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JP6454183B2 - 表面保護フィルム、及び、表面保護フィルム付きプリズムシート - Google Patents

表面保護フィルム、及び、表面保護フィルム付きプリズムシート Download PDF

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JP6454183B2 JP2015045099A JP2015045099A JP6454183B2 JP 6454183 B2 JP6454183 B2 JP 6454183B2 JP 2015045099 A JP2015045099 A JP 2015045099A JP 2015045099 A JP2015045099 A JP 2015045099A JP 6454183 B2 JP6454183 B2 JP 6454183B2
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Description

本発明は、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができ、粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくい表面保護フィルムに関する。また、本発明は、該表面保護フィルムを含む表面保護フィルム付きプリズムシートに関する。
従来から、光学デバイス、金属板、塗装した金属板、樹脂板、ガラス板等の部材の表面を保護するために、基材層と、その一方の面に積層された粘着剤層とを有する表面保護フィルム(一般に、プロテクトテープ等と称されることもある)が広く用いられている(例えば、特許文献1〜3)。
特に、近年、表面保護フィルムは、液晶ディスプレイ用の光学部材の表面を保護するために使用されている。光学部材には、プリズムシート、拡散フィルム等のように片側又は両側の表面に凹凸形状を有するものがあり、この凹凸形状に損傷を与えないために、光学部材の使用に先立ち、その表面を表面保護フィルムで保護している。
このような被着体の表面に表面保護フィルムを貼り付けた場合、大きな接触面積を得ることができず被着体と表面保護フィルムとの界面で剥離が生じやすいため、高い粘着力の表面保護フィルムが必要となる。
一般に、粘着力を向上させるには粘着剤層における粘着付与剤の配合量を増やすことが有効である。しかしながら、表面保護フィルムには、特に被着体が表面に凹凸形状を有する場合には、経時又は高温下で被着体と粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着力の上昇、いわゆる粘着昂進の問題もある。
特開平1−129085号公報 特開平6−1958号公報 特開平8−12952号公報
本発明者らは、粘着力(初期粘着力)の向上と、経時又は高温下での粘着昂進の抑制とを両立させるために、粘着剤層の弾性率を下げて粘着剤層を軟らかくし、粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性を向上させることを検討した。貼り付けの際の密着性を向上させることで、粘着力(初期粘着力)を向上させることができ、かつ、貼り付け当初から被着体と粘着剤層との間の接触面積が大きいため、経時又は高温下で接触面積が増加することによる粘着昂進を抑制できると考えられる。
しかしながら、粘着剤層を軟らかくしすぎると、巻回体(ロール又は原反)から表面保護フィルムを繰り出す際に必要な力(展開力)が上昇するという問題が生じた。一般に、表面保護フィルムは、長尺状のフィルムをロール状に巻回した巻回体として工業的に製造されている。図2に、表面保護フィルムが芯に巻きつけられた巻回体の一例を示す模式図を示す。このような巻回体とした表面保護フィルムは、経時により巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が上昇しやすいことが知られているが、実用においては、小さい展開力で巻回体から容易に繰り出し可能であることが求められている。
本発明は、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができ、粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくい表面保護フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該表面保護フィルムを含む表面保護フィルム付きプリズムシートを提供することを目的とする。
本発明は、基材層と、粘着剤層とを有する表面保護フィルムであって、前記粘着剤層は、−30℃での貯蔵弾性率G’が400MPa以上かつ25℃での貯蔵弾性率G’が5.5MPa以下であり、主成分である第1のスチレン系エラストマーと、前記第1のスチレン系エラストマーよりも−30℃での貯蔵弾性率G’が低い第2のスチレン系エラストマーとを含有する表面保護フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
本発明者らは、基材層と、粘着剤層とを有する表面保護フィルムの粘着剤層に、−30℃での貯蔵弾性率G’の異なる2種のスチレン系エラストマーを用いることで、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力を上昇させない程度に粘着剤層の弾性率を下げて粘着剤層を軟らかくすることができることを見出した。
即ち、本発明者らは、基材層と、粘着剤層とを有する表面保護フィルムの粘着剤層に、主成分である第1のスチレン系エラストマーと、該第1のスチレン系エラストマーよりも−30℃での貯蔵弾性率G’が低い第2のスチレン系エラストマーとを用い、粘着剤層の−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’を特定範囲に調整することで、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができると同時に、被着体に貼り付ける際の密着性が高いために粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくい表面保護フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の表面保護フィルムは、基材層と、粘着剤層とを有する。上記粘着剤層は、−30℃での貯蔵弾性率G’が400MPa以上かつ25℃での貯蔵弾性率G’が5.5MPa以下である。
上記粘着剤層の−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’を上記範囲に調整することで、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができると同時に、被着体に貼り付ける際の密着性が高いために粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくい表面保護フィルムが得られる。
上記粘着剤層は、−30℃での貯蔵弾性率G’の下限が400MPaである。上記−30℃での貯蔵弾性率G’が400MPa未満であると、上記粘着剤層が軟らかくなりすぎ、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が上昇する。上記−30℃での貯蔵弾性率G’の好ましい下限は450MPa、より好ましい下限は500MPaである。
