請求項1に記載の発明は、貯蔵室の前面開口に併置した左右扉は観音開き式に閉塞され、前記左右扉の少なくともいずれか一方の反枢支側の内面に縦方向に亙る回転仕切体が設けられ、前記回転仕切体が扉ガスケットの吸着面とされる冷蔵庫において、前記回転仕切体は、扉ガスケットの吸着面を形成する樹脂製仕切板と、前記回転仕切体内部に配設された断熱材と、前記仕切板の周縁部および前記断熱材の外面を覆う樹脂製仕切枠体と、前記左右扉の扉ガスケットと対向する回転仕切体内部に設けられた左右磁性体と、を備え、前記左右磁性体の磁力を左右で異なるものとしたことにより、回転仕切体の結露を防止するための加温手段への電力入力を抑制できるとともに、観音開き式扉の開閉における開扉力を適正化することができ、使い勝手を高めることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記左右扉の幅は一方を他方より大きく設定し、幅広側の扉ガスケットに対向する磁性体の磁力は幅狭側の扉ガスケットに対向する磁性体の磁力より大きく設定されたことにより、観音開き式扉の開閉における開扉力を確実に適正化することができ、使い勝手を高めることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の観音開き式扉の開扉状態を示す正面図、図2は同実施の形態1による冷蔵室の閉扉状態での要部を示す断面図、図3は同実施の形態1による図2のA−A断面図、図4は同実施の形態1による冷蔵室の回転仕切体の分解斜視図、図5(a)は同実施の形態1による冷蔵室の断熱材と加温手段の組立て側面図、(b)は図(a)のB−B断面図、(c)は図(a)のC部拡大図、図6は同実施の形態1による冷蔵庫の加温手段の通電率と仕切板の表面温度の関係を説明したグラフである。図7は冷蔵庫の加温手段の具体構成図、図8は冷蔵庫のヒータ各部位におけるヒータ発熱量と仕切板表面温度の関係を説明した図である。
図1において、冷蔵庫100は向かって左側に位置する左側扉102及び向かって右側に位置する右側扉103を有し、図1では左側扉102と右側扉103を開扉させた状態を示している。左側扉102と右側扉103とが設けられている部分は冷蔵貯蔵室105の部分であり、左側扉102の下は製氷室106、さらに下は冷凍貯蔵室107、野菜室108とされている。右側扉103の下、製氷室106の右隣には切替室109が設けられている。
左側扉102と右側扉103はそれぞれヒンジ部により枢支されて左側と右側に開くように構成されており、左側扉102の非枢支側には回転仕切体200を設けている。この回転仕切体200は、左側扉102の開閉動作に応じて回転し、閉扉された状態では、左側扉102、右側扉103の非枢支側を扉ガスケット110を介して閉塞して、冷蔵貯蔵室105内からの冷気漏れを防止している。
ここで、各貯蔵室間には断熱仕切部材(図示せず)が配置されており、この断熱仕切部材の前面には、鋼板製のカバー501、502、503が配設され、各貯蔵室扉の扉ガスケットを介して閉塞し、各貯蔵室からの冷気漏れを防止している。
次に、図2から図5において、回転仕切体200は、扉ガスケット110の吸着面111を形成する仕切板210と、回転仕切体200内部に配設された発泡スチロール製の断熱材220と、仕切板210の周縁部および断熱材220の外面を覆う合成樹脂製の仕切
枠体230と、仕切板210内面中央に配設された加温部分241と接続部分242で構成される加温手段240とから構成されている。また断熱材220と仕切枠体230の間には、熱膨張係数の小さな例えば金属プレートの補強板250が、冷蔵庫の高さ方向に対して回転仕切体200の略全高域に配置される。
仕切板210は、合成樹脂製であり、内面には2つの磁性体211が取り付けられている。磁性体211は、冷蔵庫の高さ方向に対して回転仕切体200の略全高域に構成されており、左側扉102、右側扉103が閉扉した状態において、扉ガスケット110内に構成された磁性体112と対向するように配置されている。本実施の形態では直方体のプラスチックマグネットを使用した。
加温手段240の加温部分241及び磁性体211は、仕切板210と断熱材220の間で圧接して保持されている。また、加温手段240の加温部分241は線状ヒータ等の直線状なもので、磁性体211の間に磁性体211と並行して配置される。加温手段240の接続部分242は発熱しない抵抗値の小さな電線であり、加温部分241とは逆面側で断熱材220と仕切枠体230で圧接保持されている。
次に、図4で回転仕切体200の全体構成について、図5で加温手段240の配置について詳細に説明する。
