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JP6332056B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、クランクシャフトおよびカムシャフトそれぞれとバルブタイミング変換部を介して機械的に連結されたモータの駆動を制御することで、クランクシャフトに対するカムシャフトの位相を調整するモータ制御装置に関するものである。
特許文献1に示されるように、吸気弁のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置が知られている。このバルブタイミング調整装置は、モータ軸の固定されるロータ部およびロータ部の周りに設けられたステータコイルを有する電動モータと、ステータコイルに接続される複数のスイッチング素子と、を有している。またバルブタイミング調整装置は、オンするスイッチング素子(選択素子)をモータ軸の回転角度範囲毎に切り換える通電駆動手段と、内燃機関の運転状況やモータ軸の回転状態に応じてクランク軸とカム軸の相対位相を調整する位相調整機構と、を備えている。
上記のステータコイルに電流が流れ、ステータコイルから磁界が発生している状態でモータ軸が回転すると、それによってステータコイルに誘起電圧が発生する。モータ軸の目標回転方向がモータ軸の実回転方向と一致している場合、スイッチング素子のオンによりステータコイルへ印加される電圧に対して、反対方向の誘起電圧が発生する。これによりオン状態のスイッチング素子(選択素子)には、印加電圧と誘起電圧との差に応じた電流が流れる。しかしながらモータ軸の目標回転方向がモータ軸の実回転方向と相異している場合、スイッチング素子のオンによりステータコイルへ印加される電圧に対して、同一方向の誘起電圧が発生する。これにより選択素子には印加電圧と誘起電圧との和に応じた大電流が流れる。そのため選択素子が過度に発熱する虞がある。
そこで特許文献1に記載のバルブタイミング調整装置の通電駆動手段は、モータ軸の目標回転方向と実回転方向が一致する場合、例えばモータ軸の回転角度が機械角で30°(電気角で120°)の回転角度範囲の全域を、選択素子を継続してオンするオン範囲に設定する。そして通電駆動手段は、目標回転方向と実回転方向が相異する場合、回転角度範囲を、オン範囲と、選択素子を継続してオフするオフ範囲とに分割して設定する。これによりオン範囲においてはステータコイルに電圧が印加されるが、オフ範囲においては電圧が印加されなくなる。そのため上記の印加電圧と誘起電圧との和に応じた電流が選択素子に流れる時間が短縮され、選択素子の過度な発熱が抑制される。
特開2009−62837号公報
ところで特許文献1に示されるバルブタイミング調整装置では、電動モータ(モータ)が位相調整機構を介してクランク軸と機械的に連結されている。そのため内燃機関が燃焼駆動してクランク軸が回転している場合、ステータコイルへの通電による制御トルク(回転トルク)の発生に関わらずにモータのモータ軸も回転する。内燃機関の駆動停止によってクランク軸が惰性回転している際もモータ軸はその回転数を低減しながらもクランク軸と同一方向に回転する。しかしながらモータ軸に固定されたロータ部は永久磁石を有している。この永久磁石の周囲にはステータコイルなどの金属材料があるため、その金属材料と永久磁石との間に磁力が発生し、これがロータ部の回転を妨げるブレーキトルクとしてモータ軸に作用する。モータ軸がクランク軸とともに惰性回転し、その回転力が静止するほどに弱まると、上記のブレーキトルクのためにその回転方向が一瞬逆転した後に停止する虞がある。このように停止前に回転方向が逆転すると、通電駆動手段は目標回転方向と実回転方向が相異すると判定して、その動作を終了する。上記したように通電駆動手段は、目標回転方向と実回転方向が相異する場合、回転角度範囲をオン範囲とオフ範囲とに分割して設定する。したがってモータが停止した時点における回転角度がオン範囲に含まれる場合、再起動時に通電駆動手段によってモータのモータ軸に回転トルクを発生することができる。そのためモータ軸を回転することで、カム軸のクランク軸に対する位相を、シリンダとピストンとによって構成される燃焼室内の圧縮空気量を内燃機関の再始動に適した位相に調整することができる。しかしながらモータが停止した時点における回転角度がオフ範囲に含まれる場合、再起動時に通電駆動手段によってモータ軸に回転トルクを発生することができない。そのためモータ軸を回転することができず、カム軸のクランク軸に対する位相を、内燃機関の再始動に適した位相に調整することができない、という不具合が生じる。
なお特許文献1に記載の別構成のバルブタイミング調整装置の通電駆動手段は、目標回転方向と実回転方向が相異する場合、回転角度範囲を進角側または遅角側へと機械角で15°(電気角で60°)変位させた変位範囲の全域をオン範囲に設定する。こうすることでステータコイルに発生する誘起電圧を小さくし、印加電圧と誘起電圧との和に応じた電流を小さくしている。これにより選択素子の過度な発熱が抑制される。この別構成では、目標回転方向と実回転方向が相異する場合においても、回転角度範囲に依らずステータコイルに常時電流が流れる。そのため上記したようにモータを再起動することができなくなる、という不具合は生じない。しかしながらこの別構成の場合、上記した構成とは異なり、目標回転方向と実回転方向が相異する場合、小さくなったとは言え印加電圧と誘起電圧との和に応じた電流が常時流れる。そのため選択素子の発熱抑制効果が小さい、という問題を有する。
そこで本発明は上記問題点に鑑み、スイッチング素子の過度な発熱を抑制するとともに、モータが停止した時点における回転角度に関わらずに再起動時においてモータに回転トルクを発生することのできるモータ制御装置を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するための開示された発明の1つは、クランクシャフト(330)およびカムシャフト(320)それぞれとバルブタイミング変換部(310)を介して機械的に連結されたモータ(200)の駆動を制御することで、クランクシャフトに対するカムシャフトの位相を調整するモータ制御装置であって、
モータは、バルブタイミング変換部に連結された出力軸と、出力軸が固定されるロータ(210)と、ロータの周りに設けられたステータ(220)と、を有し、ロータは永久磁石(212)を備え、ステータはステータコイル(223〜226)を備えており、
ステータコイルに電流を流して磁束を発生させ、その磁束を永久磁石に作用させることで、出力軸の回転を促進する若しくは妨げる回転トルクをロータに生じさせるインバータ(33)と、
モータの回転角度とモータの回転方向とに依存する回転信号を出力する回転角検出部(40,60)と、
