することとなる。これによりそれぞれのソナーセンサーから障害物OBまでの距離が求まると、ソナーセンサーの位置を基準にそれぞれ円弧を描くことができる。このソナーセンサーの位置を中心とした複数の円弧は互いに交点、いわゆる2円交点を持ち、この交点の位置が障害物の位置となる。
ここで、障害物OBの形状が小さい場合、図2に×印で示すように、2円交点で求めた障害物OBの位置は比較的まとまった位置を示し、1つの障害物であると認識することができるが、図3に示すように複雑な形状の障害物OBLの場合、図3に×印で示すように、2円交点で求めた障害物OBLの位置は広範囲に分散し、形状によっては、交点のまとまり(交点群)が複数できてしまうことがある。特に障害物の形状が複雑で音波の反射面が多面体で構成されている場合や、障害物の場所によっては音波を吸収してしまうような素材でできており、音波の反射率が場所によって均一でない場合に発生しやすい。このような場合、ソナーセンサーは障害物が複数あるものと認識し、交点群ごとに異なる障害物が複数あるように認識する場合がある。
また、図3に示すような複雑な形状の障害物OBLの場合、車両VCが移動するとソナーセンサーと障害物OBLとの位置の変化により超音波の跳ね返る面が変わってしまい、それまで検出されていた面での2円交点が消失し、異なった面での2円交点が新たに形成され、新たな交点群が形成される場合があった。このような場合、車両VCの移動に基づいてトラッキング処理(追跡処理)を行い、トラッキング結果と検出位置との相関関係に基づいて信頼度を演算していると、急に信頼度が低下する場合があったり、制御に必要な信頼度が確保されにくくなる場合があったりする。このような状況では、制御に必要な信頼度を確保するのに複数回の検出が必要になり、結果として障害物の認識タイミングが遅れてしまう場合もあった。
<車両の構成>
図4は、本発明に係る車両用走行支援装置を搭載する車両VCの構成を示す概略図である。車両VCは、ソナーセンサー2、カメラ3(撮像装置)、ブレーキ4および車両用走行支援装置1を有している。ソナーセンサー2は車両前方および後方に複数設置され、それらはソナーセンサー配線8を介してソナーコントローラー9に接続されている。なお、図4では車両の前後に4つずつのソナーセンサー2を配置しているが、前後以外に左右に配置しても良いし、前後も車両VCのサイズによって、ソナーセンサー群により必要な計測領域が満たされるのであれば、2〜3個であっても良い。
カメラ3は車両の前後および左右に複数設置され、それらはカメラ配線7を介して周辺監視カメラコントローラー10に接続されている。なお、図4では車両の前後左右に1つずつカメラ3を配置しているが、これに限定されず、例えば後方の障害物のみをブレーキ制御の対象とするのであれば、後方のみにカメラ3を取り付けるようにしても良い。また、取り付け位置について、図4では左右のカメラ3についてはドアミラーの下部、前後についてはそれぞれバンパー中央に設置するよう図示しているが、これに限定されるものではない。
車両用走行支援装置1には、ソナーコントローラー9、周辺監視カメラコントローラー10以外に、その他のセンサー11、演算装置12およびブレーキ制御装置13が含まれており、これらはそれぞれ、例えばCAN(Control Area Network)等の通信網5を介して互いに接続されている。
ブレーキ制御装置13は、最終的に油圧配管6を用いて各車輪に設置されたブレーキ4と接続されており、ブレーキ制御装置13の指令によりブレーキ4は車両VCに制動を描ける。なお、図4ではブレーキ4、ブレーキ制御装置13および油圧配管6によって構成される油圧ブレーキを示したが、この構成に限定されるものではなく、例えばモーターによって走行するEV(Electric Vehicle)、エンジンとモーターによって走行するHEV(Hybrid Electric Vehicle)またはPHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle)では、モーターの減速回生を制動に使用しても良い。
以下、本発明の各実施の形態について図を用いて説明を行う。なお、各図において同一、または相当する部材、部位については同一符号を付して説明する。また、以下では、実施の形態1〜4として、それぞれ車両用走行支援装置100〜400を示すが、これは図4に示す車両用走行支援装置1に対応するものである。
<実施の形態1>
<装置構成>
図5は、本発明に係る実施の形態1の車両用走行支援装置100の構成を示す機能ブロック図である。図5に示すように車両用走行支援装置100は、第1の障害物検出部101、第2の障害物検出部102、車両状態検出部103、車両運動演算部104、推定障害物位置演算部105、障害物信頼度演算部106、障害物位置情報補正部107、障害物記憶判定部108、障害物記憶部109、自車経路演算部110、障害物判定部111、衝突時間演算部112、目標減速度演算部113および制動装置114を備えている。
図5に示すように、第2の障害物検出部102の出力は、第1の障害物検出部101に入力され、第1の障害物検出部101の出力は、障害物信頼度演算部106、障害物位置情報補正部107および障害物記憶判定部108に入力され、障害物信頼度演算部106の出力は障害物位置情報補正部107に入力される。障害物位置情報補正部107の出力は、障害物記憶判定部108および障害物判定部111に入力される。障害物記憶判定部108の出力は、障害物記憶部109に入力され、障害物記憶部109の出力は、推定障害物位置演算部105に入力される。
また、車両状態検出部103の出力は、車両運動演算部104、障害物記憶判定部108、自車経路演算部110および衝突時間演算部112に入力される。車両運動演算部104の出力は、推定障害物位置演算部105に入力され、推定障害物位置演算部105の出力は、障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107に入力される。
また、自車経路演算部110の出力は、障害物判定部111に入力され、障害物判定部111の出力は、衝突時間演算部112に入力される。衝突時間演算部112の出力は、目標減速度演算部113に入力され、目標減速度演算部113の出力は、制動装置114に入力される。
第1の障害物検出部101は、図4に示した複数のソナーセンサー2とソナーコントローラー9およびそれらをつなぐソナーセンサー配線8によって構成される。複数のソナーセンサー2を用いて障害物の位置を検出する方法は、図1を用いて説明したように、直接受信と間接受信で得られる障害物までの測定距離による2円交点を描く方法を用いる。
第2の障害物検出部102は、図4に示した複数のカメラ3と周辺監視カメラコントローラー10およびそれらをつなぐカメラ配線7によって構成される。カメラ3は障害物の大きさと概略位置を取得することができる。
ここで、第1の障害物検出部101により検出する障害物位置と第2の障害物検出部102により検出する障害物位置の違いについて説明する。第1の障害物検出部101で使用するソナーセンサー2による位置検出は、複数のソナーセンサー2による2円交点から求められ、2円交点を構成するセンサーと障害物の距離は数cm以下の精度で測定可能である。これは空気中の温度および湿度が一定かつ反射率の高い障害物であるならば、ソナーセンサー2と障害物との距離を測距する際に影響する要素は、超音波の送信から受信までの時間のみであり、測定距離の分解能は測定時間の分解能に比例し、ソナーコントローラー9のクロックに関係する。現在、一般的なマイコンのクロックは遅くても数MHz単位で動いており、図2に示したような小さな障害物OBの場合、ソナーセンサー2を用いて数cm単位の距離計測を行うことは全く問題ない。しかし、ソナーセンサー2を用いた位置検出では、図3に示したような複雑な形状をした障害物OBLの場合、複数のセンサーにより複数の2円交点を求めると、交点が分散するという特性がある。これはそれぞれの交点はほぼ正確に障害物の位置(表面の位置)を示しているが、障害物の反射面によって反射強度が異なることが原因である。
図6には、複数のソナーセンサー2により障害物OBLとして自転車を検出する場合を例示しているが、このような障害物OBLの場合、2円交点の交点群がA〜Cのように分散し、単純に点群によってまとめる処理を行うと、それぞれの点群を障害物として認識することになる。