回転仕切体200は、扉ガスケット110の吸着面111を形成する合成樹脂製の仕切板210と、回転仕切体200内部に配設された発泡スチロール製の断熱材220と、金属製プレートの補強板250と、仕切板210の周縁部および断熱材220の外面を覆う合成樹脂製の仕切枠体230と、断熱材220の仕切板210側に加温部分241を、補強板250側に接続部分242が配置された加温手段240で構成される。回転仕切体200の上部には、冷蔵貯蔵室の天面に取り付けられたガイド113によって、ドアを閉めたときにガイドに沿って回転する機構を考慮した仕切枠体230と仕切板210を連結固定するキャップ213が取り付けてある。本実施の形態では、キャップ213が仕切枠体230と仕切板210を連結固定しているが、補強板250も一緒に連結固定してもよい。この場合、更に強度が増加される。
また、キャップ213は回転仕切体200の上部につけているが、回転仕切体200の下部にも同様の機構をつけてもよい。この場合、回転仕切体200を上下、前後で固定することが出来るため庫内外の熱影響や部品単体の成型等による反りに対する影響を排除することが出来る。
また、仕切板210内面中央に配設された加温部分241と、仕切板210の内面には加温部分241を挟む形で2つの磁性体211が取り付けられている。尚、加温手段240は組立てられた断熱材220の最下部で、加温部分241(ヒータ)と接続部分242(電線)に区切られている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について説明する。
従来の構成では、冷蔵室3の温度影響で冷やされた扉ガスケット11,12が、熱伝導率の高い薄鋼板製の仕切板16に直接接触することで、仕切板16の大気開放部の表面温度が低下する。これを補って露点温度以上にするために、面ヒータ19の容量を大きくする必要がある。本実施の形態の場合、回転仕切体200の扉ガスケット110の吸着面111を形成する仕切板210を合成樹脂製としているので、図6の加温手段の通電率と仕切板の表面温度の関係のグラフが示す様に、同一の通電率の条件では、本実施例の場合の仕切板210の表面温度は、従来の仕切板16の表面温度に対して約3K高くなる。また
、外気条件が30℃、75%のときの露点温度を維持するための通電率は、約10%低減できる。これは、扉ガスケット110が接触する仕切板210を熱伝導率の小さな合成樹脂にしたことで、仕切板210の大気開放部212の温度の低下が抑制されたためである。このように、仕切板210の表面温度が上昇する(庫外温度に近づく)ことは、温度の低い庫内からの熱影響が小さくなっていることを意味する。従来の構成では強度確保のため仕切板16が庫内側へと折り曲げてあるため、ヒータにより暖められた仕切板16の熱は庫内側へと侵入し、庫内の冷却負荷となっていた。仕切板210を熱伝導率の小さな合成樹脂にしたことで庫内への熱侵入が抑制され、冷却負荷も軽減されている。これによって、省エネ効果も得ることが出来る。
加えて、回転仕切体200の内部に、扉ガスケット110内に構成された磁性体112と対向するように、磁性体211を配置することで、扉ガスケット110との吸着という、回転仕切体200の基本機能を確保することができる。
さらに、仕切板210の表面は、1部品で構成されているため、従来の仕切板16が取り付いていたような2部品構成での段差や隙間、部品同士での色調違いが起こることもなく、見栄えもよく外観品位の高い冷蔵庫を提供することが出来る。
本実施例では磁性体211の材料として直方体のプラスチックマグネットを使用した。マグネットは特性上、特定の方向のみ強く働く異方性と、どの方向もほぼ同じような磁化の強さを持つ等方性がある。本実施の形態では等方性に比べ磁力が強い異方性のマグネットを使用している。これは、冬場等の気温が低い場合に、扉ガスケット110が硬化し、ガスケット飛び付き性が劣化し、ガスケット隙が懸念されるが、磁力の強い異方性を用いることで飛び付き性を上げてガスケット隙による冷気漏れを防止できる。
マグネットは幅及び奥行きの寸法が大きくすれば磁力は強くなる。本実施の形態では、扉ガスケット110の内部に配設されているマグネットと同寸法とし、中心線を合わせている。これはマグネットの着磁面はN極とS極があり磁石の反発によって扉ガスケット110が浮いて隙間が出来るのを防止するためである。実際、冷蔵庫の長期使用時や、ドアの取り付けばらつきにより、回転仕切体200と回転仕切体200が取り付けていない側のドアが概ね2mm程度ずれる場合があるが、中心線を合わせ、同寸法としているため、ずれた場合でも追従し反発によるガスケット隙を防止することが出来る。新規で開発設計する場合など、構成上、ずれる寸法が大きくなる可能性がある場合は、マグネットの外形左右寸法は中心線を合わせつつ大きくすると良い。
