(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の加熱調理器の扉閉鎖時の概略正面図である。図2は、図1の加熱調理器の扉解放時の概略正面図である。
上記第1実施形態の加熱調理器は、図1,図2に示すように、直方体形状のケーシング1と、このケーシング1内に設けられ、前側に開口部2aを有する加熱庫2と、加熱庫2の開口部2aを開閉する扉3と、加熱庫2内にマイクロ波を供給するマグネトロン4(図5に示す)とを備えている。なお、マグネトロン4はマイクロ波発生装置の一例である。
上記ケーシング1には、排気ダクト5と、露受容器6と、給水タンク26とが設けられている。排気ダクト5は、ケーシング1の上面の後部に取り付けられている。露受容器6は、ケーシング1の前面の下部に着脱可能に取り付けられている。この露受容器6は、扉3の後面(加熱庫2側の表面)からの水滴を受けることができるようになっている。また、給水タンク26は、ケーシング1の前面の下部に着脱可能に取り付けられている。
上記加熱庫2は、内部に被加熱物15が収容され、金属製の調理トレイ91,92(図3に示す)を出し入れ自在に配置できるようになっている。加熱庫2の左側部2bおよび右側部2cの内面には、調理トレイ91を支持する上棚受け16A,16Bが設けられている。また、加熱庫2の右側部2cおよび左側部2bの内面には、上棚受け16A,16Bよりも下側に位置するように、調理トレイ92を支持する下棚受け17A,17Bが設けられている。
上棚受け16A,16Bおよび下棚受け17A,17Bのそれぞれの後端部には、当接部(図示せず)が設けられている。この当接部は、加熱庫2内に調理トレイ91,92を配置するときに、調理トレイ91,92が加熱庫2の後部2dに接触する前に、調理トレイ91,92に当接する。これにより、調理トレイ91,92の後側への移動が規制され、調理トレイ91,92と加熱庫2の後部2dとの間に隙間が形成される。この隙間の寸法は、例えば3mmである。
上記扉3は、ケーシング1の前面に、下端側の辺を中心として回動可能に取り付けられている。この扉3の前面(加熱庫2とは反対側の表面)には、耐熱性を有する透明な外ガラス7が設けられている。また、扉3は、外ガラス7の上側に位置するハンドル8と、外ガラス7の右側に設けられた操作パネル9とを有している。
上記操作パネル9は、カラー液晶表示部10およびボタン群11から構成されている。このボタン群11は、途中で加熱を止めるときなどに押す取り消しキー12と、加熱を開始するときに押すあたためスタートキー13とを含んでいる。また、操作パネル9には、スマートフォンなどからの赤外線を受ける赤外線受光部14が設けられている。
図3は、第1実施形態の加熱調理器の主要部の構成を説明するための模式図である。
上記加熱調理器の主要部の構成を、図2,図3を用いて説明する。なお、図3は、加熱庫2を左側から見た状態を示している。
上記加熱調理器の主要部は、図3に示すように、加熱庫2、循環ダクト18、循環ファン19、上ヒータ20、中ヒータ21、下ヒータ22、循環ダンパ23、蒸気発生装置24、チューブポンプ25および給水タンク26とから構成されている。上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22は、それぞれ、例えばシーズヒータから成っている。なお、循環ファン19は、対流ファンの一例である。
上記加熱庫2は、略直方体形状で、相互に直交する方向に延在している上部2eおよび後部2dと、上部2eおよび後部2dに対して傾斜している傾斜部2fとで構成されている。
上記傾斜部2fには、図2に示すように、循環ファン19と対向する複数の吸込口27と、吸込口27の周囲に配置された複数の蒸気供給口37と、傾斜部2fの端部にそれぞれ配置された複数の強制排気口48および複数の給気口50とが設けられている。また、上部2eには、複数の上吹出口28が設けられている(図3では3個のみ示す)。さらに、加熱庫2の後部2dには、図2に示すように、第1後吹出口29、第2後吹出口30および第3後吹出口31が、それぞれ、複数設けられている。
なお、加熱庫2、循環ダクト18、吸込口27、上吹出口28、第1後吹出口29、第2後吹出口30および第3後吹出口31で、循環経路を構成している。
上記循環ダクト18は、吸込口27、上吹出口28および第1〜第3後吹出口29〜31を介して加熱庫2内と連通している。この循環ダクト18は、加熱庫2の上側から後側にわたって設けられて、逆L字形状を呈するように延在している。また、循環ダクト18の左右方向の幅は、加熱庫2の左右方向の幅より狭く設定されている。