回転信号に基づいてインバータを構成する複数のスイッチング素子(34〜39)を開閉制御することでステータコイルに流れる電流を制御し、回転トルクの発生を制御するモータ制御部(32)と、
モータ制御部に回転トルクの増減方向を指示する指示部(31)と、を有し、
モータ制御部は、指示部から指示された回転トルクの増減方向がモータの回転を促進する方向の場合に通常モードになり、回転トルクの増減方向がモータの回転を妨げる方向の場合に発電モードになり、
モータ制御部は、通常モードにおいてモータの回転角度に依らずにステータコイルに常時通電し、発電モードにおいて所定の回転角度範囲だけモータが回転する毎にステータコイルへの通電を止めており、
モータ制御部は、発電モードにおいて回転信号が所定時間内で変動しているか否かを判定し、回転信号が所定時間内で変動していると判定した場合、発電モードを維持し、回転信号が所定時間内で変動していないと判定した場合、通常モードに切り換える。
永久磁石(212)とその周囲にあるステータコイル(223〜226)などの金属材料との間には、モータ(200)の出力軸の回転を妨げるブレーキトルクが発生する。モータ(200)が回転を停止しようとしている際にこのブレーキトルクによってモータ(200)が一瞬逆回転して停止すると、モータ(200)の回転方向と回転トルクの発生方向とが相違し、モータ制御部(32)が発電モードになる虞がある。発電モードのモータ制御部(32)は、所定の回転角度範囲においてステータコイルの通電を止めている。したがって停止時の回転角度範囲がこのステータコイルへの通電を止める範囲の場合、モータ(200)の再起動時にモータ(200)に回転トルクを発生することができなくなる虞がある。しかしながらブレーキトルクによってモータ(200)が回転を停止した場合、その後の回転信号は一定となる。そこで第1発明のモータ制御部(32)は、発電モードにおいて回転信号が所定時間内で変動していないと判定した場合、発電モードから通常モードに切り換える。これによりモータ(200)が停止した時点における回転角度に関わらず、再起動時にモータ(200)に回転トルクを発生し、モータ(200)の出力軸を回転することができる。したがってカムシャフト(320)のクランクシャフト(330)に対する位相を、内燃機関(300)の再始動に適した位相に調整することができる。
また上記したようにモータ制御部(32)は、発電モードでは所定の回転角度範囲においてステータコイルの通電を止めている。これによればスイッチング素子(34〜39)に過度な電流の流れることが抑制され、スイッチング素子(34〜39)の過度な発熱が抑制される。
なお、特許請求の範囲に記載の請求項、および、課題を解決するための手段それぞれに記載の要素に括弧付きで符号をつけている。この括弧付きの符号は実施形態に記載の各構成要素との対応関係を簡易的に示すためのものであり、実施形態に記載の要素そのものを必ずしも示しているわけではない。括弧付きの符号の記載は、いたずらに特許請求の範囲を狭めるものではない。
第1実施形態に係るモータ制御装置の概略構成を示すブロック図である。 モータの概略構成を示す断面図である。 回転角センサの配置を説明するための断面図である。 インバータとステータコイルの概略構成を示す回路図である。 センサ信号と制御信号の関係を示すタイミングチャートである。 センサ信号と回転角度との関係を示す図表である。 通常制御における回転角度と制御信号との関係を示す図表である。 通常制御においてインバータとステータコイルを流れる電流を示す模式図である。 発電制御における回転角度と制御信号との関係を示す図表である。 発電制御においてインバータとステータコイルを流れる電流を示す模式図である。 ブレーキトルクを模式的に示すグラフ図である。 回転角センサとステータコイルとの位置関係を示すモータの断面図である。 ロータの回転角度に対する回転角センサと永久磁石との位置関係を示す図表である。 ブレーキトルクによるモード切り換えの結果、再起動できなくなることを説明するためのタイミングチャートである。 ブレーキトルクによるモード切り換えが行われたとしても、再起動できることを説明するためのタイミングチャートである。 プリドライバの制御処理を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図16に基づいて、本実施形態に係るモータ制御装置を説明する。なお図1ではモータ制御装置100の他に、モータ200、内燃機関300、バルブタイミング変換部310、カム角センサ340、および、クランク角センサ350を図示している。そして図2、図3、図12、および、図13それぞれでは後述する電気角を括弧つきで図示し、回転角センサ60にハッチングを施している。また図13では煩雑と成ることを避けるために符号を省略し、回転状態を明りょうとするために後述の永久磁石212の1つのN極にハッチングを施している。
モータ制御装置100はモータ200の回転を制御することで、内燃機関300のカムシャフト320とクランクシャフト330の位相差(以下、カム位相と示す)を制御するものである。図1に示すようにモータ制御装置100は3つのステータ線97〜99を介してモータ200と電気的に接続され、モータ200はバルブタイミング変換部310を介して内燃機関300と機械的に連結されている。以下においては先ずモータ200、バルブタイミング変換部310、および、内燃機関300を説明した後、モータ制御装置100について詳説する。
図2に示すようにモータ200は出力軸に固定されたロータ210、および、ロータ210の周りに設けられたステータ220を有する。ロータ210は円柱形状の鉄芯211と、この鉄芯211に埋め込まれた永久磁石212と、を有する。本実施形態では永久磁石212のN極とS極とが交互に隣接するように鉄芯211の軸周りに等間隔で埋め込まれており、隣り合うN極とS極の隣接間隔が45°になっている。これにより複数の永久磁石212にて発生される磁束はロータ210が90°回転する毎に周期的に変化し、機械角90°に対して電気角が360°になっている。この永久磁石212から発せられる磁束が後述の回転角センサ60にて検出される。
