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JP6326633B2 - 電解コンデンサの製造方法および電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサの製造方法および電解コンデンサ Download PDF

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Description

本発明は、電解コンデンサの製造方法および電解コンデンサに関し、特に、巻回型電解コンデンサの製造方法に関する。
電子機器のデジタル化に伴い、それに使用されるコンデンサにも小型、大容量で高周波領域における等価直列抵抗(ESR)の小さいものが求められるようになってきている。
従来、高周波領域用のコンデンサとしてはプラスチックフイルムコンデンサ、積層セラミックコンデンサ等が多用されているが、これらは比較的小容量である。
小型、大容量で低ESRのコンデンサとしては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン等の導電性高分子を陰極材として用いた電解コンデンサが有望である。例えば、誘電体被膜を形成した陽極箔に、陰極材として導電性高分子層を設けたコンデンサ素子が提案されている。
特許文献1では、可溶性の導電性高分子を溶媒に溶解させて得られた溶液に、コンデンサ素子を浸漬させ、その後、乾燥させることにより、導電性高分子層を形成することを提案している。また、特許文献2では、導電性高分子の粒子または粉末を分散媒に分散させて得られた分散液に、コンデンサ素子を浸漬させ、その後、乾燥させることにより、導電性高分子層を形成することを提案している。その後、コンデンサ素子は電解液とともにケース内に密封され、エージングを経て電解コンデンサが完成する。
特開平05−144677号公報 特開2008−10657号公報
しかし、特許文献1、2では、導電性高分子層から、電解液に導電性高分子が溶け出し、導電性高分子層の導電性が次第に低下することがある。そのため、ESRの経時的変化が大きくなり、電解コンデンサの長期信頼性を確保することが困難である。
上記に鑑み、本発明は、長期信頼性に優れた電解コンデンサの製造方法および電解コンデンサを提供することを目的とする。
本発明の一局面は、誘電体被膜を有する陽極体を準備する工程と、第1導電性高分子を含む第1液状組成物を準備する工程と、前記陽極体に、前記第1液状組成物を含浸させ、その後、乾燥させることにより、前記誘電体被膜の表面に前記第1導電性高分子を含む固体電解質層を具備するコンデンサ素子を形成する工程と、非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解された第2導電性高分子と、を含む第2液状組成物を準備する工程と、前記コンデンサ素子に、前記第2液状組成物を含浸させる工程と、前記第2液状組成物を含浸させたコンデンサ素子を外装ケースに収容する工程と、を含む電解コンデンサの製造方法に関する。
上記方法によれば、第1導電性高分子を含む固体電解質層の周囲に存在する非水溶媒には、第2導電性高分子が溶解しているため、固体電解質層からの第1導電性高分子の非水溶媒への溶け出しが抑制される。これは、第1導電性高分子の非水溶媒への溶け出しが、平衡反応としての側面を有するためと考えられる。
第2導電性高分子は、第1導電性高分子を構成するモノマー単位と同じモノマー単位を含んでもよい。これにより、第1導電性高分子の非水溶媒への溶け出しが更に抑制される。
第2液状組成物における非水溶媒の沸点は、耐熱性や耐リフロー性の観点から、100℃以上であることが好ましい。また、第2液状組成物に含まれる第2導電性高分子の濃度は、例えば0.5質量%以上、飽和濃度以下であればよい。
本発明の別の局面は、誘電体被膜を有する陽極体と、前記誘電体被膜の表面に形成された第1導電性高分子を含む固体電解質層と、を有するコンデンサ素子と、非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解された第2導電性高分子と、を含み、前記コンデンサ素子に含浸された液状組成物(第2液状組成物)と、前記第2液状組成物を含浸させた前記コンデンサ素子を収容する外装ケースと、を具備し、前記第2液状組成物に含まれる前記第2導電性高分子の濃度が、0.5質量%以上、飽和濃度以下である、電解コンデンサに関する。
本発明によれば、固体電解質層から非水溶媒への第1導電性高分子の溶け出しが抑制されるため、ESRの経時的変化が小さくなり、電解コンデンサの長期信頼性が向上する。
本発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。 同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。 同実施形態に係るコンデンサ素子における要部構成を示す断面模式図である。
本発明の電解コンデンサの製造方法では、誘電体被膜を有する陽極体に、第1導電性高分子を含む第1液状組成物を含浸させ、その後、乾燥させることにより、誘電体被膜の表面に、第1導電性高分子を含む固体電解質層を形成する。このような方法は、重合反応により導電性高分子を生成させる方法に比べて容易である。よって、低コストで、ESRが低く、かつ漏れ電流の小さい電解コンデンサを提供することが可能となる。
上記のように固体電解質層を形成した陽極体に、非水溶媒を含浸させることにより、電解コンデンサの耐電圧を向上させることが可能であり、かつ誘電体被膜の修復能力も高められる。一方、固体電解質層の周囲に非水溶媒が存在すると、非水溶媒の分子が固体電解質層を攻撃することにより、第1導電性高分子が非水溶媒に溶け出す現象が見られる。長期間にわたってこのような溶け出しが進行すると、固体電解質層の導電性が低下し、ESRが上昇する。そこで、電解コンデンサの長期信頼性を向上させる観点から、本発明では、非水溶媒と、その非水溶媒に溶解させた第2導電性高分子とを含む第2液状組成物(以下、第2高分子溶液とも称する)を、固体電解質層を具備する陽極体に含浸させている。
