<第1の実施形態>
図1は、画像信号処理装置の一例である第1の実施形態の撮像装置の概略構成を示す図である。図1において、システム制御部11は、本実施形態の撮像装置全体を制御する。なお、図1では図示を省略しているが、撮像装置は、シャッターボタンなどのような一般的なカメラに設けられている各種操作部も有している。
光学系1は、ズームレンズ、フォーカスレンズ、絞り等を有して構成されており、システム制御部11からの制御信号により、絞りとレンズを駆動して、適切な明るさに設定された被写体像を撮像素子2上に結像させる。なお、本実施形態において、システム制御部11は、ズームレンズを制御することで画角(光学ズーム倍率)を設定可能となされており、また、後述する合成比率生成部7へ画角に対応した光学ズーム情報を出力可能となされている。撮像素子2は、システム制御部11により制御される駆動パルスで駆動され、被写体像を光電変換により電気信号に変換して撮像信号として出力する。現像処理部3は、撮像素子2からの撮像信号を輝度と色差の信号に変換する現像処理を行い、その現像処理後の輝度と色差の画像信号を、フィルタ処理部4へ出力する。また、現像処理部3は、画像信号をメモリ6へも出力する。したがって、メモリ6は、フィルタ処理部4によるフィルタ処理後の画像信号の他、この現像処理部3からの画像信号も保持する。
フィルタ処理部4は、フィルタ係数制御部5から供給されるフィルタ係数を用い、現像処理部3からの画像信号に対してフィルタ処理を行う。フィルタ係数制御部5は、システム制御部11による制御の下、フィルタ処理の際に使用されるフィルタ係数をフィルタ処理部4へ出力する。
フィルタ処理部4によるフィルタ処理の詳細については後述する。フィルタ処理部4でフィルタ処理された画像信号は、メモリ6に保持された後、読み出されて合成部8へ出力される。
合成部8は、システム制御部11による制御の下、後述するようにメモリ6から読み出す画素位置を制御し、そのメモリ6から読み出された画素を加算することにより画像を合成する。この加算による合成で形成された画像は、フィルタ処理部4でのフィルタ処理によるボケ画像となる。
主被写体判別部9は、現像処理部3から出力されてメモリ6に保持されている画像信号より、主被写体の画像部分(以下、主被写体画像とする。)を検出する。画像信号から主被写体画像を検出する手法については種々の手法が知られており、本実施形態ではそれらの何れを用いてもよい。そして、主被写体判別部9は、例えば、画像信号における画像の中央に近く、サイズが大きい被写体画像部分を、主被写体画像と判別して、その主被写体画像のサイズと画像信号の画像内における位置情報とを背景被写体合成部10へ出力する。
背景被写体合成部10は、主被写体判別部9により検出された主被写体画像のサイズと位置情報に基づき、現像処理部3から出力されてメモリ6に保持された画像と合成部8からのボケ画像とを合成する。具体的には、背景被写体合成部10は、主被写体画像のサイズと位置情報に基づいて、メモリ6から読み出された画像信号より、主被写体画像を抜き出す。そして、背景被写体合成部10は、その抜き出した主被写体画像を、合成部8から供給される画像の同位置、すなわち主被写体画像の位置情報に応じた位置へ、上書きにより合成する。
ここで、合成部8からの画像は、画像全体にぼかし処理が施された画像である。一方、背景被写体合成部10への入力画像は、現像処理部3の出力画像であり、ぼかし処理されていない鮮鋭な画像の信号である。そして、背景被写体合成部10は、その画像から被写体画像を抜き出して、合成部8からのぼかし画像へ上書きにより合成する。これにより、背景被写体合成部10から出力される画像は、背景がぼけている一方で被写体画像が鮮鋭で目立った画像となる。
背景被写体合成部10による背景と被写体画像の合成処理後の画像信号は、例えば図示しない記録部へ送られて、例えばSDカードに代表される記録媒体等に記録され、また例えば図示しない表示部へ送られて画面上に表示等される。
次に、フィルタ処理部4、メモリ6、合成部8によるボケ画像の生成処理の際の基本的な処理の流れについて説明する。一般に、ボケ画像を生成するためのフィルタ処理回路は、ぼかし量が少なくてよい場合には比較的小さい回路規模で実現できるが、ぼかし量を多くする場合には回路規模が大きくなる。本実施形態では、回路規模を大きくせずにぼかし量が多いボケ画像を形成するために、フィルタの畳み込み演算を分割処理(以下、分割フィルタ処理と呼ぶ。)する。
本実施形態の撮像装置は、フィルタ合成手段の一例として、分割フィルタ処理を行うフィルタ処理部4と、フィルタ処理部4によるフィルタ処理後の複数の画像を保持するメモリ6と、メモリ6に保持された各画像を画素加算にて合成する合成部8とを有している。そして、本実施形態の撮像装置は、これらの構成により、タップ数の少ない、小さい回路規模のフィルタで、タップ数の多い大規模なフィルタと等価なぼかし量が多いボケ画像を生成可能となっている。
ここでは、一例として、図2、図3を用い、水平,垂直方向が複数タップ(例えば水平、垂直方向9タップ)の空間フィルタの場合の分割フィルタ処理について説明する。なお、フィルタ処理部4のタップ数は一例であり、9タップに限定されるものではない。
図2は、水平方向9タップ、垂直方向9タップの空間フィルタのフィルタ係数の一例を示す図である。図2中のk0〜k8はフィルタ係数を示し、空間フィルタの水平方向と垂直方向をそれぞれ3タップずつに分離したときのそれぞれの位置のフィルタ係数を示している。図3は、画像内において(x,y)座標が(i,j)で表される、或る着目画素位置(i,j)における水平方向9タップ、垂直方向9タップの空間フィルタの参照範囲を示す図である。そして、フィルタ処理は、例えば式(1)に示すような演算式を用いて行われる。
ここで、式(1)及び後述の各式中の「x」,「y」は図3に示す画像の各画素の座標、「i」は画像内の着目画素の水平アドレス(x座標)、「j」は画像内の着目画素の垂直アドレス(y座標)、「a」はフィルタ係数、「I」は画素値を示している。そして、式(1)の「p」は、図3に示すように着目画素位置(i,j)に対してフィルタをかけた結果の画像となる。
次に、図4のフローチャートを用いて、畳み込み演算を水平方向3タップ、垂直方向3タップずつに分割した分割フィルタ処理と、そのフィルタ処理後の画像の画素加算による合成処理の基本的な流れについて説明する。なお、詳細については後述するが、本実施形態の撮像装置は、動画像に対するフィルタ処理の際には、図4のフローチャートとは若干異なる処理を行っている。図4のフローチャートは、分割フィルタ処理と合成処理の基本的な流れ説明するために、一枚の画像を分割フィルタ処理する場合を例に挙げている。また、図4の説明では、システム制御部11が、フィルタ係数制御部5からフィルタ係数の出力制御によるフィルタ処理部4の制御、メモリ6の書き込みと読み出しの制御、合成部8における画素加算による合成の制御を行うことにした例を挙げている。