上記−30℃での貯蔵弾性率G’の上限は特に限定されないが、上記粘着剤層の弾性率が高すぎると、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下での粘着昂進が進んだりすることから、好ましい上限は2000MPaである。
上記粘着剤層は、25℃での貯蔵弾性率G’の上限が5.5MPaである。上記25℃での貯蔵弾性率G’が5.5MPaを超えると、上記粘着剤層が硬くなって上記粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性が低下し、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下で被着体と上記粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着昂進が進んだりする。上記25℃での貯蔵弾性率G’の好ましい上限は5.4MPaである。
上記25℃での貯蔵弾性率G’の下限は特に限定されないが、上記粘着剤層の弾性率が低すぎると、粘着力が強すぎたり、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が上昇したりすることから、好ましい下限は3.0MPaである。
なお、上記粘着剤層の−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’は、例えばDVA−200(アイティー計測制御社製)等の粘弾性スペクトロメーターを用い、定速昇温引張モードの10℃/分、10Hzの条件で上記粘着剤層の動的粘弾性スペクトルを測定して求めることができる。
上記粘着剤層の−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’を上記範囲に調整するために、上記粘着剤層は、主成分である第1のスチレン系エラストマーと、上記第1のスチレン系エラストマーよりも−30℃での貯蔵弾性率G’が低い第2のスチレン系エラストマーとを含有する。
このような−30℃での貯蔵弾性率G’の異なる2種のスチレン系エラストマーを用いることで、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力を上昇させない程度に上記粘着剤層の弾性率を下げて上記粘着剤層を軟らかくすることができる。その結果、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができると同時に、被着体に貼り付ける際の密着性が高いために粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくい表面保護フィルムが得られる。
上記第1のスチレン系エラストマーの−30℃での貯蔵弾性率G’は、上記第2のスチレン系エラストマーよりも高ければ特に限定されないが、好ましい下限は100MPa、好ましい上限は2000MPaであり、より好ましい下限は200MPa、より好ましい上限は1500MPaである。
また、上記第1のスチレン系エラストマーのガラス転移温度Tgは特に限定されないが、好ましい下限は−50℃、好ましい上限は−10℃であり、より好ましい下限は−40℃、より好ましい上限は−15℃である。
なお、上記第1のスチレン系エラストマーのガラス転移温度Tgは、例えばDVA−200(アイティー計測制御社製)等の粘弾性スペクトロメーターを用い、定速昇温引張モードの10℃/分、10Hzの条件で上記第1のスチレン系エラストマーの動的粘弾性スペクトルを測定してtanδのピークから求めることができる。
上記第1のスチレン系エラストマーの−30℃での貯蔵弾性率G’及びガラス転移温度Tgを上記範囲に調整することで、上記粘着剤層の−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’を上記範囲に調整することが容易になる。
上記第1のスチレン系エラストマーは、一般式[A−B]nで表される構造を有する共重合体(I)又はその水素添加物と、一般式A−B−A又は(A−B)x−Yで表される構造を有する共重合体(II)又はその水素添加物との混合物を含有することが好ましい。
A:芳香族アルケニル化合物単位を含有する芳香族アルケニル重合体であって、該Aで表される芳香族アルケニル重合体全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率が70重量%以上である
B:芳香族アルケニル化合物単位と共役ジエン化合物単位とをランダムに含有する芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体
:1〜3の整数
:1以上の整数
:カップリング剤残基
上記第1のスチレン系エラストマーにおいて、上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体が共役ジエン化合物単位に加えて芳香族アルケニル化合物単位を含有することで、上記第1のスチレン系エラストマーは、−30℃での貯蔵弾性率G’が比較的高いものとなる。上記粘着剤層がこのような第1のスチレン系エラストマーを含有することで、本発明の表面保護フィルムは、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができるものとなる。
上記Aで表される芳香族アルケニル重合体は、芳香族アルケニル化合物単位を含有する芳香族アルケニル重合体である。
上記芳香族アルケニル化合物単位は、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位であり、該芳香族アルケニル化合物として、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。なかでも、工業的に入手しやすいことから、スチレンが好ましい。
上記Aで表される芳香族アルケニル重合体は、該Aで表される芳香族アルケニル重合体全体中の上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が70重量%以上である。
上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率を70重量%以上とすることで、上記粘着剤層の熱可塑性を向上させることができ、表面保護フィルムのリサイクルがより容易になる。
なお、繰り返し単位の「含有率」とは、その繰り返し単位が由来するモノマーに換算した重量比、即ち、全モノマーの重量に対する、その繰り返し単位が由来するモノマーの重量の比(重量%)を意味する。
上記Aで表される芳香族アルケニル重合体は、上記芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
上記芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位として、例えば、共役ジエン化合物(例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン)、(メタ)アクリル酸エステル化合物等に由来する繰り返し単位が挙げられる。なかでも、上記芳香族アルケニル化合物との共重合性が高いことから、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体は、芳香族アルケニル化合物単位と共役ジエン化合物単位とをランダムに含有する芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体である。