一方、第2の障害物検出部102で使用するカメラ3による位置検出は、カメラ3で撮影した画像に基づいて周辺監視カメラコントローラー10で障害物を認識して障害物の位置を求める。障害物の認識方法は様々な方法があり、例えばある一定間隔の時間をおいて複数の画像を撮影し、それらの画像の差分を求め、差分の大きい部分を障害物が存在する位置、差分の大きさ自体を障害物の大きさと認識する方法がある。また単純に周囲の色、例えば路面の色と障害物の色の違いより、障害物を認識する方法もある。また近年では、予め多層構造のニューラルネットワークを用いて機械学習を行い、その結果を用いて障害物を認識する方法、いわゆるディープラーニングを用いた障害物認識方法も開発されている。本発明ではこれらの周知の障害物の認識方法を利用することができるので、詳細な説明は省略する。
カメラを用いた障害物認識の特徴として、障害物の大きさや範囲は認識できるが、位置情報、特にカメラに対し前後方向の距離については精度が得られにくいことが挙げられる。その原因としては、障害物認識に用いるカメラは主に周辺監視を行うために広角のレンズを用いており、カメラ画角の中心部以外はひずみが大きく、また周辺部に割り当てられる撮像素子の素子数が少ないため、障害物の位置によっては、撮像素子の素子間隔が広くなり、実空間では数10cm〜100cmの範囲に対応することとなり、この範囲に障害物が位置することで位置精度が低下する。
そのため本発明では第2の障害物検出部102が計測する位置情報は、第1の障害物検出部101が計測する位置情報に対して精度が低いと言う意味で概略位置情報と呼称する。また、ソナーセンサー2と異なりカメラ3を用いた計測では、自然光またはライトや照明の発する人工光の反射により映像を撮影するので、環境に大きく依存する。特に夜間では障害物の認識センサーとして常用しにくいと言った特性も持っている。
第1の障害物検出部101で検出する障害物の位置情報と、第2の障害物検出部102で検出する障害物の概略位置情報は、それぞれのセンサーが車両に固定されているため、車両の移動と共に移動する。そのため、それぞれのセンサーから出力される位置情報は、車両を基準とした障害物の相対位置となる。本実施の形態1では、障害物の位置は車両を基準とした相対位置として扱い、車両は固定点として扱うため、地上に固定された障害物であっても車両が移動することで、位置情報として障害物が移動して車両に対して近づいたり遠ざかったりする挙動となる。
第2の障害物検出部102において検出した障害物の大きさと概略位置情報は、障害物大きさ情報として第1の障害物検出部101入力される。第1の障害物検出部101では、自身で検出した複数の障害物位置検出情報と、第2の障害物検出部102で検出した障害物大きさ情報とを比較し、単一の障害物であると判定される場合は、自身で検出した複数の障害物検出位置情報の中心座標を新たな障害物検出位置情報として出力する。
具体的には第1の障害物検出部101は、自身で検出した図6に示す交点群A〜Cと、第2の障害物検出部102で検出された障害物の概略位置情報と障害物の大きさ情報とに基づいて、交点群A〜Cのうち障害物大きさ情報の範囲に含まれるものを抽出し、これらの交点群の中心座標を障害物検出位置情報として出力する。図7はこの処理を示す概念図であり、第2の障害物検出部102のカメラ3で検出された障害物の大きさ情報OBXと、交点群の中心座標CCとを示している。
ここで、第2の障害物検出部102が障害物の大きさ情報を出力しても、それに対応する第1の障害物検出部101での検出情報が存在しない場合は、第1の障害物検出部101から障害物検出位置情報は出力されない。逆に第1の障害物検出部101が検出した障害物に対応する障害物の大きさ情報が第2の障害物検出部102から入力されない場合は、第1の障害物検出部101は、自身で検出した検出情報を障害物検出位置情報として出力する。すなわち、図6のような場合では、実際は単一の障害物であっても複数のソナーセンサー2で計測した3つの交点群A〜Cに応じて3つの障害物が検出されたものとして出力する。
車両状態検出部103は、車両VCの車両状態を検出するセンサーであり、図4に示すその他のセンサー11で構成される。車両状態検出部103で検出する車両状態量としては、車速、ハンドル角、シフト情報、ブレーキ情報、ヨーレート等が挙げられる。なお、これら以外に実際に緊急ブレーキを高精度に行うためには、坂道等の判定を行うために前後加速度、横加速、アクセルペダル開度およびエンジン回転数の情報が必要であるが、本発明の作用および効果に影響を与える要素ではないため説明は省略する。
図5に示す機能ブロックのうち、車両運動演算部104、推定障害物位置演算部105、障害物信頼度演算部106、障害物位置情報補正部107、障害物記憶判定部108、障害物記憶部109、自車経路演算部110、障害物判定部111、衝突時間演算部112および目標減速度演算部113は、図4に示す演算装置12により実現される。また、図4に示す演算装置12は、演算装置12に入出力される信号および演算の中間値、障害物記憶部の記録値を記憶するメモリ(図示せず)を有しており、上記各機能ブロックは当該メモリーの情報に基づいて処理を行う。
<動作>
上述した演算装置12が実現する機能ブロックの動作について、図8および図9に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図8の記号(A)〜(C)と図9の記号(A)〜(C)とは互いに接続された関係にある。また、図8および図9に示すフローチャートの処理は演算装置12において10〜20msecの周期で繰り返される。この周期を以下では演算周期と呼称する。
図8および図9に示すように、車両用走行支援装置100は、まず、車両状態検出部103から出力される車両状態の情報に基づいて、障害物記憶判定部108において障害物記憶部109に記憶されている一周期前の障害物検出位置情報をすべて消去する条件に該当するかどうかを判断する(ステップS101)。判断基準としては、例えば、車両VCのドライバーの操作により前進または後退を目的としたシフト切り替えが行われた場合、車速が一定速度以上を上回った場合、車両VCが停車してから一定時間経過した場合などが挙げられる。
シフト状態により障害物記憶部109を消去する理由としては、車両VCの移動方向の変化により緊急ブレーキ制御を行う必要がある対象障害物が車両VCの前後で変化した場合に対応するためである。また、車速が一定速度を上回った場合に障害物記憶部109を消去する理由としては、第1の障害物検出部101(ソナーセンサー)による障害物の計測が困難になった場合に対応するためである。また、車両VCが停車してから一定時間経過した場合に障害物記憶部109を消去する理由としては、障害物が地上に固定されている場合以外、例えば障害物が人および車両であった場合は、車両停車から一定時間経過すると障害物が移動している場合に対応するためである。なお、障害物記憶部109の消去の条件はこれらに限定されるものではなく、他の要件を追加しても良いし、既存の要件を削除しても良い。
ステップS101において障害物記憶部109に記憶されている一周期前の障害物検出位置情報をすべて消去しても良いと判断された場合(Yesの場合)は、ステップS102において障害物記憶部109に記憶されている一周期前の障害物検出位置情報をすべて消去する。一方、ステップS101において障害物記憶部109に記憶されている一周期前の障害物検出位置情報を消去しないとの判断がされた場合(Noの場合)は、ステップS103に進む。
次に、ステップS103において第1の障害物検出部101で検出されるすべての障害物検出位置情報に対し、マッチングフラグを未マッチング状態に設定する。この障害物検出位置情報のマッチングフラグが、マッチング状態である場合は、その処理の時点で既に推定障害物位置演算部105が出力する推定障害物位置情報とマッチング済みであることを示しており、未マッチング状態の場合は、まだ推定障害物位置情報と関連付けられていないことを示している。S103ではこれから行われるマッチング処理に際して、第1の障害物検出部101で検出されたすべての障害物検出位置情報のマッチングフラグを未マッチング状態に設定する。なお、ステップS103の処理は、障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107において実行される。
ステップS103の処理を実行した後は、車両運動演算部104において車両状態検出部103で検出された車速およびハンドル角の情報を用いて車両用走行支援装置100の演算周期あたりの車両VCの移動量を演算する(ステップS104)。車両VCの移動量は、演算周期あたりの車両の進行方向の移動距離Lsampと、演算周期あたりの車両VCの旋回方向の旋回角Yawsampで定義される。それぞれを求める数式は、以下の数式(1)および(2)で表される。