図4のフローチャートにおいて、システム制御部11は、先ずステップS100の処理として、変数nに初期値の「0」をセットする。変数nは、分割フィルタの分割数に対応している。本実施形態の場合、畳み込み演算を水平方向3タップ、垂直方向3タップずつに分割しており、フィルタ分割数が9分割となされているため、変数nは「0」〜「8」の値となる。ステップS100の後、システム制御部11は、処理をステップS101へ進める。
ステップS101では、システム制御部11は、現像処理部3からの画像信号をフィルタ処理部4へ入力させる。このステップS101の後、システム制御部11は、処理をステップS102へ進める。
ステップS102では、システム制御部11は、フィルタ係数制御部5を制御してフィルタ処理部4へフィルタ係数を出力させる。このときのフィルタ処理部4は、例えば式(2)に示すようなフィルタ演算を行ってフィルタ処理後の第1の画像p0を生成する。ここで、式(2)の演算は、画像信号の画像全体に対して行われるものであり、したがって第1の画像p0は、図2における左上の各フィルタ係数k0を用いて画像全体にフィルタを掛けた画像信号ということになる。
ステップS102の後、システム制御部11は、処理をステップS103へ進める。ステップS103では、システム制御部11は、第1の画像p0の信号をメモリ6に保持させる。ステップS103の後、システム制御部11は、処理をステップS104へ進める。
ステップS104では、システム制御部11は、全分割数のフィルタ演算が完了したか否かを判断する。具体的には、本実施形態では、変数nが「0」〜「8」の値を取り得るため、システム制御部11は、変数nが「8」になっている場合に全分割数の演算が完了したと判断する。ステップS104において、システム制御部11は、全分割数のフィルタ演算が完了していないと判断した場合には処理をステップS105へ進め、一方、完了したと判断した場合には処理をステップS106へ進める。
ステップS105では、システム制御部11は、次の分割位置のフィルタ演算に移るために、変数nに「n+1」をセットする。このときの変数nはステップS100で設定された初期値の「0」であるため、ステップS105では変数nが「1」に設定されることになる。ステップS105の後、システム制御部11は、ステップS101へ処理を戻す。
ステップS101に戻ると、システム制御部11は、現像処理部3からの画像信号をフィルタ処理部4へ入力させる。ここでは、説明を簡略にするため、このときフィルタ処理部4へ入力される画像は、前回の入力画像と同じ画像であるとする。次のステップS102の処理に進むと、システム制御部11は、フィルタ係数制御部5を制御してフィルタ処理部4へフィルタ係数を出力させる。このときのフィルタ処理部4は、例えば式(3)に示すようなフィルタ演算を行って第2の画像p1を生成する。式(3)の演算は、画像信号の画像全体に対して行われるものであり、したがって第2の画像p1は、図2における中央上の各フィルタ係数k1を用いて画像全体にフィルタを掛けた画像信号ということになる。
次のステップS103の処理に進むと、システム制御部11は、第2の画像p1の信号をメモリ6に保持させる。次のステップS104において、システム制御部11は、全分割数のフィルタ演算が完了したか否かを判断する。ステップS104において、システム制御部11は、全分割数のフィルタ演算が完了していないと判断した場合には処理をステップS105へ進め、一方、完了したと判断した場合には処理をステップS106へ進める。このときのシステム制御部11は、ステップS105へ処理を進め、変数nを「2」に設定して、ステップS101へ処理を戻す。
以下同様に、システム制御部11は、ステップS101からS104、さらにステップS104からステップS105を経てステップS101へ戻る処理を、ステップS104で全分割数のフィルタ演算が完了したと判断されるまで繰り返す。本実施形態では、前述のようにフィルタ分割数が9分割であるため、変数の「n」は「0」から「8」までインクリメントされていくことになる。ステップS105で変数nが「2」に設定された後、前述の処理が行われて順次変数nがインクリメントされた場合、ステップS102では、式(4)〜式(10)に示す演算がフィルタ処理部4で行われることになる。これら式(4)〜式(10)に示すフィルタ演算により、フィルタ処理部4からは、第3の画像p2〜第9の画像p8の信号が出力されることになる。また、ステップS103では、それら第3の画像p2〜第9の画像p8の信号がメモリ6に保持される。
そして、ステップS104にて全分割数の演算が完了したと判断して処理をステップS106へ進めると、システム制御部11は、合成部8を制御して、ここまでで計算されてメモリ6に保持された第1の画像p0〜第9の画像p8の信号を読み出させる。このときの合成部8は、システム制御部11による制御の下、メモリ6から読み出す各画像の画素位置を制御して、そのメモリ6から所定の位置(後述する参照位置)の各画素を読み出す。ステップS106の後、システム制御部11は、処理をステップS107へ進める。
ステップS107では、システム制御部11は、合成部8を制御して、メモリ6から第1の画像p0〜第9の画像p8からそれぞれ画素を読み出させて加算により合成させる。すなわち、このときの合成部8は、システム制御部11による制御の下、メモリ6から後述するように第1の画像p0〜第9の画像p8の画素を読み出し、それら読み出した各画素を加算することで画像を合成する。合成部8での画素加算による合成で形成された画像信号は、分割フィルタ処理によるぼかし処理後のボケ画像の信号となる。このフィルタ処理後のボケ画像の信号は、後述する背景被写体合成部10へ送られる。
図5(a)〜図5(j)を用いて、フィルタ処理部4による分割フィルタ処理と合成部8で行われる第1の画像p0〜第9の画像p8の画素加算による合成動作について説明する。図5(a)〜図5(j)において、位置(i,j)の画素が着目画素であり、領域1000は着目画素に対して水平方向9タップで垂直方向9タップの空間フィルタが参照する範囲を示している。図5(a)の領域1001内の中心画素の位置は着目画素に対する画像上の参照位置を示している。同様に、図5(b)〜図5(i)の各領域1002〜1009の各中心画素の位置は、それぞれ着目画素に対する画像上の参照位置を示している。そして、図5(a)は第1の画像p0における着目画素及び空間フィルタの参照範囲と着目画素に対する画像上の参照位置を示した図である。同様に、図5(b)は第2の画像p1、図5(c)は第3の画像p2、図5(d)は第4の画像p3、図5(e)は第5の画像p4についての図である。図5(f)は第6の画像p5、図5(g)は第7の画像p6、図5(h)は第8の画像p7、図5(i)は第9の画像p8についての図である。図5(j)は、例えば第5の画像p4を例に挙げ、他の第1〜第4,第6〜第9の画像p0〜p3,p4〜p8における各領域1001〜1009を、第5の画像p4上に並べた図である。この図5(j)のように、第1〜第9の画像p0〜p8においてフィルタ処理の際にそれぞれ参照される範囲の大きさは同じになっている。