上記循環ファン19は、遠心ファンから成り、循環ファン用モータ56によって駆動される。この循環ファン用モータ56が循環ファン19を駆動すると、加熱庫2内の空気や飽和蒸気などの気体(以下「気体」と言う)は、吸込口27から循環ダクト18内に吸い込まれ、循環ファン19の径方向外側へ流される。より詳しくは、循環ファン19の上側では、気体は、循環ファン19から斜め上方に流れた後、後方から前方に向かって流れる。一方、循環ファン19の下側では、気体は、循環ファン19から斜め下方に流れた後、上方から下方に向かって流れる。
上記上ヒータ20は、循環ダクト18内に設けられ、加熱庫2の上部2eに対向するよう配置されている。この上ヒータ20は、上吹出口28へ流れる気体を加熱する。
上記中ヒータ21は、循環ダクト18内に設けられ、循環ファン19を取り囲むように配置されている。この中ヒータ21は、循環ファン19から上ヒータ20に向かう気体を加熱したり、循環ファン19から下ヒータ22に向かう気体を加熱したりする。
上記下ヒータ22は、循環ダクト18内に設けられ、加熱庫2の後部2dに対向するように配置されている。この下ヒータ22は、第2,第3後吹出口30,31へ流れる気体を加熱する。
上記循環ダンパ23は、循環ダクト18内に回動可能に設けられ、中ヒータ21と下ヒータ22との間に配置されている。この循環ダンパ23は、循環ダンパ用モータ59(図5に示す)によって回動され、第1後吹出口29を開閉する。
なお、図3に示すように、第1後吹出口29の開放時には、循環ダンパ23により循環ダクト18が塞がれ、循環ファン19からの気体が第1後吹出口29より下側に流れない。これにより、第1後吹出口29からのみ、中ヒータ21で加熱された気体を加熱庫2内に吹き出すことができる。一方、循環ダンパ23によって第1後吹出口29を閉鎖することにより、第1後吹出口29と第2,第3後吹出口30,31との間が開放される。これにより、第1後吹出口29だけでなく、第2,第3後吹出口30,31からも、中ヒータ21で加熱された気体を加熱庫2内に吹き出すことができる。
上記蒸気発生装置24は、上端が開口する金属製の容器32と、その開口を塞ぐ樹脂製の蓋33と、容器32の底部に鋳込まれ、シーズヒータから成る蒸気発生用ヒータ34とを有する。この容器32の底部上には給水タンク26からの水が溜まり、蒸気発生用ヒータ34が容器32の底部を介して上記水を加熱する。この加熱で発生した飽和蒸気は、樹脂製の蒸気チューブ35と金属製の蒸気管36とを流れて、複数の蒸気供給口37を介して加熱庫2内に供給される。
上記加熱庫2内の飽和蒸気は、循環ファン19で上ヒータ20、中ヒータ21および下ヒータ22に送られ、加熱されて、100℃以上の過熱蒸気となる。
また、上記蓋33には、一対の電極棒39A,39Bから成る水位センサ38が取り付けられている。この水位センサ38は、電極棒39A,39Bの間が導通状態になったか否かに基づいて、容器32の底部上の水位が所定水位になったか否かを判定する。
上記チューブポンプ25は、シリコンゴム等から成って弾性変形可能な給排水チューブ40をローラ(図示せず)でしごいて、給水タンク26内の水を蒸気発生装置24に流したり、蒸気発生装置24内の水を給水タンク26に流したりする。
上記給水タンク26は、給水タンク本体41と連通管42とを有し、タンクカバー43内に収容されている。この給水タンク26では、連通管42の一端部が給水タンク本体41内に配置され、連通管42の他端部がタンクジョイント部44を介して給排水チューブ40に接続されている。すなわち、連通管42などを介して、給水タンク本体41内と蒸気発生装置24内とが連通している。
図4は、第1実施形態の加熱調理器の他の部分の構成を説明するための模式図である。
上記加熱調理器の他の部分の構成を、図4を用いて説明する。この図4でも、図3と同様に、加熱庫2は左側から見た状態が示されている。
上記加熱庫2の後部2dの下端部には、自然排気口45が設けられている。この自然排気口45は、第1排気通路46を介して排気ダクト5に接続されており、加熱庫2内の余剰な気体が、自然に、自然排気口45から第1排気通路46に流れ出るようになっている。また、第1排気通路46に流れ出た気体は、第1排気通路46に接続された例えばシロッコファンからなる排気ファン47により、ケーシング1外に排気される。
上記加熱庫2の傾斜部2fの強制排気口48には、排気ダンパ49が設けられている。この排気ダンパ49は、排気ダンパ用モータ60(図5に示す)により回動され、強制排気口48を開閉する。また、上記強制排気口48は、第2排気通路52の一端に接続され、第2排気通路52を介して排気ダクト5に接続されている。
上記第2排気通路52には、湿度センサ53が設けられている。この湿度センサ53は、第2排気通路52を流れる気体の湿度を検出して、この湿度を示す信号を、センサ出力値(bit値)として、制御装置100(図5に示す)に出力する。