上記芳香族アルケニル化合物単位としては、上述したAで表される芳香族アルケニル重合体に含まれるものと同様の芳香族アルケニル化合物単位が挙げられる。
上記共役ジエン化合物単位は、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位であり、該共役ジエン化合物として、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。これらの共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、重合反応性が高く、工業的に入手しやすいことから、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体は、該Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体全体中の上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率(芳香族アルケニル化合物がスチレンのみである場合、「スチレン含有量」ともいう)が10〜35重量%、上記共役ジエン化合物単位の含有率が65〜90重量%であることが好ましい。上記範囲よりも上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が低いと、上記粘着剤層が軟らかくなりすぎ、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が上昇することがある。上記範囲よりも上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が高いと、上記粘着剤層が硬くなって上記粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性が低下し、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下で被着体と上記粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着昂進が進んだりすることがある。上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率は13〜33重量%がより好ましく、16〜30重量%が更に好ましい。
上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体は、上記芳香族アルケニル化合物単位及び上記共役ジエン化合物単位以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体は、タックと粘着力とのバランスに優れた粘着剤層を構成することができることから、ビニル結合含有率が50〜90%であることが好ましく、60〜80%であることがより好ましい。
なお、「ビニル結合含有率」とは、赤外吸収スペクトルを用いてモレロ法により算出した、1,2−ビニル結合及び3,4−ビニル結合の総含有率を意味する。
上記共重合体(I)は、一般式[A−B]n(n:1〜3の整数)で表される構造を有する。
上記一般式[A−B]nで表される構造として、具体的には例えば、A−B、A−B−A−B、A−B−A−B−A−Bで表される構造等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層の粘着力及び材料強度を向上させる観点から、A−B、A−B−A−Bで表される構造が好ましく、A−Bで表される構造がより好ましい。A及びBは、それぞれの繰り返しにおいて同一であってもよく、異なっていてもよい。これらの共重合体(I)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記共重合体(I)は、上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体の効果を確実に発揮させる観点から、末端の上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体が上記共重合体(I)全体の2重量%以上を占めていることが好ましい。
上記共重合体(II)は、一般式A−B−A又は(A−B)x−Y(x:1以上の整数、Y:カップリング剤残基)で表される構造を有する。
上記一般式(A−B)x−Yで表される構造を有するとは、言い換えれば、上記共重合体(I)がYによってカップリングした構造を有することを意味する。従って、同じ反応釜(1ポット)で上記共重合体(I)と上記共重合体(II)との混合物を合成することができるため、工業的な観点から、上記一般式(A−B)x−Yのほうが好ましい。xが3以上である場合、上記共重合体(II)は、いわゆる星形重合体である。xは、上記共重合体(II)製造時における副反応を抑制し、上記共重合体(II)の物性を制御する観点からは、好ましくは2〜4である。
上記共重合体(II)は、上記Aで表される芳香族アルケニル重合体の効果を確実に発揮させる観点から、末端の上記Aで表される芳香族アルケニル重合体が上記共重合体(II)全体の2重量%以上を占めていることが好ましい。
上記Yで表されるカップリング剤残基が由来するカップリング剤として、例えば、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ハロゲン化合物(例えば、ジブロモエタン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、ビス(トリクロロシリル)エタン)、エポキシ化合物(例えば、エポキシ化大豆油)、カルボニル化合物(例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ジメチルテレフタル酸、ジエチルテレフタル酸)、ポリビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン)、ポリイソシアネート等が挙げられる。なかでも、工業的に入手しやすく、反応性も高いことから、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
上記共重合体(I)又はその水素添加物の重量平均分子量は、好ましい下限が3万、好ましい上限が50万であり、より好ましい下限が8万、より好ましい上限が30万であり、更に好ましい下限が10万、更に好ましい上限が20万である。
上記共重合体(II)又はその水素添加物の重量平均分子量は、好ましい下限が5万、好ましい上限が50万であり、より好ましい上限が30万である。
上記重量平均分子量が上記範囲より小さいと、共重合体又はその水素添加物を脱溶媒し、乾燥させる工程において製造設備等に共重合体又はその水素添加物が付着してしまい共重合体又はその水素添加物の工業的な生産が困難となることがある。上記重量平均分子量が上記範囲より大きいと、共重合体又はその水素添加物の溶剤への溶解性又は熱溶融性が悪くなり、粘着体への加工が困難になることがある。
上記共重合体(I)及び(II)の水素添加物は、優れた耐熱性及び耐候性が得られることから、上記共重合体(I)又は(II)における上記共役ジエン化合物単位の二重結合(不飽和結合)の好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加により飽和結合に変換されていることが好ましい。