ここで、水平,垂直方向9タップの空間フィルタと等価な効果を得るためには、着目画素位置(i,j)に対し、第1の画像p0からは位置(i−3,j−3)を中心とした水平,垂直方向3タップの空間フィルタをかけた画素が必要となる。また、第2の画像p1からは位置(i,j−3)、第3の画像p2からは位置(i+3,j−3)、第4の画像p3からは位置(i−3,j)をそれぞれ中心とした水平,垂直方向3タップの空間フィルタをかけた画素が必要となる。さらに、第5の画像p4からは位置(i,j)、第6の画像p5からは位置(i+3,j)、第7の画像p6からは位置(i−3,j+3)をそれぞれ中心とした水平,垂直方向3タップの空間フィルタをかけた画素が必要となる。同様に、第8の画像p7からは位置(i,j+3)、第9の画像p8からは位置(i+3,j+3)をそれぞれ中心とした水平方,垂直方向3タップの空間フィルタをかけた画素が必要となる。合成部8は、それら第1の画像p0〜第9の画像p8において着目画素位置に対応した位置を中心とした水平,垂直方向3タップの空間フィルタをかけた各画素値を取得して加算することによる合成処理を行う。
以上のように、フィルタ処理部4は、畳み込み演算を水平,垂直方向3タップずつに分割してフィルタ処理して第1〜第9の画像p0〜p8を生成し、合成部8は、それら第1〜第9の画像p0〜p8においてそれぞれ着目画素に対応した各画素値を加算する。これにより、回路規模は小さいながらも水平方向9タップ、垂直方向9タップの空間フィルタをかけた場合と同じ画像信号が得られることになる。
ところで、図2〜図5では、1枚の画像に対して、フィルタ係数を変えながら分割数に対応した回数のフィルタ処理を施し、それら分割数に対応した各フィルタ処理後の第1〜第9の画像を加算して合成する例を挙げて分割フィルタの概要を説明している。このように、1枚の画像に対して分割数に対応した回数のフィルタ処理を行う場合、最終結果のボケ画像が得られるまでの処理時間が長くなる。したがって、例えば動画像に対して分割フィルタ処理を適用する場合には、コストと処理時間の問題を解決しなければならない。すなわち、動画像の1フレームの画像に対して分割数に対応した回数のフィルタ処理を行うためには、高速処理が可能な高価な演算装置が必要になり、一方、処理速度が遅い安価な演算装置では1フレームの時間内に処理が終わらない虞がある。
ここで、動画像に対する分割フィルタ処理の一例として、図6に示すように、動画像の撮像がなされてその撮像順に入力される各フレームに対して、それぞれ分割フィルタ処理の一つの係数を用いたフィルタ処理を順に施すことを考えてみることにする。図6において、入力画像N−4,N−3,・・・,N+5,N+6は、動画像の撮像順に現像処理部3から出力されてフィルタ処理部4へ入力される各フレーム画像であり、それら各画像が時間順に並べられている。フィルタ係数k0,k1,・・・,k8は、前述の図5における分割フィルタの各係数である。フレーム画像p0aは、入力画像N−4のフレーム画像に対してフィルタ係数k0によるフィルタ処理がなされた後の画像である。同様に、フレーム画像p1a,・・・,p7a,p8aは、それぞれ対応した入力画像N−3,・・・,N+3,N+4のフレーム画像に対して、それぞれ対応したフィルタ係数k1,・・・,k7,k8による各フィルタ処理がなされた後の画像である。フィルタ係数k8によるフィルタ処理が行われた場合、それ以降の各フレームに対しては、前述同様に、フィルタ係数k0〜k8の各フィルタ係数によるフィルタ処理が行われることになる。図6の例では、入力画像N+5は、フィルタ係数k0によるフィルタ処理がなされることでフレーム画像p9aとなり、入力画像N+6はフィルタ係数k1によるフィルタ処理がなされることでフレーム画像p10aとなる。
そして、分割数に対応した所定フレーム数(9フレーム分)のフレーム画像が順次1フレームずつずらされながら、合成部8において前述のような画素加算により合成される。合成部8は、フレーム画像p0a〜p8aの9フレームに対する合成処理が終わると、次はフレーム画像p1a〜p9aの9フレームを、さらに次はフレーム画像p2a〜p10aのように、順次1フレームずつずらされながら合成処理する。また、9フレームの画像のうち、合成の際に時間的に基準となるフレームを基準フレームと呼び、それ以外を合成側フレームと呼ぶとすると、合成部8は、基準フレーム画像の着目画素に対して、合成側フレーム画像から得られた画素を加算する。なお、基準フレームは、一例として、時間順に並んだ9フレームのうち時間的に中央のフレームにすることができる。図6の例の場合は、入力画像Nのフレーム画像が基準フレーム画像となる。この図6に示したように、動画像の各フレームに対して、それぞれ分割フィルタ処理の一つの係数を用いたフィルタ処理を行うことで、処理速度が遅い安価な演算装置を用いた場合でも、動画像のボケ画像を生成できるようになると考えられる。
ところで、例えば、ズーム光学系により画角を変えながら動画像撮像が行われ、それぞれ異なる画角で撮像されたフレーム画像がフィルタ処理部4へ入力されたような場合、ぼかしが不十分になったり、逆にぼかし過ぎになったりすることがある。すなわち、異なった画角で撮像されたフレーム画像を用いて図6のようなフィルタ処理が行われた場合、例えば、合成側フレーム画像のフィルタ処理が、基準フレーム画像に対して広い又は狭い参照範囲によるフィルタ処理になってしまうことが考えられる。また、フレーム画像の画角が異なる場合、畳み込み演算の重心位置がずれてしまうことがある。これらの場合、ぼかしが不十分なボケ画像が生成されたり、逆に、ぼかし過ぎたボケ画像が生成されたりする虞がある。
以下、図7を参照して、ズーム光学系により画角を変えながら撮像された動画像の各フレーム画像を用い、図6のようなフィルタ処理と合成処理が行われた場合の参照範囲と、畳み込み演算の重心位置のズレについて説明する。