また、上記加熱庫2の傾斜部2fの給気口50には、給気ダンパ51が設けられている。この給気ダンパ51は、給気ダンパ用モータ61(図5に示す)により回動され、給気口50を開閉する。また、上記給気口50は、給気経路55を介してケーシング1および加熱庫2で形成された空間に接続されている。また、給気経路55には、例えばシロッコファンからなる給気ファン54が接続されている。
上記強制排気口48および給気口50は、加熱庫2内の気体を強制的にケーシング1外へ排気するときのみ、開放される。つまり、通常、強制排気口48は、排気ダンパ49によって閉鎖されており、給気口50は、給気ダンパ51により閉鎖されている。
なお、加熱庫2内の気体をケーシング1外に強制的に排気する場合、排気ダンパ用モータ60(図5に示す)によって排気ダンパ49を2点鎖線で示す位置まで回動させると共に、給気ダンパ用モータ61(図5に示す)により給気ダンパ51を2点鎖線で示す位置まで回動させ、強制排気口48および給気口50を開放する。そして、給気ファン用モータ58(図5に示す)によって給気ファン54を駆動させる。この給気ファン54の駆動により形成された空気の流れによって、加熱庫2内の気体を、強制排気口48および第2排気通路52を介して、排気ダクト5からケーシング1外に排気する。つまり、給気ファン54は、第2排気通路52を介して加熱庫2内の気体を外部に排気するファンである。このとき、給気ファン54に加えて、排気ファン47を駆動させてもよい。
また、給気ダンパ51を閉じた状態で、給気ファン54を駆動させることで、給気ファン54から吹き出された空気が、給気経路55を介してケーシング1と加熱庫2との間の空間に供給される。これにより、マグネトロン4などを冷却できる。
図5は、第1実施形態の加熱調理器の制御ブロック図である。
上記加熱調理器は、図5に示すように、マイクロコンピュータと入出力回路などからなり、第1加熱調理制御部110と排気制御部120とを有している制御装置100を備えている。
上記制御装置100には、上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22,蒸気発生用ヒータ34,循環ファン用モータ56,排気ファン用モータ57,給気ファン用モータ58,循環ダンパ用モータ59,排気ダンパ用モータ60,給気ダンパ用モータ61,操作パネル9,湿度センサ53,水位センサ38,チューブポンプ25およびマグネトロン4などが接続されている。また、制御装置100は、操作パネル9,湿度センサ53,水位センサなどからの信号に基づいて、上ヒータ20,中ヒータ21,下ヒータ22,蒸気発生用ヒータ34,循環ファン用モータ56,排気ファン用モータ57,給気ファン用モータ58,循環ダンパ用モータ59,排気ダンパ用モータ60,給気ダンパ用モータ61およびチューブポンプ25などを制御する。
上記第1加熱調理制御部110は、湿度センサ53により検出された湿度の値に基づいてマグネトロン4を制御する。また、マイクロ波による加熱調理を開始してから予め設定された期間、循環ファン用モータ56を介して循環ファン19を制御する。循環ファン19を制御する上記期間は、例えば、調理メニューあるいは循環ファン19の性能等により、適宜設定できる。
上記排気制御部120は、マイクロ波による加熱調理時に、排気ダンパ用モータ60を介して排気ダンパ49を制御し、給気ダンパ用モータ61を介して給気ダンパ51を制御し、給気ファン用モータ58を介して給気ファン54を制御する。
次に、第1実施形態の加熱調理器のマイクロ波による加熱調理動作について説明する。
ユーザが操作パネル9を操作して、マイクロ波による加熱を行う電子レンジメニューが選択されスタートキー13が押されると、選択された電子レンジメニューの調理プログラムに従って、上記加熱調理器がマイクロ波による加熱調理を開始する。
マイクロ波による加熱調理が開始されると、第1加熱調理制御部110が、選択された電子レンジメニューに基づいてマグネトロン4を制御して、マグネトロン4を駆動させる。
そして、排気制御部120が、排気ダンパ用モータ60を介して排気ダンパ49を制御して、強制排気口48を開放すると共に、給気ダンパ用モータ61を介して給気ダンパ51を制御して、給気口50を開放する。さらに、給気ファン用モータ58を介して給気ファン54を制御して、給気口50から加熱庫2内を通って強制排気口48に向かって流れる気体の流れを作り出す。これにより、加熱庫2内の気体を、第2排気通路52を介して、排気ダクト5からケーシング1の外部に排気する。