本実施の形態では、左右のドアがずれる寸法を2mm程度と想定しているが、ずれる範囲が分からない場合は、仕切板210と断熱材220の間で圧接して保持されている内部のマグネットを、仕切板210の断面水平方向に遊びを取ることで、ドアがずれた場合でもマグネットが動きガスケットに追従するようにしても良い。このとき、マグネットは後ろから断熱材220によって圧接保持されているため、仕切板210に対して浮いて隙間が出来ることはない。
また、マグネットの上下端を分割し、マグネット幅をマグネット基準幅に対して大きくとるようにしても良い。特に、上下端はガスケットの4隅でありガスケットが追従し難い傾向にあるためである。
本実施の形態の冷蔵庫において、左側扉と右側扉の扉ガスケット110が吸着する磁性体112の左右での磁力を左<右としている。これは、扉の幅方向の寸法は、左:右で概ね3:7であり、扉の回転軌跡と回転仕切体200が取り付いている左側扉の開扉力が大きいためである。このとき、マグネットの取付け作業で、左右で磁力の違うマグネットを
間違えて取り付けないように、本実施の形態の冷蔵庫においては、マグネットの片側に切り込みを入れつつ、仕切板側も合わせた形状としている。切り込みは、コの字形状でも端面をC面カットしても良い。
また、磁石は着磁面によって磁力が異なるため、表裏が判別できるように例えば、筋や刻印等を入れることで判別しやすくすることも、モノづくり工程でポカよけを行うための有効な手段である。
マグネットの材料はフェライト磁石を用いたが、強力な磁石(例えばネオジム磁石)を用いることで飛び付き性は良化するが、高価となるため製品の目標コストによっては使い分けることも良い。
ガスケットの吸引力は、マグネットの外形寸法や着磁方法、材料を変更することで様々な磁力のマグネットが出来るが、飛び付き性や、開扉力を考慮して適切な磁力のマグネットを使用すると良い。
磁石は熱エネルギーの関係で磁気特性が変化する特性を持っている。更に、本実施の形態での磁石は、プラスチックマグネットを使用しており、ゴムに磁石材料や金属粉末を加えて作られているものであるため、弾性特性を持っている。そのため、マグネットに直接、熱影響を与えないように、本実施の形態では、図3のように、マグネットとヒータを離して配設し、直接接触することがないようにしている。
マグネットとヒータが直接接触することがないように、マグネットとヒータが配設する間にリブ等を設け、機械的構造をもって接触しないようにしても良い。この場合、リブに沿ってマグネット及びヒータを配設することも出来るため、ガイドの役割も担うこととなる。
また、仕切板210と仕切枠体230を合成樹脂製とした場合、熱膨張の影響で例えば庫内温度が低いと仕切枠体230は縮み、庫外温度が高いと仕切板210は伸びる方向となる。従ってこの伸縮差により回転仕切体200は長手側に反る力が働くが、金属製の補強板250が回転仕切体200の略全高域に挿入されているので、反りの影響を排除することができる。これによって、外部からの熱侵入を抑えた高信頼性の扉密閉が確保できる。
次に、補強板250について説明する。
図2のように、補強板250は、回転仕切体200の内部で庫内側に位置し、ヒータ線を中心とした所定円周の外側に配設している。これにより、ヒータの発熱が庫内側へ伝わり難くなるため庫内の冷却負荷量が低減され省エネになる。更に、補強板250の奥面部、即ち庫内側の形状は、仕切枠体230に略並行に配置した形状であり、補強板250の側面部は折り曲げた形状である。即ち、断面コの字状に形成されている。さらに、側面部には穴を開け、仕切枠体230から出した爪に固定する方法を取っている。これにより、庫内外での温度差による熱膨張による影響を抑え、長手方向の反りを抑制している。
本実施の形態では、補強板250の仕切枠体230への固定を爪固定としているが、補強板250の奥面部に貫通穴を設け、仕切枠体230に引っ掛け機構を設けることで、補強板250をスライドさせながら仕切枠体230に固定することも出来る。この場合、貫通穴の数を適当に設定することで作業工数低減と固定強度を最大限に保つことが可能となる。スライド機構とした場合には、補強板250が仕切枠体230に固定されていることが目視で理解できるため、作業の正確性向上と確実性向上ができる。