図7(a)から図7(i)は、画角を徐々に狭める(ズーム倍率を徐々に上げる)ズームインがなされながら撮像された動画像の各フレームの例を示している。図7(a)〜図7(i)において、位置(i,j)の画素が着目画素であり、領域2000は各画像上で着目画素に対して水平方向9タップ、垂直方向9タップの空間フィルタが参照する範囲を示している。領域2001〜2009の各中心画素の位置は、着目画素に対する画像上の参照位置を示している。また、図7(a)は、第1のフレーム画像p0aにおける着目画素及び空間フィルタの参照範囲と着目画素に対する画像上の参照位置を示した図である。以下同様に、図7(b)は第2のフレーム画像p1a、図7(c)は第3のフレーム画像p2a、図7(d)は第4のフレーム画像p3a、図7(e)は第5のフレーム画像p4aについての図である。図7(f)は第6のフレーム画像p5a、図7(g)は第7のフレーム画像p6a、図7(h)は第8のフレーム画像p7a、図7(i)は第9のフレーム画像p8aについての図である。図7(j)は、第5のフレーム画像p4aを基準フレーム画像とし、他の合成側フレーム画像p0a〜p3a,p5a〜p8aを基準フレーム画像の画角に合わせた場合の領域2001〜2009を、基準フレーム画像上に並べた図である。
この図7(j)のように、各フレーム画像の画角が異なっている場合、基準フレーム画像に対する合成側フレーム画像の各領域2001〜2009の大きさは、画角(ズーム倍率)によって変わっていることがわかる。言い換えると、基準フレームと合成側フレームが同画角である場合には、各領域の大きさと位置は、図5(j)の各領域1001〜1009のようになるが、各フレームの画角が異なっている場合には、図7(j)の領域2001〜2009ようになる。すなわち、この図7(j)のような場合、ぼかし具合が変わってしまうことになる。
このようなことから、本実施形態の撮像装置においては、合成制御手段の一例である合成比率生成部7により、画角(ズーム倍率)に応じた合成比率を生成し、その合成比率に応じて合成部8での合成処理を制御する。これにより、本実施形態の撮像装置は、動画像の撮像の際に光学ズームの倍率変更により画角が異なった場合におけるぼかし具合の変動を少なくしている。
以下、合成比率生成部7による合成部8の合成処理の制御動作について説明する。例えば、基準フレーム画像に対して合成側フレーム画像の方の画角が狭い(ズーム倍率が高い)場合、図7(j)の領域2009のように、参照範囲が狭くなってしまうため、ぼかし量が少なくなってしまう。一方、基準フレームに対して合成側フレームの方の画角が広い(ズーム倍率が低い)場合には、図7(j)の領域2001のように、参照範囲が広くなってしまうため、ぼかし過ぎになってしまう。
そこで、本実施形態では、システム制御部11は、合成部8において合成処理が行われるとき、各フレーム画像の画角(ズームレンズに設定したズーム倍率)に対応した光学ズーム情報を、合成比率生成部7へ送る。
合成比率生成部7は、各フレームにおける光学ズーム情報を参照し、基準フレームに対して合成側フレームの方の画角が狭い(ズーム倍率が高い)場合には、図8に示すように、合成側フレームの画素に対する重みを重くするような合成比率情報を合成部8へ送る。これにより、合成部8では、基準フレーム画像に合成側フレーム画像を合成する際に、合成側フレーム画像の画素に対する重みが重くなされた合成が行われる。すなわちこの場合、合成後のフレーム画像は、基準フレーム画像に対して合成側フレーム画像の画素の比率が高められることになり、ぼかし量が多くなる。
一方、合成比率生成部7は、基準フレームに対して合成側フレームの方の画角が広い(ズーム倍率が低い)場合には、図8に示すように、合成側フレーム画像の画素に対する重みを軽くするような合成比率情報を合成部8へ送る。これにより、合成部8では、基準フレーム画像に合成側フレーム画像を合成する際、合成側フレーム画像の画素に対する重みが軽くなされた合成が行われる。すなわちこの場合、合成後のフレーム画像は、合成側フレーム画像に対して基準フレーム画像の画素の比率が高められることになり、ぼかし過ぎを防ぐことができる。
このように、本実施形態の撮像装置においては、光学ズームの倍率変更により各フレームの画角が異なっている場合、合成比率(重み)が変えられることで、ぼかし具合のバランスがとれるようになり、ぼかし具合の変動を軽減することが可能となる。
次に、図9には、フィルタ処理部4において動画像の各フレーム画像に対して図6のようなフィルタ処理が行われ、合成部8において合成比率に応じた合成処理が行われる際のフローチャートを示す。図9のフローチャートは、システム制御部11が、フィルタ処理部4の制御、メモリ6の制御、合成比率生成部7における合成比率生成の制御、合成部8の合成制御を行うことにより実行される。
図9において、システム制御部11は、先ずステップS200の処理として、変数nに初期値の「0」をセットする。変数nは、分割フィルタの分割数に対応しており、これは言い換えると図6で説明した所定フレーム数に対応している。図9の場合、フィルタ分割数は9分割で、9フレームの画像が合成されるため、変数nは「0」〜「8」の値となる。ステップS200の後、システム制御部11は、処理をステップS201へ進める。
ステップS201では、システム制御部11は、現像処理部3から例えば1フレーム目のフレーム画像の信号をフィルタ処理部4へ入力させる。このステップS201の後、システム制御部11は、処理をステップS202へ進める。
ステップS202では、システム制御部11は、フィルタ係数制御部5を制御してフィルタ処理部4へフィルタ係数を出力させ、前述の式(2)のフィルタ演算を行って、1フレーム目の画像信号にフィルタ処理を施して第1のフレーム画像p0aを生成する。この場合の式(2)の演算は、フレーム画像全体に対して行われるものである。第1のフレーム画像p0aは、図6におけるフィルタ係数k0を用いてフレーム画像全体にフィルタが掛けられた画像となる。
ステップS202の後、システム制御部11は、処理をステップS203へ進める。ステップS203では、システム制御部11は、第1のフレーム画像p0aの信号をメモリ6に保持させる。ステップS203の後、システム制御部11は、処理をステップS204へ進める。
ステップS204では、システム制御部11は、全分割数に対応した所定フレーム数のフィルタ演算が完了したか否かを判断する。具体的には、本実施形態では、9分割に対応した9フレーム分のフィルタ演算が行われ、変数nが「0」〜「8」の値を取り得るため、システム制御部11は、変数nが「8」になっている場合に演算が完了したと判断する。ステップS204において、システム制御部11は、全分割数に対応した各フレーム画像のフィルタ演算が完了していないと判断した場合には処理をステップS205へ進め、一方、完了したと判断した場合には処理をステップS206へ進める。