上記数式(1)および(2)において、Velは車両VCの車速を、Yawrateは車両の垂直方向を軸とした回転速度を、Tsampは車両用走行支援装置100の演算周期をそれぞれ示す。
車両運動演算部104は、上記数式(1)および(2)によって求められる演算周期あたりの車両の進行方向の移動距離Lsampと、演算周期あたりの車両の旋回方向の旋回角Yawsampを、車両移動量として出力する。
ステップS104の処理を実行した後は、推定障害物位置マッチング処理ループS1L1を開始する。推定障害物位置マッチング処理ループは、障害物記憶部109に記憶されている1周期前のすべての障害物検出位置情報に対して、ステップS105〜S117の処理を順次行うループである。なお、ステップS102において障害物記憶部109に記憶されている一周期前の障害物検出位置情報をすべて消去した場合は、障害物検出位置情報が0となっているので、推定障害物位置マッチング処理ループS1L1には入らず、後の障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2に進む。このルートについては図示を省略する。
推定障害物位置マッチング処置ループS1L1においては、まず、推定障害物位置演算部105において推定障害物位置の演算を行う(ステップS105)。この演算では、障害物記憶部109に記憶された1周期前の障害物位置情報と、ステップS104で演算された車両移動量とに基づいて、1周期前の障害物検出位置情報が車両VCの移動によって、現時点で移動していると推定される推定障害物位置を演算する。
ここで、推定障害物位置演算部105における推定障害物位置の演算処理について説明する。図10は1周期前の車両VCの位置Oと、障害物記憶部109に記憶された1周期前の障害物位置情報Pa、Pb、Pcにおける障害物の位置を図示したものであり、車両VCの位置Oは後輪車軸中心を点Oとして示している。本実施の形態の推定障害物位置マッチング処置ループS1L1では、障害物記憶部109に記憶された障害物位置情報の1つずつに対してループ処理を行うため、図10に示す障害物位置情報Pa、Pb、Pcの場合、1回目のループ処理では障害物位置情報Paに対して、2回目のループ処理では障害物位置情報Pbに対して処理を行う。なお、本実施の形態1では車両の位置を示す点Oの場所は後輪車軸中央としているが、これに限定されるものではない。また、車両VCの前方向をx軸正方向、左方向をy軸正方向とするが、これに限定されるものではない。また、座標系については後述する。
次に、図10から1演算周期で車両VCが進んだ場合を図11に示す。図10で点Oの位置にいた車両VCが、図11に示すように1演算周期の間に点O’の位置まで進む。具体的には車両VCの位置は、点Oからx軸方向にLsamp×cos(Yaw_samp)、y軸方向にLsamp×sin(Yawsamp)移動し、角度Yawsamp旋回する。これを数式で表すと以下の数式(3)で表される。
上記数式(3)において、Lsampは演算周期あたりの車両VCの進行方向の移動距離、Yasampは演算周期あたりの車両の旋回方向の旋回角、(Ox、Oy、Oθ)は現時点の車両位置Oを示す座標、(O'x、O'y、O'θ)は1周期後の車両位置O’を示す座標をそれぞれ表している。
数式(3)では、現時点での車両位置Oに対し、車両VCの運動から推定される1周期後の車両位置O’を示したが、これらについては、地上のある座標点を基準に車両位置OおよびO’が定義されている。このような座標系を「地上に固定した座標系」と言う。しかし、前述のように第1の障害物検出部101と第2の障害物検出部102とで検出された、障害物の位置情報および概略位置情報は車両を基準とする相対位置として計測される。そこで、車両位置OおよびO’を座標の原点とする、いわゆる「車両に固定した座標系」に変換すると、地上に固定された障害物が相対的に移動することとなる。
このような障害物の相対的な動きを図12に示す。図12に示すように、1周期前の障害物位置情報Pa、Pb、Pcにおける障害物の位置が、点Pa’、Pb’、Pc’のように車両VCに近づいてくる。これを数式で表すと以下の数式(4)となる。
上記数式(4)において、(Pax、Pay)は1周期前の障害物Paの位置、(Pa'x、Pa'y)は現時点での障害物Pa’の位置を示す座標値であり、共に各時点での車両VCの後輪車軸中央を原点とした場合の相対位置を示している。なお、数式(4)では障害物の傾きを表すPaθおよびPaθ'を示しているが、障害物の傾きについては本実施の形態1では無視するためPaθ=0としている。またPaθ'は算出した値は用いず、Pa’x、Pa’yを求めるための中間値となっている。そこで、数式(4)を整理して以下の数式(5)とする。推定障害物位置の演算では、数式(5)を用いて推定障害物位置を順次演算する。
ここで、フローチャートの説明に戻り、推定障害物位置演算部105は、推定障害物位置情報が障害物追跡の必要な範囲外か否かを判定し(ステップS106)、障害物追跡の必要な範囲外と判定される場合(Yesの場合)は、ステップS107において推定障害物位置情報の障害物信頼度を最小値に設定する。なお、推定障害物位置情報の障害物信頼度には範囲が設けられており、加算、減算を行っても当該範囲内、つまり最小値と最大値の範囲内で制限される。
このような処理を行う理由を以下に説明する。例えば、緊急ブレーキ制御では、車両が前方に進んでいる場合、具体的にはオートマティック車であってシフト状態がDレンジの場合、車両の後端より後方にある障害物には衝突する可能性は低く、追跡を行う必要はない。一方、車両が後方に進んでいる場合、具体的にはオートマティック車であってシフト状態がRレンジの場合、車両前端より前方にある障害物については追跡を行う必要はない。
また、左右方向に関しても車両の左右端から一定距離、例えば10m程度離れている障害物に対しては障害物の追跡を行う必要性は低い。これは、第1の障害物検出部101のソナーセンサーでは、このような遠方の物体を検出することが難しいという理由による。また、別の理由として、車両が最大のハンドル角で走行したとしても、前進後退を切り替えることなく直接、左右10m以上の領域に到達することは難しく、追跡した障害物に衝突する可能性は低いと言った理由もある。なお、この障害物追跡の範囲に関しては、上述した例に限定されず、障害物記憶部109のメモリー容量によって、また演算装置12の処理速度および車両の特性によって決めれば良い。
本実施の形態1における障害物信頼度の最小値は0とし、ステップS107において障害物信頼度を0に設定した場合には、ステップS117に進んで推定障害物位置情報を削除する。
一方、ステップS106において、推定障害物位置情報が障害物追跡の必要な範囲内である場合(Noの場合)は、ステップS108に進む。
ステップS108では、推定障害物位置情報が第1の障害物検出部101の検出範囲内であるか否かを判定する。ステップS108において、推定障害物の障害物位置がソナーセンサーの検出範囲外であると判定される場合(Noの場合)は、後のマッチング処理を行わずステップS117に進む。
これは推定障害物の障害物位置がソナーセンサー2の検出範囲外にある場合、その推定障害物に対応する障害物検出位置情報は検出されず、後の信頼度の計算において信頼度が短時間で低下してしまい、本来追跡すべき障害物を追跡しなくなるため、このような場合には、ステップS105で演算された推定障害物位置に基づいて、障害物を追跡することができるようにしている。
一方、ステップS108において、推定障害物の障害物位置がソナーセンサーの検出範囲内であると判定される場合(Yesの場合)は、ステップ109に進む。
ステップS109では、推定障害物位置情報と障害物検出位置情報のマッチング処理を行う。マッチング処理は、推定障害物位置マッチング処置ループS1L1で処理中の推定障害物位置情報と、未マッチング状態のすべての障害物検出位置情報を比較し、推定障害物位置情報と障害物検出位置情報の直線距離がマッチング判定距離(所定の判定距離)内、かつ直線距離が最も短かったものを、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報であると判断する。なお、処理中の推定障害物位置情報に対し、未マッチング状態の障害物位置検出情報が全く存在しない場合、または処理中の推定障害物位置情報からマッチング判定距離内に未マッチング状態の障害物位置検出情報が存在しない場合は、処理中の推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在しないと判断する。