本実施の形態では、補強板250と回転仕切体200とは熱縁切り構造を備えている。これは、庫内の0〜10℃程度の冷蔵温度帯により、回転仕切体200が冷却され、回転仕切体200から補強板250へと冷熱が伝熱する。この伝熱を抑制する方法として、熱縁切り構造を備える。補強板250と仕切枠体230が面接触すると伝熱しやすくなり、回転仕切体200自体のソリ強度も悪化する。具体的な熱縁切り構造は、仕切枠体230にリブを設け、補強板250との隙間を作っている。リブの高さは、仕切枠体230の板厚の半分以下としており、概ね1mm程度である。さらに、このリブは、補強板250を取り付けるときのガイドにもしており作業性の向上も図っている。さらに、仕切枠体230自身のソリ抑制、ねじれ抑制の効果も担っており、解析等を用いて最適な位置及び形状を選定すると良い。
本実施の形態では、リブ形状としたが、突起として点接触としても良い。この場合、伝熱がさらに抑制されることとなる。
仕切枠体230自身も、部分的に薄肉化を施すことによって、熱縁切り構造とすることができる。また、薄肉よりも貫通穴を開けて穴部に断熱材を施しても良い。これにより、さらに伝熱しにくくなる。
補強板250の奥平面部には、強度に影響し難い部分に穴を設けることで部品自体の軽量化が図れると共に、材料費減によるコストダウンや重量減をすることができる。本実施の形態では、補強板250の平面部に複数個の概ね35×15mmの長穴を設けている。強度解析や実機試作検討を行いながら変形変位の影響が小さい部分の穴抜きを行うことで、強度確保しつつ、約15%の重量減を行うことが出来ている。
また、補強板250は両端を曲げた断面コの字状の形状とし、板厚よりも曲げ寸法高さ(フランジ高さ)を大きくしている。すなわち、補強板250自身で強度を確保した形状としている。具体的には、板厚をt1.0mmとし、フランジ高さを13.0mmと8.5mmとし、左右で高さは違う寸法としている。これは、ドアを開閉するときの回転仕切体200の回転軌跡上、左右での厚みが異なるためである。
補強板250の板厚、フランジ高さは単体強度に影響を及ぼすファクターであり、一般的に、強度(断面2次モーメント)は、(幅の3乗)×高さ/12の曲げ応力の式にて表せる。高さであるフランジ高さを高くすることで、補強板250の強度、即ち、回転仕切体200の強度を高めることができる。しかしながら、フランジ高さを高くすると、ヒータが発熱する熱影響を受けやすくなり、庫内への侵入熱となるため消費電力量が増加する恐れがある。そのため、本実施の形態では、ヒータ線を中心とした所定円周の外側において、補強板250の背面平面部までのヒータ線中心からの距離:Xに対し、フランジまでの距離:Yの関係を、X≦Yとすることで強度と庫内への熱侵入抑制による省エネを図っている。
本実施の形態の回転仕切体200の長さは、概ね800mm程度であるが、今後の冷蔵庫の大容量化に伴う場合や、冷蔵室の大型化によるものなどで、回転仕切体200の長手方向に長くなる場合には、補強板250の強度確保のためフランジ高さを高くしつつ板厚を下げるか、板厚を上げてフランジ高さを低くすると良い。
本実施の形態の補強板250は、表面に亜鉛メッキ処理を施して腐食を抑制している。補強板250は回転仕切体200の内部に配設され、直接、外気に触れることはなく腐食し難いが、亜鉛メッキ処理を表面に施すことで10年を超える長期や、雨水にさらされた場合でも機能を損なわないようにしている。
本実施の形態の補強板250は、回転仕切体200の略全高域に配設し、長手方向の冷蔵貯蔵室の天面側を折り曲げてキャップ213とビス固定している。これにより、反りに対する強度UPと、ドア開閉時に応力がかかるキャップ213と回転仕切体200との嵌合力を上げて変形の抑制を図ることが出来る。キャップ213と補強板250と仕切枠体230とは、ビスで共締めしているため、さらに、作業工数の低減、部品点数の低減によりコストダウンも図っている。
本実施の形態では、回転仕切体200の上部に関して説明したが、下部も補強板250と仕切枠体230とをビス共締めしてもよい。上下部でキャップ213と補強板250と仕切枠体230と仕切板210を纏めてビス固定することで、より強固な嵌合とすることが出来る。
補強板250は、回転仕切体200の略全高域に配設しているが、補強板250の奥平面部の少なくとも一部を、回転仕切体200と冷蔵室ドアとの固定連結部を含む上下端まで配設することで回転仕切体200の強度確保を行っている。
次に、本実施の形態における、加熱用ヒータについて説明する。