ステップS205では、システム制御部11は、次の2フレーム目のフィルタ演算に移るために、変数nに「n+1」をセットする。このときの変数nはステップS200で設定された初期値の「0」であるため、ステップS205では変数nが「1」に設定されることになる。ステップS205の後、システム制御部11は、ステップS201へ処理を戻す。
ステップS201に戻ると、システム制御部11は、現像処理部3から出力された2フレーム目の画像信号をフィルタ処理部4へ入力させる。次のステップS202の処理に進むと、システム制御部11は、フィルタ係数制御部5を制御してフィルタ処理部4へフィルタ係数を出力させる。このときのフィルタ処理部4は、前述の式(3)に示すようなフィルタ演算を行って第2のフレーム画像p1aを生成する。この場合も式(3)の演算は、フレーム画像全体に対して行われるものであり、したがって第2のフレーム画像p1aは、図6のフィルタ係数k1を用いてフレーム画像全体にフィルタが掛けられた画像となる。
次のステップS203の処理に進むと、システム制御部11は、第2のフレーム画像p1aの信号をメモリ6に保持させる。次のステップS204において、システム制御部11は、全分割数に対応した各フレーム画像のフィルタ演算が完了したか否かを判断する。ステップS204において、システム制御部11は、全分割数に対応したフレーム画像のフィルタ演算が完了していないと判断した場合には処理をステップS205へ進め、一方、完了したと判断した場合には処理をステップS206へ進める。このときのシステム制御部11は、ステップS205へ処理を進め、変数nを「2」に設定して、ステップS201へ処理を戻す。
以下同様に、システム制御部11は、ステップS201からS204、ステップS204からステップS205を経てステップS201へ戻る処理を、ステップS204で全分割数に対応した各フレーム画像のフィルタ演算が完了したと判断されるまで繰り返す。本実施形態では、前述のようにフィルタ分割数が9分割でフレーム数が9フレームであるため、変数の「n」は「0」から「8」までインクリメントされていくことになる。ステップS205で変数nが「2」に設定された後、前述の処理が行われて順次変数nがインクリメントされた場合、ステップS201では、3フレーム目〜9フレーム目までの各フレーム画像が順番に入力されることになる。また、ステップS202では、3フレーム目〜9フレーム目までの各フレームの順に、前述した式(4)〜式(10)に示す演算がフィルタ処理部4で順番に行われることになる。これら式(4)〜式(10)に示すフィルタ演算により、フィルタ処理部4からは、第3のフレーム画像p2a〜第9のフレーム画像p8aの信号が出力される。また、ステップS203では、それら第3のフレーム画像p2a〜第9のフレーム画像p8aの信号がメモリ6に保持される。
そして、ステップS204にて全分割数に対応した各フレーム画像の演算が完了したと判断して処理をステップS206へ進めると、システム制御部11は、合成比率生成部7に対して各フレームにおける光学ズーム情報を送る。これにより、合成比率生成部7では、前述したような合成比率を生成し、その合成比率の情報を合成部8へ出力する。ステップS206の後、システム制御部11は、処理をステップS207へ進める。
ステップS207では、システム制御部11は、合成部8を制御し、合成比率生成部7で生成された合成比率に基づいて、基準フレームと合成側フレームの画像を読み出させる。このときの合成部8は、システム制御部11による制御の下、メモリ6から読み出す各画像の画素位置を制御して、そのメモリ6から参照位置の各画素を読み出す。また、システム制御部11は、メモリ6に保持されている1フレーム目から9フレーム目の各フレーム画像から例えば動きベクトルなどの動き情報を算出し、その動き情報に基づいて、合成部8がメモリ6から画素を読み出す際の画素位置を補正する。すなわち、1フレーム目から9フレーム目の各フレーム画像は、それぞれ動画像のフレーム画像であり、撮影の際の被写体又は撮像装置の移動により、各フレーム画像内における被写体像等の位置が変わっている可能性がある。このため、システム制御部11は、動き情報に基づいて合成部8がメモリ6から画素を読み出す際の画素位置を補正することにより、被写体や撮像装置の動きによる各フレーム画像内の被写体像等の動きを補償させる。ステップS207の後、システム制御部11は、処理をステップS208へ進める。
ステップS208では、システム制御部11は、合成部8を制御して、第1のフレーム画像p0a〜第9のフレーム画像p8aから読み出された各画素を加算して合成させる。すなわち、このときの合成部8は、システム制御部11による制御の下、メモリ6から読み出された各フレーム画像の各画素を加算により合成する。合成部8での画素加算による合成処理で形成されたフレーム画像の信号は、動画像に対する分割フィルタ処理によるボケ画像の信号となる。このフィルタ処理後のボケ画像は、前述した背景被写体合成部10へ送られ、前述したように主被写体判別部9からの主被写体情報に基づいて抜き出された主被写体画像が合成されることになる。
ステップS208の後、システム制御部11は、処理をステップS209へ進める。ステップS209では、システム制御部11は、例えばユーザ等からの指示により動画像に対するぼかし処理を終了するか否か判断する。そして、システム制御部11は、ステップS209においてぼかし処理を終了すると判断した場合には、この図9のフローチャートの処理を終了させる。
一方、ステップS209においてぼかし処理を終了しないと判断した場合、システム制御部11は、ステップS201へ処理を戻す。すなわち例えば、前述のように1フレーム目〜9フレーム目の処理が終わった後には、システム制御部11は、ステップS201で現像処理部3から出力された10フレーム目の画像信号をフィルタ処理部4へ入力させる。システム制御部11は、次のステップS202ではフィルタ処理部4に10フレーム目の画像信号のフィルタ処理を行わせて第10のフレーム画像p9aを生成させ、次のステップS203では第10のフレーム画像p9aをメモリ6に保持させる。このときのメモリ6には、第2のフレーム画像p1a〜第10のフレーム画像p9aの9フレーム分が保持されていることになる。次に、ステップS204では、システム制御部11は、9フレーム分の演算が完了していると判断して、ステップS206へ処理を進め、ステップS206で合成比率生成部7に光学ズーム情報に基づく合成比率を算出させて合成部8へ送らせる。そして、システム制御部11は、ステップS207でメモリ6から第2のフレーム画像p1a〜第10のフレーム画像p9aを読み出させて、ステップS208で合成部8の加算による合成を行わせる。以下、同様であり、ステップS209でぼかし処理を終了すると判断されるまで、順次1フレームずつずらされながら、フィルタ処理部4でのフィルタ処理と合成部8での加算による合成処理がなされる。