また、本実施の形態で用いるマッチング判定距離は予め定めた定数であり、緊急ブレーキ制御が対応する目標最大車速と第1の障害物検出部101の更新周期とに基づいて設定すると良い。例えば、仮に目標最大車速を10km/hとし更新周期を100msecとすると、1回の障害物検出位置情報の更新周期間に最大約27cmの距離を障害物が相対的に移動するものと想定される。従って、上記条件でマッチング判定距離を設定するのであれば、若干の余裕を持たせて30cm程度に設定すると良い。
ステップS109のマッチング処理を行った後は、マッチング結果に対して、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在するか否かを判定する(ステップS110)。ステップS110において、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在すると判定される場合(Yesの場合)は、ステップS111〜S114の処理を行い、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在しないと判定される場合(Noの場合)は、ステップS115およびS116の処理を行う。
ステップS111においては、推定障害物位置情報の障害物信頼度に対し、予め定められた規定値を加算する。ただし、ステップS111での信頼度の加算演算により、障害物信頼度が最大値を超えた場合は、ステップS112において障害物信頼度を最大値に制限する。これにより、障害物信頼度が大きくなりすぎることを防止でき、検出した障害物が誤検知であった場合に早期に制御対象から消去することができる。また、検知した障害物が移動して検知範囲外に移動した場合でも、早期に制御対象から外すことができる。
次に、ステップS113において、ステップS109で推定障害物位置情報とマッチングされた障害物検出位置情報のマッチングフラグをマッチング済みの状態にする。この処理により、次ループ時のステップS109の処理において、既にマッチングされた障害物検出位置情報が次ループ時の推定障害物位置情報と再度マッチングされることを防ぐ。
次に、障害物位置情報補正部107において、推定障害物位置情報とマッチングされた障害物検出位置情報と、ステップS111およびS112において演算された障害物信頼度とを用いて、推定障害物位置情報の位置補正を行い、補正を行った結果を補正後の新たな障害物位置情報として出力し(ステップS114)、ステップ117に進む。推定障害物位置情報の位置補正には以下の次の数式(6)を用いる。
上記数式(6)において、(xd2、yd2)は障害物位置情報補正部107から出力される障害物位置情報、(xs1、ys1)は、第1の障害物検出部101から障害物位置情報補正部107に入力する障害物検出位置情報、(xd1、yd1)は推定障害物位置演算部105から障害物位置情報補正部107に入力する推定障害物位置情報、cは障害物信頼度演算部106で求めた障害物信頼度である。本実施の形態1では障害物位置情報は、数式(6)に示すように障害物信頼度の大きさにより、障害物検出位置情報に対し推定障害物位置情報の比率を大きくして合成する方法で求めているが、本発明の効果を得るためには必ずしも数式(6)に示す方法に限定されるものではない。
ステップS110において推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在しないと判定された場合は、ステップS115において、推定障害物位置情報の障害物信頼度に対し、予め定められた規定値を減算する。ただし、ステップS115での信頼度の減算演算により、障害物信頼度が最小値、すなわち本実施の形態1では0を下回った場合は、ステップS116において障害物信頼度を最小値以上に制限した後、ステップS117に進む。
なお、以上説明したステップS108〜S116の処理は、車両用走行支援装置100の障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107において実行される。
ステップS117においては、推定障害物位置情報の障害物信頼度が予め定められた既定値より低い場合に、推定障害物位置情報を障害物記憶部109から消去する。具体的には、前述のS107処理およびS115〜S116処理において、障害物信頼度が0になった推定障害物位置情報について、障害物記憶部109から削除する。このステップS117の処理は、車両用走行支援装置100の障害物記憶判定部108において実行される。
このような推定障害物位置マッチング処理ループS1L1は、障害物記憶部109が記憶している1周期前の障害物位置情報のすべてに対して、ステップS105〜S117の処理が行われることで終了し、障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2に入る。
なお、以上説明したステップS111およびS115の処理では、推定障害物位置情報の障害物信頼度に対し、予め定められた規定値を加算または減算して、障害物信頼度を計算していた。しかし、この規定値については、必ずしも定数である必要はなく、車両状態、第1の障害物検出部101および第2の障害物検出部102の出力によって設定される変数であっても良い。例えば、本実施の形態1では第1の障害物検出部101が複数のソナーセンサー2を用いて障害物の位置検出を行っているが、ソナーセンサー2の特性として遠方の障害物ほど反射する超音波の強度が低く、ノイズにより誤検知する可能性が高まる特性がある。この場合、加算および減算の規定値を障害物検出位置情報に基づいて、近接障害物は加算および減算の規定値を大きくし、遠方障害物は加算および減算の規定値を小さくするように変えることも有効である。
障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2は、第1の障害物検出部101が出力する障害物検出位置情報のすべてに対して、ステップS118〜S120の処理を順次行うループである。
まず、ステップS118では、障害物記憶判定部108が、障害物記憶部109に新たな障害物位置情報を追記するための空き領域が存在するかを判断する。ステップ118において、障害物記憶部109に新たな障害物位置情報を追記するための空き領域が存在すると判断された場合(Yesの場合)は、ステップS119およびS120の処理を行う。一方、障害物記憶部109のすべての領域に障害物位置情報が書き込まれており、新たな障害物位置情報を追記するための空き領域が存在しない場合(Noの場合)は、ステップS119およびS120の処理を行わず次のループに進む。ただし、実際には次のループでもステップS118で空き領域が存在しないと判断されるので、ステップS118において一度空き領域が存在しないとの判断がなされると、障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2では、その後は処理を行わずループ処理を終える。
ステップS119においては、障害物位置情報のマッチングフラグが未マッチング状態であるか否かを判断する。ステップS119において障害物位置情報のマッチングフラグが未マッチングと判断される場合(Yesの場合)は、ステップS120の処理を行い、
マッチング済みと判断される場合はステップS120の処理を行わず次のループに進む。
ステップS120においては、マッチングフラグが未マッチング状態の障害物位置情報を、新たに検出された障害物位置情報として障害物記憶部109の空き領域に追記する。この場合、追記する障害物位置情報の信頼度情報は、ステップS111において用いた規定の加算値である加算定数を設定する。
このような障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2は、第1の障害物検出部101が出力する障害物検出位置情報のすべてに対し、ステップS118〜S120の処理を行うことで終了し、ステップS121に進む。なお、ステップS118〜S120処理は、車両用走行支援装置100の障害物記憶判定部108において実行される。
ステップS121では、自車経路演算部110において自車経路を演算する。本実施の形態1では、車両VCが現在のハンドル角および車速を保って進んだ場合に、車両VCが通過する領域と通過しない領域の境界線を自車経路としている。
直進状態、具体的にはハンドル角が±約10度以下の場合には、車両VCはほぼ進行方向に対してまっすぐに進む。このとき前後どちらの方向に進むかは、シフト状態によって異なり、シフト状態がDレンジの場合は車両VCは前方に進み、シフト状態がRレンジの場合は車両VCは後方に進む。この場合、車両VCはまっすぐに進むので、図13に示すように車両VCが通過する領域と通過しない領域の境界線は、車両の左右端の位置が境界線YlおよびYrとなる。本実施の形態1における座標原点である後輪車軸中心を基準とすると、境界線YlおよびYrは以下の数式(7)で表すことができる。