また、第1加熱調理制御部110は、マイクロ波による加熱調理の開始と同時に循環ファン用モータ56をオン制御して、循環ファン19を駆動させる。そして、予め設定された期間の経過後、循環ファン用モータ56をオフ制御して、循環ファン19を停止させる。これにより、一定時間の間、加熱庫2内の気体を対流させる。
加熱調理が進むにつれて、被加熱物から蒸気が発生する。この蒸気は、次第に加熱庫2内に充満し、循環ファン19が駆動している上記期間は、加熱庫2内の気体と共に攪拌される。そして、給気ファン54の駆動により作り出される気体の流れに沿って、一部が第2排気通路52に流れ込む。
第2排気通路52内の気体の湿度は、湿度センサ53により検出される。この検出された湿度に基づいて、第1加熱調理制御部110がマグネトロン4を制御する。
具体的には、湿度センサ53が、検出した第2排気通路52内の湿度を、例えば、0〜120bitのセンサ出力値として出力する。そして、例えば、「あたため自動調理」が電子調理メニューとして選択されている場合、第1加熱調理制御部110は、湿度センサ53から出力されたセンサ出力値が加熱終了判定値(例えば20bit)に達しているか否かを判定する。センサ出力値が加熱終了判定値に達している場合は、マグネトロン4をオフ制御して、加熱調理を終了する。一方、センサ出力値が加熱終了判定値に達していない場合は、マグネトロン4をオン制御して、マグネトロン4による加熱調理を継続する。
なお、第1加熱調理制御部110においてセンサ出力値の判定に用いられる加熱終了判定値は、20bitに限らず、選択された電子レンジメニューに応じて適宜変更される。
このように「あたため自動調理」では、第1加熱調理制御部110は、湿度センサ53により検出された第2排気通路52内の湿度が、加熱終了判定値に達しているか否かによって、被加熱物15への加熱を継続するか否かを判断している。
ところで、第2排気通路52内の湿度は、加熱庫2内から第2排気通路52に流れ込む被加熱物15から発生する蒸気量により決まり、被加熱物15から発生する蒸気量は、負荷量により決まる。つまり、被加熱物15の負荷量が小さくなればなるほど、被加熱物15から発生する蒸気量が少なくなり、加熱庫2内から第2排気通路52への蒸気の到達が遅くなる。その結果、第2排気通路52内の湿度が加熱終了判定値に達する時間が長くなり、被加熱物15を加熱し過ぎてしまう。
このため、上記構成の加熱調理器では、マイクロ波による加熱調理が開始されたときに循環ファン19を駆動して、加熱庫2内に対流を発生させている。被加熱物15から発生した蒸気は、この対流によって加熱庫2内で攪拌されて、第2排気通路52に送られ、被加熱物15の負荷量が小さくなるほど、循環ファン19による対流がない場合に比べて、温度変化が早くなる。よって、負荷量の小さい被加熱物15を加熱調理する場合であっても、湿度センサ53が被加熱物15の加熱状態に則した湿度を検出できるので、マイクロ波によって良好な仕上がりの加熱調理を行うことができる。
また、被加熱物15の負荷量が一定以上大きい場合に循環ファン19を駆動し続けると、加熱庫2内から第2排気通路52へ送られる被加熱物15から発生した蒸気の量が多くなりすぎる。このため、センサ出力値が加熱終了判定値に達する時間が速くなりすぎ、その結果、被加熱物15を十分に加熱できなくなってしまう。
このため、マイクロ波による加熱調理の開始から、循環ファン19を予め設定された期間(例えば60秒)だけ駆動させることによって、被加熱物15の負荷量が一定以上大きい場合に循環ファン19を駆動させても、循環ファン19による対流がない場合に比べて、少なくとも被加熱物の負荷量が小さいときほどは温度変化が早くならない。つまり、センサ出力値が加熱終了判定値に達する時間が、循環ファン19を駆動させない場合と比べて、少なくとも速くならないようにできる。
ここで、循環ファン19を加熱調理開始から予め設定された期間だけ駆動させた場合と、循環ファン19を駆動させない場合とについて、湿度センサ53のセンサ出力値を測定して、加熱調理開始からの時間と湿度センサ53のセンサ出力値との関係について調べた。
(測定条件)
・第1実施形態の加熱調理器を用いた。
・負荷量100ccの被加熱物と負荷量400ccの被加熱物とをマイクロ波により加熱した。
・循環ファンは、PWM(パルス幅変調)制御により、回転数50%で、加熱調理開始から60秒間駆動させた。
(結果)
上記測定条件での結果を図6,図7に示している。図6では、負荷量100ccの結果を太い線で示し、負荷量400ccの結果を細い線で示している。また、循環ファンを駆動させた場合を点線で示し、循環ファンを駆動させない場合を実線で示している。