<第2の実施形態>
次に、図10〜図12を参照しながら、第2の実施形態の撮像装置について説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態で説明したものと同じ構成要素等にはそれぞれ第1の実施形態と同一の指示番号を付し、重複した説明は省略する。
第2の実施形態の撮像装置は、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い(ズーム倍率が高い)場合に、違和感のある合成画像が生成される虞があるため、違和感のない合成画像の生成を可能とした画像信号処理装置の一例である。すなわち例えば、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い場合、基準フレームより画角が狭い分だけ、合成側フレームにおける参照領域が不足してしまうことが起きる可能性がある。このように参照領域が不足したまま合成処理を行ってしまうと、その不足した参照領域には画素が無いので、合成処理後の画像は違和感のある画像になってしまう。このため、第2の実施形態の撮像装置は、不足してしまう参照領域を基準フレームより補うことで、違和感のない合成画像を生成可能としている。
図10を用い、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い(ズーム倍率が高い)場合に、合成側フレームで参照領域が不足する具体例について説明する。図10(a)は、前述の図7の第5のフレーム画像p4aと同じ画像であり、着目画素位置が(k,j)であるときの空間フィルタの参照範囲2000と着目画素に対する領域2005を表す図である。この第5のフレーム画像p4aが基準フレームの画像であるとする。一方、図10(b)は、図7(i)の第9のフレーム画像p8aと同じ画像であり、着目画素位置が(k,j)であるときの空間フィルタの参照範囲2000と着目画素に対する領域2009を表す図である。この第9のフレーム画像p8aが合成側フレームの画像であるとする。また、図10(a)の領域3000は、第9のフレーム画像p8aの画角に対応した領域を示している。図10(a)における着目画素位置(k,j)は、図10(b)上では(m,j)の位置に該当し、(m,j)の位置を基準に領域2009が設定されるため、第9のフレーム画像p8aの領域2009における参照位置は、画像外となってしまう。すなわち、この図10(a)と図10(b)から判るように、基準フレーム(第5のフレーム画像p4a)に対し合成側フレーム(第9のフレーム画像p8a)の方の画角が狭い場合に、合成側フレームの参照領域が不足する。
図11には、不足する参照領域を基準フレームより補って違和感のない合成画像を生成可能とする、第2の実施形態の撮像装置の概略構成を示す。以下、第1の実施形態と異なる構成要素について説明する。図11に示す第2の実施形態の撮像装置は、合成制御手段に含まれる拡大合成部12を備えている。
拡大合成部12は、基準フレーム及び合成側フレームの画像信号をメモリ6より読み出して取得する。また、拡大合成部12は、システム制御部11からの光学ズーム情報に基づいて、基準フレームと合成側フレームの画角(ズーム倍率)を比較し、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭くなっているか判定する。拡大合成部12は、基準フレームよりも合成側フレームの画角が狭いと判定した場合、合成側フレームの参照位置が画像外になる可能性があると判断し、基準フレーム画像を合成側フレーム画像の画角(ズーム倍率)に合わせるように拡大する。具体的には、拡大合成部12は、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭いと判定した場合、基準フレームの画角と合成側フレームの画角との間の差分(画角差分)を求める。そして、拡大合成部12は、その画角差分に相当する倍率だけ、基準フレーム画像を拡大する。次に、拡大合成部12は、合成側フレームの画角に合わせて拡大した基準フレーム画像から、合成側フレーム画像より外側となる領域に相当する画像部分のみを取り出し、その取り出した画像部分を合成側フレーム画像の周囲に合成する。これにより、拡大した基準フレーム画像から取り出した画像部分が周囲に合成された後の合成側フレーム画像における画角は、拡大前の基準フレーム画像における画角と同じになる。
図12は、拡大合成部12において、前述のように拡大した基準フレーム画像から取り出された画像部分が、合成側フレーム画像の周囲に合成された後の合成側フレーム画像p8bの一例を示す図である。この図12において、領域3001は元の第9のフレーム画像p8aに対応しており、領域3002は基準フレーム画像である第5のフレーム画像p4aを第9のフレーム画像p8aとの画角差分(倍率差)に合わせて拡大した画像に対応している。図12の例では、領域3001の外側の画像部分が、拡大された基準フレーム画像から取り出される画像部分であり、合成側フレーム画像(p8a)の周囲に合成される画像部分である。この図12のような合成後の合成側フレーム画像p8bは、領域2009の参照位置に画素が存在している。
拡大合成部12は、前述のようにして、拡大した基準フレーム画像から参照領域が補われた合成側フレーム(画像p8b)の画像信号を、合成部8へ出力する。これにより、合成部8では、参照位置が存在している合成側フレーム(画像p8b)を用いた画像合成が可能となる。したがって、第2の実施形態の撮像装置によれば、違和感のない合成画像が生成されることになる。
<第3の実施形態>
次に、図13と図14を参照して、第3の実施形態の撮像装置について説明する。第3の実施形態において、第1の実施形態で説明したものと同じ構成要素等にはそれぞれ第1の実施形態と同一の指示番号を付し、重複した説明は省略する。
第3の実施形態の撮像装置は、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い場合に、違和感のない合成画像の生成を可能とした画像信号処理装置の一例である。第3の実施形態は、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い場合、基準フレーム自体を、画角が狭い(ズーム倍率が高い)フレーム画像へ切り替えることにより、合成側フレームで参照領域の不足が発生しないようにする。
図13には、基準フレームを画角が狭い(ズーム倍率が高い)フレーム画像へ動的に切り替えることで、合成側フレームで参照領域の不足が発生しないようにして、違和感のない合成画像を生成可能とする、第3の実施形態の撮像装置の概略構成を示す。以下、第1の実施形態と異なる構成要素について説明する。図13に示す第3の実施形態の撮像装置は、合成制御手段に含まれる基準フレーム選択部13を備えている。