これに対してステータ220は円筒形状のケース221と、このケース221の内周面に設けられた突極222と、突極222に巻き回されたステータコイル223と、を有する。ケース221の内周面に12個の突極222が等間隔で設けられ、2つの突極222の最短隣接間隔がロータ210の軸周りにて30°になっている。ステータコイル223としては図4に示すようにU相ステータコイル224、V相ステータコイル225、W相ステータコイル226を有する。上記した12個の突極222にU相ステータコイル224、V相ステータコイル225、W相ステータコイル226が順に隣接するように巻き回され、それぞれ隣接間隔が90°の関係にある4つの突極222に巻き回されている。3つのステータコイル224〜226は図4に示すようにY結線され、それぞれ対応するインバータ33の2つのスイッチの中点に結線されている。後で詳説するが、例えば図4に示すスイッチ34,37がオン状態になるとステータコイル224,225が電源のプラス端子とマイナス端子とに接続され、ステータコイル224,225に電流が流れる。この電流の流動によってステータコイル224,225から磁束が発生され、この磁束がロータ210の永久磁石212に作用することでロータ210に回転トルクが発生する。これによりモータ200の出力軸が自立回転する。
上記したモータ200の出力軸はバルブタイミング変換部310を介してカムシャフト320と連結されている。そしてバルブタイミング変換部310はチェーンを介してクランクシャフト330と連結されている。内燃機関300の駆動によってクランクシャフト330が回転し始めると、それに伴ってバルブタイミング変換部310とともにカムシャフト320とモータ200の出力軸も回転し始める。この回転によってカムシャフト320のカムジャーナルに設けられたカムロブが回転する。カムロブの回転により吸気弁と排気弁が燃焼室に対して上下動し、吸気弁にて燃焼室への吸気が行われ、排気弁にて燃焼室からの排気が行われる。
内燃機関300が例えば4サイクルエンジンの場合、吸気弁若しくは排気弁に対応するカムシャフト320のカムロブは、クランクシャフト330が2回転すると1回転する。通常、吸気弁と排気弁の位相はカムシャフト320の回転角度で換算するとおよそ180°ずれている。この位相差は、上記したカム位相をモータ制御装置100、モータ200、および、バルブタイミング変換部310によって制御することで調整可能となっている。
図示しないがバルブタイミング変換部310は上記したチェーンを介して伝達されるクランクシャフト330の回転トルクをカムシャフト320に伝達しつつ、カムシャフト320をクランクシャフト330に対して相対的に回転させる遊星歯車機構を有する。バルブタイミング変換部310は上記したチェーンが連結される環状のリングギヤ、および、リングギヤの中に設けられた円盤状のピニオンギヤとバルブギヤを有する。リングギヤはチェーンを介してクランクシャフト330に連結され、バルブギヤはカムシャフト320に連結されている。そしてピニオンギヤはモータ200の出力軸に連結されている。リングギヤの内側面に歯が形成され、ピニオンギヤおよびバルブギヤそれぞれの外側面に歯が形成されている。このリングギヤの内側面の歯とピニオンギヤの歯とが噛み合わさり、ピニオンギヤの歯とバルブギヤの歯とが噛み合わさっている。したがってクランクシャフト330が回転するとその回転トルクがチェーンを介してリングギヤに伝達され、これによってリングギヤが回転する。するとピニオンギヤがバルブギヤの周りを公転し、これによってバルブギヤが回転する。この結果、クランクシャフト330とともにカムシャフト320が回転する。
カムシャフト320におけるクランクシャフト330との位相差(カム位相)を維持する場合、モータ制御装置100はモータ200によってピニオンギヤを自転させずにバルブギヤの周りを公転させることで、バルブギヤとリングギヤとを同一の速さで回転させる。しかしながらカム位相を進角若しくは遅角する場合、モータ制御装置100はモータ200によってピニオンギヤを自転させつつバルブギヤの周りを公転させることで、バルブギヤをリングギヤに対して相対的に回転させる。モータ200の出力軸がクランクシャフト330よりも速く公転するとカム位相が進角され、出力軸がクランクシャフト330よりも遅く公転するとカム位相が遅角される。進角若しくは遅角によってカム位相が目標とする位相に到達すると、モータ200の出力軸をリングギヤと同一の速さで公転させる。これによって調整後のカム位相が維持される。このモータ200によるカム位相制御によって、吸気タイミングと排気タイミングが調整される。
図1に示すようにモータ200には回転角センサ60が設けられ、内燃機関300にはカム角センサ340とクランク角センサ350が設けられている。回転角センサ60によってモータ200の回転状態を示す検知信号が検出され、カム角センサ340とクランク角センサ350によってカムシャフト320の回転角度とクランクシャフト330の回転角度が検出される。モータ制御装置100は検知信号に基づいてモータ200の回転角度を算出し、カムシャフト320の回転角度とクランクシャフト330の回転角度とに基づいて内燃機関300の回転数を算出する。モータ制御装置100は算出した内燃機関300の回転数とモータ200の回転角度とに基づいてモータ200を制御する。こうすることでモータ制御装置100はカム位相制御を行う。
なおカム位相制御を行うためには上記した目標とする位相を算出しなくてはならない。この目標とする位相は、ユーザーのアクセル踏込量を示すアクセル開度センサや内燃機関300の吸入空気量を計測するエアフローメータなどの車両の走行状態を示す各種センサ信号に基づいて、モータ制御装置100にて算出される。以下、モータ制御装置100について詳説する。
図1に示すようにモータ制御装置100は、電子制御装置10、ドライバ20、および、回転角センサ60を有する。電子制御装置10はドライバ20に目標とするモータ200の回転数(回転速度)を含む指示信号を出力するものであり、ドライバ20は指示信号および回転角センサ60の検知信号に基づいてモータ200を制御するものである。回転角センサ60はモータ200の回転に応じた検知信号を生成してドライバ20に出力するものである。電子制御装置10とドライバ20とは4つの信号線90〜93を介して電気的に接続され、ドライバ20と回転角センサ60とは3つのセンサ線94〜96を介して電気的に接続されている。
電子制御装置10は上記した車両の走行状態を示す各種センサ信号や内燃機関300の回転数、および、ドライバ20から出力される回転角信号と回転方向信号に基づいて目標とするモータ200の回転数を決定するものである。電子制御装置10は上記の各種センサ信号に基づいて、車両の走行状態に適合する目標と成るカム位相を算出する。次いで電子制御装置10は、この目標とするカム位相とするためのモータ200の回転数を算出し、この回転数を含めた指示信号をドライバ20に出力する。なお電子制御装置10は指示信号に含める回転数を常に有限の値に設定しており、内燃機関300が燃焼駆動を停止した場合、指示信号に有限の回転数とともに、ドライバ20に回転トルクの発生を止める指示を含ませる。
