JP6468427B2 - コイル封入圧粉磁芯 - Google Patents
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Description
本発明において軟磁性金属粉末のFe含有量は98質量%以上であり、前記軟磁性金属粉末の金属粒子内のB含有量が10〜150ppmであることが好ましい。
また本発明において、圧粉体内の結合剤内には窒化ホウ素が混在している、内部構造であることが好ましい。
軟磁性金属圧粉コア10の対向面102には、凹部103、107が形成されている、凹部103は、側面104と対向面102とによって形成される稜線から対向面102の中心に向かって形成されている。凹部107は、側面108と対向面102とによって形成される稜線から対向面102の中心に向かって形成される。
軟磁性金属圧粉コア10は、軟磁性金属粒子に絶縁性を有する結合剤を添加、混合し、しかる後に所定の条件で加圧することにより作製される。そのために、軟磁性金属圧粉コア10において、軟磁性金属粒子は結合剤でコーティングされる。また、結合剤を添加した軟磁性金属粒子を乾燥した後、さらに潤滑剤を添加、混合することが好ましい。
図3は、本実施形態によるコイル封入圧粉磁芯の製造方法を示すフローチャートである。なお、コイル部25を有する導体20はあらかじめ作製しておくものとする。
軟磁性金属粒子と結合剤とをそれぞれ秤量する(ステップS201)。ここで、架橋剤を添加する場合は、ステップS201において秤量しておく。
秤量後、軟磁性金属粒子と結合剤とを混合する(ステップS202)。また、架橋剤を添加する場合は、ステップS202において軟磁性金属粒子と結合剤と架橋剤とを混合する。混合は加圧ニーダー等を用い、好ましくは室温で20〜60分間混合する。
得られた混合物を、好ましくは100〜300℃程度で20〜60分間乾燥する(ステップS203)。
乾燥後の混合物は造粒されて凝集体となっているため、乾燥した混合物を整粒して圧粉磁粉用の軟磁性金属粒子を得る(ステップS204)。整粒はメッシュ等を用いて解砕して得られる。
圧粉磁芯を成形する際に潤滑剤が必要な場合、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子に潤滑剤を添加する(ステップS205)。潤滑剤を添加した後、好ましくは10〜40分間混合する。混合はVミキサー等の混合気を用いることができる。
成形工程で、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子と、埋設するコイル部25とを一体成形することでコイル封入圧粉磁芯を形成する(ステップS206)。ここで、図4を用いて成形工程の詳細を説明する。
図4(A)では、型枠5および下パンチ7により形成される成形型内に、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子を充填する。
図4(B)では、成形型内において、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子の上に導体20を載置する。ここで、導体20を型枠5に固定することが好ましい。これにより、成形中で導体20が動かなくなり安定するため、導体20の位置ばらつきが低減される。また、導体20の位置が所定位置から外れてしまうと、コイル封入圧粉磁芯の外表面にクラックが生じてしまうため、導体20を枠型5の一定位置に固定することでクラックを防ぐことができる。例えば、上部枠型5Aと下部枠型5Bとに分割した枠型5を用い、上部枠型5Aと下部枠型5Bとの間に導体20の端部を挟むことで固定することができる。さらに、導体20のコイル部25の径方向(図2(b)に示すY方向)が、下パンチ7および上パンチ6と平行になるように固定することが好ましい。これによって、加圧成形による導体20の歪みが小さくなり性能劣化を抑えることができる。
図4(C)では、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子を、導体1が埋まるように成形型内に再び充填する。
図4(D)では、上パンチ6を下降することにより、圧粉磁芯用の軟磁性金属粒子と導体20とが積層された方向に圧力を加えて加圧成形し、成形体が得られる。
成形工程(ステップS206)で得られた成形体を150〜300℃の温度で15〜60分間程度の保持を行う(ステップS207)。これにより、成形体中の結合剤が硬化する。