図7において、加温手段240は図中一点鎖線右側に長さLを持つ直線状のヒータの加温部分241と、一点鎖線左側に発熱しない電線等の接続部分242で構成される。加温部分241は図4に示す様に、回転仕切体200の略全高域とほぼ同じ長さで、合成樹脂製の仕切板210の中央に配置される。加温部分241はその発熱量すなわちワット密度が可変であり、図7では部位a、b、cと3区分を可変としている。加温部分241のヒータを可変にする具体的な手段としては、線状巻線抵抗線の巻きピッチを変えて抵抗値を可変したり、印刷抵抗の抵抗ペースト成分を可変してシート抵抗としたり、抵抗値の異なる発熱抵抗線を直列接続すれば可能である。本実施の形態では部位を3区分としたが、目的に応じて複数区分とすれば良い。
図8において、ヒータに通電がない場合、仕切板210の表面温度は点線で示す様に、中央部(部位b)では高く、両端に向かうほど温度は低くなる(部位a、c)。これは冷蔵貯蔵室105と扉ガスケット110の密閉性や熱伝導、あるいは冷蔵貯蔵室105内の冷気循環影響により温度分布の不均一が発生してしまうからである。回転仕切体200の上下端はドアを開閉するために、庫内内箱との隙間を設けている。この隙間を、左右のガスケットをあわせることで庫内外の冷気漏れを防止しているが、庫内を循環する冷気が隙間に入りやすくなるため、表面温度が低い傾向にある。次に、ヒータを通電する場合、仕切板210の表面温度が結露領域にあるので、ヒータを通電して各部位を結露境界線以上の温度に昇温させる必要がある。
この時、従来の様な一点鎖線で示す発熱量一定のヒータでは、各部位の温度上昇が一定のため、最も温度の低い部位a、cに発熱量を合わせる必要があり、部位bに対しては一点鎖線の様に不必要な温度上昇が発生してしまう。
一方、本実施の形態では図7に示す様に、ヒータの発熱量を部位により可変にしている。すなわち実線で示す様に、部位bは発熱量を小さくし、部位a、cでは大きくする。こうすることで、ヒータ通電なしの仕切板210の表面温度(点線)は、露点境界線を必要最小限越えた均一な表面温度(実線)にすることができる。これをヒータの発熱量で従来と比較すると、斜線で囲った領域分の発熱量が不要で、その分消費電力量が削減できる。
以上のように、本実施の形態においては、加温手段240の加温部分241を複数に分
割した部位とし、各部位のワット密度を可変としたことにより、冷蔵庫100の回転仕切体200の形状変更等による断熱性能差に対しても、仕切板210の表面温度が均一化されるので、温度分布ばらつきがなくなり不必要な電力入力が削減できる。
加温手段240には、ヒータの加温部分241と電線の接続部分242とを電気的に接続する切替え部分243が部位aの範囲にある。切替え部分243には防水性が要求され、樹脂モールドやチューブ封止するのが一般的で、加温部分241の線形より太くなる。
本実施の形態では、アルミ箔にヒータが溶着されたアルミ箔ヒータを用いている。これによって、仕切板210の表面に対して、ヒータがアルミを介して面接触できる。なお、アルミ無しでヒータを配設しても良い。この場合は、仕切板210に溝等をつけてヒータを圧接して入れ込むことで容易に固定出来るため、材料費低減と工程の簡素化が可能となる。
ヒータが接する仕切板210の部分は、板厚を薄くすれば伝熱がよくなり、ヒータ容量も低減できるため省エネになる。薄くすると表面のヒケ発生等での外観不良や高度な成型精度が必要で生産性が落ちることでのコストUPとなる場合があり、本実施の形態では、ヒータが接する仕切板210の部分の厚みを1mm以上としている。これによって、省エネ効果とコストのバランスを両立させている。
ヒータが接する仕切板210の部分を薄い板や膜等を重ねて3層程度の多重構造としても良い。この場合、成型機で1mm以下の厚みが出来なくとも、ヒータが接する部分のみ、例えば薄い平板を重ねることで伝熱向上することが出来る。
回転仕切体200内部は断熱材として、発泡スチロール製の断熱材220を配設しているが、この発泡密度を30%程度としている。この低密度発泡によって、断熱材自体の強度を確保し、回転仕切体200自体のソリ強度も向上させている。さらに低発泡密度としてもよい。
本実施の形態では、発泡スチロール製の断熱材220を配設しているが、高断熱性能である発泡ウレタンでも良い。この場合、断熱性能を表す熱伝導率が約3倍に向上するため、更なる必要なヒータ容量も低減でき、省エネを推進することが出来る。加えて、成型された発泡スチロールよりも、ウレタンを内部に流し込んで発泡するため周囲の部品との密着によって、回転仕切体全体としての強度を上げることができる。
また、回転仕切体200の内部に真空断熱材を配設しても良い。この場合、断熱性能が更に向上するため、庫内からの熱影響を更に抑制できると共に、真空断熱材が柱の役目をすることで強度も強くなる。