上記数式(7)においてYrは車両VCの右側の境界線、Ylは車両VCの左側の境界線、αは車両VCの横幅の半分の長さを示す。
旋回状態、具体的には直進状態以外の場合には、車両VCが通過する領域と通過しない領域の境界線は、図14に示すような関係となる。図14は車両が左旋回を行う場合の関係図である。左旋回の場合、車両VCで最も内側を走行する部分は図14に示すPiの地点になる。この地点Piが連続して通過する経路が車両VCの左側の境界線となる。車両VCで最も外側を走行する部分は図14に示すPoの地点になる。この地点Poが連続して通過する経路が車両VCの右側の境界線となる。図14では車両VCは点Cを基準に旋回を行う。この場合の旋回半径ρは以下の数式(8)で表される。
上記数式(8)においてρは旋回半径、lは車両VCのホイールベース、δは前輪のタイヤ角を示す。
タイヤ角δとハンドル角θは、以下の数式(9)で表され、ステアリングのラックアンドピニオンギア比Grpによって減速される。
なお、上記数式(8)の導出については、「株式会社山海堂 安部正人著 自動車の運動と制御 ISBN 4-381-08822-0 第3章 車両運動の基礎 3.3節 車両の定常円旋回」に記載されている。本実施の形態1では緊急ブレーキ制御の動作範囲を低車速時に限定するため、数式(8)は車両VCに遠心力が発生せず横滑りが発生しない定常円旋回の場合のハンドル角と旋回半径ρの関係式を用いる。
旋回半径ρに対し、車両VCの左側の境界線の半径を示す内旋回半径ρiと、右側の境界線の半径を示す外旋回半径ρoは、図14のαとβを用いて以下の数式(10)および数式(11)で表される。なお、図14に示すαは車両VCの横幅の半分の長さを、βは車両VCのホイールベースlとフロントオーバーハングを加算した長さである。
これら、旋回半径ρ、内旋回半径ρi、外旋回半径ρoに基づいて、車両VCの左側の境界線を示す数式と右側の境界線を示す数式を求めると、それぞれ以下の数式(12)と数式(13)で表される。
なお、数式(12)および(13)は、車両VCが左旋回を行う場合の車両VCの左側の境界線と右側の境界線を示す数式であり、車両VCが右旋回を行う場合は、車両VCの左側の境界線は以下の数式(14)で表され、右側の境界線は以下の数式(15)で表される。
ステップS121では、このような数式(12)〜(15)に基づいて自車経路を演算する。
次に、上記数式(7)〜(15)に基づいて自車経路演算部110で求めた自車経路と障害物位置情報を用いて、障害物判定部111において障害物接触判定を行う(ステップS122)。具体例として車両VCが後退している場合を示すと、図15のように、複数の障害物位置情報のうち、自車経路内に存在し、かつ障害物信頼度が予め決められた障害物判定しきい値(所定のしきい値)以上のものを衝突障害物、自車経路内に存在しないか、または自車経路内に存在しても障害物信頼度が予め決められた障害物判定しきい値未満のものを非衝突障害物として区別する。障害物判定部111は、入力された障害物位置情報にさらに障害物接触判定結果の情報として衝突障害物および非衝突障害物の情報を加えて出力する。
ステップS122における障害物が自車経路上に存在するかしないかを区別する具体的な判別方法は、まず、車両状態量に基づいて車両VCが直進状態、左旋回、右旋回のいずれかであるかを判断し、直進状態の場合は障害物位置情報が数式(7)の範囲内に収まるか、左旋回の場合は障害物位置情報が数式(12)および(13)の間に収まるか、また右旋回の場合は障害物情報が数式(14)および(15)の間に収まるかを判断することで判別する。
なお、本実施の形態1では記載していないが、自車経路上の接触判定には障害物位置情報だけでなく、障害物大きさ情報を用いて判定しても良い。この場合、障害物位置情報が障害物の中心座標を表しているため、中心座標から障害物大きさ情報分左右に移動させた2点の位置を求め、当該2点が経路内に収まるかどうかで判定する。この場合、2点が経路をまたいで左右に分かれた場合は衝突障害物と判定する。
ここで、フローチャートの説明に戻り、ステップS122で障害物接触判定結果が衝突障害物であると判定された複数の障害物位置情報に対し、衝突時間演算部112において、車両VCが現在の車速のまま走行した場合にそれぞれの障害物に接触するまでの予想時間である衝突時間を演算する(ステップS123)。
衝突時間の演算方法としては、単純な方法であれば障害物と車両VCの直線距離を車速で除算するだけでも良いし、複雑な方法であれば、障害物が車両VCに接触する位置を算出し、障害物の位置と障害物が車両に接触する位置までの実距離、例えば直進時であれば直線距離を、旋回時であれば旋回に応じた円弧距離を、それぞれ求めて車速で除算しても良い。単純な方法と複雑な方法、どちらの方法を用いても本発明の効果に影響はない。最終的にステップS123では、衝突障害物であると判定された複数の障害物位置情報に対し、個別に算出された衝突時間で最も短い値、すなわち最も早期に接触する可能性が高い障害物の衝突時間を最短衝突時間として出力する。なお、車両VCが停車している場合、衝突時間の算出に用いる車速は0になるため、そのまま除算を行うと演算装置12がエラーを起こしてしまう。しかし、停車時は障害物が車両に衝突することはないので、その場合のみすべての障害物位置情報の衝突時間を、予め定めた衝突時間の最大値に設定し、最短衝突時間も上記最大値に設定する。衝突時間に設定される最大値は、ステップS124において目標減速度が0になるような値を設定すると良い。
次に、ステップS124において、目標減速度演算部113が最短衝突時間に基づいて目標減速度を求める。目標減速度の演算方法は様々な方法が考えられているが、一例を示すと、図16に表で示すように、最短衝突時間(秒)の値により3種類の目標減速度(G)を選択するようにすれば良い。すなわち、最短衝突時間tが0≦t≦0.4の範囲にあれば目標減速度を0.8(G)とし、最短衝突時間tが0.4<t≦0.8の範囲にあれば目標減速度を0.4(G)とし、最短衝突時間tが0.8<tの場合は目標減速度を0(G)として制動しない。
また、図5に示した車両用走行支援装置100の機能ブロック図では記載していないが、最短衝突時間による目標減速度とは別に、障害物位置情報に対して車両状態量により可変な判定距離を設定し、障害物位置が判定距離を下回った場合のみ、目標減速度を出力するようにしても良い。また、障害物信頼度により目標減速度の最大値を限定するようにしても良い。このようにすることで例えば信頼度が低ければ小さな目標減速度で車両VCを減速することが可能となり、誤検知の場合のドライバーに対する負荷を低減することができる。
目標減速度演算部113が出力する目標減速度の情報は制動装置114に与えられ、制動装置114は目標減速度演算部113が演算した目標減速度に、車両VCの実減速度が追従するよう油圧をコントロールし、車両VCの減速を行う。
以上説明した実施の形態1の車両用走行支援装置は、第1の障害物検出部101のソナーセンサー2で検出した複数の障害物検出位置情報と、第2の障害物検出部102のカメラ3で検出した障害物大きさ情報とを比較し、単一の障害物であると判定される場合は、ソナーセンサー2で検出した複数の障害物検出位置情報の中心座標を新たな障害物検出位置情報として出力する。このため、複雑な形状の障害物に対しても確実に障害物の検出を行うことができ、かつ、演算装置12で行う障害物検出および追跡処理の演算負荷を削減できる。また、演算装置12内の障害物記憶部109に記憶する障害物位置情報を減らし、演算装置12の価格を下げるだけでなく、少ないメモリー容量でより多くの障害物を記憶し追跡することで、多くの障害物に対し対応可能な、より安全を確保した緊急ブレーキ制御を実行することができる。
なお、本実施の形態1では、障害物回避のため車両VCの制動を行ったが、制動を行う前に別途に備えたスピーカー等(図示せず)により、制動を行う直前にドライバーに対し警告を行うようにしても良い。そのような構成であっても本発明の効果を損なうものではない。
<実施の形態2>
<装置構成>
図17は、本発明に係る実施の形態2の車両用走行支援装置200の構成を示す機能ブロック図である。図17に示すように車両用走行支援装置200の構成は基本的には図5に示した実施の形態1の車両用走行支援装置100の構成と同じであり、同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図17に示す車両用走行支援装置200においては、第2の障害物検出部102で検出された障害物大きさ情報を障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107にも入力し、障害物大きさ情報を用いて、障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107のマッチング判定距離を変更する構成となっている。