なお、水素添加の比率(水素添加率)は、四塩化炭素を溶媒として用い、270MHzでのH−NMRスペクトルから算出した水素添加率を意味する。
上記第1のスチレン系エラストマーにおいては、上記共重合体(I)又はその水素添加物と、上記共重合体(II)又はその水素添加物との重量比は、90:10〜10:90が好ましい。上記範囲よりも上記共重合体(I)又はその水素添加物の重量が小さいと、被着体の表面から上記粘着剤層が浮き上がり、表面保護フィルムが剥離してしまうことがある。上記範囲よりも上記共重合体(I)又はその水素添加物の重量が大きいと、被着体の表面から表面保護フィルムを剥離する際に、被着体の表面に粘着剤が残存(糊残り)して被着体の表面を汚染してしまうことがある。上記共重合体(I)又はその水素添加物と、上記共重合体(II)又はその水素添加物との重量比は、50:50〜15:85がより好ましい。
上記第1のスチレン系エラストマーにおいては、上記混合物全体中の上記Aで表される芳香族アルケニル重合体の総量と、上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体の総量との重量比は、15:85〜45:55が好ましい。上記範囲よりも上記Aで表される芳香族アルケニル重合体の総量の重量が小さいと、上記粘着剤層に適度な保持力を付与することができないことがある。上記範囲よりも上記Aで表される芳香族アルケニル重合体の総量の重量が大きいと、上記粘着剤層が硬くなって上記粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性が低下し、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下で被着体と上記粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着昂進が進んだりすることがある。上記Aで表される芳香族アルケニル重合体の総量と、上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体の総量との重量比は、10:90〜40:60が更に好ましい。
上記第1のスチレン系エラストマーにおいては、上記混合物全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率(芳香族アルケニル化合物がスチレンのみである場合、「総スチレン含有量」ともいう)は、好ましい下限が30重量%、好ましい上限が50重量%である。上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が30重量%未満であると、上記粘着剤層に適度な保持力を付与することができなかったり、上記粘着剤層が軟らかくなりすぎ、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が上昇したりすることがある。上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が50重量%を超えると、上記粘着剤層が硬くなって上記粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性が低下し、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下で被着体と上記粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着昂進が進んだりすることがある。上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率のより好ましい下限は33重量%、より好ましい上限は45重量%である。
上記第1のスチレン系エラストマーを作製する方法は特に限定されず、例えば、上記共重合体(I)及び上記共重合体(II)をそれぞれブロック重合により作製し、これらを混合した後に、必要に応じて水素添加を行い、上記共重合体(I)又はその水素添加物と、上記共重合体(II)又はその水素添加物との混合物を得る方法が挙げられる。
また、上記第1のスチレン系エラストマーを作製する方法として、上記共重合体(II)が上記一般式(A−B)x−Yで表される構造を有する場合、[A−B]の構造を有する共重合体をブロック重合により合成する第1工程と、上記[A−B]の構造を有する共重合体の一部をカップリング剤によりカップリングさせ、(A−B)x−Yの構造を有する共重合体を合成する第2工程とを有する方法(カップリング法)も挙げられる。水素添加物を行う場合には、更に、上記[A−B]の構造を有する共重合体及び上記(A−B)x−Yの構造を有する共重合体に対して水素添加を行う第3の工程を行ってもよい。
上記カップリング法では、同じ反応釜(1ポット)で上記共重合体(I)と上記共重合体(II)との混合物を合成することができるため製造工程が簡素であり、製造コストが低廉で、カップリング剤の種類又は量により、上記共重合体(I)又はその水素添加物と、上記共重合体(II)又はその水素添加物との重量比を制御することができる。
上記第2のスチレン系エラストマーの−30℃での貯蔵弾性率G’は、上記第1のスチレン系エラストマーよりも低ければ特に限定されないが、好ましい下限は1MPa、好ましい上限は100MPaであり、より好ましい下限は5MPaである。
上記第2のスチレン系エラストマーのガラス転移温度Tgは特に限定されないが、好ましい下限は−60℃、好ましい上限は−20℃であり、より好ましい下限は−50℃、より好ましい上限は−30℃である。
上記第2のスチレン系エラストマーの−30℃での貯蔵弾性率G’及びガラス転移温度Tgを上記範囲に調整することで、上記粘着剤層の−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’を上記範囲に調整することが容易になる。
上記第2のスチレン系エラストマーは、一般式[C−D]nで表される構造を有する共重合体(III)又はその水素添加物と、一般式C−D−C又は(C−D)x−Yで表される構造を有する共重合体(IV)又はその水素添加物との混合物を含有し、上記混合物全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率が15重量%以下であることが好ましい。
C:芳香族アルケニル化合物単位を含有する芳香族アルケニル重合体であって、該Cで表される芳香族アルケニル重合体全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率が70重量%以上である
D:共役ジエン化合物単位を含有する共役ジエン重合体であって、該Dで表される共役ジエン重合体全体中の共役ジエン化合物単位の含有率が85重量%以上である
:1〜3の整数
:1以上の整数
:カップリング剤残基
上記第2のスチレン系エラストマーにおいて、上記Dで表される共役ジエン重合体全体中の共役ジエン化合物単位の含有率が85重量%以上と高く、かつ、上記混合物全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率が15重量%以下と低いことで、上記第2のスチレン系エラストマーは、−30℃での貯蔵弾性率G’が比較的低いものとなる。上記粘着剤層がこのような第2のスチレン系エラストマーを含有することで、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力を上昇させない程度に上記粘着剤層の弾性率を下げて上記粘着剤層を軟らかくすることができる。