真空断熱材を発泡スチロール製の断熱材220の内部に配設し一体発泡することも出来る。この場合、真空断熱材の周囲は断熱材220で覆われるため真空断熱材の外皮による熱の回り込みも発生せず、断熱性能に優れた構造となり、必要なヒータ容量及び通電率を下げることが出来るため省エネとなる。
仕切板210は合成樹脂製である。本実施の形態では、PS(ポリスチレン)を使用している。ABS材料を用いても良い。この場合、ヒータ線やヒータ線と電線部を接続する溶着部、マグネット等に可塑剤(樹脂を柔らかくする添加剤)が混入されているが、ABS材料を用いることによって、可塑剤の他素材への移行が更にし難くなる。
ABS材料はPS材料に対して高価であるため可塑剤の移行性への配慮としては、アル
ミテープを貼り付けるもしくは覆う事で移行性を無くすことも出来る。
仕切板210の材料として、磁性材を含んだ材料や、表面に磁性塗料を塗布したものを用いても良い。この場合、ガスケットとの密着性及び飛び付き性が向上するため、強固であれば、磁性体211を用いなくてもよい。これにより、断熱材の厚みを増やすことが出来るため更なる省エネと、部品点数の低減で直材及び工数のコストダウンを図ることが出来る。
以上のように、本実施の形態においては、冷蔵貯蔵室105の左右扉の少なくともいずれか一方(ここでは左側扉102)の反枢支側の内面に、縦方向に亙る回転仕切体200を設けて扉ガスケット110の吸着面111を樹脂性の仕切板210とし、仕切板210内側に磁性体211を扉ガスケット110内蔵の磁性体112と対向する位置に配置し、その磁性体211の間に加温手段240の加温部分241を直線的に並行に配置し、仕切板210周縁部および断熱材220の外面を樹脂製の仕切枠体230で覆うと共に、回転仕切体200の内部に金属製の補強板250を配置し、金属製の補強板250は断面コの字状で、仕切枠体230に係止したことにより、庫内外の温度差による回転仕切体200の反りが防止でき、外部からの庫内への熱侵入を抑えることができる。
さらに、仕切板210の表面温度を従来の薄鋼板製よりも高く維持でき、結露防止のための加温手段240の電力入力が少なくなるので、冷蔵庫100の消費電力を削減することができる。
また、加温手段240の接続部分242を断熱材220を介して、加温部分241と逆面に配置するので、加温部分241が直線状に配置され、仕切板210内面に配置する磁性体211の取り付けスペースが確保でき、扉ガスケット110内面の磁性体112と精度良く対向されるので、回転仕切体200と扉ガスケット110との吸着状態の信頼性が確保できる。
さらに、加温手段240は合成樹脂製の仕切板210の内面に配設され、人が触れる部分が合成樹脂のため漏電対応の必要がなく、アース線の廃止で低コスト化を図ることができる。
また、断熱材220と仕切枠体230の間に略全高域に金属製の補強板250を挿入するので、合成樹脂製の仕切板210と仕切枠体230の熱膨張差による回転仕切体200の反りが防止でき、外部からの熱侵入を抑えた高信頼性の扉密閉が確保できる。
(実施の形態2)
図9は本発明の実施の形態2による冷蔵室の閉扉状態での要部を示す断面図、図10は同実施の形態2による図9のD−D断面図、図11は同実施の形態2による冷蔵室の回転仕切体の分解斜視図、図12は同実施の形態2による冷蔵庫の加温手段の具体構成図である。なお、実施の形態1と同一構成については同一符号を付して、異なる部分について説明する。
図9から図12において、加温手段240の加温部分241は、仕切板210に直線的に配置された2本の磁性体211の間に配置され、2本(往復)の加温部分241は並行して磁性体211と接触しないように断熱材220で圧接保持されている。尚、本実施の形態では磁性体211の間に配置する加温部分241を2本としたが、スペースが確保できれば更に本数を増やしてもよい。
また、加温手段240にはヒータの加温部分241と電線の接続部分242を電気的に
接続する切替え部分243が部位aの範囲にある。切替え部分243には防水性が要求され、樹脂モールドやチューブ封止するのが一般的で、加温部分241の線形より太くなる。そのためその横を並走する加温部分241の本数は、他の部位b、cと比べ少ない本数となる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について説明する。
実施の形態1で説明した様に、図12に示す仕切板210の表面温度を全長Lにおいて一定にするように、加温部分241のヒータのワット密度を同様に可変させる。本実施の形態では複数本の加温部分241が配置されているので、実施の形態1よりもさらに低入力で所望の温度上昇を得ることができる。