固体電解質層からの導電性高分子の非水溶媒への溶け出しは、平衡反応としての側面を有する。よって、非水溶媒に導電性高分子が溶解していると、固体電解質層からの導電性高分子の溶解が抑制され、ESRの経時的変化が小さくなり、電解コンデンサの長期信頼性が向上する。
以下、本発明を実施形態に基づいてより具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
≪電解コンデンサ≫
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同実施形態に係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図であり、図3は、同コンデンサ素子における陽極体と固体電解質層との界面を含む要部構成を示す断面模式図である。
図1において、電解コンデンサは、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A,14Bと、各リード線とコンデンサ素子10の各電極とを接続するリードタブ15A,15Bと、を備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12に加締めるようにカール加工されている。
コンデンサ素子10は、図2に示すように、リードタブ15Aと接続された陽極体21と、リードタブ15Bと接続された陰極体22と、セパレータ23とを備える。陽極体21および陰極体22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
より具体的には、コンデンサ素子10は、誘電体被膜を有する陽極体21と、誘電体被膜の表面に形成された第1導電性高分子を含む固体電解質層と、を有する。陽極体21は、図3に示すように、表面に凹部を有する金属箔または金属の焼結体からなることが好ましい。そして、凹部を有する陽極体21上に、誘電体被膜31が設けられている。誘電体被膜31とセパレータ23との間には、導電性高分子を含む固体電解質層32が設けられている。
コンデンサ素子10には、非水溶媒と、非水溶媒に溶解された第2導電性高分子と、を含む第2液状組成物33が含浸されている。また、第2液状組成物33を含浸させたコンデンサ素子は、外装ケースに収容されている。ここで、第2液状組成物33に含まれる第2導電性高分子の濃度は、例えば0.5質量%以上、飽和濃度以下である。
≪電解コンデンサの製造方法≫
次に、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について説明する。
(i)誘電体被膜31を具備する陽極体を準備する工程
まず、誘電体被膜31を具備する陽極体21を準備する。陽極体21としては、金属箔を用いることができる。具体的には、所定の大きさに切断された金属箔の表面を粗面化する。金属の種類は特に限定されないが、誘電体被膜31の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属を用いることが好ましい。粗面化では、金属箔の表面に、複数の凹部を形成する。例えば、金属箔をエッチング処理することによって、金属箔の表面に複数の凹部を形成することができる。
次に、粗面化された陽極体21の表面に誘電体被膜31を形成する。誘電体被膜31の形成方法は特に限定されないが、例えば、陽極体21が弁作用金属からなる場合には、陽極体21を化成処理することにより、陽極体21の表面に誘電体被膜31を形成することができる。化成処理では、例えば、陽極体21をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬して熱処理する。また、陽極体21を化成液に浸漬して電圧を印加してもよい。通常は、量産性の観点から、大判の弁作用金属箔に対して粗面化処理および化成処理が行われる。その場合には、処理後の金属箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極体21を準備することができる。
(ii)巻回体の作製
次に、陽極体21を用いて巻回体を作製する。巻回体とは、コンデンサ素子10の半製品であり、陽極体21と陰極体22もしくはセパレータ23との間に、固体電解質層32が形成されていないものをいう。
まず、陽極体21と陰極体22とを、セパレータ23を介して巻回する。このとき、リードタブ15A,15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リードタブ15A,15Bを巻回体から植立させることができる。
陰極体22は、例えば、陽極体21と同程度の大きさに切断された金属箔からなる。金属の種類は特に限定されず、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属を用いることができる。陰極体22の表面に対し、陽極体21と同様に化成処理を行ってもよい。
セパレータ23の材料は、例えば、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
リードタブ15A,15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A,15Bの各々に接続されるリード線14A,14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料であればよい。
次に、巻回された陽極体21、陰極体22およびセパレータ23のうち、最外層に位置する陰極体22の外側表面に、巻止めテープ24を配置し、陰極体22の端部を巻止めテープ24で固定する。なお、陽極体21を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極体21の裁断面に誘電体被膜を設けるために、巻回体に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
(iii)巻回体に第1液状組成物を含浸させる工程