上記Cで表される芳香族アルケニル重合体は、芳香族アルケニル化合物単位を含有する芳香族アルケニル重合体である。
上記芳香族アルケニル化合物単位としては、上述したAで表される芳香族アルケニル重合体に含まれるものと同様の芳香族アルケニル化合物単位が挙げられる。
上記Cで表される芳香族アルケニル重合体は、該Cで表される芳香族アルケニル重合体全体中の上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が70重量%以上である。
上記Cで表される芳香族アルケニル重合体は、上記芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位を含有していてもよく、該芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位として、例えば、上述したAで表される芳香族アルケニル重合体に含まれるものと同様の繰り返し単位が挙げられる。
上記Dで表される共役ジエン重合体は、共役ジエン化合物単位を含有する共役ジエン重合体である。
上記共役ジエン化合物単位としては、上述したBで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体に含まれるものと同様の共役ジエン化合物単位が挙げられる。また、上記共役ジエン化合物単位がブチレン単位を含む場合、上記共役ジエン化合物単位中のブチレン単位の含有率の好ましい下限は60重量%である。上記ブチレン単位の含有率が60重量%未満であると、上記粘着剤層の低温弾性率が低くなって巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が上昇したりすることがある。上記共役ジエン化合物単位中のブチレン単位の含有率のより好ましい下限は65重量%である。
上記Dで表される共役ジエン重合体は、該Dで表される共役ジエン重合体全体中の上記共役ジエン化合物単位の含有率が85重量%以上である。
上記共役ジエン化合物単位の含有率が85重量%未満であると、上記粘着剤層が硬くなって上記粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性が低下し、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下で被着体と上記粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着昂進が進んだりすることがある。
上記Dで表される共役ジエン重合体は、上記共役ジエン化合物単位以外の繰り返し単位を含有していてもよく、該共役ジエン化合物単位以外の繰り返し単位として、例えば、上述したAで表される芳香族アルケニル重合体に含まれるものと同様の芳香族アルケニル化合物単位が挙げられる。
上記Dで表される共役ジエン重合体は、該Dで表される共役ジエン重合体全体中の上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率(芳香族アルケニル化合物がスチレンのみである場合、「スチレン含有量」ともいう)の好ましい上限が15重量%、より好ましい上限が13重量%、更に好ましい上限が11重量%である。
上記Dで表される共役ジエン重合体は、更に、上記共役ジエン化合物単位及び上記芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
上記Dで表される共役ジエン重合体は、タックと粘着力とのバランスに優れた粘着剤層を構成することができることから、ビニル結合含有率が50〜90%であることが好ましく、60〜80%であることがより好ましい。
上記共重合体(III)は、一般式[C−D]n(n:1〜3の整数)で表される構造を有する。
上記一般式[C−D]nで表される構造として、具体的には例えば、C−D、C−D−C−D、C−D−C−D−C−Dで表される構造等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層の粘着力及び材料強度を向上させる観点から、C−D、C−D−C−Dで表される構造が好ましく、C−Dで表される構造がより好ましい。C及びDは、それぞれの繰り返しにおいて同一であってもよく、異なっていてもよい。これらの共重合体(III)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記共重合体(III)は、上記Dで表される共役ジエン重合体の効果を確実に発揮させる観点から、末端の上記Dで表される共役ジエン重合体が上記共重合体(III)全体の2重量%以上を占めていることが好ましい。
上記共重合体(IV)は、一般式C−D−C又は(C−D)x−Y(x:1以上の整数、Y:カップリング剤残基)で表される構造を有する。
上記一般式(C−D)x−Yで表される構造を有するとは、言い換えれば、上記共重合体(III)がYによってカップリングした構造を有することを意味する。従って、同じ反応釜(1ポット)で上記共重合体(III)と上記共重合体(IV)との混合物を合成することができるため、工業的な観点から、上記一般式(C−D)x−Yのほうが好ましい。xが3以上である場合、上記共重合体(IV)は、いわゆる星形重合体である。xは、上記共重合体(IV)製造時における副反応を抑制し、上記共重合体(IV)の物性を制御する観点からは、好ましくは2〜4である。
上記共重合体(IV)は、上記Cで表される芳香族アルケニル重合体の効果を確実に発揮させる観点から、末端の上記Cで表される芳香族アルケニル重合体が上記共重合体(III)全体の2重量%以上を占めていることが好ましい。
上記Yで表されるカップリング剤残基が由来するカップリング剤としては、上述したYで表されるカップリング剤残基が由来するものと同様のカップリング剤が挙げられる。
上記共重合体(III)又はその水素添加物の重量平均分子量は、好ましい下限が3万、好ましい上限が50万であり、より好ましい下限が8万、より好ましい上限が30万であり、更に好ましい下限が10万、更に好ましい上限が20万である。
上記共重合体(IV)又はその水素添加物の重量平均分子量は、好ましい下限が5万、好ましい上限が50万であり、より好ましい上限が30万である。
上記重量平均分子量が上記範囲より小さいと、共重合体又はその水素添加物を脱溶媒し、乾燥させる工程において製造設備等に共重合体又はその水素添加物が付着してしまい共重合体又はその水素添加物の工業的な生産が困難となることがある。上記重量平均分子量が上記範囲より大きいと、共重合体又はその水素添加物の溶剤への溶解性又は熱溶融性が悪くなり、粘着体への加工が困難になることがある。
上記共重合体(III)及び(IV)の水素添加物は、優れた耐熱性及び耐候性が得られることから、上記共重合体(III)又は(IV)における上記共役ジエン化合物単位の二重結合(不飽和結合)の好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加により飽和結合に変換されていることが好ましい。
上記第2のスチレン系エラストマーにおいては、上記共重合体(III)又はその水素添加物と、上記共重合体(IV)又はその水素添加物との重量比は、90:10〜10:90が好ましい。上記範囲よりも上記共重合体(III)又はその水素添加物の重量が小さいと、被着体の表面から上記粘着剤層が浮き上がり、表面保護フィルムが剥離してしまうことがある。上記範囲よりも上記共重合体(III)又はその水素添加物の重量が大きいと、被着体の表面から表面保護フィルムを剥離する際に、被着体の表面に粘着剤が残存(糊残り)して被着体の表面を汚染してしまうことがある。上記共重合体(III)又はその水素添加物と、上記共重合体(IV)又はその水素添加物との重量比は、50:50〜15:85がより好ましい。