図1に示すようにドライバ20は、モータ制御部30、センサ信号処理部40、および、状態判定部50を有する。モータ制御部30は電子制御装置10から入力される指示信号およびセンサ信号処理部40から入力される回転角信号とセンサ信号に基づいてモータ200の回転を制御するものである。モータ制御部30はモータ200の出力軸を自立回転するための回転電流をモータ200の3相のステータコイル224〜226に流すことでロータ210を回転する。センサ信号処理部40は回転角センサ60から入力されるアナログの検知信号に基づいてデジタルのセンサ信号、回転角信号、および、回転方向信号を生成するものである。状態判定部50は後述の状態判定信号を生成するものである。この状態判定部50には上記したセンサ信号、回転角信号、回転方向信号、指示信号、および、回転電流が入力される。なお図示しないが、上記の回転電流を検出するための電流センサをモータ制御装置100は有しており、この電流センサの検出信号が状態判定部50に入力される。
モータ制御部30は、電子制御装置10から指示信号が入力されると指示信号に含まれる回転数に出力軸の回転数が一致するように回転電流を流す。これによってモータ制御部30はカム位相を進角、遅角、若しくは、維持する。しかしながら上記したように内燃機関300の燃焼駆動が停止し、指示信号に回転トルクの発生を止める指示が含まれる場合、モータ制御部30は3相のステータコイル224〜226に回転電流を流さない。この場合モータ200の出力軸はクランクシャフト330およびカムシャフト320に連れまわされて回転する。上記の遊星歯車機構はカム位相を最も遅い最遅角、および、最も進んだ最進角に止めるためのストッパを有している。上記したようにモータ200の出力軸がクランクシャフト330によって連れ回されて回転する場合、カム位相は最遅角になる。
図1に示すようにモータ制御部30は、回転制御処理部31、プリドライバ32、および、インバータ33を有する。回転制御処理部31は指示信号に含まれる目標とする回転数(目標回転数)、および、後述の回転角信号から検出した現在の回転数(現在回転数)に基づいて回転トルクの増減方向を算出する。回転制御処理部31は目標回転数が現在回転数よりも高い場合、回転トルクの増減方向をモータ200の回転が促進される方向にして増加することを決定する。その反対に目標回転数が現在回転数よりも低い場合、回転制御処理部31は回転トルクの増減方向をモータ200の回転が妨げられる方向にして減少することを決定する。回転制御処理部31はこの回転トルクの増減方向を含む制御情報をプリドライバ32に出力する。回転制御処理部31が特許請求の範囲に記載の指示部に相当する。
プリドライバ32は回転制御処理部31から入力される制御情報、および、センサ信号処理部40から入力される回転角信号とセンサ信号に基づいてインバータ33を制御する。プリドライバ32は後述のセンサ信号に基づいてロータ210の現在の回転方向(実回転方向)を検出し、この実回転方向と制御情報に含まれる回転トルクの増減方向(トルク方向)とを比較する。プリドライバ32は実回転方向とトルク方向の両者が一致する場合(回転を促進する方向の場合)に通常モードとなり、両者が相違する場合(回転を妨げる方向の場合)に発電モードとなる。プリドライバ32は通常モードにおいて出力軸の回転方向に沿う回転トルクが発生するようにインバータ33の駆動を制御することで出力軸の回転を促進して回転速度を速くする。またプリドライバ32は発電モードにおいて出力軸の回転方向とは逆向きの回転トルクが発生するようにインバータ33の駆動を制御することで出力軸の回転を妨げて回転速度を遅くする。このプリドライバ32の通常モードおよび発電モード時におけるインバータ33の制御(通常制御と発電制御)は後で詳説する。上記したプリドライバ32による回転方向の検出は、後述するようにセンサ信号処理部40と同様にして図6に基づいて行われる。プリドライバ32は図6に示すセンサ信号と回転方向の関係を記憶している。
上記したように指示信号には常に有限の回転数が含まれているので、回転制御処理部31はトルク方向を常時プリドライバ32に出力している。そのためプリドライバ32は常に通常モードか発電モードになっている。特に内燃機関300の燃焼駆動が終了して、指示信号に回転トルクの発生を止める指示が含まれる場合、ロータ210がクランクシャフト330とともに惰性回転している方向にトルク方向が一致している。したがってこの場合プリドライバ32は通常モードとなっている。プリドライバ32が特許請求の範囲に記載のモータ制御部に相当する。
図4に示すようにインバータ33はステータコイル224〜226それぞれに対応するスイッチ34〜39を有している。本実施形態においてスイッチ34〜39はそれぞれNチャネル型MOSFETであり、特許請求の範囲に記載のスイッチング素子に相当する。電源のプラス端子からマイナス端子に向かってU相スイッチ34,35、V相スイッチ36,37、および、W相スイッチ38,39それぞれが直列接続され、これら対を成す2つのスイッチが並列接続されている。そしてU相スイッチ34,35の中点にU相ステータコイル224の一端が接続され、V相スイッチ36,37の中点にV相ステータコイル225の一端が接続され、W相スイッチ38,39の中点にW相ステータコイル226の一端が接続されている。これらステータコイル224〜226それぞれの他端が互いに結線され、ステータコイル224〜226がY結線されている。本実施形態では回転トルクの発生量を調整するために、電源のマイナス端子側に接続された下段スイッチ35,37,39それぞれをプリドライバ32によってPWM制御している。この下段スイッチ35,37,39それぞれのオン時間を決定するデューティ比は指示信号に含まれる回転数に基づいて回転制御処理部31が算出し、そのデューティ比が上記の制御情報に含まれる。本実施形態では説明を簡単にするためにデューティ比が100%で一定としている。
センサ信号処理部40は、回転角センサ60から出力される出力軸の回転角に対応する検知信号を二値化処理してデジタルのセンサ信号を生成し、このセンサ信号に基づいて回転角信号と回転方向信号を生成する。図2に示すように回転角センサ60はセンサ素子として3つのホール素子61〜63を有し、これら3つのホール素子61〜63はロータ210の永久磁石212の上方に位置している。上記したように永久磁石212にて発生される磁束はロータ210が機械角で90°(電気角で360°)回転する毎に周期的に変化する。そのためロータ210が機械角で90°回転すると、3つのホール素子61〜63それぞれを透過する磁束の向きが反転する。図2および図3に示すように3つのホール素子61〜63はロータ210の軸周りにおいて機械角で隣接角度30°(電気角で120°)で設けられている。これにより3つのホール素子61〜63を透過する永久磁石212の磁束は電気角で120°ずれており、3つのホール素子61〜63から出力される検知信号の位相も120°ずれている。この3つの検知信号がセンサ信号処理部40にて二値化処理され、図5に示すパルス状のU相センサ信号、V相センサ信号、W相センサ信号が生成される。図5〜図7、図9に示す回転角度は上記した電気角に相当し、以下においては特に断わらない限り、回転角度を電気角で表す。なお上記のセンサ信号が特許請求の範囲に記載の回転信号に相当し、センサ信号処理部40と回転角センサ60とによって特許請求の範囲に記載の回転角検出部が構成されている。