図6,図7に示すように、被加熱物の負荷量が100ccの場合、循環ファンを調理開始から60秒間駆動させることで、循環ファンを駆動させない場合よりも、湿度センサのセンサ出力値が速く上昇することが分かった。例えば、図7において、循環ファンを駆動させた場合の湿度センサのセンサ出力値が20bitに到達する時間は56secであり、循環ファンを駆動させない場合の湿度センサのセンサ出力値が20bitに到達する時間69secよりも速くなることが分かった。また、循環ファンの駆動の停止後も、循環ファンを駆動させない場合よりも、湿度センサのセンサ出力値が速く上昇することが分かった。
一方、被加熱物の負荷量が400ccの場合、循環ファンを駆動させている間は、湿度センサのセンサ出力値の上昇は速くなるが、循環ファンの駆動の停止後は、循環ファンを駆動させない場合の湿度センサのセンサ出力値の上昇と比べて、少なくとも速くはならないことが分かった。例えば、図7において、循環ファンを駆動させた場合の湿度センサのセンサ出力値が20bitに到達する時間118secであり、循環ファンを駆動させない場合の湿度センサのセンサ出力値が20bitに到達する時間113secよりも遅くなることが分かった。
すなわち、上記構成の加熱調理器では、マイクロ波による加熱調理が開始されてから循環ファン19を60秒間駆動することにより、負荷量100ccの被加熱物15を加熱調理する場合に過加熱を防いで、良好な仕上がりの加熱調理ができた。また、マイクロ波による加熱調理の開始から循環ファン19を60秒間だけ駆動させることによって、負荷量400ccの被加熱物15を加熱調理する場合に不完全加熱を防ぐことができた。
なお、加熱調理の開始からの循環ファン19の駆動時間は60秒に限らず、調理メニューあるいは加熱調理器の設計に応じて、適宜変更可能である。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態の加熱調理器の制御ブロック図である。
第2実施形態の加熱調理器は、図8に示すように、第1実施形態の加熱調理器において、湿度センサ53に換えて赤外線温度センサ70を設けると共に、制御装置200に被加熱物状態推定部130を設け、第1加熱調理制御部110を第2加熱調理制御部140としたものである。なお、第1実施形態の加熱調理器と同様の構成部には同一番号を付して、第1実施形態の説明を援用する。
上記赤外線温度センサ70は、例えば8行8列の64個のセンサ素子からなる複眼赤外線温度センサであり、加熱庫2内の上部側かつ後部側に設けられている。この赤外線温度センサ70は、加熱庫2内の被加熱物15が載置された面をセンサ素子毎の複数のエリア、すなわち64のエリアに区分けして、各々のエリアについて表面温度を検出し、制御装置200に出力する。
なお、赤外線温度センサ70は、64個のセンサ素子で構成される赤外線温度センサに限らず、加熱調理器の設計に応じて、任意の個数のセンサ素子からなる赤外線温度センサを用いることができる。
また、加熱庫2内の被加熱物15が載置された面は、例えばトレイの表面、または、加熱庫2内の底面である。
上記被加熱物状態推定部130は、蒸気による加熱調理前に、赤外線温度センサ70により検出された複数のエリアの温度に基づいて、被加熱物15(図2に示す)の初期状態および負荷量を推定する。被加熱物15の初期状態には、例えば、加熱状態、常温状態、冷蔵状態および冷凍状態が含まれている。
上記第2加熱調理制御部140は、被加熱物状態推定部130により推定された被加熱物15の初期状態および負荷量に基づいて蒸気発生装置24(図3に示す)を制御する。
次に、第2実施形態の加熱調理器の蒸気による加熱調理動作について説明する。
まず、ユーザが操作パネル9を操作して、蒸気による加熱を行う調理メニューが選択されてスタートキー13が押されると、選択された調理メニューの加熱調理プログラムに従って、蒸気による加熱調理を開始する。
蒸気による加熱調理が開始されると、被加熱物状態推定部130が、加熱庫2内の被加熱物15の初期状態および負荷量を推定する。被加熱物15の初期状態および負荷量の推定は、赤外線温度センサ70により検出された加熱庫2内の複数のエリアの温度に基づいて行われる。
具体的には、まず、赤外線温度センサ70により検出された64のエリアの温度から、被加熱物15の初期状態を判断する。例えば、10℃未満のエリアが存在する場合、被加熱物15の初期状態は冷凍状態であると推定する。また、エリアの温度が全て15℃以上である場合、被加熱物15の初期状態は冷蔵であると推定する。
次に、赤外線温度センサ70により温度が検出された64のエリアの温度分布に基づいて、被加熱物15(図2に示す)の負荷量を推定する。被加熱物15の負荷量は、例えば、一定値未満の温度のエリアの累積数から推定する。この一定値は、例えば被加熱物15の初期状態ごとに予め設定される。