基準フレーム選択部13は、システム制御部11からの光学ズーム情報に基づいて、基準フレームと合成側フレームの画角を比較し、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭く(ズーム倍率が高く)なっているか判定する。基準フレーム選択部13は、基準フレームより合成側フレームの方の画角が狭いと判定した場合、合成側フレームの参照位置が画像外になる可能性があると判断し、最も画角が狭い(最もズーム倍率が高い)フレームを選択する。具体的には、拡大合成部12は、基準フレームより合成側フレームの方の画角が狭いと判定した場合、光学ズーム情報に基づいて、前述した9フレームのうち最も画角が狭いフレームを選択する。そして、基準フレーム選択部13は、選択したフレームを基準フレームに設定し、その基準フレームが前述の9フレームのうちの何れのフレームであるかを、合成部8へ知らせる。
図14を参照して、基準フレーム選択部13が基準フレームを動的に切り替える例について説明する。図14(a)〜図14(k)はそれぞれ時間順のフレーム画像p1c〜p11cの一例を示している。また、図14(a)〜図14(f)のフレーム画像p1c〜p6cは、画角を徐々に狭める(ズーム倍率を徐々に上げる)ズームインがなされた場合の各フレーム画像の一例を示している。一方、図14(g)〜図14(k)のフレーム画像p7c〜p11cは画角を徐々に広げる(ズーム倍率を徐々に下げる)ズームアウトがなされた場合の各フレーム画像の一例を示している。なお、図14(a)〜図14(k)において、領域4000は各画像上で着目画素に対して水平,垂直方向9タップの空間フィルタが参照する範囲を示している。領域4001〜4011の各中心画素の位置は、着目画素に対する画像上の参照位置を示している。また、図14(a)は、フレーム画像p0cにおける着目画素及び空間フィルタの参照範囲と着目画素に対する画像上の参照位置を示した図である。以下同様に、図14(b)〜図14(k)はフレーム画像p1c〜p11cについての図である。
合成部8における合成処理では、9枚のフレーム画像があればよいので、先ず図14(a)〜図14(i)の9枚のフレーム画像p1c〜p9cの合成処理がなされる場合を例に挙げる。これら図14(a)〜図14(i)のフレーム画像p1c〜p9cにおいて、画角が最も狭いのは、図14(a)のフレーム画像p1cである。したがってこの場合、基準フレーム選択部13は、このフレーム画像p1cを基準フレームとして選択する。
合成部8は、次のフレーム画像を合成処理する際には、図14(b)〜図14(j)の9枚のフレーム画像p2c〜p10cを用いた合成処理を行うことになる。これら図14(b)〜図14(j)のフレーム画像p2c〜p10cにおいて、画角が最も狭いのは、図14(b)のフレーム画像p2cと図14(j)のフレーム画像p10cである。このように、9枚のフレーム画像の中に、最も画角が狭いフレーム画像が複数存在する場合、基準フレーム選択部13は、動画像における時間の連続性を考慮して、時間的に前のフレーム画像である図14(b)のフレーム画像p2cを選択する。
さらに、合成部8は、次のフレーム画像を合成処理する際には、図14(c)〜図14(k)の9枚のフレーム画像p3c〜p11cを用いた合成処理を行うことになる。これら図14(c)〜図14(k)のフレーム画像p3c〜p11cにおいて、画角が最も狭いのは、図14(k)のフレーム画像p11cである。したがって、基準フレーム選択部13は、このフレーム画像p11cを基準フレームとして選択する。
なお、前述した図14(a)〜図14(k)のフレーム画像p1c〜p11cの例の場合、基準フレームは、先ず図14(a)のフレーム画像p1cが選択され、次に図14(c)のフレーム画像p2c、その後図14(k)のフレーム画像p11cが選択される。したがって、図14(k)のフレーム画像p11cよりも時間的に前の図14(c)〜図14(j)のフレーム画像p3c〜p10cは、何れも基準フレームとして選択されないことになる。すなわち、図14(c)〜図14(j)のフレーム画像p3c〜p10cが基準フレームとなされて合成された画像が抜けてしまうことになるので、時間方向の連続性は失われることになる。しかしながら、本実施形態の場合、合成側フレームで参照領域が不足することはないため、実際には違和感の無い合成画像を得ることができる。
以上のように、第3の実施形態によれば、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い場合、基準フレームを画角が狭い(ズーム倍率が高い)フレーム画像へ動的に切り替えることで、違和感のない合成画像を生成可能となる。
<第4の実施形態>
次に、図15〜図17を参照して、第4の実施形態の撮像装置について説明する。第4の実施形態において、第1の実施形態で説明したものと同じ構成要素等にはそれぞれ第1の実施形態と同一の指示番号を付し、重複した説明は省略する。
図15には、第4の実施形態の撮像装置の概略構成を示す。以下、第1の実施形態と異なる構成要素について説明する。図15に示す第4の実施形態の撮像装置は、図1に示した第1の実施形態の撮像装置の合成比率生成部7に代えて、合成制御手段の一例である読み出し制御部14を備えている。
読み出し制御部14には、システム制御部11から光学ズーム情報が供給され、したがって、基準フレームに対する合成側フレームの画角(ズーム倍率)を知ることができる。そして、読み出し制御部14は、基準フレームに対する合成側フレームの画角(ズーム倍率)に基づいて、合成部8による読み出し位置を制御する。すなわち、読み出し制御部14は、参照領域の中心(参照位置)が、基準フレームと合成側フレームが同画角であるときの参照位置に重なるように、合成部8によるメモリ6の読み出し位置を制御する。
読み出し制御部14による読み出し位置制御について、前述の図7(a)〜図7(j)と、図16(a),図16(b)を用いて説明する。なお、図16(a)は基準フレームに対する合成側フレームの画角(ズーム倍率)と、読み出し制御部14が読み出し位置をずらすような制御を行う際のずらし量との関係を示す図である。なお、読み出し位置のずらし量とは、前述の図7(j)の各領域2001〜2009の場合の各参照位置に対応した読み出し位置に対して、読み出し制御部14が画角に応じて求める読み出し位置との差に相当する。言い換えると、読み出し制御部14は、図7(j)の各領域2001〜2009の場合の各参照位置に対応した読み出し位置を、画角に応じたずらし量だけずらすような読み出し位置制御を行う。図16(b)は、第5のフレーム画像p4aを基準フレームとし、他のフレーム画像p0a〜p3a,p5a〜p8aを基準フレームの画角に合わせた場合の各領域2001r〜2009rを、基準フレームの画像上に並べた図である。すなわち、図16(b)は、読み出し制御部14により画角に応じた読み出し制御がなされた場合の、基準フレーム画像(p4a)と、他の合成側フレーム画像(p0a〜p3a,p5a〜p8a)の各領域2001r〜2009rの位置関係を表している。