<動作>
図8および図9に示すフローチャートを用いて、図17に示す車両用走行支援装置200の動作について説明する。なお、以下では実施の形態1の車両用走行支援装置100の動作と異なるステップS109の処理についてのみ説明する。
実施の形態1の車両用走行支援装置100では、ステップS109の推定障害物位置情報と障害物検出位置情報のマッチング処理において、推定障害物位置マッチング処置ループS1L1で処理中の推定障害物位置情報と、未マッチング状態のすべての障害物検出位置情報を比較し、推定障害物位置情報と障害物検出位置情報の直線距離がマッチング判定距離内、かつ直線距離が最も短かったものを、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報であると判断していた。このマッチング判定距離を実施の形態1では定数としていたが、本実施の形態2では実施の形態1のマッチング判定距離に第2の障害物検出部102で検出した障害物大きさ情報を加算して用いる。
実施の形態2におけるステップS109のマッチング判定距離の算出方法について説明する。実施の形態1の車両用走行支援装置100では、急ブレーキ制御が対応する目標最大車速と第1の障害物検出部101の更新周期とに基づいて、1回の更新周期で障害物が移動すると想定される最大距離をマッチング判定距離に設定していた。しかし、図6を用いて説明したように、第1の障害物検出部101による障害物検出は、複雑な形状の障害物では交点群となって表れ、ある更新周期では図6の交点群Aは検出されない場合がある。そのような場合に残された交点群Bと交点群Cの中心座標をトラッキングし、実施の形態1のマッチング判定距離で制限してしまうと、交点群Aが計測された場合に中心座標が大きく移動し、マッチング判定距離を超えてマッチングできない可能性があった。そこで本実施の形態2では、マッチング判定距離の演算で実施の形態1で求めた値にさらに障害物大きさ情報を加算した値を、マッチング判定距離として使用する。具体的には、実施の形態1で説明した第1の障害物検出部101の1回の更新周期で障害物が移動すると想定される最大距離に、第2の障害物検出部102で検出した障害物大きさ情報に基づいて、障害物の左右方向の大きさを加算した値をマッチング判定距離とする。これにより、障害物が複雑な形状かつ大きな物体であっても、マッチング判定距離による制限を受けにくくなり、精度の良い障害物マッチング処理を行うことができる。
図7を用いて説明したように、複雑な形状の障害物の障害物位置情報は障害物の中心座標を有しており、当該中心座標から障害物大きさ情報分左右に移動させた2点の位置を求めることで障害物の左右方向の大きさを取得できる。
このように、実施の形態2の車両用走行支援装置200においては、マッチング判定距離の演算において実施の形態1で求めた値にさらに障害物大きさ情報を加算した値をマッチング判定距離とするので、障害物が複雑な形状、かつ大きな物体であっても、マッチング判定距離による制限を受けにくくなり、精度の良い障害物マッチング処理を行うことができ、より安全を確保した緊急ブレーキ制御を実行することができる。
<実施の形態3>
<装置構成>
図18は、本発明に係る実施の形態3の車両用走行支援装置300の構成を示す機能ブロック図である。図18に示すように車両用走行支援装置300の構成は基本的には図17に示した実施の形態2の車両用走行支援装置200の構成と同じであり、同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図18に示す車両用走行支援装置300においては、第2の障害物検出部102で検出された障害物大きさ情報を障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107だけでなく障害物記憶判定部108にも入力する構成となっている。
<動作>
図19〜図21に示すフローチャートを用いて、図18に示す車両用走行支援装置300の動作について説明する。なお、図19の記号(A)〜(E)と図20の記号(A)〜(E)とは互いに接続された関係にあり、図20の記号(F)と図21の記号(F)とは互いに接続された関係にある。
まず、図8および図9に示したフローチャートとの相違点について列挙する。図8および図9のステップS103がステップS303となり、推定障害物位置マッチング処理ループS1L1が推定障害物位置マッチング処理ループS3L1となり、ステップS108、S109、S111、S112およびS113が、それぞれステップS308、S309、S311、S312およびS313となり、ステップS313に続いて、ステップS325a、S326、S327、S328およびS329が追加されている。また、ステップ110の判定結果がNoの場合には、ステップS325bの判定を介してステップS115およびS116が続く。そして、障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2に続いて、障害物大きさ情報記憶処理ループS3L3が追加されている。そして、障害物大きさ情報記憶処理ループS3L3にはステップS121〜S124が続いている。
以下、図8および図9に示したフローチャートと相違する処理を中心に説明する。ステップS103においては、第1の障害物検出部101から入力されるすべての障害物検出位置情報のマッチングフラグを未マッチング状態にしていたが、本実施の形態3のステップS303では、第2の障害物検出部102から障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107に入力される障害物大きさ情報のマッチングフラグも未マッチング状態にする。
推定障害物位置マッチング処理ループS3L1は、推定障害物位置マッチング処理ループS1L1に対し、処理条件等は同じであるが、処理内容が異なる。
すなわち、推定障害物位置マッチング処理ループS1L1のステップS108では、推定障害物位置情報が第1の障害物検出部101の検出範囲内であるか否かを判定していたのに対し、本実施の形態3のステップS308では、推定障害物位置情報が第1の障害物検出部101および第2の障害物検出部102の検出範囲内であるか否かを判定する。ステップS308において、推定障害物位置情報が第1の障害物検出部101および第2の障害物検出部102の検出範囲外であると判定される場合(Noの場合)は、後のマッチング処理を行わずステップS117に進む。
なお、ステップS308に変更せずステップ108のままとしても車両用走行支援装置300の動作に問題ない。この場合、第2の障害物検出部102の検出範囲が第1の障害物検出部101の検出範囲より大きい場合、推定障害物位置が第1の障害物検出部101の検出範囲内には含まれず、第2の障害物検出部102の検出範囲内にのみ含まれる状況が発生する。そのような場合、第1の障害物検出部101の検出範囲内に推定障害物が入った場合には障害物のマッチングおよび信頼度の演算が実行されず、効果としては実施の形態2の効果とほぼ同一の効果に制限される。
ステップS309では、ステップS109が推定障害物位置情報と障害物検出位置情報のマッチング処理を行っていたのに対し、推定障害物位置情報と障害物大きさ情報の概略位置とのマッチング処理も行う。処理の順番としては、まず推定障害物位置情報と障害物検出位置情報とのマッチング処理を行い、次に推定障害物位置情報と障害物大きさ情報の概略位置とのマッチング処理を行う。
ステップS110ではステップS309で行ったマッチング結果に対して、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在するか否かを判定する。ステップS110において、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在すると判定される場合(Yesの場合)は、ステップS311〜S114の処理を行い、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物検出位置情報が存在しないと判定される場合(Noの場合)は、ステップS325bに進む。