上記した3つのセンサ信号は同一の波形を有し、ロータ210が180°回転すると電圧レベルがHiレベルからLoレベル、若しくは、LoレベルからHiレベルに変動する。そして3つのセンサ信号は互いに位相が120°ずれている。以上により図5および図6に示すようにロータ210の回転角度が60°進む毎にU相センサ信号、V相センサ信号、W相センサ信号の内のいずれか1つの電圧レベルが変化する。
上記した回転角信号は3つのセンサ信号の内の少なくとも1つの電圧レベルが変化する毎に電圧レベルが所定時間変化して元に戻るパルス信号である。本実施形態において回転角信号は、センサ信号の電圧レベルがHiレベルからLoレベル、若しくは、LoレベルからHiレベルに変化する毎に、電圧レベルがHiレベルからLoレベルへと変化する。そして所定時間後に電圧レベルがLoレベルからHiレベルへと元に戻る。換言すれば、出力軸が60°回転する毎に回転角信号に含まれるパルスが立ち下がる。したがって回転角信号のパルスの立ち下りエッジを検出することで、モータ200が60°回転したことを検出することができる。このため単位時間当たりの回転角信号のパルスの数(立ち下りエッジ数)を検出することでモータ200の回転数(回転速度)を検出することができる。
上記した回転方向信号は3つのセンサ信号の電圧レベルの変化パターンに応じて、Hiレベル若しくはLoレベルに電圧レベルが固定されるパルス信号である。この回転方向信号の電圧レベルを定めるためには、センサ信号処理部40がモータ200の回転方向を検出しなければならないが、モータ200の回転方向は図6に示す図表に基づいて検出される。センサ信号処理部40は図6に示すモータ200の回転角度に対する3つのセンサ信号の変化パターンの対応関係を記憶している。センサ信号処理部40は図5および図6に示すように時間がt1からt7へと進む過程(期間T1からT6へと進む過程)において3つのセンサ信号の電圧レベルがどのように変化したかを判定する。例えば図6に示すように期間T1においてU相センサ信号、V相センサ信号、W相センサ信号の電圧レベルがHi,Lo,Hiの場合に、時間が進み期間T2においてHi,Lo,Loと変化した場合、センサ信号処理部40はモータ200が正転していると判定する。これとは異なり、期間T1においてU相センサ信号、V相センサ信号、W相センサ信号の電圧レベルがHi,Lo,Hiの場合に、時間が進み期間T2においてLo,Lo,Hiと変化した場合、センサ信号処理部40はモータ200が逆転していると判定する。このようにセンサ信号処理部40は、図6に示す3つのセンサ信号の電圧レベルの組み合わせが時間経過に伴って実線矢印で示すように左から右へと変化する場合にモータ200は正転していると判定する。それとは逆にセンサ信号処理部40は、図6に示す3つのセンサ信号の電圧レベルの組み合わせが時間経過に伴って破線矢印で示すように右から左へと変化する場合にモータ200は逆転していると判定する。センサ信号処理部40はこの判定結果に基づいて回転方向信号の電圧レベルを決定している。
状態判定部50はモータ200の回転状態に応じて、デューティ比の変化する状態判定信号を生成する。本実施形態に係る状態判定部50は3つのセンサ信号の電圧レベルが変化している場合に第1デューティ比の状態判定信号を生成する。これとは異なり3つのセンサ信号それぞれの電圧レベルが一定となった場合に状態判定部50は第1デューティ比とは異なる第2デューティ比の状態判定信号を生成する。本実施形態において第1デューティ比は80%、第2デューティ比は90%である。第1デューティ比はモータ200が回転状態であることを示し、第2デューティ比はモータ200が停止状態であることを示している。この状態判定信号が電子制御装置10に入力される。電子制御装置10は状態判定信号のデューティ比に基づいてモータ200が回転状態であるのかそれとも停止状態であるのかを判別する。
本実施形態に係る状態判定部50はモータ200の回転状態の他に別の判定も行う。すなわち状態判定部50は、センサ信号の状態、モータ制御部30の状態、および、指示信号線90の状態の判定も行う。例えばU相センサ信号とV相センサ信号の電圧レベルが変化しているにも関わらず、W相センサ信号の電圧レベルが一定となる場合がある。この場合状態判定部50はW相センサ信号を生成する第3ホール素子63、若しくはこの第3ホール素子63とセンサ信号処理部40とを接続する第3センサ線96に天絡若しくは地絡が生じていると判定し、第3デューティ比(40%)の状態判定信号を生成する。また、例えばステータ線97〜99を介して3相のステータコイル224〜226に供給する回転電流の少なくとも1つの電圧レベルが一定となった場合、状態判定部50はモータ制御部30に異常が生じた、若しくは、ステータ線97〜99の少なくとも1つに天絡若しくは地絡が生じたと判定する。この場合、状態判定部50は第4デューティ比(60%)の状態判定信号を生成する。さらに言えば、例えば指示信号線90の電圧レベルが一定となった場合、状態判定部50は指示信号線90に天絡若しくは地絡が生じたと判定し、第5デューティ比(100%)の状態判定信号を生成する。電子制御装置10は状態判定信号のデューティ比に基づいて、モータ200の回転状態だけではなく、センサ信号の状態、モータ制御部30の状態、および、指示信号線90の状態も判別する。
次に、通常制御を説明する。プリドライバ32は通常制御においてロータ210が回転している方向(実回転方向)とインバータ33によってロータ210に生成される回転トルクの方向(トルク方向)とを同一とする。すなわちトルク方向を、ロータ210の回転を促進する方向にする。この制御では、図7に示すようにロータ210の回転角度が0°−120°において電源のプラス端子側に接続されたU相上段スイッチ34をオン状態、120°−240°においてV相上段スイッチ36をオン状態、240°−360°においてW相上段スイッチ38をオン状態とする。またロータ210の回転角度が300°−60°において電源のマイナス端子側に接続されたV相下段スイッチ37をオン状態、60°−180°においてW相下段スイッチ39をオン状態、180°−300°においてU相下段スイッチ35をオン状態とする。このようにプリドライバ32はモータ200が360°回転する間に、電源のプラス端子側に接続された上段スイッチ34,36,38、および、電源のマイナス端子側に接続された下段スイッチ35,37,39を順次オン状態とする。こうすることで3つのステータコイル224〜226の内の2つが電源のプラス端子とマイナス端子とに直列接続され、ステータコイルに回転電流が流れる。この結果回転トルクがロータ210に発生し、モータ200の出力軸が回転する。なお、上記したように下段スイッチ35,37,39それぞれは実際には目標回転数と現在回転数との乖離に応じてバルス幅制御される。本実施形態では議論を簡単とするために制御対象となる下段スイッチが常時オン状態になるとして説明している。