加熱処理した後、防錆処理を行う(ステップS208)。防錆処理は、例えば、エポキシ樹脂等を成形体にスプレーコートすることによって行う。スプレーコートによる膜厚は15μm程度である。スプレーコートを施した後、120〜200℃で10〜60分間熱処理を行うことが望ましい。
上述の通り、本実施形態に係るコイル封入圧粉磁芯では、導体20の一部を融合部(302a、302b)としている。ところが、そもそも導体20に用いられる銅線にはエナメル等の絶縁皮膜が表面に形成されている。そして、キュア工程(ステップS207)では、この絶縁皮膜の直下に銅の酸化皮膜が形成され、さらに、防錆処理工程(ステップS208)で、絶縁皮膜が形成されるので、3層の皮膜が形成されている。この3層の皮膜は次工程のはんだ付けの際に、十分なはんだ溶接が行われない恐れがあるため、3層の皮膜を除去する必要がある。
融合部(302a、302b)に形成した3層の皮膜を除去する方法として、薬品によって腐食除去する方法、機械的に除去する方法またはサンドブラスト方法等が挙げられるが、本実施形態に係るコイル封入圧粉磁芯の融合部(302a、302b)の厚さは5mm以下(0.1〜0.3mm程度)と薄いことから、本実施形態ではサンドブラスト方法を採用する(ステップS209)。
融合部302aと金具30とは、はんだ付けが施されて溶接される(ステップS
210)。その後、つぶし加工がなされ、凹部103に沿って折り曲げ加工が施される。同様に、融合部302bと金具32とは、はんだ付けが施されて溶接された後、つぶし加工がなされ、凹部107に沿って折り曲げ加工が施される。
本発明では、Feを主成分とし、Bを含む原料粉末を準備し、この原料粉末に対して、窒素を含む非酸化雰囲気中で高温熱処理を行う。この高温熱処理により、前記原料粉末粒子中のBが粒子表面まで拡散し、粒子表面部で窒素と反応し、窒化ホウ素を形成する。高温熱処理後、粒子表面部に窒化ホウ素の薄片を有し、粒子内部(表面部の窒化ホウ素を除いた金属部分)に10〜150ppmのBを含有する構造の軟磁性金属粉末となる。
原料粉末粒子の内部に存在するBは、熱処理中に原料粉末の粒子表面の方向へ拡散する。このBの拡散が、結晶粒界の原料粉末の粒子表面方向への移動を容易にするので、結晶粒成長を促進させる効果がある。しかし、原料粉末の粒子内部にFe2Bなどの金属間化合物がある場合は、Fe2Bなどの金属間化合物は結晶粒界に偏在しているので、Bの粒子表面方向への拡散に伴った結晶粒界の移動が阻害されてしまい、結晶粒成長はあまり進まない。軟磁性金属粉末の粒子中のB含有量が10〜150ppmでは、この結晶粒成長の促進効果を確認することができることから、Fe2Bなどの金属間化合物が形成しないごく微量のB含有量において顕著に生じる効果であると考えられる。粒子表面に移動したBは窒化され、新たに窒化ホウ素薄片を形成する。
以上から、原料粉末の粒子内にBを含有させることで、高温に耐える良好な焼結防止皮膜を形成する効果と、結晶粒成長を促進する効果との、二重の効果が得られるため、極めて低保磁力な軟磁性金属粉末を得ることが可能となる。
本実施形態の軟磁性金属粉末は、Bを含む、Feを主成分とする軟磁性金属粉末であって、軟磁性金属粉末の粒子内のB含有量が10〜150ppmであり、軟磁性金属の粒子表面に薄片状の窒化ホウ素を有する。軟磁性金属粉末粒子のB含有量を10〜150ppmとすることによって、保磁力が十分に小さくなる。150ppm以上のBが金属粒子中に存在すると、Fe2Bなどの結晶磁気異方性が大きい強磁性相を形成することと、結晶粒成長を阻害するため、保磁力増大の原因となる。軟磁性金属粉末粒子の母相のbcc相に対して数ppm程度のBは固溶することと、粒子内のB濃度が低くなると拡散速度が低下することなどから、軟磁性金属粉末粒子内のBを10ppm以下とするのは困難である。
軟磁性金属粉末の原料粉末の作製方法は特に制限されないが、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、鋳造粉砕法などの方法を用いることができる。ガスアトマイズ法で製造された原料粉末を用いると、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上の粒子の断面の円形度が0.80以上である軟磁性金属粉末を得ることが容易となり、好ましい。