しかしながら、部位aには切替え部位243a、243bがあり部位cよりも加温部分241の本数が少なくなり、部位cと同じワット密度のヒータでは加温不足となる。そこで部位aのヒータ線は1本に対し部位cは2本であるため、部位aのワット密度を部位cの約2倍にすれば同等の温度上昇を得ることができる。
尚、本実施の形態では部位aに関してワット密度を上げることとしたが、加温部分241のヒータ本数が他の部位に対して少ない任意の部位に対して行えば良い。
以上のように、本実施の形態においては、仕切板210内側の磁性体211の間に加温手段240の加温部分241を複数本直線的に配置するので、狭スペースでの配置が可能で、かつ加温部分241のヒータの単位長さ当たりのワット密度を小さく、あるいは通電率を下げることが可能で、結露防止のための入力電力を低減できる。さらに断熱材220の片側面だけで加温手段240を構成するので、配線作業も簡素化でき工数削減を図ることができる。
また、加温手段240の加温部分241を複数に分割した部位として各部位のワット密度を可変とし、切替え部位243a、243bと平行となる加温部分241の範囲のワット密度を、他の範囲のワット密度よりも大きくしたことにより、切替え部位243a、243b付近の加温部分241の本数減による温度上昇不足分を補え、回転仕切体200の仕切板210の表面温度が均一化され、温度分布ばらつきがなくなりさらに電力入力が低減できる。
(実施の形態3)
図13は本発明の実施の形態3による冷蔵室の回転仕切体の分解斜視図、図14は同実施の形態3による冷蔵庫の加温手段の具体構成図である。なお、実施の形態1および2と同一構成については同一符号を付して、異なる部分について説明する。
図13および14において、加温手段240の接続部分(電線)242と加温部分(ヒータ)241を電気的に接続する切替え部位243a、243bは、回転仕切体200の長手方向の中心に近接して配置される。一方の切替え部位243aの接続部分242側にはワット密度W1で長さL1の部位dが接続され、他方の切替え部位243bには同じワット密度W1と長さL1の部位jが接続される。さらに、部位dにはワット密度W2で長さL2の部位eと、ワット密度W3で長さL3の部位fが順につながる。また、部位jの方にはワット密度W2で長さL2の部位iと、ワット密度W3で長さL3の部位hが順につながり、最終的にワット密度W4で長さL4の部位gが、部位fと部位hに接続され可変ワット密度の閉ループのヒータを構成する。尚、本実施の形態では発熱部位を部位dからjの7か所としたが、切替え部位243a、243bを中心としてワット密度と長さが対称となる任意の部位数にすればよい。
また、切替え部位243a、243bの横を並走する加温部分241の部位gは、他の部位より本数が少ないため、ワット密度を大きくすればよい。すなわち、W4>(W1〜W3)の関係になることが一般的である。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用について説明する。
加温手段240が通電されると、加温部分241の各部位dからjが発熱し、仕切板210の表面を全長Lにおいて所望の温度に安定させる。この時、何らかの作業ミスが発生し切替え部位243aと243bが逆設置、すなわち加温部分241の正しい発熱部位の順d→e→f→g→h→i→jが、間違ってj→i→h→g→f→e→dの順になってしまった場合、もし各部位dからjのワット密度と長さが異なっていれば、逆設置されると、仕切板210の表面温度は大きくばらつき、偏った温度分布となってしまう。
しかし、本実施の形態では切替え部位243aと243bが逆設置されたとしても、加温部分241の全長Lにおけるワット密度と長さの関係は、上下対称なため正規取付と全く変わらない。
以上のように、本実施の形態においては、一方の切替え部位243aに接続される加温部分の部位dのワット密度と長さが、他方の切替え部位243bに接続される加温部分の部位jと同一で、更にワット密度を可変としてそれぞれへ順に接続される加温部分の部位eおよび部位iも同様にワット密度と長さを同一とし、すなわち切替え部位243a、bを中心に対称な発熱分布とした加温手段240において、切替え部位243a、243bを回転仕切体200の長手方向の中心に配置したので、回転仕切体200の組立作業で加温手段240を装着する時に、切替え部位243aと243bを逆にして固定した場合でも、加温部分241の可変としたワット密度と長さの関係は上下対称となり、その回転仕切体200の仕切板210の表面温度も同じになる。よって、作業工程での組立不良がなくせるばかりでなく、加温手段240の向きを確認して装着する工数も大幅に短縮することができる。