例えばモータ200の回転角度が0°−60°においてスイッチ34,37それぞれがオン状態になると、スイッチ34,37を介してステータコイル224,225が電源のプラス端子とマイナス端子とに直列接続される。したがって図8にて実線矢印で示すように電源のプラス端子からマイナス端子へと向かう電源電圧に基づく電流が流れる。この際、モータ200の実回転方向とトルク方向とが同一であるため、ステータコイル224,225には電源電圧とは逆向きの逆起電力が発生する。したがってこの場合、図8にて破線矢印で示すように電源のマイナス端子からプラス端子へと向かう逆起電力に基づく電流が流れる。この際、スイッチ34,37それぞれを流れる2つの電流の流動方向が反対向きとなるため、スイッチ34,37それぞれに過剰な電流が流れず、過度に発熱することがない。
次に、発電制御を説明する。プリドライバ32は発電制御においてロータ210の実回転方向とトルク方向とを異ならせる。すなわちトルク方向を、ロータ210の回転を妨げる方向にする。この場合、図9に破線で囲って示すように、図7に示す通常制御とは異なり、モータ200の回転角度が60°−120°、180°−240°、300°−360°それぞれにおいて電源のプラス端子側に接続された上段スイッチ34,36,38の全てをオフ状態とする。したがって上記した3つの角度範囲ではステータコイル224〜226に電源電圧に基づく回転電流が流れず、その回転電流に基づく回転トルクがロータ210には発生されない。しかしながら上記したようにモータ200の出力軸はバルブタイミング変換部310を介してクランクシャフト330と連結されている。したがってクランクシャフト330の回転に連れ回されてモータ200の出力軸も回転し、その回転角度が0°−60°、120°−180°、若しくは、240°−300°に変化する。この角度範囲では電源のプラス端子側に接続された上段スイッチ34,36,38の内の1つがオン状態となり、電源のマイナス端子側に接続された下段スイッチ35,37,39の内の1つがオン状態となる。これによりステータコイル224〜226に回転電流が流れ、その回転電流に基づく回転トルクがロータ210に発生される。
上記したようにステータコイル224〜226に全く電流を流さなくするのは、下記理由のためである。例えばモータ200の回転角度が0°−60°においてスイッチ34,37それぞれがオン状態になると、スイッチ34,37を介してステータコイル224,225が電源のプラス端子とマイナス端子とに直列接続される。したがって図10にて実線矢印で示すように電源のプラス端子からマイナス端子へと向かう電源電圧に基づく電流が流れる。この際、モータ200の実回転方向とトルク方向とが相違するため、U相ステータコイル224には電源電圧と同一方向の逆起電力が発生する。したがってこの場合、図10にて破線矢印で示すようにU相上段スイッチ34からステータコイル224,226を介してW相上段スイッチ38へと向かう逆起電力に基づく電流が流れる。この際、U相上段スイッチ34を流れる2つの電流の流動方向が同一となるため、U相上段スイッチ34に過剰な電流が流れ、それによって過度に発熱する虞がある。このような過度な発熱は、上段スイッチ36,38においても同様に起こる可能性がある。
このようにモータ200の実回転方向とトルク方向とを異ならせる発電制御では、上段スイッチ34,36,38それぞれが過度に発熱する虞がある。そのため上記したようには特定の角度範囲において上段スイッチ34,36,38それぞれをオフ状態とし、上段スイッチ34,36,38それぞれに電流の流れない時間を設ける。これにより上段スイッチ34,36,38の過度な発熱が抑制される。
しかしながらこのような発熱制御を行う場合、下記に示す不具合の生じる虞がある。図2に示したように、ロータ210は複数の永久磁石212を有し、この永久磁石212の周囲には突極222に巻き回されたステータコイル223が設けられている。ステータコイル223に回転電流が流れていない場合、回転電流による回転トルクはロータ210には発生しない。しかしながら上記した永久磁石212とステータコイル223との間に磁力が生じ、これがロータ210の回転を妨げるブレーキトルクとしてロータ210に作用する。この永久磁石212のために生じるブレーキトルクはロータ210の回転に対して図11に示すように変動する。ブレーキトルクがゼロとなるのは、ステータコイル223(突極222)と永久磁石212のN極若しくはS極が対向する場合である。しかしながらロータ210が回転し、それによってN極若しくはS極と突極222とが対向位置から離れると、それを妨げるブレーキトルクが発生する。なお上記の磁力のためにロータ210の回転を促進するトルクも発生する。しかしながらロータ210の回転を妨げる方向のトルクが問題となるため、本実施形態ではこのトルクを主として論じている。
図12に示すように3つのホール素子61〜63の内の真ん中に位置する第3ホール素子63は、自身に最も近い突極222と機械角で7.5°(電気角で30°)ずれるように配置されている。したがって図13の(a)欄に示すように永久磁石212の4つのN極が突極222と対向している状態において第1ホール素子61がN極とS極との間に位置し、第1ホール素子61の出力レベルがHiレベルからLoレベル、若しくは、LoレベルからHiレベルへと変化する。そして図13の(b)欄に示すようにロータ210が60°回転すると永久磁石212の4つのS極が突極222と対向し、第3ホール素子63がN極とS極との間に位置してその出力レベルが変化する。以下同様にして図13の(c)〜(f)欄に示すようにロータ210が60°回転する毎に永久磁石212の4つのN極若しくはS極が突極222と対向し、3つのホール素子61〜63の内の1つがN極とS極との間に位置してその出力レベルが変化する。以上により、ロータ210が60°、120°、180°、240°、300°、360°(0°)回転した際に永久磁石212のN極若しくはS極が突極222と対向してブレーキトルクがゼロとなる。そしてこれら6つの回転角度の際に3つのホール素子61〜63の内の1つの出力レベルが反転する。