上記第2のスチレン系エラストマーにおいては、上記混合物全体中の上記Cで表される芳香族アルケニル重合体の総量と、上記Dで表される共役ジエン重合体の総量との重量比は、5:95〜15:85が好ましい。上記範囲よりも上記Cで表される芳香族アルケニル重合体の総量の重量が小さいと、上記粘着剤層に適度な保持力を付与することができないことがある。上記範囲よりも上記Cで表される芳香族アルケニル重合体の総量の重量が大きいと、上記粘着剤層が硬くなって上記粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性が低下し、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下で被着体と上記粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着昂進が進んだりすることがある。上記Cで表される芳香族アルケニル重合体の総量と、上記Dで表される共役ジエン重合体の総量との重量比は、7:93〜13:87がより好ましい。
上記第2のスチレン系エラストマーにおいては、上記混合物全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率(芳香族アルケニル化合物がスチレンのみである場合、「総スチレン含有量」ともいう)が15重量%以下である。上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率が15重量%を超えると、上記粘着剤層が硬くなって上記粘着剤層を被着体に貼り付ける際の密着性が低下し、粘着力(初期粘着力)が低下したり、経時又は高温下で被着体と上記粘着剤層との間の接触面積が増加することによる粘着昂進が進んだりすることがある。上記芳香族アルケニル化合物単位の含有率は13重量%以下が好ましく、11重量%以下がより好ましい。
上記第2のスチレン系エラストマーを作製する方法は特に限定されず、上述した第1のスチレン系エラストマーを作製する方法と同様の方法が挙げられる。
上記粘着剤層において、上記第1のスチレン系エラストマーと、上記第2のスチレン系エラストマーとの重量比は特に限定されないが、上記第1のスチレン系エラストマー100重量部に対する上記第2のスチレン系エラストマーの含有量の好ましい下限は15重量部、好ましい上限は140重量部であり、より好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は90重量部である。このような重量比に調整することで、巻回体から表面保護フィルムを繰り出す際の展開力を上昇させない程度に上記粘着剤層の弾性率を下げて上記粘着剤層を軟らかくすることができる。
なお、上記第1のスチレン系エラストマーが「主成分である」とは、上記第1のスチレン系エラストマー及び上記第2のスチレン系エラストマーの合計100重量部のうち、上記第1のスチレン系エラストマーの含有量が50重量部以上であることを意味する。
上記粘着剤層は、更に、粘着付与剤を含有してもよい。
上記粘着付与剤は特に限定されないが、軟化点が80℃以上であることが好ましく、90〜140℃であることがより好ましい。上記粘着付与剤として、例えば、脂肪族共重合体、芳香族共重合体、脂肪族芳香族共重合体、脂環式共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、及び、これらの水素添加物等が挙げられる。また、ポリオレフィン樹脂との混合物として市販されている粘着付与剤を用いてもよい。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記粘着剤層の剥離性、耐候性等を高めるためには、上記粘着付与剤は、水素添加物であることが好ましい。
上記粘着付与剤は、上記第1のスチレン系エラストマーにおける上記Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体に対して相溶することが好ましい。
上記粘着付与剤の含有量は特に限定されず、被着体の表面から表面保護フィルムを剥離する際に、被着体の表面に粘着剤が残存しない(糊残りしない)程度に適宜調整されるが、上記第1のスチレン系エラストマー及び上記第2のスチレン系エラストマーの合計100重量部に対する好ましい下限は2重量部、好ましい上限は30重量部であり、より好ましい上限は20重量部である。
上記粘着剤層は、更に、離型剤を含有してもよい。
上記粘着剤層が上記離型剤を含有することで、より小さい展開力で表面保護フィルムを巻回体から繰り出すことができる。上記離型剤は特に限定されず、例えば、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミンの長鎖アルキルグラフト物、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード6300」等)、ポリフルオロ炭化水素基及びポリオキシエチレン基を有する含フッ素化合物等が挙げられる。
上記離型剤の含有量は特に限定されないが、上記第1のスチレン系エラストマー及び上記第2のスチレン系エラストマーの合計100重量部に対する好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は3重量部であり、より好ましい上限は2.5重量部である。
上記粘着剤層は、粘着力の制御等を目的に、必要に応じて、例えば、軟化剤、酸化防止剤、接着昂進防止剤等の添加剤を含有してもよい。
上記粘着剤層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は3μm、好ましい上限は30μmである。上記粘着剤層の厚さが3μm未満であると、上記粘着剤層の粘着力が低下することがある。上記粘着剤層の厚さが30μmを超えると、被着体の表面から表面保護フィルムを剥離する際に、表面保護フィルムを剥がしにくくなることがある。上記粘着剤層の厚さのより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は20μmである。
上記基材層は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂を含有することが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、従来公知のポリオレフィン樹脂を用いることができ、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂等が挙げられる。
上記ポリプロピレン樹脂として、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられる。上記ポリエチレン樹脂として、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。なかでも、透明性、剛性、耐熱性の観点からポリプロピレン樹脂が好ましく、ホモポリプロピレン、又は、プロピレンと少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体がより好ましい。