ステップS311では、ステップS111が推定障害物位置情報の障害物信頼度に対し、予め定められた規定値を加算していたのに対し、第1の障害物信頼度に第1の加算値を規定値として加算するようにしている。これは本実施の形態3では、第1の障害物検出部101と第2の障害物検出部102のそれぞれが検出する障害物位置情報に対し、異なる加算値および異なる最大値を設定するためである。よって、ステップS312においても、ステップS112において障害物信頼度が最大値を超えないように制限していたのに対し、第1の障害物信頼度が第1の最大値を超えないように制限している。
なお、実施の形態1においては、推定障害物位置情報の障害物信頼度は1つだけであったが、本実施の形態3においては推定障害物位置情報の障害物信頼度は、第1の障害物信頼度と第2の障害物信頼度との加算値で与えられるものとし、第1の障害物検出部101が出力する障害物検出位置情報に基づいて上記のように第1の障害物信頼度に第1の加算値を規定値として加算する。また、後述するように、第2の障害物検出部102が出力する障害物大きさ情報(概略位置)に基づいて、第2の障害物信頼度に第2の加算値を規定値として加算する。そして、第1の障害物信頼度および第2の障害物信頼度は、それぞれ異なる範囲が設けられており、第1の障害物信頼度の最大値は第1の最大値、第2の障害物信頼度の最大値は第2の最大値として規定される。なお、第1の障害物信頼度と第2の障害物信頼度の範囲の最小値は、本実施の形態では双方同一の最小値を用いる。本実施の形態3のステップS107では、第1の障害物信頼度および第2の障害物信頼度を共に同一の最小値にする。
また、ステップS313においては、推定障害物位置情報と障害物検出位置情報がマッチングした場合は、マッチングした障害物位置検出情報のマッチングフラグをマッチング済みとする。
ステップS325aおよびS325bは、本実施の形態3において新たに追加された処理であり、ステップS309で行ったマッチング処理で、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物大きさ情報(概略位置)が存在したか否かを判定する。
ステップS325aは、ステップS313の処理の後に実行され、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物大きさ情報(概略位置)が存在した場合(Yesの場合)は、ステップS326〜S114の処理を行い、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物大きさ情報(概略位置)が存在しないと判定される場合(Noの場合)は、ステップS329に進む。
また、ステップS325bにおいて、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物大きさ情報(概略位置)が存在した場合(Yesの場合)は、ステップS326〜S114の処理を行い、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物大きさ情報(概略位置)が存在しないと判定される場合(Noの場合)は、ステップS115およびS116の処理を行う。
ステップS326では、第2の障害物信頼度に第2の加算値を規定値として加算し、ステップS327においては、第2の障害物信頼度が第2の最大値を超えないように制限する。
また、ステップS328においては、推定障害物位置情報と障害物大きさ情報(概略位置)がマッチングした場合は、マッチングした障害物大きさ情報(概略位置)のマッチングフラグをマッチング済みとする。
そして、ステップS329において、第1の障害物信頼度と第2の障害物信頼度を加算して障害物信頼度を算出する。
このように、本実施の形態3の車両用走行支援装置300においては、第1の障害物検出部102と第2の障害物検出部102のそれぞれが検出する障害物位置情報に対して、それぞれの特性に応じた信頼度を設定し、それぞれ異なる加算値および異なる最大値を設定することで、より精度の高い障害物信頼度を得ることができる。
図8および図9を用いて説明したように、障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2では、未マッチング状態の障害物検出位置情報があった場合に、障害物記憶部109の空き領域に障害物検出位置情報を記憶させていた。
本実施の形態3では、障害物検出位置情報記憶処理ループS1L2に続いて障害物大きさ情報記憶処理ループS3L3を設けることで、未マッチング状態の障害物大きさ情報(概略位置)があった場合に、障害物記憶部109の空き領域に障害物大きさ情報(概略位置)を記憶させる。
障害物大きさ情報記憶処理ループS3L3のステップS330では、障害物記憶判定部108が、障害物記憶部109に新たな障害物大きさ情報(概略位置)を追記するための空き領域が存在するかを判断する。ステップ330において、障害物記憶部109に新たな障害物大きさ情報(概略位置)を追記するための空き領域が存在すると判断された場合(Yesの場合)は、ステップS331およびS332の処理を行う。一方、障害物記憶部109のすべての領域に障害物位置情報および障害物大きさ情報(概略位置)が書き込まれており、新たな障害物大きさ情報(概略位置)を追記するための空き領域が存在しない場合(Noの場合)は、ステップS331およびS332の処理を行わず次のループに進む。ただし、実際には次のループでもステップS330で空き領域が存在しないと判断されるので、ステップS330において一度空き領域が存在しないとの判断がなされると、障害物大きさ情報記憶処理ループS3L3では、その後は処理を行わずループ処理を終える。
ステップS331においては、障害物大きさ情報(概略位置)のマッチングフラグが未マッチング状態であるか否かを判断する。ステップS331において障害物大きさ情報(概略位置)のマッチングフラグが未マッチングと判断される場合(Yesの場合)は、ステップS332の処理を行い、マッチング済みと判断される場合はステップS332の処理を行わず次のループに進む。
ステップS332においては、マッチングフラグが未マッチング状態の障害物大きさ情報(概略位置)を、新たに検出された障害物位置情報として障害物記憶部109の空き領域に追記する。この場合、追記する障害物位置情報の信頼度情報は、ステップS326で用いた規定の第2の加算値に設定する。また、本実施の形態3のステップS120では、追記する障害物位置情報の信頼度情報は、ステップS311において用いた、規定の第1の加算値に設定する。
このような障害物大きさ情報記憶処理ループS3L3は、第2の障害物検出部102が出力する障害物大きさ情報(概略位置)のすべてに対し、ステップS330〜S332の処理を行うことで終了し、ステップS121に進む。なお、ステップS330〜S332処理は、車両用走行支援装置300の障害物記憶判定部108において実行される。
以上説明したように、実施の形態3に係る車両用走行支援装置300は、障害物信頼度演算部106および障害物位置情報補正部107において、第1の障害物検出部101が出力する障害物検出位置情報に対応する第1の加算値と、第2の障害物検出部102が出力する障害物大きさ情報に対応する第2の加算値と、第1の障害物検出部101が出力する障害物検出位置情報に対応する第1の最大値と、第2の障害物検出部102が出力する障害物大きさ情報に対応する第2の最大値とを設定する。
そして、推定障害物位置からマッチング判定距離内に、第1の障害物検出部101が出力する障害物位置情報が存在する場合は、第1の最大値の範囲内で障害物信頼度に第1の加算値を加算し、第2の障害物検出部102が出力する障害物大きさ情報(概略位置)が存在する場合は、第2の最大値の範囲内で障害物信頼度に第2の加算値を加算する。そして、障害物記憶判定部108において、障害物記憶部109に空き領域がある場合は、第1の障害物検出部101が出力する障害物検出位置情報と第2の障害物検出部102が出力する障害物大きさ情報(概略位置)を記録する。
これにより、第1の障害物検出部101を構成する複数のソナーセンサー2の検出範囲外にある障害物を、第2の障害物検出部102を構成するカメラ3が検出できた場合には、その情報の信頼度に第2の加算値を加算する。これにより確実に障害物であると認識できた場合にのみ制動制御を行うことが可能となる。また、ソナーセンサー2の検出範囲外にある遠方の障害物を早期に検出できるので、車両VCの速度が速い場合でも十分な余裕を持って制動を行うことが可能な緊急ブレーキ制御を実行することができる。