ここで、被加熱物15の初期状態が冷凍状態である場合の一定値を調べた。被加熱物15として、冷凍肉まんを用い、赤外線温度センサ70には、8行8列の64個のセンサ素子からなる赤外線温度センサを用いた。そして、1個から4個の冷凍肉まんを加熱庫2内に置いたときの赤外線温度センサ70により検出された64のエリアの温度の分布を調べた。その結果を図9〜図14に示している。
図9(A)〜図14(A)は、赤外線温度センサ70により検出された64のエリアの温度分布を示しており、数値は温度(℃)である。また、図9(B)〜図14(B)は、赤外線温度センサ70により検出された64のエリアの温度の累積数を示している。なお、図9(A)〜図14(A)では、上が加熱庫2内に置いた調理トレイ92の前側、下が加熱庫2内に置いた調理トレイ92の後側、左が加熱庫2内に置いた調理トレイ92の右側、右が加熱庫2内に置いた調理トレイ92の左側を示している。
1個の冷凍の肉まんをトレイの中央に置いた場合、図9(B)に示すように、10℃未満のエリアの数は3であり、10℃以上15℃未満のエリアの数は5であり、15℃以上20℃未満のエリアの数は2であり、20℃以上25℃未満のエリアの数は5であり、25℃以上30℃未満のエリアの数は49であった。15℃未満のエリアの累積数は8(3+5)であり、20℃未満のエリアの累積数は10(3+5+2)であった。
2個の冷凍の肉まんを左右に並べてトレイに置いた場合、図10(B)に示すように、10℃未満のエリアの数は4であり、10℃以上15℃未満のエリアの数は9であり、15℃以上20℃未満のエリアの数は6であり、20℃以上25℃未満のエリアの数は9であり、25℃以上30℃未満のエリアの数は36であった。15℃未満のエリアの累積数は13(4+9)であり、20℃未満のエリアの累積数は19(4+9+6)であった。
3個の冷凍の肉まんをトレイの手前側に2個トレイの奥側に1個置いた場合、図12(B)に示すように、10℃未満のエリアの数は7であり、10℃以上15℃未満のエリアの数は11であり、15℃以上20℃未満のエリアの数は7であり、20℃以上25℃未満のエリアの数は15であり、25℃以上30℃未満のエリアの数は24であった。15℃未満のエリアの累積数は18(7+11)であり、20℃未満のエリアの累積数は25(7+11+7)であった。
4個の冷凍の肉まんを正方形の各頂点に位置するようにトレイに置いた場合、図14(B)に示すように、10℃未満のエリアの数は4であり、10℃以上15℃未満のエリアの数は13であり、15℃以上20℃未満のエリアの数は14であり、20℃以上25℃未満のエリアの数は17であり、25℃以上30℃未満のエリアの数は16であった。15℃未満のエリアの累積数は17(4+13)であり、20℃未満のエリアの累積数は31(4+13+14)であった。
上記結果から、20℃未満のエリアの累積数が、肉まん1個の場合が10、肉まん2個の場合が19、肉まん3個の場合が25、肉まん4個の場合が31であり、肉まんの数(負荷量)に応じて、増加していることが分かった。
つまり、被加熱物15(肉まん)の初期状態が冷凍状態である場合、一定値を20℃に設定することで、20℃未満のエリアの累積数から被加熱物15の負荷量を推定できることが分かった。
また、図11(B)に示すように、2個の冷凍の肉まんを前後に並べてトレイに置いた場合、10℃未満のエリアの数は4であり、10℃以上15℃未満のエリアの数は8であり、15℃以上20℃未満のエリアの数は7であり、20℃以上25℃未満のエリアの数は8であり、25℃以上30℃未満のエリアの数は37であった。15℃未満のエリアの累積数は12(4+8)であり、20℃未満のエリアの累積数は19(4+8+7)であった。
さらに、図13(B)に示すように、3個の冷凍肉まんをトレイの手前側に1個トレイの奥側に2個置いた場合、10℃未満のエリアの数は7であり、10℃以上15℃未満のエリアの数は12であり、15℃以上20℃未満のエリアの数は6であり、20℃以上25℃未満のエリアの数は18であり、25℃以上30℃未満のエリアの数は21であった。15℃未満のエリアの累積数は19(7+12)であり、20℃未満のエリアの累積数は25(7+12+6)であった。
図9(A),(B)〜図14(A),(B)に示す結果から、赤外線温度センサ70により検出された64のエリアの温度の分布について、被加熱物15(肉まん)の置き方の違いによる影響は、殆どないことが分かった。
なお、被加熱物15が肉まんよりも小さい場合(例えばシュウマイ)、トレイに置かれる被加熱物15の表面積が小さくなるため、20℃未満のエリアの累積数は、肉まんの場合よりも少なくなる。同様に、被加熱物15が肉まんよりも大きい場合(例えば食パン1斤)、トレイに置かれる被加熱物15の表面積が大きくなるため、20℃未満のエリアの累積数は、肉まんの場合よりも多くなる。すなわち、被加熱物15の個数および大きさに応じた負荷量を推定できる。