上記基材層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤等の添加剤、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤を含有してもよい。
上記基材層の厚さは特に限定されないが、好ましい下限は25μm、好ましい上限は200μmである。上記基材層の厚さが25μm未満であると、取扱い時に表面保護フィルムが折れやすくなることがある。上記基材層の厚さが200μmを超えると、上記基材層に巻きぐせが残ることがある。上記基材層の厚さのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は188μmである。
本発明の表面保護フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、予めTダイ成形又はインフレーション成形にて得られた層上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により他の層を積層する方法、各々の層を独立してフィルムとした後、得られた各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、上記基材層、上記粘着剤層の各材料を多層の押出機に供給して成形する共押出成形が好ましく、厚み精度の点から、Tダイ成形がより好ましい。
本発明の表面保護フィルムは、表面が平滑な被着体の表面を保護するために用いられてもよいが、表面に凹凸形状を有する被着体の表面を保護するために用いられる場合であっても、被着体に貼り付ける際の密着性が高く、粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくいものである。
上記表面に凹凸形状を有する被着体は特に限定されず、例えば、プリズムシート(拡散フィルムともいう)等の液晶ディスプレイ用の光学部材等が挙げられる。なかでも、本発明の表面保護フィルムは、プリズムシートに貼り付けられて用いられることが好ましい。更に、本発明の表面保護フィルムは、表面にプリズム層を、裏面にマット(matte)層を有するプリズムシートの上記マット(matte)層に貼り付けられて用いられることがより好ましい。なお、上記マット(matte)層とは、艶消し処理が施された層であり、表面(マット面ともいう)に凹凸形状(例えば、20μm程度のピッチの凹凸形状)を有する層である。
図1に、本発明の表面保護フィルムがプリズムシートに貼り付けられた状態の一例を示す模式図を示す。図1においては、透明フィルム6の表面にプリズム層7を、裏面にマット層5を有するプリズムシート4のマット層5に、表面保護フィルム1が貼り付けられている。表面保護フィルム1は、基材層2と、粘着剤層3とを有している。
表面にプリズム層を、裏面にマット層を有するプリズムシートの上記マット層に、本発明の表面保護フィルムが貼り付けられている表面保護フィルム付きプリズムシートもまた、本発明の1つである。
上記プリズムシートは、表面にプリズム層を、裏面にマット層を有していれば特に限定されず、例えば、液晶ディスプレイ用の光学部材として通常用いられるプリズムシート等が挙げられる。
本発明によれば、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができ、粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくい表面保護フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該表面保護フィルムを含む表面保護フィルム付きプリズムシートを提供することができる。
本発明の表面保護フィルムがプリズムシートに貼り付けられた状態の一例を示す模式図である。 表面保護フィルムが芯に巻きつけられた巻回体の一例を示す模式図である。
以下に実施例を掲げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
<第1のスチレン系エラストマー>
・エラストマー1(a)(ガラス転移温度(Tg):−28℃、−30℃での貯蔵弾性率(G’):342MPa、総スチレン含有量:35重量%、Aで表されるスチレン含有量:15重量%、Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体全体中のスチレン含有量:20重量%)
・エラストマー1(b)(ガラス転移温度(Tg):−8℃、−30℃での貯蔵弾性率(G’):1220MPa、総スチレン含有量:45重量%、Aで表されるスチレン含有量:15重量%、Bで表される芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体全体中のスチレン含有量:30重量%)
<第2のスチレン系エラストマー>
・エラストマー2(a)(商品名「DR1321P」、スチレン−エチレンブチレン共重合体、JSR社製、ガラス転移温度(Tg):−33℃、−30℃での貯蔵弾性率(G’):92MPa)
・エラストマー2(b)(商品名「DR8630P」、スチレン−エチレンブチレン共重合体、JSR社製、ガラス転移温度(Tg):−35℃、−30℃での貯蔵弾性率(G’):36MPa)
・エラストマー2(c)(商品名「DR1320P」、スチレン−エチレンブチレン共重合体、JSR社製、ガラス転移温度(Tg):−32℃、−30℃での貯蔵弾性率(G’):93MPa)
・エラストマー2(d)(スチレン−エチレンブチレン共重合体、ガラス転移温度(Tg):−44℃、−30℃での貯蔵弾性率(G’):8MPa、総スチレン含有量:9重量%、Cで表されるスチレン含有量:9重量%)
(実施例1)
エラストマー1(a)100重量部、エラストマー2(a)20重量部、粘着付与剤(商品名「アルコンP125」、脂環族飽和炭化水素樹脂、荒川化学工業社製、軟化点125℃)をエラストマーの合計100重量部に対して5重量部、離型剤(商品名「アルフローH50TF」、エチレンビス−ステアリン酸アミド(EBSA)、日油社製)をエラストマーの合計100重量部に対して1重量部、酸化防止剤(商品名「IRGANOX 1010」、BASF社製)をエラストマーの合計100重量部に対して1重量部配合し、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物を得た。
基材層の原料としてポリオレフィン樹脂(商品名「J715M」、ポリプロピレン樹脂、プライムポリマー社製)を、粘着剤層の原料として上記で得られた粘着剤組成物を用い、Tダイ法により共押出成形し、基材層55μm、粘着剤層5μmの表面保護フィルムを得た。
得られた表面保護フィルムの粘着剤層について、粘弾性スペクトロメーター(DVA−200、アイティー計測制御社製)を用い、定速昇温引張モードの10℃/分、10Hzの条件で動的粘弾性スペクトルを測定し、−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’を測定した。
(実施例2〜12、比較例1〜7)
表1又は2に示すように第1のスチレン系エラストマー、第2のスチレン系エラストマー又は添加剤の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムの粘着剤層について、実施例1と同様にして−30℃及び25℃での貯蔵弾性率G’を測定した。
<評価>
実施例、比較例で得られた表面保護フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示した。