また、第1の最大値と第2の最大値を分けて管理することで、例えばカメラ3単独で障害物として認識したものについては制動制御を行わないようにすることもできる。具体的には第2の最大値を、ステップS122で使用する障害物判定しきい値未満に設定すれば、カメラ3単独で認識した障害物については最終的な衝突障害物の判定がなされず、少なくともソナーセンサー2による認識がなされなければ最終的な衝突障害物にならないようにすることができる。これにより、カメラ3により検出された障害物の信頼性が低い状況では、確実に障害物の判定ができた場合のみ制動制御を行うようにすることができる。
なお、以上の説明においては、第1の加算値と第2の加算値、および第1の最大値と第2の最大値は、予め定められた規定値としているが、これらの規定値は車両状態により変更するようにしても良いし、別途に設けた環境センサー等を用いて車両VCの周囲の環境に応じて変更するようにしても良い。このように第1の加算値、第2の加算値、第1の最大値および第2の最大値を変更できる構成とすることで、第2の障害物検出部102を構成するカメラ3の検出能力が著しく低下する夜間、特に暗闇等では、例えば環境センサーとしてオートーライト制御等に使用する光センサーを用いるようにすることで、夜間は第2の加算値および第2の最大値を通常より下げ、カメラ3による誤検出を起因とする緊急ブレーキ制御の誤動作を防ぐことができる。
また、光センサーを用いなくても、カメラ3自身が周囲の環境が夜間であると検出できるのであれば、その検出情報に対応させて第2の加算値および第2の最大値を通常より下げるようにしても良い。
また、第1の障害物検出部101を構成するソナーセンサー2が不得意とする状況としては、例えば周囲にソナーセンサー2の検出精度を著しく低下させるような騒音源、例えばソナーセンサー2の発する超音波と周波数が一致するインバーターが近くに存在する場合、また同一周波数のソナーセンサーを搭載した他車両等が近くにある場合は、第1の加算値および第1の最大値を通常より下げることで緊急ブレーキ制御の誤動作を防ぐことができる。なお、車両VCの近傍にソナーセンサー2の検出精度を著しく低下させるような騒音源があるかどうかは、ソナーセンサー2自身で検出することが可能である。
<変形例>
本実施の形態3に係る車両用走行支援装置300の動作について、図19〜図21に示すフローチャートを用いて説明したが、車両用走行支援装置300の動作はこれに限定されるものではなく、例えば、図22〜図24に示すフローチャートに示すような動作も可能である。なお、図22の記号(A)〜(D)と図23の記号(A)〜(D)とは互いに接続された関係にあり、図23の記号(E)と図24の記号(3)とは互いに接続された関係にある。
図19〜図21に示すフローチャートを用いて説明した実施の形態3では、ステップS310〜S313において、推定障害物位置情報にマッチングした障害物検出位置情報に対応する第1の障害物信頼度を求めた後、ステップS325a、S326〜S328において推定障害物位置情報にマッチングした障害物大きさ情報(概位置)に対応する第2の障害物信頼度を求める構成となっていた。
これに対し、図22〜図24に示すフローチャートでは、ステップS310〜S313において、推定障害物位置情報にマッチングした障害物検出位置情報に対応する第1の障害物信頼度を求めた後は第2の障害物信頼度を求めず、ステップS325bにおいて、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物大きさ情報(概略位置)が存在した場合(Yesの場合)に、ステップS326〜S328の処理を行い、ステップS328に続いてステップS329の処理を行う。そして、推定障害物位置情報にマッチングすべき障害物大きさ情報(概略位置)が存在しないと判定される場合(Noの場合)は、ステップS115およびS116の処理を行う構成となっている。
このような構成とすることで、第1の障害物検出部101と第2の障害物検出部102の両方で同一の障害物が検出された場合に、障害物信頼度が上がりすぎることを防ぐことができる。
<実施の形態4>
<装置構成>
図25は、本発明に係る実施の形態4の車両用走行支援装置400の構成を示す機能ブロック図である。図25に示すように車両用走行支援装置400の構成は基本的には図5に示した実施の形態1の車両用走行支援装置100の構成と同じであり、同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図25に示す車両用走行支援装置400においては、第2の障害物検出部102が、障害物大きさ情報および概略位置に加えて物体識別情報を出力する機能を有し、障害物大きさ情報および概略位置は第1の障害物検出部102に入力し、物体識別情報は障害物制御対象判定しきい値演算部115に入力する構成となっている。
障害物制御対象判定しきい値演算部115は新たに加えられた構成であり、入力された物体識別情報に基づいて、障害物制御対象しきい値を演算する。そして障害物判定部111は、障害物判定しきい値の代わりに、障害物制御対象判定しきい値演算部115で演算された障害物制御対象しきい値を用いて障害物が車両VCに接触するかどうかを判定する構成となっている。
実施の形態4における第2の障害物検出部102は、実施の形態1と同様にカメラ3により構成されている。カメラを用いた障害物検出では、近年、機械学習等を用いて、障害物の大きさや概略位置だけではなく、その障害物が何であるか、またどのような種類の物体に分類されるかを認識する物体認識を行うことが可能となっている。本実施の形態4ではこの障害物の物体認識結果を障害物信頼度しきい値の算出に用いる。
第2の障害物検出部102で行う障害物の識別方法としては、例えば、人物、車両、2輪車、その他のように、一般的に走行車両の障害物になりやすい物体を予め大まかに分類した障害物分類を準備し、当該障害物分類にカメラ3で撮影し、上述した方法で物体認識を行った障害物を分類することで障害物が何であるかを識別する方法が挙げられる。
また、上記のような走行車両の障害物になりやすい物体と言った分類以外に、第1の障害物検出部101を構成するソナーセンサー2の検出感度ごとに障害物分類を作成し、機械学習等を用いて識別するようにしても良い。
<動作>
図26および図27に示すフローチャートを用いて、図25に示す車両用走行支援装置400の動作について説明する。なお、図26の記号(A)〜(C)と図27の記号(A)〜(C)とは互いに接続された関係にある。
図26および図27に示すフローチャートは、基本的に図8および図9に示したフローチャートと同じであり、相違点はステップS121において自車経路を求めた後に、障害物制御対象判定しきい値演算部115において障害物識別情報から障害物制御判定しきい値を求めるステップS421の処理を行い、障害物判定部111において実施の形態1で用いていた予め定められた障害物判定しきい値の代わりに、ステップS421で求めた障害物制御判定しきい値を用いて衝突障害物を判定するステップS422の処理を行っている点である。ステップS422で衝突障害物を判定した後は、ステップS123において衝突時間を演算する。
障害物制御対象判定しきい値演算部115におけるステップS421の処理について説明する。障害物識別情報から障害物制御判定しきい値を求めるには、障害物識別情報に対応した障害物制御判定しきい値を、予め障害物識別情報ごとに設定し、記憶しておく。一例としては、障害物識別情報が人物、車両、2輪車、その他のように分類されているのであれば、障害物制御判定しきい値は図28に示す表のように設定すると良い。
すなわち、人物に対しては判定しきい値を30とし、車両に対しては判定しきい値70とし、2輪車に対しては判定しきい値を50とし、その他に対しては判定しきい値を40とする。これは、その他の障害物を基準に、第1の障害物検出部101を構成するソナーセンサー2で検出しやすい物体は障害物制御判定しきい値を大きくし、検出しにくいものは障害物制御判定しきい値を小さく設定することで、障害物として識別しやすくしている。なお、図28に示す例は一例であり、これに限定されるものではない。
以上説明したように、実施の形態4に係る車両用走行支援装置400は、第2の障害物検出部102が、障害物を認識し物体識別情報を出力する機能を有し、物体識別情報に基づいて障害物制御対象しきい値を演算する障害物制御対象判定しきい値演算部115を有している。障害物判定部111では、障害物判定しきい値の代わりに、障害物制御対象しきい値を用いて障害物が車両VCに接触するかどうかを判定している。このように、予め定められた障害物判定しきい値の代わりに、障害物に合わせて設定された障害物制御対象しきい値を用いることで、障害物が変わった場合でも障害物の確定遅れを防ぐことができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。