Bを含有した原料粉末に対して窒素を含む非酸化雰囲気中で高温熱処理を行う。この熱処理により歪が開放され、結晶粒径が増大する。十分に低い保磁力を得るために、熱処理は、窒素を含む非酸化雰囲気中で、昇温速度は5℃/min以下、温度は1000〜1500℃、保持時間は30〜600minとする。この熱処理を行うことで、雰囲気中の窒素と原料粉末中のBが反応して、窒化ホウ素の薄片の皮膜を粒子表面に形成するとともに、原料粉末粒子の結晶粒を粒成長させる。この熱処理を行うことで得られた軟磁性金属粉末は、軟磁性金属粉末を構成する粒子の95%以上が一個の結晶粒からなる、つまり、低保磁力化には理想的である単結晶粒子の状態になる。熱処理温度が1000℃に満たない場合には原料粉末中のBの窒化反応が不十分となり、Fe2Bなどの強磁性相が残留して保磁力が十分に低くならない。さらに、原料粉末の結晶粒成長が不十分となる。熱処理温度が1500℃を超えると、窒化が速やかに進行して反応が完了するとともに、結晶粒成長も速やかに進行して単結晶化するので、温度をそれ以上上げても効果がない。高温熱処理は、窒素を含む非酸化性雰囲気で行う。非酸化性雰囲気で熱処理を行うのは軟磁性金属粉末の酸化を防ぐためである。昇温速度が速すぎると、十分な量の窒化ホウ素が生成される前に原料粉末粒子が焼結する温度に到達し、原料粉末が焼結してしまうため、昇温速度は5℃/min以下とする。
本実施形態で得られた軟磁性金属粉末は低い保磁力を示すことから、これを軟磁性金属圧粉コアに用いた場合には損失が小さくなる。よって、コイル導体と一体化したコイル封入圧粉磁芯としても損失が小さくなる。
本実施形態のコイル封入圧粉磁芯に含まれる窒化ホウ素は、45〜33000ppmであることが好ましい。窒化ホウ素が33000ppmを超えると樹脂の結着力が低下して成形体強度が下がり、割れ欠けが生じやすくなる。また、ボールミルなどを用いて軟磁性金属粉末表面に付着した窒化ホウ素を削り取ることができるが、45ppm未満にするためには膨大な時間を必要となりコスト高になることと、削り取ることで生じる歪によって保磁力が増大することから、45ppmを下限とする。
アトマイズ法で作製した表1に示すそれぞれの原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。この粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下で60minの高温熱処理を行った。得られた軟磁性金属粉末の金属粒子内のB含有量はICPを用いて定量した。また、平均粒径はレーザー回折式粒度測定装置(HELOS、JEOL社製)により測定した数値である。
アトマイズ法で作製した表1に示すそれぞれの原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。この粉末に、表1に示すように、焼結防止剤を1.5質量%添加した後にVミキサーで30分間混合した。次に、原料粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下で60minの高温熱処理を行った。なお、焼結防止剤は平均粒径1μmの窒化ホウ素粉末を用いた。
アトマイズ法で作製した表1に示す原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。原料粉末をアルミナ製のるつぼに装填し、管状炉に入れ、窒素雰囲気下1300℃で60minの高温熱処理を行った。
アトマイズ法で作製した表1に示す原料粉末を準備した。原料粉末は篩い分けによって粒度を調整し、平均粒径を75μmとした。
比較例1−1は、実施例1と同じBを添加した原料粉末を用いたが、熱処理温度が低いために軟磁性金属粉末の粒子内の結晶粒径が大きくならず、十分な保磁力が得られなかった。
比較例1−2〜5は、焼結防止剤を軟磁性金属粉末の粒子表面に付着した方法で行ったが、隣接するいくつかの粒子で固着が発生したため、解砕が必要となり、保磁力は実施例1〜6と比べて十分に小さくならなかった。
比較例1−6は、焼結防止剤またはBの添加を行っていないため、熱処理後の軟磁性金属粉末は粉体全体が焼結され、粉体を得ることができなかった。
比較例1−7は、熱処理を行っていないため保磁力が大きい。
表1から、実施例1−1〜6の損失は比較例1−7に比べて十分に低い。同様に、実施例1−1〜6は透磁率が高く、直流重畳特性が優れることがわかる。また、比較例1−1〜6の損失と比べても、実施例1−1〜6の損失は十分に低いことがわかる。
マッピングデータから、軟磁性金属粉末と空孔とは異なる部位から窒素とBが強く検出され、画像解析から窒素とBの両方が検出された部分は窒化ホウ素と判断した。図6から、軟磁性金属粒子の部位には窒素とBが検出されていない。よって、結合剤に窒化ホウ素が混在していることがわかる。表1の、圧粉体内の窒化ホウ素量はEPMAで検出した値から算出した。