(1)初期粘着力
プリズムシート(マット面の算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.32μmのアクリルフィルムである拡散フィルム)を被着体として用意した。被着体のマット面を覆うように、25mm幅の表面保護フィルムを貼り付けて、試験片を作製した。貼り付けは、23℃及び相対湿度50%RHの環境下で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で圧締することにより行った。得られた試験片を23℃及び相対湿度50%RHの環境下で30分放置した。放置後、JIS Z0237に準拠して、被着体から引張速度300mm/分で180°方向に表面保護フィルムを剥離し、初期粘着力を測定した。また、初期粘着力を下記の基準で判定した。
◎(優) 0.15N/25mm以上0.4N/25mm未満
○(良) 0.1N/25mm以上0.15N/25mm未満、
又は、0.4N/25mm以上0.5N/25mm未満
×(不良) 0.1N/25mm未満、又は、0.5N/25mm以上
(2)経時粘着力
プリズムシート(マット面の算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)が0.32μmのアクリルフィルムである拡散フィルム)を被着体として用意した。被着体のマット面を覆うように、25mm幅の表面保護フィルムを貼り付けて、試験片を作製した。貼り付けは、23℃及び相対湿度50%RHの環境下で、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、300mm/分の速度で圧締することにより行った。得られた試験片を50℃の温度環境下で168時間放置した。放置後、試験片を室温に取り出し、更に60分間放置した後、JIS Z0237に準拠して、被着体から引張速度300mm/分で180°方向に表面保護フィルムを剥離し、経時粘着力を測定した。また、経時粘着力を下記の基準で判定した。
◎(優) 0.15N/25mm以上0.4N/25mm未満
○(良) 0.1N/25mm以上0.15N/25mm未満、
又は、0.4N/25mm以上0.5N/25mm未満
×(不良) 0.1N/25mm未満、又は、0.5N/25mm以上
(3)粘着昂進率
上記(1)及び(2)で得られた初期粘着力及び経時粘着力を用い、初期粘着力から経時粘着力への変化率(粘着昂進率)を次式で算出した。
変化率(粘着昂進率)(%)=(経時粘着力/初期粘着力)×100
◎(優) 200%以下
○(良) 200%を超えて300%未満
×(不良) 300%以上
(4)展開力
表面保護フィルムを内径3インチの紙芯に巻きつけて50mm幅の巻回体を作製した。JIS Z0237に準拠し、20m/minの巻戻し速度で巻回体から表面保護フィルムを巻戻し、高速巻戻し力を測定した。得られた測定値が展開力である。
◎(優) 0.05N/25mm未満
○(良) 0.05N/25mm以上0.07N/25mm未満
×(不良) 0.07N/25mm以上
Figure 0006454183
Figure 0006454183
本発明によれば、小さい展開力で巻回体から繰り出すことができ、粘着力(初期粘着力)が高い一方で経時又は高温下でも粘着力が昂進しにくい表面保護フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、該表面保護フィルムを含む表面保護フィルム付きプリズムシートを提供することができる。
1 表面保護フィルム
2 基材層
3 粘着剤層
4 プリズムシート
5 マット層
6 透明フィルム
7 プリズム層
8 表面保護フィルム
9 芯

Claims (7)

  1. 基材層と、粘着剤層とを有する表面保護フィルムであって、
    前記粘着剤層は、−30℃での貯蔵弾性率G’が400MPa以上かつ25℃での貯蔵弾性率G’が5.5MPa以下であり、主成分である第1のスチレン系エラストマーと、前記第1のスチレン系エラストマーよりも−30℃での貯蔵弾性率G’が低い第2のスチレン系エラストマーとを含有し、
    前記第1のスチレン系エラストマーは、一般式[A−B]nで表される構造を有する共重合体(I)又はその水素添加物と、一般式A−B−A又は(A−B)x−Yで表される構造を有する共重合体(II)又はその水素添加物との混合物を含有することを特徴とする表面保護フィルム。
    A:芳香族アルケニル化合物単位を含有する芳香族アルケニル重合体であって、該Aで表される芳香族アルケニル重合体全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率が70重量%以上である
    B:芳香族アルケニル化合物単位と共役ジエン化合物単位とをランダムに含有する芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体
    :1〜3の整数
    :1以上の整数
    :カップリング剤残基
  2. 基材層と、粘着剤層とを有する表面保護フィルムであって、
    前記粘着剤層は、−30℃での貯蔵弾性率G’が400MPa以上かつ25℃での貯蔵弾性率G’が5.5MPa以下であり、主成分である第1のスチレン系エラストマーと、前記第1のスチレン系エラストマーよりも−30℃での貯蔵弾性率G’が低い第2のスチレン系エラストマーとを含有し、
    前記第2のスチレン系エラストマーは、一般式[C−D]nで表される構造を有する共重合体(III)又はその水素添加物と、一般式C−D−C又は(C−D)x−Yで表される構造を有する共重合体(IV)又はその水素添加物との混合物を含有し、前記混合物全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率が15重量%以下である
    ことを特徴とする表面保護フィルム。
    C:芳香族アルケニル化合物単位を含有する芳香族アルケニル重合体であって、該Cで表される芳香族アルケニル重合体全体中の芳香族アルケニル化合物単位の含有率が70重量%以上である
    D:共役ジエン化合物単位を含有する共役ジエン重合体であって、該Dで表される共役ジエン重合体全体中の共役ジエン化合物単位の含有率が85重量%以上である
    :1〜3の整数
    :1以上の整数
    :カップリング剤残基
  3. 粘着剤層は、更に、粘着付与剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の表面保護フィルム。
  4. 粘着付与剤は、軟化点が80℃以上であることを特徴とする請求項3記載の表面保護フィルム。
  5. 粘着剤層は、更に、離型剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の表面保護フィルム。
  6. 表面にプリズム層を、裏面にマット層を有するプリズムシートの前記マット層に貼り付けられて用いられることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の表面保護フィルム。
  7. 表面にプリズム層を、裏面にマット層を有するプリズムシートの前記マット層に、請求項1、2、3、4、5又は6記載の表面保護フィルムが貼り付けられていることを特徴とする表面保護フィルム付きプリズムシート。
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