このように推定された被加熱物15の初期状態および負荷量は、被加熱物状態推定部130から第2加熱調理制御部140に出力される。
続いて、第2加熱調理制御部140が、被加熱物状態推定部130から出力された被加熱物15の初期状態および負荷量を受けて蒸気発生装置24を制御して、飽和蒸気を生成する。この飽和蒸気により、被加熱物15を蒸したり、温めたりする。
ところで、従来、加熱調理器としては、例えば、特開2013−104576号公報に記載されたものがある。この加熱調理器では、加熱庫と、加熱手段と、加熱庫内の温度を検出するための温度検出手段と、加熱手段を制御するための制御装置とを備えている。そして、加熱開始から第1の所定時間が経過する間の加熱庫内の温度変化に基づいて、被加熱物の加熱開始時の温度を推定すると共に、第1の所定時間から第2の所定時間が経過するまでの加熱庫内の温度変化に基づいて、被加熱物の重量を推定し、推定された被加熱物の加熱開始時の温度および重量に基づいて、制御装置が加熱手段を制御している。
しかし、上記従来の加熱調理器(特開2013−104576号公報)では、加熱手段として赤外線センサを用いた場合、加熱庫内が蒸気により満たされていると、赤外線センサは蒸気の温度を検出してしまうため、被加熱物の温度を検出することができず、蒸し調理等の蒸気を用いた加熱調理を行うことができなかった。
また、仮に被加熱物の温度を検出できたとしても、被加熱物の初期状態(冷凍/冷蔵)および被加熱物の個数(負荷量)を検出することができないため、良好な加熱調理を行うためには、これらの情報をユーザに入力してもらう必要があった。
これに対して、本発明の第2実施形態の加熱調理器では、蒸気発生装置24からの蒸気により被加熱物15を加熱調理する前に、赤外線温度センサ70により検出された複数のエリアの温度に基づいて、被加熱物15の少なくとも冷凍状態を含む初期状態および負荷量を推定する被加熱物状態推定部130と、被加熱物状態推定部130により推定された被加熱物15の少なくとも冷凍状態を含む初期状態および負荷量に基づいて、被加熱物15を加熱調理するように蒸気発生装置24を制御する第2加熱調理制御部140と、を備えている。このため、赤外線温度センサ70が被加熱物15の温度を検出できない蒸気による調理(例えば蒸し調理)において、被加熱物15の初期状態および負荷量を推定して、良好な仕上がりの加熱調理を行うことができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態の加熱調理器は、第1実施形態の加熱調理器に、第2実施形態の加熱調理器の赤外線温度センサ70、被加熱物状態推定部130および第2加熱調理制御部140を設けたものである。第3実施形態の加熱調理器では、マイクロ波による加熱調理だけでなく、蒸気による加熱調理においても、良好な仕上がりの加熱調理を行うことができる。
本発明の加熱調理器では、オーブンレンジなどにおいて、過熱蒸気または飽和蒸気を用いることによって、ヘルシーな調理を行うことができる。例えば、本発明の加熱調理器では、温度が100℃以上の過熱蒸気または飽和蒸気を食品表面に供給し、食品表面に付着した過熱蒸気または飽和蒸気が凝縮して大量の凝縮潜熱を食品に与えるので、食品に熱を効率よく伝えることができる。また、凝縮水が食品表面に付着して塩分や油分が凝縮水と共に滴下することにより、食品中の塩分や油分を低減できる。さらに、加熱庫内は過熱蒸気または飽和蒸気が充満して低酸素状態となることにより、食品の酸化を抑制した調理が可能となる。ここで、低酸素状態とは、加熱庫内において酸素の体積%が10%以下(例えば0.5〜3%)である状態を指す。
本発明および実施形態を纏めると、次のようになる。
本発明の加熱調理器は、
被加熱物15を収容する加熱庫2と、
上記加熱庫2内の気体を対流させる対流ファン19と、
上記被加熱物15を加熱するためのマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置4と、
上記加熱庫2内の気体を外部に排気するための排気通路52と、
上記加熱庫2内から上記排気通路52を介して外部に排気される気体の湿度を検出する湿度センサ53と、
上記湿度センサ53により検出された湿度に基づいて上記被加熱物15をマイクロ波によって加熱調理するように上記マイクロ波発生装置4を制御すると共に、上記加熱調理を開始してから予め設定された期間、上記加熱庫2内の気体が対流するように上記対流ファン19を制御する加熱調理制御部110と
を備えたことを特徴としている。