上記したようにモータ200の出力軸はクランクシャフト330に連れ回されて回転する。しかしながら内燃機関300での燃焼駆動が終了すると、クランクシャフト330とともにモータ200の出力軸の回転も弱まる。その回転が静止するほどに弱まると、上記のブレーキトルクのためにその回転方向が一瞬逆転した後、N極若しくはS極が突極222と対向するようにロータ210が停止する虞がある。この際、例えば図14に示すように第3ホール素子63の出力レベルが反転した後に元に戻ると、それによってセンサ信号処理部40とプリドライバ32にてロータ210が逆回転したと判定される。するとプリドライバ32はモータ200の実回転方向とトルク方向とが相違すると判定し、通常モードから発電モードへと切り換わる。そしてその動作を終了する。上記したようにプリドライバ32は発電モードの場合、所定の角度範囲においてステータコイル224〜226に回転電流を流さない。例えば図14に示すようにモータ200が回転角度180°−240°の範囲にて停止した場合、再起動時においてプリドライバ32はこの角度範囲に対応した制御信号をスイッチ34〜39に出力する。この場合、図9に示すように電源のプラス端子側に位置する全ての上段スイッチ34,36,38がオフ状態に制御されるため、ステータコイル224〜226に回転電流が流れない。そのためロータ210に回転トルクが生じず、ロータ210を回転することができなくなる。
これに対して本実施形態に係るプリドライバ32は、通常モードから発電モードに切り換わった後に、センサ信号処理部40から出力されるセンサ信号が一定であるか否かを判定する。モータ200がクランクシャフト330とともに回転している場合、逆転したとしてもセンサ信号の電圧レベルが変化する。しかしながらモータ200の回転がブレーキトルクのために一瞬逆転した後に停止した場合、上記のセンサ信号の電圧レベルは図14および図15に示すように一定となる。そこでプリドライバ32は、通常モードから発電モードに切り換わった後にセンサ信号が一定であるのか否かを判定する。プリドライバ32はセンサ信号の電圧レベルが変化する場合、発電モードを維持する。しかしながらプリドライバ32はセンサ信号の電圧レベルが一定の場合、図15の時間t7に示すように発電モードから通電モードに切り換える。上記したようにプリドライバ32は通常モードにおいて、ロータ210の全ての角度範囲においてステータコイル224〜226に回転電流を流す。したがって図15の時間t8に示すように再起動時においてステータコイル224〜226に回転電流が流れ、これによってロータ210が回転される。
次に、プリドライバ32の制御処理を図16に基づいて詳説する。先ずステップS10においてプリドライバ32は回転制御処理部31から入力される制御情報、および、センサ信号処理部40から入力されるロータ210の回転角信号とセンサ信号を読み込む。そしてプリドライバ32はステップS20へと進む。
ステップS20へ進むとプリドライバ32は読み込んだセンサ信号、および、図6に示す関係に基づいてロータ210の回転方向を判定する。そしてプリドライバ32はステップS30へと進む。
ステップS30へ進むとプリドライバ32は読み込んだ回転角信号に含まれる回転数が記憶している閾値よりも高いか否かを判定する。すなわちプリドライバ32はロータ210の回転数(回転速度)が発電制御を行えるほどに速いか否かを判定する。回転数が閾値よりも高いと判定するとプリドライバ32はステップS40へと進み、回転数が閾値以下であると判定するとプリドライバ32はステップS50へと進む。
なおブレーキトルクのためにロータ210が一瞬逆方向に回転した後に停止する場合、その信号の切り換わりは一瞬で起こるため、回転数が上記した閾値よりも十分に高いとプリドライバ32は判定する。したがってブレーキトルクのためにロータ210が逆回転した場合、プリドライバ32はステップS50へと進む。
ステップS40へ進むとプリドライバ32は動作モードを通常モードにし、ステップS60へと進む。
そしてステップS60へ進むとプリドライバ32は上記した通常制御を実施して、回転トルクをロータ210に生成し、その動作を終了する。
フローを遡り、ステップS30において回転数が閾値よりも高いと判定してステップS50へ進むとプリドライバ32は、ロータ210の回転方向とトルク方向とが異なるか否かを判定する。回転方向とトルク方向とが同一であると判定するとプリドライバ32はステップS40へと進み、通常制御を実施する。これとは異なり回転方向とトルク方向とが異なると判定するとプリドライバ32はステップS70へと進む。以上に示したステップS10〜S60をプリドライバ32が順次繰り返して通常制御を実施することで、ロータ210の回転速度が速くなる。
ステップS70へ進むとプリドライバ32は動作モードを発電モードにし、ステップS80へと進む。
そしてステップS80へ進むとプリドライバ32は上記した発電制御を実施して、回転トルクをロータ210に生成する。そしてプリドライバ32はステップS90へと進む。
ステップS90へ進むとプリドライバ32はセンサ信号の電圧レベルが変化しているか否かを計測する。そしてプリドライバ32はステップS100へと進む。
ステップS100へと進むとプリドライバ32はステップS90において計測していた時間内にセンサ信号の電圧レベルが変化したか否かを判定する。センサ信号の電圧レベルが変化する場合、プリドライバ32はその動作を終了する。以上に示したステップS10〜S30、S50、S70〜S100をプリドライバ32が順次繰り返して発電制御を実施することで、ロータ210の回転速度が遅くなる。これとは異なりセンサ信号の電圧レベルが変化しない場合、プリドライバ32はステップS10へと戻る。上記したようにブレーキトルクのためにロータ210が一瞬逆転した後に停止した場合、再度ステップS10からステップS30へと進んだ際、モータ200の回転数がゼロとなっているので、プリドライバ32は回転数が閾値よりも低いと判定する。そのためプリドライバ32はステップS40へと進み、通常モードへと切り換わってその動作を終了する。
次に、本実施形態に係るモータ制御装置100の作用効果を説明する。上記したようにプリドライバ32は発電モードにおいて、特定の回転角度範囲において上段スイッチ34,36,38それぞれをオフ状態とし、上段スイッチ34,36,38それぞれに電流の流れない時間を設ける。これによれば上段スイッチ34,36,38に過度な電流の流れることが抑制され、上段スイッチ34,36,38の過度な発熱が抑制される。