ここで、前述した図7(j)で説明したように、各フレーム画像においてフィルタ処理の際に参照される範囲の大きさは、画角(ズーム倍率)によって変わっている。例えば、基準フレームが第5のフレーム画像p4aで、合成側フレームが第9のフレーム画像p8aの場合、基準フレームに対して合成側フレームの画角が狭いため、図7(j)の領域2009のように参照領域が狭くなってぼかし量は少なくなる。一方、例えば、基準フレームが第9のフレーム画像p8aで、合成側フレームが第1のフレーム画像p1aの場合、合成側フレームの画角が広いため、図7(j)の領域2001のように参照領域が広くなってぼかし過ぎになる。
このようなことから、第4の実施形態において、読み出し制御部14は、参照領域の中心(参照位置)が、基準フレームと合成側フレームが同画角であるときの参照位置に重なるように、合成部8による読み出し位置を制御する。具体的には、基準フレームが第5のフレーム画像p4aで、合成側フレームが第9のフレーム画像p8aの場合、読み出し制御部14は、前述の図5(j)の領域1009と中心位置が重なる、図16(j)の領域2009rの中心を、参照位置とする。一方、基準フレームが第9のフレーム画像p8aで、合成側フレームが第5のフレーム画像p4aの場合、読み出し制御部14は、前述の図5(j)の参照領域1001と中心位置(参照位置)が重なる、図16(j)の領域2001rの中心を、参照位置とする。
図16(b)と図7(j)を、図5(i)と対比させて説明すると、図7(j)の各領域2001r〜2009rの中心位置は、図5(j)の各領域1001〜1009の中心位置から離れている。一方、図16(b)の各領域2001r〜2009rの中心位置は、図5(j)の各領域1001〜1009の中心位置と一致している。すなわち、図16(b)のような領域2001r〜2009rの中心が参照位置となるような読み出し制御が行われた場合、合成部8による合成処理後の画像は、図7(j)の場合の合成処理後の画像よりも、ぼかし具合のバランスが良い画像となる。このように、第4の実施形態の撮像装置によれば、動画像の撮像において光学ズームの倍率が変更されて画角が異なった場合に、読み出し位置制御を行うことで、ぼかし具合のバランスをとることができ、ぼかし具合の変動を軽減することが可能である。
次に、図17には、第4の実施形態におけるフィルタ処理から合成処理までのフローチャートを示す。図17のフローチャートは、システム制御部11が、フィルタ処理部4の制御、メモリ6の制御、読み出し制御部14における読み出し位置制御、合成部8の合成制御を行うことにより実行される。なお、図17において、前述の図9で説明した各ステップと同じ処理には同一の指示番号を付し、重複した説明は省略する。
図17において、前述の図9のフローチャートと異なる処理が行われるのはステップS306である。図17のフローチャートにおいて、ステップS204で全分割数に対応した所定フレーム数分の演算が完了したと判断すると、システム制御部11は、処理をステップS306へ進める。ステップS306では、システム制御部11は、読み出し制御部14に対して、各フレームにおける光学ズーム情報を送る。これにより、読み出し制御部14は、基準フレームと合成側フレームの画角(ズーム倍率)に基づいて、前述した図16(a)で説明したような読み出し位置のずらし量を生成し、そのずらし量の情報を合成部8へ出力する。ステップS306の後、システム制御部11は、処理をステップS207へ進める。したがって、ステップS207において、合成部8は、合成処理の際には、読み出し制御部14で求められたずらし量を加味した読み出し位置の画素の読み出しを行うことになる。
<第5の実施形態>
次に、図18には、第5の実施形態の撮像装置の概略構成を示す。第5の実施形態において、第1,第2,第4の実施形態で説明したものと同じ構成要素等にはそれぞれ第1,第2,第4の実施形態と同一の指示番号を付し、重複した説明は省略する。
第5の実施形態は、前述した第2の実施形態と同様、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い場合に、不足してしまう参照領域を基準フレームより補うことで、違和感のない合成画像を生成可能とする例である。すなわち、図18に示す第5の実施形態の撮像装置は、図11に示した第2の実施形態で説明したものと同じ拡大合成部12を備えている。
第5の実施形態の撮像装置においても前述の第2の実施形態の場合と同様に、不足してしまう参照領域を基準フレームより補うことで、違和感のない合成画像を生成可能となる。
<第6の実施形態>
図19には、第6の実施形態の撮像装置の概略構成を示す。第6実施形態において、第1,第3,第4の実施形態で説明したものと同じ構成要素等にはそれぞれ第1,第3,第4の実施形態と同一の指示番号を付し、重複した説明は省略する。
第6の実施形態は、前述した第3の実施形態と同様、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い場合に、基準フレームを動的に切り替えることにより、合成側フレームで参照領域の不足が発生しないようにする例である。すなわち、図19に示す第6の実施形態の撮像装置は、図13に示した第3の実施形態で説明したものと同じ基準フレーム選択部13を備えている。
第6の実施形態の撮像装置においても前述の第3の実施形態の場合と同様、基準フレームに対し合成側フレームの方の画角が狭い場合、基準フレームを動的に切り替えることで、違和感のない合成画像を生成可能となる。
<その他の実施形態>
前述の各実施形態では、動画像のフレーム画像に対するフィルタ処理と合成処理を例に挙げているが、本発明は、動画像だけでなく例えば高速連写による各撮影画像に対するフィルタ処理と合成処理にも適用可能である。
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
上述の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明は、その技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。