次に、巻回体に第1液状組成物を含浸させることにより、陽極体21に第1液状組成物を含浸させる。第1液状組成物とは、例えば、溶媒と、その溶媒に溶解させた第1導電性高分子とを含む溶液(以下、第1高分子溶液とも称する)、または、分散媒と、その分散媒に分散させた第1導電性高分子とを含む分散液(以下、第1高分子分散液とも称する)であればよい。溶媒および分散媒は、水でもよく、水と非水溶媒との混合物でもよく、非水溶媒でもよい。非水溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類や、酢酸メチルなどのエステル類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。
第1高分子溶液に含まれる第1導電性高分子は、溶媒に溶解しており、溶液中に均一に分布している。よって、第1高分子溶液は、より均一な固体電解質層を形成しやすい点で好ましい。また、第1高分子分散液に含まれる第1導電性高分子は、粒子または粉末の状態で分散媒に分散している。よって、誘電体被膜に欠陥が存在する場合でも、欠陥への第1導電性高分子の侵入が起こりにくく、微小短絡が発生しにくい点で好ましい。第1高分子分散液は、例えば、分散媒に第1導電性高分子を分散させる方法や、分散媒中で第1導電性高分子の前駆体モノマーを重合させて、分散媒中に第1導電性高分子の粒子を生成させる方法などにより得ることができる。
第1高分子溶液における第1導電性高分子の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましく、第1高分子分散液における第1導電性高分子の粒子または粉末の濃度も、0.5〜10質量%であることが好ましい。このような濃度の第1高分子溶液または分散液は、適度な厚みの固体電解質層を形成するのに適するとともに、巻回体に対して含浸されやすいため、生産性を向上させる上でも有利である。
第1導電性高分子は、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどであればよい。なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランおよびポリアニリンは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランおよびポリアニリンを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランおよびポリアニリンには、それぞれの誘導体も含まれ得る。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1導電性高分子の重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましい。このような第1導電性高分子は、誘電体被膜に均質な固体電解質層を形成しやすく、かつ誘電体被膜の欠陥に侵入しにくいからである。また、第1導電性高分子は、架橋構造を有してもよい。また、第1導電性高分子が、粒子または粉末の状態で分散媒に分散している場合、その粒子または粉末の平均粒径D50は、例えば0.01〜0.5μmであることが好ましい。ここで、平均粒径D50は、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である。
巻回体に第1液状組成物を含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、容器に収容された第1液状組成物に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、巻回体のサイズにもよるが、例えば1秒〜5時間、好ましくは1分〜30分である。また、含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。また、第1液状組成物に浸漬させながら、巻回体または第1液状組成物に超音波振動を付与してもよい。
(iv)巻回体を乾燥させて固体電解質層を形成する工程
次に、第1液状組成物から、巻回体を引き上げ、巻回体を乾燥させることにより、誘電体被膜31の表面に第1導電性高分子を含む固体電解質層を形成する。このとき、誘電体被膜31の表面だけでなく、セパレータや陰極箔の表面にも固体電解質層が形成されてもよい。
第1液状組成物から巻回体を引上げた後、陽極体21を加熱することにより、溶媒または分散媒の蒸散を促進しもよい。陽極体を加熱する温度は、例えば50〜300℃が好ましく、100〜200℃が特に好ましい。
巻回体に第1液状組成物を含浸させる工程(iii)と、巻回体を乾燥させて固体電解質層を形成する工程(iv)は、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、誘電体被膜31に対する固体電解質層32の被覆率を高めることができる。
以上により、陽極体21とセパレータ23との間に固体電解質層32が形成され、コンデンサ素子10が作製される。なお、誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層は、事実上、陰極材料として機能する。よって、固体電解質層を具備する陽極体は、それだけでコンデンサ素子と称することができる。
(v)コンデンサ素子に第2液状組成物を含浸させる工程
次に、固体電解質層が形成された陽極体21(コンデンサ素子)に、非水溶媒およびこれに溶解された第2導電性高分子を含む第2液状組成物33を含浸させる。これにより、コンデンサ素子が有する隙間、特に誘電体被膜31上に形成された固体電解質層32の隙間に第2液状組成物33が侵入する。また、第2液状組成物33は、固体電解質層32により被覆されていない誘電体被膜31の隙間にも侵入することができるため、誘電体被膜31の修復機能が向上する。更に、第2液状組成物33には第2導電性高分子が溶解しているため、固体電解質層からの第1導電性高分子の第2液状組成物33への溶け出しは抑制される。
第2導電性高分子は、第1導電性高分子を構成するモノマー単位と同じモノマー単位を含むことが好ましい。これにより、第1導電性高分子の非水溶媒(第2液状組成物)への溶け出しを抑制する効果が大きくなる。よって、第1導電性高分子が、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランまたはポリアニリンである場合、第2導電性高分子も、それぞれポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランまたはポリアニリンであることが好ましい。
第2導電性高分子の重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましい。このような第2導電性高分子は、非水溶媒に溶解しやすく、かつ第2高分子溶液の粘度を上昇させにくいからである。
第2液状組成物における非水溶媒は、第2導電性高分子を溶解させる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、プロピレングリコール、スルホラン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールなどが挙げられる。非水溶媒の沸点は、100℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。第2液状組成物は、コンデンサ素子内に残留することから、耐熱性や耐リフロー性に優れていることが望まれるからである。第2液状組成物は、更に、有機塩などの電解質成分を含んでもよい。電解質成分を含有することより、ESRが低く、信頼性の高い電解コンデンサを得やすくなる。
第1導電性高分子の第2液状組成物への溶け出しを抑制する観点からは、第2液状組成物含まれる第2導電性高分子の濃度が高い方が望ましいが、濃度が高くなると、第2液状組成物の粘度が上昇する。よって、第2液状組成物に含まれる第2導電性高分子の濃度は、0.5質量%以上、飽和濃度以下であることが好ましく、1質量%以上、5質量%以下であることが好ましい。なお、第2導電性高分子の濃度が0.5質量%以上であれば、十分に高濃度であり、第1導電性高分子の第2液状組成物への溶け出しを抑制する効果も高くなる。第2導電性高分子の濃度が飽和濃度を超えると、コンデンサ素子内で第2導電性高分子が析出するため、内部短絡の原因となる場合がある。
巻回体に第2液状組成物を含浸させる方法も、特に限定されないが、容器に収容された第2液状組成物に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、巻回体のサイズにもよるが、例えば1秒〜5分である。また、含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
なお、第2液状組成物には、イオン性物質として、有機塩を含ませてもよい。有機塩とは、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物を含む塩である。有機塩としては、有機アミン塩が好ましく、特に有機アミンと有機酸との塩が好ましい。具体的には、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウムなどを用いることができる。第2液状組成物中における有機塩の濃度は、例えば5〜50重量%とすることができる。なお、第2液状組成物は、イオン性物質を溶解しているか否かにかかわらず、電解液と称されることもある。
(vi)コンデンサ素子を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を封止する。具体的には、まず、リード線14A,14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
次に、リード線14A,14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。封止部材12は、絶縁性物質であればよい。絶縁性物質としては弾性体が好ましく、中でも耐熱性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ハイパロンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどが好ましい。
次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極体として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極体として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例では、定格電圧35V、定格静電容量22μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ8.0mm×L(長さ)12.0mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
(i)陽極体を準備する工程
まず、アルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、該アルミニウム箔の表面に、化成処理により、誘電体被膜を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を、縦×横が6mm×120mmとなるように裁断して、陽極体を準備した。
(巻回体の作製)
次に、陽極体と同程度の面積のセパレータおよび陰極体を準備し、陽極体と陰極体とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。次に、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
陰極体としてはアルミニウム箔を用い、リードタブの巻回体から突出する端部にはリード線を接続した。そして、作製された巻回体に対して、再度化成処理を行い、陽極体の切断された端部にも誘電体被膜を形成した。
(第1液状組成物の準備)
重量平均分子量が10000〜20000の第1導電性高分子であるポリアニリンを3質量%含むトルエン溶液を、第1液状組成物として準備した。
(第1液状組成物の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で第1液状組成物に巻回体を5分間浸漬し、その後、第1液状組成物から巻回体を引き上げた。
(巻回体の乾燥)