またプリドライバ32は発電モードにおいて、センサ信号が計測時間内で変動していないと判定した場合、発電モードから通常モードに切り換わる。これによればブレーキトルクのためにモータ200が一瞬逆回転し、プリドライバ32が通常モードから発電モードに一時的に切り換わったとしても、再び通常モードに切り換わる。したがってモータ200が停止した時点における回転角度に関わらず、再起動時にプリドライバ32によってモータ200に回転トルクを発生し、モータ200の出力軸を回転することができる。これによりカム位相を、内燃機関300の再始動に適した位相に調整することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
本実施形態ではセンサ信号が計測時間内に変動していないと判定した場合にプリドライバ32が発電モードから通常モードに切り換わる例を示した。しかしながら発電モードから通常モードへの切り換え判定としては上記例に限定されず、例えばプリドライバ32は回転角信号に基づいて動作モードの切り換えを行ってもよい。ブレーキトルクのためにモータ200が一瞬逆回転した後に停止すると、センサ信号とともに回転角信号の電圧レベルも一定となる。したがってプリドライバ32は回転角信号が計測時間内に変動していないと判定した場合に発電モードから通常モードに切り換えてもよい。
本実施形態ではプリドライバ32がセンサ信号に基づいてモータ200の回転方向を検出する例を示した。しかしながらプリドライバ32にセンサ信号処理部40にて検出されたモータ200の回転方向が入力される構成を採用することもできる。
本実施形態では回転角センサ60がセンサ素子としてホール素子を有する例を示した。しかしながらセンサ素子としては磁気信号を電気信号に変換する磁電変換素子であれば適宜採用することができる。またセンサ素子の数として3つの例を示したが、センサ素子の数としては3つ以上であればよい。
本実施形態ではドライバ20が状態判定部50を有する例を示した。しかしながらドライバ20は状態判定部50を有していなくともよい。
本実施形態では回転角信号が3つのセンサ信号の内の少なくとも1つの電圧レベルが変化する毎に電圧レベルが所定時間変化して元に戻るパルス信号である例を示した。しかしながら回転角信号としては上記例に限定されず、3つのセンサ信号の電圧レベルの変化頻度に応じて電圧レベルの変動する信号でもよい。この変形例の場合、センサ信号処理部40は3つのセンサ信号の電圧レベルの変化頻度に対応する電圧レベルの関係を記憶しており、センサ信号の電圧レベルの変化頻度を検出した後、上記の関係に基づいた電圧レベルの信号を回転角信号として出力する。そして電子制御装置10、回転制御処理部31、および、プリドライバ32それぞれは、回転角信号の電圧レベルに対応する回転数の関係を記憶しており、この関係と入力される回転角信号の電圧レベルとに基づいて回転数を検出する。
本実施形態では特に言及していなかったが、上記の機能を有するモータ制御装置100は、アイドリングストップを行う車両に好適である。アイドリングストップを行う車両の場合、エンジンを停止した後に短時間で再始動することが求められる。この際に例えばエンジンを停止した後に一度プリドライバ32の動作モードを強制的に通常モードにする場合、その処理に時間がかかる。そのためエンジンを短時間で再始動できなくなる虞がある。これに対して本実施形態で示したようにモータ制御装置100ではブレーキトルクによるモータ200の停止に依らずにプリドライバ32を通常モードにしておく。これにより上記の比較構成とは異なり、短時間で内燃機関300の再始動に適した位相にカム位相を調整し、それによってエンジンを短時間で再始動することができる。
31…回転制御処理部、32…プリドライバ、33…インバータ、34…U相上段スイッチ、35…U相下段スイッチ、36…V相上段スイッチ、37…V相下段スイッチ、38…W相上段スイッチ、39…W相下段スイッチ、40…センサ信号処理部、60…回転角センサ、100…モータ制御装置、200…モータ、210…ロータ、212…永久磁石、220…ステータ、223…ステータコイル、224…U相ステータコイル、225…V相ステータコイル、226…W相ステータコイル、310…バルブタイミング変換部、320…カムシャフト、330…クランクシャフト

Claims (2)

  1. クランクシャフト(330)およびカムシャフト(320)それぞれとバルブタイミング変換部(310)を介して機械的に連結されたモータ(200)の駆動を制御することで、前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの位相を調整するモータ制御装置であって、
    前記モータは、前記バルブタイミング変換部に連結された出力軸と、前記出力軸が固定されるロータ(210)と、前記ロータの周りに設けられたステータ(220)と、を有し、前記ロータは永久磁石(212)を備え、前記ステータはステータコイル(223〜226)を備えており、
    前記ステータコイルに電流を流して磁束を発生させ、その磁束を前記永久磁石に作用させることで、前記出力軸の回転を促進する若しくは妨げる回転トルクを前記ロータに生じさせるインバータ(33)と、
    前記モータの回転角度と前記モータの回転方向とに依存する回転信号を出力する回転角検出部(40,60)と、
    前記回転信号に基づいて前記インバータを構成する複数のスイッチング素子(34〜39)を開閉制御することで前記ステータコイルに流れる電流を制御し、前記回転トルクの発生を制御するモータ制御部(32)と、
    前記モータ制御部に前記回転トルクの増減方向を指示する指示部(31)と、を有し、
    前記モータ制御部は、前記指示部から指示された前記回転トルクの増減方向が前記モータの回転を促進する方向の場合に通常モードになり、前記回転トルクの増減方向が前記モータの回転を妨げる方向の場合に発電モードになり、
    前記モータ制御部は、前記通常モードにおいて前記モータの回転角度に依らずに前記ステータコイルに常時通電し、前記発電モードにおいて所定の回転角度範囲だけ前記モータが回転する毎に前記ステータコイルへの通電を止めており、
    前記モータ制御部は、前記発電モードにおいて前記回転信号が所定時間内で変動しているか否かを判定し、前記回転信号が所定時間内で変動していると判定した場合、前記発電モードを維持し、前記回転信号が所定時間内で変動していないと判定した場合、前記通常モードに切り換えるモータ制御装置。
  2. 前記モータの駆動を制御することで、アイドリングストップを行う内燃機関(300)の前記クランクシャフトに対する前記カムシャフトの位相を調整する請求項1に記載のモータ制御装置。
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