上記構成の加熱調理器によれば、加熱調理制御部110が、マイクロ波による加熱調理が開始されてから予め設定された期間、加熱庫2内の気体が対流するように対流ファン19を制御する。このため、被加熱物15から発生した蒸気は、対流ファン19により形成された対流によって加熱庫2内で攪拌されて、排気通路52に送られ、被加熱物15の負荷量が小さくなるほど、対流ファン19による対流がない場合に比べて、温度変化が早くなる。また、負荷量の大きい被加熱物15を加熱調理する場合、マイクロ波による加熱調理が開始されてから予め設定された期間だけ、被加熱物15から発生する蒸気が対流ファン19により形成された対流によって加熱庫2内で攪拌されて、排気通路52に送られる。このため、対流ファン19による対流がない場合に比べて、少なくとも被加熱物15の負荷量が小さいときほどは温度変化が早くならない。その結果、湿度センサが53、被加熱物15の加熱状態に則した湿度を検出できるので、マイクロ波によって良好な仕上がりの加熱調理を行うことができる。
一実施形態の加熱調理器によれば、
上記予め設定された期間において、上記加熱調理することにより上記被加熱物15から発生した蒸気が、上記対流ファン19により上記加熱庫2内を気体と共に対流して、上記排気通路52を介して外部に排気される。
上記実施形態によれば、予め設定された期間において、マイクロ波による加熱調理によって発生する被加熱物15からの蒸気が、対流ファン19によって加熱庫2内を気体と共に対流する。このため、被加熱物15から発生した蒸気は、対流ファン19により形成された対流によって加熱庫2内で攪拌されて、排気通路52に送られ、被加熱物15の負荷量が小さくなるほど、対流ファン19による対流がない場合に比べて、温度変化が早くなる。また、負荷量の大きい被加熱物15を加熱調理する場合、マイクロ波による加熱調理が開始されてから予め設定された期間だけ、被加熱物15から発生する蒸気が対流ファン19により形成された対流によって加熱庫2内で攪拌されて、排気通路52に送られる。このため、対流ファン19による対流がない場合に比べて、少なくとも被加熱物15の負荷量が小さいときほどは温度変化が早くならない。その結果、湿度センサ53が、被加熱物15の加熱状態に則した湿度を検出できるので、マイクロ波によって良好な仕上がりの加熱調理を行うことができる。
一実施形態の加熱調理器によれば、
上記加熱庫2の壁面2fに設けられ、上記排気通路52の一端と接続された排気口48と、
上記排気口48または排気通路52に設けられ、上記排気口48または排気通路52を開閉する排気ダンパ49と、
上記排気通路52を介して上記加熱庫2内の気体を外部に排気するファン54と、
上記加熱調理時に、上記排気口48または排気通路52を開放するように上記排気ダンパ49を制御すると共に、上記排気通路52を介して上記加熱庫2内の気体を外部に排気するように上記ファン54を制御する排気制御部120と
を備えた。
上記実施形態によれば、加熱調理時に、排気制御部120によって、排気口48または排気通路52を開放するように排気ダンパ49が制御され、排気通路52を介して加熱庫2内の気体を外部に排気するようにファン54が制御されるので、マイクロ波による加熱調理によって発生する被加熱物15からの蒸気を確実に排気通路52に送ることができる。このため、湿度センサ53が、被加熱物15の加熱状態に則した湿度を検出できるので、マイクロ波によって良好な仕上がりの加熱調理を行うことができる。
一実施形態の加熱調理器によれば、
上記ファン54により気体を上記加熱庫2内に吹き出すための給気口50を備え、
上記排気口48と上記給気口50とが、上記加熱庫2の上方に配置されている。
上記実施形態によれば、有効活用し難い加熱庫2の上方に排気口48および給気口50を配置したので、加熱庫2内のスペースを有効に活用できる。その結果、加熱調理器の設計の幅を広げることができる。
一実施形態の加熱調理器によれば、
上記加熱庫2内の複数のエリアの温度を検出する赤外線温度センサ70と、
上記被加熱物15を加熱調理する前に、上記赤外線温度センサ70により検出された上記複数のエリアの温度に基づいて、上記被加熱物15の初期状態および負荷量を推定する被加熱物状態推定部130と
を備え、
上記加熱調理制御部110は、上記被加熱物状態推定部130により推定された上記被加熱物15の初期状態および負荷量に基づいて、上記被加熱物15を加熱調理する。
上記構成の加熱調理器によれば、赤外線温度センサ70が被加熱物15の温度を検出できない蒸気による調理(蒸し調理等)において、被加熱物15の少なくとも冷凍状態を含む初期状態および負荷量を推定して、良好な加熱調理を行うことができる。
上記第1,第2実施形態で述べた構成要素は、適宜、組み合わせてもよく、また、適宜、選択、置換、あるいは、削除してもよいのは、勿論である。