(実施の形態4)
図15は本発明の実施の形態4による冷蔵室の閉扉状態での要部を示す断面図である。なお、実施の形態1ないし3と同一構成については同一符号を付して、異なる部分について説明する。
図15において、回転仕切体200の内部には実施の形態1から3と同様に、発泡スチロール製の断熱材220と加温手段240及び背面側には金属性プレートの補強板250が配設してあり、補強板250は、冷蔵庫の高さ方向に対して回転仕切体200の略全高域に配置される。仕切板210は合成樹脂性で構成されており、前面には金属板260が配設されている。
本実施の形態では、仕切板210の上から金属板260を扉ガスケット110の吸着面111に合うように配設しているため、吸着用のマグネットが不要となり、回転仕切体200内部の断熱材を大きくとることができるため、庫内からの冷熱影響を低減でき必要なヒータ容量及び通電率を低減できるため省エネを図ることが出来る。
さらに、金属板260は、回転仕切体200の強度確保用としての補強板250とは異なり、扉ガスケット110の吸着用であるため、厚みも薄くできる。また、端面の折り返しも不要であるため、軽量化と形状の簡略化が図れ、コスト低減も出来る。
なお、金属板260を強度確保用とするならば、厚みUPと端面折り返しを行うことで、補強板250と合わせ、より強固な回転仕切体200としての構成を可能とする。
(実施の形態5)
図16は本発明の実施の形態5による冷蔵室の閉扉状態での要部を示す断面図である。なお、実施の形態1ないし4と同一構成については同一符号を付して、異なる部分について説明する。
図16において、回転仕切体200の内部には実施の形態1から3と同様に、発泡スチロール製の断熱材220が配設され、背面側には金属性プレートの補強板250が配設してある。仕切板210は合成樹脂性で構成されており、仕切板210の前面には加温手段240と金属板260が配設されている。
本実施の形態では、仕切板210の上から加温手段240と金属板260を扉ガスケット110の吸着面111に合うように配設している。これによって、吸着用のマグネットが不要となり、回転仕切体200内部の断熱材を大きくとることができるため、庫内からの冷熱影響を低減でき必要なヒータ容量及び通電率を低減できるため省エネを図ることが出来る。
さらに、加温手段240は回転仕切体200の外形寸法である外枠外に配設されているため、低温となっている冷蔵室3からの熱影響は縁切りによって、影響を受け難い構成となっている。逆もしかりで、加温手段の熱は庫内側へと伝わり難い。加えて、金属板260に直接、加熱された熱を伝えることが出来るため、ヒータの容量及び通電率は少なくてよく、省エネ性に優れている。
さらに、加温手段240と金属板260をアセンブリ化して後から取り付けることで、作業性が向上すると共に作業時間の短縮での工数削減が図れる。
(実施の形態6)
図17は本発明の実施の形態6による冷蔵室の閉扉状態での要部を示す断面図である。なお、実施の形態1ないし5と同一構成については同一符号を付して、異なる部分について説明する。
図17において、回転仕切体200は、扉ガスケット110の吸着面111を形成する仕切板210と、回転仕切体200内部に配設された発泡スチロール製の断熱材220と、仕切板210の周縁部および断熱材220の外面を覆う合成樹脂製の仕切枠体230と、仕切板210内面中央に配設された加温部分241と接続部分242で構成される加温手段240とから構成されている。
本実施の形態では、断熱材220と仕切板210の間に冷蔵庫の高さ方向に対して回転仕切体200の略全高域に配置された補強板250を配設し、仕切板210と補強板250の間に加温手段240を配設している。
補強板250の仕切板210内側に接する面は、扉ガスケット110内に構成された磁性体112と対向するように配置されており、特に、中心線をあわせて幅方向を構成している。これによって、吸着用のマグネットが不要となり、回転仕切体200の強度確保と扉ガスケット110との密着性を確保した上で、構成の簡素化による材料費と金型費、製造工程での工数も低減できる。
なお、本実施の形態では、加温手段240のヒータ配設を1本として記載しているが、
複数本としても良い。
なお、補強板250の扉ガスケット110内に構成された磁性体112と合わさる部分を外観品位の向上のため、仕切板210内側に接するようにしているが、表面に露出し、直接、扉ガスケット110に接するようにしても良い。こうすることで、飛び付き性が向上し、密着性が良くなる。