第1液状組成物を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、第1導電性高分子を含む固体電解質層を陽極体の誘電体被膜に形成した。
(第2液状組成物の準備)
第1導電性高分子と同じ導電性高分子(重量平均分子量10000〜20000のポリアニリン)を、第2導電性高分子として3質量%含むγ−ブチロラクトン溶液を、第2液状組成物として準備した。
(第2液状組成物の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で、第2液状組成物に、固体電解質層を具備する巻回体(コンデンサ素子)を5分間浸漬し、その後、第2液状組成物から巻回体を引き上げた。
(コンデンサ素子を封止する工程)
第2液状組成物を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。具体的には、まず、有底ケースの開口側にリード線が位置するようにコンデンサ素子を有底ケースに収納し、リード線が貫通するように形成された封止部材であるゴムパッキングをコンデンサ素子の上方に配置して、コンデンサ素子を有底ケース内に封止した。そして、有底ケースの開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサを完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、135℃で2時間エージング処理を行った。
得られた電解コンデンサについて、静電容量およびESRを測定した。その結果を表1に示す。また、1.0V/秒のレートで昇圧しながら電圧を印加し、0.5Aの過電流が流れる破壊電圧(BDV)を測定した。更に、長期信頼性を評価するために、定格電圧を印加しながら125℃で1000時間保持し、ESRの増加率(ΔESR)を確認した。ΔESRについては、1000時間保持後のESRが初期値の1.5倍未満の場合を○、1.5倍以上の場合を×と表1に表示した。それぞれの特性を20個の試料の平均値として求めた。
《実施例2》
(第1液状組成物の準備)
重量平均分子量が10000〜20000の第1導電性高分子であるポリチオフェンを3質量%含むプロピレングリコール溶液を、第1液状組成物として準備した。
(第2液状組成物の準備)
第1導電性高分子と同じ導電性高分子(重量平均分子量10000〜20000のポリチオフェン)を、第2導電性高分子として3質量%含むプロピレングリコール溶液を、第2液状組成物として準備した。
上記第1および第2液状組成物を用いたこと以外、実施例1と同様に、電解コンデンサを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
《比較例1》
(第2液状組成物の準備)
マレイン酸トリメチルアミンを20質量%含むγ−ブチロラクトン溶液を準備した。
上記第2液状組成物を用いたこと以外、実施例1と同様に、電解コンデンサを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
《比較例2》
比較例1と同じ第2液状組成物を用いたこと以外、実施例2と同様に、電解コンデンサを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
表1より、コンデンサ素子に含浸させる第2液状組成物が、導電性高分子を含む非水溶媒からなる溶液である場合、ESRが低く、BDVが高く、かつ長期信頼性に優れていることが理解できる。
本発明は、電解コンデンサに利用することができ、特に、表面に微細な凹部が複数存在する陽極体を用いた電解コンデンサに好適に利用できる。
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極体、22:陰極体、23:セパレータ、24:巻止めテープ、31:誘電体被膜、32:固体電解質層、33:第2液状組成物

Claims (6)

  1. 誘電体被膜を有する陽極体を準備する工程と、
    第1導電性高分子を含む第1液状組成物を準備する工程と、
    前記陽極体に、前記第1液状組成物を含浸させ、その後、乾燥させることにより、前記誘電体被膜の表面に前記第1導電性高分子を含む固体電解質層を具備するコンデンサ素子を形成する工程と、
    非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解された第2導電性高分子と、を含む第2液状組成物を準備する工程と、
    前記コンデンサ素子に、前記第2液状組成物を含浸させる工程と、
    前記第2液状組成物を含浸させたコンデンサ素子を外装ケースに収容する工程と、を含む電解コンデンサの製造方法。
  2. 前記第2導電性高分子が、前記第1導電性高分子を構成するモノマー単位と同じモノマー単位を含む、請求項1に記載の電解コンデンサの製造方法。
  3. 前記第1導電性高分子が、ポリアニリンおよびポリアニリン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の電解コンデンサの製造方法。
  4. 前記非水溶媒の沸点が、100℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  5. 前記第2液状組成物に含まれる前記第2導電性高分子の濃度が、0.5質量%以上、飽和濃度以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
  6. 誘電体被膜を有する陽極体と、前記誘電体被膜の表面に形成された第1導電性高分子を含む固体電解質層と、を有するコンデンサ素子と、
    非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解された第2導電性高分子と、を含み、前記コンデンサ素子に含浸された液状組成物と、
    前記液状組成物を含浸させた前記コンデンサ素子を収容する外装ケースと、
    を具備し、
    前記液状組成物に含まれる前記第2導電性高分子の濃度が、0.5質量%以上、飽和濃度以下である、電解コンデンサ。
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