実施例1−1〜5のコイル封入圧粉磁芯についても同様な評価を行ったところ、いずれも結合剤に窒化ホウ素が混在していることが確認できた。比較例2−7のコイル封入圧粉磁芯についても同様な評価を行ったところ、結合剤には窒化ホウ素が確認できなかった。
続いて、表2に示すそれぞれのコイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行った。粒子の断面をランダムに100個観察し、各粒子のWadellの円形度を測定し、円形度が0.80以上である粒子の割合を算出した。結果を表2に示す。
さらに、鏡面研磨した粒子断面をナイタール(エタノール+1%硝酸)でエッチングした後、ランダムに選んだ100個の粒子の結晶粒界を観察し、一個の結晶粒からなる粒子の割合を算出した。結果を表2に示す。
熱処理時間を変更した以外は実施例1−1と同様にして、軟磁性金属粉末を作製した。熱処理温度は1300℃で行った。得られた軟磁性金属粉末について、B含有量と保磁力を測定した。次に、実施例1−1と同様にしてコイル封入圧粉磁芯を作製した。得られたコイル封入圧粉磁芯について、透磁率と損失を評価した。さらに、コイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行い、円形度が0.80以上である粒子の割合と、一個の結晶粒からなる粒子の割合の算出を行った。結果を表3に示す。
原料粉末へのB添加量を変更した以外は実施例3−1と同様にして軟磁性金属粉末を作製した。得られた軟磁性金属粉末について、B含有量と保磁力を測定した。次に、実施例1−1と同様にしてコイル封入圧粉磁芯を作製した。得られたコイル封入圧粉磁芯について、透磁率と損失を評価した。さらに、コイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行い、円形度が0.80以上である粒子の割合と、一個の結晶粒からなる粒子の割合の算出を行った。結果を表4に示す。
実施例3−1と同様にして軟磁性金属粉末を作製したが、熱処理の窒素雰囲気を調整することで、酸素量と窒素量を調整した。得られた軟磁性金属粉末を用いて、実施例1−1と同様にしてコイル封入圧粉磁芯を作製した。得られたコイル封入圧粉磁芯について、透磁率と損失を評価した。さらに、コイル封入圧粉磁芯を冷間埋め込み樹脂で固定し、断面を切り出し、鏡面研磨を行い、円形度が0.80以上である粒子の割合と、一個の結晶粒からなる粒子の割合の算出を行った。結果を表5に示す。なお、酸素量と窒素量は酸素窒素分析装置(LECO社製、TC600)を用いて定量した。
Claims (5)
- Feを主成分とする軟磁性金属粉末と結合剤を混合して加圧した圧粉体と、周囲が絶縁被覆された導体が巻回された、前記圧粉体に埋設されたコイルと、前記コイルから前記圧粉体の外側にそれぞれ引き出される一対のリード線と、 前記圧粉体の外側において前記リード線と接続される端子金具と、を備え、前記軟磁性金属粉末のFe含有量は98質量%以上であり、前記軟磁性金属粉末の金属粒子内のB含有量が10〜150ppmであり、前記圧粉体内の結合剤内には窒化ホウ素が混在する内部構造であり、前記軟磁性金属粉末を構成する粒子のうち、90%以上の粒子の断面の円形度が0.80以上である、ことを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
- 請求項1に記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末を構成する粒子の90%以上が一個の結晶粒からなることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
- 請求項1または2に記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末の粒子内に含まれる酸素量が500ppm以下であることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
- 請求項1〜3のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、軟磁性金属粉末の粒子内に含まれる窒素量が2000ppm以下であることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
- 請求項1〜4のいずれかに記載されたコイル封入圧粉磁芯であって、圧粉体内の窒化ホウ素が45〜33000ppmであることを特徴とするコイル封入圧粉磁芯。
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